説明

高血糖性患者の心疾患を予防するための抗酸化治療の有効性を予測する方法

本発明は、糖尿病患者の血管合併症を治療するための抗酸化治療の有効性を判断する方法を提供する。この方法は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するステップと、それによって糖尿病患者の抗酸化治療の有効性を判断するステップとを含んでいる。前記抗酸化治療の有効性は、ハプトグロビン2−2表現型の糖尿病患者の方が、ハプトグロビン1−2表現型又はハプトグロビン1−1表現型の糖尿病患者よりも大きいとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハプトグロビン2対立遺伝子の多型に基づく、糖尿病患者の心疾患を予防するための酸化防止剤補給の予想される有効性を判断する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心疾患(Cardiovascular disease:CVD)は、2型糖尿病における、最も頻度の高い、重症で、費用のかかる合併症である(1)。この合併症は、病気の期間にかかわらず、2型糖尿病の患者の主な死亡原因である(2)。幾つかの集団ベースの研究は一貫して、糖尿病患者のCVDの相対リスクが、非糖尿病者と比べて数倍高いことを示している(3〜7)。このように高いリスクは女性において顕著である(4,5,8)。高血圧、高脂血症、喫煙などのリスク因子は、全てが独立してCVDを患う糖尿病患者の相対リスクを高めるが、糖尿病の影響は従来のリスク因子と無関係であるように見える(9)。
【0003】
調査した集団全てにおいて、CVDの発生率は非糖尿病者よりも糖尿病患者の方が高いが、糖尿病患者のCVDの相対リスクには明らかな地理的及び民族的な相違がある。しかし、前記相違は、これらのグループの間での従来の心臓病リスク因子の差によって、完全に説明することができない(10〜20)。例えば、英国在住の異なる民族群でCVDの相対リスクを分析したところ、ヨーロッパ出身の糖尿病患者と比べると南アジア出身の糖尿病患者はCVDのリスクが著しく大きかったが(12,15)、アフリカ系カリブ人の糖尿病患者は著しく小さかった(14,16)。
【0004】
これらの調査は、遺伝的相違が糖尿病患者のCVDに対する感受性の相違に寄与するのではないかということを示唆している。
【0005】
本発明では、ハプトグロビン遺伝子の機能的対立遺伝子多型にその可能性があると仮定している。
【0006】
ハプトグロビン(Hp)は、ヘム主導の酸化ストレスからの保護において主要な役割を果たすようなヘモグロビン結合血清タンパクである(23,24)。Hp遺伝子が欠乏したマウスは、特に腎臓における酸化ストレス及び酸化組織ダメージの劇的な増加を示した。ヒトにおいては、Hpに対して2つの共通対立遺伝子(1及び2)があり、3大表現型1−1、2−1、2−2として現れる(21〜23)。
【0007】
3つの表現型のヘモグロビン結合能力の機能的な相違は、既に実証されている。Hp1−1表現型の患者のHpは、ハプトグロビン2対立遺伝子産物を含むHpより1グラム当たりでより多くのヘモグロビンと結合することができる(23)。より小さいサイズのハプトグロビン1−1はハプトグロビン2対立遺伝子産物と比べて酸化組織損傷の血管外部位への侵入を促進するので、ハプトグロビン1−1表現型の患者のハプトグロビン分子はまた、より効果的な酸化防止剤である。これはまた、ハプトグロビン1−1を有する患者におけるハプトグロビンのかなり大きな糸球体のふるい分けを含む(22)。
【0008】
ハプトグロビン2対立遺伝子は、約2000万年前に部分的遺伝子複製イベントによって1対立遺伝子から生じ、感染因子に対する抵抗性に関連する選択的圧力の結果として世界的に広まったようである(24,25)。現在は、ハプトグロビン対立遺伝子は、異なる民族群間でその相対的な頻度が全く異なる(26)。遺伝子複製イベントは、2対立遺伝子のそれぞれによってコードされるハプトグロビン・タンパク質の生物物理学及び生物化学特性を劇的に変化させた。例えば、1対立遺伝子のタンパク質産物は、2対立遺伝子によって産出されるものと比べて優れた酸化防止剤であるように思われる(23)。個人の1−1、2−1、2−2のハプトグロビン表現型は、10マイクロリットルの血漿からゲル電気泳動によって容易に決定される。
【0009】
ハプトグロビン表現型は、糖尿病患者において多くの微小血管合併症が発生する前兆であることが最近実証された(27〜29)。具体的には、ハプトグロビン1対立遺伝子にとって同種接合である患者が網膜症及び腎症を患うリスクが低下したことが示された。この効果は、少なくとも腎症に対しては、1型及び2型糖尿病患者の両方に見られ、ハプトグロビン2対立遺伝子の数と腎症の発症に関連する勾配効果(gradient effect)の発見により関連性は強化された(29)。更に、ハプトグロビン表現型が糖尿病患者における大血管合併症の発生の前兆であり得ることが示された。1−1ハプトグロビン表現型を有する糖尿病患者において経皮的冠動脈再建術後の再狭窄の発生が有意に減少することは、既に示した(27,30)。一般集団においてハプトグロビン表現型及び冠動脈疾患を検査しているような以前の遡及研究及び横断研究は、相反する結果を出している(31〜38)。糖尿病状態におけるアテローム硬化性冠動脈疾患の発生におけるハプトグロビン表現型の役割については、未だ研究されていない。
【0010】
アメリカインディアンは、以前は冠動脈疾患の発生に抵抗すると考えられていたが、現在では流行伝染病のような勢いでCVDに直面している(20)。CVD発生率の増加は、この集団での2型糖尿病の急激な増加に起因している(1,2)。SHS(Strong Heart Study)は、1988年以降現在まで継続して3つの地理的区域におけるアメリカインディアン母集団の心疾患の発生率、有病率、リスク因子を調査している(20)。この患者集団の相対的遺伝的均一性により、糖尿病状態におけるCVDに寄与するような特異的遺伝因子の同定が可能になる。
【0011】
従って、米国特許第6,613,519号において、先ず、糖尿病患者のCVDの相対リスクを決定するためにSHSからのケース/対照サンプルにおけるハプトグロビン表現型に基づいて相関が作られた。
【0012】
幾つかの先行技術文献は、ハプトグロビン表現型と疾患を相関する方法を教示している。WO98/37419は、ハプトグロビン表現型を決定するための方法及びキットを教示し、特にヒトハプトグロビンに関与する適用に関連している。この特許出願の教示は、特に不応性本態性高血圧の標的器官ダメージに関して、アテローム性動脈硬化(一般集団において)及び急性心筋梗塞に関して、そしてHIV感染での死亡率に関して、独立リスク因子としてのハプトグロビン2−2表現型の使用に焦点を当てている。この特許出願は、DMにおける心疾患のリスク因子としてのハプトグロビン表現型の使用については教示していない。ハプトグロビン2−2表現型は患者に酸化的ストレスをより起こしやすくする傾向があるので、DMにおける心疾患に対する消極的な予測因子としての2−2表現型の使用についてこの特許出願が間接的に示唆しているかどうかは議論の余地があるであろう。しかし、この特許出願の教示は、ハプトグロビン1−1表現型がDMにおける心疾患に対する傾向低下に対する、または酸化防止剤補給の効果に対する積極的な予測因子であるという考えを含んでいない。実際、その後の研究では、PCT WO98/37419の発明の発明者は、Hp1−1患者の心疾患死亡率に対するリスクが高いことを含めて逆の結果を報告している(De Bacquer et al, Atherosclerosis 2001; 157:161-6)。ハプトグロビン表現型と疾患との有用な相関を引き出すには、慎重かつ想像力の豊かな分析が必要である。なぜなら、多くの研究は結果を示していないか或いは困惑させる結果を報告しているからである(Buhlin et al Fur Heart J 2003; 24:2099-107; Lind et al Angiology 2003;54:401-10; Hong et al Hum Hered 1997;47:283-7)。
【0013】
換言すれば、これは、Hp2−1または2−2表現型に由来する酸化的ストレスが一般集団における血管合併症につながることを提唱している。ある種の血管合併症がDMに関連する酸化的ストレスに関連することも知られている。しかしながら現時点では、糖尿病患者における血管合併症を予防するための酸化防止剤補給に対する反応にHp1−1表現型が効果を及ぼし得るか否かは未だはっきりしておらず、予測もできない。
【0014】
PCT WO98/37419は、ハプトグロビン結合相手の使用についても教示している。PCT WO98/37419に基づく結合相手は、ハプトグロビンを結合する少なくとも2つの位置を有する分子であってよい。位置の形成は、ペプチド、抗体、またはその一部によって、または、レクチン、細胞受容体、分子インプリント、細菌性抗原、またはその一部によってなすことができる。この特許の教示は、S.ピオゲネスのT4抗原の使用に特に焦点を当てている。全てのハプトグロビンは、α鎖とβ鎖の両方を含む。β鎖は全てのハプトグロビンにおいて同じであるが、α鎖はハプトグロビン遺伝子の2つの対立遺伝子間で異なる。ハプトグロビンのα2鎖は、不等乗換えに基づく突然変異の結果物であり、α1鎖が83のアミノ酸であるのと対照的に142のアミノ酸を含む。α2鎖におけるアミノ酸残基の特異的な配列(Ala-Val-Gly-Asp-Lys-Leu-Pro-Glu-Cys-Glu-Ala-Asp-Asp-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Lys-Cys-Ile, SEQ ID NO:1)を除き、免疫学的にはα1鎖とα2鎖は類似している。従って、この特異的なペプチド配列の任意の部分は、α1鎖を含むハプトグロビンとα2鎖を含むハプトグロビンとを区別するべく抗体を産出させるのに適したエピトープであり、このことは「Using Antibodies: A Laboratory Manual」(Ed Harlow and David Lane eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999))に記載されている。当該文献は引用を以って全文を本明細書の一部となす。そのような抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、またはその一部であることができ、当業者に知られている多くの技術のうち任意の1つによって濃縮または精製することができる。それに加えて、この配列をコードするヌクレオチド配列は、Hp遺伝子型を区別するために容易に用いることができる。
【0015】
酸化防止剤、ハプトグロビンと、糖尿病患者の心疾患(COD)の予防:冠動脈疾患の全有病率は、一般集団で2〜4%であるのに対して成人糖尿病(DM)で55%を超えている。CVDによる死亡率は、非糖尿病者と比べてDMの男性では2倍以上、女性では4倍以上である(Stamler, et al. Diabetes Care 1993; 16: 434-444)。酸化的ストレスの増加は、糖尿病血管疾患を仲立ちするものとして知られている幾つかのシグナル伝達経路の協調活性化を説明する魅力的な統合メカニズムを表している(Nishikawa et al., Nature 2000; 404:787-790)。グルコース自動酸化の結果として作られる高血糖及び酸化環境は、後期糖化最終産物(AGE)を形成し(Ohgami et al., J Diabetes Complic 2002; 16:56-59)、糖尿病血管疾患に見られる病理学的及び形態学的変化に結びつけられる複数の炎症性サイトカインの産物を刺激することができるような低濃度リポタンパク質(ox−LDL)を修飾した(Steinberg D so J Biol Chem 1997; 272:20963-6)。酸化仮説は、ビタミンEなどの酸化防止剤がアテローム硬化プロセスを著しく妨げることが実証されている実験動物データによって支持されている(Williams et al Atherosclerosis 1992; 94: 153-59)。しかし、in vitro研究及び実験室研究の結果が有望であるにも拘らず、幾つかの最近の大規模な前向きプラセボ対照試験は、ビタミンE単独の利点(HOPE Study Investigators NE J Med 2000; 342: 154-160; Hodis et al, Circulation 2002; 106:1453-59; Jiang et lo al, J Biol Chem 2002; 277: 31850-6)または他の酸化防止剤ビタミンと組み合わせての利点(GISSI, Lancet 1999; 354:4477-55; Brown et al NE J Med 2001;345: 1538-92; Marchioli et al, Lipids; 2001: 36 Suppl:S53-63; Waters et al, JAMA 2002; 288:2432-40; Witztum et al Trends Cardio Med 2001;11:93-102)のいずれかが主要な有害な心血管イベントの発生率を低下させることを支持するような決定的な証拠を与えるには至っていない。HOPE(the Heart Outcomes Prevention Evaluation)トライアルはそのような研究の1つであり、特に糖尿病CVDを防止するビタミンE治療の効力を扱っている(HOPE Study Investigators NE J Med 2000; 342: 154-160)。HOPE研究(HOPE study)は、400IUのビタミンEを4.5年間毎日投与することの心血管(CV)結果に対する臨床上の利点を実証することはできなかった。これらの研究においては、ビタミンEの明らかな不足を説明するために幾つかのメカニズムが提唱されている。スタインバーグ(Steinberg)は、抗酸化治療から得られる利点は、軽減された酸化的ストレスを経験した特定の患者のサブグループにおいて実証可能でしかないであることを提唱している(Steinberg et al Circulation 2002; 105:2107-111)。
