説明

高耐久コンクリートブロック及びその製造方法

【課題】 4階建て以上の建築物にも使用可能な強度、耐久性を有し、かつ水密性が高く、防水性能を有する高耐久コンクリートブロックを提供し、また、この高耐久コンクリートブロックを用いた防水性を有する壁構造を提供することを課題とするものである。
【解決手段】 セメント、細骨材、粗骨材、混和材、および水を、水セメント比が15〜35%となるように混練し、ペースト状のコンクリートを得るコンクリート混練工程と、型枠により、コンリートブロックを画成する型枠組み立て工程と、該コンクリートブロック型枠に、前記ペースト状のコンクリートを充填し、該コンクリートを固化させることを特徴とする高耐久コンクリートブロックの製造方法であり、この高耐久コンクリートブロックを用い、外面の接合部分に防水塗料を塗布することを特徴とする防水壁工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート自体が水密であり、強度、耐久性及び経済性に優れた高耐久コンクリートブロック及びその製造方法及び防水壁工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートブロックを用いた建築物は、建築基準法に基づき、3階建てまでとされていた。
【0003】
これは、コンクリートブロックそのものの強度が低いため、コンクリートブロックによる建築物が3階建てまでの強度とされていたためである。
【0004】
また、コンクリートブロックは、水密性が低く、吸水性が高いことも指摘されていた。
【0005】
コンクリートブロックによる建築物は、経済性、施工性が良いため、広く普及しているが、上記のような問題から、4階以上の建物に活用できないという問題があった。
【0006】
従来の高強度コンクリートブロックとしては、特開2002−161512号公報など、高強度繊維補強材を打設したものが開示されている。
【0007】
また、防水性を高めたコンクリートブロックとしては、特開2000−345533号公報など、樹脂材を被覆形成したものなどが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−161512号公報
【特許文献2】特開2000−345533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、コンクリートブロックによる建築物の経済性、施工性の有利な条件をそのままに、4階建て以上の建築物に活用できることが求められている。
【0010】
しかしながら、上記に示すような、特開2002−161512号公報では、プレキャストコンクリートブロックの場合であり、コンクリートブロック構造の建築物に広く使用されている、C種普通ブロックには適用できない。
【0011】
また、上記の特開2000−345533号公報に示す防水性のコンクリートブロックは、一般建築物に使用する場合には、樹脂皮膜がモルタル接合に不適であり、また、皮膜の損傷の問題など、一般建築物への適用は、困難である。
【0012】
本発明は、4階建て以上の建築物にも使用可能な強度、耐久性を有し、かつ水密性が高く、防水性能を有する高耐久コンクリートブロックを提供し、また、この高耐久コンクリートブロックを用いた防水性を有する壁構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、水セメント比が15〜35%であることを特徴とする高耐久コンクリートブロックとするものである。
【0014】
セメントは、建築用に使用されるセメントであればいずれでも良く、たとえばポルトランドセメントが使用できる。
【0015】
ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントなどが挙げられる。
【0016】
水セメント比は、単位セメント量(C)に対する単位水量(W=90Kg/m3とした場合)であり、
W/C*100(%)である。
【0017】
セメント量の増量により、混和材を調整するものである。
【0018】
水セメント比はより好ましくは、20〜30%が良く、さらに好ましくは、25〜30%が良い。
【0019】
請求項2では、水が90Kg/m3に対して、セメントが250〜600Kg/m3、細骨材が750〜850Kg/m3、粗骨材が950〜1100Kg/m3、混和材が200〜250g/m3、配合されていることを特徴とする高耐久コンクリートブロックとするものである。
【0020】
細骨材および粗骨材の種類は限定されない。例えば、砕石などの天然骨材、天然の岩石鉱物を加熱して発泡させた人工軽量骨材、産業廃棄物としての高炉スラグ、海砂などを採用することができる。
