説明

高濃度アロキサジン溶液の製造のための方法及び組成物

方法は、通常の技術を使用して調製される組成物と比べて、可溶性アロキサジンの向上した水準を有する組成物の調製のために提供される。溶液中でより高い溶解度を有する組成物とリボフラビンン型も提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年1月27日に出願された米国仮出願番号60/762684と2007年1月24日に出願された代理人整理番号186412/US/2の米国特許出願の優先権を主張する特許協力条約に基づく特許出願であり、両者は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、更に、2004年11月5日に出願され、光増感剤とピーク光波長を使用する血液及び血液製品の汚染低減と題する米国特許出願10/904361の主題事項を更に組み込み、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の背景
a.技術分野
アロキサジンの溶液中の溶解性を向上させる、また生物学的流体中の病原体を不活性化するための方法及び組成物が提供される。増加した溶解性を有するリボフラビンの新たな形態も提供される。
【0004】
b.関連技術
細菌と同様にHIV、肝炎及び他のウィルスのような感染性微生物による全血及び血液製品の汚染は、全血の輸血若しくは種々の血液製品或いは血液成分の投与を受けねばならない人々に重大な健康被害をもたらす。このような血液成分は、赤血球、血漿、第13因子、プラスミノーゲン、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、クリオプレシピテート、ヒト血漿蛋白分画、アルブミン、免疫血清グロブリン、プロトロンビン錯体、血漿成長ホルモン及び血液から単離される他の成分を含む。
【0005】
安全な血液若しくは血液製品を受容者に提供するための一つの解決は、患者に材料を使用するに先立ち、汚染に対して血液若しくは血液製品(以後、用語「血液」及び「血液製品」は互換的に使用される。)を検査することである。血液製品試験が患者の病原体に対して陽性であると、血液製品は、流通から除去され、破棄される。しかしながら、血液検査手順は、不適切な特異性若しくは感度に基づいて病原体を検出し損なうことがあり、例えば、血液が西ナイルウイルスに感染しているときに、血液製品をC型肝炎の存在に対して検査したり、或いは血液製品をC型肝炎に対して検査するが、ウィルスは、その検査方法の検出感度以下の量で存在したりする。この場合、検出水準のC型肝炎汚染を含まないことに気づき、血液検査者は血液を流通に残すだろうが、実は、血液製品は、西ナイルウィルス汚染若しくは受容者の健康になお害を与えるだろう水準のC型肝炎汚染を有するだろう。
【0006】
安全な血液若しくは血液製品を受容者に提供するための第2の解決は、受容者に使用する前に「殺菌」することである。一つの特に有益な血液製品の「殺菌」方法は、血液製品に少なくとも1つの光増感剤を直接添加することである。光増感剤のある型のものは、核酸に高い親和性を有している。典型的に、血液製品中の核酸は、存在する病原体に付随しており、光増感剤が、血液製品内の病原体を特異的に標的とすることを可能とする。次いで、血液製品は、光増感剤から光受容体への吸収エネルギーの移動のため、光増感剤に対して適当な波長で放射線に曝され、換言すれば、エネルギーは、病原体の核酸に移転される。血液製品内の本質的に全ての病原体は、この処理を使用することにより破壊されるが、さもなくば受容者は汚染血液を受け特定の病原体に感染される危険を負うだろう。血液製品内の利用できる光増感剤の量若しくは水準は、試料中の病原体の破壊を保証する意義のある特徴である。
【0007】
光増感剤により駆動される微生物の破壊の有益さは、微生物と効率的に接触する光増感剤の量若しくは濃度に部分的に基づき、化合物を活性化し微生物の殺傷を引き起こすためにそれら光増感剤に到達する「光線量」に部分的に基づいている。一般的に、光線量は、光増感剤を活性化するが、周囲の血液若しくは流体即ち赤血球、血小板の損傷を引き起こさないように最大化される。
【0008】
しかしながら、材料の決められた体積で病原体を効率的に殺傷し若しくは不活性化するために、血液製品に十分な量の光増感剤を提供することは、困難と判明した。特に、種々の光増感剤の溶解度(Kspで測定)は、血液製品に添加することができる光増感剤の量を制限した。血液製品での使用のための光増感剤を調製する際に、固体光増感剤は、これを溶液状態にするために溶媒とまず混合されねばならず、次いで溶液は、血液製品の浸透圧に逆効果を及ぼさない比で製品に添加される。このことは、「殺菌」処理中にどのくらい光増感剤が血液製品に添加することができるかについて、従来から制限を与えていたものである。