【0016】
糖尿病患者の血糖値をインシュリンまたは経口低血糖性(血糖が低い)投薬によって調整することができても、糖尿病患者にはいずれ血管合併症が発症する。糖尿病患者の羅患リスクがある血管合併症は数多くあり、例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障及び緑内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、間欠性跛行及び壊疽、高脂血症、そして高血圧、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患(冠動脈疾患)などの心臓血管の疾患が含まれる。アテローム性動脈硬化は、アンギナ及び心発作を起こすことがあり、糖尿病者では非糖尿病者の2倍よく起きることであり、男女共に等しく影響する。
【0017】
そのような糖尿病血管疾患が遺伝的に影響されやすい患者にのみ発生することを示す証拠は増えている(UK Prospective Study Group Diab Care 1998;21:1271-77)。ハプトグロビン遺伝子は、1及び2で表された2つの主要なクラスの対立遺伝子を有する多型である。ハプトグロビン遺伝子におけるこの多型が糖尿病患者のCVDに対する独立したリスク因子であることが最近実証された(2003年9月2日に発行されたLevy et alの米国特許第6,613,519号の例1、後述、及びLevy lo et al J Am Coll Card 2002; 40: 1984-90を参照)。ハプトグロビン2対立遺伝子にとって同種接合である糖尿病患者は、ハプトグロビン1対立遺伝子にとって同種接合である糖尿病患者に比べてCVDのリスクが5倍高いことが分かった。更には、ハプトグロビン2対立遺伝子タンパク質製品がハプトグロビン1対立遺伝子タンパク質製品に比べて劣った酸化防止剤であることも示されている(Melamed-Frank et al Blood 2001; 98:3693-98)。しかし、上述の研究では、酸化防止剤補給と糖尿病患者におけるCVDとの相関についても、ハプトグロビン表現型についても、抗酸化治療から派生する利点の予測におけるそのような相関の有用性についても考慮・示唆されていない。よって、ハプトグロビン2対立遺伝子にとって同種接合である糖尿病患者に酸化防止剤を補給することが有害な心血管イベントの予防に有益であろうと仮定した。この仮説の真偽を調べるために、HOPE研究からのハプトグロビン型の参加者について、ビタミンE及びラミプリル処置に基づき3つの可能なハプトグロビン型に対する主要な心血管の終点の相対リスク比率を決定した。
【0018】
どの特定のDM患者が心疾患に関するリスクが低いか、そしてどの特定の患者のサブグループが予防的抗酸化治療の恩恵を受けることになるかを予測する方法は、その必要性が広く認識されていおり、これを有することは大いに有利になるだろう。そのような方法は、各患者へのリスクをできる限り最小にする一方で、医者は利用可能な資源を最大限に利用できるようにし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、糖尿病患者の血管合併症を治療するための抗酸化治療の有効性を判断する方法を提供する。この方法は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するステップと、それによって糖尿病患者の抗酸化治療の有効性を判断するステップとを含んでいる。前記抗酸化治療の有効性は、ハプトグロビン2−2表現型の糖尿病患者の方が、ハプトグロビン1−2表現型又はハプトグロビン1−1表現型の糖尿病患者よりも大きいとする。
【0020】
本発明の他の態様では、本発明は、糖尿病に関連する血管合併症を防止するために、糖尿病患者の酸化的ストレスを減少させることの重要性を判断する方法を提供する。この方法は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するステップと、それによって特定の糖尿病患者の酸化的ストレスを減少させることの重要性を判断するステップを含んでいる。前記酸化的ストレスを減少させることの重要性は、ハプトグロビン2−2表現型の糖尿病患者の方が、ハプトグロビン1−2表現型又はハプトグロビン1−1表現型の糖尿病患者よりも大きいとする。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、前記血管合併症は、微小血管合併症及び大血管合併症から成る群より選択される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、前記大血管合併症は、慢性心不全、心血管疾患死、卒中、及び冠動脈血管形成術に関連する再狭窄から成る群より選択される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、微小血管合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎、及び糖尿病性神経障害から成る群より選択される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、前記大血管合併症は、冠動脈側枝血管減少と心筋虚血から成る群より選択される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、前記ハプトグロビン表現型の判定は、糖尿病患者のハプトグロビン遺伝子型を判定することにより行われる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、前記糖尿病患者のハプトグロビン遺伝子型を判定するステップは、信号増幅方法、直接検出方法、及び少なくとも1つの配列変化の検出から成る群より選択される方法により行われる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、前記信号増幅方法は、DNA分子及びRNA分子から成る群より選択される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、前記信号増幅方法は、PCR、LCR(LAR)、自立合成反応(Self-Sustained Synthetic Reaction:3SR/NASBA)、及びQβレプリカーゼ反応から成る群より選択される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、前記直接検出方法は、サイクル試験反応(cycling probe reaction:CPR)及び分岐DNA分析から成る群より選択される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの配列変化の検出は、制限断片長多型(restriction fragment length polymorphism:RFLP)分析、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(allele specific oligonucleotide:ASO)分析、変性剤/温度濃度勾配ゲル電気泳動法(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis:DGGE/Temperature Gradient Gel Electrophoresis:TGGE)、一本鎖構造多型(Single-Strand Conformation Polymorphism:SSCP)分析、及びジデオキシ・フィンガープリント法(Dideoxy fingerprinting:ddF)から成る群より選択される方法が用いられる
本発明の好ましい実施形態では、前記ハプトグロビン表現型の判定は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を直接的に決定することにより行われる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、前記ハプトグロビン表現型の決定は、免疫学的検出方法により行われる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、前記免疫学的検出方法は、放射免疫検定法(radio-immunoassay:RIA)、酵素免疫測定法(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫組織化学法、及び蛍光活性化細胞分類(Fluorescence activated cell sorting:FACS)から成る群より選択される方法が用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、予防医学を可能にするために、高血糖性患者の心疾患(cardiovascular disease:CVD)が発現する危険性を評価する方法に関する。特に、本発明は、糖尿病患者における抗酸化治療による心疾患予防の有効性を評価する方法に関する。
【0034】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、構成の詳細や下記の説明又は図面に記載されている要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態又は様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、ここで使用される表現及び専門用語は、説明を目的としたものであり、限定するためのものではない。
【0035】
最近公になった多くの臨床試験を根拠にして、CVDの危険性が高い患者のCV有害転帰を防止するのには、抗酸化治療は推奨できない(The Heart Outcomes Prevention Evaluation Study Investigators. N Eng J Med 2000; 342: 154-160; Hodis, et al. Circulation 2002; 106: 1453-1459; Gruppo Italiano per lo Studio delta Soprawivenza nell'Infarto Miocardico. Lancet 1999; 354: 447- 455; Brown et al. N Engl J Med 2001; 345: 1583-1592.)。
【0036】
また一方、これらの研究は、患者の一部に対する潜在的利益を無視することができない(Steinberg D, Witzum JL. Circulation 2002; 105; 2107-2111)。予防するための抗酸化治療の有効性についての多くの研究の分析データは、サンプル全部に対する抗酸化治療の有効性を示すことはできなかったが、この著者らは、酸化防止剤補給の利益を受けたサブグループが確認されたことを初めて明らかにした。特に、前記HOPE研究では、Hp2−2表現型の糖尿病患者のCV病死及び非致死性心筋梗塞は、ビタミンE補給によって、統計的に有意に減少する。また、各種の評価項目(非致死性MI、卒中又は心血管疾患死)は、ラミプリル(ramipril)治療によって、統計的に有意に減少する(後記する実施例IIを参照)。SHS(Strong Heart Study)研究でのハプトグロビン表現型とCVDとの相互関係の分析は、Hp2−2表現型の糖尿病患者は糖尿病CVDの危険性が高いことと(後記する実施例I、及びLevy AP et al. J Am Coll Card 2002; 40: 1984-1990を参照)、Hp2−2が劣った酸化防止剤であることを示す(Melamed-Frank M, et al. Blood 2001; 98: 3693-3698)。1つの仮説により限定されることは望んでいないが、酸化防止剤の有効性が糖尿病患者のサブグループで選択的に得られる理由と、それらの発見が明らかに統計的に有意であることは、Hp2−2の劣った酸化防止剤特性により説明されるであろう。ハプトグロビンの影響のさらなる裏付けとしては、ハプトグロビン型は、糖尿病でない患者におけるCVD発症に有意な影響を及ぼさないことが観察されているという事実(後記する実施例I参照)がある。また、抗酸化治療(ビタミンEによる)に有意な影響を及ぼさないことも分かっている(後記する実施例II参照)。1つの仮説により限定されることは望んでいないが、Hp2−2の抗酸化活性低下の重要性は、酸化的ストレス(糖尿病)を作り出す付加的な構造の存在下で、臨床的に唯一明らかであると仮定できる。したがって、本発明は、糖尿病患者における血管合併症の抗酸化治療の有効性を評価する方法を提供する。この方法は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するステップと、それによって糖尿病患者における前記抗酸化治療の有効性を判断するステップとを含んでいる。抗酸化治療の有効性は、ハプトグロビン2−2表現型の患者の方が、ハプトグロビン1−2表現型又はハプトグロビン1−1表現型の患者よりも大きいとする。
