説明

高濃度レトルト流動食品及びその製造方法

【課題】 高濃度レトルト流動食品の製造過程におけるレトルト殺菌時の褐色付着物の発生を抑制して、商品価値を維持し、かつ食品本来の食味・風味を損なわない、ソフトバッグなどの容器に封入された高濃度レトルト流動食品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 少なくとも1kcal/mlの高濃度流動食品組成物を包装容器に封入し、そのヘッドスペースを、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換した後にレトルト殺菌処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度レトルト流動食品及びその製造方法に関し、特に製造時に褐色付着物の生成を抑制した高濃度レトルト流動食品及びその製造方法に関する。また、本発明は、高濃度レトルト流動食品の製造において生成する褐色付着物の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、常温流通や長期保存を目的とした、いわゆるレトルト食品が多数開発され、市場に広まっている。通常、食品の表面や内部には必ずカビ、酵母、細菌などの微生物が付着あるいは混入し、水分が多い場合には腐敗変敗を引き起こすため、食品を包装した後に加熱殺菌が行われる。この時、蒸気や加圧熱水を利用し、加圧下で100℃を超えて加熱殺菌を行うレトルト殺菌を行うことで、常温長期保存が可能となる。
【0003】
一方、胃腸系疾患の患者や高齢者に対する効率的な栄養補給を行うために、高濃度で栄養素のバランスがとれており、1kcal/ml程度の高カロリーである種々の流動食品が開発されている。こうした流動食品はソフトバッグなどに包装され、レトルト殺菌された高濃度レトルト流動食品として知られており、臨床現場において作業効率を大幅に改善している。
【0004】
こうしたソフトバッグ入りレトルト流動食品は開発当初、1kcal/ml程度の組成が主流であったが、近年の技術革新により1.5kcal/ml程度の高濃度タイプが商品化されるようになり、将来的には2.0kcal/mlの超高濃度タイプも開発が進み、さらに効率的な栄養補給が可能となると考えられる。
【0005】
しかし、高濃度タイプの流動食品を製造する際、レトルト殺菌時にソフトバッグなどの包装容器内のヘッドスペース(空気だまり)に褐色付着物が発生するという問題点がある。これは、今後の商品トレンドでもある内容液が高濃度タイプになるに従い、褐色付着物の絶対量が増えてしまう。この褐色付着物は、容器内のヘッドスペースに付着している内容液に由来し、レトルト殺菌処理における熱変性により発生すると考えられている。
【0006】
こうして発生してしまう褐色付着物は、食品由来であるために食品衛生上では問題が無いものの、褐色の異物が付着するということで、商品価値が著しく損なわれてしまったり、内容物の食味・風味が変わってしまうことがある。さらには褐色付着物が容器内で剥離した場合に、医療や介護の現場で使用する経鼻チューブなどへ、その剥離した物が詰まってしまうなどの問題が起きる可能性もあった。
【0007】
また、この現象は揺動式レトルト殺菌装置においては発生する程度が低いが、静置式レトルト殺菌装置においては顕著に発生してしまう。一般的に揺動式レトルト殺菌装置は、静置式レトルト殺菌装置と比べ設備費用が高く、それに伴い商品製造コストが高くなってしまう。従って製造コストを低く抑える為には、静置式レトルト殺菌装置を使用することが好ましく、当該問題の早急な解決を必要としている。また、今後はさらなる高濃度化により揺動式レトルト殺菌装置でも褐色付着物の発生は問題となることが予想される。
【0008】
一方、例えば特許文献1には、可溶飽和量以下の炭酸ガスを含有する飲食品を、ガス遮蔽性容器に、完全無気相(容器内に気相を全く含有しない状態)で充填密封し、陽圧化による容器の破裂や破損などを防止する方法が記載されている。しかし、褐色付着物などの抑制については何ら開示も示唆もされていない。
【0009】
