説明

高耐久性炭化ケイ素焼結体及びその製造方法。

【課題】高耐久性炭化ケイ素焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質炭化ケイ素焼結体を酸化防止液に含浸させ、多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に酸化防止液を充填させる工程と、酸化防止液を乾燥させ多孔質炭化ケイ素焼結体内部及び表面に熱膨張係数が炭化ケイ素に近似する酸化防止膜を形成する工程と、を含む高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高耐久性炭化ケイ素焼結体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素焼結体から構成されたヒータは、使用可能雰囲気が制限されずしかも急速昇温・降温特性に優れている。そのため、半導体ウェハの各種熱処理用ヒータとして提案されている。ところが、炭化ケイ素ヒータは通常多孔質体から形成されているため、酸化雰囲気中で使用すると、炭化ケイ素ヒータ内部に酸素が侵入して、炭化ケイ素ヒータが酸化し劣化される傾向がある。炭化ケイ素ヒータの寿命は多孔質体を構成している個々の粒子の結合部の径により決まるといえる。
【0003】
上記課題を解決する手段としては、炭化ケイ素ヒータ表面にアルミナやムライトの溶射やSiCのCVDコートを行ったヒータ内部への酸素の浸入を防ぐことによりヒータの寿命を延ばす技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、これらの酸化防止膜に少しでもクラックやピンホールが空いてしまうと内部に酸素が浸入して酸化が始まり酸化防止効果が小さくなるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−101312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高耐久性炭化ケイ素焼結体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の内容に関する:
(1) 多孔質炭化ケイ素焼結体を酸化防止液に含浸させ、多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に酸化防止液を充填させる工程と、酸化防止液を乾燥させ多孔質炭化ケイ素焼結体内部及び表面に熱膨張係数が炭化ケイ素に近似する酸化防止膜を形成する工程と、を含む高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(2) 酸化防止膜の熱膨張係数は、3.8×10−6/℃〜5.5×10−6/℃である上記1記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(3) 酸化防止液は、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウムからなる群から選択されるものである上記(1)又は(2)に記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(4) 酸化防止液は、高分子ゲルである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(5) 多孔質炭化ケイ素焼結体のかさ密度は、2.2g/cm3以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(6) 多孔質炭化ケイ素焼結体のかさ密度は、1.8〜2.2g/cm3である上記(5)に記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法により得られた高耐久性炭化ケイ素焼結体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高耐久性炭化ケイ素焼結体及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。図中、同一の機能及び用途を有するものについては同様の符号を付して説明を省略する。高耐久性炭化ケイ素焼結体からなる発熱体を備える炭化ケイ素焼結体ヒータの説明を介して、高耐久性炭化ケイ素焼結体について説明する。
【0009】
〔炭化ケイ素焼結体ヒータ〕
図1は、実施形態にかかる高耐久性炭化ケイ素焼結体からなる発熱体1を備える炭化ケイ素焼結体ヒータ30の斜視図を示す。図1に示すように、炭化ケイ素焼結体ヒータ30は、高耐久性多孔質炭化ケイ素焼結体からなる発熱体1と、加熱体1に通電して加熱体1を昇温させる炭化ケイ素焼結体からなる1対の電極2a、2bと、を備える。尚、図1中発明の理解を容易にするため発熱体1の溝の記載は省略してある。
【0010】