【0037】
前記HOPEやGISSI研究での研究結果では、抗酸化治療が効果的であるという亜母集団を特定することはできなかったが、ここに示すデータは、ハプトグロビン2−2表現型の糖尿病患者のCV病死及び非致死性心筋梗塞は、ビタミンE補給により、統計的に有意に減少することを初めて明確した。また、各種の評価項目(非致死性MI、卒中又は心血管疾患死)は、ラミプリル治療により、統計的に有意に減少する(後記する実施例II参照)。したがって、本発明は、さらに、糖尿病に関連する血管合併症を防止するために、糖尿病患者の酸化的ストレスを減少させることの重要性を判断する方法を提供する。この方法は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するステップ、それによって特定の糖尿病患者の酸化的ストレスを減少させることの重要性を判断するステップとを含んでいる。前記酸化的ストレスを減少させることの重要性は、ハプトグロビン2−2表現型の患者の方が、ハプトグロビン1−2表現型又はハプトグロビン1−1表現型の患者よりも大きいとする。
【0038】
また、本発明は、糖尿病患者における血管合併症の抗酸化治療の有効性を評価するキット(kit)を提供する。このキットは、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するための包装された試薬を含んでいる。このキットは、糖尿病患者の血管合併症の抗酸化治療の有効性を評価するために使用される。これらの試薬の性質は、以下の説明と、周知で特徴的なハプトグロビン1及び2対立遺伝子の配列データにより、当業者には明らかになるであろう。
【0039】
本発明に係る方法及びキットの有用性は、後記する実施例の表1〜6に示すデータにより実証される。
【0040】
したがって、ここでは、人口に基づいた長期に渡る研究から得られたサンプルについて、ハプトグロビン表現型は糖尿病患者の血管合併症を治療するための抗酸化治療の有効性についての重要な予測の判断材料であることが実証される。本発明のある実施形態では、血管合併症は、微小血管合併症と大血管合併症から成る群より選択される。
【0041】
糖尿病が発現する危険性がある血管合併症が数多くある。前記血管合併症としては、糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、緑内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、間欠性跛行、壊疽、高脂血症、及び心臓血管疾患(例えば、高血圧、アテローム性動脈硬化、及び冠動脈疾患)が挙げられる。アテローム性動脈硬化は、狭心症と心臓発作を引き起こし、糖尿病患者では、糖尿病でない人の2倍見られる(男性も女性も等しい)。糖尿病の微小血管合併症としては、糖尿病性神経障害(神経損傷)、糖尿病性腎症(腎臓病)、及び視覚障害(例えば、糖尿病性網膜症、緑内障、白内障、及び角膜疾患)が挙げられる。大血管合併症としては、心筋梗塞、慢性心不全、心血管疾患死及び心臓病、卒中、及び末梢血管障害(潰瘍、壊疽、及び切断の原因となる)などの、アテローム性動脈硬化促進冠血管病が挙げられる。
【0042】
さらなる実施形態では、血管合併症は大血管合併症であり、慢性心不全、心血管疾患死、卒中、及び冠動脈血管形成術に関連する再狭窄、冠動脈側枝血管減少、及び心筋虚血から成る群より選択される。他の実施形態では、血管合併症は微小血管合併症であり、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、及び糖尿病性網膜症から成る群より選択される。
【0043】
糖尿病患者の血管病に対する酸化防止剤補給の有効性についてのハプトグロビンの予測値は、異なる人種におけるハプトグロビン1対立遺伝子の頻度と、それらのグループにおける関係する糖尿病の微小血管合併症及び大血管合併症の発症との相互関係によりさらに裏付けされる。
【0044】
例えば、糖尿病のオーストラリア・アボリジニー(19)と糖尿病の南アジアの人々(12、15)はCVD及び糖尿病微小血管合併症の相対的な危険性が高く(47)、ハプトグロビン1対立遺伝子の相対的な頻度が低い(それぞれ、0.18、0.09である)(26)。これに対して、糖尿病のアフリカ系カリブ人は、CVD及び微小血管合併症の相対的な危険性が少なく(14、16)、ハプトグロビン1対立遺伝子の頻度が高い(ある人口では0.87に上る)(26)。
【0045】
ハプトグロビン表現型の2つの機構は、アテローム性動脈硬化CVDの臨床経過に影響を及ぼす可能性がある。第1に、経皮経管冠動脈形成手術後の再狭窄の段階的なリスクは、ハプトグロビン2対立遺伝子の数に関係することを明らかにされている(27、30)。第2に、ハプトグロビン2−1表現型の糖尿病患者は、同程度の冠動脈疾患を有するハプトグロビン2−2表現型の糖尿病患者と比べると、冠動脈側枝を有する可能性が高い。個人間の冠状動脈側副血行の程度差が心筋梗塞の主要因であることは、以前から知られている(48)。
【0046】
ハプトグロビン・タンパク質には、アテローム性動脈硬化の発生に影響を与える様々な機能が割り当てられる。60年以上も、血清ハプトグロビンの主な機能は遊離ヘモグロビンを結合することであると思われていた(22)。この相互作用は、鉄分を除去するのを助け、それの尿中での損失を防止すると思われていた。また、酸化防止剤として機能し、組織をヘモグロビンに仲介された組織の酸化から保護する(23)。ハプトグロビン1−1タンパク質と異なることが明らかにされている、他のハプトグロビン表現型の酸化防止剤としての能力は、他の形態のタンパク質と比べて、優れた抗酸化保護をもたらすように思われる(23)。そのような酸化防止剤の仮定はとりわけ興味深く、明らかに重要な、糖尿病血管疾患に至る酸化的ストレスとしての役割を与える(49、50)。おそらく、異なるタイプのハプトグロビンにより与えられる酸化的保護における見掛け上の差をさらに拡大すると、異なる表現型それぞれに存在するハプトグロビン・タンパク質のサイズが全体的に異なる。ハプトグロビン1−1はハプトグロビン2−2よりも明らかに小さいので、血管外の区画をもっと小さくふるい分け、血管外傷の部分で、ヘモグロビンに仲介された組織の損傷を防ぐことが可能である(23)。それにもかかわらず、アテローム性動脈硬化におけるハプトグロビンの役割は、未だ不明のところが多い。ある研究では、逆説的に、Hp1−1は心臓血管系の死亡のリスクを高めることを明らかにしている(De Bacquer et al, Atherosclerosis 2001; 157: 161-6)。
【0047】
ハプトグロビンは、ヘモグロビン代謝の役割と無関係ではないかもしれないが、免疫賦活剤としての役割を果たすことが明らかにされている(21、23)。ハプトグロビン・ヘモグロビン複合体に対する特異的受容体は、単球/マクロファージ上で、グループB・スカベンジャー受容体の高システイン・スーパーファミリーの一員であるCD16351として、明確に確認されている(52)。スカベンジャー受容体のスーパーファミリーにおける他のメンバーであるCD36は、LDL同化作用において重要な役割(アテローム性動脈硬化部の発生のためにとても重要である)を果たすことが以前より知られている(53〜55)。ハプトグロビンと複合するハプトグロビン2−2は、この受容体に対して、ハプトグロビンと複合するハプトグロビン1−1よりも10倍高い親和性を有することが知られている(51)。多くの炎症性サイトカインの分泌の結果、CD163と結合するリガンドは、チロシン−キナーゼに依存する信号カスケードを引き起こすことが明らかにされている(56)。ハプトグロビンはそれだけで、顆粒球及び単球と結合することが知られている。ハプトグロビンは、規定のプラズマ細胞膜受容体によって、様々なアゴニストに対する好中球の反応をブロックすると思われる。このことは、免疫系の受容体リガンド相互作用において、ハプトグロビンがアンタゴニストの役割を果たすことを示唆する(57)。ハプトグロビンの特異的結合は、インテグリン・ファミリーの一員であるMAC−1又はCDllb/CD18受容体に対して実証されている(58)。これらのインテグリンは、負傷に対する血管壁の反応の主要な役割を果たすことが知られている(59)。
【0048】
アテローム斑の発生及び不安定化における細菌感染の重要な役割は、近年、多くの研究により示唆されている(60)。この点については、表現型はインビトロ及びインビボにおける細菌及びウイルス複製を防止する能力が異なると思われるので、ハプトグロビン表現型に関連するアテローム性動脈硬化症の差異リスクに対して重要だと思われる(23〜25)。これは、鉄分の除去の差異が原因である(23)。また、表現型の違いによって生じる免疫調整の差異が原因である(51)。
【0049】
これらの発見事項は、ここに示すハプトグロビン表現型に関する結果、及び糖尿病性の血管合併症を予防するための酸化防止剤補給の有効性と、意見が完全に一致している。ハプトグロビン表現型が異なる糖尿病患者の抗酸化治療に対する相対的な反応の顕著な相違は、CVDリスクの層別化(risk stratification)アルゴリズムに使用される広範囲にわたる糖尿病患者の試験、及び糖尿病患者のCVDを予防することを目的とする潜在的な治療的介入(例えば、酸化防止剤補給、酸化防止剤の併用、及び薬理的治療)の評価を正当化するように思われる。
【0050】
本発明に係る方法の様々な好ましい実施形態によれば、患者のハプトグロビン表現型の判定は、信号増幅方法、直接観測方法、及び少なくとも1つの配列変化の検出などの様々な方法(ただし、これらに限定されるものではない)によって行われる。これらの方法は、遺伝子型を判定することにより、表現型を間接的に判定する。また、後述するように、ハプトグロビン表現型の判定は、プトグロビン遺伝子産物を分析することにより、直接的に判定することもできる。
【0051】
前記信号増幅方法は、例えば、DNA分子やRNA分子を増幅する。本発明の一部として使用することが可能な信号増幅方法としては、PCR、LCR(LAR)、自律合成反応(3SR/NASBA)、Qβレプリカーゼ反応がある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0052】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR):Mullis and Mullis らの米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号に記載されているように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、ゲノムDNAの混合物における標的配列のセグメントの密度をクローニングや精製なしに増大させる方法である。この技術は、低い標的配列密度の問題に対する1つのアプローチを与える。PCRは、容易に検出可能なレベルまで標的の密度を増加させることができる。標的配列を増幅するプロセスは、所望の標的配列を含むDNA混合物への二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的であるようなモル濃度過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーの導入を含む。混合物は、変性させてハイブリダイズできるようにする。ハイブリダイゼーションに続いて、プライマーをポリメラーゼで伸長して相補的な鎖を形成する。変性、ハイブリダイゼーション(アニーリング)、ポリメラーゼ伸長(延長)の過程は、比較的高密度の所望の標的配列のセグメントを得るために必要なだけ繰り返すことができる。
【0053】
所望の標的配列のセグメントの長さは、両プライマーの互いに対する相対位置によって決定され、それ故にこの長さは調節可能なパラメータである。標的配列の所望のセグメントは、混合物中で(濃度の点で)優勢な配列になるので、「PCR増幅された」と呼ばれる。
【0054】
