説明

高解像度デジタル撮像、分染および自動化実験室システムの使用による、CFUアッセイのための高スループットシステム

造血細胞集団におけるコロニー形成単位の客観的で標準化された測定を行い、生着成功を示すための高スループットシステムが本明細書に開示されている。さらに、臍帯血単位に関連する画像及びデータの電子的保存を実現する実験室情報管理システムが開示されている。一実施態様において、標準化されたコロニー形成単位のアッセイ法を提供する。このアッセイ法は、造血細胞を含む組織又は体液の検体を取得する工程、その細胞を造血前駆細胞コロニーの成長を支える培地で培養する工程、これらのコロニーを染色する工程、これらのコロニーを撮像する工程、前駆細胞のタイプ毎にコロニーを計数する工程、並びにある特定の実施態様では、検体中の前駆細胞の数及びコロニーの大きさに基づいてコロニーの機能状態及び生着可能性を測定する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年8月20日に出願された、米国仮特許出願第61/090,491号に対する優先権を主張し、この仮特許出願は、本明細書においてその全体が参照として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、細胞検出システム及び高解像度画像解析を利用した造血細胞集団におけるコロニー形成単位の客観的で標準化された測定のための高スループットシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
臍帯血(umbilical cord blood)(CB)は、血縁ドナーを欠く患者のための次第に受け入れられている移植片供給源である。CB単位の質及び生着(engraftment)可能性の決定因子として現在用いられている移植片の特性としては総有核細胞(TNC:total nucleated cells)、CD34+細胞及びコロニー形成単位(CFU:colony forming unit)の計数が挙げられる。標本を凍結/解凍前後のCFU数はCB細胞生着の強力な独立予測因子である。現在、14日間CFUアッセイ法は、造血前駆細胞の機能状態並びに再増殖能及び数を測定する唯一の方法である。光学顕微鏡を用いて行われているようなCFU増殖についての評価は、時間がかかり、主観的で標準化が困難である。さらに、現在の方法では、14日間アッセイ法の終了時に検体プレートが捨てられるので、アッセイ完了後に検体を再度の数計測又は視覚化することができない。
【0004】
従って、CFUの数、増殖を評価し種々のコロニータイプを識別するための客観的で標準化された高スループットシステムが望まれるであろう。さらに、検体の確実な識別及び後々の参照ための検体画像及びアッセイ結果の保存を可能にするシステムが極めて望まれていると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本開示は、細胞検出システム及び高解像度画像解析を利用した造血細胞集団におけるコロニー形成単位の客観的で標準化された測定のための高スループットシステムを提供する。
【0006】
一実施態様において、標準化されたコロニー形成単位のアッセイ法を提供する。このアッセイ法は、造血細胞を含む組織又は体液の検体を取得する工程、その細胞を造血前駆細胞コロニーの成長を支える培地で培養する工程、これらのコロニーを染色する工程、これらのコロニーを撮像する工程、前駆細胞のタイプ毎にコロニーを計数する工程、並びにある特定の実施態様では、検体中の前駆細胞の数及びコロニーの大きさに基づいてコロニーの機能状態及び生着可能性を測定する工程を含む。
【0007】
別の実施態様では、検体中の造血前駆細胞数を測定する方法を提供する。この方法は、造血細胞を含む組織又は体液の検体を取得する工程、その細胞を造血前駆細胞コロニーの成長を支える培地で培養する工程、これらのコロニーを染色する工程、これらのコロニーを撮像する工程、および検体中の前駆細胞のタイプ毎にコロニーを計数する工程を含む。
【0008】
別の実施態様では、高解像度カメラ、適切な光配向、広帯域閃光管(broad spectrum flash tube)及び場合により陽性検体IDを含む画像検出及び定量化システムを提供する。
【0009】
さらに別の実施態様では、検体及び識別を含む陽性検体識別を提供する。その検体は臍帯血単位であり、その識別は特定の臍帯血単位及びこれに関連する情報を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、14日間細胞培養後の未染色(A)及び染色済(B)CFU(コロニー形成単位)を含む直径35mmのウェルの画像である。CFUは以下の記号により特定されている:○はCFU−GM(顆粒球−マクロファージコロニー形成単位)の存在を示し、◇はCFU−E(赤芽球コロニー形成単位)の存在を示し、□はCFU−GM/E(多系統コロニー形成単位)の存在を示す。陽性識別はこれらのウェルにおいて行われ、試験日/時間、CBU IDサンプル、皿(Dish)ID、オペレータ識別及びフード(hood)情報を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本開示は、コロニー染色及び高解像度デジタル撮像を利用した造血細胞集団におけるコロニー形成単位(CFU)の客観的で標準化された測定のための高スループットシステムを提供する。コンピュータを用いた実験室情報管理システムがこの高スループットCFUアッセイ法を支援する。
