説明

高炉炉底用圧入材及びその圧入方法

【課題】圧入後に耐火物と鉄皮の間隙が膨張収縮を繰り返しても圧入材の領域に隙間が発生しづらく、次回の再圧入時に前回の圧入材が障害物とならず、発生した隙間を十分に埋めることのできる高炉炉底用圧入材及びその圧入方法を提供する。
【解決手段】高炉炉底への圧入時の粘度が5000mPa・s以下であり、圧入後の粘度が10000〜100000mPa・sであることを特徴とする高炉炉底用圧入材である。耐火骨材とバインダーとを合計で100質量部とし、これに硬化剤を含まないノボラック型樹脂を12〜30質量部配合している高炉炉底用圧入材である。耐火骨材、バインダー、ノボラック型樹脂を配合し、ノボラック型樹脂配合量を12〜18質量%とし、該ノボラック型樹脂は硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを5質量%未満含有している高炉炉底用圧入材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉炉底の耐火物と鉄皮との間に圧入する高炉炉底用圧入材及びその圧入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉炉底には1450〜1550℃の溶銑が溜まることから、高炉炉底炉壁構造は、内張りにAl23−C−SiC質れんが又はカーボンブロックを配置し、その外周にステーブクーラーを配置し冷却を強化し、耐火物の溶損を抑制している。内張り耐火物とステーブクーラーとの間は冷却ロスを低減させるためにカーボン質スタンプ材を一般的に使用している。
【0003】
高炉は火入れ後、炉内温度が上昇し、また定期修理などにより炉内温度の変動が発生し、このような温度変化によって炉底炉壁耐火物は膨張と収縮を繰り返す。また長期稼働による熱的歪みで高炉鉄皮が変形する。その結果、耐火物と鉄皮の間又は内張り耐火物とカーボンスタンプ材との間に隙間が発生することとなる。この隙間が熱伝達率を著しく低くする空気溜まりとなって断熱作用が生じ、冷却効果が低下する。
【0004】
このため、高炉炉底の耐火物と鉄皮との間の隙間部分にカーボン含有圧入材を充填することが行われている。特許文献1には、ノボラック型フェノール樹脂にヘキサメチレンテトラミンを硬化剤として使用した熱硬化性樹脂による圧入材が開示されている。また特許文献2には、水を添加せずに、フラン変性樹脂を添加した圧入材が開示されている。これら圧入材は、圧入材の保管中や圧入作業中に圧入材が熱を受けると著しく粘性が上昇して圧入作業を難しくする。圧入後硬化前に軟らかすぎると圧入材の発泡現象が起こり、組織が悪化することがある。
【0005】
特許文献3には、耐火骨材100重量部に対し、フェノール樹脂とコールタールを特定の比率で混合したバインダーを80〜120重量部添加し、施工時の粘度が10000cps以下で、硬化開始時の粘度が1000cps以上である圧入材が開示されている。これにより、圧入作業時の温度で十分な流動性を有し、また圧入後硬化前に軟らかすぎず、かつ硬化後に緻密な組織を形成させることができるとしている。同文献によるとフェノール樹脂は硬化剤を十分に含有しており、圧入後は高炉内の高温によって熱硬化する。
【0006】
【特許文献1】特公昭60−3035号公報
【特許文献2】特公平3−16398号公報
【特許文献3】特開2001−98310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に記載された従来の高炉炉底用圧入材を用いて圧入を行った後、しばらく時間が経過すると、高炉炉底の温度変動に伴って耐火物と鉄皮の間隙が膨張と収縮を繰り返し、新たな隙間が発生することになる。新たな隙間が生じると、炉底煉瓦と鉄皮との間の伝熱特性が悪化し、鉄皮又はステーブクーラーからの冷却を効率的に継続することができなくなり、高炉寿命に悪影響を及ぼす。そのため、7日間程度の間隔をおいて定期的に圧入を繰り返すこととなる。従来の圧入材を用いた場合、再圧入時に前回の圧入材がかえって障害物となり、発生した隙間を十分に埋めることができないという問題が生じる。
【0008】
本発明は、圧入後に耐火物と鉄皮の間隙が膨張収縮を繰り返しても圧入材の領域に隙間が発生しづらく、次回の再圧入時に前回の圧入材が障害物とならず、発生した隙間を十分に埋めることのできる高炉炉底用圧入材及びその圧入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)高炉炉底への圧入時の粘度が5000mPa・s以下であり、圧入後の粘度が10000〜100000mPa・sであることを特徴とする高炉炉底用圧入材。