【0009】
光増感剤の希釈された量は、潜在的に病原体の非効率な殺傷と処理を生じる。したがって、血液製品に少量で添加されても病原体の不活性化を保証する光増感剤の適正な水準を与える高濃度の光増感剤を有することが、血液製品の殺菌処理には有益だろう。更に、新たな光増感剤と光増感剤の形態が血液製品の処理での追加的なツールを提供するために探求される。新たな光増感剤とその形態は、新たな化合物から血液由来の病原体への改善されたエネルギー移動と同様に、血液製品含有物のための変性された溶解特性を提供することができる。
【0010】
開示は、こうした背景に対して展開された。
【0011】
概略
ある面で、周囲温度及び圧力でのアロキサジンの典型的な飽和点を超えて水性媒体中でのアロキサジン濃度を増加するための方法が提供される。80℃以上の温度を有する水性媒体が、室温(22℃)で大気圧(1気圧)でのアロキサジンの飽和点を超えるアロキサジン溶液を形成するために、アロキサジンの量が添加される。溶液は、次いで、周囲温度及び圧力でのアロキサジンの典型的な飽和点を超えるアロキサジン濃度を有する水性媒体を製造するために冷却される。
【0012】
種々の具体例で、水性媒体は、酸性pH(例えば、約4〜約5のpH)及び/又は約80℃〜約90℃の温度を有することができる。水性媒体は、一価の塩のような塩を含むことができる。ある具体例では、アロキサジンは、リボフラビンである。アロキサジン溶液は、1気圧より大きい圧力で、少なくとも120℃の温度で、更に殺菌することができる。
【0013】
別の面では、リボフラビン誘導体型が提供される。リボフラビン誘導体型は、525nmの波長で0.95以下の相関係数及び/又は、500nm超の波長で可溶性リボフラビンとは異なる濃度の関数としての吸光プロファイルを有する。更なる具体例では、リボフラビン誘導体型は、酸性pHを有し約80℃以上の温度を有する水性媒体中にリボフラビンを混合し、リボフラビン溶液を冷却するプロセスにより製造される。
【0014】
別の面では、血液製品のような生物学的流体を処理するための組成物が提供される。ある変形例では、組成物は、リボフラビンのような可溶性アロキサジンを少なくとも120μMの可溶性アロキサジンという1気圧22℃での飽和点を超えて含み、及び一価塩を含む。更なる変形例では、可溶性アロキサジンは、少なくとも500μMの濃度である。更なる変形例では、可溶性アロキサジンは、約580μMの濃度である。一価塩は、少なくとも0.9%の塩度を与えることができる。更なる変形例では、組成物は、炭酸水素ナトリウムを含むことができ、及び/又は約4〜約5のpHを有することができる。
【0015】
他の面では、生物学的流体中の病原体を不活性化する方法が提供される。ある濃度のアロキサジン溶液を有する組成物が、病原体を不活性化するために、生物学的流体に添加される。種々の具体例において、可溶性アロキサジンの濃度は、少なくとも100μM、250μM、少なくとも500μM、若しくは約580μMである。他の具体例では、生物学的流体は、血液製品である。
【0016】
詳細な説明
種々の具体例は、増加した溶解性とそれによる向上した濃度を有する、改善された光増感剤組成物、特に改善されたアロキサジン組成物を提供する。得られるアロキサジン溶液の溶解度と濃度は、溶液以外でのアロキサジンの溶解度と濃度を超える。得られるアロキサジン溶液は、病原体含有生物学的流体に添加されるアロキサジンの大きな量を提供し、増加した病原体の不活性化をもたらす。非処理リボフラビンより高い飽和点を有するリボフラビン誘導体型も提供される。
【0017】
定義
以下の定義は、ここで頻繁に使用されるある用語の理解を容易にするために提供されるものであって、本開示の範囲を制限することを意味しはしない。
【0018】
ここで使用される「生物学的流体」は、動物好ましくは哺乳類の体内で見出される流体を指す。典型的には、生物学的流体は、核酸を含有する多数の材料を有さない。例えば、ここに開示されるような生物学的流体は、血液製品を含む。「血液製品」は、血液と全血液成分、血液成分及び血液由来の蛋白質を含む治療用蛋白組成物を指す。
【0019】
ここで使用される、「アロキサジン」は、全てのアロキサジンとイソアロキサジンと同様にそれらの天然及び合成誘導体を指し、以下のものを含むがそれに限定されるものではない:7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジン(リボフラビン若しくはビタミンB-2)、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン(ルミフラビン)、7,8-ジメチルアロキサジン(ルミクロム)、イソアロキサジン-アデニン ジヌクレオチド(フラビン アデニンジヌクレオチド[FAD])及びアロキサジンモノヌクレオチド(例えば、フラビン モノヌクレオチド[FMN])。
