説明

高立体規則性ポリブチレンポリマー及びその高活性な調製方法

ここに開示したのは、触媒及び不活性ガス存在下で、反応性モノマー(単量体)、1-ブテン(溶媒としての使用の如何に関わらず)を重合する工程を含む高立体特異性(アイソタクティック)ポリブチレンポリマーの調製方法である。本発明によれば、高立体規則性ポリブチレンポリマーの他のいかなる調製方法と比較してもはるかに高い活性で高立体規則性ポリブチレンポリマーを調製することが可能である。本発明に係る高立体規則性ポリブチレンポリマーは、1-ブテンのホモポリマー、またはα-オレフィン及び最大で40重量%までのコモノマーを含有するコポリマーであって、ここで、触媒残基内のチタンがppmレベルで検出されず、13C−NMRによって決定された立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)が96以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が3〜6である、そして分子量分布(Mw/Mn)が8以上に制御できることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高立体規則性ポリブチレンポリマー及びその高活性な調製方法に関するものであって、より具体的には、高立体規則性ポリブチレンポリマーと、その調製方法が、1-ブテンの従来の重合プロセスには用いられておらず、触媒残基内のチタンがppmレベルで検出されず、しかも不活性ガスを用いて行われることを特徴とする高活性な調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、立体特異性ポリブチレンは、モノマー(単量体)としての1-ブテンの半結晶高分子であり、高分子量を有するポリオレフィンであり、また、ポリエチレンまたはポリプロピレンと同様の一般物性を有する。
【0003】
立体特異性ポリブチレンは、高曲げ耐性、他のポリマーとの適合性、レオロジー特性、結晶挙動などの特性を持つ。 また、その密度はポリプロピレン及び低密度ポリプロピレンと同様であり、その融点は高密度ポリエチレンと同様である。
【0004】
また、立体特異性ポリブチレンは優れた安定性を有し、高温度でさえも長期耐久性を発揮する。
【0005】
その上、立体特異性ポリブチレンには、ポリオレフィンが使用されている押出成形、射出成形、ブロー成形などのプロセスでの従来機に容易に使用することができるため、当該プロセスに容易に使用できるという利点もある。
【0006】
かかる立体特異性ポリブチレンの使用可能温度範囲は約-20〜105℃であるので、立体特異性ポリブチレンは、給湯管または給水管、ソフト梱包の開口部、ポリプロピレンフィルム、繊維柔軟材またはホットメルト接着剤等の機能促進剤など、種々の工業製品に適用することができる。
【0007】
立体特異性ポリブチレンは、炭化水素が溶媒として使用される調製方法、または1-ブテン自体が溶媒として使用される調製方法によって得ることができるが、現在、商業的に立体特異性ポリブチレンを得るには、調製後の分離問題などのために、後者の調製方法が用いられている。
【0008】
一般に、立体特異性ポリブチレンは、塩化ジエチルアルミニウム及び三塩化チタンなどの有機アルミニウム化合物をベースとする主触媒の存在下で1-ブテンを重合することによって得ることができる。
【0009】
この調製方法によって製造されるポリブチレンにおいては、十分な立体特異性が確保できないので、非立体特異性ポリブチレンが除去される必要がある。
【0010】
また、この調製方法には、その低活性のため、該ポリマー物性を低下させる触媒残基を除去する工程が必要とされる。
【0011】
立体特異性ポリブチレンは、内部電子供与体及び塩化マグネシウム坦持チタンからなる触媒系の存在下で1-ブテンを重合することによって得ることができる。
【0012】
しかし、この調製方法は、高活性な従来のポリエチレンまたはポリプロピレン調製方法と比較して触媒活性が高くなく、したがって、この調製方法には、チタン成分がppm(重量)レベルでポリマー中に依然として残存するという問題点がある。
【0013】
EP187,034A2では、立体特異性ポリブチレンの従来の調製方法が開示されている。
【0014】
この調製方法では、粒子状の高立体特異性ポリブチレンを調製するように、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン及びシクロペンタンなどの低炭化水素を溶媒として、チーグラー・ナッタ触媒、有機アルミニウム化合物、外部電子供与体(ルイス塩基)及び1-ブテンが、20〜45℃にてその重合プロセスにおいて使用される。この調製方法の意図は、製造されたポリブチレンから使用溶媒を除去しなければならないという従来の調製方法の欠点を解消することである。
【0015】
この調製方法には、80以上の製造されたポリブチレンの非常に高い立体特異性のために、非立体特異性ポリブテン-1を除去する工程が必要とされず、そして製造されたポリブチレンの溶媒からの分離が容易であるという利点がある。
【0016】
しかし、この調製方法における触媒活性が低い(2,360g/g‐触媒(4時間)、すなわち、590g/g‐触媒(1時間))ので、ポリマー物性を低下する触媒残基を除去する工程が必要とされる。また、この調製方法の触媒効率も、商用アプリケーションに効率的に適用できないほどに低い。
【0017】
米国特許6,306,996B1では、立体特異性ポリブチレンの別の従来調製方法が開示されている。
【0018】