(2)圧入材配合後24時間経過時に70℃での粘度が5000mPa・s以下であり、24時間経過時から7日経過時まで110〜200℃で保持した後の粘度が10000〜100000mPa・sであることを特徴とする高炉炉底用圧入材。
(3)耐火骨材、バインダー、硬化剤を含まないノボラック型樹脂を配合し、硬化剤を含まないノボラック型樹脂配合量を12〜30質量%としていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高炉炉底用圧入材。
(4)耐火骨材、バインダー、ノボラック型樹脂を配合し、ノボラック型樹脂配合量を12〜18質量%とし、該ノボラック型樹脂は、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを5質量%未満含有していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高炉炉底用圧入材。
(5)耐火骨材として炭素、黒鉛、炭化珪素の1又は2以上を用い、バインダーとしてコールタール、ピッチの一方又は両方を用い、耐火骨材/バインダー比率を質量比で40/50〜35/30とすることを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の高炉炉底用圧入材。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の高炉炉底用圧入材を用い、高炉炉底への圧入時に前記高炉炉底用圧入材の温度を50〜90℃として圧入することを特徴とする高炉炉底用圧入材の圧入方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高炉炉底用圧入材は、圧入後の粘度が100000mPa・s以下に保持されるので、炉内においてゼリー状の状態に保たれており、内張り耐火物の膨張・収縮変化に対しても追従可能で隙間が発生しにくい。さらに7日程度の期間経過後に新たに圧入材を圧入する際に前回の圧入材が障害物となることがなく、発生した隙間を容易に埋めることができる。また、圧入後の粘度が10000mPa・s以上に保持されるので、次回の圧入時に前回の圧入材が流出することもない。また圧入時の粘度が5000mPa・s以下なので、通常の圧入機で容易に高炉炉底に圧入することができ、また小さな隙間にも充填が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の高炉炉底用圧入材は、耐火骨材、バインダー、樹脂それに必要に応じて樹脂用の硬化剤を含んでいる。耐火骨材としては、充填箇所の材質に合わせて炭素、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、炭化珪素、コークス、仮焼無煙炭、ピッチ粉、カーボンレンガ屑、電極屑、焼結アルミナ、電融アルミナ、仮焼アルミナ、ロー石、シャモット、陶石、粘土、カオリン、ベントナイト、ムライト、ボーキサイト、バン土頁岩あるいはそれらの混合物を用いることができる。バインダーとしてはコールタールやピッチあるいはそれらの混合物を用いることができる。本発明で用いる樹脂は、必要に応じて硬化剤を含んでおり、高炉炉底用圧入材を圧入する際及び圧入後の粘度を調整する役割を果たす。
【0012】
本発明の高炉炉底用圧入材は、高炉炉底への圧入時の粘度が5000mPa・s以下であることを第1の特徴とする。これにより、圧入時に圧入ポンプに過大な負荷がかかることがなくなるとともに、圧入材の耐火骨材の粒径の1.5倍程度の隙間であっても圧入することが可能となる。圧入時の粘度が5000mPa・sを超えて大きくなると、圧入時に圧入ポンプに過大な負荷がかかり、また圧入材を圧入することのできる隙間の広さが圧入材耐火骨材粒径の2倍を超えることとなり、好ましくない。圧入時の圧力を高くすれば圧入材の粘度が高くても圧入を行うことができるが、内張りカーボンブロックに圧力がかかるので、5MPa以上の圧力がかかるとブロックを押し出す問題が発生する。
【0013】
圧入材を配合した後、時間の経過と共に材質が経時変化する可能性があるため、通常は配合してから24時間以内に圧入を実施する。また、圧入時の粘度を5000mPa・s以下に確保するため、圧入材を70℃程度まで加熱して圧入を行う。従って、本発明においては、圧入材配合後24時間経過時に70℃での粘度が5000mPa・s以下とすることによって本発明の第1の特徴を具備することが可能となる。
【0014】