【特許文献1】特開平2−84133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明では、高濃度レトルト流動食品の製造過程におけるレトルト殺菌時の褐色付着物の発生を抑制して、商品価値を維持し、かつ食品本来の食味・風味を損なわない、ソフトバッグなどの容器に封入された高濃度レトルト流動食品及びその製造方法を提供することを課題とする。また、特に静置式レトルト殺菌装置にて高濃度タイプ流動食品を製造することができる高濃度レトルト流動食品及びその製造方法を提供することを課題とする。さらに本発明では、高濃度レトルト流動食品の製造において生成する褐色付着物の抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本研究者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、通常のレトルト殺菌工程において、封入後の包装容器に発生するヘッドスペースを特定のガス組成物で置換することにより、褐色付着物の発生を著しく抑制することができることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、少なくとも1kcal/mlの高濃度流動食品組成物を包装容器に封入した後にレトルト殺菌して製造される高濃度レトルト流動食品であって、そのヘッドスペースを、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換した後にレトルト殺菌処理を行うことを特徴とする高濃度レトルト流動食品を提供することで、上記課題を解決することが可能となった。
【0013】
上記高濃度レトルト流動食品においては、前記レトルト殺菌処理が静置式レトルト殺菌装置を用いて行われることが好ましい。
【0014】
また、この時、前記レトルト殺菌処理が、殺菌温度120℃以上、殺菌時間3〜30分の条件で行われることが好ましい。
【0015】
上記高濃度レトルト流動食品の包装容器の形状としては、平袋またはスタンディングパウチが好ましく用いられる。
【0016】
また、高濃度レトルト流動食品をある特定の製造方法を提供するにより、上記課題を解決することができる。すなわち本発明は、高濃度レトルト流動食品の製造方法であって、少なくとも1kcal/mlの高濃度流動食品組成物を包装容器に入れる工程と、そのヘッドスペースを、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換して封止する工程と、包装容器封入後の前記食品組成物を所定温度、所定時間で、レトルト殺菌する工程とを含んでなる高濃度レトルト流動食品の製造方法により上記課題を解決することができる。
【0017】
なお、上記方法のレトルト殺菌工程は、静置式レトルト殺菌装置を用いて行われることが好ましい。
【0018】
また、前記レトルト殺菌工程における前記所定温度は120℃以上であることが好ましく、また、前記所定時間は3〜30分であることが好ましい。
【0019】
上記方法において用いられる包装容器の形状としては、平袋またはスタンディングパウチであることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、高濃度レトルト流動食品の製造において生成する褐色付着物の抑制方法を提供する。本発明の褐色付着物の抑制方法は、少なくとも1kcal/mlの高濃度流動食品組成物を包装容器に封入する工程と、包装容器封入後の前記食品組成物を所定温度、所定時間で、レトルト殺菌する工程とを含んでなる高濃度レトルト流動食品の製造方法において、封入後の包装容器に発生するヘッドスペースを、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、高濃度タイプ流動食品組成物を採用した場合であっても、その製造過程においてレトルト殺菌時の褐色付着物の発生を大幅に抑制することが可能となる。これにより、高濃度レトルト流動食品の商品価値を維持し、かつ食品本来の食味・風味を損なわない、ソフトバッグ入り高濃度レトルト流動食品を提供することが可能となる。また、当該流動食品を製造できる製造方法を提供することができる。
【0022】
さらに本発明により、特に静置式レトルト殺菌装置にて高濃度レトルト流動食品を製造することが可能となり、コストアップを抑制することができるため経済効果も大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は、以下に述べる個々の形態には限定されない。なお、本明細書において用語「食品」は、食品組成物とそれを包装した商品の形態のものの双方を包含する意味で用いられ、それぞれは適宜解釈される。
【0024】
本発明の高濃度の流動食品は経口、経管的に投与されるための食品組成物に適用されるものであり、主に胃腸系疾患の患者や高齢者などに対する効率的な栄養補給を行うためのものである。特に入院患者における術前・術後の栄養管理に使用される場合が多い。こうした流動食品は、高濃度、高カロリーであることが必要であり、消化吸収も良く、蛋白質、脂質、糖質の3大栄養素とビタミン類、ミネラル類がバランスよく配合されていることが好ましい。
【0025】