この調製方法では、ポリブチレンは、塩化マグネシウム坦持主触媒の存在下での1-ブテンの2段階重合によって得ることができるものであって、ここで該重合においては、1-ブテン自体が溶媒及びモノマー(単量体)として使用され、 トリブチルアルミニウム(TIBA)が使用され、そしてジイソプロピルジメトキシ・シラン(DIPMS)が外部電子供与体として使用されることを特徴とする。
【0019】
この調製方法によれば、満足できる特質、たとえば、高立体特異性、50以下の触媒残基量(チタンppm)、6以上の分子量分布(Mw/Mn)を有するポリブチレンを得ることができる。また、この調製方法は、14,000g/g‐触媒(4時間)、すなわち3,500g/g‐触媒(1時間)のポリブチレン・ホモポリマーに基づく触媒活性を示す。
【0020】
しかし、この調製方法の触媒活性も、ポリエチレンまたはポリプロピレンの高活性な調製方法と比較してはるかに低いため反応時間が長く、その生産性は低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は上記の問題点を解決することを意図してなされたものであり、本発明の目的は、高立体規則性ポリブチレンポリマーの高活性な調製方法であって、該ポリブチレンポリマーが高立体特異性を持ち、チタンがppm(重量)レベルで検出されず、そしてポリエチレンまたはポリプロピレンの高活性な調製方法と同様の高活性で1-ブテンを重合することが可能であることを特徴とする調製方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、本発明の方法によって調製された、高立体特異性を持ち、また、従来方法によって調製されたポリブチレンと比較してチタンがppm(重量)レベルで検出されないような、高立体規則性ポリブチレンポリマーを提供することである。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の高立体規則性ポリブチレンポリマーの高活性な調製方法は、触媒及び不活性ガス存在下で、反応性モノマー(単量体)、1-ブテン(溶媒としての使用の如何に関わらず)を重合する工程(S1)を含むことを特徴とする。
【0024】
該工程(S1)は、不活性ガスを用いて重合反応器内の圧力を所与の反応温度で反応物の気液平衡圧力よりも高い圧力に増加させることを特徴とする。
【0025】
該工程(S1)は、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなるグループから選択される1つまたは複数の不活性ガスを用いることを特徴とする。
【0026】
該工程(S1)は、10℃〜110℃の反応温度を有することを特徴とする。
【0027】
該工程(S1)は、20℃〜90℃の反応温度を有することを特徴とする。
【0028】
本発明の方法によって調製された高立体規則性ポリブチレンポリマーは、1-ブテンのホモポリマー、またはα-オレフィン及び最大で40重量%までのコモノマーを含有するコポリマーであり、そして、1)触媒残基中チタンがppm(重量)レベルで検出されないこと、2)13C−NMRによって決定される立体特異性(アイソタクチック指数、mmmm%)が96以上であること、3)分子量分布(Mw/Mn)が3〜6であるという特質を持つことを特徴とする。
【0029】
本発明に係る高立体規則性ポリブチレンポリマーの調製方法は以下の通りである。高立体規則性ポリブチレンポリマーの従来の調製方法では使用されていない不活性ガスが本発明の重合に使用されるため、不活性ガスを使用する一般的な反応とは反対に、高立体規則性ポリブチレンポリマーを、ポリエチレンまたはポリプロピレンの高活性な調製方法と同様の高い触媒収率で得ることができる。
【0030】
該重合プロセスに関連して、以下の説明では主に回分反応器を用いる製法に重点が置かれているが、本発明の製法は該反応器を用いることに限定されるものではなく、本発明の製法が、回分反応器だけではなく、CSTR、管型反応装置または他の反応器などのあらゆる種類の反応器を用いて実行され得ることは明らかなことである。
【0031】
第1工程は、溶媒および/または反応モノマー(単量体)として使用される1-ブテンを反応器に導入する工程であり、この工程では、導入した共触媒(g)及び外部電子供与体(h)を用いて前処理を実行する。
【0032】
ここでは、該反応器を真空化によってパージして不活性ガス流を繰り返し導入した後、1-ブテン、共触媒(g)及び外部電子供与体(h)を該反応器に導入し、次いで混合する一方、該前処理を実行する。
【0033】
該共触媒(g)が以下の第2工程におけるチーグラー・ナッタ触媒などの主触媒(i)と接触する間に、1-ブテンを重合化する。また、該外部電子供与体(h)を導入して、立体特異性を最大化させる。
【0034】
この第1工程では、該反応器内の抗触媒、たとえば、湿気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、アセチレンなどが重合前に除去される必要がある。該除去は、真空パージ、不活性ガス(j)パージまたはその組み合わせによって実行することができる。
【0035】
次の第2工程では、主触媒(i)及び不活性ガス(j)を該反応器に導入し、次いで攪拌することで重合温度まで温度を上昇させることによって重合を実行する。ここでは、同時に分子量制御剤を加える。
【0036】
第2工程は、重合触媒であるチーグラー・ナッタ触媒などの主触媒を該反応系に導入し、分子量制御剤を加え、不活性ガス(j)を用いることによって圧力をかけ、次いで、攪拌によって重合温度までに上昇させた温度で重合を実行する。
