説明

高純度のD−乳酸を生成する微細藻と、これを用いたD−乳酸製造方法及び装置

【課題】 更なる精製を行なうことなしに、農薬や医薬品の原料にできる極めて光学的純度の高いD−乳酸を提供すること。
【解決手段】 細胞内澱粉から光学純度の高いD−乳酸を産生するナンノクロリス属に属する微細藻ナンノクロリス sp.26A4。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農薬や医薬原料に適した光学純度の極めて高いD−乳酸の製造に関する。
【0002】
【従来の技術】乳酸は、光学異性体を持ち、D体とL体が存在する。従来の乳酸製造は、乳酸菌と総称される微生物を用いた発酵を利用し、蔗糖、ブドウ糖、澱粉等のバイオマスを原料として行われる。このとき、使用する微生物種を選択することにより、D体、L体、又はラセミ体の乳酸を、ある程度の純度で選択的に得ることが可能である。
【0003】D−乳酸だけを特異的に製造するためには、例えば、ブドウ糖を原料とし、Sporolactobacillus sp. 等により乳酸発酵を行なう方法が知られている。これにより得られるD−乳酸の光学純度は97%程度である。残りの3%程度は、L−乳酸が不純物として存在する。
【0004】このようなD−乳酸から、更に高純度のD−乳酸を得るためには、L−乳酸酸化酵素を作用させてL−乳酸を除去する方法や、乳酸にマグネシウムを加えて乳酸マグネシウムの沈澱を生じた後で、ブタノールによりD−乳酸を抽出する方法等が報告されている。しかし、これらの精製方法は、用いる酵素がバルクレベルで市販されていないため入手するには高価であったり、ブタノール抽出時にD−乳酸以外の乳酸等が混入し易い等の理由から実現性に乏しい。一方、光学異性体を分離精製する手法としては、光学分割カラムによる方法が報告されている。しかしながら、光学異性体分割用担体が非常に高価であるために、光学分割カラムを用いた精製を工場化することは困難である。このような理由から、市販されているD−乳酸の光学異性体純度は、最大でも約97%であるのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の状況に鑑み、本発明は、更なる精製を行なうことなしに、農薬や医薬品の原料にできる極めて光学的純度の高いD−乳酸を提供することを目的とする。具体的には、光学的に純度の高いD−乳酸を産生することが可能な微細藻、これを用いたD−乳酸産生方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】これまでに、本発明者らは、澱粉を含有する微細藻が暗嫌気条件において発酵生産物として乳酸を産生することを見出し、その製造プロセスについて別途出願している(特願平7−314119)。今回、乳酸を生産するこれらの微細藻を対象に、D−乳酸の生産性に関する鋭意探索を行なった。その結果、澱粉を多く含有し、且つ細胞内澱粉を暗嫌気条件で光学純度の非常に高いD−乳酸に変換できる微細藻を、長崎県崎戸町の海水より分離することに成功した。本発明は、このような発見の基に到達するに至った。
【0007】発明者らは、下記の手段により上記課題を解決し、目的を達成することを見出した。即ち、(1) 細胞内澱粉から光学純度の高いD−乳酸を産生するナンノクロリス属に属する微細藻ナンノクロリス sp.26A4;
(2) (1)に記載の微細藻を培養した後で回収し、嫌気性雰囲気に保つことにより微細藻細胞内澱粉をD−乳酸に変換するD−乳酸を製造する方法;
(3) (1)に記載の微細藻を用いてD−乳酸を製造するための装置であって、微細藻を光合成独立栄養的に培養するための微細藻培養部と、培養して増殖した微細藻の濃縮スラリーを形成するための微細藻濃縮部と、得られた濃縮スラリーを嫌気性且つ暗い雰囲気に保つことにより発酵させ、前記微細藻内の澱粉をD−乳酸に変換する保持部と、得られたD−乳酸を分離濃縮するための乳酸分離濃縮部と、分離濃縮されたD−乳酸を安定に保存するための保存部と、を具備するD−乳酸製造装置;である。
【0008】
