説明

高純度金属の製造方法及びシステム

【課題】 この発明は、昇華によって純金属を得ることを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、金鉱石、銀鉱石、銅鉱石又は鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入すると共に、溶鉱炉の四周からゼットガス炎を吹きつけ加熱して、スラグとマットとに分離し、マットを比重別に取り出し、これを加熱炉に入れて再びゼットガス炎を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にし、前記で得た金、銀、銅、又は鉄の各溶液を夫々ゼットガス炎を吹きつけて再加熱してスラグとマットに分離した後、前記夫々のマットを、ゼットガスで金2860℃、銀2160℃、銅2570℃、鉄2860℃に加熱して、夫々の金属を昇華させ、この昇華ガスの夫々を冷却固化して収集することを特徴とした金属の分別採取及び高純度化方法により目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金、銀、銅、鉄その他の金属又は金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、鉄鉱石その他の金属鉱石に含まれる金属を、夫々の鉱石から分別し、夫々高純度化を図ることを目的とした高純度金属の製造方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来金鉱石から金を分別するには金鉱石粉砕物に希青酸溶液と水を加えて混合物のスラリーとし、これを更に濃密にして、タンクに沈殿させ、これに活性化した炭素粒(通常椰子ガラを焼いて2〜3mmの粒状にしたもの)を投入し金を付着させる。その後前記スラリーは、濾過容器に移されて溶液が分離され、熱い水酸化ナトリウムを注ぎ込むことによって、溶液中で金と炭素が分離される。この溶液を電気分解することによって金が陽極(鉄線)に付着する。鉄線に付着した金と石英、ホウ砂、酸化ナトリウム等が約1150℃の溶鉱炉で溶かされ、マットとスラグに分離し、金を含有したマットが下に沈積しマットの表面をスラグが覆う。前記溶鉱炉から金及びスラグを型に流し込みある程度冷えた状態でスラグを取り剥ぎし、ドーレとする。このドーレ中には70%〜95%の金を含むが、その後ドーレを精製工場で精製して99.99%の金とする。
【0003】
また鉄鉱石については、鉄鉱石を溶鉱炉で溶融し、スラグを取り除いて、残余の粗鉄を取り出し、これを電気炉に移し電気分解により高純度化処理を行なっている。
【0004】
前記金、鉄以外の金属の採取及び高純度化についても、概ね前記手法に準じて採取、精錬を行っている。
【特許文献1】特公平1−33537
【特許文献2】特開平11−229053
【特許文献3】特開2002−146580
【特許文献4】特開2002−285371
【特許文献5】特公平6−53944
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来法によれば、鉱石から高純度の金属を製造するには膨大な設備(溶鉱炉)と、エネルギーと連続処理を必須要件とし、更に高純度化するには、膨大な設備(例えば、電気炉、薬剤による溶解炉)を必要とする問題点があった。
【0006】
更に純度については、高純度化に伴って費用が幾何級数的に増大するなどの問題点が知られている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
然るにこの発明は、必要な加熱温度を必要な部分のみ発生させて、金属鉱石を溶融し、複数金属が混入している場合には比重分離によって比重毎の層に分級処理して取り出す。ついで分級された各金属のみを、夫々昇華温度に再加熱して昇華させた後、昇華気体を冷却して目的金属を取得する方法により、前記従来の問題点を解決したのである。
【0008】
前記において、鉱石の溶融にはゼットガス(水素と酸素の混合気体)を使用する。ゼットガスは、その特性上、ゼットガス焔を照射して加熱すると、各物質特有の温度になることが判明している。例えば、ゼットガス焔(700℃〜800℃)を鉄板に照射すると、その鉄板は急速(1分以内)に1500℃程度になり、そのまま照射を継続すれば、2800℃(昇華温)まで昇温する。
【0009】
同様にタングステン板に照射すると急速に3400℃(溶融温)まで昇温し、これをそのまま継続して照射すると5500℃(昇華温)まで昇温する。
【0010】