【0037】
ここで、該重合温度は、10〜110℃、好ましくは20〜90℃とする。
【0038】
該反応器の圧力は、約1〜1000バール、好ましくは1〜60バールとする。
【0039】
重合時間に関連して、回分重合の平均在留時間は約10分〜20時間、好ましくは約30分〜4時間、及びは、また、CSTRを用いる重合の平均在留時間は約10分〜20時間、好ましくは約30分〜4時間である。
【0040】
高重合活性は、上記の反応温度、反応圧力及び該反応時間で得ることができる。
【0041】
ポリマー分子量を制御するには、水素を分子量制御剤として使用することができる。 また、ポリマー分子量は反応温度を調節することによっても制御することができる。
【0042】
この第2工程では、気液平衡圧力よりも高い圧力で、所与の反応温度にて、上記の一定圧力を維持するように、該反応系における一切の反応に関与しない該不活性ガス(j)を導入した状態で、重合反応を実行することによって重合活性が大幅に高くなる。
【0043】
この工程では、好適なガス圧をかけないと、重合活性は相対的に低くなり、ポリブチレンの調製における触媒活性も相対的に低くなる。
【0044】
この工程では、必要があれば、1〜20の炭素原子を有する少量のエチレンまたはプロピレンなどのα-オレフィンをコモノマーとして導入することができる。
【0045】
次に、第3工程では、製造されたポリブチレンを、安定剤及び添加物(k)が導入される重合反応器内または別の容器内で攪拌する。
【0046】
この工程では、ポリブチレンが産業上の利用分野に使用される場合、減圧後のポリブチレンを移動する過程でポリブティレンに適用される熱に起因するポリブチレンの劣化を軽減するために抗酸化剤などを加えることができる。
【0047】
反応器後の工程に関連しては、バルク溶液プロセスの、概念的にポリブチレンと同様の低密度ポリエチレン(LDPE)の場合、マスターバッチ(MB)を同時に加えることによって、安定剤及び添加物を抽出器に導入する(最終工程)ことが一般的である。しかし、安定剤及び添加物(k)が上記のように本発明の第3工程で導入されるときには、該安定剤及び該添加物(k)をポリブチレンとより均一に混合することができる。また、該安定剤及び該添加物(k)を炭化水素中に溶解できる場合、またはたとえ炭化水素中に溶解できなくとも、それらの粒子サイズがナノメートル範囲に入る場合、該安定剤及び該添加物(k)を分子レベルで混合することができる。
【0048】
第3工程では、該重合反応器が回分反応器であるとき、該安定剤及び該添加物(k)を別個の反応器なしに直接的に導入することができ、該重合反応器が連続攪拌槽型反応器(CSTR)であるときには、均一混合を、該安定剤及び該添加物(k)を別個の攪拌機または混和器が装備されている装置に導入することによって実行することができる。
【0049】
次に、第4工程では、圧力を下げた後、未反応のモノマー(単量体)を除去し、ポリブチレンを固形状に作る。
【0050】
この工程では、圧力を十分に下げると、該ポリブチレンが固形状で得られる。
【0051】
以下、本発明に係るポリブチレンの調製過程で使用されるそれぞれの成分を詳細に説明する。
【0052】
主触媒(i)としては、三塩化チタン触媒、ソルベータイプの三塩化チタン触媒、四塩化チタン触媒、またはシリカ坦持チタン触媒を使用することができる。また、チーグラー・ナッタ触媒及びメタロセンなどのシングルサイト系触媒を使用することができ、または遷移金属触媒を使用することもできる。
【0053】
高い触媒活性を得るには、メタロセン触媒、シリカ坦持チタン触媒、またはマグネシウム坦持重合触媒をはじめとするマグネシウム坦持チタン触媒を使用することが望ましい。
【0054】
該メタロセン触媒には、三塩化ペンタメチル・シクロペンタジエニル・ジルコニウム、二塩化ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、三塩化インデニル・ジルコニウム、二塩化ビス(インデニル)ジルコニウム、二塩化ジメチルシリレン-ビス(インデニル)ジルコニウム、二塩化(ジメチルシリレン)(ジメチルシリレン)-ビス(インデニル)ジルコニウム、二塩化(ジメチルシリレン)-ビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウム、二塩化(ジメチルシリレン)-ビス(ベンゾインデニル)ジルコニウム、二塩化エチレン-ビス(インデニル)ジルコニウム、二塩化(エチレン)(エチレン)-ビス(インデニル)ジルコニウム、二塩化(エチレン)(エチレン)-ビス(3-メチルインデニル)ジルコニウム、二塩化(エチレン)(エチレン)-ビス(4,7-ジメチルインデニル)ジルコニウム、二塩化(tert-ブチルイミド(tert-butylimide))(テトラメチル715-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル・ジルコニウム、二塩化(tert-ブチルイミド(tert-butylimide))ジメチル(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シランジルコニウム、二塩化(メチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイルジルコニウムなどが含まれる。
【0055】
以下のマグネシウム坦持重合触媒をチーグラー・ナッタ触媒として使用することが好ましい。その理由は、従来のフタル酸タイプの触媒を内部電子供与体として使用することとは反対に、環境に優しいためである。