【0012】
一実施態様において、標準化されたコロニー形成単位のアッセイ法を提供する。このアッセイ法は、造血細胞を含む組織又は体液の検体を取得する工程、その細胞を造血前駆細胞コロニーの成長を支える培地中で培養する工程、これらのコロニーを染色する工程、これらのコロニーを撮像する工程、前駆細胞のタイプ毎にコロニーを計数する工程、並びにある特定の実施態様では、検体中の前駆細胞の数及びコロニーの大きさに基づいてコロニーの機能状態及び生着可能性を測定する工程を含む。
【0013】
別の実施態様では、検体中の造血前駆細胞数を測定する方法を提供する。この方法は、造血細胞を含む組織又は体液の検体を取得する工程、その細胞を造血前駆細胞コロニーの成長を支える培地中で培養する工程、これらのコロニーを染色する工程、これらのコロニーを撮像する工程、および検体中の前駆細胞のタイプ毎にコロニーを計数する工程を含む。
【0014】
造血細胞は、血液(末梢血、臍帯血)、骨髄、胎盤などのような任意の適当な供給源から取得することができる。一実施態様において、この供給源は臍帯血である。取得した細胞は、ある期間、例えば、約1乃至21日間、約5乃至14日間又は約10乃至14日間にわたって造血前駆細胞コロニーを支える標準的培地中で培養することができる。一実施態様において、細胞は14日間培養する。適切な培地の例としては、AMBION(登録商標)(Invitrogen社)、STEMLINE(登録商標)(Sigma社)、並びにSTEMSPAN(登録商標)、ALDEFLUOR(登録商標)、METHOCULT(登録商標)及びALDECOUNT(登録商標)(Stem Cell Technologies社)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施態様において、適切な成長因子を用いることによって個別の細胞系統の増殖を選択的に刺激することが可能である。特定の細胞系統を選択するのに適した成長因子としては、赤血球に対してはエリスロポイエチン、巨核球に対してはトロンボポイエチン、顆粒球に対しては顆粒球刺激因子(G−CSF)並びに顆粒球及びマクロファージの刺激に対しては顆粒球マクロファージ刺激因子(GM−CSF)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、IL−3、IL−6、及び幹細胞因子を用いることもできる。これらの成長因子は単独又は各種の組合せ(即ち、カクテル)で用いることができる。分離又は未分離細胞検体中の正確に測った数の所与のタイプの細胞をインキュベートした後に細胞数を評価することは、検体中の対応する細胞系統の増殖能を評価する別の方法を与える。従って、培養皿全体からのコロニー画像の取得を増やすことにより、接種した細胞数との比較によって細胞数、従って実際の細胞増殖の数値的推定を可能にすることができる。ある特定の実施態様では、上記培養工程の前にCD34+の亜集団又は光密度富化細胞又はアフェレーシス産物を分離することができる。
【0015】
一実施態様ではこうしたコロニーを撮像する。開示したシステムを用いれば、CFUを客観的に視覚化し、識別し、計数することができ、こうしたデジタル画像を後々の再調査及び/又は再分類のために保存することができる。このシステムは、光学アッセイ法のパラメータに関するコンピュータ情報をもたらす。高解像度撮像、任意選択的な一段染色及び従来のCFUアッセイを組み合わせることにより従来型のアッセイの技術的な課題が解決される。このシステムは、標準化、分類並びに計数の再現性及び大量処理を支援する。画像検出及び定量化システムの一実施態様は、高解像度カメラ、適切な光配向、広帯域閃光管及び陽性検体識別を含む。
【0016】
