説明

高脂血症を治療及び/又は予防する医薬組成物、その製法及びその使用

本発明は、何首鳥を含む医薬組成物を開示し、これは、何首鳥、サンザシ、タンジン及び三七を含む。医薬組成物は、必要に応じて、薬学的に許容できる担体を含んでよい。本組成物中の何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の重量の割合は、何首鳥10〜20部、タンジン5〜15部、サンザシ10〜20部及び三七1〜10部である。本発明は、また、組成物を調製する方法を開示し、この方法は、生薬を直接に粉末に粉砕して、組成物を製造するか、又は生薬から抽出物を調製し、次いで抽出物を薬にするステップを含む。本発明の組成物は、血中脂質を低下させる効果を有し、そのため、高脂血症を治療及び/又は予防する薬を製造するのに使用することができる。本発明は、高脂血症を治療及び/又は予防する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬分野に関する。更に具体的には、本発明は、血中脂質を下げる薬理効果を有する何首鳥(Polygonum multiflorum Thunb)を含有する医薬組成物、その製法、その薬理効果、並びに血中脂質低下薬又は高脂血症を治療及び/若しくは予防する薬の製造のためのその使用に関する。本発明の組成物及びこれに対応する製剤は、高脂血症を治療及び/又は予防するために使用することができる。更に、本発明は、高脂血症を治療及び/又は予防するためにこの組成物を利用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
何首鳥(別名Tuber fleeceflower root)、中国語で、首鳥及び赤首鳥とも称するが、これは、野生植物に属するタデ科のツルドクダミの多年生蔦状薬草の乾燥塊根から由来する。この植物は、主として、河南省、湖北省、広西省、広東省、貴州省、四川省、洪蘇省等を含む中国の多くの地域に分布している。
【0003】
現代の薬理学的研究により、何首鳥が、老化防止、抗疲労、肝臓保護及び血液細胞の再生と発育の促進等々のような多様な作用を有することが示された。宋士牢等(SONG,Shijun et al,Study on the effect of Polygonum multiflorum Thunb on the experimental hyperlipidemia,Journal of Hebei Traditional Chinese Medicine and Pharmacology,2003,Vol.18,No.4,90〜91)は、ラットやマウスで、血中脂質を低下させる何首鳥の効果を観察し、そのメカニズムを調査した。結果から示されるように、何首鳥は、ラットで、血中トリグリセリド及び血中コレステロールを著しく下げることができた。
【0004】
これ単一の処方についての研究のほかに、何首鳥を含む複合の処方に関する多数の報告がある。
【0005】
張ら(ZHANG,Minfang et al,Clinically therapeutic study of Dispel Fatty Decoction in combination with sodium alginate diester in 35 cases of fatty liver,Shaanxi Journal of Traditional Chinese Medicine,2002,vol.23,No.10,903〜904)は、脂肪消散煎じ薬(Dispel Fatty Decoction:タンジン(Salvia miltiorrhiza Bunge)、サンザシ(Fructus Crataegi)、何首鳥、決明子(Semen Cassiae)、郁金(Radix Curcumae)及びソウジュツ(Rhizoma atractylodis)等)をアルギン酸ナトリウムジエステルと併用して使用し、脂肪肝の35症例を治療し、かつ23症例の対照群をセットアップした。結果は、治療群と対照群との間で有意な違いを示した。脂肪肝の治療に関し、伝統的中国医薬(TCM)と西洋医薬との融合は、例えば肝臓の脂質代謝の増進、肝機能の調節及び生体代謝の増強等の多数の有益な効能を有することが示された。
【0006】