【0056】
すなわち、ハロゲン含有マグネシウム化合物が活性化水素を含有する有機化合物と反応する反応における前処理反応物には、PAを加えて均一溶液を形成させ、塩化チタンを該均一溶液に加えて球状の顆粒担体を回収し、 回収された該担体には、遷移金属化合物及び内分泌攪乱物質であるフタラートベースの内部電子供与体の代わりに、下記の(数1)の式中のジアルキル・プロパン1,3-ジエーテルベースの構造内にシリコン原子を持つ内部電子供与体を加えてマグネシウム坦持重合触媒を形成する。この触媒は、3つ以上の炭素原子を有し、環境に優しい特質と高活性を持つα-オレフィン重合における触媒として使用することができる。
【数1】

【0057】
該内部電子供与体は、内分泌攪乱物質である上に従来の触媒系にたびたび使用されているフタラートベースの内部電子供与体とは反対に、環境に優しい特質を持つ。また、該内部電子供与体として使用される化合物は、外部電子供与体として使用することができる。
【0058】
マグネシウム坦持重合触媒の化学構造は、未だに確立されていないが、1〜4重量%のチタン、15〜30重量%のマグネシウム、60〜80重量%のハロゲン及び1.0重量%未満のシリコン(Si)を含む。
【0059】
また、該主触媒(i)は、エチレンまたはプロピレンなどのα-オレフィンとのプレ重合後に、使用することができる。
【0060】
共触媒(g)としては、RMX3-Nの有機金属化合物(ここで、Mは、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、亜鉛などで、周期表のグループIA、IIA、IIB、IIIBまたはIVBの金属類を表し、Rは、1〜20の炭素原子を有する直鎖、分枝またはシクロアルキルグループであり、Xは、ハロゲン原子、nは0<n<3範囲の整数である)が使用される。
【0061】
該有機金属化合物の具体的な例は、有機アルミニウム化合物、すなわち塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、二塩化エチルアルミニウム(EADC)、塩化ジノルマルブチルアルミニウム(DNBAC)、塩化ジイソブチルアルミニウム(DIBAC)、塩化エチルアルミニウムセスキ(EASC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリノルマルヘキシルアルミニウム(TNHA)、トリノルマルオクチルアルミニウム(TNOA)、トリノルマルデシルアルミニウム(TNDA)、トリエチル亜鉛、トリエチルボラン、トリイソブチルボラン、メチルアルミノキサン(MAO)などからなるグループから選択され得るか、または2つの以上の前述化合物の混合物でもあり得る。
【0062】
好ましくは、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)及びメチルアルミノキサン(MAO)を使用することができる。
【0063】
さらに、外部電子供与体(h)である共触媒を導入して、ポリブチレンの立体特異性を最大化することもできる。
【0064】
たとえば、シラン化合物、無機酸、硫化水素、エステル、ジエーテル、エステル、アミン、有機酸、有機酸エステルまたは2つの以上の前述化合物の混合物を使用することができる。
【0065】
該外部電子供与体(h)としては、アルキル-、アリール-またはアルコキシ含有シラン化合物を使用することが好ましい。その具体的な例としては、ジフェニルジメトキシ・シラン、フェニルトリメトキシ・シラン、イソブチルメトキシ・シラン、ジイソブチルジメトキシ・シラン、シクロヘキシルメチルジメトキシ・シラン、及びジイソプロピルジメトキシ・シランを使用することができる。
【0066】
また、上記のように、ジアルキルプロパン1,3-ジエーテルベースの構造内にシリコン原子を持つ特定構造の内部電子供与体を外部電子供与体(h)として使用することもできる。
【0067】
本発明では、立体特異性ポリブチレンの重合活性を高めるために、その調製方法を、該反応に関与しない不活性ガス(j)を用いて、所与の反応温度にて、重合反応器内圧力を気液平衡反応物の圧力よりも高い圧力に増加させた状態で実行することが重要である。
【0068】
すなわち、チーグラー・ナッタ触媒等及び有機アルミニウム化合物の存在下で反応に関与しない不活性ガスを回分反応器、CSTRまたは別のタイプの反応器内に導入し、所与の反応温度にて、気液平衡反応物の圧力よりも高い圧力で重合することによって、ポリブチレンをさらに高い収率で製造することが可能である。
【0069】
該不活性ガスは、ポリブチレンが1-ブテンを重合することによって製造されることを特徴とする反応に関与しないガスであって、その例としては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンまたは2つの以上前述化合物の混合物が挙げられる。好ましくは、該不活性ガスは、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなるグループから選択される任意の1つまたは複数のガスとする。
【0070】
該安定剤及び該添加物(k)としては、ポリオレフィン重合に用いられる、フェノールベースの抗酸化物、亜リン酸または硫黄ベースの抗酸化物、熱安定剤、核形成剤などを必要に応じて使用することができる。また、他の安定剤及び添加物(k)をさらに加えることもできる。
【0071】
