説明

高熱伝導性複合体およびその製造方法

【課題】マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる高熱伝導性複合体であって、フィラーの含有量が少ない場合であっても、所望の熱伝導率を示す高熱伝導性複合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】高熱伝導性複合体は、表面にマトリックス樹脂と親和しない表面改質剤を付着させた高熱伝導性フィラーと、マトリックス樹脂原料と、の混合物を硬化させてなる。その結果、フィラーは、マトリックス樹脂中で網目構造を形成する。このとき、マトリックス樹脂と表面改質剤とのSP値の差の絶対値を0.5以上とするとよい。
あるいは、高熱伝導性複合体は、マトリックス樹脂原料および高熱伝導性フィラーの混合物を、その粘度を15Pa・s以上に保って攪拌してから、その混合物を硬化させてなる。その結果、フィラーは、マトリックス樹脂中で網目構造を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れた樹脂/フィラー複合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野、電気電子分野などで用いられる樹脂製品は、製品の小型化・高性能化により、発熱に対して何らかの放熱対策が必要となってきている。たとえば、電子デバイスの小型化、実装の高密度化、動作の高速化などに伴って配線基板の単位体積当たりのデバイス発熱量は上昇傾向にある。電子デバイスの温度上昇はその特性や寿命等を低下させ、ひいては電子機器自体の信頼性に影響を与える。特にパワー回路におけるその傾向は一段と強く、パワー回路の信頼性を向上させるには発熱デバイスの熱をいかに放熱するかが重要な課題である。
【0003】
このため、配線基板に使用される樹脂材料には、高い放熱性が必要とされる。樹脂材料としては、マトリックスとなる樹脂中に熱伝導率の高いフィラー、たとえば、粒子状の金属、合金あるいはセラミックスを分散させた樹脂/フィラー複合体が用いられるのが一般的である。
【0004】
とたえば、特許文献1では、熱可塑性樹脂中に金属繊維あるいは溶融してからネットワーク状に接合される低融点合金粉を分散させた樹脂組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、樹脂と低融点合金とフィラーとを含む混合粉を常温で成形し、次いで、低融点合金が完全溶融する温度でその成形体を加熱しフィラー同士を低融点合金で溶着することにより、成形体の熱伝導率を高めている。
【特許文献1】特開2004−135495
【特許文献2】特開平6−196884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、熱伝導率が高く微細な無機粒子や金属粒子をフィラーとしてマトリックス樹脂中に分散させることで、全体として高い熱伝導率を示す樹脂/フィラー複合体が得られる。しかしながら、粒子状のフィラーを樹脂に添加すると、フィラーは樹脂中で均一に分散して、粒子間に熱伝導性が低い樹脂マトリックスが介在する構造となりやすい。そのため、粒子相互は不連続に分散した状態にあり、所望の熱伝導性が得られないことがある。特許文献1に記載のように、繊維状のフィラー(金属繊維)を用いても、単にフィラーを樹脂中に分散させるだけでは、フィラーが不連続になりやすい。そこで、複合体の熱伝導性向上のために、フィラーの含有量を増加させると、樹脂の含有率が低下するため、複合体の柔軟性、耐衝撃性、成形性、加工性などが低下するという問題がある。
【0007】
また、特許文献1および特許文献2では、フィラーに比べ熱伝導率の小さい低融点合金を含有するため、複合体の熱伝導率を大きく増加させるのが困難である。さらに、特許文献2では、フィラー同士を溶着するために、低融点合金の含有率を大きくする必要がある。ところが、低融点合金の含有率を増加させても、樹脂の含有率が低下して複合体の機械的特性などが低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記問題点に鑑み、マトリックス樹脂と、マトリックス樹脂中に分散された高熱伝導性フィラーからなり、フィラーの含有量が少ない場合であっても、所望の熱伝導率を示す高熱伝導性複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高熱伝導性複合体は、マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる高熱伝導性複合体であって、
前記高熱伝導性フィラー同士が直接接触して、該高熱伝導性フィラーが該マトリックス樹脂中で網目構造を形成していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の高熱伝導性複合体の製造方法は、マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる高熱伝導性複合体の製造方法であって、