本発明の高炉炉底用圧入材は、圧入後の粘度が10000〜100000mPa・sであることを第2の特徴とする。圧入後の粘度が低すぎると、圧入から7日程度経過して次回の圧入材を圧入するに際し、前回の圧入材が軟らかすぎて流出することになるが、圧入後の粘度が10000mPa・s以上であれば、次回圧入時に流出することなく、好適に圧入作業を行うことができる。高炉炉底用圧入材を圧入した後においても、圧入材を圧入した空間は、高炉炉底温度の変動に伴って拡張・収縮を繰り返す。圧入後の圧入材の粘度が高すぎると、空間の拡張・収縮に伴って空隙が生じることとなり好ましくない。圧入後の圧入材の粘度が100000mPa・s以下であれば、圧入材はゼリー状の材質を保持し続け、空間の拡張・収縮に対応することができるので、空間に空隙が生じることがない。そのため、炉底煉瓦と鉄皮との間の伝熱特性を良好に維持し、鉄皮又はステーブラーラーからの冷却を効率的に継続することで高炉寿命を安定な状態で延長することができる。また、次回圧入時に充填済みの圧入材の粘度が高すぎると、次回圧入材を圧入しても前回圧入材が変形することができず、形成された空隙を十分に埋めることができない。圧入後の圧入材の粘度が100000mPa・s以下であれば、次回圧入材を圧入するにともなって前回圧入材を変形させながら、空隙への圧入が可能となる。
【0015】
圧入材は、材料配合後24時間以内程度に圧入を実施し、次回圧入は7日程度の間隔を置いて実施される。また、圧入材を圧入する高炉炉底の温度は110〜200℃程度の範囲で変動する。従って、24時間経過時から7日経過時まで110〜200℃で保持した後の粘度が10000〜100000mPa・sであれば、上記本発明の圧入材の第2の特徴を具備することが可能となる。
【0016】
本発明において、圧入材の圧入時の粘度及び圧入後の粘度は、圧入材に添加する樹脂によって調整する。
【0017】
圧入材の圧入時の粘度は、樹脂を添加することによって高くなるが、樹脂の添加量を多くすることによって低下し、本発明の範囲である5000mPa・s以下とすることが可能となる。例えば、圧入材中に耐火骨材として人造黒鉛を40質量%配合し、残り60質量%にバインダーと樹脂とを配合する場合において、バインダーにコールタールを用い、樹脂を添加しないと24時間経過70℃での粘度が850mPa・sと低い値であるが、樹脂として硬化剤を含まないノボラック型樹脂を用い、圧入材中における樹脂配合量を10質量%とした場合には配合24時間経過後に70℃で6000mPa・sと本発明範囲を超えている。さらに樹脂配合量を12質量%とすると同じ条件で粘度が3700mPa・sとなり、本発明範囲を具備する。樹脂配合量を増やすほど圧入時の粘度は低下する。
【0018】
圧入材の圧入後の粘度も、樹脂及び硬化剤によって調整する。耐火骨材とバインダーの銘柄及び配合比率を上記と同様にしたとき、樹脂を添加しないと、110〜200℃で7日経過後の粘度が2000mPa・s程度でしかなく、軟らかすぎ、本発明の範囲を外れる。圧入材中に硬化剤を含まないノボラック型樹脂を10〜30質量%配合した場合については、110〜200℃で7日経過後の粘度が本発明範囲(10000〜100000mPa・s)に入る。ノボラック型樹脂が硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを5質量%未満含有する場合には、7日経過後の粘度は硬化剤を含有しない場合よりも高くなり、硬化剤を含有したノボラック型樹脂を圧入材中に12〜18質量%配合したときに本発明範囲(10000〜100000mPa・s)に入る。
【0019】
従来、耐火骨材とバインダーにさらに硬化剤含有樹脂を添加するに際しては、樹脂に占める硬化剤の比率を9%以上としていた。そのため、圧入後7日経過後の圧入材の粘度が高くなり過ぎていた。本発明においては、樹脂を用いることでは従来と同様であるが、樹脂に含有する硬化剤の含有量を低減し、あるいは硬化剤を用いないことによって、従来に比較してより好適な高炉炉底への圧入を実施することが可能となったのである。
【0020】
本発明の高炉炉底用圧入材に使用する耐火骨材としては、補修箇所の母材に材質を合わせて炭素、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、炭化珪素、コークス、仮焼無煙炭、ピッチ粉、カーボンレンガ屑、電極屑、焼結アルミナ、電融アルミナ、仮焼アルミナ、ロー石、シャモット、陶石、粘土、カオリン、ベントナイト、ムライト、ボーキサイト、バン土頁岩の群より選択し、必要に応じて1種又は2種以上を併用できる。
【0021】
これらの耐火骨材の粒径は特に限定されるものではないが、最大粒子径が圧入する空間間隔の1/2以下とすることが望まれる。また流動性の面からは0.15mmを超えないようにすることが好ましい。圧入する空間の間隔が0.3mmを超える場合については、耐火物と高炉鉄皮間に存在する空気により断熱効果が生じ、鉄皮温度の上昇が激しくなるため、早急に補修をすることが必要となる。この場合、耐火骨材の粒子径は、空間間隔の広さに合わせてその1/2以下であればよいが、不明確な間隔状態を考慮して、最大粒子径を0.15mm以下の骨材を使用することにより圧入空間の充填性を高めて、補修効果を上げることができる。