【0020】
ここで使用される、「病原体」は、感染し、ホストに疾病を引き起こす可能性のある生物を指す。特に、病原体は、典型的には天然の細菌或いはウィルスである。ここに記載されるように、用語病原体と微生物は交換可能である。
【0021】
ここで使用される、用語「病原体の不活性化」は、病原体を殺傷するか、病原体の複製能力を妨害することにより病原体が複製することを部分的若しくは完全に防止することを意味する。ここで使用されるように、用語「病原体を根絶すること」は、全ての病原体が複製することを完全に防止することを意味する。
【0022】
ここで使用される、用語「水性媒体」は、溶媒が水である任意の媒体を指す。
【0023】
ここで使用される、「核酸」(「NA」)は、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)の両方及びペプチド核酸(PNA)と同様にそれらの変性物及び/又は官能化物を指す。同様に、ここで使用される用語ヌクレオチドは、リボ核酸及びデオキシリボ核酸と同様ヌクレオシド及びヌクレオチド類似物また標識ヌクレオチドのような変性ヌクレオチドの個々の単位を含む。ヌクレオチドは、また、糖、リン酸塩及び/又は塩基単位が不在であるか他の化学構造により置き代えられるような非天然に生じる類似構造を含む。用語ヌクレオチドは、また、個々のペプチド核酸(PNA)単位(Nielsen et al., Bioconjug. Chem. (1994) 5(1):3-7)とロックされた(locked)核酸(LNA)単位(Braasch and Corey, Chem. Biol. (2001) 8(1):1-7)を含む。
【0024】
ここで使用される、「ピーク波長」は、波長の中心の狭い範囲で放出される特別なピーク強度を有する光を指す。
【0025】
ここで使用される、「溶解度」は、過剰な物質と平衡状態にある溶液に含まれる物質の質量を指す。この条件下では、溶液は飽和していると言われる。物質のKspは、物質の飽和溶液中の物質のイオンの濃度の積である。
【0026】
光増感剤と病原体不活性化方法
アロキサジンは、核酸に結合する光増感剤である。光増感剤は、典型的には、核酸分子に非特異的に結合し、核酸を含む微生物の核酸の複製を妨害し、それにより防止することにより該微生物を不活性化する。光増感剤は、光増感剤に特有の特定の光の波長の照射により活性化し、光増感剤からエネルギー受容体、例えば核酸塩基対へのエネルギー移動を引き起こす。一般的に、光増感剤の特異性は、病原体の核酸への光増感剤の結合を生じさせるところの、光増感剤の微生物の核酸への密接な近接に基づく。
【0027】
光増感剤は、処理されるべき生物学的流体が、非病原性核酸分子がないか、限られた数であるときに、換言すれば、生物学的流体に存在する核酸が、主に病原体の存在に基づくものであり、同一試料内の他の細胞に基づくものではないときに、最も有益である。それで例えば、生物学的流体の典型的処理方法は、病原性生物に汚染された可能性のある血液製品に対する光増感剤の添加を含む。
【0028】
血液及び/又は血液成分の病原体の減少が、望まれるのであれば、光にさらされて光増感剤として作用する添加物を、ここに記載された方法、化合物及び組成物と組み合わせて使用することができる。そのような添加物は、内因性光増感剤を含む。用語「内因性」は、体による合成の結果として、若しくは必須食物(例えば、ビタミン)の摂取或いは生体内での代謝産物及び/又は副産物の生成のための何れかにより、ヒトまたは哺乳動物の体に天然に見出されることを意味する。
【0029】
このような、内因性光増感剤の例は、7,8-ジメチル-10-リビチル イソアロキサジン(リボフラビン)、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン(ルミフラビン)、7,8-ジメチルアロキサジン(ルミクロム)、イソアロキサジン-アデニン ジヌクレオチド(フラビン アデニンジヌクレオチド[FAD])、アロキサジンモノヌクレオチド(フラビン モノヌクレオチド[FMN]及びリボフラビン-5-ホスフェートとしても知られる。)、それらの代謝産物及び前駆体のようなアロキサジンである。用語「アロキサジン」は、イソアロキサジンを含む。内因性系誘導体光増感剤は、それらが由来し、その機能とその実質的な無毒性を保存する光増感剤の低級(1−5)アルキル若しくはハロゲン置換基を有するか有さなくてもよい内因性光増感剤の合成的に誘導された類似体及び同族体を含む。内因性光増感剤が使用されると、特に、このような光増感剤が元々毒性がないか、光照射後の有毒な光産物を生じない時には、汚染除去後に除去若しくは純化工程は必要とされず、処理製品は、直接患者の体内に戻されるか、治療効果を必要とする患者に投与することができる。