前記高熱伝導性フィラーの表面に前記マトリックス樹脂との溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.5以上である表面改質剤を付着させるフィラー表面改質工程と、
表面が改質された前記高熱伝導性フィラーおよびマトリックス樹脂原料の混合物を調製する混合物調製工程と、
前記混合物を成形する成形工程と、
からなることを特徴とする。
【0011】
本発明の高熱伝導性複合体の他の製造方法は、マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる高熱伝導性複合体の製造方法であって、
前記高熱伝導性フィラーおよびマトリックス樹脂原料の混合物を調製する混合物調製工程と、
前記混合物調製工程で得られた混合物を、該混合物の粘度を15Pa・s以上に保って攪拌する撹拌工程と、
撹拌後の前記混合物を成形する成形工程と、
からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高熱伝導性複合体は、マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなり、高熱伝導性フィラー同士が直接的に接触して、高熱伝導性フィラーがマトリックス樹脂中で網目構造を形成している。なお、高熱伝導性フィラーが形成する網目構造は、高熱伝導性フィラー同士の直接的な接触によりマトリックス樹脂中に形成された三次元ネットワークであり、熱を伝達するパスとなる。すなわち、マトリックス樹脂中で高熱伝導性フィラーが網目構造を形成することが、本発明の高熱伝導性複合体の熱伝導性の向上に繋がる。
【0013】
本発明の高熱伝導性複合体の製造方法において、高熱伝導性フィラーは、その表面にマトリックス樹脂との溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.5以上である表面改質剤を付着させてから、マトリックス樹脂原料と混合される。マトリックス樹脂と親和しにくい表面改質剤が付着した高熱伝導性フィラーは、マトリックス樹脂中で均一に分散しにくい。その結果、高熱伝導性フィラーは、マトリックス樹脂中で網目構造を形成する。
【0014】
あるいは、本発明の高熱伝導性複合体の製造方法において、マトリックス樹脂および前記高熱伝導性フィラーの混合物は、その粘度を15Pa・s以上に保って攪拌される。混合物は高い粘度を保った状態で攪拌されるため、混合物は通常よりも緩やかに剪断され、高熱伝導性フィラーはマトリックス樹脂中で網目構造を形成しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の高熱伝導性複合体およびその製造方法を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
本発明の高熱伝導性複合体は、マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる。
【0017】
マトリックス樹脂は、高熱伝導性複合体の用途に応じて適宜選択すればよいが、熱硬化性樹脂が望ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ系の樹脂を用いるのがよい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ等が挙げられる。また、アクリル樹脂(熱可塑性樹脂)を用いてもよい。アクリル樹脂の具体例としては、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらの樹脂材料を単独または2種以上を混合して用いるとよい。
【0018】
高熱伝導性フィラーは、高い熱伝導性をもち、形状に異方性をもつものであれば特に限定はない。すなわち、アスペクト比(長辺/短辺)が1を超える形状、好ましくは10以上の形状をもつ高熱伝導性フィラー(以下「フィラー」と略記)であれば使用可能である。具体的な形状としては、繊維状、鱗片状またはウィスカーであるのが好ましい。これらの形状のフィラーを単独で使用または2種以上を併用するとよい。
【0019】
さらに、形状に異方性をもつフィラーに加え、アスペクト比がほぼ1である粒子状のフィラーを用いてもよい。形状に異方性をもつフィラーと粒子状のフィラーとをともに用いることで、網目構造を形成するフィラー同士の接点が補強され、熱を伝達するパスとしての効果が向上する。
【0020】
また、フィラーは、熱伝導率が10W/m・K以上さらには10〜2000W/m・K、100〜2000W/m・Kであるのが好ましい。特に、電子デバイスの放熱部材として高熱伝導性複合体を用いる場合には絶縁性が必要であるため、熱伝導性と絶縁性とをあわせもつ高絶縁性高熱伝導性フィラーを用いるとよい。具体的には、電気抵抗率が1×10Ω・cm以上さらには1×10〜1×1015Ω・cmであるのが好ましい。このような特性をもつ材料として、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。これらのうち特に好ましいのは、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)または炭化珪素(SiC)である。なお、粒子状のフィラーとともに用いる場合には、形状に異方性をもつフィラーと粒子状のフィラーとが、同じ材料からなるフィラーであっても異なる材料からなるフィラーであっても、いずれであってもよい。
