説明

高純度キサントフモール含有パウダーの製造方法及びその使用

【課題】キサントフモールに基づく更に高い濃縮率を、有機溶剤又は多段階抽出方法を用いることなく達成することを可能にする、キサントフモール含有製品製造方法を具体的に示す。
【解決手段】500barよりも高い圧力かつ60℃よりも高い温度において、高圧縮CO2によってキサントフモール含有ホップ原材料からキサントフモールが豊富なホップ抽出物を製造した後、アルカリ溶液中においてホップ抽出物を懸濁させる。この時好ましくはキサントフモールは溶解する。不溶性副産物を分離後、酸によるキサントフモールの中和及び凝結を行い、得られたキサントフモール濃縮物の沈殿を分離、乾燥することによって、ホップから高純度のキサントフモール含有パウダーが製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブル中に明記された特徴を有する高純度(60〜90%)キサントフモール含有製品の製造方法、及び、このタイプの製品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景に関連して、本発明の栄養生理学的な原理を最初に簡単に記述する。このことによると、ホップはビールの製造のために必須の原材料である。乾燥状態において、それは3つの基本的な有効原料群を含んでいる。ホップレジンは、ビールにその特徴的な、にがみを加える。ホップ油は、その様々な芳香成分により、ビールに典型的な芳香を与える。ホップタンニンは、例えば、フラバノール、プロアントシアニジン、ケンフェロール及びクエルセチンのフラボノイド、安息香酸、及び桂皮酸のような多数のポリフェノールから構成される。しかしながらビールの品質に対するその評価は、一様ではない
【0003】
【特許文献1】DE19939350A1
【特許文献2】DE10240065A1
【特許文献3】EP1424385B1
【0004】
ホップの大部分のポリフェノールは、温水に速やかに溶解する。それらは、抗酸化作用を有し、味に貢献している。しかしながら、その保管中に、完成したビール中においてタンパク質と曇り錯体を形成するために、それらの価値に対する意見は多様化する。従って、ビールの保管品質を改善し、かつ、曇りに対する影響されやすさを低減するために、ホップポリフェノールを添加することを故意に控える多数の醸造所が存在する。
【0005】
タンニンを有さないホップ製品が、ホップを溶剤によって抽出することによって入手される。液体、及び特に、全てのにがみ及び芳香物質は溶解するがポリフェノールは溶解しない超臨界CO2が、この点で今や世界中で確立されてきている。エタノールによって製造された抽出物はあまり重要ではない。
【0006】
ホップは、カルコンの亜族に由来するフラボノイドである(しばしば、フラボノールとしても参照される)、非常に特殊なポリフェノール、すなわちキサントフモールを含む。近年、世界中で成された試験は、キサントフモールが非常に有効な抗がん作用を有することを明らかにした。研究は、今や生体細胞へ拡張されてきた。キサントフモールは将来的には、がん予防薬/化学予防薬物質として使用されることが期待されている。従って、キサントフモール濃縮物の製造が非常に有益な目的である。
【0007】
キサントフモールの溶解性は、ポリフェノールとは異なっている。それは非常に非極性であるために、温水には難溶であるが、アルコール又はアルコール/水混合物には易溶である。他方、ヘキサンのような非極性溶剤は、キサントフモールを溶解できない。タイプによって、乾燥ホップは重量で0.2〜1.0%の範囲の量のキサントフモールを含む。
【0008】
ビールの製造中、キサントフモールはイソキサントフモールに転化される。イソキサントフモールの抗がん作用は非常に少ない。加えて、キサントフモール及びイソキサントフモールの大部分は、ビール製造の際に、イースト、沈殿、及び、濾過によって分離される。従って、従来の市販のビールは、キサントフモールのがん抑制可能性を利用するための、特に適した供給源ではない。とにかく、例えば完成したビール又は他の食品に添加され得る、或いは、それ自身が化学予防薬製造に使用され得る、キサントフモールが豊富な抽出物の製造が望ましい。
【0009】
次の先行技術は、この問題に対する多くの提案された解決方法を含む。特許文献1は、キサントフモールが豊富なホップ抽出物の製造方法を記載しており、その中で、水とエタノールの組み合わせが、二つの抽出ステップにおいて好ましくは使用される。重量で含有量5〜15%のキサントフモールが具体的に示されている。しかしながら、キサントフモールに加えて、公知の曇り傾向を有する他のホップタンニンが溶解される。
【0010】
特許文献2は、固体付形剤の添加後に、エタノールによって得られた従来の市販のキサントフモール含有ホップ抽出物から、超臨界CO2に可溶な全てのにがみ及び芳香物質が、どのようにして引き出されるのかを記述している。この精製ステップ後の残渣は、付形剤、CO2に不溶の様々なレジン、及び、キサントフモールの混合物であるが、キサントフモールは、しかしながら、重量で約2%であり、ホップと比較して控えめに濃縮されたものにすぎない。それから、複雑な方法において、濃縮物が有機/水溶液の混合物を使用する多数の段階において得られる。重量で85%までの含有量が達成されると述べられている。