リガーゼ連鎖反応(LCRまたはLAR):Barany, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:189 (1991)、Barany, PCR Methods and Applic., 1:5 (1991)、及びWu and Wallace, Genomics 4:560 (1989) に記載されているリガーゼ連鎖反応(LCR。「リガーゼ増幅反応」(LAR)と呼ばれることもある)は、核酸を増幅するためのよく知られた代替方法へと発展した。LCRでは、4つのオリゴヌクレオチドと、標的DNAの1つの鎖と一意的にハイブリダイズするような2つの隣接するオリゴヌクレオチドと、反対の鎖とハイブリダイズするような相補的な1組の隣接するオリゴヌクレオチドとを混合し、混合物にDNAリガーゼを加える。結合部に完全な相補性があるとすれば、リガーゼは、ハイブリダイズされた分子の各組に共有結合的に連結することになる。重要なことには、LCRでは、2つのプローブが連結されるのは標的サンプルにおいてギャップやミスマッチなしに配列と塩基対をなすときにのみである。繰り返しサイクルの変性及び連結反応は、DNAの短いセグメントを増幅する。LCRは、一塩基変化の検出を向上させるためにPCRと併用されてきた。Segev,PCT国際公開第9001069A1(1990)。しかし、このアッセイに用いられる4つのオリゴヌクレオチドは対になって2つの短い連結可能な断片を形成することができるので、標的非依存性バックグラウンドシグナルが生成される可能性がある。突然変異体スクリーニングのためのLCRの使用は、特異的核酸位置の検査に限られている。
【0055】
自立合成反応(3SR/NASBA):自立配列複製反応(3SR)(Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 87:1874-1878, 1990, with an erratum at Proc. Natl. Acad. Sci., 87:7797, 1990)は、均一な温度でRNA配列を指数関数的に増幅することができるような転写ベースのin vitro増幅システム(Kwok et al., Proc Natl. Acad. Sci., 86:1173-1177, 1989)である。その後、増幅RNAは、突然変異の検出に用いることができる(Fahy et al., PCR Meth. Appl., 1:25-33, 1991)。この方法では、オリゴヌクレオチドプライマーを用いてファージRNAポリメラーゼプロモーターを関心のある配列の5’末端に付加する。2次プライマー、逆転写酵素、RNアーゼH、RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチド3リン酸及びデオキシリボヌクレオチド3リン酸を含むような酵素及び基質の反応混液において、関心のある領域を増幅するために標的配列に対して転写、cDNA合成、第2鎖合成が繰り返される。突然変異検出のための3SRの使用は、動力学的に小セグメントのDNA(例えば200〜300塩基対)のスクリーニングに限定される。
【0056】
Q−ベータ(Qβ)レプリカーゼ:この方法では、関心のある配列を識別するプローブは、Qβレプリカーゼに対する複製可能なRNA鋳型に付着される。ハイブリダイズされていないプローブの複製から生じる偽陽性に関して以前に確認された主要な問題には、配列特異的連結過程を利用しての取り組みがなされてきた。しかし、利用可能な熱安定性DNAリガーゼはこのRNA基質に対して効果的ではないので、連結反応はT4DNAリガーゼによって低温(37℃)で行わなければならない。このことは、LCRにおいてそうであったように特異性を達成する手段として高温を使用することを妨げ、結合部位では突然変異検出のために連結反応イベントを用いることができるが、それ以外の部位では用いることができない。
【0057】
所期目標を達成できるような診断方法は、非常に特異的でなければならない。核酸ハイブリダイゼーションの特異性を調整する直接的な方法は、反応の温度を調整することによる。3SR/NASBA及びQβシステムは全て大量のシグナルを精製することが可能であるが、それぞれに含まれる1若しくは複数の酵素は高温(即ち>55℃)での使用が不可能である。従って、反応温度を上げてプローブの非特異的ハイブリダイゼーションを防止することはできない。プローブを短くして低温で容易に融解するようにすれば、複合ゲノムにおいて1つ以上の完全なマッチを有する見込みは高まる。このような理由のため、PCR及びLCRは目下のところ検出技術における研究分野で優位を占めている。
【0058】
PCR及びLCRにおける増幅手順の基本は、1つのサイクルの産物が全ての後続サイクルにおいて使用可能な鋳型になり、結果的に各サイクルで集団を倍加するという事実である。そのような倍加システムの最終収率は、(l+X)n=yで表すことができる。ここで、Xは平均効率(各サイクルでコピーされるパーセント)、nはサイクル数、yは反応の全体的な効率または収率である(Mullis, PCR Methods Applic. 1.1, 1991)。ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル毎に標的DNAのあらゆるコピーが鋳型として利用されるのであれば、平均効率は100%である。20サイクルのPCRを実行すると、収率は出発物質の220即ち1,048,576コピーになることになる。反応条件が平均効率を85%に低下させれば、20サイクルの収率は出発物質の1.8520即ち220,513コピーに過ぎなくなる。換言すれば、効率85%で実行させるPCRは、効率100%で実行させる反応に比べて収率が最終産物の21%にしかならないことになる。平均効率を50%に低下させた反応では、収率は予想産物の1%以下にしかならないことになる。
【0059】
実際には、ルーチンのポリメラーゼ連鎖反応が理論上の最大収率を達成することは稀であり、PCRはより低い収率を補償するために20サイクル以上実行させるのが普通である。50%の平均効率では、20サイクルで理論的に可能な百倍増幅を達成するには、34サイクルを要するであろうし、低効率では、所要サイクル数は桁外れになる。それに加えて、所期の標的よりよ高い平均効率で増幅するようなバックグラウンド産物は、支配的な産物になることになる。
【0060】
また、PCRの平均効率に影響する多くの変数は、少し例を挙げただけでも、標的DNAの長さ及び二次構造、プライマーの長さ及びデザイン、プライマー及びdNTP濃度、バッファー組成などを含む。外来DNA(例えば実験室の面にこぼれたDNA)による反応の汚染または相互汚染もまた主たる考慮事項である。異なる各プライマー対及び標的配列に対して反応条件を慎重に最適化しなければならず、このプロセスは経験のある研究者でさえも数日かかることがある。多数の技術的考察及び他の要因を含めたこのプロセスの面倒さは、臨床応用でのPCRの使用を妨げる重大な欠点を露呈している。実のところ、それでもPCRは臨床市場に浸透している。同じことはLCRにも言える。LCRもまた各標的配列に対して異なるオリゴヌクレオチド配列を使用する最適化されなければならないからである。それに加えて、PCR法もLCR法も正確な温度サイクリングを可能にする高価な器具を必要とする。
【0061】
対立遺伝子の変異の研究など核酸検出技術の多くの適用は、複雑なバックグラウンドにおける特異的配列の検出のみならず、ヌクレオチドの差が殆どないか或いは1つだけであるような配列の識別に関与している。PCRによる対立遺伝子特異的変異体の検出方法の1つは、鋳型鎖とプライマーの3’末端の間にミスマッチがあるときにTaqポリメラーゼがDNA鎖を合成するのは困難であるという事実に基づいている。対立遺伝子特異的変異体は、可能性のある対立遺伝子1つのみに完全にマッチするプライマーの使用によって検出することができる。他の対立遺伝子へのミスマッチは、プライマーの伸長を妨げるように働き、それによって配列の増幅を防止する。ミスマッチの塩基組成がミスマッチ全体で伸長を防止する能力に影響し、ある種のミスマッチは伸長を防止しないか最小の効果しか有さないという点で、この方法にはかなりの制限がある(Kwok et al., Nucl. Acids Res., 18:999,1990)。
【0062】
同様の3’ミスマッチ戦略を用いると、LCRにおいて連結反応を防止する効果が大きい(Barany, PCR Meth. Applic., 1:5, 1991)。ミスマッチは熱安定性リガーゼの作用を効果的に遮断するが、LCRは増幅を開始する標的非依存性バックグラウンド連結反応産物の欠点を尚も有する。更に、個々の位置でヌクレオチドを同定するためのPCRと後のLCRとの組合せもまた、臨床実験室のための明らかに厄介な命題である。
【0063】
本発明の種々の好適実施例に基づく直接検出方法は、例えばサイクル試験反応(CPR)や分枝DNA分析により可能である。
【0064】
十分な量の検出される核酸が利用可能であれば、その標的のコピーを多く作成する代わりに(例えばPCR及びLCRで)その配列を直接検出するのが有利である。とりわけ、シグナルを指数関数的に増幅しないような方法は、定量分析により敏感に反応する。1つのオリゴヌクレオチドに複数の色素を付着させることによってシグナルを強めても、最終的なシグナル強度と標的の量の相関は直接的である。そのような方式は、反応産物がそれ自体更なる反応を促進しないことになるという別の利点を有するので、産物による実験室の面の汚染はそれほど深刻な問題ではない。ノーザン及びサザンバンド・RNアーゼ保護アッセイを含む直接検出の伝統的な方法は、通常は放射能の使用を要し、自動化を受け入れない。最近考案された技術は、放射能の使用を排除しかつ/或いは自動化可能な形式において感受性を向上させると考えられている。例を2つ挙げると、「サイクル試験反応」(CPR)と「分枝DNA」(bDNA)である。
【0065】
サイクル試験反応(CPR):サイクル試験反応(CPR)(Duck et al., BioTech., 9:142, 1990)は、中心部分がRNAで、2つの末端がDNAでできているような長いキメラオリゴヌクレオチドを使用する。標的DNAへのプローブをハイブリダイゼーション及び熱安定性RNアーゼHにさらすと、RNA部分が消化されるようになる。これは、二重鎖の残りのDNA部分を不安定化し、プローブの残りを標的DNAから放出して別のプローブ分子がプロセスを繰り返せるようにする。シグナルは、切断されたプローブ分子の形で、線形速度で蓄積する。繰り返しプロセスがシグナルを増加させる一方で、オリゴヌクレオチドのRNA部分は、サンプル調製で用いられるようなRNアーゼに対して脆弱である。
【0066】
分枝DNA:分枝DNA(bDNA)は、Urdea et al., Gene 61:253- 264 (1987) に記載されており、個々のオリゴヌクレオチドがそれぞれ35〜40の標識を保持できるようにするような分枝構造を有するオリゴヌクレオチドを含む(例えばアルカリホスファターゼ酵素)。bDNAがハイブリダイゼーションイベントからのシグナルを強める一方で、非特異的結合からのシグナルは同様に増加する。
【0067】
本発明の種々の好適実施例に基づく少なくとも1つの配列変化の検出は、例えば、制限断片長多型(RFLP分析)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、変性剤/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE)、一本鎖構造多型(SSCP)分析、またはジデオキシ・フィンガープリント法(ddF)によって達成することができる。
【0068】
特異的核酸配列及び配列変化の検出を可能にするテストに対する要求は、臨床診断において急速に高まっている。ヒト及び病原生物からの遺伝子に対する核酸配列データが蓄積されていくにつれて、特定の配列内で現時点での突然変異に対する高速で費用対効果の大きく簡便なテストの需要は急速に高まっている。
【0069】
突然変異に対する核酸セグメントを走査するために少数の方法が考案されてきた。1つのオプションは、全遺伝子配列の各テストサンプル(例えば単離細菌)を決定することである。これは、約600ヌクレオチド配列では、増幅された物質(例えばPCR反応産物)を用いて達成することができる。これは、関心のあるセグメントのクローン化に関連する時間及び費用を回避する。しかし、専門の器具と高度に訓練された人員が必要であり、この方法は負担が非常に大きくかつ高価すぎるので、臨床応用において実用的・効果的ではない。シークエンシングに関連する困難の点からすると、核酸の所与のセグメントは幾つかの他のレベルで特徴付けることができる。最低の解析度で、同一ゲルにおいて既知の標準的な実行と比較することによって、電気泳動により分子のサイズを決定することができる。電気泳動前に制限酵素の組合せで切断することによって分子の更に詳細な像が得られ、きちんとした地図の作成が可能になる。断片内の特異的配列の存在は、標識されたプローブのハイブリダイゼーションによって検出することができ、或いは、正確なヌクレオチド配列は、連鎖停止ヌクレオチド類似体の存在下でプライマー伸長によってまたは部分化学分解によって決定することができる。
【0070】
制限断片長多型(RFLP):似たような配列間の一塩基の違いを検出するために、分析には多くの場合最高レベルの解析度が要求される。問題になっているヌクレオチドの位置が予め分かっている場合にダイレクトシークエンシングなしに一塩基変化を検査するための幾つかの方法が開発されている。例えば、関心のある突然変異が期せずして制限認識配列に含まれていれば、消化のパターンの変化は診断ツール(例えば制限断片長多型(RFLP)分析)として用いることができる。
【0071】