李ら(LI,Xiating et al,Clinically therapeutic analysis of Liver−Softening and Fat−Reducing Capsule in 45 cases of fatty liver,Jiangsu Journal of Traditional Chinese Medicine,2000,Vol.21,No.6,15〜16)は、脂肪肝の治療に、肝臓軟化・脂肪低下カプセル(Liver−Softening and Fat−Reducing Capsule:制大黄(Radix et Rhizoma Rhei Preparata)、セキシャク(Radix Paeoniae Rubra)、タンジン、生サンザシ(サンザシ果)、何首鳥及び牡蠣(Concha Ostreae)等から調製)を使用することを開示した。肝機能、血中脂質及び肝臓の画像変化の定期的チェックの結果から、治療前と後における肝機能及び血中脂質の顕著な差(P<0.05)並びに軽微の異常反応を伴う肝臓の形態上の著しい変化が示された。カプセルは、脂肪肝患者の肝機能及び血中脂質のレベルを効果的に改善でき、肝臓の画像の顕著な改善を伴うことが示された。
【0007】
YANGら(YANG,Futai et al,Clinical observation of Fat−Regulating and Liver−Strengthening Decoction in treatment of 60 cases of fatty liver,New Journal of Traditional Chinese Medicine,2004,Vol.36,No.3,39〜40)は、脂肪調整・肝臓強化煎じ薬(Fat−Regulating and Liver−Strengthening Decoction:処方箋:サンザシ、何首鳥、タンジン、ブクリョウ(Poria cocos(Schw.)Wolf)、陳皮(Pericarpium citri Reticulatae)、タクシャ(Alisma orientalis(Sam.)Juzep.)、鶏内金(Endothelium Corneum Gigeriae Galli)、ガジュツ(Rhizoma Zedoariae Preparata)、法半夏(Rhizoma Pinelliae Preparata)、決明子、姜黄(Rhizoma curcumae longae)、三七(Radix Notoginseng)粉)の脂肪肝に及ぼす治療効果と対照薬物の治療効果とを比較し、その治療効果を観察した。生じた違いは非常に重要で(P<0.01)、脂肪調整・肝臓強化煎じ薬は、肝臓の脂質代謝を促進し、脂質を低下させ、かつ調整するのみばかりか、脂肪肝の治療に良好な効能も有し得ることを示した。
【0008】
何首鳥の前記の複合処方の大部分は、工業化には複雑であり、好ましくないことが理解できる。同時に、その研究は、主に脂肪肝の治療を中心に進められている。心血管系及び脳血管系疾病に対するこれらの治療効果の研究は、今まで決して実行されていなかった。
【0009】
TCMの理論によれば、何首鳥は、肝臓及び腎臓に栄養を与え、血液浄化に有益であり、通便を良くするというような、多くの効用を有する。現代の薬理学的研究が示すように、多数のプラスの効能が、この漢方薬に見出されており、この効能は、コレステロールを低下させること、腸を介するコレステロールの吸収を減じて、血中へのその沈積を止めること、動脈硬化の形成を軽減かつ緩和すること、脂質の血中貯留又は動脈内膜への浸透を妨げることのみにあるばかりではなく、微小循環を改良し、血栓の形成を防止することにもある。一方、タンジン及び三七は、血液循環を促進して、うっ血を除き、かつ微小循環を改善することを特徴とする。サンザシを併用することにより、微小循環を改善する目的と、血中脂質を低下させる目的とが、同時に達成でき、そのため、臨床で高脂血症の治療に効果が大となろう。
【0010】
大量の検証された処方に関する研究に基づき、本発明の発明者は、頻繁に使用されるものより簡単な、新規のTCM組成物を提案し、これは、血中脂質を低下させる優れた作用を有する。これは、臨床的には、高脂血症に明らかに治療効果を有するのみならず、種々の心臓及び脳血管系疾病をコントロールする及び/又は緩和させる効果も有する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、何首鳥を含有する医薬組成物を提供することである。この組成物及びあらゆる種類のその製剤は、血中脂質を低下させる作用を有し、高脂血症の治療及び/又は予防のために使用でき、かつ種々の高脂血症に関連する心臓及び脳血管系疾病をコントロールする及び/又は緩和させるために使用することができる。この組成物は、何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七を含む。医薬組成物は、慣用の薬学的に許容できる担体を含んでよい。