一実施態様において、検出システムはコロニー形成単位のアッセイ法を支援する。検出システムの一実施態様では、検体と同等の大きさのフルカラー高速(例えば、1/125秒)撮像面(直径35mmの皿)からなる画像取得システムを提供する。この撮像システムは、ccd検出器(例えば、約39メガピクセル以上)を有し、ピクセル当たり約7ミクロン程度の画像解像度をもたらす。次に、これを、高度に歪みのない1:1マクロ集光レンズ、及び迷光を極力抑え、検体間の再現性のあるポジショニングをもたらし、各画像上に直接刻印された人及び機械が読み取れる(即ち、バーコード)識別の組込みを可能にする特注設計のステージと組み合わせる。励起は、強力で一様な広帯域閃光(約1/500秒)管で構成される。次いで、詳細な撮像後解析、保存及び遡及的研究のために高性能コンピュータによって振動のない単一画像を取得する。一実施態様において、この撮像システムはHasselbladにより作製されたSLRカメラであり、光源はBroncolorによるものである。しかしながら、任意の適切なカメラ及び光源を用いることができる。この画像検出システムは、明るいバックグラウンドで培養物中増殖するCFUを明確に見ることができるCFUアッセイ培養皿の画像の取得を可能にする。このシステムの別の利点は、開示システムにおいて示される配列による正確に同一の物理的位置に単一の検体が複数の日に撮像されることが可能となることである。検体を再現性よく配列して撮像することによりウェルプレート全体あるいは単一のコロニーさえもある期間にわたって繰り返し視覚化することが可能となる。こうしたその1つのコロニー又は複数のコロニーの成長は、異なる日に撮った画像同士を比較することで長い期間をかけて追跡することができる。例えば、検体の画像は1日目、5日目及び14日目で比較することができる。こうして、目的とする1つのコロニー又は目的の複数のコロニーの成長を監視することができる。
【0017】
一実施態様において、培養物を染色する。一実施態様において、この培養物を一段(single step)で染色する。さらに別の実施態様では、培養物を多段階プロセスにより染色する。造血前駆細胞を染色する染色剤は任意のものを用いることができる。一実施態様において、この染色剤は、超活性のもの、視覚的なもの、組織化学的なもの、又は放射線学的なものとすることができる。こうした染色剤は、ヘモグロビンを欠く細胞、特に白血球の視覚的な現れを向上させるはずである。別の実施態様では、視覚化を向上させるために各種プローブで標識した特定の系統の細胞により発現されるマーカに特異的な抗体を使用することができる。別の実施態様では、多系統コロニー形成単位(CFU−GM/E)、赤芽球コロニー形成単位(CFU−E)及び顆粒球−マクロファージコロニー形成単位(CFU−GM)の明確化を、均一に明るい背景の下に、それぞれのタイプに特定の色(それぞれ、濃い紫色、赤色及び薄い紫色)を与えることでさらに改善することができるMTT(臭化3−[4,5−ジメチルチアゾル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム)を、場合により洗浄工程なしに用い、細胞を一段で染色する。特定のインキュベーション時間及びMTT希釈の後に特定の色を生じさせる。例えば、一実施態様では、インキュベーション時間は約10乃至45分間とすることができる。別の実施態様では、インキュベーション時間は約15乃至40分間である。さらに別の実施態様では、インキュベーション時間は約30乃至40分間である。こうした色素の希釈は所望の染色によって変えることができる。MTTを用いる場合、希釈は1/2乃至約1/10とすることができる。一実施態様において、1/5希釈のMTTを用いる。一実施態様において、染色は、1/5希釈のMTTを用い、インキュベーションを37°Cで30分間、その後室温で10分間行って達成することができる。
【0018】
こうした画像は、培養皿染色の前及び/又は後に撮ることができる。一実施態様において、培養物は染色の前後で撮像する。この実施態様では、培養物は、未染色及び染色済の細胞及び必要に応じてコロニーを比較することで容易に分類し、計数することができる(図1参照)。
【0019】
一実施態様では、コンピュータによる実験室情報システム(LIMS:laboratory information system)を用いてCFUアッセイシステムの各工程を監視し、記録する。一実施態様において、LIMSは、特定のCB単位の固有のバーコードによるID標識により関連づけられた培養皿画像の保存を可能にする。これによって特定のCB単位に関連した検体の陽性識別が与えられ、インキュベータの場所、培養(plating)及び計数の日付、技術者ID並びにコロニー計数の詳細などの更なる情報が保存される(図1参照)。
【0020】
LIMSの別の利点は、上記CB単位に関する保存情報のポータビリティである。即ち、所与の検体に関連する画像及びデータは、被移植者のために発注されるCB単位の発送の前又は発送と共に容易に送ることができる。このようにして、被移植者の医師は検体及びアッセイの画像を見て、その場でCB検体の品質及び生着可能性を評価することができる。こうした保存情報は、メール、ファックス及び/又は電子的に送付することができる。保存情報を電子的に送付する場合には更なるポータビリティが得られる。
【0021】