【0030】
光増感剤は特定波長の光に暴露されると、光増感剤と光増感剤に結合する任意の核酸の光分解を生じるエネルギーを吸収する。光増感剤の効率は、病原体により取り入れられた光増感剤の濃度と照射線量の両方に依存する。(励起された光増感剤は、病原体を破壊する活性剤であるからである。)それゆえ一般的には、光化学線量は、流体に加えられた光増感剤の濃度と光線量に等しい。
【0031】
光線量は、対象の生物学的流体に逆効果を与えずに、病原生物に最大限の破壊をもたらすことに基づく。ここで定義されるピーク波長は、特定のピーク強度を有する波長を中心とする狭い範囲内で出射される光を指す。ある具体例では、可視光は、約470nmの波長を中心とし、約200nm〜550nmで最大強度を有してもよい。代替の具体例では、光は、約308nmを中心とし、約280nm〜370nmで最大強度を有してもよい。用語「光源」若しくは「放射」は、放射エネルギーの放射源を指し、可視域及び/又は紫外域のエネルギーを含んでもよいことに注意すべきである。上記のように、より強く、より効率的な光線量は流体内の他の成分の安定性に逆効果(例えば血液製品試料内の赤血球を溶解)を及ぼすらしいことから、光線量を変えることにより目標流体内での光増感剤線量を改善することは困難である。
【0032】
以前に、米国特許公開20050112021 (Hlavinka et al.,2005年5月26日)に記載されたように(参照として組み込まれる)、光増感剤が目標流体に添加され、得られる流体混合物が、光増感剤を活性化するが、生物学的成分に有意な非特異的な損傷を引き起こさないか、流体中に存在する他の蛋白質の生理活性を実質的に阻害しない量の、適切なピーク波長の光放射に暴露される。
【0033】
病原体は、少なくとも120μMの可溶性アロキサジンを有する溶液若しくは組成物を生物学的流体に添加することによって、不活性化若しくは根絶することができる。溶液若しくは組成物は、上記方法により、1気圧、22℃での非処理濃度を超える所望のアロキサジン濃度に、調整することができる。アロキサジン溶液の増加した溶解度と濃度は、より多量のアロキサジンを病原体を含む生物学的流体に添加することを可能とする。これは、増加した病原体の不活性化を招来する。
【0034】
ここに記載されるような、光増感剤を使用して根絶若しくは不活性化されうる微生物は、限定するものではないが、ウィルス(細胞外、細胞内両方)、細菌、バクテリオファージ、真菌、血液透過寄生虫及び原生動物を含む。ウィルスの例は、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、A型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、シンビスウィルス、サイトメガロウィルス、水泡性口内炎ウィルス、単純性疱疹ウィルス(I型及びII型)、西ナイルウィルス、ヒトT-リンパ球レトロウィルス、HTLV−III、リンパ節線病ウィルスLAV/IDAV、パルボウィルス、輸血透過(TT)ウィルス、エプスタイン-バールウィルス等である。光増感剤を使用して根絶若しくは不活性化されうるバクテリオファージは、限定するものではないが、.PHI.X174、.PHI.p6、ラムダバクテリオファージ、R17、T4、T2等を含む。光増感剤を使用して根絶されうる細菌は、限定するものではないが、P.aeruginosa, S.aureus, S.epidermis, L.monocytogenes, Escherichia coli, K. pneumonia, S.marcescens等を含む。
【0035】
アロキサジン組成物の調製方法
水性媒体中でアロキサジンの通常の飽和点を超えるまでアロキサジン濃度を増加するための方法も、提供される。ある具体例では、アロキサジンの飽和点を超えるアロキサジン量が、80℃以上の温度を有する水性媒体に添加される。溶液が冷却されると、得られるアロキサジン溶液中のアロキサジンは、アロキサジンの飽和点を超える。アロキサジンは、水性媒体の加熱前若しくは加熱中に水性媒体に添加することができる。アロキサジンは溶液中で長期間安定であり、水性溶液中で過飽和とはならない。
【0036】