【0012】
本発明で使用される全ての生薬は、中国薬局方の基準に従っている。これらは、調合薬草(「飲片」は、生薬から加工された薬草を示す)の形状であり、かつ好ましくはその形状で使用することができる。
【0013】
本発明の組成物は、慣用の製剤いずれにも調製でき、特に経口剤に調製することができる。
【0014】
本発明の組成物は、何首鳥10〜20重量部、タンジン5〜15重量部、サンザシ10〜20重量部及び三七1〜10重量部を含む。有利には、何首鳥15重量部、タンジン10重量部、サンザシ15重量部及び三七5重量部を含む。
【0015】
本発明の組成物は、薬学的に許容できる担体を1つ以上含んでもよく、前記担体は、製剤領域で公知の慣用のものであってよい。例えば、前記担体は、液体又は固体の賦形剤、希釈剤、湿潤剤、保存剤、甘味剤、香味並びに着色剤等である。経口剤の調製において、最も慣用の担体の例として、デンプン、ラクトース、タルク粉及び/又はデキストリン等が挙げられる。
【0016】
担体の種類及び/又は量は、製剤領域で公知の知識に従って選択される。一般に、担体の量は、かなり差があり、例えば、担体は、1wt%から生薬の総量の数倍の量まで占めることもある。
【0017】
本発明の他の目的は、前記医薬組成物の調製方法を提供する事である。前記組成物は、従来技術で公知の慣用の方法により調製することができる。例えば、何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の生薬は、粉砕して直接に粉末にし、その後、所望の製剤に調製する。
【0018】
具体的には、本発明の方法は、
(1)何首鳥10〜20重量部、タンジン5〜15重量部、サンザシ10〜20重量部及び三七1〜10重量部の各生薬を用意するステップと、
(2)前記生薬を粉末に粉砕し、ブレンドするステップと、
(3)場合により必要な製薬担体を添加した後、慣用の方法により所望の薬剤に調製するステップとを含む。
【0019】
あるいは、本発明の組成物を調製する際に、何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七から、先ず、その抽出物を調製することもあり、次いでこれらの抽出物を組成物へと調製する。
【0020】
具体的には、本発明の組成物の調製法は、
(1)何首鳥10〜20重量部、タンジン5〜15重量部、サンザシ10〜20重量部及び三七1〜10重量部の各生薬を用意するステップと、
(2)前記各生薬を粉末に粉砕するステップと、
(3)何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の抽出物を別々に準備し、これら抽出物全てをブレンドするか、又は前記抽出物を粉末に調製した後、これら抽出物の粉末をブレンドするステップと、
(4)場合により必要な製薬上の担体を添加した後、所望の薬剤に調製するステップとを含む。
【0021】
必要に応じて、温度約50〜60℃、例えば55℃で、約10〜12時間、乾燥させる追加ステップを、本方法に更に含むことができる。
【0022】
何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の抽出物を製造する際に、4つの生薬のそれぞれを別々に抽出するか、又はこれら4つの生薬をその2〜4種類の任意の組み合わせで混合し、例えば、何首鳥とタンジンとの混合物、タンジンと三七との混合物、又は何首鳥とタンジンと三七との混合物にして、その後、この混合物を別々に抽出することができる。
【0023】
前記4つの生薬は、慣用の方法により抽出され、例えばこの方法は、水抽出−アルコール沈殿法、浸出法及びカラムクロマトグラフィー等であるが、これらに限定はされない。タンジンについては、抽出工程は、水抽出法、アルコール抽出法、又はマクロポーラス樹脂による分離を伴う水抽出−アルコール沈殿法から選択することができ、何首鳥については、抽出工程は、水抽出法、又はマクロポーラス樹脂による分離を伴うアルコール抽出法から選択することができ、サンザシについては、抽出工程は、水抽出法、又はポリアミド樹脂による分離を伴う水抽出法から選択することができ、三七については、抽出工程は、エタノール抽出法、又はマクロポーラス樹脂による分離を伴うアルコール抽出法から選択することができる。