【0021】
フィラーの使用量に特に限定はないが、高熱伝導性複合体全体を100重量%としたとき、フィラーを5〜40重量%さらには15〜30重量%含むとよい。フィラーの含有量が5重量%未満ではフィラーが網目構造を形成しにくいため、熱伝導性が発現しにくい。フィラーの含有量が多い程、熱伝導性は向上するが、40重量%を超えると樹脂の含有率が低下するため、柔軟性、耐衝撃性、成形性、加工性などが低下する。なお、後述のように、本発明の高熱伝導性複合体は、フィラーの含有量が通常よりも少量であっても所望の熱伝導性が得られるため、フィラーの含有量を15重量%以下さらには10重量%以下に抑えてもよい。
【0022】
上記の形状に異方性をもつフィラーに加えて、さらに、粒子状のフィラーも用いる場合には、高熱伝導性複合体全体を100重量%としたときに粒子状のフィラーを10重量%以下含むとよい。特に、5〜10重量%とすれば、本発明の高熱伝導性複合体の熱伝導性がさらに向上する。
【0023】
ところで、通常、マトリックス樹脂原料とフィラーとからなる混合物を調製する場合には、互いに親和性の高いマトリックス樹脂とフィラーとを使用したり、親和性が向上するようにフィラーに表面処理を施したりするのが一般的である。また、マトリックス樹脂中でのフィラーの分散性を高めるため、調製後、十分に攪拌を行うのが一般的である。しかし、本発明においては、マトリックス樹脂とフィラーとの混合物を調製する前に、フィラーの表面にマトリックス樹脂と親和しない表面改質剤を付着させる。あるいは、マトリックス樹脂およびフィラーの混合物の粘度を従来よりも高く保って攪拌する。その結果、フィラーは、マトリックス樹脂中で網目構造を形成する。以下に、それぞれの高熱伝導性複合体について説明する。
【0024】
本発明の高熱伝導性複合体は、マトリックス樹脂との溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.5以上である表面改質剤を表面に付着させた高熱伝導性フィラーとマトリックス樹脂原料との混合物を成形してなるのが好ましい。すなわち、本発明の高熱伝導性複合体は、高熱伝導性フィラーの表面にマトリックス樹脂とのSP値の差の絶対値が0.5以上である表面改質剤を付着させるフィラー表面改質工程と、表面が改質された高熱伝導性フィラーおよびマトリックス樹脂原料の混合物を調製する混合物調製工程と、混合物を成形する成形工程と、を経て製造される。
【0025】
フィラー表面改質工程で用いる表面改質剤は、マトリックス樹脂との親和性が低くマトリックス樹脂と相溶しないものであれば特に限定はない。マトリックス樹脂と親和性が低い表面改質剤を用いてフィラーの表面を改質することで、フィラーは混合物中で均一に分散せず、マトリックス樹脂中で網目構造を形成する。また、形状に異方性をもつフィラーを用いれば、フィラーの長手方向の両端を接点とした網目構造が形成されやすい。そのため、フィラーの含有量が通常よりも少量であっても、所望の熱伝導性を有する高熱伝導性複合体が得られる。
【0026】
なお、親和性の強さを判断する因子として、溶解度パラメータ(SP値)を用いる。SP値(単位は(cal/cm1/2)は、分子間結合力を示す凝集エネルギー密度(CED)から求められる。すなわち、1モル体積の液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根から計算される。マトリックス樹脂と表面改質剤とのSP値の差の絶対値が0.5以上さらには1以上であるのが望ましい。SP値の差の絶対値が0.5未満であると、マトリックス樹脂中でフィラーが均一に分散されるため、網目構造を形成しにくくなる。一方、4を超えると、フィラー同士の凝集が顕著となり、網目構造が形成されにくくなる。したがって、マトリックス樹脂と表面改質剤とのSP値の差の絶対値は、4以下さらには3以下が望ましい。
【0027】
また、液状で使用できる表面改質剤であれば、フィラー表面改質工程において、フィラーを充填した容器に表面改質剤を注入するだけでフィラー表面に表面改質剤を付着させられる。さらに、フィラーと表面改質剤とを接触させた状態で加熱するなどして、表面改質剤をフィラー表面に吸着させてもよい。なお、表面改質剤は、少なくとも混合物調製工程にてフィラーがマトリックス樹脂と混合されるまで、フィラーの表面に付着したままの状態である必要がある。そのため、表面改質剤としては、揮発性の低い液体を選択するとよい。さらに、表面改質剤は、マトリックス樹脂との反応性が低いものが望ましい。すなわち、望ましい表面改質剤は、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、n−ブタノール等であり、これらのうち使用するマトリックス樹脂との親和性が低い1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。具体的には、マトリックス樹脂がアクリル系(SP値:9〜10)であれば、表面改質剤としてアセトニトリル(SP値:11.9)、PGME(SP値:10.6)およびPGMEA(SP値:8.7)のうちのいずれか1以上を用いるのが望ましい。