【0011】
特許文献3は、キサントフモールが豊富なホップ抽出物の製造方法を開示しており、その中で、先の二つの特許文献よりも遥かに高いキサントフモールの濃縮度が達成された。キサントフモールが豊富なホップ抽出物は、従って、高く圧縮されたCO2を溶剤として500barよりも高い圧力、かつ60℃よりも高い温度において、キサントフモール含有ホップ原料の抽出を行うことによって製造される。請求項1のプレアンブルによると、本発明に係る製法もまた、このタイプの製造ステップに基づいている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここから始めて、本発明の課題は、キサントフモールに基づく、むしろ更に高い濃縮率を、有機溶剤又は多段階抽出方法を用いることなく達成することを可能にする、キサントフモール含有製品製造方法を具体的に示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題が達成される基本的な方法は、請求項1の特徴づけ部分に明示されており、この請求項のプレアンブルによって得られたキサントフモール含有パウダーが、更に濃縮されたという事実にある。この課題は、例えばクロロフィルのような副産物が、水溶液中でpHを調製することによって分離された、ということにおいて達成された。
【発明の効果】
【0014】
このように、水溶液中で90%までのキサントフモール含有率が、有機溶剤を全く用いることなく単一の方法を用いて達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
粗抽出物がペレット状ホップから得られる。この目的で、ホップから芳香及びにがみ物質が、約200〜300barかつ40〜60℃の従来の超臨界条件において抽出される。残渣は、例えば600〜1000barかつ70〜90℃の第二のCO2抽出を受ける。重量で10〜40%のキサントフモール含量を有するホップ抽出物は、このようにして得られる。正しく選択された分離条件は、この抽出物が、乾燥した状態でセパレータから除去されることを可能にする。このようにして得られたホップ抽出物は、高いキサントフモール含量を有し、かつ、付加的にクロロフィルや、わずかなにがみホップレジン成分を含んでいる。それは、フラバノールやプロアントシアニジンのような、分裂で生じた曇りポリフェノールを含まない。それはまた、たんぱく質や炭水化物を含まず、かつ、特に、例えば硝酸塩のような好ましくない塩を含まない。それは、更なるワークアップも乾燥も必要とせず、ホップと関係のない添加剤も含まない。この濃縮されたパウダーは、この形態で、特定の用途に使用され得るだけでなく、前記の、更なる濃縮のための開始主薬として働く。
【0016】
本発明は、先に記述のように、固体、ペースト様、又は液体食品の混合物として
製造された非常にキサントフモールが豊富なホップ抽出物の使用にも関する。乾燥して、自由流れ形態の混合物は、固体食品へ加えるのに適している。しかしながら、乾燥して、自由流れ形態であるホップ抽出物は、適した有機溶剤に速やかに溶解することも可能である。使用された溶剤は、好ましくはエタノールである。公知の方法においてパウダーを乳化することが、同等に可能である。両調剤品は、このようにして、飲料に添加され得る。例えば、これはポンプ又はコンベヤー方法を用いて連続的に添加する形態で行われ得る。
【0017】
本発明の更なる特徴、詳細、及び利点は、次の、多数の実施例の記述から明らかになるであろう。製造は個々のステップ(実験室スケール)において、しかし、好ましくは連続して自動化された手順において行われ得る。
【実施例1】
【0018】
実験室スケール:
重量で24.3%のキサントフモール含量を有する、著しく暗い緑色パウダーが本試験に用いられた。50gのパウダーが80mlのエタノールで懸濁された(パウダーは、「浸され」、かつ、それによって続く方法ステップにおいて、より容易に、かつ、より均一にアルカリ溶液中に分散される)。懸濁したパウダーは、0.1N NaOH溶液400ml中へ撹拌しながら加えられた。懸濁液は、できるだけ速く濾過された。
【0019】
暗緑色濾過ケーク及び黄色の濾液が得られた。黄色の濾液は、0.1N HCl溶液で中和され、かつ、キサントフモールの凝集を改善するためにpH6に調製された。固体は、再度できるだけ速く濾過されなければならなかった。得られた濾過ケークは、中和の際に生成された塩を除去するために水で洗浄された。黄/茶色濾過ケークは、それから50℃で乾燥された。乾燥された濾過ケークは、重量で83%のキサントフモール含量を有した。緑色パウダーにおけるキサントフモールの75%(相対)は、最終製品において回収された。
【実施例2】
【0020】
小スケール製造:
二つのポンプ、エタノール中のキサントフモール懸濁液又は0.1N水酸化ナトリウム溶液中の珪藻土の懸濁液を受けるための各コンテナ、キサントフモール懸濁液がアルカリ液に注入された混合区画、ミキサー、プレコートフィルター、0.1N 塩酸によって満たされた受けタンク、及び、もう一つのフィルター(本試験においてはブフナー漏斗から構成されている)から構成された、試験プラント。
【0021】
添加開始前に、粗い、次に細かい珪藻土が最初にプレコートフィルター上にポンプでくみ上げられた。本試験において、緑色パウダー1kgあたり20lのアルカリ液、及び1.4kgの珪藻土が使用された。