一実施態様において、これらのコロニーの数及び機能的状態は、測定することができる検体中の細胞の生着可能性と比較し、そしてそれを評価するのに用いることができる。これは、Kaplan Meyerの確率推定(Kaplan, E.L.& Meier, P.(1958年). ”Nonparametric estimation from incomplete observations”、JOURNAL OF THE AMERICAN STATISTICAL ASSOCIATION 53:457-481)又は累積発現率解析(Gray RJ(1988年) A class of K−sample tests for comparing the cumulative incidence of a competing risk、ANNALS OF STATISTICS, 16:1141−1154)などの臨床転帰解析において一般的な標準統計法を用いて達成される。
【0022】
現在までのところ、14日間CFUアッセイ法は、造血前駆細胞の機能状態並びに数及び再増殖能を測定する、実験室で日常的に実施されている唯一のアッセイ法である。CFU増殖の評価は、位相差光学顕微鏡によって手動で行われ、CFUコロニーは形態、色及び大きさによってCFU−GM/E、CFU−E又はCFU−GMとして分類した後、手動で計数する必要がある。従って、現行のCFUアッセイは時間がかかり、主観的で標準化が困難であり、多数の検体を毎日試験する必要がある場合には実用的ではない。さらに、検体培養皿は保存することができないため、全ての検体は培養終了時(14日目)に分析しなければならず、コロニーの再調査、検討、再計数及び/又は再分類を皿の廃棄の前に必要とされても可能ではない。
【0023】
これに対して、ここに開示した画像検出及び定量化のシステム、アッセイ及び方法は、1日当たり多数の検体を処理する利点をもたらす。画像はコロニーの将来の再調査及び/又は再分類のために保存することができる。各コロニーが染色後に特定の色を取得することになるため、分類は客観的であり、皿全体についての計数を速やかに達成することができる。さらに重要なことに、この新規の検出システムは、陽性検体識別及び標準化を支援し、日々多数の検体を試験する必要のある実験室において容易に実施可能なアッセイ法に高い再現性をもたらす。
【0024】
さらに、従来のCFUアッセイ法は皿内で増殖するCFUを分類し、計数するのに光学逆相顕微鏡の使用を必要とし、主観的で時間がかかり、多数の培養皿について計数するのには実用的でない。今回開示したシステムを用いれば、顕微鏡を必要としない。種々のコロニータイプの明確化が明らかであることがコロニーの分類及び計数をより速やかにすることができ、従って、作業効率の向上に役立つ。コロニーは、各種分光分析技術を用いて撮像することができ、こうした技術としては吸収及び蛍光を利用したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような方法で、コロニーの計数及び分類は、従来の分類/計数方法よりも再現性が高くなるため、種々の実験室の間で標準化することができる。画像は、将来の再調査及び計数のため、又は医師のために電子的に保存することができる。コロニーの計数は着色させた画像を利用して自動化することができる。さらに、こうした画像はこれらを特定の検体に関連づけるバーコードによるIDによって容易に検索することができる。
【0025】
コンピュータ利用の方法はCFUアッセイプロセス全体(検体負荷の日付及び時間、検体培養の日付及び時間、検体撮像の日付及び時間)の再調査を可能にする。各工程を実施した技術者は、画像上のバーコードによるID標識によって特定されることが可能であり、陽性検体識別を保証し、特定の検体に関連づけられる。さらに、ここに開示したアッセイ、方法及びシステムによって1日当たり多数の検体処理が可能となり、これを高スループットシステムにしている。一実施態様では、約2時間で約100個の皿を染色し、撮像することができる。別の実施態様では、約2時間未満で約80個の皿を染色し、撮像することができる。さらに別の実施態様では、約70分で約60個の皿を染色し、撮像することができる。
【0026】
別の実施態様として、視野内の対象を識別する現行の画像解析法に基づいたコンピュータ利用の計数プログラムを本明細書で提供する。一実施態様では、コロニーの境界線が誘導され、色識別の改善が達成される。これによって、他のパラメータ、例えば、CD34、CD38、CD79などの抗原マーカ、細胞数、ドナーの人口統計的特性及び移植片転帰、薬物毒性、新規成長因子評価などに関連しうる、存在する各タイプのコロニーのコロニー数及び総面積の正確さが向上する。さらに、本明細書に提供したアッセイ、方法並びに撮像及び検出システムでは、実験的計数におけるコロニーの合体によるか又は多数コロニーの群発による現行の問題点を解決することができる。
【0027】