【0022】
なお、耐火骨材の粒度構成は、最大粒子径の近傍を粗粒とし、以下細かくなるにつれて、中粒、微粒とに区別し、これらの比率を30:40:30あるいは20:40:40といった一般的な粒度分布に調整することで、圧入施工時の流動性を確保することができる。この粒度分布が狭いと圧入施工時に骨材と液状バインダー等が分離しやすくなり、圧入不能に陥りやすくなる。
【0023】
バインダーとしてコールタール、ピッチの一方又は両方を用いることができる。無水タール、あるいはピッチをクレオソート油、アントラセン油、軽油、吸収油等の溶剤で溶解したカットバックタールも使用できる。これらバインダー単体では、圧入後に炉底温度域(110〜200℃)で粘度が低下する。本発明においてはノボラック型樹脂と併用し、ノボラック型樹脂は炉底温度域で粘度が上昇するので、バインダーとノボラック型樹脂の相乗作用で良好な性状を得ることができる。
【0024】
耐火骨材/バインダー比率を質量比で40/50〜35/30とすると好ましい。耐火骨材/バインダー比率を40/50未満にすると粘度が低下し耐火骨材の分離が起こり圧入ができない。また、35/30を超えるとバインダーの機能がなくなり保形性がなくなり崩壊する。
【0025】
本発明で使用するノボラック型樹脂として、具体的にはノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型レゾール樹脂から選択して用いることができる。また硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いることができる。樹脂としてノボラック型樹脂に代え、フラン樹脂を用いても良い。
【0026】
本発明の高炉炉底用圧入材を圧入する方法において、高炉炉底への圧入時に前記高炉炉底用圧入材の温度を50〜90℃として圧入すると好ましい。コールタールは一般的に70〜85℃で軟化し、95℃を超えると揮発が起こるため、加熱は90℃までとする。また、施工時の温度が50℃未満になると粘性が増加し圧入作業が困難になる。圧入材成分の揮発による粘性変化を避けるため90℃以下が好ましい。高炉への圧入機械としては、グラウトポンプ、モルタルポンプ等の圧入機が使用可能である。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
圧入材中に耐火骨材として人造黒鉛を40質量%配合し、残部にバインダーと樹脂を配合した。バインダーとしてコールタールを使用した。人造黒鉛の粒度は0.3mmとした。樹脂としてノボラック型樹脂を用い、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いた。圧入材中の耐火骨材、バインダー、ノボラック型樹脂の配合量(質量%)、及びノボラック型樹脂中のヘキサメチレンテトラミン含有量(質量%)を表1に示す。
【0028】
圧入時の粘度については、圧入材をコンクリートミキサーにより30分間混練し、24時間放置し、その後φ50×100mmの金型中に注入した上で70℃に保持した乾燥炉中に挿入し、材料温度が70℃に達した後に粘度測定を行った。粘度測定は、B型粘度計でJIS K 6381に準じて行った。
【0029】
圧入後の粘度については、同じく圧入材を卓上型ミキサーにより10分間混練し、φ100×100mmの金型中に注入した上で70℃に保持した乾燥炉にて24時間保持し、その後乾燥炉を110℃及び200℃に上昇保持し、配合から7日間経過するまで乾燥炉中に保持した。その後乾燥炉から取り出し、5分以内で圧入時の粘度測定と同様の方法で粘度測定を行った。
【0030】
結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
ノボラック型樹脂を全く配合しないNo.1は110℃、200℃で保持した7日後の粘度(圧入後の粘度)が低すぎ、ノボラック型樹脂を10質量%配合したNo.2は24時間経過後の70℃での粘度(圧入時の粘度)が高すぎ、いずれも本発明範囲から外れていた。ただし、No.2の材料についても、圧入時の温度を90℃とすれば粘度が4500mPa・sと本発明範囲内に入り、良好に圧入を行うことができた。
【0033】
硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを配合していないNo.3〜5は、ノボラック型樹脂配合量12〜30質量%のいずれも、圧入時の粘度、圧入後の粘度ともに良好な粘度を有していた。
【0034】