【0024】
本発明を容易に理解するために、本発明の組成物の成分の抽出法を以下に記載するが、以下の記載は本発明の限定を意図するものではない。
【0025】
(何首鳥の水抽出法)
何首鳥を粉砕し、そこに水を添加して数回抽出する。生じた抽出物を集めて、濃縮し、何首鳥抽出物を得た。
【0026】
(マクロポーラス樹脂による分離を伴う、何首鳥のためのアルコール抽出法)
何首鳥をエタノールで浸出し、生じた浸出液をマクロポーラス樹脂カラムに適用し、エタノール−水のグラジエント系で洗浄した。洗浄液を集めて、濃縮し、何首鳥抽出物を得た。
【0027】
(タンジンの水抽出法)
タンジンを粉砕し、20メッシュの篩に通した。水を添加し、2回抽出した。最初の回は、薬効材料を水(×9〜10倍)に浸し、1.5時間加熱して抽出した。2回目は、水(×5〜7倍)を添加し、1時間加熱して抽出した。生じた煎汁を集め、適切に濃縮し、95%エタノールを添加して、エタノール濃度を50〜70%にし、次いで、エタノールを回収して濃縮し、タンジン抽出物を得た。
【0028】
(タンジンのアルコール抽出法)
タンジンを粉砕し、20メッシュの篩に通した。薬草は、7〜9倍量の70%エタノールを用いて、各回1時間で、2回加熱還流させて抽出した。抽出物を集め、濃縮して、タンジン抽出物を得た。
【0029】
(タンジンの有効成分の抽出法(水抽出−アルコール沈殿法))
タンジンの薬効材料を粉砕し、20メッシュの篩に通し、水又はエタノールで抽出した。抽出物を濃縮し、エタノールで沈殿させた。エタノール回収後、抽出物を水に溶解し、マクロポーラス樹脂カラムにより分離した。カラムを水で洗浄して、不純物を除き、その後、有効成分が完全に分離するまでエタノールで洗浄した。エタノール回収後に、乾燥させたタンジン抽出物を得た。
【0030】
(サンザシの水抽出法)
サンザシを取り、適切な温度で、水により数回抽出した。抽出物を集めて、濃縮し、サンザシ抽出物を得た。
【0031】
(ポリアミド樹脂による分離を伴う、サンザシのアルコール抽出法)
サンザシを、還流により、エタノールで数回抽出した。抽出物を集め、適切に濃縮し、その後、これをポリアミド樹脂のカラムに適用して、更に分離した。洗浄液を集め、濃縮して、サンザシ抽出物を得た。
【0032】
(三七のアルコール抽出法)
三七は、10倍量の10〜30%エタノールで3回抽出し、8時間加熱して還流させた。抽出物を集め、濃縮して、エタノールを回収し、三七抽出物を得た。
【0033】
(三七の有効成分の抽出法(アルコール抽出―カラムクロマトグラフィーの方法))
三七を適切に粉砕し、エタノールで2回抽出した。濾過後、濾液を集め、減圧下にエタノールを回収することにより、特定の容積まで濃縮した。適切な量の水を添加し、次いで、エタノールの匂いが無くなるまでエタノールを回収した。生じた抽出物は、予備処理をしたマクロポーラス樹脂カラムに適用し、洗浄液が無色になるまで水で洗浄し、次いで、50%エタノールで洗浄した。溶出液を集め、濃縮して、三七抽出物を得た。
【0034】
前記の2方法により、本発明の組成物を得ることができ、更に、これから所望の具体的な製剤何れをも調製でき、特に経口剤、例えば、錠剤、ピル、顆粒剤又はカプセル等の固体経口剤、又は、シロップ及び経口液体のような液体経口剤を調製できる。所望の製剤を得るために、従来技術で公知の慣用の方法により、組成物に、慣用の担体を添加できる。
【0035】
全ての種類の生薬抽出物を用いて経口剤を調製するのに、例えば、タルク粉及びデキストリンを担体として使用することができる。タルク粉及びデキストリンの総量は、生薬抽出物の総量の7〜20wt%を占め、例えばタルク粉の量は、1〜5wt%を占め、デキストリンは、生薬抽出物の総量の6〜15wt%である。有利には、タルク粉は、1〜2wt%であり、デキストリンは、6〜7wt%である。
【0036】
動物及び臨床試験の結果が示したように、組成物は、血中脂質を低下させる作用を有し、高脂血症の治療及び/又は予防に使用することができる。
【0037】
本発明のもう1つの目的は、血中脂質を低下させる治療薬、並びに高脂血症を治療及び/又は予防する薬の製造のために本発明に係る組成物を使用することである。
【0038】
本発明の医薬組成物を、高脂血症の治療及び/又は予防に使用でき、かつ種々の高脂血症に関連する心臓及び脳血管系疾病をコントロールする及び/又は緩和させるために使用することができる。