そこで、金鉱石(玄武岩)を溶融させる為に加熱しようとする時には、前記金鉱石にゼットガス焔を照射すれば、自動的にその溶融温度1200℃まで昇温する。そこで各種岩石類は大方溶融し、スラグが上面に浮かび、金属類はマットとして比重分離する。このような場合に、鉄(融点1500℃)は溶融しない可能性もあるが、鉄成分が多くなると、ゼットガス焔は1200℃より更に1500位まで昇温するので、結局全部昇温し、溶融する。
【0011】
前記のようにして溶融液は比重別に、下から金、銀、銅、鉄のように各金属層に分離するので、各金属毎に取り出して夫々の昇華炉に分離する。ついで各昇華炉へゼットガスを供給して、金は2860℃に加熱し、銀は2160℃に加熱し、銅は2570℃に加熱し、鉄は2860℃に加熱して夫々昇華させる。
【0012】
前記昇華させた各金属の気体を、夫々の固化温度になっている固化金属面(例えばタングステン板)に付着させる。前記タングステン板に代えて、金には金板、銀には銀板を用いる場合もある。
【0013】
前記溶融金属液には、他の金属が混入しているけれども、昇華時の温度規制を正確にすれば、前記のようにして混入金属を分別することができる。例えば、金溶融液の温度は1070℃位であるが、これを2170℃に加熱すれば、銀のみが昇華するので、まず銀を取り除くことができる。また2580℃に加熱すれば、銅のみを昇華させることができるので、銅のみを取り除くことができる。
【0014】
前記において、金と鉄とは比重が著しく相違するので、金溶液の中に鉄溶液が混入するおそれはないが、銅溶液の中に鉄溶液が混入するおそれはある。然し乍ら、銅の融点は1084℃であり、鉄の融点は1536℃であるから、銅溶液の温度を1100℃に保つようにすれば、鉄溶液の鉄は固化し、銅溶液の表面に浮かぶことになるので、鉄を容易に取り除くことができる。
【0015】
更に、銅溶液を2570℃〜2600℃位に加熱して銅を昇華させると、鉄溶液が残留(鉄の昇華温度2863℃)するので、この時点において鉄と銅は確実に分離される。
【0016】
前記のように、溶融金属を比重選で分離し、この分離した溶融金属を夫々の昇華温度まで加熱することにより、確実に昇華分離することができる。然して前記各金属の昇華温度は、金2857℃、銀2162℃、銅2571℃及び鉄2863℃となっており、金、銀、銅間には300℃〜700℃の差があるので、昇華処理により確実に分離することができる。
【0017】
また金と鉄とは昇華温度において僅か6℃程度の差があるに過ぎないが、幸いにして金と鉄とでは比重差が大きいので(比重差11.44)、溶融金属の比重選において十分差別化され、金と鉄が混入するおそれはない。
【0018】
即ちこの発明によれば、金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入すると共に、溶鉱炉の四周からゼットガス焔を吹きつけ加熱して、スラグとマットとに分離し、マットを比重別に取り出し、これを加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にし、前記で得た金、銀、銅、又は鉄の各溶液に夫々ゼットガス焔を吹きつけ、再加熱してスラグとマットに分離した後、比重により各金属別の溶液層とし、各金属別の溶液層毎に取り出すことを特徴とした高純度金属の製造方法であり、金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入すると共に、溶鉱炉の四周からゼットガス焔を吹きつけ加熱して、スラグとマットとに分離し、マットを比重別に取り出し、これを加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にし、前記で得た金、銀、銅、又は鉄の各溶液に夫々ゼットガス焔を吹きつけ、再加熱してスラグとマットに分離した後、各金属のマットを夫々別の溶解炉に移してゼットガスにより溶解させた後、型に入れ、冷却固化して、金属ブロックとし、この金属ブロックの外側を切削して不純物層を除去することを特徴とした高純度金属の製造方法である。
【0019】