【発明の実施の形態】1.微細藻本発明の微細藻株は、高純度のD−乳酸を生成する微細藻であり、具体的にはナンノクロリス属に属する新株ナンノクロリス sp. 26A4(Nannnochloris sp.26A4)株である。本株は、海洋性微細藻(Nannochloris sp.26A4)株として三菱重工基盤研究所内にて保存される。ここで「高純度」の語は、光学的に高い純度をいい、不純物としてのL−乳酸を3%未満、好ましくは0.1%以下しか含まないD−乳酸を示す。
【0009】ナンノクロリス sp.26A4 株を海水から分離する方法を以下に説明する。
【0010】入手した長崎県崎戸町の海水(約100mL)を300mLの三角フラスコに入れ、表1に示す組成になるように栄養塩等を添加し、蛍光灯を1500Lux、25℃で連続照射しながら緩やかに振盪した。
【0011】
【表1】


【0012】約3週間後には、微細藻と考えられる緑色の微生物の存在が肉眼で認められる状態となった。この集積培養を行なった培養液(即ち、細胞の懸濁液)を海水で100倍に希釈し、その0.5mlを後述する寒天培地に滴下して寒天表面に塗布した。寒天培地は、表1に示す組成の培地に精製寒天を1.5重量%加え、オートクレーブにより滅菌後、シャーレに添加し、放冷固化したものである。塗布した寒天培地入りシャーレを蛍光灯下、1500Lux、25℃において、静置した結果、約3週間後に培地表面に緑色のコロニーが15個出現した。個々のコロニーを表1に示す各組成の培地に移植し、培養増殖した後に、各細胞のD−乳酸生成能力を調べた。D−乳酸の生成能力は、生成した乳酸をガスクロマトグラフィーにより濃度を求め、更に、光学純度を光学異性体分離カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて確認した。
【0013】試験に用いた微細藻の中で、最も優れたD−乳酸産生能を有する微細藻は、下記の表2に示す光合成色素成分、及び形態学的特徴を有していた。
【0014】
【表2】


【0015】以上の特徴から、本微細藻をナンノクロリス属と同定し、得られた藻株をナンノクロリス sp. 26A4(Nannnochloris sp.26A4)株と命名した。
【0016】以下に示す本発明のD−乳酸生産方法において、使用可能な微細藻は、上記ナンノクロリス sp.26A4 株の他に、テトラセルミス sp.(Tetraselmis sp.)に属するCCAP登録番号66/3株を使用することも可能であるが、D−乳酸生産力がより高いことから、ナンノクロリス sp.26A4 株が特に好ましい。
【0017】本藻株を使用したD−乳酸製造は、基本的には、本発明者らによる乳酸製造方法(特願平7−314119)で示したプロセスを用いて実施することができるが、好ましくは、以下のような改変法を用いる。
【0018】2.D−乳酸の製造方法以下、改変法を図1を用いて説明する。図1において、微細藻培養工程1は、本願のD−乳酸生産微細藻を光合成独立栄養的に培養する工程である。また、この工程は、水深10から30cm程度の上面が開放された流水路型の培養槽等を用て行なうことができる。この工程において、本微細藻は、基本的には、海水から窒素及びリン等の無機栄養素を供給し、且つ太陽光を照射することにより培養することができる。ここで使用される海水は、濾過等により、海水中の微細藻の捕食生物等の異物を除去した後で、培養槽に供給される。
【0019】次に、培養液中の微細藻の濃度が、培養液1リットル当たり0.1から1.0g(乾燥固形分)程度になった時点で培養を止め、微細藻濃縮工程2において濃縮を行なう。微細藻濃縮工程2において、沈澱性の高い微細藻の場合には、一旦自然沈澱により固形分1から5w/v%(1リットル当たり10から50g)前後に濃縮した後、遠心分離又はベルトフィルタ等によって更に固形分10から20W/V%に濃縮する。ここで、本工程における濃縮は、後段でのD−乳酸濃縮を有利にするために、即ち、スラリーとしての取り扱いを容易にし、且つ後段での乾燥攪拌を可能にし、更にD−乳酸濃度を高くするために、流動性を有する範囲内で可能な限り固形分に濃縮することが好ましい。