【0028】
表面改質剤は、フィラーの表面に付着、望ましくはフィラーの表面全体に付着すればよいため、その使用量は用いるフィラーの種類および量に応じて適宜選択すればよい。表面改質剤の使用量をあえて規定するのであれば、用いるフィラー(粒状のフィラーを併用する場合はその量も含む)を100重量%としたときに、2重量%以上用いるのが望ましく、さらに望ましくは3〜5重量%である。
【0029】
混合物調製工程では、表面が改質されたフィラーおよびマトリックス樹脂原料の混合物を調製する。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂であれば、低分子の単量体からなり適当な粘性をもつ液体をマトリックス樹脂原料とし、マトリックス樹脂原料および表面が改質されたフィラー、必要に応じて硬化剤などを添加する。フィラーは、混合物中に均一に分散されず、網目構造を自ずと形成する。なお、混合物調製工程では、ロール、ニーダ等の混練機を用いるのが望ましい。
【0030】
また、本発明の高熱伝導性複合体は、マトリックス樹脂原料および高熱伝導性フィラーの混合物を、その粘度を15Pa・s以上に保って攪拌してから混合物を成形してなる。すなわち、本発明の高熱伝導性複合体は、高熱伝導性フィラーおよびマトリックス樹脂原料の混合物を調製する混合物調製工程と、混合物調製工程で得られた混合物を、該混合物の粘度を15Pa・s以上に保って攪拌する撹拌工程と、撹拌後の混合物を成形する成形工程と、を経て製造される。
【0031】
撹拌工程において、フィラーおよびマトリックス樹脂の混合物の粘度を15Pa・s以上、望ましくは20Pa・s以上に保って攪拌すると、混合物の粘度が高い状態で攪拌されるため、混合物には緩やかな剪断しか生じない。通常よりも緩やかに剪断されて攪拌されると、フィラーは混合物に均一に分散されず、フィラーの表面に表面改質剤が付着していない場合であっても網目構造の形成が促進される。また、前述のように、形状に異方性をもつフィラーを用いれば、フィラーの長手方向の両端を接点とした網目構造が形成されやすい。そのため、フィラーの含有量が通常よりも少量であっても、所望の熱伝導性を有する高熱伝導性複合体が得られる。なお、混合物の粘度の上限を規定するのであれば、60Pa・s以下さらには40Pa・s以下が望ましい。粘度が60Pa・sを超えると、フィラーの凝集が起こりやすく網目構造が形成されなくなるため望ましくない。
【0032】
攪拌工程における混合物の粘度は、攪拌時の剪断速度に依存する。そのため、混合物を攪拌する際の剪断速度を1〜50/sさらには3〜30/sとするとよい。混合物の粘度や攪拌時の剪断速度を制御するためには、混合物の温度および攪拌の回転数を適宜選択する必要がある。具体的には、混合物の温度が50℃であれば、攪拌時の回転数を10〜100rpmさらには30〜80rpmとするとよい。また、混合物は、0.01〜1時間さらには0.1〜0.5時間攪拌されるのが望ましい。攪拌時間が長くなる程フィラーが混合物中で均一に分散しやすくなるため、攪拌時間が1時間を超えると、フィラーによる網目構造が形成されにくくなる。
【0033】
また、望ましいフィラーの使用量は既に述べた通りであるが、混合物の粘度が高い状態で攪拌を行う場合には、高熱伝導性複合体全体を100重量%としたとき、フィラーを6〜40重量%さらには8〜20重量%含むとよい。フィラーの含有量が6重量%未満では高粘度を保って混合物を攪拌しても網目構造の形成を促進させる効果は小さいため、熱伝導性が発現しにくい。
【0034】
また、混合物の温度を30〜70℃さらには45〜55℃にして行うのが望ましい。30℃未満では、混合物の粘度が高すぎて網目構造が形成されにくいため望ましくない。一方、70℃を超えると、混合物の粘度が低下して流動しやすくなり、網目構造の形成を促進させる効果は小さくなる。
【0035】
なお、撹拌工程を行う場合には、混合物調製工程に先立ち、フィラーの表面にあらかじめ表面改質剤を付着させてもよい(フィラー表面改質工程)。このとき、望ましいマトリックス樹脂と表面改質剤とのSP値の差の絶対値は既に述べた通りであるが、後の攪拌工程にて混合物の粘度を15Pa・s以上に保って攪拌を行う場合には、SP値の差を3以下さらには2以下とするのが望ましい。SP値の差の絶対値が3を超えると、高粘度で攪拌を行っても網目構造の形成を促進させる効果は小さく、攪拌条件によっては攪拌を行う前の状態から網目構造が崩れることがあるため、望ましくない。
【0036】
成形工程は、混合物を所望の形状に成形する工程である。マトリックス樹脂の種類に応じて、混合物を冷却固化したり、混合物に熱などのエネルギーを付与することで反応させて混合物を硬化させたりして、混合物を所望の形状に固定すればよい。なお、硬化条件は、使用するマトリックス樹脂に応じて適宜選択すればよい。本発明の高熱伝導性複合体は、基材に塗布後、乾燥・硬化させて成膜したり、フィルム状や板状などに成形したりして、電子機器に使用される放熱シート、プリント基板用マトリックス樹脂、ソルダーレジスト樹脂などに適用可能である。