アロキサジンは、商業的に入手することができる。結晶性アロキサジン、例えばリボフラビン(7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジン)、FMN、FAD、ルミクロム等特定の形態にかかわらず、メルク社から得ることができ、例えば、1983年のメルクインデックス第10版参照。
【0037】
アロキサジンの量は、水性媒体若しくは水性媒体と非極性溶媒の組み合わせのような溶媒との組み合わせに対して測定される。例えば、アロキサジンリボフラビンの22℃1気圧での飽和濃度は、114μMであると測定された。ここに記載される方法により調製されるアロキサジン濃度は、元々の溶解濃度より著しく高い。最終アロキサジン濃度は、120μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、450μM、500μM、550μM、580μM、600μM若しくは650μM以上に目標設定することができる。ある具体例では、アロキサジン濃度は、約500μM±12.5μMに目標設定される。
【0038】
溶媒のpHも調整することができる。例えば、pHは、酸性pH(6.5以下)に調整することができる。溶媒のpHは、最大で、pH6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5、3.0若しくは2.5以下に、場合によっては、最小で、pH2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5若しくは6.0以上に変更することができる。例えば、pHは、4.0〜5.0に変更することができる。任意の酸が、pHを変更するために使用することができ、例えば、塩酸(HCl),硫酸(HSO),クエン酸(C)及び酢酸(CHCOOH)を含む。通常の塩基も、pHを変更するために使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を含む。
【0039】
一価の塩、例えばNaClは、約0.9%の塩度を与えるために溶媒と併用されることができる。加えて、溶液は、約200mMの酢酸ナトリウム(NaAc)を含むために調製することができる。酢酸ナトリウムは、典型的には血液製品の最終用途に含まれ、10-20mMのNaAcが、血小板の安定と活性のため血液製品内で使用される。(Bertulini et al., Transfusion (1992) 32:152; Murphy, Blood (1995) 85:1929)上記のとおり、NaAcは、アロキサジン及び塩と共に、またはアロキサジン及び塩とは独立に添加することができる。添加順序は、アロキサジン含有溶媒の製造には重要ではない。
【0040】
通常のアロキサジン溶液製造下では、約114μM当量の溶液だけが、材料の限界溶解度即ちKspに基づき製造されるだろう。アロキサジン濃度は、前記したように、典型的な飽和濃度より特定の高い特定の水準に目標設定することができる。
【0041】
水性媒体は、所定の温度に加熱される。例えば、水性媒体は、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃若しくは95℃以上の最小温度で、場合によっては、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃若しくは65℃以下の最大温度で加熱することができる。ある変形例では、温度は80℃〜90℃である。溶液は、アロキサジンが溶解することを可能とするために、少なくとも10〜60分間のようなある時間混合することができる。
【0042】
加熱され、混合された溶液は、次いで柔軟プラスチックバッグ若しくは他の似た容器中で、増加された水蒸気、圧力及び温度下でオートクレーブ処理される。如何なる体積上の制約も溶液には課されない。特に、溶液は、約60℃〜約100℃で、好ましくは約75℃〜約85℃で、1atm〜4atm(50psi)の圧力で高水蒸気条件下で加熱される。
【0043】
組成物は、後の使用のために貯蔵され得る。例えば、酢酸ナトリウムを、組成物に添加することができる。組成物は、殺菌容器例えばポリウレタンバッグに小分けされ、次いで適当な時間にわたり、(例えば、120℃-130℃に)加熱されることができ、遮光状態で組成物を水蒸気殺菌する。
【0044】
この方法で調製されたアロキサジン溶液は、血液製品のような生物学的流体の処理に使用されることができる。アロキサジン含有溶液は、ここに記載された方法を使用して調製されないアロキサジン溶液と比較して、向上した溶解性と安定性を有する。
【0045】