単独部位(single point)における突然変異はまた、RFLPの創造または破壊によって検出されてきた。突然変異は、ミスマッチにおいて切断によって生成されるRNA断片の存在及びサイズによって検出及び局在化される。DNAヘテロニ重鎖における単一ヌクレオチドのミスマッチはまた、同じ化学薬品によって認識及び切断され、一塩基置換を検出する別の戦略を与えるが、これは一般的には「ミスマッチ化学切断(Mismatch Chemical Cleavage)」(MCC)と命名されている(Gogos et al., Nuel. Aeids Res., 18:6807-6817, 1990)。しかし、この方法は、臨床実験室での使用に適していない2つの非常に有害な化学薬品即ち四酸化オスミウムとピペリジンを使用する必要がある。
【0072】
RFLP分析は、感受性が低く、大量のサンプルが必要であるのが欠点である。点突然変異の検出にRFLP分析を用いるとき、これは、その性質から言って、既知の制限エンドヌクレアーゼの制限配列内に含まれるような一塩基変化のみの検出に限定される。更に、大部分の利用可能な酵素は4〜6の塩基対認識配列を有し、多くの大規模DNA操作に対して頻繁に切断する(Eekstein and Lilley (eds.), Nucleic Acids and Molecular Biology, vol. 2, Springer-Verlag, Heidelberg, 1988)。よって、殆どの突然変異はそのような部位に含まれないので、RFLP分析はごく少数のケースにしか適用可能でない。
【0073】
8塩基対特異性を有する少数のレアカット(rare-cutting)制限酵素は、単離されて遺伝子地図作成に幅広く用いられているが、これらの酵素は数が非常に少なく、G+Cリッチ配列の認識に限定され、高度にクラスター形成される傾向にあるような部位で切断する(Barlow and Lehrach, Trends Genet., 3:167, 1987)。最近では、グループIイントロンによってコードされるエンドヌクレアーゼは12以上の塩基対特異性を有し得ることが発見されているが(Perlman and Butow, Science 246:1106, 1989)、とは言ってもその数は非常に少ない。
【0074】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO):変化が認識配列におけるものでなければ、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は突然変異したヌクレオチドに近接してハイブリダイズするように設計でき、それによってプライマー伸長または連結反応イベントはマッチまたはミスマッチの指標として用いることができる。放射能標識された対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)を用いたハイブリダイゼーションは、特異的な点突然変異の検出にも適用されてきた(Conner et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 80:278- 282, 1983)。この方法は、単一ヌクレオチドによって異なっている短いDNA断片の融解温度の差に基づく。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件は、突然変異遺伝子と野生型対立遺伝子とを区別することができる。PCR産物に適用されるASOアプローチはまた、多数の研究者がラス遺伝子(Vogelstein et al., N. Eng. J. Med., 319:525-532, 1988; and Parr et al., Proc. Natl. Acad. Sci. , 85:1629-1633, 1988)及びgsp/gip腫瘍遺伝子(Lyons et al., Science 249:655- 659, 1990)における点突然変異を検出及び特徴付けするために広範に用いてきた。複数の位置で種々のヌクレオチドの存在が変化するので、ASO法は、全ての可能な腫瘍遺伝子突然変異を網羅するために多くのオリゴヌクレオチドの使用を必要とする。
【0075】
上記した技術(即ちRFLP及びASO)のいずれかを用いるのであれば、疑いがある突然変異の正確な位置をテスト前に知っておかなければならない。即ち、遺伝子または関心のある配列内で突然変異の存在を検出する必要がないときにはこれらの技術を適用できない。
【0076】
変性剤/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE):これら2つの別法は、微小配列変化に応じた電気泳動移動度の変化の検出に依存している。2つの方法のうち1つは、「変性剤勾配ゲル電気泳動」(DGGE)と呼ばれ、僅かに異なる配列が勾配ゲルに電気泳動的に溶解したときに局在融解の異なるパターンを示すことになるような知見に基づく。この方法では、単一ヌクレオチドで異なっているホモ二重鎖とヘテロ二重鎖の融解特性の差が、対応する電気泳動移動度の変化によって標的配列における突然変異の存在を検出できるので、変異体を区別することができる。分析される断片は、通常はPCR産物であり、鎖の完全な解離なく関心のある配列の完全な変性を可能にするように長いひと続きのG−C塩基対(30〜80)により一端で「クランプ」される。DNA断片へのGC「クランプ」の付着は、DGGEによって認識され得るような突然変異の割合を増加させる(Abrams et al., Genomics 7:463-475, 1990)。増幅された配列が低い解離温度を有することを保証するには、1つのプライマーにGCクランプを付着することは絶対不可欠である(Sheffield et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 86:232-236, 1989; and Lerman and Silverstein, Meth. Enzymol., 155:482-501, 1987)。温度勾配を用いて技術の改変がなされており(Wartell et al., Nucl. Acids Res., 18:2699-2701, l990)、その方法はRNA:RNA二重鎖にも適用することができる(Smith et al., Genomics 3:217-223, 1988)。
【0077】
DGGEの有用性に対する制限は、テストされる各種のDNAに対して変性条件が最適化されなければならないという要求を含む。更に、この方法は、ゲルを調整し、電気泳動中に必要な高温を維持するための特別な器具を必要とする。テストされる各配列に対する1つのオリゴヌクレオチド上でクランプ末端(clamping tail)の合成に関連する費用もまた主たる考慮事項である。それに加えて、DGGEには長い実行時間が必要である。DGGEを改変した変性剤定濃度ゲル電気泳動(CDGE)と呼ばれる方法では、DGGEの長い実行時間が短縮されている(Borrensen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8405, 1991)。CDGEでは、突然変異を高効率で検出するために異なる変性剤条件下でゲルが行われることが必要である。
【0078】
温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)と呼ばれるDGGEに類似の技術は、化学変性剤勾配よりは熱勾配を用いる(Scholz, et al., Hum. Mol. Genet. 2:2155, 1993)。TGGEは、電界に対して垂直に温度勾配をかけることができるような特別な器具を必要とする。TGGEは、DNAの比較的小さな断片の突然変異を検出できるので、大きな遺伝子セグメントの走査にはゲルを実行させる前に複数のPCR産物の使用が必要になる。
【0079】
一本鎖構造多型(SSCP):「一本鎖構造多型(SSCP)」と呼ばれる別の一般的な方法は、Hayashi、Sekya、及びその同僚によって開発され(Hayashi, PCR Meth. Appl., 1:34-38, 1991 にレビューされている)、未変性条件で核酸の一本鎖が特徴的な高次構造をとることができ、これらの高次構造が電気泳動移動度に影響するという知見に基づく。相補的な鎖は、一方の鎖が他方から分離され得るような十分に異なる構造を想定する。断片内の配列の変化は高次構造を変化させることにもなり、結果的に移動度を変え、配列変化のためのアッセイとしてこれを用いることを可能にする(Orita, et al., Genomics 5:874-879, 1989)。
【0080】
SSCPプロセスは、両鎖において標識されるDNAセグメント(例えばPCR産物)を変性させ、未変性ポリアクリルアミドゲル上での緩慢な電気泳動的分離が続き、それによって分子内相互作用を形成できかつ実行中に妨げられないようにする過程を含む。この技術は、ゲル組成及び温度の変化に非常に感受性がある。この方法の重大な制限は、異なる実験室において明らかに類似した条件下で作成されたデータとの比較が比較的困難なことである。
【0081】
ジデオキシ・フィンガープリント法(ddF):ジデオキシ・フィンガープリント法(ddF)は、突然変異の存在に関して遺伝子を走査するために開発された別の技術である(Liu and Sommer, PCR Methods Appli., 4:97, 1994)。ddF技術は、サンガー法(Sanger dideoxy sequencing)の成分をSSCPと併用している。ジデオキシ・シークエンシング反応は1つのジデオキシ・ターミネーターを用いて行い、その後、SSCP分析で行うように、反応産物を未変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、終結セグメントの移動度の変化を検出する。ddFは感受性の増加の点ではSSCPより改善されているが、ddFは高価なジデオキシヌクレオチドの使用が必要であり、この技術は尚もSSCPに適したサイズの断片(即ち突然変異の最適な検出のための200〜300塩基の断片)の分析に限られる。
【0082】
これらの方法は全て、上記した制限の他にも分析可能な核酸断片のサイズに関して制限されている。ダイレクトシークエンシングアプローチの場合、断片全体を網羅するために、600以上の塩基対の配列にはクローニングが必要であり、欠失サブクローニングまたはプライマーウォーキングのいずれかの遅延及び費用を結果的に伴う。SSCP及びDGGEは、更に厳格なサイズ制限がある。配列変化に対する感受性が低いため、これらの方法はより大きな断片には適していないと考えられる。SSCPは200塩基対断片内で90%の一塩基置換型を繰り返し検出可能であるが、検出は400塩基対断片に対しては50%以下に低下する。同様に、断片長さが500塩基対に達したら、DGGEの感受性は減少する。ddF技術はまた、ダイレクトシークエンシングとSSCPの組合せであり、比較的小さなサイズのスクリーニング可能なDNAによって限定される。
【0083】
本発明の目下の好適実施例に基づき、腫瘍細胞または癌患者由来の細胞において例えば還元葉酸輸送体(RFC)遺伝子など上述の遺伝子における突然変異を調査する過程は、cDNA−SSCPやゲノムDNA−SSCPなどの一本鎖構造多型(SSCP)技術によって影響される。しかし、これ以外の方法、例えば、限定されるものではないが、核酸シークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、自立合成反応、Qβレプリカーゼ、サイクル試験反応、分枝DNA、制限断片長多型分析、ミスマッチ化学切断、ヘテロニ重鎖分析、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、変性剤勾配ゲル電気泳動、変性剤定濃度ゲル電気泳動、温度勾配ゲル電気泳動、ジデオキシ・フィンガープリント法を用いることもできる。
【0084】
ハプトグロビン表現型は、後述の実施例において説明されているように、ハプトグロビン遺伝子のタンパク質遺伝子産物またはその一部を分析することによって決定することができる。例えば、Wassellら(Ann Clin Biochem 1999;36:609-12)は、電気泳動的に分離されたハプトグロビンタンパク質及び特定の染色の高感度直接分析を教示している。更に、そのような直接分析は多くの場合免疫学的検出方法を用いて達成される。
【0085】
免疫学的検出方法については、例えば「Using Antibodies: A Laboratory Manual」(Ed Harlow, David Lane eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999))に十分に説明されており、当該技術を熟知している者は以下に要約した種々の技術を本発明の一部として実行することができるであろう。全ての免疫学的技術は、2つのハプトグロビン対立遺伝子の少なくとも1つに特異的な抗体を必要とする。本発明の一部として用いるのに適した免疫学的検出方法には、限定されるものではないが、放射免疫検定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫組織化学法、蛍光活性化細胞分類(FACS)が含まれる。
【0086】
放射免疫検定法(RIA):1つの適用形式では、この方法は、アガロースビーズなどの沈殿可能担体に固定化された特異的抗体及び放射標識された抗体結合タンパク質(例えばI125で標識されたプロテインA)を用いて、所望の基質を沈殿させる過程を含む。この場合及び後述の方法では、所望の基質はハプトグロビンである。沈殿ペレット中のカウント数は、基質の量に比例する。RIAの別の適用形式では、標識された基質及び標識されていない抗体結合タンパク質が用いられる。未知の量の基質を含むサンプルを種々の量で加える。標識された基質からの沈殿カウントの減少は、加えられたサンプル中の基質の量に比例する。