本発明によって調製される高立体規則性ポリブチレンポリマーは、1-ブテンのホモポリマーまたはα-オレフィン及び最大で40重量%までのコモノマーを含有するコポリマーであって、以下の特質を持つ。
【0072】
第1には、以下の実施例に示すように、触媒残基中のチタンがppm(重量)レベルで検出されないこと。
【0073】
また、以下の実施例及び添付図面に示すように、13C−NMRによって決定される立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)が96以上であること。
【0074】
ポリブチレン重合体の分子量分布(Mw/Mn)が3〜6であること。 該分子量分布は、制御及び拡張することができ、以下の手順を行うことによって分子量分布(Mw/Mn)を8以上に拡張することができる。すなわち、該ポリブチレンがCSTR内で調製されると、単一反応器及び一段階重合のみを用いることによって、該分子量分布(Mw/Mn)を3〜6の範囲で制御することができる。その一方、該ポリブチレンが回分反応器、CSTR、他の反応器内で調製されると、重合用に並列に接続された2つ以上の同一タイプまたは異なるタイプの反応器を用いることによって、該分子量分布(Mw/Mn)を8以上に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
本発明をより詳細に以下の実施例によって例示するが、本発明はこれらの例示によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0076】
(サンプルB)
(a)触媒の調製
磁気攪拌機、凝縮器及び温度検出器を備えた1リットルの4ネック丸底フラスコに、50mlのデカン及び3.0gの塩化マグネシウムを窒素ガス流下で加えて数分間攪拌し、1mlの2-エチルヘキサノールを加え、攪拌しながら温度を20分にわたって130℃に上げ、次いで、1時間反応させた。
【0077】
1時間の反応後、1.0gのPAを加えた。 結果として得られた混合物を窒素雰囲気下で攪拌しながら130℃にて1時間反応させた。結果として得られた均一溶液を周囲温度に冷却した。四塩化チタンを1時間にわたって低温度で点滴し、攪拌して固体生成物を含有するスラリーを得た。
【0078】
該固体生成物をろ過し、分離し、そしてヘプタンで4時間洗浄した。
【0079】
結果として得られた固体生成物に、50mlのトルエンを加え、攪拌しながら塩化チタンを加え、温度を100℃に上げ、0.30gの2-イソプロピル-2-トリメチルシリルメチル1,3-ジメトキシプロパンを点滴し、温度を110℃に上げ、次いで、2時間反応させた。
【0080】
反応完了時に、該固体生成物をろ過し、分離し、そしてヘプタンで4時間洗浄した。洗浄した該固体生成物にヘプタン及び塩化チタンを加え、98℃にて2時間反応させた。結果として得られた該固体触媒成分をろ過し、分離し、そして遊離チタン化合物が検出されなくなるまでヘプタンで十分洗浄してヘプタン中に懸濁した固体触媒を得た。
【0081】
得られた触媒の構成物をICPで分析した。その結果は、2〜3重量%のチタン及び16〜19重量%のマグネシウムがあることを示した。
【0082】
(b)立体規則性ポリブチレンポリマーの重合
使用しようとする2リットルのステンレス製オートクレーブを繰り返し真空パージ及び窒素パージした。該オートクレーブに、窒素ガス流下で、0.01gの上記(a)固体触媒成分、0.01gのジイソブチルメトキシ・シラン、0.3gの塩化トリエチルアルミニウム(TEA),1.2リットルの1-ブテン及び200mlの水素を加え、さらに窒素を加えた状態で3バールの圧力をかけ、オートクレーブ温度を80℃まで上げ、次いで重合を実行した。
【0083】
1時間半後、該オートクレーブを減圧させた。 未反応の1-ブテンモノマー(単量体)を除去した。得られたポリマーを真空状態下で90℃にて12時間乾燥させた。
【0084】
乾燥したポリブチレンポリマーの活性は、23,000g/g‐触媒(1.5時間)または15,300g/g触媒(1時間)であり、分子量(Mw)は430,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.22であり、その密度は0.886であり、そしてその融点は116.9℃であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【0085】
該立体特異性をNMR法を用いて評価した。該ポリブチレンの立体構造は、26〜28ppmの範囲で共振ピークの形状から判断できる。
【実施例2】
【0086】
ポリブチレンポリマーを、重合時にさらに窒素を加えることによってオートクレーブに6バールの圧力をかけたことを除いては、実施例1と同一手順で調製した。
【0087】
得られたポリブチレンポリマーの活性は、32,400g/g‐触媒(1.5時間)または21,600g/g触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は3.69であり、その密度は0.884であり、その立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)は99.7であり、そしてその融点は117.0℃であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例3】
【0088】