また他の発明は、金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤(例えばSiO、CaOなど)を溶鉱炉に投入すると共に、溶鉱炉の四周からゼットガス焔を吹きつけ加熱して、スラグとマットとに分離し、マットを比重別に取り出し、これを加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にし、前記で得た金、銀、銅、又は鉄の各溶液に夫々ゼットガス焔を吹きつけ、再加熱してスラグとマットに分離した後、前記夫々のマットにゼットガス焔を吹きつけて金2860℃、銀2160℃、銅2570℃、鉄2860℃に加熱して、夫々の金属を昇華させ、この昇華物を夫々冷却固化して収集することを特徴とした高純度金属の製造方法であり、金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤とを溶鉱炉に投入して溶液とする溶液化手段、これを分別して比重の大小に従って比重分離し、各金属別マットとする分別手段、金属別マットを昇華させる昇華手段とを組み合せたことを特徴とする高純度金属の製造システムである。
【0020】
また他の発明は、鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入し、溶鉱炉下側部の四周からゼットガス焔を吹きつけて加熱して、スラグとマットとに分離し、前記マットを取り出して加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にして再びスラグとマットに分離した後、マットを昇華炉に入れ、このマットをゼットガス焔を吹きつけて2860℃以上に加熱して、鉄を昇華させた後、鉄のガスを純鉄板上に捕集することを特徴とした高純度鉄の製造方法である。
【0021】
次に他の発明は、溶鉱炉から得たドーレ、又は廃棄物から採取した金を昇華炉に投入して、ゼットガス焔を吹きつけて2800℃以上に加熱して金を昇華させ、その昇華物を冷却固化することを特徴とした高純度金の製造方法である。また前記における鉱石は、金鉱石を金粒を含む金鉱床から採掘した玄武岩その他の鉱石とし、銀鉱石を銀鉱床から採掘した鉱石とし、銅鉱石を黄銅鉱とし、鉄鉱石を磁鉄鉱、赤鉄鉱、褐鉄鉱、菱鉄鉱としたものである。
【0022】
前記において使用するゼットガスは、逆浸透膜を通して電気分解するので、雨水、工業用水又は水道水を使用することができる。即ちゼットガスは前記水を電気分解して、水素ガスと酸素ガスを生成し、これを混合したものである。
【0023】
ゼットガスの燃焼は、気体から液体への相変化であるから、通常の爆発現象(Explosion)は発生せず、擬爆現象(Implosion)が起こる。Implosionでは、熱源の周囲に真空が発生するが、外部へエネルギーが拡散しない為安全である。
【0024】
また水素ガスと酸素ガスの混合気体の為、空気中へ漏出しても環境悪化のおそれがなく、かつ拡散すれば燃焼のおそれもない。また当然のこと乍ら燃焼によって水になるので、有害物質の排出は皆無である。
【0025】
ゼットガス炎を対象物に照射すると超高温(1000℃〜4000℃)となり、総ての物を溶解するけれども、他物に移るおそれはない。またゼットガス自体が酸素を保有しているので、空気のない場所でも燃焼を継続する。更にゼットガスは、表1のような特性をもっている。
【表1】

【0026】
前記のように、ゼットガスは、化石燃料又は化石ガスにみられない特性を有し、目的物を目的温度に加熱し、しかも公害物を出さないので、金属の精製の熱源として最適である。
【発明の効果】
【0027】
この発明は、金属を含む鉱石を加熱溶融して、複数金属を含む溶液は比重分離することによる金属溶液層としたので、各鉱石から金属溶液を容易に生成し金属別層を得る効果がある。
【0028】
また分離した金属溶液又は再生などの粗金属を夫々加熱して、各金属を夫々昇華させたので、一回の操作により極めて純度の高い純金属を得ることができる効果がある。
【0029】
次にこの発明のシステムによれば、簡単かつ合理的手段により、容易に純金属を得ることができる効果がある。また高純度の鉄を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明は、金属を含む鉱石及び金属を溶解する温度に加熱して溶液を生成し、複数金属を含む場合にはこの溶液を比重により金属溶液層とした後、各金属溶液を夫々取り出すのである。
【0031】
前記溶液の取り出しには各種方法があるが、例えば鉄、銅、銀、金の溶液層においては、予め鉄溶液の最下層付近に鉄溶液の取出し孔を設けておき、この取出し孔の栓を抜いて鉄溶液を流出させ、鉄滓流直前で止める。
【0032】
次に銅溶液の最下層付近に設けた銅溶液の取出し孔の栓を抜いて銅溶液を取り出し、その最終をたしかめてから、銀溶液の最下層付近に設けた銀溶液の取出し孔の栓を抜いて銀溶液を取り出す。このようにして銀溶液の取り出しを終了したならば、金溶液の最下層付近の取出し孔の栓を抜いて金溶液を取り出す。