【0039】
本発明のもう1つ別の目的は、高脂血症の治療及び/又は予防の方法を提供する事であり、この方法は、この治療が必要な患者に治療に有効な量の医薬組成物及びその対応する製剤を投与することを含む。
【0040】
本発明の方法の何れかにより製造された組成物及びその製剤を、血中脂質の低下又は高脂血症の治療及び/もしくは予防のために使用することができる。この治療目的を達成するために、成人患者に対する、組成物の1日の経口投与量は、生薬の総量の10〜50g、有利には20〜30gに相当し、1日に1度又は数度、例えば2〜3回投与する。疾病の予防に使用する場合は、投薬量を適切に減じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明を、以下の実施例を参照して、詳細に説明するが、以下の実施例は、本発明の範囲を限定することを全く意図しない。
【0042】
(臨床試験実施例)
この試験の目的は、本発明の医薬組成物の血中脂質を降下させる効果を調査することであった。
【0043】
(材料)
この試験で使用される薬物は、以下の例4で調製されたカプセルであった(以降は、「何首鳥(He Shou Wu)カプセル」又は縮めて「HSWC」と呼ばれる)。
【0044】
(方法)
並行して、無作為に選ぶ、二重盲式、プラセボ対照臨床研究デザインを採用し、適度に高い血中脂質を有する健康な被験者を無作為に2群に分けた。即ち、20人の被験者をHSWC群に、20人の被験者をプラセボ群に分けた。試験対象患者基準は、適度に高いコレステロールレベルを有する健康な被験者である。除外基準は、潜在的な心血管系疾病又は他の疾病を有する患者又は心血管系疾病の治療期間にある患者である。12週間の研究の間、被験者に、HSWC又はその相当する量のプラセボを投与した。但し、HSWCは、本発明の例4から調製されたカプセルであり、投薬量は、3回/日及び3カプセル/回である。
【0045】
(評価指標及び方法)
血漿の総コレステロール、低比重リポプロテイン(LDL)、高比重リポプロテイン(HDL)、トリグリセリド(TG)、及び心血管系リスクの他の関連マーカー。
血管系のコンプライアンス:動脈弾力性の測定及び血圧の変化に伴う容積変化の計算。
血流媒介拡張:上腕動脈において、高分解能超音波装置を使用して、反応性高脂血症による血管の直径の変化を測定。
皮膚血管系反応性:DCイオントフォレシスを伴うレーザードップラー速度計測を使用して、皮膚血液流量を測定。
【0046】
(結果)
HSWCは、心血管系リスクを減じるプラスの効果を有するという結果が示され、この結果は、統計的に重要であった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

上記の結果から、プラセボ群と比較して、HSWC群は、重大な差を示すことが理解できる。
【0049】
(製剤試験例)
この試験の目的は、高脂血症関連疾病に対する本発明の医薬組成物の治療効果を調査することであった。
【0050】
(材料)
試験に使用する薬物は、例7で調製したカプセルであった。
【0051】
(方法)
雄のApo E欠損マウス(このタイプのマウスが、原発性高脂血症の動物モデルである)、年齢10週、体重20g、を選択し、2ヶ月間テストした。その半分のマウスに、普通の食事(脂肪:4.3%、コレステロール:0.02%、普通食事群)を与え、後の半分には高脂肪の食事(脂肪:16.0%、コレステロール:1.0%、高脂肪食事群)を与えた。普通食事群も高脂肪食事群も、治療群と対照群にそれぞれ10匹づつ分けた。治療群にはHSWCを溶解した飲料水(薬物濃度は約0.8g/L)を2ヶ月間投与し、その場合、通常の飲み方のマウスについて、薬物の投与量は、約90〜160mg薬物/kg/日(生薬の総量で表現)になるように行った。対照群にはHSWC不含の飲料水を投与した。実験後、全てのマウスを殺害し、その肝臓、腎臓及び大動脈血管を取り出して組織切片を作製し、顕微鏡による観察のために、オイルレッドOで染色した。
【0052】
(結果)
HSWCは、普通食事群(図1〜3参照)のみならず、高脂肪食事群(図4〜6参照)においても、肝脂肪変性を著しく緩和できることが結果より示された。一方、高脂肪食事群において、大動脈のアテローム性硬化(図10参照)の発生及び腎糸球体の脂質沈着(図7〜9参照)も阻止できた。統計的分析により、前記改善の全てが、統計的に重要であると考えられた。
【0053】
(調製例1)