図2に示すように、発熱体1の表面には熱膨張係数が炭化ケイ素に近似する酸化防止膜が形成されている。また図3に示すように、発熱体1の内面には炭化ケイ素焼結体の空孔15を充填するように酸化防止膜13が形成されている。酸化防止膜13の熱膨張係数は、3.8×10−6/℃〜5.5×10−6/℃が好ましく、3.8×10−6/℃〜4.6×10−6/℃がさらに好ましい。酸化防止膜(液)13としては、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウムからなる群から選択されることが好ましい。酸化防止膜(液)13は、高分子ゲルであっても構わない。多孔質炭化ケイ素焼結体のかさ密度は、2.2g/cm3以下が好ましく、1.8〜2.2g/cm3がさらに好ましい。
【0011】
加熱体1と電極2a、2bは、グリーン体を雰囲気炉で焼成することによって製造することができる。加熱体1はさらに酸化防止膜となる酸化防止液もしくは高分子ゲルを含浸させ、多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に酸化防止液を充填させることにより製造される。詳細は後述する。
【0012】
本実施形態に用いられる炭化ケイ素焼結体の製造方法について以下に説明する。
〔炭化ケイ素焼結体の製造方法に用いられる成分〕
まず炭化ケイ素焼結体の製造方法に用いられる成分について説明する:
炭化ケイ素粉末として、α型、β型、非晶質あるいはこれらの混合物等が挙げられる。また、高純度の炭化ケイ素焼結体を得るためには、原料の炭化ケイ素粉末として、高純度の炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。このβ型炭化ケイ素粉末のグレードには特に制限はなく、例えば、一般に市販されているβ型炭化ケイ素を用いることができる。炭化ケイ素粉末の粒径は、高密度の加熱体を製造する観点からは小さいことが好ましく、具体的には、0.01μm〜20μm程度、さらに好ましくは0.05μm〜10μmである。粒径が、0.01μm未満であると、計量、混合等の処理工程における取扱いが困難となりやすく、20μmを超えると、比表面積が小さく、隣接する粉末との接触面積が小さくなり、高密度化し難くなるため好ましくない。一方、多孔質の電極を製造する観点からは、炭化ケイ素粉末の粒径は0.05μm〜50μm程度、さらに好ましくは1μm〜20μmである。粒径が0.05μm未満では焼結体の密度が1.8g/cm3以下となるからである。また粒径が50g/cm3よりも大きいと粒子間の結合が十分に進まず、強度が50MPa未満となり電極として十分な強度が得られないからである。
【0013】
ここで「粒径」とは走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真から任意に選んだ200個の炭化ケイ素微粒子について個々の粒子の粒径を測定したときの炭化ケイ素微粒子の平均粒径をいうものとする。炭化ケイ素粉末の粒径は、得られた炭化ケイ素粉末をジェットミルで粉砕することにより例えば1μmから20μmの粉体に作製することができる。
【0014】
高純度の炭化ケイ素粉末は、例えば、少なくとも1種以上のケイ素化合物を含むケイ素源と、少なくとも1種以上の加熱により炭素を生成する有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒と、を溶媒中で溶解し、乾燥した後に得られた粉末を非酸化性雰囲気下で焼成する工程により得ることができる。
【0015】
ケイ素化合物を含むケイ素源(以下、「ケイ素源」という。)として、液状のものと固体のものとを併用することができるが、少なくとも1種は液状のものから選ばれなくてはならない。液状のものとしては、アルコキシシラン(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)及びテトラアルコキシシランの重合体が用いられる。アルコキシシランの中ではテトラアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられるが、ハンドリングの点からは、エトキシシランが好ましい。また、テトラアルコキシシランの重合体としては、重合度が2〜15程度の低分子量重合体(オリゴマー)及びさらに重合度が高いケイ酸ポリマーで液状のものが挙げられる。これらと併用可能な固体状のものとしては、酸化ケイ素が挙げられる。前述の反応焼結法において酸化ケイ素とは、SiOの他、シリカゲル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化ケイ素(シリカゲル、微細シリカ、石英粉末)等を含む。これらケイ素源は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0016】
これらケイ素源の中でも、均質性やハンドリング性が良好な観点から、テトラエトキシシランのオリゴマー及びテトラエトキシシランのオリゴマーと微粉末シリカとの混合物等が好適である。また、これらのケイ素源は高純度の物質が用いられ、初期の不純物含有量が20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