一実施態様において、コロニーの2次元の境界を視野内に置くことによって解析を拡張することができ、これによってごく接近して増殖する異なるコロニーの解像及び各コロニーの占める面積の計算が可能となる。また、コロニーの境界を明確化することによって、さらに皿内のコロニーの総数が計算される。コロニー内の細胞タイプを明らかにする染色及び/又は細胞マーカを識別することと相俟って、この方法は、臍帯血及び/又は他の検体からの造血細胞の増殖能に関する2又は3次元(面積又は容積)の直接的な数値予測をもたらすことができ、この予測は単にコロニー数によるよりもはるかに正確である。さらに具体的には、ある特定の実施態様において、高解像度の視野奥行き測定による3次元(平均深さ)の推定値を得ることにより、又は大雑把に平均深さが可視面積及び半固形成長培地層の厚さの関数であるとみなすことによって、容積の推定が可能である。コロニーの容積から、おおよその細胞数が得られ、さらに、皿内の全てのコロニー中又は単に細胞タイプの明確な全てのコロニー中の全体としての細胞数の推定が可能となる。
【0028】
さらに、ステージ及び光学経路に利用される機械的部品にもよるが、検出及び分光学的分解能によって種々の次元レベルで増殖するコロニーを検出することができる。ある特定の実施態様において、個々の培養物の未染色及び染色済画像のコンピュータ利用のアラインメントは、14日間アッセイ法におけるコロニー間の経時的比較のために用いることができる。
【0029】
ここに開示したアッセイ並びに画像検出及び定量化システムを用いて得られた写真画像は、データベースの一部としてのアッセイ結果のコンピュータ利用保存を可能にするものであり、造血細胞移植のための臍帯血単位の放出を含む臨床応用の支援に有用である。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
14日間にわたるCB培養(CFUアッセイ、Stem Cell Technologies社)の後、ピクセル当たり7.6mmの解像度を実現し、バーコードで識別される皿内の全てのコロニーの明瞭な観察を可能にする高解像度写真用カメラ利用のデジタル撮像システムを用いて、35mm皿の画像を取得した。MTT(臭化3−[4,5−ジメチルチアゾル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム)による短時間一段染色プロトコルを用いると、均一な明るい背景の下、各細胞タイプを特定の色で描写することによって、CFU−GM/E及びCFU−E(濃い紫色/赤色)並びにCFU−GM(薄い紫色)の明確化が可能となる(図1参照)。顕微鏡を用いることによる従来の計数に対してこの新規な方法を比較したところ、良好な相関が認められた(R線形=0.95;n=122評価培養皿)。151の培養物を3名の異なるオペレータが独立に分類し、計数したところ、ばらつきは少なかった(CV(変動係数)%=8.9%;範囲1乃至27%)(顕微鏡)。検体培養は、9種のCB検体を複数培養によって評価した実験において、CFUアッセイにばらつきを持ち込んだ(アッセイ内CV%=21.9%;範囲3.4乃至34.5%及びアッセイ間CV%=23.3%;範囲12.6乃至35%)。
【0031】
別の実施態様では、コンピュータを用いた実験室情報管理システム(LIMS)を用意して、固有のバーコードによる識別(ID)標識により特定のCB単位に関連づけられた培養皿に関係するデータを保存する。バーコードによるIDを介してこのCB単位に関連づけることができる別の情報には、CB画像、インキュベータの場所、培養及び計数の日付並びにコロニー計数の詳細が含まれる。このシステムは、8,000CB単位超を2連で試験した。CFUコロニーの特定の着色により、分類及び計数が速くなり、このため、CFUコロニーのより正確な解析が可能となり、CD34+のような抗原表面マーカ、細胞含量、薬物毒性及び移植生着性との関係がより明らかにできる。
【0032】
特に示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いられている成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、そうではないと示さない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載した数値パラメータは、本発明によって得ようとする目的の特性に応じて変動することがある近似値である。最低でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技法の適用によって解釈されなければならない。本発明の広範囲で示す数値的範囲及びパラメータは近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかしながら、いずれの数値もそれらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0033】
