高炉炉壁の構築方法
【課題】ステーブクーラまわりの炉壁構築作業を短期間のうちにかつ容易に行うことができると共に、それ自身強固で炉内ガス漏洩などの障害を招くことがない高炉炉壁の構築技術を提供することにある。
【解決手段】ステーブクーラ相互間で生じる目地および該ステーブクーラと鉄皮との間に生じる間隙に不定形耐火材料を充填するのに先立ち、隣接する該ステーブクーラの炉内側の面に布製シールテープを貼着して前記目地を塞ぎ、その後、ステーブクーラ相互間目地と該ステーブクーラと鉄皮との間の空隙に不定形耐火材料を充填する方法。
【解決手段】ステーブクーラ相互間で生じる目地および該ステーブクーラと鉄皮との間に生じる間隙に不定形耐火材料を充填するのに先立ち、隣接する該ステーブクーラの炉内側の面に布製シールテープを貼着して前記目地を塞ぎ、その後、ステーブクーラ相互間目地と該ステーブクーラと鉄皮との間の空隙に不定形耐火材料を充填する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、高炉炉壁の構築方法に関し、とくに、鉄皮内にステーブクーラを設置して炉壁を構築する際に、該ステーブクーラまわりの間隙内に不定形耐火材料を充填して炉壁の一部にするのに有効な方法を提案する。
【背景技術】
【０００２】
従来、前記ステーブクーラ相互間に生じる目地、該ステーブクーラと鉄皮との間に形成される間隙内に、不定形耐火材料を充填して炉壁を構築する方法としては、特許文献１、２などにも開示されているが、不定形耐火材料の充填に先立ち、まず、ステーブクーラ相互間に、（ａ）シール用当板を取付ける方法、（ｂ）金網を取付ける方法、（ｃ）金属製の固定金物（シールプレート）を取付ける方法、などが知られている。
【０００３】
例えば、図１、図２は、上記（ｃ）の金属製固定金物を使ってステーブクーラ相互間の目地を処理する方法を示している。この方法は、ステーブクーラ１、２相互間の目地Ｓ１に、隣接するステーブクーラ１、２間にかけ渡すように、溶接固定した止金３…に、取付けボルト４を介して短冊状の金属製シールプレート５を配設し、その後、その目地Ｓ１内の金属プレート５まわりに不定形耐火材料（スタンプ材）を圧入して該目地Ｓ１を塞ぎ、しかる後、該ステーブクーラ１、２と鉄皮６との間に形成される間隙Ｓ２中に、不定形耐火材料（流し込み材）を流し込んで充填して炉壁の構築を行う技術である。
【特許文献１】特開平２−２６７２０５号公報
【特許文献２】特開平７−２７８６２６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
従来技術による炉壁の構築、即ち、高炉の新設や改修時に、鉄皮と炉壁耐火れんがとの間に、ステーブクーラを設置したり、不定形耐火材料の吹き付けや流し込み、圧入充填によって炉壁を構築する技術は、以下に述べるような問題点があった。
【０００５】
従来技術は、ステーブクーラ相互間に、不定形耐火材料を充填するために短冊状の金属製のシールプレート５を設置する作業があり、とくに大型の高炉ではステーブクーラ１段の施工に３日も要していた。その上、該ステーブクーラ間に配設するシールプレートまわりに不定形耐火材料を圧入充填するのにも１日を要し、さらにその耐火材料の硬化にも２日を要していた。しかも、鉄皮６とステーブクーラ１、２との間に不定形耐火材料を流し込み施工したとき、流し込み材がしばしば洩れることがあった。即ち、その問題点をさらに詳しく述べると、以下のとおりである。
ａ．金属製シールプレートの施工は溶接などを伴う煩雑な工事であり、しかもそのシールプレート部への目地塞ぎのための不定形耐火材料の施工、養生、その後、鉄皮とステーブクーラとの間に生じる間隙中への不定形耐火材料の流し込み施工までに５〜６日の工事期間を必要とする。
ｂ．目地部への不定形耐火材料の流し込み不良から、鉄皮とステーブクーラとの間の間隙に充填した流し込み材がしばしば漏洩し、流し込み施工のやり直しや漏洩した流し込み材の撤去作業等、工程進捗の障害になることが多い。
ｃ．ステーブクーラ相互間の目地への不定形耐火材料の充填層の強度が低いため、操業開始の早い時期にこの充填層が炉内原料によって損傷し、これが炉内熱風ガスの通り道となり、ステーブクーラ損耗の起点となって、ステーブクーラの寿命を短かくする。