ポリブチレンポリマーを、重合時にジイソブチルメトキシ・シランの代わりに、上記で内部電子供与体として使用した0.01gの2-イソプロピル-2-トリメチルシリルメチル1,3-ジメトキシプロパンを外部電子供与体として使用したことを除いては、実施例2と同一手順で調製した。得られたポリブチレンポリマーの活性は29,700g/g‐触媒(1.5時間)または19,800g/g‐触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4.11であり、その密度は0.880であり、その立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)は96.9であり、そしてその融点は115.6℃であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例4】
【0089】
ポリブチレンポリマーを、重合時にコモノマーとしてプロピレンを加えたことを除いては、実施例2と同一手順で調製した。
【0090】
得られたポリブチレンポリマーの活性は30,700g/g‐触媒(1.5時間)または20,500g/g‐触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は3.45であり、その密度は0.881であり、その主鎖のメチル基は14重量%であり、そしてその融点は116.5℃、134.2℃であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例5】
【0091】
使用しようとする50リットルのステンレス製オートクレーブを繰り返し真空パージ及び窒素パージした。該オートクレーブに、窒素ガス流下で、実施例1と同一手順によって製造された0.3gの該固体触媒成分、0.3gのジイソブチルメトキシ・シラン、0.12gの塩化トリエチルアルミニウム(TEA)、25リットルの1-ブテン及び10バールの水素を加え、さらに窒素を加えた状態で4バールの圧力をかけ、オートクレーブ温度を80℃まで上げ、次いで重合を実行した。
【0092】
1時間半後、該オートクレーブ内のポリマーを後工程の攪拌槽に移動し、抗酸化剤としてBHTを加え、そして減圧させてから未反応の1-ブテンモノマー(単量体)を除去した。得られたポリマーを真空状態下で、90℃にて12時間乾燥させた。
【0093】
乾燥したポリブチレンポリマーの活性は28,300g/g‐触媒(1.5時間)または18,900g/g‐触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4.05であり、そしてMFRは0.382であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例6】
【0094】
2台の並列接続された重合反応器(50リットル、オートクレーブ)、後工程の攪拌槽(100リットル)及び減圧及び回収用装置からなる設備を使用し、使用しようとする2台の50リットルのステンレス製オートクレーブを繰り返して真空パージ及び窒素パージした。該オートクレーブに、窒素ガス流下で、実施例1と同一手順によって製造された0.3gの該固体触媒成分、0.3gのジイソブチルメトキシ・シラン、0.12gの塩化トリエチルアルミニウム(TEA)、25リットルの1-ブテン及び10バールの水素をそれぞれ加え、さらに窒素を加えた状態で4バールの圧力をかけ、1台のオートクレーブの温度を70℃まで上げ、他の1台オートクレーブの温度を80℃まで上げ、次いで重合を実行した。
【0095】
1時間半後、該オートクレーブ内のポリマーを後工程の攪拌槽に同時に移動し、抗酸化剤としてBHTを加え、そして減圧させてから未反応の1-ブテンモノマー(単量体)を除去した。得られたポリマーを真空状態下で90℃にて12時間乾燥させた。
【0096】
乾燥したポリブチレンポリマーの活性は27,800g/g‐触媒(1.5時間)または18,500g/g触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は7.4であり、そしてMFRは0.45であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例7】
【0097】
使用しようとする、自動オンオフ制御弁を備えた50リットルのステンレス製オートクレーブを、繰り返して真空パージ及び窒素パージした。該オートクレーブに、窒素雰囲気下で、実施例1と同一手順によって製造された0.3gの該固体触媒成分、0.3gのジイソブチルメトキシ・シラン、0.12gの塩化トリエチルアルミニウム(TEA)、25リットルの1-ブテン及び10バールの水素を加え、さらに窒素を加えた状態で4バールの圧力をかけ、オートクレーブ温度を80℃まで上げ、次いで重合を実行した。1時間半後、CSTRを用いて重合を実行した。
【0098】
在留時間の設定は一時間半とした。該反応器からの液体に溶解される窒素に差異により引き起こされる圧力の自然損失を、窒素を補充することによって補正した。固体触媒成分の投入量を実施例1と同一手順によって求め、塩化トリエチルアルミニウムを、反応器内の温度を一定に維持した状態で、反応温度の相違に従って制御した。
【0099】
重合開始から1時間半後、オートクレーブ内のポリマーを後工程の攪拌槽に移動した。所定量のポリマーを移動し、抗酸化剤としてBHTを加え、そして減圧させてから未反応の1-ブテンモノマー(単量体)を除去した。得られたポリマーを真空状態下で90℃にて12時間乾燥させた。
【0100】
乾燥したポリブチレンポリマーの平均活性は19,200g/g触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4.88であり、そしてMFRは0.37であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例8】