本発明を記載する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)使用する用語「a」及び「an」及び「the」及び類似の指示対象は、本明細書で他に示さないあるいは文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を含むと解釈すべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、その範囲の範疇のそれぞれ別の値を個別に言及する手短な方法として役立つことを単に目的とする。本明細書で他に示さない限り、それぞれ個々の値は、それが本明細書に個別に列挙されているが如く本明細書中に組み込まれている。本明細書に記載するすべての方法は、本明細書で他に示さないあるいは文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で示す任意及びすべての例、又は例示的な表現(例えば、「など」)の使用は、単に本発明に対する理解を促すことを目的とするものであり、その他の点で特許請求する本発明の範囲に制限を課すわけではない。本明細書中のいかなる表現も、本発明の実施に必要な非特許請求要素を意味するものと解釈すべきでない。
【0034】
本明細書に開示の本発明の別のエレメントや実施態様のグループ分け(grouping)は、限定として解釈すべきではない。各グループメンバーは、個別に言及して特許請求することもできるし、あるいはグループの他のメンバー又は本明細書中に見られる他のエレメントと任意に組み合わせて言及して特許請求することもできる。便宜上の点から、及び/又は特許性の点から、あるグループの1つ以上のメンバーを、あるグループに組み入れることもできるし、あるいはあるグループから削除することもできる、と考えられる。このような組み入れや削除が行われる場合は、本明細書は、グループを、変形されたものとして、従って、添付の特許請求の範囲において使用されている全てのマーカッシュ・グループの記載要件を満たすものとして含むと判断される。
【0035】
本発明のある特定の実施態様については、本発明を実施するための本発明者らに知られている最良の形態を含めて、本明細書に記載されている。勿論、記載されたこれらの実施態様に関して変更があり得ることは、上記の説明を読めば当業者には明らかであろう。本発明者は、当業者が適宜このような変更を用いることを予測しており、本発明者らは本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の技術内容の修正物及び均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、非常に文脈と矛盾したりしない限り、考えられるすべての変更における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
【0036】
本明細書に開示した特定の実施態様は、「からなる(consisting of)」又は「から実質的になる(consisting essentially of)」という表現を用いている特許請求の範囲ではさらに限定されうる。こうした特許請求の範囲に用いられた場合、出願時であれ、補正での追加時であれ、移行用語「からなる」は特許請求の範囲において特定されないいかなる要素、工程又は成分も除外する。移行用語「から実質的になる」は、特許請求の範囲を特定の材料又は工程並びにその基本的及び新規な特徴(単数または複数)に大して影響を与えないものに限定する。そのようにして特許請求された本発明の実施態様は、本明細書に固有なものとして又は明確に記載され、実施可能である。
【0037】
さらに、数多くの特許及び刊行物を明細書に引用した。上記引用文献及び刊行物は、それぞれ、その全体を引用して本明細書に個々に組み込まれている。
【0038】
最後に、本明細書に開示した本発明の実施態様は本発明の原理を説明したものであることとは言うまでもない。用いることのできる他の修正物も本発明の範囲内にある。従って、例えば、本明細書中の教示内容にしたがって本発明の別の形態を使用することができるが、これに限定されるものではない。従って、本発明は、正確に図示及び説明したものに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準化されたコロニー形成単位のアッセイ法であって、
造血細胞を含む組織又は体液の検体を取得する工程、
該細胞を造血前駆細胞のコロニーの成長を支える培地中で培養する工程、
該コロニーを染色する工程、
該コロニーを撮像する工程、及び
該前駆細胞のタイプ毎に該コロニーを計数する工程
を含むアッセイ法。
【請求項2】
前記検体中の前記前駆細胞の数及びタイプに基づいて前記コロニーの機能状態及び生着可能性を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項3】
前記培養工程の前にCD34+の亜集団、光密度富化細胞、アフェレーシス産物及びこれらの組合せからなる群から選ばれる1種以上を分離する工程をさらに含む、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項4】
前記造血細胞を含む組織又は体液が血液である、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項5】