ここに記載された方法により調製される組成物は、次いで血液製品のような生物学的流体に添加される。ある具体例では、約35mlの500μMのアロキサジン溶液が、170ml〜365mlの血液製品につき添加される。アロキサジン組成物の血液製品への添加は、従来技術と比較すると全く異なり、血液製品へのアロキサジンの非常により多い希釈を必要とする。
【0046】
リボフラビン誘導体型
溶液中で加熱し次いで冷却することによるリボフラビンを調製する方法は、未処理リボフラビンと比べて室温での増加した溶解性を有するリボフラビン誘導体型を生み出す。化合物は、リボフラビン誘導体アルファと呼ばれた。リボフラビン誘導体アルファは、生物学的流体の殺菌処理に使用することができる。
【0047】
リボフラビン誘導体アルファは、酸性条件下で加熱することにより生み出されるリボフラビンの高度に溶解性である型である。リボフラビン誘導体型の化学構造と活性は、非処理リボフラビンのそれと同じである。特別の理論に限定するつもりはないが、リボフラビン誘導体型は、水和殻から水を排除するリボフラビンの変更された立体配座であるようである。このような配座変更は、リボフラビンが有機溶媒として作用することを可能とし、それにより溶液中でのリボフラビンの増加した溶解性を可能とする。分光分析データは、より疎水性の環境でのリボフラビンの可溶化と一致している。リボフラビン誘導体アルファは、長期間安定であるが、過飽和溶液ではない。
【0048】
ここに記載された方法から誘導されるリボフラビン材料の少なくともある部分は、リボフラビン誘導体アルファを含む。リボフラビン誘導体アルファは、それだけで、若しくはリボフラビンの組み合わせの一部として若しくは他のアロキサジン化合物と共に存在することができる。その化合物は、室温で高度に安定であり、より長期間貯蔵することができ、他方生物学的流体の処理での使用のための高活性を保持する。以下の例で示されるように、リボフラビン誘導体アルファは、500nm超の波長での濃度の関数としての変更され変性された吸光度プロファイルを備える。
【0049】
リボフラビン誘導体アルファの変性された吸光度プロファイルは、未処理リボフラビンと比較して、この新規なリボフラビンの誘導体が存在することを示す。(ベールの法則参照。A=εbc、ここで、Aは吸光度であり、εはモル吸光係数、bは試料の行路長、即ちキュベット、cは、溶液中の化合物の濃度である。)
ここに記載された方法、組成物及びデバイスは、ワクチンを作るため、流体中のプリオンを低減するために使用されてもよく、血液から誘導される他の生物学的に活性な蛋白質を含むIV流体は、ここに記載された方法、化合物及び組成物により処理されてもよい。
【0050】

本開示は、次の例への参照により容易に理解されるだろうが、それらは、例を提供するだけあり、限定するつもりはない。
【0051】
例1:高度に溶解性のリボフラビンのバッチ製造
バルク溶液の配合手順
以下の手順が、クリーンルームで実行される。所定の所望のバルク体積の製造されたリボフラビン溶液のために、500μM±12.5μMのリボフラビンと約153.6mM±3.6mMとを有する溶液を製造するために、十分な固体リボフラビンと塩化ナトリウムが計量され、80℃の水で満たされたタンクに小分けされ、分散された。特に1000Lのバッチは、0.1882kgのリボフラビン9.0kgの塩化ナトリウムから成るだろう。リボフラビンと塩化ナトリウムは、同時に添加することも、個々に順番に添加することもできることに注意すべきである。
【0052】
更に特に、塩化ナトリウムは、WFI(注射品質水或いは「注射用水」)に添加される。WFIは、80℃の温度であり、pHは、0.1Mの塩酸で5.0±0.1に調整される。次いで、リボフラビンが添加され、溶液は約15分間混合される。再度、塩化ナトリウムとリボフラビンとの添加順序は、無関係であることに注意すべきである。溶液の温度は、約80℃の温度に維持される。品質管理分析が、組成物の純度を決定するためになされた。
【0053】
充填袋と水蒸気殺菌の手順
上記溶液は、次いでデュラポア(Durapore)10”0.45μmのインラインフィルターによりろ過された。ろ過されたバルク溶液は、溶液が35mlのラベル付きPVC袋に小分けされる充填機械に次に移送される。袋は、過剰殺傷方法を使用する水蒸気殺菌に先立って、ポリプロピレン真空包装で包装された。
【0054】
過剰殺傷方法は、ヒースケア製品の殺菌-妥当性検査と定型管理のための要請-工業的湿熱殺菌と題するISO 11134:1994に従って実行された。ISOは、水蒸気殺菌技術を使用する医療製品の調製のためのガイドラインを提供する。
【0055】