1.以下のように生薬を用意した。何首鳥150g、タンジン100g、サンザシ150g及び三七50g。
2.前記薬効材料を粉砕して粉末にし、80メッシュの篩にかけ、1500のカプセルに装填した。
生薬の量は、各カプセル中0.3g。
【0054】
(調製例2)
1.以下のように生薬を用意した。何首鳥100g、タンジン60g、サンザシ100g及び三七10g。
2.前記薬を粉砕して粉末にし、80メッシュの篩にかけ、900のカプセルに装填した。
生薬の量は、各カプセル中0.3g。
【0055】
(調製例3)
1.以下のように生薬を用意した。何首鳥200g、タンジン130g、サンザシ200g及び三七100g。
2.前記薬を粉砕して粉末にし、80メッシュの篩に通し、2100のカプセルに装填した。
生薬の量は、各カプセル中0.3g。
【0056】
(調製例4)
1.以下のように生薬を用意した。何首鳥150g、タンジン100g、サンザシ150g及び三七50g。
2.抽出物を以下の工程により製造した。
(何首鳥抽出物の製造)何首鳥を計量し、80%エタノールで浸出させて抽出した。生じた抽出物をマクロポーラス吸収性樹脂のカラムに施し、50%エタノールで溶出した。溶出液を集め、減圧下でエタノールを回収することにより濃縮し、更に加熱して、何首鳥抽出物粉末15gを得た。
(タンジン及び三七の抽出物の製造)この2種の薬の粗大粉末を抽出槽に装入し、そこに水(×5倍)を添加し、2時間煎じた。濾過後、残分を更に水(×4倍)と共に1時間煎じた。濾過し、残分を廃棄した。濾液を集め、減圧下に濃縮し、煎汁の容積(L)対医薬の重量(kg)の比、1:1(V/W)で抽出物を得た。95%エタノールをゆっくりと添加し、エタノール濃度を69〜71%にした。これを12時間静置した。アルコール沈殿後の上澄を取り出し、濾過し、エタノールの回収により濃縮し、タンジン及び三七の抽出物粉末15gを得た。
(サンザシ抽出物の製造)サンザシを計量し、50%エタノール(×15倍)で、各回60分かけて、2度抽出した。生じた抽出物を集めて、エタノールの回収により濃縮し、更に濃縮して、サンザシ抽出物粉末15gを得た。
3.ステップ2の前記抽出物を十分に混合し、その中にタルク粉0.45g及びデキストリン2.7gを添加し、混合物を150のカプセルに装填した。
前記抽出物の量は、各カプセル中0.3gであり、これは、生薬3gに相当する。
【0057】
(調製例5)
タルク粉0.9g及びデキストリン3.15gを添加すること以外は、例4の工程にならって、カプセルを調製した。混合物は、150のカプセルに装填した。
前記抽出物の量は、各カプセル中0.3gであり、これは、生薬3gに相当する。
【0058】
(調製例6)
1.以下のように生薬を用意した。何首鳥100g、タンジン60g、サンザシ100g及び三七10g。
2.何首鳥抽出物及びサンザシ抽出物を、例4の工程により調製し、何首鳥抽出物粉末10g及びサンザシ抽出物粉末10gを得た。
3.タンジン抽出物及び三七抽出物を、以下の工程により調製した。
(タンジン抽出物の調製)タンジンの薬効材料を粉砕し、20メッシュの篩に通し、加熱することにより水で2回抽出した。最初の回は、薬効材料を水(×9〜10倍)に浸し、1.5時間加熱して抽出した。2回目は、水(×5〜7倍)を添加し、1時間加熱して抽出した。生じた煎汁を集め、適切に濃縮し、95%エタノールを添加して、エタノール濃度を50〜70%にし、エタノールを回収して濃縮し、タンジン抽出物粉末6gを得た。
(三七抽出物の調製)三七の薬効材料を取り、10〜30%エタノール(×10倍)で3回抽出し、8時間加熱して還流させた。生じた抽出物を集め、エタノールを回収して、濃縮し、三七抽出物粉末1gを得た。
4.ステップ2とステップ3の抽出物を十分に混合し、そこにタルク粉0.27g及びデキストリン1.62gを添加し、混合物を90のカプセルに装填した。
前記抽出物の量は、各カプセル中0.3gであり、これは、生薬3gに相当する。
【0059】
(調製例7)
タルク粉0.72g及びデキストリン2.86gを添加し、混合物を150のカプセルに装填する以外は、例4の工程に従い、カプセルを調製した。
前記抽出物の量は、各カプセル中0.3gであり、これは、生薬3gに相当する。
【0060】
(調製例8)
1.以下のように生薬を用意した。何首鳥200g、タンジン130g、サンザシ200g及び三七100g。
2.何首鳥抽出物粉末20g、サンザシ抽出物粉末20g、タンジン抽出物粉末13g及び三七抽出物粉末10gを例6の工程により製造した。