【0021】
細骨材には、粒度が3mm以下の骨材を採用することができる。粗骨材には、粒度が3mmを超える骨材を採用することができる。
【0022】
混和材は、コンクリートブロックに使用される市販の混和材が使用できる。たとえば、ポールファインSY−1等でも良い。
【0023】
請求項3では、減水剤が混合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高耐久コンクリートブロックとするものである。
【0024】
減水剤とは、コンクリート中に独立した微細な気泡を発生させずに、コンクリートの流動性を向上させるものである。
【0025】
空気の発生量が少ないので、コンクリートの流動性の改善効果は若干低下する。しかしながら、コンクリートの初期水和熱による膨張ひび割れ、硬化中の乾燥収縮ひび割れをそれぞれほとんど誘発することなく、コンクリートの流動性を維持することができる。
【0026】
減水剤としては、例えば脱糖安定処理されたリグニンスルホン酸塩を主成分とするリグニン系の他、高縮合トリアジン系などの非空気連行性減水剤を採用することができる。
【0027】
請求項4では、セメント、細骨材、粗骨材、混和材、および水を、水セメント比が15〜35%となるように混練し、ペースト状のコンクリートを得るコンクリート混練工程と、型枠により、コンクリートブロックを画成する型枠組み立て工程と、該コンクリートブロック型枠に、前記ペースト状のコンクリートを充填し、該コンクリートを固化させることを特徴とする高耐久コンクリートブロックの製造方法。
【0028】
この発明によれば、コンクリート型枠にコンクリートを充填し、これを固化させることで、従来のコンクリートブロックに比べて、コンクリート中に発生する気泡が少なくなり、その結果、コンクリート自体が水密となり、高強度となり、かつ防水性が高まる。
【0029】
これにより、コンクリート自体が水密で防水機能を兼ね備え、強度の発現、耐久性および経済性をそれぞれ高めることができるものである。
【0030】
請求項5では、前記の請求項1〜3までのいずれかの項に記載の高耐久コンクリートブロックを用い、外面の接合部分に防水塗料を塗布することを特徴とする防水壁工法とするものである。
【0031】
該防水塗料は、コンクリートブロック壁の外面の接合部分に塗布することにより、コンクリートブロック同士の間隙からの水の侵入を防止できるものであればいずれでも良い。
【0032】
例えば、一般壁用防水塗料を使用することができる。ウレタン系防水塗料などでも良い。上記に示すように、本発明の高耐久コンクリートブロックを使用することにより、コンクリートブロック自体は防水性を有するものであるため、各コンクリートブロック間の間隙から水が浸入することを防止できればよい。
【0033】
また、防水塗料として、珪酸質系塗布防水剤などを使用しても良い。
【0034】
コンクリートブロック壁の表面に珪酸質系塗布防水剤を塗布することにより、コンクリート内部の水酸化カルシウムとナトリウム・カリウムシリケートとが水を介して反応し、防水用および劣化防止用の保護層が形成される。その結果、仮に地震などにより打設された防水コンクリートにひび割れが発生しても、そのひび割れを自己補修することができる。
【0035】
珪酸質系塗布防水剤とは、浸透性防水・劣化防止剤である。雨水などを取り込むことでコンクリート内部の水酸化カルシウムとナトリウム・カリウムシリケートとが反応し、カルシウムシリケート水和物からなる防水・劣化防止保護層(初期はゲル状、のち乾燥硬化)が形成される。防水・劣化防止効果は、コンクリート内部の水酸化カルシウムが存在する限り発揮される。
【発明の効果】
【0036】
本発明は以下の効果を奏する。
1)コンクリートブロックの強度、防水性が高い、高耐久コンクリートブロックを提供できる。
【0037】
2)コンクリートブロックの強度、防水性が高い、高耐久コンクリートブロックの製造方法を提供できる。
【0038】
3)経済的で施工性の良い、防水壁工法を提供できる。
【0039】
4)コンクリートブロック自体の強度が高いのでコンクリートブロックを用いた建築物として、4階建ての建築物に使用することが可能となる。
【0040】
5)防水性の高いコンクリートブロックによる壁工法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による高耐久コンクリートブロックの強度試験結果の表を示す図である。