ｄ．ステーブクーラ間の目地に配設する金属製シールプレートの施工は製缶工が行うが、その後の作業は築炉工の施工担当となるため、工事の連続性が損なわれ、施工期間の延長を招く。
ｅ．ステーブクーラ相互間の目地は、施工精度により±２０ｍｍ前後の誤差があり、目地が広い場合は前記シールプレートの幅より広くなるため、鉄皮−ステーブクーラ間の間隙に不定形耐火材料を流し込んだときにその圧力に耐えられず、流し込み材の漏洩を招く一方、目地幅が狭い場合には、逆に、その金属製シールプレートが目地内に収まらず、現地でカットする必要が生じて施工作業が増える。
【０００６】
そこで、本発明の目的は、ステーブクーラまわりの炉壁構築作業を短期間のうちにかつ容易に、そして望ましい炉壁構造にすることができると共に、それ自身強固で炉内ガス漏洩などの障害を招くことがない高炉炉壁の構築技術を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
従来技術の上記課題について検討するうちに、発明者らは、金網や金属製シールプレートを用いてステーブクーラ相互間の目地を仮に塞ぐ方法を改め、それらに代えて布製シールテープを用いることを思いついた。それは、従来の金属製シールプレートに代えて布地を用いると、上述した止金３やボルト４、さらには金属製シールプレート５を目地内に収容保持するという予備的な作業がない分だけ作業が簡易になると共に、不定形耐火材料の余分な水分を速やかに除去することができ、それ故にステーブクーラ間目地部の強固な封止を果すことができる。
【０００８】
本発明は、正に、このような知見に基づいて開発したものであって、高炉の鉄皮の内側にステーブクーラを設置すると共に、さらにその内側には耐火れんがを施工して炉壁を構築する方法において、該ステーブクーラ相互間で生じる目地および該ステーブクーラと鉄皮との間に生じる間隙に不定形耐火材料を充填するのに先立ち、隣接する該ステーブクーラの炉内側の面に布製シールテープを貼着して前記目地を塞ぎ、その後、ステーブクーラ相互間目地と該ステーブクーラと鉄皮との間の間隙に不定形耐火材料を充填することを特徴とする高炉炉壁の構築方法を要旨構成とする。
【０００９】
本発明において用いる前記布製シールテープは、吸水性が良好で柔軟な素材である天然繊維もしくは有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布を用いることが好ましい。
【００１０】
また、前記布製シールテープをステーブクーラの炉内側（耐火れんが側）の面に貼着する際、鋼−布での接着力が大きな接着剤、即ち、接着剪断強さが１００（Ｎ／ｃｍ２）以上、好ましくは４９０（Ｎ／ｃｍ２）以上の特性を示す接着剤を用いて接着固定することが好ましい。
【発明の効果】
【００１１】
以上説明した構成に係る本発明方法を採用した場合、
ａ．金属製シールプレートを用いる煩雑な設置作業や、目地耐火物の吹き付け施工を省略することができるから、迅速な施工が可能となり、施工時間の大幅な短縮が期待できる。
ｂ．施工作業のすべてを築炉作業員だけで行うことができるようになるので、作業員の配置調整が容易となり、施工期間の短縮と施工費のコストダウンが図れる。
ｃ．柔軟な素材である布製シールテープを使用するため、流し込み用不定形耐火材料の施工時に布製シールテープが膨らみ変形を起すことより、施工時の流し込み用不定形耐火材料の施工面レベルが管理可能となり、施工が容易になる。しかも、施工後、前記シールテープをはがして、流し込み用不定形耐火材料が確実に目地に充填しているかどうかを、直に確認することが可能になり、施工管理が容易であり、かつ施工壁の品質が大幅に向上する。
ｄ．水浸透性が良好で柔軟ないわゆる吸水質可撓性のソフト布製シールテープを使用することにより、このシールテープに接触する流し込み用不定形耐火材料の水分をこのシールテープがよく吸収し揮散させるので、従来、弱点であったステーブクーラ間目地の炉内面側がより緻密で低水分の強固な目地を形成することができる。即ち、ステーブクーラ損耗の起点となる目地部耐火物の強度アップを果すことができ、ステーブクーラ寿命が大幅に向上する。