殺菌サイクルは、ポリプロピレン袋中4気圧で約15分間、溶液を121℃へ加熱することを含む。次いで、袋は、溶液への光への暴露を妨げるために(リボフラビンの光分解を回避する)、ラベル付きホイルパウチにそれらを置くことによって、水蒸気殺菌された。次いで、試料は、最終製品試験を使用して試験された。試料は、以下のパラメターに適合した。:リボフラビン500 ± 25 μM;ルミクロム75μM未満;塩化ナトリウム154±7mM;2次可視粒子10μm超(6000/容器)、25μm超(600/容器);、4.0-5.1;エンドトキシン、0.5EU/ml未満;及び殺菌度、10-6以下(流体経路のための殺菌保証水準(SAL))。
【0056】
例2:リボフラビン誘導体アルファ
リボフラビン誘導体アルファと名づけられたリボフラビン誘導体が、上記例1に記載された手順で調製された。材料がリボフラビンを含むことを確認するために、組成物は、490nm〜530nmの波長で2nm〜5nm間隔で吸光度について試験された。次いで、吸光度数は、ベールの法則(A=εbc、ここでAは吸光度であり、εはリボフラビンのモル吸光係数、bは試料の行路長、即ちキュベット、cは、溶液中の化合物の濃度である。)に組み入れられた。濃度は、各吸光度で解かれ、図1A、1B及び1Cに示されるようにプロットされた。吸光度対濃度の線の傾斜は、モル吸光係数(ε)に等しい。
【0057】
興味あることに、図1Cからのデータが、相関係数、即ち各波長と調製された相関係数に対してプロットされた濃度は、実質的偏差が、500nm超、特に510nmの波長で同定された。図1Cでのデータは、特異なリボフラビン誘導体型が試験組成物中に存在し、それゆえそれが、上記方法を使用して調製されることを示している。この誘導体は、リボフラビン誘導体アルファと名づけられた。
【0058】
例3
リボフラビン(約70mg)が、食塩(約200mL)に添加され、連続的にホットプレート上で混合された。容器は覆われ、溶液は4分間混合され、溶液は2ミクロンのフィルターによりろ過された。ろ過された溶液は、1:10で希釈され、吸光度が測定された。リボフラビン濃度は540μMであると測定された。スペクトルは、リボフラビンの分解の証明を示さなかった。
【0059】
3mLのリボフラビンと147mLの食塩が結合された。吸光度が測定され、濃度は9.9μMであると測定された。30mLのリボフラビン/食塩溶液が、各4個の75cmのフラスコに移送され、同時に2度放射線照射された。
【0060】
リボフラビン溶液の濃度は、周囲温度及び圧力で溶液に溶解された未処理のリボフラビン濃度114μMを超える、515μMと528μMであると測定された。
【0061】
例4
リボフラビンの濃度安定性が、その安定性を測定するためにある時間以上測定された。
【0062】
種々のリボフラビン処方が調製された。
【0063】
リボフラビンは、22℃で水性媒体に溶解され、その濃度が、114μMと測定された。
【0064】
試料1-3は、10mgのリボフラビンを100mLの食塩に添加し、37℃で30分間加熱し、撹拌皿上で20分間混合し、20ミクロンのフィルターによりろ過することにより調製された。
【0065】
試料4は、10mgのリボフラビンを100mLの食塩に添加し、加熱し、0.2ミクロンのフィルターによりろ過することにより作成された。
【0066】
試料5は、20mgのリボフラビンを100mLの食塩に添加し、30分間混合しながら加熱し、0.2ミクロンのフィルターによりろ過することにより調製された。
【0067】
試料6は、5mgのリボフラビンを10mLの食塩に添加し、60℃で30分間水浴で加熱し、激しく30秒間揺動し、0.2ミクロンのフィルターによりろ過することにより調製された。
【0068】
リボフラビン組成物の濃度安定性が、各処方に対して示される。各実験加熱処理リボフラビン試料のリボフラビン濃度は、非処理対照試料のそれを上回っている。更に、濃度は、周囲温度及び圧力で貯蔵される間中、安定なままである。
【表1】

【0069】
本発明の範囲内で同様に種々の変形及び改変が本発明になされてもよいことが、本開示の目的のために理解される。種々の他の変更が当業者に簡単に示唆され、ここに開示された方法、化合物及び組成物の技術思想を含むようになされてもよい。
【0070】
明細書は、種々の特許、特許出願、文献を含むが、あらゆる目的で、夫々は参照に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】具体例で調製されたリボフラビン誘導体型アルファの吸光特性。
【図1B】具体例で調製されたリボフラビン誘導体型アルファの吸光特性。