【0033】
前記の他に、最下部の取出し孔からまず金溶液を取出し、銀溶液を取出し、次に銅溶液を取出し、最後に鉄溶液を取出すようにすることもできる。
【0034】
前記のようにして全金属溶液を取り出したならば、再び鉱石を投入して溶液を作る。又は鉱石溶解の進行中に溶液を取り出す。
【0035】
前記においては、層の近接した金属は混入するおそれがあるが、相互に比重が異なると共に、溶融温度が異なるので、固化分離もできる。例えば、鉄と銅の混合溶液を取出した場合に、昇華炉中にそのまま静置すれば、銅層上へ鉄層が浮かぶことになるが、湯温を1200℃位にすると、銅は溶液状態を保つが、鉄は固化して、銅溶液上へ浮かぶことになる。従って、溶鉱炉におけるスラグの如く、鉄の固形物を取出せば、残余は銅となる。
【0036】
そこで2571℃に加熱すると、銅のみ昇華し、万一残留鉄が混入していても昇華しないので確実に分離される。上記手法は金溶液と銀溶液にも当て嵌まる。即ち金の比重は19.32であり、銀の比重は10.49であるから、比重によって分離しているが、両者の境界面において、若干の混入はやむを得ない。
【0037】
そこで、金溶液の上面に浮かんでる銀溶液にゼットガス焔を吹きつけて2162℃以上(2200℃位)に加熱すると、銀のみ昇華する。この場合に、2200℃を保てば、金溶液の表面に浮かんだ銀は悉く昇華するが、金は溶液状態(昇華点2857℃)を保つことになる。
【0038】
前記と同様に銅と銀も比重、融点、昇華点の相違によって分離することができる。
【0039】
また、リサイクルなどで得た金属又は従来の溶鉱炉から得た金属を昇華炉に入れて昇華させることにより、高純度金属を得ることができる。
【0040】
この発明は、金属鉱石を、その溶解温度に加熱する溶解手段と、溶解液をそのままの比重別に層状にする比重選手段と、その各層に出口を設けた取り出し手段と、取り出した溶液を昇華温度まで加熱する純度向上手段を組み合せた鉱石から、有用金属を採取し、その純度を向上するようにしたシステムである。この発明は、前記システムにより、簡単確実に金属を採取し、その純度を向上させることができる。
【0041】
前記の通り、金属を昇華させて純金属を得る方法であるが、比重の大きく異なる金属の場合には、比重選により相当の高純度まで生成できる。
【0042】
然して比重選により生じた各層別金属を固化した後、他金属が混入した部分(例えば2〜3mm)切削すれば、残余は相当の高精度で、純度の高い金属を得ることができる。
【実施例1】
【0043】
この発明の実施例を図1について説明すると、金属鉱石を粉砕し、溶剤と共に溶鉱炉内に投入すると共に、溶鉱炉の周囲からゼットガス焔を吹きつけて溶解し、スラグとマットに分離し、該マットを比重別に加熱炉に移して、ゼットガス焔を吹きつけて加熱する。
【0044】
前記各加熱炉でスラグと金属溶液とに分離し、金属溶液を昇華炉に移す。昇華炉において、金溶液の場合は、まず2162℃以上(例えば2100℃)に加熱して銀を昇華させた後、2860℃に加熱して金を昇華させる。昇華した金ガスは、純金板で受けて固化する。
【0045】
同様に銀溶液はゼットガスで2200℃に加熱して銀を昇華させ、純銀板で捕集する。この場合に、銅溶液が残留するので、2580℃に加熱して銅を昇華させ純銅板で捕集する。また銅溶液はゼットガス焔を吹きつけて2170℃に加熱し銀を昇華させた後、2580℃に加熱して銅を昇華させて純銅を捕集する。
【0046】
次に鉄溶液は、2580℃に加熱して銅を昇華させた後、2870℃に加熱し、鉄を昇華させて純鉄板上へ生長させる。前記のように、2段階で混入金属を除去し、更に昇華により純度の向上と、異金属の混入を防止することができる。
【0047】
前記は複数の金属が混入している場合について説明したが、単一金属溶液の場合には、金属間で分別の必要はない。
【実施例2】
【0048】
この発明の実施例を図2に基づいて説明すると、鉱石を粉砕(粉砕手段)して、溶剤と共に溶鉱炉に投入し、ゼットガス焔を吹きつけて溶解する(溶解手段)と、溶解液がマットと、スラグに分離するので、マットを溶解炉に取ってゼットガスで再溶解する。この場合には、各金属毎に溶解温度が異なる。例えば金は1064℃以上(例えば1100℃)、銀は962℃以上(例えば1000℃)、銅は1085℃以上(例えば1100℃)、鉄は1536℃以上(例えば1600℃)に加熱する。前記ゼットガス焔を吹きつけると、金属特有の温度まで容易に昇温させることができる。
【0049】