【0020】このようにして得られた微細藻のスラリーを、暗く且つ嫌気性雰囲気に保持できる保持工程3に導き、D−乳酸の生産を行う。保持工程3は、スラリーポンプ或いは攪拌機等の緩速攪拌手段を備えたpHモニター付き半密閉型容器からなる装置内で行なうことが可能である。ここで、「暗い雰囲気」とは、光合成が行われない程度に光を遮断した状態をいう。即ち、外部からの微細藻スラリー表面への入射光を90%以上、好ましくは99.9%以上カットして得られる環境状況をいう。この保持工程3にスラリーを導入し、緩くかき混ぜながら暗く且つ嫌気性雰囲気に保持することにより、微細藻自身が行なう細胞内澱粉の発酵作用によってD−乳酸が産生される。この間、必要に応じ、NaOH等のアルカリ溶液とHCl等の酸溶液を用いて、スラリーのpHを中性付近に維持することも可能である。或いは、CaCOを添加することにより、pHを中性付近、好ましくは6.5〜8.0に維持してもよい。但し、生成する乳酸の濃度によってはpHの低下は抑制されるため、pHの制御は必須ではない。保持工程3における微細藻の滞留時間は、微細藻の種類、保持条件等により異なるが、10〜70時間の範囲が一般的である。
【0021】スラリー中のD−乳酸濃度が30〜100g/リットル程度になった時点で、D−乳酸分離濃縮工程4に速やかに導き、D−乳酸の分離濃縮を行なう。このD−乳酸濃縮分離工程では、D−乳酸を含む発酵液中に微量に存在する乳酸酸化酵素等と、得られたD−乳酸との接触を避けることにより、生成した光学的純度の高いD−乳酸が劣化するのを防ぎながら、D−乳酸を濃縮する。
【0022】このD−乳酸分離濃縮工程4では、工程3で得られたD−乳酸を含む微細藻スラリーにカルシウム等を添加して乳酸塩として沈澱させた後に、硫酸による脱水を行ない回収することにより、或いは、プロパン等の溶媒を用いた超臨界抽出法等を用いることにより、所望の濃度のD−乳酸に濃縮することができる。このようにして得られたD−乳酸は、D−乳酸保存工程5に保持される。D−乳酸保持工程5ではD−乳酸を冷暗所に保存することで、高い光学純度を保持することが可能である。冷暗所とは、3〜20℃、望ましくは5〜10℃の温度を維持し、且つ外部からの乳酸液表面への入射光を90%以上、好ましくは99.9%以上カットできる環境をいう。また、長期的に高い光学純度を維持する場合には、D−乳酸を保持した容器を負活性ガス、例えば、窒素やアルゴン、ヘリウム等で充填することが好ましい。
【0023】また、D−乳酸を分離した後の残渣は、乾燥後、焼却等により処分したり、或いは発酵させて堆肥等にして再利用することも可能である。
【0024】3.D−乳酸製造装置本願の更なる発明は、上述した本発明のD−乳酸製造方法を実施する装置である。本発明の方法によるD−乳酸生成は、従来の微細藻を使用した方法に比較し、光学的に非常に高純度でD−乳酸を生産することが可能である。また、本装置は、得られたD−乳酸の高純度を維持したままで長時間保持することが可能である。
【0025】本発明の小型エタノール製造装置の好ましい例を、図2を用いて以下に説明する。本発明の好ましい装置は、微細藻を培養するための微細藻培養部1と、培養液中で増殖した微細藻を濃縮するための微細藻濃縮部2と、D−乳酸を生成するための保持部3と、得られたD−乳酸を分離濃縮するための乳酸分離濃縮部4と、分離濃縮されたD−乳酸を光学的に高い純度を維持しながら保存するD−乳酸保存部5とを具備する。
【0026】微細藻培養部1と、微細藻濃縮部2と、保持部3と、乳酸分離濃縮部4と、D−乳酸保存部5は、1つの容器であってもよく、或いは、各々独立した容器であってもよい。
【0027】本装置の作業工程は、図1に示す通りである。先ず、微細藻培養部1において微細藻を培養し、培養により増殖した微細藻を微細藻濃縮部2において濃縮して藻体濃縮スラリーにし、続いて、保持部3においてD−乳酸の生成を行う。D−乳酸生成は、暗嫌気性雰囲気で行われる。また、保持部3に接続されたpH調整部を配置することも可能であり(図には示さず)、このpH調製部により、D−乳酸生成部内の溶媒のpHが中性付近に維持されてもよい。D−乳酸生成完了後、乳酸分離濃縮部4においてD−乳酸を分離濃縮する。