炭素源として用いられる物質は、酸素を分子内に含有し、加熱により炭素を残留する高純度有機化合物であることが好ましい。具体的には、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂やグルコース等の単糖類、蔗糖等の少糖類、セルロース、デンプン等の多糖類などの等の各種糖類が挙げられる。これらはケイ素源と均質に混合するという目的から、常温で液状のもの、溶媒に溶解するもの、熱可塑性あるいは熱融解性のように加熱することにより軟化するものあるいは液状となるものが主に用いられる。中でも、レゾール型フェノール樹脂やノボラック型フェノール樹脂が好適である。特に、レゾール型フェノール樹脂が好適に使用される。
【0018】
高純度の炭化ケイ素粉末の製造に用いられる重合及び架橋触媒としては、炭素源に応じて適宜選択でき、炭素源がフェノール樹脂やフラン樹脂の場合、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、しゅう酸、硫酸等の酸類が挙げられる。これらの中でも、トルエンスルホン酸が好適に用いられる。
【0019】
[多孔質炭化ケイ素焼結体からなる加熱体の製造]
実施形態にかかる高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法は、(1)多孔質炭化ケイ素焼結体を調製する工程と、(2)多孔質炭化ケイ素焼結体を酸化防止液に含浸させ、多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に酸化防止液を充填させる工程と、(3)酸化防止液を乾燥させ多孔質炭化ケイ素焼結体内部及び表面に熱膨張係数が炭化ケイ素に近似する酸化防止膜を形成する工程と、を含む。以下工程ごとに詳細に説明する。
【0020】
(1)工程
(混合粉体を得る工程)炭化ケイ素粉末を溶媒中に分散させてスラリー状の混合粉体を製造する。次に、ミキサー、遊星ボールミルなどの攪拌混合手段を用いて、1時間〜24時間攪拌混合を行う。(グリーン体を得る工程)スラリー状の混合粉体を鋳込み成形用型に流し込む。その後、放置、脱型した後、40℃〜60℃の温度条件下で加熱乾燥又は自然乾燥して溶媒を除去する。そして規定寸法のグリーン体、即ちスラリー状の混合粉体から溶媒を除去して炭化ケイ素成形体を得る。
【0021】
(第1の加熱工程)グリーン体を真空雰囲気下550℃〜650℃まで約2時間程度かけて昇温する。加熱温度が550℃未満だと脱脂が不十分になる。また脱脂は650℃前後で終了する。そのため、前述の加熱温度範囲内の一定の温度で加熱する。昇温速度は、配合物中のバインダーの急激な熱分解による爆裂を防止するため300℃/1hr以下とする。そして、一定の温度に達した後、真空雰囲気下その温度条件に30分間保持することで仮焼体が得られる。(第2の加熱工程)仮焼体を窒素ガス雰囲気下1atmで1500℃以上の温度まで昇温する。好ましくは温度1800℃〜2400℃まで昇温する。2400℃以上では炉の消耗が激しくなり、安定的な運転ができなくなるためである。また加熱温度が1500℃未満では焼結が十分に進まず焼結体の強度が低下するからである。そのため、この温度範囲内の一定の温度で加熱する。その際、強度が増加する観点からは、加熱温度を1800℃〜2100℃とすることが好ましい。そして、一定の温度に達した後、窒素ガス含有雰囲気下その温度条件に0.5〜8時間保持する。同じ加熱温度であれば、(a)保持時間を長くする、(b)圧力(atm)を高くする、の少なくともいずれか一方の条件に設定することで炭化ケイ素焼結体中の窒素量が増加する。
【0022】
(2)、(3)工程
多孔質炭化ケイ素焼結体を酸化防止液に含浸させ、多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に酸化防止液を充填させる。その後、酸化防止液を乾燥させ、大気中で焼成させて多孔質炭化ケイ素焼結体内部及び表面に熱膨張係数が炭化ケイ素に近似する酸化防止膜を形成する。酸化防止液(膜)としては多孔質炭化ケイ素焼結体の熱膨張率が近いムライト(3Al23・2SiO2)、ジルコン(ZrSiO4)、窒化アルミ(AlN)を用いることが好ましい。酸化防止膜でコートすることにより酸化雰囲気中でも耐久性のある多孔質炭化ケイ素焼結体からなる発熱体1が得られる。
【0023】
具体的にはムライト、ジルコンを用いる場合、ムライト、ジルコンのそれぞれのゲルを作製し、多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に含浸し乾燥する。その後、大気中で焼成することにより、ムライトやジルコンで多孔質炭化ケイ素焼結体の粒子表面を均一に覆うことが出来る。窒化アルミを用いる場合、多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に先ず塩化アルミや硝酸アルミの水溶液を含浸し乾燥後、融解した尿素を更に含浸することによりアルミニウムと尿素の化合物を作製する。その後窒素(N2)雰囲気中で焼成することにより窒化アルミにより多孔質炭化ケイ素焼結体の粒子表面を均一に覆うことが出来る。
【0024】