【図2】本発明の高耐久コンクリートブロックによる壁工法の施工状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本高耐久コンクリートブロックは、以下のように製造することができるものである。
【0043】
セメント、細骨材、粗骨材、混和材、および水を、水セメント比が26%となるように混練し、ペースト状のコンクリートを製造し、C種普通ブロック(基本形150mm、横筋用150mm)を画成する型枠に充填し、固化させて製造した。
【0044】
セメントは、密度:3.16のポルトランドセメントを使用した。
【0045】
細骨材は、建築用に市販されている海砂(密度:2.56、最大寸法:5mm)を使用した。
【0046】
粗骨材は、建築用に市販されている砕石(密度:2.66、最大寸法:10mm)を使用した。
【0047】
混和剤は、市販されているコンクリート用混和剤を使用した。
【0048】
配合割合は、セメントが342kg/m3、細骨材は801Kg/m3、粗骨材は1061Kg/m3、混和材は239g/Kg/m3とした。
【0049】
水セメント比は26%とし、細骨材率は44%とした。単位水量は90Kg/m3とした。
【0050】
上記のように製造した高耐久コンクリートブロックについて、圧縮強度試験を実施した。
【0051】
図1は、上記の実施例のとおり製造された高耐久コンクリートブロックの強度試験結果の表を示す。
【0052】
表に示すように、本発明の高耐久コンクリートブロックについて、高強度−1、高強度−2、高強度−3の3つの試験体で実施した。
【0053】
比較データとして、JIS A 5406によるC種普通ブロックについても、同様にC種−1、C種−2、C種−3の3つの試験体で実施した。
【0054】
表より明らかなように、本発明の高耐久コンクリートブロックの強度は、平均で18.0MPaであり、従来のC種普通ブロックの強度は平均で11.4MPaであり、明らかに、本発明による高耐久コンクリートブロックの強度が高いことが確認された。。
【0055】
図2は、本発明の高耐久コンクリートブロックによる壁工法の施工状態を示す図である。
【0056】
上記に示すように製造された高耐久コンクリートブロック1を用いて、建築物の壁を施工し、コンクリートブロック同士の目地部2に建築用防水塗料3を刷毛塗りにより塗布した。
【0057】
これにより、コンクリートブロック本体は、高耐久コンクリートブロック1が防水性を有しており、目地部2を防水塗装することで、壁内への水の侵入を防止することができるものである。
【0058】
この防水塗料の処理の後、外壁の仕上げを行うことにより、特別な外観上の変化がなく、自由に壁面仕上げを行うことができる。経済的な防水施工を実現できるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 高耐久コンクリートブロック
2 目地部
3 建築用防水塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水セメント比が15〜35%であることを特徴とする高耐久コンクリートブロック。
【請求項2】
水90Kg/m3に対して、セメントが250〜600Kg/m3、細骨材が750〜850Kg/m3、粗骨材が950〜1100Kg/m3、混和材が200〜250g/m3、配合されていることを特徴とする高耐久コンクリートブロック。
【請求項3】
減水剤が混合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高耐久コンクリートブロック。
【請求項4】
セメント、細骨材、粗骨材、混和材、および水を、水セメント比が15〜35%となるように混練し、ペースト状のコンクリートを得るコンクリート混練工程と、
型枠により、コンリートブロックを画成する型枠組み立て工程と、
該コンクリートブロック型枠に、前記ペースト状のコンクリートを充填し、該コンクリートを固化させることを特徴とする高耐久コンクリートブロックの製造方法。
【請求項5】
前記の請求項1〜3までのいずれかの項に記載の高耐久コンクリートブロックを用い、外面の接合部分に防水塗料を塗布することを特徴とする防水壁工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−6767(P2012−6767A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141143(P2010−141143)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(508334340)株式会社未来企画 (3)
【Fターム(参考)】