ｅ．ステーブクーラ相互間の目地精度に影響されることなく、短時間で確実に流し込み用不定形耐火材料に対するシールが可能となる。
などの効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
図３は、本発明の一実施形態を例示するものであり、鉄皮２１と、この鉄皮から所定の間隔をおいて配置されるカーボンれんがなどからなる炉壁耐火れんが（図示省略）との間に、炉体冷却用ステーブクーラ２２、２３を設置したもようを示している。この図からも明らかなように、本発明は、上下・左右に隣り合うステーブクーラ２２、２３相互間で形成される目地Ｓ１部分を塞ぐために、布製シールテープ２４を利用する点に特徴がある。
【００１３】
即ち、本発明に係る構築方法では、まず、図４に示すように、鉄皮２１の内側に配設されたステーブクーラ２２、２３間の目地Ｓ１の炉内側の部分を封塞するため、前記布製シールテープ２５を該ステーブクーラ２２、２３の炉内側の面に接着剤２４を介して接着する。なお、通常の目地の間隔は、２０ｍｍ〜５０ｍｍ程度であり、この程度の間隙を塞ぐには前記布製シールテープで十分な強度が得られる。
【００１４】
本発明方法では、次に、炉内側が前記布製シールプレートにて塞がれた目地Ｓ１を含め、このステーブクーラ２２、２３と鉄皮２１との間隙Ｓ２の両方の空間に、流し込み用不定形耐火材料を一挙に流し込み施工し、または吹き付け施工などによって充填する。
なお、このステーブクーラ２２、２３の炉内側は、その後、炉壁耐火れんがを積み上げることにより完成された高炉の炉壁を構築することができる。
【００１５】
本発明において、特徴的な構成である布製シールテープとしては、柔軟なソフト素材である天然繊維もしくは有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布などを用いることが好ましい。より好ましくは、吸水性が良好で柔軟なソフト素材である有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布などを用いることが好ましい。すなわち、水浸透性の大きいシート状布を用いる。例えば、キャンバス（帆布）地やデニム地等の厚地の織物で吸水性の高いものが好適である。
【００１６】
このように、吸水性、即ち、水浸透特性の良好な布製シールテープ２５を用いると、流し込み材である不定形耐火材料２６中の水分が、この布製シールテープ２５に隣接する部分から炉内側に脱水していくので、前記目地Ｓ１中の不定形耐火材料の部分が緻密な充填耐火物となり、耐火物強度の上昇、ひいては耐火物寿命の向上に寄与する。
【００１７】
しかも、このとき、図４（ｃ）に示すように、布製シールテープ２５は、この素材の可撓製（柔軟性）に起因して、高水分含有不定形耐火材料を充填した時に、変形して炉内側に膨らむものの、該不定形耐火材料の脱水により収縮することから、この膨らみと収縮とがバランスして、所期した目地面を形成することができる。
【００１８】
なお、このような施工を担保するために、本発明では、前記布製シールテープ２５をステーブクーラ２２、２３に強固に接着する必要がある。この要求に応えられる接着剤２４としては、前記布製シールテープをステーブクーラの炉内側（耐火れんが側）に貼着する際、接着力（鋼―布）の大きな接着剤、好ましくは接着剪断強さが１００（Ｎ／ｃｍ２）程度以上、好ましく４９０（Ｎ／ｃｍ２）以上の特性を示す接着剤を用いる。例えば、ポリアミドアミンを硬化剤とするエポキシ樹脂接着剤、変成脂肪族ポリアミンや変性ポリアミド樹脂、ポリアミドアミンを硬化剤とする変性エポキシ樹脂などの可撓性エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【実施例】
【００１９】
上述した図３、図４に示す本発明に適合する方法で、ステーブクーラまわりの炉壁を構築したところ、大型高炉でのステーブクーラ１段当たりの不定形耐火材料充填施工作業期間が、従前は１週間かかっていたが、３日間で施工を終了することができた。また、ステーブクーラの寿命も一般には２０〜２５年であるが、本発明方法に従って施工したものでは、それ以上の寿命が期待できるものと推定される。