このようにして各金属溶液と、スラグに分け、スラグを除去した後、そのまま又は昇華炉に移して、ゼットガス焔によって再び加熱する。金は2857℃以上(例えば2900℃)に加熱して昇華させ、ガス通路に架設した純金板で冷却捕集する。
【0050】
銀は2162℃以上(例えば2200℃)に加熱し、昇華したガスは純銀板で冷却捕集する。また銅は2571℃以上(例えば2600℃)に加熱し、昇華したガスは純銅板で冷却捕集する。
【0051】
次に鉄は2863℃以上(例えば2900℃)に加熱し、昇華したガスは純鉄板で捕集する。前記のようにして昇華、捕集するので純度は極めて高く、別途の精錬を要しないことは勿論である。
【実施例3】
【0052】
この発明の実施例を図3について説明する。
【0053】
従来知られている溶鉱炉から得た金のドーレ又はリサイクルから得た粗金塊(又は板)を昇華炉に入れ、ゼットガス焔を吹きつけて2860℃以上に加熱して昇華させる。ついでこの昇華物を冷却捕集(例えば純金板上に凝固)すれば、高純度金を得ることができる。
【0054】
前記は金について説明したが、他の金属(例えば銀、銅)でも同様に処理できる。
【実施例4】
【0055】
この発明の溶解による実施例を図4について説明すると、架構1の上部に溶解炉2を傾動自在に架設し、前記溶解炉2は、耐熱外壁3に、耐熱空間4を介して、炉体5を設置する。図中13は軸受け、18は溶解炉2の傾動用シリンダーである。
【0056】
前記炉体5の上部にゼットガスバーナー6、原料投入筒7、排気筒8、吸引ファン9、真空排気筒10を設置する。前記において、原料投入筒7から粗金属を矢示14のように投入すると共に、ゼットガスバーナー6からゼットガス焔を吹きつけて、当該金属の融点(例えば金1064℃、銀962℃、銅1085℃、鉄1536℃)以上に加熱して溶融するので、不純物は浮上する。
【0057】
この間に、真空排気していると共に、溶湯の上面は不純物で覆われているので、高温湯でも酸化するおそれはない。図中15はゼットガス発生器、16は分配器である。
【0058】
ついで出湯バルブ11の開くと、純金属の溶湯が落下して容器12に入る。前記容器12に代えて型を置けば純金属の型物ができる。この場合に、型物の表面に不純物が混入している場合には、該面を切削することによって高純度にすることができる。
【0059】
前記金属型物を溶鉱炉に入れて、ゼットガス炎により昇華温度まで加熱すれば(例えば金ならば2860℃)、金を昇華させることができる。
【0060】
前記で得た純金属の型物は、上面又は下面の一方又は両方が表面から数mmに亘って不純物が混入している場合には、前記混入部分を切削することによって、高純度金属を得ることができる。
【実施例5】
【0061】
この発明のゼットガス生成の為の水の電気分解を図5に基づいて説明すると、電解槽20内に、多数の電極板21、21を縦に並列設置して、各電極板21、21は導板22、22aにより夫々プラス極、マイナス極を形成している。前記電解槽20の下部には、送水パイプ23の一端が連結され、送水パイプ23の他端は、電解水槽24に連結してある(ゼットガス発生器15を構成している)。
【0062】
また電解槽20の上部は、排水パイプ25の基端が連結され、排水パイプ25の他端は、前記電解水槽24の上部の分離匣26に連結されている。前記電解水槽24の上部は、混合ガスの排出パイプ27に連結されている。そこで各電極板21、21に通電すると共に、送水パイプ23のポンプ28を始動すると、電気分解されて生成した水素ガスと酸素ガスと水を、排水パイプ25から矢示29のように取り出し、分離匣26で分離して、排出パイプ27から分配器16に送り(図2)、分配器16から必要個所に分配する。前記ゼットガスの発生器7は一例であって、他の構造を採用することもできる。要は、水素ガスと酸素ガスを混合したゼットガスを生成すれば利用することができる。図中30は電解水槽24への送水パイプ、31は水位計測室、32は水位計、33は電磁バルブ、34は給排気パイプ、35は連通孔である。
【0063】
前記実施例において、ポンプ28を始動すると共に、各電極板21、21へ通電すれば、電解水槽24の電解水は、矢示36、37、38のように流動し、流動中に電気分解されて、水素ガス及び酸素ガスが発生し、このガスは上昇水に混入して排水パイプ25から矢示29のように流動して分離匣26に入る。そこで、気液が分離され、液は電解水槽24に戻り、水素ガスと酸素ガスの混合ガスは、排出パイプ27から矢示19のように、分配器16へ送られ、必要な箇所へ必要量宛分配して給送される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の方法の実施例のブロック図。