ノボラック型樹脂中に硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを1.5質量%含有したNo.6〜7については、ノボラック型樹脂配合量12〜18質量%において、圧入時の粘度、圧入後の粘度ともに良好な粘度を有していた。一方、ノボラック型樹脂配合量が30質量%のNo.8については、圧入後の粘度のうち、200℃で7日間経過後の粘度が本発明範囲を上限に超えていた。
【0035】
(実施例2)
次に、樹脂の種類をノボラック型樹脂から粉末レゾール樹脂に変更し、同様の試験を行った。硬化剤は添加していない。圧入材への配合量については、バインダー配合量を60質量%一定とし、残部を耐火骨材及び樹脂とした。試験条件及び試験結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
樹脂配合量が2〜8質量%のいずれも、温度を110℃に保持した7日経過後の粘度(圧入後の粘度)が本発明の下限に達せず、本発明範囲外であった。
【0038】
(実施例3)
上記実施例1、実施例2で採用した配合条件の圧入材を用い、高炉炉底への圧入を実施した。各成分組成に配合した圧入材を70℃に加熱して、高炉羽口から圧入を行った。表1のNo.2については、圧入時の温度を90℃とし、圧入時の粘度を4500mPa・sに調整した。圧入機としてグラウトポンプを用いた。
【0039】
表1のNo.1〜8、表2のNo.9〜12のいずれも、圧入時の粘度が5000mPa・s以下であることから、グラウトポンプを用いて高炉羽口から高炉炉底の隙間に容易に圧入を行うことができた。また、隙間空間の間隙が0.5mm程度の狭い隙間にも十分に圧入材を行き渡らせることができた。ただしNo.1については、圧入時の粘度が850mPa・sと低く、1000mPa・s未満となったため、圧入時に圧入材が軟らかすぎ、圧入材の発泡現象が起こって圧入後の組織が悪化した。
【0040】
圧入後7日間が経過した後、次回の圧入を行った。表1のNo.2〜7の水準については、圧入後もゼリー状の柔らかさを維持し、7日経過後も新たな空隙の発生はわずかであり、炉底煉瓦と鉄皮との間の伝熱特性を良好に保持していた。また7日経過後に次回の圧入材を圧入したときに前回圧入材が容易に変形して空隙を埋めることができた。表1のNo.1、表2のNo.9〜12の材料については、圧入後の粘度が10000mPa・s未満と低すぎたため、次回圧入時に前回圧入材が羽口部から流出する問題が発生した。またNo.8の材料については7日経過後の圧入材が硬くなり過ぎ、7日間の経過中に新たな空隙が発生しており、また次回圧入材圧入時に前回圧入材が十分に変形せず、空隙を十分に埋めることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉炉底への圧入時の粘度が5000mPa・s以下であり、圧入後の粘度が10000〜100000mPa・sであることを特徴とする高炉炉底用圧入材。
【請求項2】
圧入材配合後24時間経過時に70℃での粘度が5000mPa・s以下であり、24時間経過時から7日経過時まで110〜200℃で保持した後の粘度が10000〜100000mPa・sであることを特徴とする高炉炉底用圧入材。
【請求項3】
耐火骨材、バインダー、硬化剤を含まないノボラック型樹脂を配合し、硬化剤を含まないノボラック型樹脂配合量を12〜30質量%としていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉炉底用圧入材。
【請求項4】
耐火骨材、バインダー、ノボラック型樹脂を配合し、ノボラック型樹脂配合量を12〜18質量%とし、該ノボラック型樹脂は、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを5質量%未満含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉炉底用圧入材。
【請求項5】
耐火骨材として炭素、黒鉛、炭化珪素の1又は2以上を用い、バインダーとしてコールタール、ピッチの一方又は両方を用い、耐火骨材/バインダー比率を質量比で40/50〜35/30とすることを特徴とする請求項3又は4に記載の高炉炉底用圧入材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の高炉炉底用圧入材を用い、高炉炉底への圧入時に前記高炉炉底用圧入材の温度を50〜90℃として圧入することを特徴とする高炉炉底用圧入材の圧入方法。

【公開番号】特開2008−202130(P2008−202130A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42352(P2007−42352)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】