【産業上の利用可能性】
【００２０】
本発明は、高炉の炉壁構築方法であるが、前記吸水質可撓性の布製シールテープを使って目地をシールして流し込み用不定形耐火材料を充填するような他の冶金用炉の炉壁耐火物施工技術としても利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】従来のステーブクーラ設置構造を示す部分斜視図である。
【図２】従来のステーブクーラまわりの炉壁構築方法の工程を説明する略線図である。
【図３】本発明のステーブクーラ設置構造を示す部分斜視図である。
【図４】本発明のステーブクーラまわりの炉壁構築方法の工程を説明する略線図である。
【符号の説明】
【００２２】
Ｓ１ 目地
Ｓ２ 鉄皮とステーブクーラとの間の間隙
２１ 鉄皮
２２、２３ ステーブクーラ
２４ 接着剤
２５ 布製シールテープ
２６ 不定形耐火材料（流し込み材）
【技術分野】
【０００１】
本発明は、高炉炉壁の構築方法に関し、とくに、鉄皮内にステーブクーラを設置して炉壁を構築する際に、該ステーブクーラまわりの間隙内に不定形耐火材料を充填して炉壁の一部にするのに有効な方法を提案する。
【背景技術】
【０００２】
従来、前記ステーブクーラ相互間に生じる目地、該ステーブクーラと鉄皮との間に形成される間隙内に、不定形耐火材料を充填して炉壁を構築する方法としては、特許文献１、２などにも開示されているが、不定形耐火材料の充填に先立ち、まず、ステーブクーラ相互間に、（ａ）シール用当板を取付ける方法、（ｂ）金網を取付ける方法、（ｃ）金属製の固定金物（シールプレート）を取付ける方法、などが知られている。
【０００３】
例えば、図１、図２は、上記（ｃ）の金属製固定金物を使ってステーブクーラ相互間の目地を処理する方法を示している。この方法は、ステーブクーラ１、２相互間の目地Ｓ１に、隣接するステーブクーラ１、２間にかけ渡すように、溶接固定した止金３…に、取付けボルト４を介して短冊状の金属製シールプレート５を配設し、その後、その目地Ｓ１内の金属プレート５まわりに不定形耐火材料（スタンプ材）を圧入して該目地Ｓ１を塞ぎ、しかる後、該ステーブクーラ１、２と鉄皮６との間に形成される間隙Ｓ２中に、不定形耐火材料（流し込み材）を流し込んで充填して炉壁の構築を行う技術である。
【特許文献１】特開平２−２６７２０５号公報
【特許文献２】特開平７−２７８６２６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
従来技術による炉壁の構築、即ち、高炉の新設や改修時に、鉄皮と炉壁耐火れんがとの間に、ステーブクーラを設置したり、不定形耐火材料の吹き付けや流し込み、圧入充填によって炉壁を構築する技術は、以下に述べるような問題点があった。
【０００５】
従来技術は、ステーブクーラ相互間に、不定形耐火材料を充填するために短冊状の金属製のシールプレート５を設置する作業があり、とくに大型の高炉ではステーブクーラ１段の施工に３日も要していた。その上、該ステーブクーラ間に配設するシールプレートまわりに不定形耐火材料を圧入充填するのにも１日を要し、さらにその耐火材料の硬化にも２日を要していた。しかも、鉄皮６とステーブクーラ１、２との間に不定形耐火材料を流し込み施工したとき、流し込み材がしばしば洩れることがあった。即ち、その問題点をさらに詳しく述べると、以下のとおりである。
ａ．金属製シールプレートの施工は溶接などを伴う煩雑な工事であり、しかもそのシールプレート部への目地塞ぎのための不定形耐火材料の施工、養生、その後、鉄皮とステーブクーラとの間に生じる間隙中への不定形耐火材料の流し込み施工までに５〜６日の工事期間を必要とする。
ｂ．目地部への不定形耐火材料の流し込み不良から、鉄皮とステーブクーラとの間の間隙に充填した流し込み材がしばしば漏洩し、流し込み施工のやり直しや漏洩した流し込み材の撤去作業等、工程進捗の障害になることが多い。
ｃ．ステーブクーラ相互間の目地への不定形耐火材料の充填層の強度が低いため、操業開始の早い時期にこの充填層が炉内原料によって損傷し、これが炉内熱風ガスの通り道となり、ステーブクーラ損耗の起点となって、ステーブクーラの寿命を短かくする。