【0087】
酵素免疫測定法(ELISA):この方法は、タンパク質基質を含むサンプル(例えば固定細胞またはタンパク質溶液)を微量定量プレートのウェルなどの表面に固定する過程を含む。酵素に結合した基質特異的抗体は、基質に適用され、基質に結合することができる。その後、抗体に結合した酵素を用いた熱量反応によって抗体の存在を検出及び定量する。この方法に通常用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼがある。よく較正されかつ反応の直線範囲内であれば、サンプルに存在する基質の量は生成された着色の量に比例する。定量精度を向上させるために、通常、基質基準が用いられる。
【0088】
ウエスタンブロット法:この方法は、アクリルアミドゲルによって他のタンパク質から基質を分離し、続いて基質を膜(例えばナイロンまたはPVDF)に導入する過程を含む。次に、基質の存在を基質に特異的な抗体によって検出し、基質に特異的な抗体を同様に抗体結合試薬によって検出する。抗体結合試薬は、例えばプロテインAや、他の抗体でもよい。前記抗体結合試薬は、上述したような放射標識したものや酵素連結したものを用いることができる。検出は、オートラジオグラフィー、熱量反応、または化学ルミネッセンスによって行うことができる。この方法は、電気泳動中にアクリルアミドゲルの移動距離を示すような膜上の相対位置によって、基質量の定量化とその一致の決定の両方を可能にする。
【0089】
免疫組織化学法:この方法は、基質特異的抗体によって固定細胞における基質をin situで検出する過程を含む。基質特異的抗体は、酵素連結したものやフルオロフォアに連結したものを用いることができる。検出は、顕微鏡観察及び主観的評価によって行うことができる。酵素連結抗体を用いるのであれば、熱量反応が必要とされることがある。
【0090】
蛍光活性化細胞分類(FACS):この方法は、基質特異的抗体によって細胞における基質をin situで検出する過程を含む。基質特異的抗体は、フルオロフォアに連結したものである。検出は、各細胞から発せられた光が光ビームを通過する際の波長を読み取るような細胞選別機によって行う。この方法では、2つ以上の抗体を同時に用いることができる。
【0091】
本発明を実行する間に、HOPE研究のデータの分析はまた、ビタミンE及び薬物ラミプリルに対する類似のハプトグロビン型に特異的な利益を初めて明らかにした。ラミプリルは一般に高血圧に対して処方され、そのようなものはCVDの予防に寄与するであろうと期待できる。しかし、ラミプリル処置の予防効果の大きさ(RR=0.57)と、予防が1つのハプトグロビン表現型サブグループ(Hp2−2)に厳格に制限されていることは、ラミプリル治療の予防成分が高血圧に対する効果を超えていることを示している。ラミプリルで治療するとin vivoで遊離基酸化種が低下するので(Lopez-Jaramillo, et al J Hum Hypertens 2002; 16S1:S100-300)、ラミプリルは、アンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤としての活性に加えて、酸化防止剤としての活性を有する。劇的に異なる生化学構造を有する2つの異なる酸化防止剤がハプトグロビン型別によって同定される糖尿病患者のサブグループに類似の臨床上の利益を与えるという本明細書の実証は、Trolox(Sagach et al Pharma Res 202;45:435-39)、ラキソフェラスト(Raxofelast)(Campo et al, Cardiovasc Drug Rev 1997; 15:157-73)、TMG(Meng et al Bioorg Med Chem Ltrs 2002;12:2545-48);AGI-1067(Yoshida et al Atheroscler 2002; 162: 111-17)、プロブコール(Probucol)(Kite et al PNAS USA 1987; 84:7725)や、例えば、ビタミンEと酸化防止剤作用のメカニズムが類似しているニソルジピン、ニフェジピン、ニカルジピンなどのカルシウム拮抗薬(Mak I, et al. Pharma Res. 2002;45:27-33)などの他の酸化防止剤にも抗酸化治療の理論的枠組みを適用できることを示唆している。よって、そのような酸化防止剤での予防治療が最も有益であると期待されるような患者集団(Hp2−2糖尿病)は、ビタミンE及びラミプリルの補給が有益であることが実証された患者集団に類似していることになろう。しかし、非選択サンプルにおいても糖尿病患者においてもCVD結果とビタミンC補給の間には相関が見られなかったので(データ示さず)、DM患者における酸化防止剤補給によって利益があることが実証されてもこれが全ての酸化防止剤ビタミンに適用できる訳ではない。
【0092】
本明細書に示されているHOPE研究データのへ分析の新規なアプローチは、糖尿病患者の層別化されていない集団においては酸化防止剤ビタミンEの明白な利益はないが、糖尿病患者のサブグループには抗酸化治療がかなり有益であることを示し得る明白な証拠を与えている。よって、これらのデータは、全ての糖尿病患者に対するハプトグロビン表現型の桁外れの値及び糖尿病のCVDを予防するためにHp2−2表現型を有する患者のための予防的な酸化防止剤補給治療を示している。この予防的な酸化防止剤効果は1つの酸化防止剤(ビタミンEなど)に限定されるものではないこと、そして、Trolox、ラキソフェラスト、AGI-1067、プロブコール、TMG、カルシウム拮抗薬など種々の潜在的な酸化防止剤も効果的であることが予想される。これらの異なる薬剤の相対的な有効性は、更なる臨床研究の分析から決定することができる。
【0093】
限定されるものではないが、血液、血漿、血球、唾液または口洗により派生した細胞、尿や涙など体からの分泌物、生検から採取したものなどを含む、被検者由来の好適な生物学的サンプルを用いて、個人のハプトグロビン表現型を直接的に或いは遺伝的に決定することができるが、このことは当業者には当然のことである。
【0094】
本発明の更なる目的、利点及び新規な機能については、以下の実施例を検討すれば当業者に明らかになるであろう。但し、これらの実施例は本発明を限定するものではない。更に、これまでに詳細に述べたり特許請求の範囲に記載したりした本発明の種々の実施例及び側面のそれぞれについて、その実験的根拠を下記の実施例に見出すことができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例について説明する。一般に、ここで使用される用語と、本発明で用いられる実験手法は、分子的、生化学的、微生物学的、及び組み替えDNA技術を含んでいる。これらの技術は、次の文献に詳しく記載されている。「"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989)」、「"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)」、「Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)」、「Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988)」、「Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York」、「Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)」。米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号、及び第5,272,057号に記載されている手法。「"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I I-III Cellis, J. E., ed. (1994)」、「"Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition」、「"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)」、「Stiles et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)」、「Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)」。使用することができる免疫学的検定法は、以下の特許及び科学文献に幅広く記載されている。米国特許第3,791,932号、第3,839,153号、第3,850,752号、第3,850,578号、第3,853,987号、第3,867,517号、第3,879,262号、第3,901,654号、第3,935,074号、第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号、第4,098,876号、第4,879,219号、第5,011,771号、及び第5,281,521号。「"Oligonucleotide Synthesis" Gait' M. J., ed. (1984)」、「"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)」、「"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984)」、「"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986)」、「"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986)」、「"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984) and "Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press」、「"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990)」、「Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)」。他の一般的な参考文献は、本明細書中で述べる。上記した手法は、当業者には周知であり、利便性に富んでいる。これら全ては、参照することにより本発明に含まれるものとする。
【0096】
《実験方法》
本発明を立証する実験データを提供する実施例を説明する前に、以下の方法について説明する。
【0097】
〈患者〉
SHS(Strong Heart Study)の計画、調査方法、及び実験手法、並びに関係するインディアン社会についての詳しい説明は、既に公開されている(20、39、40)。第1の実験に用いられる45〜74歳の4,549人以上から成るコホートの研究は、1989年7月〜1992年1月の間に行われた。適切な部族全体における実験対象者の割合は、平均64%であった。非実験対象者は、年齢と自己申告による糖尿病の頻度と同様である。それらが第2の実験(1993年7月〜1995年12月)において生存している割合は88%であり、第3の実験においては90%であった(1997年7月〜1999年12月)。
【0098】
各段階での臨床検査は、個人面接と身体検査から成る。空腹時の血液サンプルは生化学的測定に使用され、経口的ブドウ糖負荷試験(75g)が行われる。血液サンプルはEDTAの存在下で収集される。また、血漿は採取され、摂氏−20度で保存される。標準化された血圧測定が得られ、心電図が記録され前述したようにコード化される(39、40)。実験対象者は、WHO(World Health Organization)基準にしたがって、糖尿病患者として分類される(41)。降圧薬を服用している場合や、最大血圧が140mmHg以上又は最低血圧が90mmHg以上の場合は、実験対象者は高血圧であると見なされる。
【0099】
1988年から現在までのSHSコホート中の死者は、部族記録及び医療記録、並びに専門的な研究が実験対象者とその家族に対して直接的に接触することによって確認される。死亡証明書の写しは州保健局から得られ、疾病分類学者を中心にしてICD−9コード化される。CVDによる死亡の可能性は、病初では死亡証明書から判断される(42)。死因は、検死報告、医療記録、及び情報提供者との面接により調査される(42)。死因を確認するために、全ての資料はSHS死亡評価委員会(Strong Heart Study Mortality Review Committee)の一員である医師により別々に見直される。致命的CVD及び脳卒中(脳梗塞)の基準は、前述した通りである(42)。
【0100】