【図2】同じくシステムの実施例のブロック図。
【図3】同じく高純度金を得る実施例のブロック図。
【図4】同じく溶解による実施例の模式図。
【図5】(a)同じくゼットガスを得る為の水の電気分解の原理図、(b)同じく電極の拡大斜視図。
【符号の説明】
【0065】
1 架構
2 溶解炉
3 耐熱外壁
4 耐熱空間
5 炉体
6 ゼットガスバーナー
7 原料投入筒
8 排気筒
9 吸引ファン
10 真空排気筒
11 出湯バルブ
12 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入すると共に、溶鉱炉の四周からゼットガス焔を吹きつけ加熱して、スラグとマットとに分離し、マットを比重別に取り出し、これを加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にし、前記で得た金、銀、銅、又は鉄の各溶液に夫々ゼットガス焔を吹きつけ、再加熱してスラグとマットに分離した後、比重により各金属別の溶液層とし、各金属別の溶液層毎に取り出すことを特徴とした高純度金属の製造方法。
【請求項2】
金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入すると共に、溶鉱炉の四周からゼットガス焔を吹きつけ加熱して、スラグとマットとに分離し、マットを比重別に取り出し、これを加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にし、前記で得た金、銀、銅、又は鉄の各溶液に夫々ゼットガス焔を吹きつけ、再加熱してスラグとマットに分離した後、各金属のマットを夫々別の溶解炉に移してゼットガスにより溶解させた後、型に入れ、冷却固化して、金属ブロックとし、この金属ブロックの外側を切削して不純物層を除去することを特徴とした高純度金属の製造方法。
【請求項3】
金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入すると共に、溶鉱炉の四周からゼットガス焔を吹きつけ加熱して、スラグとマットとに分離し、マットを比重別に取り出し、これを加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にし、前記で得た金、銀、銅、又は鉄の各溶液に夫々ゼットガス焔を吹きつけ、再加熱してスラグとマットに分離した後、前記夫々のマットにゼットガス焔を吹きつけて金2860℃、銀2160℃、銅2570℃、鉄2860℃に加熱して、夫々の金属を昇華させ、この昇華物を夫々冷却固化して収集することを特徴とした高純度金属の製造方法。
【請求項4】
金鉱石を金粒を含む金鉱床から採掘した玄武岩その他の鉱石とし、銀鉱石を銀鉱床から採掘した鉱石とし、銅鉱石を黄銅鉱とし、鉄鉱石を磁鉄鉱、赤鉄鉱、褐鉄鉱、菱鉄鉱としたことを特徴とする請求項1、2、3の何れか1項記載の高純度金属の製造方法。
【請求項5】
鉄鉱石と熔剤を溶鉱炉に投入し、溶鉱炉下側部の四周からゼットガス焔を吹きつけて加熱して、スラグとマットとに分離し、前記マットを取り出して加熱炉に入れて再びゼットガス焔を吹きつけて加熱して全部を溶融状態にして再びスラグとマットに分離した後、マットを昇華炉に入れ、このマットをゼットガス焔を吹きつけて2860℃以上に加熱して、鉄を昇華させた後、鉄のガスを純鉄板上に捕集することを特徴とした高純度鉄の製造方法。
【請求項6】
溶鉱炉から得たドーレ、又は廃棄物から採取した金を昇華炉に投入して、ゼットガス焔を吹きつけて2860℃以上に加熱して金を昇華させ、その昇華物を冷却固化することを特徴とした高純度金の製造方法。
【請求項7】
金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤とを溶鉱炉に投入して溶液とする溶液化手段、これを分別して比重の大小に従って比重分離し、各金属別マットとする分別手段、各金属別マットをそれぞれ金属毎に溶解する溶解手段とを組み合わせたことを特徴とする高純度金属の製造方法。
【請求項8】
金鉱石、銀鉱石、銅鉱石、又は鉄鉱石と熔剤とを溶鉱炉に投入して溶液とする溶液化手段、これを分別して比重の大小に従って比重分離し、各金属別マットとする分別手段、金属別マットを昇華させる昇華手段とを組み合せたことを特徴とする金属の高純度化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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