ｄ．ステーブクーラ間の目地に配設する金属製シールプレートの施工は製缶工が行うが、その後の作業は築炉工の施工担当となるため、工事の連続性が損なわれ、施工期間の延長を招く。
ｅ．ステーブクーラ相互間の目地は、施工精度により±２０ｍｍ前後の誤差があり、目地が広い場合は前記シールプレートの幅より広くなるため、鉄皮−ステーブクーラ間の間隙に不定形耐火材料を流し込んだときにその圧力に耐えられず、流し込み材の漏洩を招く一方、目地幅が狭い場合には、逆に、その金属製シールプレートが目地内に収まらず、現地でカットする必要が生じて施工作業が増える。
【０００６】
そこで、本発明の目的は、ステーブクーラまわりの炉壁構築作業を短期間のうちにかつ容易に、そして望ましい炉壁構造にすることができると共に、それ自身強固で炉内ガス漏洩などの障害を招くことがない高炉炉壁の構築技術を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
従来技術の上記課題について検討するうちに、発明者らは、金網や金属製シールプレートを用いてステーブクーラ相互間の目地を仮に塞ぐ方法を改め、それらに代えて布製シールテープを用いることを思いついた。それは、従来の金属製シールプレートに代えて布地を用いると、上述した止金３やボルト４、さらには金属製シールプレート５を目地内に収容保持するという予備的な作業がない分だけ作業が簡易になると共に、不定形耐火材料の余分な水分を速やかに除去することができ、それ故にステーブクーラ間目地部の強固な封止を果すことができる。
【０００８】
本発明は、正に、このような知見に基づいて開発したものであって、高炉の鉄皮の内側にステーブクーラを設置すると共に、さらにその内側には耐火れんがを施工して炉壁を構築する方法において、該ステーブクーラ相互間で生じる目地および該ステーブクーラと鉄皮との間に生じる間隙に不定形耐火材料を充填するのに先立ち、隣接する該ステーブクーラの炉内側の面に布製シールテープを貼着して前記目地を塞ぎ、その後、ステーブクーラ相互間目地と該ステーブクーラと鉄皮との間の間隙に不定形耐火材料を充填することを特徴とする高炉炉壁の構築方法を要旨構成とする。
【０００９】
本発明において用いる前記布製シールテープは、吸水性が良好で柔軟な素材である天然繊維もしくは有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布を用いることが好ましい。
【００１０】
また、前記布製シールテープをステーブクーラの炉内側（耐火れんが側）の面に貼着する際、鋼−布での接着力が大きな接着剤、即ち、接着剪断強さが１００（Ｎ／ｃｍ２）以上、好ましくは４９０（Ｎ／ｃｍ２）以上の特性を示す接着剤を用いて接着固定することが好ましい。
【発明の効果】
【００１１】
以上説明した構成に係る本発明方法を採用した場合、
ａ．金属製シールプレートを用いる煩雑な設置作業や、目地耐火物の吹き付け施工を省略することができるから、迅速な施工が可能となり、施工時間の大幅な短縮が期待できる。
ｂ．施工作業のすべてを築炉作業員だけで行うことができるようになるので、作業員の配置調整が容易となり、施工期間の短縮と施工費のコストダウンが図れる。
ｃ．柔軟な素材である布製シールテープを使用するため、流し込み用不定形耐火材料の施工時に布製シールテープが膨らみ変形を起すことより、施工時の流し込み用不定形耐火材料の施工面レベルが管理可能となり、施工が容易になる。しかも、施工後、前記シールテープをはがして、流し込み用不定形耐火材料が確実に目地に充填しているかどうかを、直に確認することが可能になり、施工管理が容易であり、かつ施工壁の品質が大幅に向上する。
ｄ．水浸透性が良好で柔軟ないわゆる吸水質可撓性のソフト布製シールテープを使用することにより、このシールテープに接触する流し込み用不定形耐火材料の水分をこのシールテープがよく吸収し揮散させるので、従来、弱点であったステーブクーラ間目地の炉内面側がより緻密で低水分の強固な目地を形成することができる。即ち、ステーブクーラ損耗の起点となる目地部耐火物の強度アップを果すことができ、ステーブクーラ寿命が大幅に向上する。