【0037】
以上説明した本発明の高熱伝導性複合体およびその製造方法において、望ましい網目構造とは、ネットワークサイズにして10μm以上、20μm以上さらには30μm以上である。なお、ネットワークサイズとは、高熱伝導性複合体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて200μm×300μm程度の視野で観察した場合に、判別可能な各ネットの対角線の最大長さを実測した平均値である。
【0038】
以上、本発明の高熱伝導性複合体およびその製造方法の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の高熱伝導性複合体およびその製造方法の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0040】
[実施例1]
マトリックス樹脂の原料としてメチルアクリレート(株式会社スリーボンド製「スリーボンド3057J」、SP値:9.3)、フィラーとして炭化珪素(SiC)ウィスカー(東海カーボン株式会社製「トーカウィスカー」平均直径0.3〜1.4μm、繊維長5〜30μm)、フィラーの表面処理剤としてアセトニトリル(SP値:11.9)を用い、以下の手順で、基材の表面に高熱伝導性複合体膜を形成した。
【0041】
<フィラー表面改質工程>
SiCウィスカーを20g準備し、透明バイアル瓶に充填した。次に、透明バイアル瓶にアセトニトリルを、SiCウィスカー100重量%に対して3重量%となるように注入した。得られたSiCウィスカーとアセトニトリルの混合物を超音波ホモジナイザーで解砕・混合処理し、その後60℃に加熱してSiCウィスカーの表面にアセトニトリルを吸着させ固定化した。
【0042】
<混合物調製工程>
表面が改質されたフィラー10gとメチルアクリレート90gとの混合物を調製した。高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量は、10重量%であった。3本ロールによる混練を3パス行った。
【0043】
<成形工程>
得られた混合物をガラス基板(30mm×30mm)の表面に塗布し、塗布面にUV照射した後、130℃で1時間加熱した。こうして、基板の表面に厚さ200μmの高熱伝導性複合体からなる被膜をもつ試料#01が得られた。
【0044】
[実施例2]
表面処理剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、SP値:10.6)を用いた他は、実施例1と同様にして試料#02を得た。以下に、フィラー表面改質工程を説明する。
【0045】
SiCウィスカーを20g準備し、透明バイアル瓶に充填した。次に、透明バイアル瓶にPGMEを、SiCウィスカー100重量%に対して3重量%となるように注入した。得られたSiCウィスカーとPGMEの混合物を超音波ホモジナイザーで解砕・混合処理し、その後70℃に加熱してSiCウィスカーの表面にPGMEを吸着させ固定化した。
【0046】
[実施例3]
表面処理剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、SP値:8.7)を用いた他は、実施例1と同様にして試料#03を得た。以下に、フィラー表面改質工程を説明する。
【0047】
SiCウィスカーを20g準備し、透明バイアル瓶に充填した。次に、透明バイアル瓶にPGMEを、SiCウィスカー100重量%に対して3重量%となるように注入した。得られたSiCウィスカーとPGMEAの混合物を超音波ホモジナイザーで解砕・混合処理し、その後70℃に加熱してSiCウィスカーの表面にPGMEAを吸着させ固定化した。
【0048】
[比較例1]
表面改質剤を用いない、すなわち、表面改質工程を行わない他は、実施例1と同様にして試料#C1を得た。
【0049】
[評価]
[網目構造の観察]
試料#01〜#03および#C1の被膜の断面観察を行った。断面観察は、走査型電子顕微鏡(SEM)により行った。得られたSEM像を図1〜図4に示す。
【0050】
フィラー表面改質工程を行った試料#01〜#03ではフィラーが形成する網目構造が観察されたが、試料#C1(図4)では見られなかった。
【0051】
また、得られたSEM像より、ネットワークサイズを算出した。ネットワークサイズの算出は、図1〜図3に示すSEM像において判別可能な各ネットの対角線の長さを実測して平均値を求めた。ネットワークサイズの最大値、最小値および平均値を、図5に示す。なお、図5において横軸(SP値の差)は、マトリックス樹脂と表面処理剤とのSP値の差の絶対値である。
【0052】
ネットワークサイズの平均値は、#01で48μm、#02で26μm、#03で18μmであった。すなわち、マトリックス樹脂とフィラーとのSP値の差の絶対値が大きい程、大きいネットワークサイズをもつ網目構造が形成されやすいことがわかった。
【0053】
[熱伝導率の測定]