【0028】本装置の微細藻培養部1は、水深10から30cm程度が好ましく、また、その上面が開放された流水路型の培養槽が好ましくが、これに限られるものではない。その材質は、例えば、塩化ビニル、クロロスルホン化ポリエチレン等である。
【0029】本装置のD−乳酸生成部2は、遮光可能な容器が適切であり、例えば、ステンレス等の容器である。
【0030】保持部3は、スラリーポンプ或いは攪拌機等の緩速攪拌手段を備えたpHモニター付きの半密閉型容器からなることが好ましい。pH調整部は、pH調整溶液の収納に適する材質で形成されることが必要である。例えば、硬質ガラス、ポリプロフッ素樹脂、ポリプロピレン等である。
【0031】また、乳酸分離濃縮部4は、D−乳酸の濃縮に適するように加熱、減圧等に耐えられる材質を使用することが好ましい。例えば、ステンレス、チタン等である。
【0032】更に、D−乳酸保存部は、遮光可能であり、且つ気密性に優れた容器が好ましく、例えば、ステンレス、チタン等であり、蓋等が配置された場合に生じる隙間は、例えば、フッ素樹脂、シリコンゴムの材質の腐蝕性の低いパッキンが施されることが好ましい。また、D−乳酸保存部には、不活性ガスを注入又は排出するためのガス注入部及び排出部を配置することも可能であるが、その設置により気密性が損なわれないことは必要である。
【0033】[実施例]以下、実施例を用いることにより本発明の内容を更に具体的に説明する。
【0034】実施例1ナンノクロリス sp.26A4 株を、表1に示す改変ES培地の組成の3倍濃度の栄養を濾過海水に混合したものを培地として用いて培養した。この培地50Lと、該ナンノクロリス sp.26A4 株の培養種(乾燥固形分として2g)を偏平透明容器に入れ、白色蛍光灯で約15,000Luxの連続照射を行ない、空気(0.5%CO添加)を通気しながら、25℃で5日間培養し、5リットル中に12g(乾燥固形分として)の藻体を含む培養液を得た。
【0035】前記操作と平衡し、この微細藻を40(w/v)%の過塩素酸で加水分解し、含有される澱粉をグルコースにした後に、澱粉量に換算することにより澱粉含有率を求めた。その結果、この微細藻は、乾燥重量当たり、40%の澱粉含有量であることが明らかとなった。次に、この培養液5リットルを遠心沈澱法により濃縮し、50mlの液中にナンノクロリス sp.26A4 株の藻体12gを含む藻体スラリー液とし、このスラリーをD−乳酸製造の原料とした。
【0036】実施例2実施例1で得た微細藻スラリーを容積0.1リットルの半密閉容器に移し、窒素ガスを短時間スラリー液に注入して容器内の酵素を除去した後、暗い条件下、30℃で振盪(65往復/分)し、D−乳酸の生成を行なった。この間、0.1NのNaOH及び0.1NのHClを追加して、スラリー液のpHを6.5〜8.0の範囲に保持した。生産された乳酸の分析をガスクロマトグラフィーによって行ない、D−乳酸濃度の経時変化を調べた結果、約3日後に40g/リットルの乳酸が得られた(図3)。これに、最終濃度50g/lの炭酸カルシウムを添加して沈澱し、それに硫酸を加えて硫酸カルシウムを沈澱し、この沈澱物を濾紙にて濾過することにより乳酸溶液を得た。尚、得られた乳酸の回収率は95%であった。
【0037】次に、得られた乳酸の光学異性体の純度を調べるために、光学活性体分離液体クロマトグラフィーによる分析を行なった。分析は得られた乳酸を適宜希釈し、細胞片等の微粒子をフィルターで除去したものを光学活性体分離液体クロマトグラフィーに供した。その結果、図4に示す通り、L−乳酸は検出されず、D−乳酸のみ生産され、その濃度は5100μg/mlであった。この光学活性体分離液体クロマトグラフィーの検出限界は5μg/ml以下のため、これからD−乳酸の光学純度を推定すると少なくとも99.9%であることが判明した。
【0038】このことから本発明による微細藻によって光学純度が極めて高いD−乳酸が生産可能となった。