ｅ．ステーブクーラ相互間の目地精度に影響されることなく、短時間で確実に流し込み用不定形耐火材料に対するシールが可能となる。
などの効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
図３は、本発明の一実施形態を例示するものであり、鉄皮２１と、この鉄皮から所定の間隔をおいて配置されるカーボンれんがなどからなる炉壁耐火れんが（図示省略）との間に、炉体冷却用ステーブクーラ２２、２３を設置したもようを示している。この図からも明らかなように、本発明は、上下・左右に隣り合うステーブクーラ２２、２３相互間で形成される目地Ｓ１部分を塞ぐために、布製シールテープ２４を利用する点に特徴がある。
【００１３】
即ち、本発明に係る構築方法では、まず、図４に示すように、鉄皮２１の内側に配設されたステーブクーラ２２、２３間の目地Ｓ１の炉内側の部分を封塞するため、前記布製シールテープ２５を該ステーブクーラ２２、２３の炉内側の面に接着剤２４を介して接着する。なお、通常の目地の間隔は、２０ｍｍ〜５０ｍｍ程度であり、この程度の間隙を塞ぐには前記布製シールテープで十分な強度が得られる。
【００１４】
本発明方法では、次に、炉内側が前記布製シールプレートにて塞がれた目地Ｓ１を含め、このステーブクーラ２２、２３と鉄皮２１との間隙Ｓ２の両方の空間に、流し込み用不定形耐火材料を一挙に流し込み施工し、または吹き付け施工などによって充填する。
なお、このステーブクーラ２２、２３の炉内側は、その後、炉壁耐火れんがを積み上げることにより完成された高炉の炉壁を構築することができる。
【００１５】
本発明において、特徴的な構成である布製シールテープとしては、柔軟なソフト素材である天然繊維もしくは有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布などを用いることが好ましい。より好ましくは、吸水性が良好で柔軟なソフト素材である有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布などを用いることが好ましい。すなわち、水浸透性の大きいシート状布を用いる。例えば、キャンバス（帆布）地やデニム地等の厚地の織物で吸水性の高いものが好適である。
【００１６】
このように、吸水性、即ち、水浸透特性の良好な布製シールテープ２５を用いると、流し込み材である不定形耐火材料２６中の水分が、この布製シールテープ２５に隣接する部分から炉内側に脱水していくので、前記目地Ｓ１中の不定形耐火材料の部分が緻密な充填耐火物となり、耐火物強度の上昇、ひいては耐火物寿命の向上に寄与する。
【００１７】
しかも、このとき、図４（ｃ）に示すように、布製シールテープ２５は、この素材の可撓製（柔軟性）に起因して、高水分含有不定形耐火材料を充填した時に、変形して炉内側に膨らむものの、該不定形耐火材料の脱水により収縮することから、この膨らみと収縮とがバランスして、所期した目地面を形成することができる。
【００１８】
なお、このような施工を担保するために、本発明では、前記布製シールテープ２５をステーブクーラ２２、２３に強固に接着する必要がある。この要求に応えられる接着剤２４としては、前記布製シールテープをステーブクーラの炉内側（耐火れんが側）に貼着する際、接着力（鋼―布）の大きな接着剤、好ましくは接着剪断強さが１００（Ｎ／ｃｍ２）程度以上、好ましく４９０（Ｎ／ｃｍ２）以上の特性を示す接着剤を用いる。例えば、ポリアミドアミンを硬化剤とするエポキシ樹脂接着剤、変成脂肪族ポリアミンや変性ポリアミド樹脂、ポリアミドアミンを硬化剤とする変性エポキシ樹脂などの可撓性エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【実施例】
【００１９】
上述した図３、図４に示す本発明に適合する方法で、ステーブクーラまわりの炉壁を構築したところ、大型高炉でのステーブクーラ１段当たりの不定形耐火材料充填施工作業期間が、従前は１週間かかっていたが、３日間で施工を終了することができた。また、ステーブクーラの寿命も一般には２０〜２５年であるが、本発明方法に従って施工したものでは、それ以上の寿命が期待できるものと推定される。