試料#01〜#03および#C1の熱伝導率を測定した。測定には、株式会社アイフェイズ社製の熱拡散率測定装置(Mobile 1u)を用い、基板および被膜の厚さ方向の上下面の温度差を測定して行った。熱伝導率の測定結果を図6に示す。
【0054】
ネットワークサイズが大きい、すなわち、マトリックス樹脂とフィラーとのSP値の差の絶対値が大きい程、熱伝導率が高くなる傾向にあった。
【0055】
[実施例4]
マトリックス樹脂の原料として上記と同じメチルアクリレート(株式会社スリーボンド製「スリーボンド3057J」)、フィラーとして上記と同じSiCウィスカー(東海カーボン株式会社製「トーカウィスカー」)、フィラーの表面処理剤としてPGMEを用い、以下の手順で基材の表面に高熱伝導性複合体膜を形成した。
【0056】
<フィラー表面改質工程>
SiCウィスカーを20g準備し、透明バイアル瓶に充填した。次に、透明バイアル瓶にPGMEを、SiCウィスカー100重量%に対して3重量%となるように注入した。得られたSiCウィスカーとPGMEの混合物を超音波ホモジナイザーで解砕・混合処理し、その後70℃に加熱してSiCウィスカーの表面にPGMEを吸着させ固定化した。
【0057】
<混合物調製工程>
表面が改質されたフィラー6gとメチルアクリレート194gとの混合物を調製した。高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量は、3重量%であった。3本ロールによる混練を3パス行った。
【0058】
<攪拌工程>
得られた混合物を50℃に加熱した。混合物を50℃に保った状態で、攪拌装置を用いて混合物を攪拌した。なお、攪拌装置には、一般的な攪拌装置を用い、攪拌子の回転数を63rpmとし、剪断速度10[1/s]で所定の時間攪拌して高熱伝導性複合体を得た。このときの混合物の粘度は、15Pa・sであった。なお、攪拌時間を表1に示す。
【0059】
<成形工程>
得られた混合物をガラス基板(30mm×50mm)の表面に塗布し、塗布面にUV照射した後、130℃で1時間加熱した。こうして、基板の表面に厚さ200μmの高熱伝導性複合体からなる被膜をもつ3種類の試料#04−1〜3を得た。
【0060】
[実施例5]
高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量を5重量%とした他は、実施例4と同様にして試料#05−1〜3を得た。なお、攪拌工程における混合物の粘度は、14Pa・sであった。
【0061】
[実施例6]
高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量を7重量%とした他は、実施例4と同様にして試料#06−1および#06−2を得た。なお、攪拌工程における混合物の粘度は、17Pa・sであった。
【0062】
[実施例7]
高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量を10重量%とした他は、実施例4と同様にして試料#07−1〜4を得た。なお、攪拌工程における混合物の粘度は、19Pa・sであった。
【0063】
[実施例8]
高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量を15重量%とした他は、実施例4と同様にして試料#08−1〜4を得た。なお、攪拌工程における混合物の粘度は、27Pa・sであった。
【0064】
[実施例9]
高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量を20重量%とした他は、実施例4と同様にして試料#09−1〜4を得た。なお、攪拌工程における混合物の粘度は、40Pa・sであった。
【0065】
[実施例10]
高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量を27重量%とした他は、実施例4と同様にして試料#10−1〜3を得た。なお、攪拌工程における混合物の粘度は、60Pa・sであった。
【0066】
[実施例11]
表面改質剤としてアセトニトリルを用いた他は、実施例7と同様にして試料#11−1〜4を得た。なお、攪拌工程における混合物の粘度は、19Pa・sであった。
【0067】
【表1】

【0068】
表1において、#01と#11−1、#02と#07−1は同じ試料である。
【0069】
なお、参考のため、フィラー含有量が異なる樹脂組成物について、剪断速度を0〜100[1/s]まで変化させたときの粘度を図7に示す。フィラー含有量は、それぞれ、0(フィラー無し)、5重量%、7重量%、10重量%、25重量%、30重量%とした。粘度の測定には、英弘精機株式会社製の粘弾性測定装置(RheoStress6000)を用いた。フィラー含有量が多いほど、樹脂組成物の粘度は高くなった。また、剪断速度が速くなるほど、樹脂組成物の粘度は低下した。
【0070】
また、各試料の熱伝導率を、上記と同様の方法により測定した。結果を図8および図9に示す。
【0071】
実施例4〜11において、攪拌時間が0時間(攪拌を行わない)場合には、表面改質工程を経たフィラーがマトリックス樹脂中で網目構造を形成した。特に、フィラー含有量が10重量%以上である場合には、高い熱伝導率を示した。一方、フィラー含有量が20重量%を超えると、熱伝導率に大きな差はないと推測される。