【0039】これより本発明の乳酸製造方法により、光学純度の極めて高いD−乳酸を生産できることが証明された。更に、得られたD−乳酸は遮光瓶に入れ不活性ガスのHeを補填し、10℃の冷蔵容器にて約1年間に亘り維持したが、1年後のD−乳酸の光学純度は99.9%を保っていた。不活性ガスで置換することによりD−乳酸の高光学的純度を長期的に維持することができた。
【0040】
【発明の効果】本発明の微細藻ナンノクロリス sp.26A4 株を用いることにより、海水を利用して培養を行ない、培養液を濃縮して得られる藻体スラリーをpHを中性付近に保ちながら暗く且つ嫌気性雰囲気に保持して光学純度の高いD−乳酸を製造することが可能となる。
【0041】これにより、従来光学純度97%程度のD−乳酸の生産であったものが、より高い光学純度の標準品が得られるようになり、農薬や医薬原料になる光学異性体純度の極めて高いD−乳酸を大量に製造することが出来る。
【0042】また、本発明の製造方法は、低コストで大量に得られる海水を利用できる。従って、淡水の確保が困難な地域おいて、開発の困難な荒廃地を工場地として利用することも可能である。それによって、微細藻によりD−乳酸生産プロセスをより大規模に利用することが可能である。
【0043】また、炭酸ガスを太陽光による光合成の作用で固定し、且つ有効利用できるために、地球規模での大気炭酸ガス減少対策としても非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の微細藻ナンノクロリス sp.26A4 株を適用するD−乳酸製造プロセスの概要を示すフロー図。
【図2】 本発明のD−乳酸製造装置を説明するフロー図。
【図3】 本発明の微細藻ナンノクロリス sp.26A4 株を用いたD−乳酸生産の実施例において、微細藻スラリー中に生成した乳酸濃度の経時変化を示す図。
【図4】 本発明の微細藻ナンノクロリス sp.26A4 株を用いたD−乳酸生産における、D−乳酸の光学純度を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 細胞内澱粉から光学純度の高いD−乳酸を産生するナンノクロリス属に属する微細藻ナンノクロリス sp.26A4。
【請求項2】 請求項1に記載の微細藻を培養した後で回収し、嫌気性雰囲気に保つことにより微細藻細胞内澱粉をD−乳酸に変換するD−乳酸を製造する方法。
【請求項3】 請求項1に記載の微細藻を用いたD−乳酸の製造方法であって、微細藻を光合成独立栄養的に培養することと、培養して増殖した微細藻を濃縮スラリーにすることと、得られた濃縮スラリーを嫌気性且つ暗い雰囲気に保つことにより発酵させ、前記微細藻内の澱粉をD−乳酸に変換することと、得られたD−乳酸を冷暗所で発酵液と分離して濃縮することとを具備するD−乳酸製造方法。
【請求項4】 請求項2又は3の何れか一方で得られたD−乳酸を冷暗所で発酵液と分離濃縮した後に、冷暗所に保持することにより光学純度を維持することを特徴とするD−乳酸の保存方法。
【請求項5】 請求項1に記載の微細藻を用いてD−乳酸を製造するための装置であって、微細藻を光合成独立栄養的に培養するための微細藻培養部と、培養して増殖した微細藻の濃縮スラリーを形成するための微細藻濃縮部と、得られた濃縮スラリーを嫌気性且つ暗い雰囲気に保つことにより発酵させ、前記微細藻内の澱粉をD−乳酸に変換する保持部と、得られたD−乳酸を分離濃縮するための乳酸分離濃縮部と、分離濃縮されたD−乳酸を安定に保存するための保存部と、を具備するD−乳酸製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−29063(P2001−29063A)
【公開日】平成13年2月6日(2001.2.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−204551
【出願日】平成11年7月19日(1999.7.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】