【産業上の利用可能性】
【００２０】
本発明は、高炉の炉壁構築方法であるが、前記吸水質可撓性の布製シールテープを使って目地をシールして流し込み用不定形耐火材料を充填するような他の冶金用炉の炉壁耐火物施工技術としても利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】従来のステーブクーラ設置構造を示す部分斜視図である。
【図２】従来のステーブクーラまわりの炉壁構築方法の工程を説明する略線図である。
【図３】本発明のステーブクーラ設置構造を示す部分斜視図である。
【図４】本発明のステーブクーラまわりの炉壁構築方法の工程を説明する略線図である。
【符号の説明】
【００２２】
Ｓ１ 目地
Ｓ２ 鉄皮とステーブクーラとの間の間隙
２１ 鉄皮
２２、２３ ステーブクーラ
２４ 接着剤
２５ 布製シールテープ
２６ 不定形耐火材料（流し込み材）
【特許請求の範囲】
【請求項１】
高炉の鉄皮の内側にステーブクーラを設置すると共に、さらにその内側には耐火れんがを施工して炉壁を構築する方法において、該ステーブクーラ相互間で生じる目地および該ステーブクーラと鉄皮との間に生じる間隙に不定形耐火材料を充填するのに先立ち、隣接する該ステーブクーラの炉内側の面に布製シールテープを貼着して前記目地を塞ぎ、その後、ステーブクーラ相互間目地と該ステーブクーラと鉄皮との間の間隙に不定形耐火材料を充填することを特徴とする高炉炉壁の構築方法。
【請求項２】
前記布製シールテープは、柔軟な素材である天然繊維もしくは有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布を用いることを特徴とする請求項１に記載の高炉炉壁の構築方法。
【請求項３】
前記布製シールテープをステーブクーラの炉内側に貼着するには、接着剤を用いることを特徴とする請求項１または２に記載の高炉炉壁の構築方法。
【請求項１】
高炉の鉄皮の内側にステーブクーラを設置すると共に、さらにその内側には耐火れんがを施工して炉壁を構築する方法において、該ステーブクーラ相互間で生じる目地および該ステーブクーラと鉄皮との間に生じる間隙に不定形耐火材料を充填するのに先立ち、隣接する該ステーブクーラの炉内側の面に布製シールテープを貼着して前記目地を塞ぎ、その後、ステーブクーラ相互間目地と該ステーブクーラと鉄皮との間の間隙に不定形耐火材料を充填することを特徴とする高炉炉壁の構築方法。
【請求項２】
前記布製シールテープは、柔軟な素材である天然繊維もしくは有機繊維もしくは無機繊維を使った織物、編物、不織布を用いることを特徴とする請求項１に記載の高炉炉壁の構築方法。
【請求項３】
前記布製シールテープをステーブクーラの炉内側に貼着するには、接着剤を用いることを特徴とする請求項１または２に記載の高炉炉壁の構築方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００８−１２１０７９（Ｐ２００８−１２１０７９Ａ）
【公開日】平成２０年５月２９日（２００８．５．２９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−３０７５２２（Ｐ２００６−３０７５２２）
【出願日】平成１８年１１月１４日（２００６．１１．１４）
【出願人】（０００００１２５８）ＪＦＥスチール株式会社 (8,589)
【出願人】（０００１９９８２１）ＪＦＥ炉材株式会社 (42)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年５月２９日（２００８．５．２９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年１１月１４日（２００６．１１．１４）
【出願人】（０００００１２５８）ＪＦＥスチール株式会社 (8,589)
【出願人】（０００１９９８２１）ＪＦＥ炉材株式会社 (42)
【Ｆターム（参考）】
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