【0072】
実施例4および実施例5では、攪拌工程における混合物の粘度が15Pa・s以下であったため、攪拌を行っても熱伝導率に大きな変化は生じなかった。また、17Pa・sで混合物を攪拌した実施例6では、0.1時間の攪拌により、攪拌しない場合よりも熱伝導率が向上したと推測できる。同様に、実施例7〜10においても、攪拌時間を適切に選択することで、攪拌しない場合よりも熱伝導率が向上した。
【0073】
なお、実施例11は、表面改質剤としてアセトニトリルを用いた。攪拌を行わない場合(#11−1)には、フィラーにより大きいネットワークサイズをもつ網目構造が形成された(図1)。しかし、実施例7と同様の条件で攪拌を行っても、熱伝導率の向上は見られなかった。つまり、マトリックス樹脂とフィラーとのSP値の差が大きい場合には、高粘度で攪拌を行っても、網目構造の形成は促進されなかった。
【0074】
[実施例12]
マトリックス樹脂の原料として上記と同じメチルアクリレート、フィラーとして上記と同じSiCウィスカー、フィラーの表面処理剤としてジメチルホルムアミド(DMF、SP値:12.1)を用い、以下の手順で基材の表面に高熱伝導性複合体膜を形成した。
【0075】
<フィラー表面改質工程>
SiCウィスカーを20g準備し、透明バイアル瓶に充填した。次に、透明バイアル瓶にDMFを、SiCウィスカー100重量%に対して3重量%となるように注入した。得られたSiCウィスカーとDMFの混合物を超音波ホモジナイザーで解砕・混合処理し、その後70℃に加熱してSiCウィスカーの表面にDMFを吸着させ固定化した。
【0076】
<混合物調製工程>
表面が改質されたフィラーとメチルアクリレートとの混合物を調製した。高熱伝導性複合体を100重量%としたときのフィラーの含有量を5〜40重量%まで5重量%ずつ変化させて、8種類の混合物を調製した。3本ロールによる混練を3パス行った。
【0077】
<攪拌工程>
得られた混合物を50℃に加熱した。混合物を50℃に保った状態で、攪拌装置を用いて混合物を攪拌した。なお、攪拌装置には、一般的な攪拌装置を用い、攪拌子の回転数を63rpmとし、剪断速度10[1/s]で0.1時間攪拌して高熱伝導性複合体を得た。
【0078】
<成形工程>
得られた混合物をガラス基板(30mm×50mm)の表面に塗布し、塗布面にUV照射した後、130℃で1時間加熱した。こうして、基板の表面に厚さ200μmの高熱伝導性複合体からなる被膜をもつ8種類の試料を得た。
【0079】
[実施例13]
攪拌工程を行わない他は、実施例12と同様にして8種類の試料を得た。
【0080】
[比較例2]
フィラーの含有量を0重量%とした他は、実施例13と同様にして試料を作製した。
【0081】
実施例12、13および比較例2の各試料の熱伝導率を、上記と同様の方法により測定した。測定結果を、攪拌工程を行わずに作製した試料の結果とともに、図10に示す。なお、図10において、◇は実施例12、○は実施例13および比較例2の各試料の熱伝導率を示す。また、各試料の熱伝導率とともに、攪拌工程を行うことによる熱伝導率の向上率を◆で示す。
【0082】
攪拌工程の有無にかかわらず、フィラー含有量が多くなると熱伝導率は大きくなった。また、フィラーの含有量が10重量%以上で、攪拌により網目構造の形成が促進されて熱伝導率が大きく向上することがわかった。その一方で、フィラーの含有量が多いほど、フィラーが凝集しやすくなるため、網目構造が形成されにくくなるが、40重量%以下さらには35重量%未満であれば、熱伝導率は攪拌により大きく向上した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】試料#01(実施例1)の高熱伝導性複合体からなる被膜の断面観察結果を示す図面代用写真である。
【図2】試料#02(実施例2)の高熱伝導性複合体からなる被膜の断面観察結果を示す図面代用写真である。
【図3】試料#03(実施例3)の高熱伝導性複合体からなる被膜の断面観察結果を示す図面代用写真である。
【図4】試料#C1(比較例1)の樹脂膜の断面観察結果を示す図面代用写真である。
【図5】試料#01〜#03について、マトリックス樹脂と表面処理剤とのSP値の差の絶対値に対するネットワークサイズを示すグラフである。
【図6】試料#01〜#03について、ネットワークサイズに対する熱伝導率を示すグラフである。
【図7】フィラー含有量が異なる混合物について、剪断速度を0〜100[1/s]まで変化させたときの粘度を示すグラフである。
【図8】攪拌時間に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。
【図9】攪拌時間に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。
【図10】フィラー含有量に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる高熱伝導性複合体であって、