本発明における流動食品組成物に用いられる蛋白質としては、これらに限定されないが、例えば、乳蛋白、肉蛋白などの動物性蛋白、大豆蛋白などの植物性蛋白、ペプチドやアミノ酸を含む先の蛋白質の酵素分解物などを、単独あるいは任意の組み合わせで用いることができる。蛋白質の流動食品組成物中に占めるエネルギー量は、全エネルギー量の10〜30%であることが好ましい。
【0026】
本発明における流動食品組成物に用いられる糖質としては、これらに限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖などの単糖類、でんぷん、デキストリンなどの多糖類やマルトース、乳糖などの2糖類を含むオリゴ糖類を、単独あるいは任意の組み合わせで用いることができる。糖質の流動食品組成物中に占めるエネルギー量は、全エネルギー量の30〜85%であることが好ましい。
【0027】
本発明における流動食品組成物に用いられる脂質としては、これらに限定されないが、例えば、大豆油、コーン油、綿実油、シソ油、ヤシ油、菜種油などの植物油、牛脂、豚脂、魚油などの動物油、合成トリグリセリドなどを、単独あるいは任意の組み合わせで用いることができる。脂質の流動食品組成物中に占めるエネルギー量は、全エネルギー量の5〜40%であることが好ましい。
【0028】
本発明における流動食品組成物には、その他の成分として、これらに限定されないが、例えば、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類などを組み合わせることができる。
【0029】
本発明における流動食品組成物は、好ましくは1kcal/ml以上であり、より好ましくは1.5kcal/ml以上である。1kcal/ml未満では、本発明の目的である効率的な栄養補給を行うことが困難となる。
【0030】
本発明における流動食品組成物の粘度は、好ましくは5〜100cPであり、より好ましくは5〜30cPである。
【0031】
レトルト殺菌に適した包装用容器に必要とされる性能としては、a)食品衛生法やFDAなどに定められている食品の安全性法規に適合していること、b)無味、無臭であること(特にシーラント剤など)、c)レトルト殺菌時の高温に対して耐熱性が十分であること、d)ヒートシールなどにより完全密封できること、e)素材強度(シール強度、突刺し、耐圧など)が十分なレベルであること、f)流通保存時における防湿性、酸素遮断性に優れていること、などが挙げられる。
【0032】
本発明の高濃度レトルト流動食品に用いられる包装容器には、一般的に知られている多層構造のレトルト包装容器を用いることができ、また、そうしたレトルト包装容器に使用されている素材であれば、任意の素材を使用することができる。また、包装容器の形状については特に限定されないが、平袋、スタンディングパウチ、成形トレイ、成形カップなどが挙げられる。静置式レトルト殺菌装置を用いた場合に、横向きに寝かされた状態で殺菌する包装容器では、ヘッドスペースが容器内で横向きに大きく広がり、充填される流動食品組成物と容器とが常時で接触しない面積が大きくなる。この状態で包装容器が横向きに寝かされてレトルト殺菌処理が行われると褐色付着物が多くなる傾向があるために、本発明は、平袋またはスタンディングパウチに適用することが好ましい。
【0033】
本発明において適用されるレトルト殺菌方法は一般的に知られている方法を用いることができる。本発明は、これには限定されないが、例えば、温度範囲としては、100℃〜140℃、より好ましくは105℃〜135℃であり、さらに好ましくは120℃〜130℃であるが、対象となる食品組成物、包装容器形状などに応じて適宜設定することができる。また、殺菌時間については、適用される温度によっても異なるが、数秒から400分程度である。例えば、120℃〜130℃で3〜30分の温度・時間条件などが一般的に用いられる範囲である。
【0034】
レトルト殺菌はレトルト殺菌用の特殊な装置によって行われ、大別するとバッチ式と連続式が挙げられる。特に本発明の解決すべき褐色付着物が顕著に生じてしまうバッチ式の中の静置式レトルト殺菌において大幅な改良効果が得られる。
【0035】
本発明においては、レトルト殺菌時にレトルト包装容器内のヘッドスペースに褐色付着物が生じることを抑制することを課題とする。ここで言う「ヘッドスペース」とは、レトルト包装容器に食品組成物を充填して密閉した時に充填した食品上部に残る空間である。一般的には、このヘッドスペースはヒートシール前後に脱気処理することで空気が残留しないように処理はなされるが、完全に無くすことができず、空間が残ってしまう。
【0036】