【0022】
1kgの著しく暗い緑色パウダーが、1.6lのエタノール中で懸濁された。この懸濁液は、アルカリ液と珪藻土のもう一つの懸濁液がそこを介してポンプでくみ上げられた、チューブ内のノズルを介して注入された。キサントフモールは溶解した。例えば、クロロフィルのような他の成分は溶解せずに残った。混合区画の直後、非常に効果的な分散をもたらす高スピード撹拌器が据えつけられた。この混合物はプレコートフィルター(アルカリ液と珪藻土)上にポンプでくみ上げられた。圧縮空気が、濾過を加速するためにフィルターコンテナに加えられた。濾過処理は、作られた懸濁液の濾過を完了するまで、数回繰り返された(減圧、補充、濾過のための加圧)。溶液は、迅速に中和され、その結果、黄色のキサントフモールが沈殿した。この溶液も濾過された。残ったキサントフモールは水で洗浄され、それから乾燥器で乾燥された。
【0023】
乾燥された濾過ケークのキサントフモール含量は、重量で75〜85%であった。緑色パウダー中のキサントフモールの72%(相対)は、最終製品において回収された。このことは、従来方法を用いることによって成されるということだが、収率における増加が更なる目的であった。
【結論】
【0024】
キサントフモールパウダーの懸濁液は、樹脂成分の溶解を引き起こし、かつ、均一な懸濁液の形成を容易にする。使用された溶剤のタイプは、重要ではない。溶剤は、認められていない残渣の危険性という理由から単に無毒で、かつ水に可溶でなければならない。
【0025】
アルカリ液中のキサントフモールパウダーの滞留時間は、できるだけ短くあるべきで、さもなければ、好ましくないかもしれないイソキサントフモールが形成する。酸液中のキサントフモールの滞留時間もまた、できるだけ短くあるべきで、さもなければ、キサントフモールの誘導体と分解物質が形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップからの高純度(60〜90%)キサントフモール含有パウダー製造方法にして、次のa〜fの方法ステップを含む、すなわち、
a.500barよりも高い圧力において、かつ、60℃よりも高い温度において高圧縮CO2を溶剤として用い、キサントフモール含有ホップ原材料を抽出することによって、キサントフモールが豊富なホップ抽出物を製造すること、
b.キサントフモールが豊富なホップ抽出物をアルカリ溶液中において、副産物とキサントフモールに分離するために懸濁すること、好ましくは、キサントフモールは溶解していること、
c.不溶性副産物を分離すること、
d.酸によって、溶解したキサントフモールの中和及び凝結をすること、
e.酸から沈殿した、キサントフモール濃縮物の分離をすること、
f.分離した濃縮物を乾燥すること、
を特徴とする、キサントフモール含有パウダー製造方法。
【請求項2】
キサントフモールが豊富なホップ抽出物をアルカリ溶液中で懸濁させる前に、溶剤中で懸濁させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶剤は、低分子量のアルコールで構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶剤がエタノールであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
懸濁するためのアルカリ溶液は、水酸化ナトリウム溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸は、塩酸であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
溶解したキサントフモールは、プレコートフィルターにおいて不溶性副産物から分離されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
珪藻土が、フィルター助剤として用いられることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸の添加によって再沈殿したキサントフモールが、濾過によって溶解している成分から分離されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
乾燥されたキサントフモール濃縮物が粉砕されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ホップ抽出物が、固体、ペースト様、又は液体食品への添加剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に従って製造した、高純度キサントフモール含有パウダーの使用。

【公開番号】特開2007−289185(P2007−289185A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107021(P2007−107021)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(507125217)ナテコ2 ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】