3.ステップ2の抽出物を十分に混合し、そこにタルク粉1.01g及びデキストリン4.02gを添加し、混合物を210のカプセルに装填した。
前記抽出物の量は、各カプセル中0.3gであり、これは、生薬3gに相当する。
【0061】
(調製例9)
1.以下のように生薬を用意した。何首鳥200g、タンジン130g、サンザシ200g及び三七100g。
2.何首鳥抽出物粉末20g、サンザシ抽出物粉末20g、タンジン抽出物粉末13g及び三七抽出物粉末10gを例6の工程により調製した。
3.ラクトースの好適な量を前記抽出物に添加し、210個の錠剤を調製した。
前記抽出物の量は、各錠剤中0.3gであり、これは、生薬3gに相当する。
【0062】
前記記述は、本発明の実施形態の開示である。本発明の範囲内に包含される本発明の本質的精神から逸脱せずに、種々の変更及び修正ができることは、当業者に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実験後の対照群における高脂血症のマウス(普通の食事)の肝臓組織薄片の写真である。
【図2】実験後の治療群における高脂血症のマウス(普通の食事)の肝臓組織薄片の写真である。
【図3】実験後の対照群と治療群における高脂血症のマウス(普通の食事)の肝脂肪変性に関する統計的分析である。
【図4】実験後の対照群における高脂血症のマウス(高脂肪の食事)の肝臓組織薄片の写真である。
【図5】実験後の治療群における高脂血症のマウス(高脂肪の食事)の肝臓組織薄片の写真である。
【図6】実験後の対照群と治療群における高脂血症のマウス(高脂肪の食事)の肝脂肪変性に関する統計的分析である。
【図7】実験後の対照群における高脂血症のマウス(高脂肪の食事)の腎臓組織薄片の写真である。
【図8】実験後の治療群における高脂血症のマウス(高脂肪の食事)の腎臓織薄片の写真である。
【図9】実験後の対照群と治療群における高脂血症のマウス(高脂肪の食事)の腎糸球体脂質沈着に関する統計的分析である。
【図10】実験後の対照群と治療群における高脂血症のマウス(高脂肪の食事)の大動脈のアテローム性硬化に関する統計的分析であり、図中の「HF」は、高脂肪食を指す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中脂質を下げる効果を有する医薬組成物であって、何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七を含む医薬組成物。
【請求項2】
組成物中の何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の重量の割合が、何首鳥10〜20部、タンジン5〜15部、サンザシ10〜20部及び三七1〜10部である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
組成物中の何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の重量の割合が、何首鳥15部、タンジン10部、サンザシ15部及び三七5部である請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
慣用の薬学的に許容できる担体を更に含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬学的に許容できる担体が、デンプン、ラクトース、タルク粉及び/又はデキストリンである請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
種々の経口剤に調製することができる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
錠剤、顆粒剤又はカプセルに調製することができる請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七をそのまま粉砕して粉末にし、次いで粉末を所望の製剤に調製することを含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医薬組成物を調製する方法。
【請求項9】
(1)何首鳥10〜20重量部、タンジン5〜15重量部、サンザシ10〜20重量部及び三七1〜10重量部の各生薬を用意するステップと、
(2)前記各生薬を粉末に粉砕してから、ブレンドするステップと、