【図1C】具体例で調製されたリボフラビン誘導体型アルファの相関係数特性。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1気圧及び22℃でのアロキサジンの飽和点を超過するアロキサジンの量を水性媒体中に添加すること;
前記水性媒体を80℃以上の温度に加熱すること;及び
アロキサジンの飽和点を超えるアロキサジン濃度を有する水性媒体を製造するために前記水性媒体を冷却すること
を含む、アロキサジンの飽和点を超えるまで、水性媒体中のアロキサジン濃度を増加する方法。
【請求項2】
アロキサジンが前記加熱工程の前に添加される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アロキサジンが前記加熱工程の後に添加される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
水性媒体が、約4〜約5のpHを有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
水性媒体が、約80℃〜約90℃の温度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
水性媒体が、一価の塩を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
アロキサジンがリボフラビンである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
水性媒体を圧力下、少なくとも120℃の温度で滅菌することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
生物学的流体中の生物学的病原体を不活性化するために、生物学的流体に少なくとも120μMの可溶性アロキサジンを含む組成物を添加することを含む、生物学的流体中の生物学的病原体を不活性化するための方法。
【請求項10】
組成物が、少なくとも250μMの可溶性アロキサジンを有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
組成物が、少なくとも500μMの可溶性アロキサジンを有する、請求項9記載の方法。
【請求項12】
組成物が、約580μMの濃度の可溶性アロキサジンを有する、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記調製工程が、
1気圧及び22℃でのアロキサジンの飽和点を超過するアロキサジンの量を水性媒体中に添加すること;
前記水性媒体を80℃以上の温度に加熱すること、及び
前記水性媒体を冷却すること
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
生物学的流体が、血液製品である、請求項9記載の方法。
【請求項15】
525nm波長で0.95以下の相関係数と、500nm超の波長で可溶性リボフラビンとは異なる濃度の関数としての吸光度プロファイルを有するリボフラビン誘導体。
【請求項16】
酸性pHを有し少なくとも80℃の温度を有する水性媒体中にリボフラビンを混合し、次いで、リボフラビン溶液を冷却するプロセスにより製造される、請求項15記載のリボフラビン誘導体。
【請求項17】
約150μM〜約580μMの可溶性アロキサジンと一価の塩を含む、血液製品を処理するための組成物。
【請求項18】
可溶性アロキサジンが、約580μMの濃度である、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
アロキサジンが、リボフラビンである、請求項16記載の組成物。
【請求項20】
炭酸水素ナトリウムを更に含む、請求項16記載の組成物。
【請求項21】
組成物が、約4〜約5のpHを有する、請求項16記載の組成物。
【請求項22】
一価の塩が、少なくとも0.9%の塩度を与える、請求項16記載の組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公表番号】特表2009−524672(P2009−524672A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552408(P2008−552408)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/002054
【国際公開番号】WO2007/089538
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(506313866)カリディアンビーシーティ バイオテクノロジーズ,エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】