一般的なレトルト殺菌を施す容器のヘッドスペースには、様々な理由から窒素ガスが充填されているが、本発明においては、この空間を、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換する。これにより静置式レトルト殺菌装置を用いたレトルト殺菌においても褐色付着物の発生を効果的に抑制することができる。本発明において使用される二酸化炭素を含むガス組成物とは、二酸化炭素を少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%含んでいるガス組成物であることが必要であるが、二酸化炭素が100%であってもよい。
【0037】
また、(ヘッドスペース容量/(食品組成物量+ヘッドスペース容量))をVとした場合、二酸化炭素の水溶性を考慮すると、前記ガス組成物の置換前のVが3%〜40%であり、置換・殺菌後のVが0%〜1%であることが好ましい。ただし、置換前のVが大きすぎると、製品のpHが大きく変化し、風味や物性へ悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、置換前のVとして好ましくは3%〜30%、より好ましくは5%〜20%、さらに好ましくは5%〜15%である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
最大容量が400mlのソフトバッグレトルト殺菌用容器へ、水266mlを常法に従い充填した。この容器のヘッドスペースを、二酸化炭素ガス組成物と窒素ガス組成物とでそれぞれ置換した試料を2種作成し、それぞれ試料1、試料2とした。得られた試料について充填から約10分後に、ヘッドスペースの容量と組成を比較した。なお、充填時のヘッドスペース容量は約20mlであった。
【0040】
試料1:ヘッドスペース容量 8.0ml
試料2:ヘッドスペース容量 20.0ml
【0041】
二酸化炭素ガス組成物を用いた試料1では、ヘッドスペース容量が試料2と比べて激減した。なお、上記ヘッドスペースの二酸化炭素ガス組成物と窒素ガス組成物の組成は以下の通りであった。
【0042】
[二酸化炭素ガス組成物のガス組成]
CO2:91%、N2:7%、O2:2%
[窒素ガス組成物のガス組成]
CO2:4%、N2:96%、O2:0%
【0043】
[実施例2]
次いで、実際の高濃度の流動食品組成物を充填し、レトルト殺菌を行った。用いた流動食品組成物の組成は以下の通りである。
【0044】
[成分組成]
固形分 :34.4重量%
蛋白質 : 6.0重量%
脂質 : 4.2重量%
炭水化物:23.2重量%
灰分 : 1.0重量%
水分 :65.6重量%
【0045】
[配合組成]
MPC : 3.750重量%
Naカゼイネート : 3.179重量%
デキストリン :20.755重量%
食物繊維 : 1.634重量%
亜鉛酵母 : 0.009重量%
ミネラル酵母 : 0.074重量%
セレン酵母 : 0.002重量%
クロム酵母 : 0.002重量%
マンガン酵母 : 0.040重量%
ヨウ素酵母 : 0.005重量%
ペクチン : 0.050重量%
ショ糖 : 1.000重量%
シャンピニオンエキス : 0.050重量%
クエン酸 : 0.290重量%
水酸化カリウム : 0.215重量%
塩化ナトリウム : 0.321重量%
リン酸一カリウム : 0.052重量%
硫酸第一鉄 : 0.007重量%
炭酸マグネシウム : 0.104重量%
リン酸カルシウム : 0.060重量%
植物油脂 : 3.888重量%
レシチン : 0.225重量%
フレーバー : 2.700重量%
アスコルビン酸ナトリウム: 0.549重量%
【0046】
[実験方法]
最大容量が400mlのソフトバッグレトルト殺菌用容器へ、上記組成の流動食品組成物266ml(400kcal)を充填した。この容器のヘッドスペースを、二酸化炭素ガス組成物と窒素ガス組成物とでそれぞれ置換した試料を2種作成し、それぞれ試料3、試料4とした。得られた試料について充填から約10分後の殺菌処理前に、ヘッドスペースの容量と組成を比較した。なお、充填時のヘッドスペース容量は約35mlであった。
【0047】
[ヘッドスペース容量]
試料3:殺菌前 2.0ml(充填時の約6%)
殺菌後 1.5ml(充填時の約4%)
試料4:殺菌前 33.0ml
殺菌後 28.0ml
【0048】
二酸化炭素ガス組成物を用いた試料3では、ヘッドスペース容量が試料4と比べて激減した。なお、上記ヘッドスペースの二酸化炭素ガス組成物と窒素ガス組成物の組成は以下の通りであった。
【0049】
[二酸化炭素ガス組成物のガス組成]
CO2:85%、N2:12%、O2:3%
[窒素ガス組成物のガス組成]
CO2:4%、N2:96%、O2:0%