【0101】
それぞれ自動オンオフ制御弁を備えた2台の50リットルのステンレス製オートクレーブ、後工程の攪拌槽(100リットル)及び減圧及び回収用装置を含む設備を使用し、使用しようとする該2台の50リットルのステンレス製オートクレーブを繰り返して真空パージ及び窒素パージした。該オートクレーブに、窒素ガス流下で、実施例1と同一手順によって製造された0.3gの該固体触媒成分、0.3gのジイソブチルメトキシ・シラン、0.12gの塩化トリエチルアルミニウム(TEA)、25リットルの1-ブテン及び10バールの水素をそれぞれ加え、さらに窒素を加えた状態で4バールの圧力をかけ、1台のオートクレーブの温度を70℃まで上げ、他の1台オートクレーブの温度を80℃まで上げ、次いで重合を実行した。1時間半後、CSTRを用いて重合を実行した。
【0102】
在留時間の設定は一時間半とした。該反応器からの液体に溶解される窒素に差異により引き起こされる圧力の自然損失を、窒素を補充することによって補正した。主触媒及び塩化トリエチルアルミニウムの投入量は、反応器内の温度を一定に維持した状態で、反応温度の相違に従って制御した。
【0103】
重合開始から1時間半後、それぞれのオートクレーブ内のポリマーを後工程の攪拌槽に移動して混合した。所定量のポリマーを移動し、抗酸化剤としてBHTを加え、そして減圧させてから未反応の1-ブテンモノマー(単量体)を除去した。
【0104】
得られたポリマーを真空状態下で、90℃にて12時間乾燥させた。
【0105】
乾燥したポリブチレンポリマーの平均活性は17,900g/g触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4.88であり、そしてMFRは0.45であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例9】
【0106】
ポリブチレンポリマーを、窒素を用いてオートクレーブに圧力をかけないことを除いては、実施例1と同一手順で調製した。
【0107】
得られたポリブチレンポリマーの活性は14,700g/g触媒(1.5時間)または9,800g/g触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は3.93であり、その密度は0.884であり、その立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)は96.7であり、そしてその融点は117.4℃であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかったが、該ポリマーの色は赤黄明色であった。
【実施例10】
【0108】
ポリブチレンポリマーを、共触媒(h)ジイソブチルメトキシ・シラン、外部電子供与体が重合時にオートクレーブに導入されないことを除いては、実施例2と同一手順で調製した。
【0109】
得られたポリブチレンポリマーの活性は35,200g/g‐触媒(1.5時間)または23,500g/g‐触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4.11であり、その立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)は61.0であり、そしてその融点は108.5℃であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【実施例11】
【0110】
触媒を、2-イソプロピル-2-トリメチルシリルメチル1,3-ジメトキシプロパン代わりに0.43gのジノルマルブチルフタラート(DNBP)を内部電子供与体として導入したことを除いては、実施例1と同一手順で調製した。ポリブチレンを実施例2と同一手順で調製した。
【0111】
得られたポリブチレン-プロピレンコポリマーの活性は27,600g/g‐触媒(1.5時間)または18,400g/g‐触媒(1時間)であり、その分子量分布(Mw/Mn)は3.55であり、その密度は0.886であり、その立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)は98.2であり、そして融点は116.7℃であり、チタンは、ppm(重量)レベルで検出されなかった。
【0112】
図1Aは、本発明に係る外部電子供与体(ルイス塩基)なしで重合された、ポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例10を参照)。図1Bは、外部電子供与体(ルイス塩基)としてジメトキシジイソプロピル・シラン((i-Pr)2Si(OCH32)を添加して重合したポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0113】
ポリブチレンの立体構造は、1-ブテン単位のエチル分岐中にあるメチレン炭素の共振ピークから決定することができる(図2、図3に矢印で引き出すことを示した部分)。
【0114】
該立体特異性(立体規則性)は高いので、一重項ピークと同様の該共振ピークは、結果として26〜28ppmの範囲で現れる。
【0115】
図1Aに示すように、ポリブチレンの立体特異性の低下のため、非常に複雑な共振ピーク(多重項ピーク)が26〜28ppmの範囲で現れた。また、図1Bに示すように、外部電子供与体(ルイス塩基)よって引き起こされた立体特異性の向上のため、ほぼ完璧な1つの共振ピークが26〜28ppmの範囲で現れた。
【0116】