(3)場合により必要な薬学的に許容できる担体を添加した後、慣用の方法により前記所望の製剤に調製するステップと
を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記製剤が経口剤である請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記経口剤が錠剤、顆粒剤又はカプセルの形状である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記薬学的に許容できる担体が、デンプン、ラクトース、タルク粉及び/又はデキストリンである請求項9に記載の方法。
【請求項13】
何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の抽出物を用意し、次いでこれら抽出物を所望の製剤に調製することを含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医薬組成物を調製する方法。
【請求項14】
(1)何首鳥10〜20重量部、タンジン5〜15重量部、サンザシ10〜20重量部及び三七1〜10重量部の各生薬を用意するステップと、
(2)前記各生薬を粉末に粉砕するステップと、
(3)何首鳥、タンジン、サンザシ及び三七の抽出物を用意し、これら抽出物全てをブレンドするか、又はこれら抽出物を粉末にした後、これら抽出物の粉末をブレンドするステップと、
(4)場合により必要な薬学的に許容できる担体を添加した後、前記所望の製剤に調製するステップと
を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抽出物が、前記4つの生薬各々を別々に抽出するか、又は前記4つの生薬のうちの2〜4種類を任意に組み合わせた混合物を抽出することにより得られる請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
タンジンについては、前記抽出が、水抽出法、アルコール抽出法、又はマクロポーラス樹脂による分離を伴う水抽出−アルコール沈殿法から選択され、何首鳥については、前記抽出が、水抽出法、又はマクロポーラス樹脂による分離を伴うアルコール抽出法から選択され、サンザシについては、前記抽出が、水抽出法、又はポリアミド樹脂による分離を伴う水抽出法から選択され、三七については、前記抽出が、エタノール抽出法、又はマクロポーラス樹脂による分離を伴うアルコール抽出法から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、何首鳥とタンジンとの混合物、タンジンと三七との混合物、又は何首鳥とタンジンと三七との混合物である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記製剤が経口剤である請求項13又は14に記載の方法。
【請求項19】
前記経口剤が錠剤、顆粒剤又はカプセルの形状である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬学的に許容できる担体がデンプン、ラクトース、タルク粉及び/又はデキストリンである請求項14に記載の方法。
【請求項21】
温度約50〜60℃での乾燥ステップを更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項22】
血中脂質低下薬の製造のための請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
高脂血症を治療及び/又は予防する薬の製造のための請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−522988(P2008−522988A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544716(P2007−544716)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/CN2005/002089
【国際公開番号】WO2006/060951
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507192622)天津天士力制薬股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】