これらの方法で出来上がったヒータは、図3に示すように、三次元網状に繋がった炭化ケイ素粒子11の大部分が耐酸化性セラミックスで覆われている。そのため、仮に出来上がった耐酸化性セラミックス膜の一部にクラックやピンホールが形成され酸化が進行したとしても、ヒータの寿命に大きな影響は与えず、単に表面コートされた炭化ケイ素ヒータより寿命が長い。
【0025】
炭化ケイ素焼結体ヒータ30の加熱体1の不純物の総含有量は、10ppm未満、好ましくは5ppm未満、より好ましくは3ppm未満、さらに好ましくは1ppm未満である。なお、液状のケイ素化合物と、非金属系焼結助剤と、重合又は架橋触媒と、を均質に混合して得られた固形物を非酸化性雰囲気下で加熱炭化した後、さらに、非酸化性雰囲気下で焼成する焼成工程とを含む製造方法によれば、炭化ケイ素焼結体に含まれるケイ素、炭素、酸素以外の不純物の総含有量を1ppm未満にすることができる。本発明の実施形態にかかる炭化ケイ素焼結体ヒータ30の加熱体1の窒素含有量は、150ppm以上である。
【0026】
炭化ケイ素焼結体ヒータ30の加熱体1のケイ素及び炭素以外の不純物元素の総含有量は5ppm未満である。曲げ強度は50MPa以上、好ましい態様において100MPa以上である。
【0027】
原料粉体である炭化ケイ素粉体及び原料粉体を製造するためのケイ素源と非金属系焼結助剤、さらに、非酸化性雰囲気とするために用いられる不活性ガス、それぞれの純度は、各不純物元素含有量1ppm以下であることが好ましいが、加熱、焼結工程における純化の許容範囲内であれば必ずしもこれに限定するものではない。また、ここで不純物元素とは、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から16族元素に属し、かつ、原子番号3以上であり、原子番号6〜8及び同14〜16の元素を除く元素をいう。
【0028】
多孔質炭化ケイ素焼結体からなる加熱体1のかさ密度は2.2g/cm3以下、好ましくは1.8〜2.2g/cm3である。また加熱体1の熱伝導率は100w/m・k以下、好ましくは80〜100w/m・kである。
【0029】
多孔質炭化ケイ素焼結体からなる加熱体1のその他の物性を挙げると以下の通りである。空隙率が32%以上、好ましくは32%〜44%である。また100℃における抵抗が0.002Ωcm〜0.06Ωcm、好ましくは0.002Ωcm〜0.05Ωcmであり、100℃における抵抗をAとし、1000℃における抵抗をBとした際に、B/A=0.2〜2である。さらに電極2の窒素含量は500ppm以上、好ましくは500ppm〜1200ppmである。実施形態にかかる炭化ケイ素焼結体ヒータ30の加熱体1の不純物の総含有量は、10ppm未満、好ましくは5ppm未満、より好ましくは3ppm未満、さらに好ましくは1ppm未満である。
【0030】
尚、上記物性の評価基準は以下の通りである。かさ密度(g/cm)は、JIS R1634に従ってアルキメデス法により算出した値である。熱伝導率(w/m・k)は、レーザーフラッシュ法で、熱拡散率、比熱を測定し、熱拡散率×比熱×密度の式から算出した値である。1000℃での比抵抗(Ω・cm)は2端子法で測定した値である。
【0031】
(実施形態の変形例)
上記のように本発明は実施形態の応用例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば実施形態においては加熱体1のみについて酸化防止膜13を設けたが、電極2a、2bについても酸化防止膜13を設けても構わない。他の例としては、加熱体1と電極2a、2bは、ヒータの均熱性を向上させる観点からは接合材を加熱焼結して得られる炭化ケイ素焼結体を介して図4(c)に示すように一体に接合することができる。具体的には図4(b)に示すように、加熱体1と電極2の接合部15に、炭化ケイ素(SiC)を含むスラリー状の接合材を塗布し、その後不活性雰囲気下1400℃〜1600℃で接合材を加熱焼結する方法が挙げられる。不活性雰囲気としてはアルゴンガス、窒素ガス雰囲気が挙げられる。接合材としては、炭化ケイ素粉末、ケイ素源、炭素源、フェノール樹脂を含む混合粉を用いることができる。かかる混合粉を溶媒に分散させてスラリー状の混合粉体としてもよい。各成分は上記成分を用いることができる。接合材の成分比は、炭化ケイ素粉100重量部に対して、金属ケイ素粉を10〜40重量部、炭素粉を5〜30重量部、樹脂を10〜30重量部を含むことが好ましい。樹脂としてはフェノール樹脂を用いることができる。加熱体1と電極2が炭化ケイ素を含む材料からなると共に、炭化ケイ素を含む材料からなる接合材により一体に成形することにより、加熱時に不純物が放出されることがなくなる。その結果、ヒータとして用いた場合加熱雰囲気の高純度化を図ることができる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。前述の炭化ケイ素焼結体ヒータ30の製造方法に準じて、以下の条件下で炭化ケイ素焼結体ヒータの加熱体1を製造した。
【0033】
(実施例1)