図2は、本発明に係る外部電子供与体(ルイス塩基)なしで重合した、26〜28ppm範囲のポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例10を参照)。これは、得られたポリマーを立体特異性サンプルと非立体特異性サンプルとに分離するエーテル抽出分別を用いることによる、エーテル中に溶解される高立体特異性サンプルのスペクトルと、エーテル中に溶解されない低立体特異性サンプルのスペクトルである。大量のサンプルを使用したにもかかわらず、エーテル中に溶解しない低立体特異性サンプルはほとんど得られなかった。
【0117】
図2に示すように、該抽出分別を用いると、エーテル中に溶解しない立体特異性ポリマーでさえも、非立体特異性ユニットを主鎖中に含有する。
【0118】
図3は、立体特異性を高めるために外部電子供与体(ルイス塩基)を添加して重合したポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【0119】
大量のサンプルを使用したにもかかわらず、エーテル中に溶解しない低立体特異性サンプルがほとんど得られなかったため、13C−NMRスペクトルを決定できなかった。図3に示すように、得られたポリマーは26〜28ppmの範囲で拡大スペクトルでは1つのみの共振ピークを示し、立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)は0.987と高い。
【産業上の利用可能性】
【0120】
上記のように、本発明のポリブチレン調製方法の活性は、公知のいかなるポリブチレンの調製方法と比較してもはるかに高く、したがって、ポリエチレンまたはポリプロピレンの高活性な調製方法と同様の高活性を示すものである。かくして、本発明に係るポリブチレンの生産性が大幅に改善される。
【0121】
また、本発明による方法の効果は、回分反応器だけではなく、公知のCSTR、管型反応装置(PFR)及び他の反応器を用いることによっても実現し得る。
【0122】
さらに、本発明の方法によって調製されたポリブチレンは、従来の立体特異性ポリブチレンとは反対に、極めて高純度の触媒残基を有するので、チタンがppm(重量)レベルで検出されない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1A】外部電子供与体(ルイス塩基)なしで重合したポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例10を参照)。
【図1B】外部電子供与体(ルイス塩基)としてジメトキシジイソプロピル・シラン((i-Pr)Si (OCH)を添加して重合したポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例1を参照)。
【図2】外部電子供与体(ルイス塩基)なしで重合した、26〜28ppm範囲のポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例10を参照)。
【図3】立体特異性を高めるために外部電子供与体(ルイス塩基)を添加して重合した、26〜28ppm範囲のポリブチレンホモポリマーの13C−NMRスペクトルである(実施例1を参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒及び不活性ガス存在下で、反応性モノマー(単量体)、1-ブテン(溶媒としての使用の如何に関わらず)を重合する工程(S1)を含む高立体規則性ポリブチレンポリマーの調製方法。
【請求項2】
該工程(S1)が、不活性ガスを用いて重合反応器内の圧力を所与の反応温度で反応物の気液平衡圧力よりも高い圧力に増加させた状態で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(S1)が窒素、ヘリウム及びアルゴンからなるグループから選択される1つまたは複数の不活性ガスを用いて実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(S1)における反応温度が10〜110℃であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1-ブテンのホモポリマーまたはα-オレフィン及び最大で40重量%までのコモノマーを含有するコポリマーであることを特徴とする高立体規則性ポリブチレンポリマーであって、以下の特質を持つ高立体規則性ポリブチレンポリマー。
1)触媒残基内のチタンがppmレベルで検出されないことと、
2)3C−NMRによって決定された立体特異性(アイソタクティック指数、mmmm%)1が96以上であることと、
3)分子量分布(Mw/Mn)が3〜6であること。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504293(P2007−504293A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524559(P2006−524559)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000755
【国際公開番号】WO2005/021611
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506065057)イレム テクノロジー ホールディングス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】