【0050】
ヘッドスペースの容量と組成を測定した後に、それぞれの試料を静置式レトルト殺菌装置にてレトルト殺菌処理(121℃、9分30秒)した。レトルト殺菌処理後に、試料3、試料4について、ヘッドスペース内に生成した褐色付着物量を付着面積として測定した。なお、容器半面の面積は約250cm2であった。結果を以下に示す。
【0051】
[付着面積]
試料3:0〜1cm2
試料4:約50cm2(容器半面の約20%)
【0052】
比較の試料4では、褐色付着物が多く観察されたが、本発明による試料3では、褐色付着物は無かった。実験結果から明らかなように、本発明により褐色付着物の生成を大幅に抑制できることが判った。
【0053】
一方、試料3と試料4のレトルト殺菌処理後のpHを比較した。
【0054】
[レトルト殺菌処理後のpH]
試料3:pH 6.80
試料4:pH 6.89
【0055】
これらの試料について、さらに風味を官能試験で評価したが、二酸化炭素による風味への影響は無く、従来と同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、高濃度レトルト流動食品の製造過程におけるレトルト殺菌時の褐色付着物の発生を抑制して、商品価値を維持し、かつ食品本来の食味・風味を損なわない、ソフトバッグなどの容器に封入された高濃度レトルト流動食品及びその製造方法を提供することができる。また、特に静置式レトルト殺菌装置にて高濃度タイプ流動食品を製造することができ、その経済的効果は大きい。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1kcal/mlの高濃度流動食品組成物を包装容器に封入した後にレトルト殺菌して製造される高濃度レトルト流動食品であって、そのヘッドスペースを、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換した後にレトルト殺菌処理を行うことを特徴とする高濃度レトルト流動食品。
【請求項2】
前記レトルト殺菌処理が、静置式レトルト殺菌装置を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の高濃度レトルト流動食品。
【請求項3】
前記レトルト殺菌処理が、殺菌温度120℃以上、殺菌時間3〜30分の条件で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の高濃度レトルト流動食品。
【請求項4】
前記包装容器の形状が、平袋またはスタンディングパウチであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高濃度レトルト流動食品。
【請求項5】
高濃度レトルト流動食品の製造方法であって、
少なくとも1kcal/mlの高濃度流動食品組成物を包装容器に入れる工程と、
そのヘッドスペースを、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換して封止する工程と、
包装容器封入後の前記食品組成物を所定温度、所定時間で、レトルト殺菌する工程と
を含んでなる高濃度レトルト流動食品の製造方法。
【請求項6】
前記レトルト殺菌工程が、静置式レトルト殺菌装置を用いて行われることを特徴とする請求項5に記載の高濃度レトルト流動食品の製造方法。
【請求項7】
前記レトルト殺菌工程における前記所定温度が120℃以上であり、前記所定時間が3〜30分であることを特徴とする請求項5又は6に記載の高濃度レトルト流動食品の製造方法。
【請求項8】
前記包装容器の形状が、平袋またはスタンディングパウチであることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の高濃度レトルト流動食品の製造方法。
【請求項9】
高濃度レトルト流動食品の製造において生成する褐色付着物の抑制方法であって、
少なくとも1kcal/mlの高濃度流動食品組成物を包装容器に封入する工程と、
包装容器封入後の前記食品組成物を所定温度で所定時間、レトルト殺菌する工程と
を含んでなる高濃度レトルト流動食品の製造方法において、
封入後の包装容器に発生するヘッドスペースを、二酸化炭素を少なくとも80%含んでなるガス組成物にて置換することを特徴とする褐色付着物の抑制方法。


【公開番号】特開2007−110937(P2007−110937A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304126(P2005−304126)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】