前記造血細胞を含む組織又は体液が臍帯血である、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項6】
実験室情報管理システム内に前記画像を保存する工程をさらに含む、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項7】
前記染色の前に前記コロニーを撮像する任意選択的工程をさらに含む、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項8】
前記コロニーが一段で染色される、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項9】
前記染色剤が臭化3−[4,5−ジメチルチアゾル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)である、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項10】
前記コロニーが多系統コロニー形成単位(CFU−GM/E)、顆粒球−マクロファージコロニー形成単位(CFU−GM)、赤芽球コロニー形成単位(CFU−E)及びこれらの組合せからなる群から選ばれる細胞を含む、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項11】
前記異なる前駆細胞タイプが異なる色に染色される、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項12】
画像検出及び定量化システムであって、
高解像度カメラ、
適切な光配向、
広帯域閃光管、及び
陽性検体識別
を含む画像検出及び定量化システム。
【請求項13】
前記撮像工程が請求項12に記載の画像検出及び定量化システムを用いて実施される、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項14】
検体中の造血前駆細胞数を測定する方法であって、
造血細胞を含む組織又は体液の検体を取得する工程、
該細胞を造血前駆細胞のコロニーの成長を支える培地中で培養する工程、
該コロニーを染色する工程、
該コロニーを撮像する工程、及び
該検体中の該前駆細胞のタイプ毎に該コロニーを計数する工程
を含む方法。
【請求項15】
前記撮像が請求項12に記載のシステムを用いて実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記造血細胞を含む組織又は体液が臍帯血、末梢血、胎盤、骨髄及びこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記コロニーがCFU−GM/E、CFU−E、CFU−GM及びこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記染色剤が臭化3−[4,5−ジメチルチアゾル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記培養工程の前にCD34+の亜集団又は光密度富化細胞を分離する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
実験室情報管理システム内に前記画像を保存する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記染色の前に前記コロニーを撮像する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
検体及び識別を含む陽性検体識別であって、該検体が臍帯血検体であり、該識別が特定の臍帯血単位及びこれに関連する情報を識別する陽性検体識別。
【請求項23】
前記識別が前記臍帯血検体に関連づけられるバーコードを含む、請求項22に記載の陽性検体識別。
【請求項24】
前記臍帯血単位に関連する前記情報が前記検体の日付、アッセイ情報及びこれらの組合せからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項22に記載の陽性検体識別。

【図1】
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【公表番号】特表2012−500972(P2012−500972A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524012(P2011−524012)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054545
【国際公開番号】WO2010/022288
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(509051222)ニューヨーク ブラッド センター, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】