窒素を0.15wt%含む粒径2μmと10μmのβ型炭化ケイ素粉を、重量基準で、各50部と純水40部、バインダー(三井化学株式会社製商標名「WA320」)、分散剤(中京油脂株式会社製商標名「D735」)0.5部をボールミルで混合しスラリーを作製した。スラリーを石膏型に流し込み成形体を作製し乾燥しグリーン体を得た。得られたグリーン体を雰囲気炉に入れ2000℃、窒素雰囲気下、1atomの条件で1時間焼成し多孔質炭化ケイ素焼結体を得た。
次に塩化アルミニウム六水和物(AlCl3・6H2O)の水溶液とエチルシリケート(多摩化学工業株式会社製商標名「ES40」)を加水分解したシリカゾルをAl/Si=3になるように混合した溶液を多孔質炭化ケイ素焼結体に含浸させた。その後、110℃で12時間乾燥後、大気炉で1300℃で2時間加熱処理してムライトで表面をコートした多孔質炭化ケイ素焼結体からなる加熱体1を作製した。
得られた加熱体1を酸化雰囲気中で発熱させ1000℃で保持したところ1000時間での抵抗増加率は5%であった。
【0034】
(実施例2)
実施例1と同様にして多孔質炭化ケイ素焼結体を得た。次にオキシ塩化ジルコニウム8水和物(ZrCl2O・8H2O)の水溶液とエチルシリケート(多摩化学工業製商標名「ES40」)を加水分解したシリカゾルをZr/Si=1になるように混合した溶液を多孔質炭化ケイ素焼結体に含浸した。その後、110℃で12時間乾燥後、大気炉で1200℃で2時間加熱処理してジルコンで表面をコートして多孔質炭化ケイ素焼結体からなる加熱体1を作製した。得られた加熱体1を酸化雰囲気中で発熱させ1000℃で保持したところ1000時間での抵抗増加率は7%であった。
【0035】
(実施例3)
実施例1と同様にして多孔質炭化ケイ素焼結体を得た。次に塩化アルミニウム六水和物(AlCl3・6H2O)の水溶液(濃度1mol/L)を得られた多孔質炭化ケイ素焼結体に含浸し110℃で12時間乾燥させた。さらに140℃で熔解した尿素を含浸し、先に含浸した塩化アルミニウムと反応させた。次に窒素雰囲気下、1atomの雰囲気炉で1400℃で2時間加熱処理して窒化アルミニウムで表面をコートした多孔質炭化ケイ素焼結体からなる加熱体1を作製した。
加熱体1を酸化雰囲気中で発熱させ1000℃で保持したところ1000時間での抵抗増加率は4%であった。
【0036】
(比較例)
実施例1と同様にして多孔質炭化ケイ素焼結体を得た。多孔質炭化ケイ素焼結体をそのまま酸化雰囲気中で発熱させ1000℃で保持したところ1000時間での抵抗増加率は23%であった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、実施形態にかかる高耐久性炭化ケイ素焼結体からなる発熱体を備える炭化ケイ素焼結体ヒータの斜視図を示す。
【図2】図2は高耐久性炭化ケイ素焼結体からなる発熱体の断面図を示す。
【図3】図3は高耐久性炭化ケイ素焼結体からなる発熱体の断面拡大図を示す。
【図4】図4(a)、(b)、(c)は炭化ケイ素焼結体ヒータの製造工程図を示す。
【符号の説明】
【0038】
1…加熱体
2a、2b…電極
21…電極端部
13…酸化防止膜
30…炭化ケイ素焼結体ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭化ケイ素焼結体を酸化防止液に含浸させ、前記多孔質炭化ケイ素焼結体の気孔に酸化防止液を充填させる工程と、
前記酸化防止液を乾燥させ前記多孔質炭化ケイ素焼結体内部及び表面に熱膨張係数が炭化ケイ素に近似する酸化防止膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記酸化防止膜の熱膨張係数は、3.8×10−6/℃〜5.5×10−6/℃であることを特徴とする請求項1記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記酸化防止液は、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウムからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記酸化防止液は、高分子ゲルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項5】
多孔質炭化ケイ素焼結体のかさ密度は、2.2g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項6】
多孔質炭化ケイ素焼結体のかさ密度は、1.8〜2.2g/cm3であることを特徴とする請求項5に記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の高耐久性炭化ケイ素焼結体の製造方法により得られた高耐久性炭化ケイ素焼結体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308373(P2008−308373A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159224(P2007−159224)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】