前回の実験以後に発生した非致死心血管系症状、明確なMI、及び明確なCVDを確認するために、医療記録は各実験で見直される(20、43)。また、第2及び第3の実験に参加しなかった者の記録も見直される。全ての潜在的なCVD症状又は介入について、医療記録は熟練した医療記録要約者(abstracter)により見直される。CVD診断(例えば、トレッドミル試験、冠動脈造影)について、外来患者の来診記録は見直され、要約される。カルテの見直しにより得られた情報は、CVDに対して特異的な診断を確立するために、SHS死亡及び発病評価委員会(Strong Heart Study mortality or morbidity review committee)の一員である医師により見直される。前記死亡評価委員会の一員である他の医師によって、前記要約された記録をブラインド・レビューすると、診断の>90%が一致することが明らかになった。
【0101】
〈HOPE研究及び患者の特性〉
HOPE(Heart Outcomes Prevention Evaluation)研究は、2つの予防介入方法(すなわち、アンギオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme:ACE)阻害又はビタミンE)が、プラシーボ(placebo)と比較して、心血管系疾患の危険性の高い患者の死亡及び発病を改善するという仮説の検証を目的としている。研究対象の患者は、彼らの年齢(>55歳)では心疾患又は糖尿病が存在するので、将来的に致命的又は非致命的な心血管系疾患である危険性が高いと見なされる。糖尿病は少なくとも1つの他の危険因子を有している。それは、血管疾患や、喫煙、高コレステロール又は高血圧などである。十分な割合の患者に対して、抗高血圧薬(ACE−Iを除く)、高脂血症治療薬、又はアスピリンなどの併用薬に、ラミプリル(ramipril)又はプラシーボが加えられる。HOPE研究の計画及び手順は、前述した通りである。例えば、「The Heart Outcomes Prevention Evaluation Study Investigators NE J Med. 2000; 342:154-60」や「Sleight, P. J Rennin Angioten Aldost Sys 2000; 1:18-20」を参照されたい。簡単に説明すると、この調査対象集団は、CVDの危険性の高い9,451人以上の患者からなる(3,654DM)。この研究は、400IU自然源ビタミンE(RRR−a−トコフェロール・アセテート)又はプラシーボ、及び10mgのラミプリル又はプラシーボに対してランダム化して、2×2要因計画を持っている。患者は平均4.5年間、追跡調査される。この研究の主要結果は、非致死性MI、脳卒中、又は心臓血管病による死亡から成る。
【0102】
〈症例と対照の定義〉
この研究は、CVDとハプトグロビン表現型との関係を調査することを目的とした、症例対照サンプルを用いる。この調査には、206のCVD症例及び対照(年齢、性別、及び地理的区域に対応している)が用いられる。
【0103】
〈ハプトグロビン表現型の検査〉
ハプトグロビン表現型の検査は、10μlのEDTA血漿に対して、元々はスミティーズ(Smithies)により説明されたでんぷんゲル電気泳動法及びベンジジンによるペルオキシダーゼ染色を用いる方法を修正した(44、45)、ゲル電気泳動法及びペルオキシダーゼ染色を用いる方法により行われる。患者の血漿は、摂氏−20度で保存する。全ての試薬は、Sigma Israel(Rehovot, Israel)から購入する。10%のヘモグロビン溶液は、まず血液細胞をリン酸緩衝生理食塩水内で5回洗浄し、その後9mlの滅菌水内で前記細胞を溶解させる(1mlあたりのペレット化された細胞体積)ことにより、ヘパリン添加血液から作成される。細胞溶解物は、10,000gで40分間遠心分離され、ヘモグロビンを含んでいる上清は、アリコートされ摂氏−70度で保存される。血清(10μl)は、10%のヘモグロビン溶液2μlと混合される。そして、ハプトグロビン・ヘモグロビン複合体を生成するために、サンプルは、室温で5分間おかれる。ゲル電気泳動法を行う前に、同量(12μl)のサンプル緩衝液が各サンプルに添加される。前記サンプル緩衝液は、125mMのトリス塩基(pH6.8)、20%(w/v)のグリセロールと、0.001%(w/v)のブロモフェノール・ブルーを含んでいる。ハプトグロビン・ヘモグロビン複合体は、25mMのトリスベース及び192mMのグリシンを含んでいる緩衝液を使用した、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法により分解される。125mMトリス塩基(pH6.8)中の堆積したゲルは、4%のポリアクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=29:1)である。そして、分離したゲルは、360mMトリス塩基(pH8.8)中の堆積したゲルは、4.7%のポリアクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=29:1)である。電気泳動は、250Vの定電圧で3時間行われた。電気泳動が完了した後、ハプトグロビン・ヘモグロビン複合体は、前記ゲルをガラス皿内の新たに調整された染色溶液に浸すことによって視覚化される。染色溶液(複数の試薬をリストに記載されている順に添加することにより調整される)は、0.2%(w/v)の3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジン(メタノール内)を5ml、ジメチルスルホキシドを0.5ml、5%(v/v)の氷酢酸を10ml、1%(w/v)のフェリシアン化カリウムを1ml、及び30%(w/w)の過酸化水素を150μl含んでいる。ハプトグロビン・ヘモグロビン複合体に対応するバンドは15分以内に容易に視覚化され、48時間以上安定する。全てのゲルは、写真によって記録される。全てのサンプルのハプトグロビン表現型は、患者に関する知識を持たずに実験室で決定される。
【0104】
血漿サンプルは実験室で分析した。そして、これらのサンプルのハプトグロビン表現型検査は、6つを除いてすべて可能である。これら6人の患者については、それらがヘモグロビン(Hp0 表現型)を作成しない患者を示す場合(22、23)、又は前述した分析の際にハプトグロビン濃度が検出限界以下である場合は不明である。
【0105】
HOPE研究のサンプルとしては、ハプトグロビン表現型の検査は、10μlの血漿に対して、来の手法に従ったポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法(Hochberg I et al Atherosclerosis 2002; 161:441-446)により行った。特徴となるバンドパターンは、1対立遺伝子に対して異型接合する者(Hp1−1)、2対立遺伝子に対して異型接合する者(Hp2−2)、又はハプトグロビン遺伝子座に対して異型接合する者(Hp2−1)から得られた。血漿から決定されたハプトグロビン表現型と、ポリメラーゼ連鎖反応によりゲノムDNAから決定されたハプトグロビン遺伝子型は100%一致した(Koch W. et al Clin Chem 2002; 277:13635-40)。一義的なハプトグロビン表現型は、全サンプルの99.6%以上の分析によって得られる。ハプトグロビン表現型の検査は、患者の臨床及び治療状態を知ることなく行われる。
【0106】
〈統計的分析〉
年齢、性別、LDL及びHDLコレステロール、トリグリセリド、最大血圧、BMI、糖尿病、喫煙状態、CVDの家系、補充の中心(recruitment center)などのCVD危険因子は、3つのハプトグロビン表現型の間だけではなく、症例及び対照と比較される。さらに、インスリン、空腹時の血糖値、HbAlc、DMの継続期間、DMの家系などのDM特性は、3つのハプトグロビン表現型の間だけではなく、症例及び対照と比較される。分布及び多項式ロジスティック回帰モデリングは、これらのCVD危険因子及びDM特性が表現型に関係することを確認するために行われる。パラメータを検査するためには尤度比(likelihood ratio)が用いられる。
【0107】
条件付きロジスティック回帰モデルは、CVD危険因子を調整する3つのハプトグロビン表現型及びDM特性により、糖尿病患者におけるCVD症状を有する確率のモデリングを行う。糖尿病の表現型の相互作用は、2つの指標変数(1つは糖尿病に患者用、もう1つは糖尿病ではない患者用)を使用してコード化される。モデルの妥当性は、残りの分析により評価される。
【0108】
HOPE研究の全ての分析は、SAS6.02を使用して行われる。ハプトグロビンに関する患者の基準となる特性は、必要に応じて、tテスト又はx2テストによって比較される。相対リスク(Relative risk:RR)と95%信頼区間は、心疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、及び脳卒中の主要な結果として報告される。
【0109】
《実験結果》
〈実施例1:ハプトグロビン表現型は糖尿病患者におけるCVDの危険性を予測する〉
CVDの危険因子及びDM特性による、症例・対照コホート(case control cohort)の臨床的特徴を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
症例及び対照は、年齢、性別、及び地域に対応している。これらのデータは、糖尿病、LDL、コレステロール、及び高血圧は全てCVDの独立予測因子であるという、この母集団における前回の発見と一致する(20)。
【0112】
このコホートのハプトグロビン表現型の検査は、1−1が25%、2−1が44%、2−2が31%という分布を明らかにする。1対立遺伝子の頻度は0.47であり、前回報告されたこの母集団におけるハプトグロビンの対立遺伝子頻度と十分に一致している(26)。CVDの危険因子又はDM特性について、異なるハプトグロビン表現型間で著しい差異は発見されなかった。両方とも、単変量解析、及び1−1表現型を持つ確立をモデル化する多項式ロジット回帰分析により判断される。
【0113】
下記の表2は、糖尿病の及び糖尿病にかかっていない人における、CVD危険因子及びDM特性が調整される前及び後の、各ハプトグロビン表現型のCVD症状の可能性を予測する条件付きロジスティック回帰を表す。
【0114】
【表2】

【0115】
これらのデータは、糖尿病のSTS対象者における全てのCVD危険因子及びDM特性を調整した後に、ハプトグロビン表現型2−2がCVD症状を有する可能性が、1−1表現型(p=0.001)よりも4.7倍高く(1.86-11.88 OR 95% Cl)、2−1表現型(p=0.022)よりも2.5倍高い(1.14-5.67 OR 95% Cl)ことを示す。さらに、ハプトグロビン表現型2−1の患者は、ハプトグロビン表現型2−2がCVD症状を有する可能性が、1−1表現型よりも1.8倍高く(0.86-3.96 OR 95% Cl)である(統計的に有意ではないが)。総合すれば、これらのデータは、ハプトグロビン2対立型遺伝子の数から与えられる糖尿病患者におけるCVDの進行の段階的なリスクの存在を示唆する。
【0116】
最終的に、糖尿病に罹っていない患者では、傾向は統計的有意性の境界であると観察され、ハプトグロビン表現型2−2の糖尿病患者は、ハプトグロビン表現型2−2がCVD症状を有する可能性が、1−1表現型(p=0.073)よりも3.0倍高い(0.90-9.77 OR 95% Cl)ことを示す。
【0117】
下記の表3は、これらの結果を要約している。
【0118】
【表3】

【0119】
〈実施例2:ハプトグロビン表現型は糖尿病患者における抗酸化治療の有効性を予測する〉
(ハプトグロビン表現型の検査を受けるHOPEサンプルの患者の特徴)
ハプトグロビン表現型は、3176人の患者(1078人の糖尿病)の元の血漿が保存されていた元のHPPEコホートからから得られた。CVD危険因子に関するHOPEコホートの臨床的特徴と、治療計画を下記の表4に示す。
【0120】
【表4】

【0121】
このHOPEコホートの一部の基準特徴は、コホート全体と有意差があるとはいえない。ハプトグロビン表現型により示唆されるこのサンプルの基準特徴は、基準個体群統計学、医療又は治療特性に有意差がないことを明らかにする(表4)。
【0122】
(Hp.表現型のCV転帰への影響)
抗酸化治療を受けていない患者の間では、全研究サンプル(Hp1−1 45/259 17.4%、Hp2−1 113/737 15.3%、Hp2−2 95/581 16.4%, Χfor trend 0.08, P=0.87)において、ハプトグロビン表現型に関係する主要な各種の評価項目(非致死性MI、脳卒中、又は心臓血管病による死亡)の発生率に大きな差異はない。しかし一方、上記のSHSで報告された結果と一致するので(実施例1と、「Levy AP, et al. haptoglobin phenotype is an independent risk factor for cardiovascular disease in individuals with diabetes: the strong heart study. J Am Colt Card 2002; 40: 1984-1990」を参照されたい)、抗酸化治療を受けていないHOPE研究のDM患者では、Hp2対立遺伝子(Hp1−1 13/79 16.5%、Hp2−1 44/225 19.6%、Hp2−2 48/187 25.7%,Χ for trend 5.67,P=0.02)と関係がある主要な各種の評価項目(非致死性MI、脳卒中、又は心臓血管病による死亡)において危険性が高まることが見出された。