前記高熱伝導性フィラー同士が直接接触して、該高熱伝導性フィラーが該マトリックス樹脂中で網目構造を形成していることを特徴とする高熱伝導性複合体。
【請求項2】
全体を100重量%としたとき、前記高熱伝導性フィラーを5〜40重量%含む請求項1記載の高熱伝導性複合体。
【請求項3】
前記マトリックス樹脂との溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.5以上である表面改質剤を表面に付着させた前記高熱伝導性フィラーとマトリックス樹脂原料との混合物を成形してなる請求項1または2記載の高熱伝導性複合体。
【請求項4】
前記マトリックス樹脂と前記表面改質剤との溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.5以上4以下である請求項3記載の高熱伝導性複合体。
【請求項5】
前記マトリックス樹脂はアクリル系であり、前記表面改質剤はアセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のうちのいずれか1以上である請求項3記載の高熱伝導性複合体。
【請求項6】
マトリックス樹脂原料および前記高熱伝導性フィラーの混合物を、その粘度を15Pa・s以上に保って攪拌してから該混合物を成形してなる請求項1または2記載の高熱伝導性複合体。
【請求項7】
攪拌中の前記混合物の粘度は20Pa・s以上60Pa・s以下である請求項6記載の高熱伝導性複合体。
【請求項8】
前記混合物は、1〜50/sの剪断速度で攪拌される請求項6記載の高熱伝導性複合体。
【請求項9】
前記マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂である請求項1記載の高熱伝導性複合体。
【請求項10】
前記マトリックス樹脂は、アクリル系またはエポキシ系である請求項1記載の高熱伝導性複合体。
【請求項11】
前記高熱伝導性フィラーの形状は、繊維状、鱗片状またはウィスカーである請求項1記載の高熱伝導性複合体。
【請求項12】
前記高熱伝導性フィラーは、熱伝導率が10〜2000W/m・Kかつ電気抵抗率が1×10〜1×1015Ω・cmである高絶縁性高熱伝導性フィラーである請求項1記載の高熱伝導性複合体。
【請求項13】
前記熱伝導性フィラーは、炭化珪素(SiC)ウィスカーである請求項12記載の高熱伝導性複合体。
【請求項14】
マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる高熱伝導性複合体の製造方法であって、
前記高熱伝導性フィラーの表面に前記マトリックス樹脂との溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.5以上である表面改質剤を付着させるフィラー表面改質工程と、
表面が改質された前記高熱伝導性フィラーおよびマトリックス樹脂原料の混合物を調製する混合物調製工程と、
前記混合物を成形する成形工程と、
からなることを特徴とする高熱伝導性複合体の製造方法。
【請求項15】
前記マトリックス樹脂と前記表面改質剤との溶解度パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.5以上4以下である請求項14記載の高熱伝導性複合体の製造方法。
【請求項16】
マトリックスを構成するマトリックス樹脂と、形状に異方性をもつ高熱伝導性フィラーと、からなる高熱伝導性複合体の製造方法であって、
前記高熱伝導性フィラーおよびマトリックス樹脂原料の混合物を調製する混合物調製工程と、
前記混合物調製工程で得られた混合物を、該混合物の粘度を15Pa・s以上に保って攪拌する撹拌工程と、
撹拌後の前記混合物を成形する成形工程と、
からなることを特徴とする高熱伝導性複合体の製造方法。
【請求項17】
前記混合物調製工程は、前記高熱伝導性複合体を100重量%としたとき、前記高熱伝導性フィラーを6〜40重量%となるように混合物を調製する工程である請求項16記載の高熱伝導性複合体の製造方法。
【請求項18】
攪拌中の前記混合物の粘度は20Pa・s以上60Pa・s以下である請求項16記載の高熱伝導性複合体の製造方法。
【請求項19】
前記撹拌工程は、前記混合物を1〜50/sの剪断速度で攪拌する工程である請求項16記載の高熱伝導性複合体の製造方法。
【請求項20】
前記撹拌工程は、前記混合物を0.01〜1時間攪拌する工程である請求項16記載の高熱伝導性複合体の製造方法。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれかに記載の方法により得られる高熱伝導性複合体。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−13580(P2010−13580A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175986(P2008−175986)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(399090569)株式会社ティーアイビーシー (11)
【Fターム(参考)】