【0123】
(ビタミンEのCV転帰への影響)
下記の表5は、全ての患者及び糖尿病患者についての、ビタミンEを補給した、又は補給しない場合の、ハプトグロビン表現型との相関関係における主要なCV転帰(非致死性MI、脳卒中、又は心臓血管病による死亡)の分析の結果を表す。
【0124】
【表5】

【0125】
(RRR are given as mean (95% CI) for the risk of a CV event who vitamin E as compared to without vitamin E. *, statistically significant with p<0.05. NS, not statistically significant.)
また、研究したサンプル全体では、ハプトグロビン型にかかわらず、ビタミンEの補給は、主要なCV転帰に対して著しい有効性はなかった(表5、患者全体)。さらに、すでに報告されているように(The Heart Outcomes Prevention Evaluation Study Investigators. Vitamin E supplementation and cardiovascular events in high-risk patients. N Eng J Med 2000; 342: 154-160)(表5、DM患者)、任意抽出のDM群において、ビタミンEの補給の著しい有効性はなかった。意外にも、ハプトグロビン2−2表現型のDM患者では、ビタミンE治療はCV死の危険性(RR 0.45, 95% CI 0.23-0.90; P=0.003)及び非致死性心筋梗塞の危険性(RR 0.57, 95% CI 0.33-0.97; P=0.02)を著しく低くすることが明らかになった。一方、他のハプトグロビン表現型(Hp1−1及びHp2−1)のDM患者では、主要な各種の評価項目に対して、ビタミンE治療の大きな有効性が見られないことが明らかになった。
【0126】
(ラミプリルのCV転帰への影響)
【0127】
【表6】

【0128】
(* statistically significant p<0.05. NS, not statistically significant. RRR are given as mean (95% CI) for the risk of a CV event with ramipril as compared to without ramipril.)
全サンプルの分析から明らかになるように、ハプトグロビン型にかかわらず、ラミプリルの補給による主要なCV転帰に対しての大きな利益は無かった(表6、全患者)。そして、ビタミンEに影響(表5、DM患者)と同様に、任意抽出のDM群において、ラミプリルの補給の著しい有効性はなかった。意外にも、ハプトグロビン2−2表現型のDM患者においてのみ、非致死性MI、脳卒中、心臓血管病による死亡、及び心筋梗塞についての複合性の主要な各種の評価項目に対するラミプリルの大きな利益があった(RR 0.57, 95% CI 0.36-0.90; P<0.05)。一方、他のハプトグロビン表現型(Hp1−1及びHp2−1)のDM患者では、主要な各種の評価項目に対して、ラミプリルの有効性は無かった(表6)。
【0129】
当然のことながら、個々の実施形態の中で、明確にするために説明された本発明のいくつかの特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせることができる。反対に、1つの実施形態の中で簡潔に説明された本発明の様々な特徴は、個々に又は適切に組み合わせることができる。以上、本発明の特定の実施例について説明したが、本明細書に記載した特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者は種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0130】














【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病患者の血管合併症を治療するための抗酸化治療の有効性を判断する方法であって、
糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するステップと、それによって糖尿病患者の抗酸化治療の有効性を判断するステップとを含み、
前記抗酸化治療の有効性は、ハプトグロビン2−2表現型の糖尿病患者の方が、ハプトグロビン1−2表現型又はハプトグロビン1−1表現型の糖尿病患者よりも大きいとすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記血管合併症は、微小血管合併症及び大血管合併症から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記大血管合併症は、慢性心不全、心血管疾患死、卒中、及び冠動脈血管形成術に関連する再狭窄から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記微小血管合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎、及び糖尿病性神経障害から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記大血管合併症は、冠動脈側枝血管減少及び心筋虚血から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記ハプトグロビン表現型の判定は、糖尿病患者のハプトグロビン遺伝子型を判定することによって行われることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記糖尿病患者のハプトグロビン遺伝子型を判定するステップは、信号増幅方法、直接検出方法、及び少なくとも1つの配列変化の検出から成る群より選択される方法によって行われることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記信号増幅方法は、DNA分子及びRNA分子から成る群より選択される分子を増幅することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、
前記信号増幅方法は、PCR、LCR(LAR)、自立合成反応(3SR/NASBA)、及びQβレプリカーゼ反応から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
前記直接検出方法は、サイクル試験反応(CPR)及び分岐DNA分析から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの配列変化の検出は、制限断片長多型(RFLP)分析、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、変性剤/温度濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE/TGGE)、一本鎖構造多型(SSCP)分析、及びジデオキシ・フィンガープリント法(ddF)から成る群より選択される方法を用いることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記ハプトグロビン表現型の判定は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を直接的に決定することにより行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記ハプトグロビン表現型の決定は、免疫学的検出方法により行われることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記免疫学的検出方法は、放射免疫検定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫組織化学法、及び蛍光活性化細胞分類(FACS)から成る群より選択される方法が用いられることを特徴とする方法。
【請求項15】
糖尿病に関連する血管合併症を防止するために、糖尿病患者の酸化的ストレスを減少させることの重要性を判断する方法であって、
糖尿病患者のハプトグロビン表現型を判定するステップと、それによって特定の糖尿病患者の酸化的ストレスを減少させることの重要性を判断するステップを含み、
前記酸化的ストレスを減少させることの重要性は、ハプトグロビン2−2表現型の糖尿病患者の方が、ハプトグロビン1−2表現型又はハプトグロビン1−1表現型の糖尿病患者よりも大きいとすることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記血管合併症は、微小血管合併症及び大血管合併症から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記大血管合併症は、慢性心不全、心血管疾患死、卒中、及び冠動脈血管形成術に関連する再狭窄から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
前記微小血管合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎、及び糖尿病性神経障害から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、
前記大血管合併症は、冠動脈側枝血管減少及び心筋虚血から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、
前記ハプトグロビン表現型の判定は、糖尿病患者のハプトグロビン遺伝子型を判定することによって行われることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法であって、
前記糖尿病患者のハプトグロビン遺伝子型を判定するステップは、信号増幅方法、直接検出方法、及び少なくとも1つの配列変化の検出から成る群より選択される方法によって行われることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記信号増幅方法は、DNA分子及びRNA分子から成る群より選択される分子を増幅することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、
前記信号増幅方法は、PCR、LCR(LAR)、自立合成反応(3SR/NASBA)、及びQβレプリカーゼ反応から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、
前記直接検出方法は、サイクル試験反応(CPR)及び分岐DNA分析から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの配列変化の検出は、制限断片長多型(RFLP)分析、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、変性剤/温度濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE/TGGE)、一本鎖構造多型(SSCP)分析、及びジデオキシ・フィンガープリント法(ddF)から成る群より選択される方法を用いることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15に記載の方法であって、
前記ハプトグロビン表現型の判定は、糖尿病患者のハプトグロビン表現型を直接的に決定することにより行われることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、
前記ハプトグロビン表現型の決定は、免疫学的検出方法により行われることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記免疫学的検出方法は、放射免疫検定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫組織化学法、及び蛍光活性化細胞分類(FACS)から成る群より選択される方法が用いられることを特徴とする方法。


【公表番号】特表2006−512079(P2006−512079A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564404(P2004−564404)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/IL2003/001120
【国際公開番号】WO2004/060135
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505252241)ラッパポート・ファミリー・インスティチュート・フォー・リサーチ・イン・ザ・メディカル・サイエンシズ (2)
【氏名又は名称原語表記】RAPPAPORT FAMILY INSTITUTE FOR RESEARCH IN THE MEDICALSCIENCES
【住所又は居所原語表記】Efron Street、 P.O.BOX 9697、31 096 Haifa、 Israel
【Fターム(参考)】