説明

高透明なホログラム記録材料組成物、ホログラム記録媒体、およびその製造方法

【課題】体積位相型ホログラム記録材料用フォトポリマー組成物、更にこれから得られたホログラム記録媒体およびその製造方法の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、400〜800nmに吸収波長を持つ光増感色素(D)からなるホログラム記録材料組成物。
【化1】


(式中、Xは上記2種のうち少なくともどちらか1種の置換基であり、mはXの置換数を表わしm=1〜6である。置換基の位置は任意である。置換基Xがターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト誘導体である場合のnはn=1〜5であり、置換基X上のターシャリーブチルパーオキシエステル基の位置は任意である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉パターンの明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用フォトポリマー組成物、更にはこれから得られたホログラム記録媒体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体積位相型ホログラムは、レーザーの可干渉性光の干渉パターンを屈折率変調によって感光材料等に記録するものであり、いくつかの種類に分類されるホログラムの中でも、その高い回折効率や優れた波長選択性を持つことから、光学素子、立体画像ディスプレイ、干渉計測、画像・情報処理等多岐に亘って応用が可能である。
【0003】
例えば、ディスプレー用途では、偏光板、位相差板、カラーフィルター、3Dディスプレー用の光学フィルター、レンズ用途では、レンチキュラーレンズ、プリズムなどが挙げられる。また、ホログラム技術を用いれば、これら光学部品の持つ幾つかの機能を1枚のシートに持たせることも可能である。
【0004】
ところで、乾式処理だけで体積型ホログラムを作製できる感光材料として、干渉パターンの光量の多い部分で光重合性モノマーが光重合することによって屈折率変調を生じる、フォトポリマー組成物が提案されている(特許文献1および2)。これらの材料は、複雑な現像処理を必要としない上、ホログラムの耐久性にも優れている。
【0005】
しかしながら、これらフォトポリマー組成物は湿式現像処理を行わないが故に、処理工程後も感光材料中に残存する反応開始剤の分解物や、反応開始剤と増感色素の反応生成物が可視光域に吸収を有するため、これらがホログラムを着色させ、透明性を低下させるという問題があった。
【特許文献1】米国特許第3993485号公報
【特許文献2】米国特許第3658526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、湿式処理を用いず、乾式処理のみによる工業プロセスで作製可能な体積位相型ホログラムの低着色・高透明性へ向けての改善を材料の面から実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、ラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、および400〜800nmに吸収波長を持つ光増感色素(D)からなり、光干渉パターンの明暗の強度分布を露光し屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用フォトポリマー組成物において、ラジカル重合開始剤(A)が下記式(1)で表わされる化合物であり、かつ、当該組成物から作製されるホログラムの可視光線透過率が80%以上、透過色度cが4以下となることを特徴とするホログラム記録材料組成物である。
【化1】

(式中、Xは上記2種のうち少なくともどちらか1種の置換基であり、mはXの置換数を表わしm=1〜6である。置換基の位置は任意である。置換基Xがターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト誘導体である場合のnはn=1〜5であり、置換基X上のターシャリーブチルパーオキシエステル基の位置は任意である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明のホログラム記録材料組成物を用いることで、着色が少なく、高透明なホログラムを複雑な処理工程なしに製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に好ましい実施形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
ラジカル重合開始剤(A)
本発明で用いられるラジカル重合開始剤(A)としては、保存安定性に優れ、光増感色素(D)による分光増感が可能な有機過酸化物が使用され、具体的には上記化学式(1)で表される化合物である。
【0010】
また、このような有機過酸化物の好ましい具体例として、下記式(1a)で表される3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン [略称:BTTB]、もしくは下記式(1b)で表されるジ−t−ブチル ペルオキシイソフタレイト [略称:PBIF]が挙げられる。
【化2】

【化3】

【0011】
これらは単独で用いても、2つまたはそれ以上の組合せで用いてもよい。
ラジカル重合開始剤(A)は、組成物の合計を100重量部としたとき、0.01〜20重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0012】
ラジカル重合性化合物(B)
本発明で用いられるラジカル重合性化合物(B)は、本発明で用いられる熱可塑性樹脂(C)等とともに本発明による組成物を調製した場合に、相溶性を有しさえすれば広範囲の化合物を使用することができるが、常圧で100℃以上の沸点を持つ非ガス状、即ち、液状または固体状であるラジカル重合性化合物(B)が好ましい。
特に、エチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリルモノマー、ビニルモノマー、(メタ)アリルモノマーが好ましい。また、これらは単独で用いても、2つ以上の組合せで用いてもよい。
【0013】
(メタ)アクリルモノマーの例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシ(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、9H−カルバゾール−9−エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0014】
ビニルモノマーの例として、ビニルアセテート、4−ビニルアニリン、9−ビニルアントラセン、9−ビニルカルバゾール、4−ビニルアニソール、ビニルベンズアルデヒド、ビニルベンゾエイト、ビニルベンジルクロライド、4−ビニルビフェニル、ビニルブロマイド、N−ビニルカプロラクタム、ビニルクロロホルメート、ビニルクロトネート、ビニルシクロヘキサン、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキサイド、ビニルシクロペンタン、ビニルデカノエート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニルカルボネート、ビニルトリチオカルボネート、ビニル
2−エチルヘキサノエート、ビニルフェロセン、ビニリデンクロライド、ビニルホルメート、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルナフタレン、ビニルネオデカノエート、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、2−(ビニルオキシ)エタノール、4−ビニルフェニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、2−ビニルピリジン、1−ビニルー2−ピロリジノン、ビニルスルホン、ビニルトリメチルシラン、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0015】
(メタ)アリルモノマーの例として、(メタ)アリルフェニルスルホン、(メタ)アリルエトキシシラン、(メタ)アリルトリメトキシシラン、(メタ)アリル 2,4,6−トリブロモフェニルエーテル、2,2’−ジ(メタ)アリルビスフェノールA、ジ(メタ)アリルジメチルシラン、ジ(メタ)アリルジフェニルシラン、ジ(メタ)アリルフェニルフォスフィン、ジ(メタ)アリルフタレート、ジ(メタ)アリルジカルボネイト、ジ(メタ)アリルサクシネイト等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0016】
ラジカル重合性化合物(B)として好ましいのは、フェノキシエチルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシ(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレートである。
【0017】
熱可塑性樹脂(C)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(C)は、本発明で用いられるラジカル重合性化合物(B)等とともに本発明の組成物を調製した場合に、相溶性を有しさえすれば広範囲の化合物を使用することができるが、製膜性等の改善のために有機溶媒が使用される場合には、当該有機溶媒に可溶でなければならない。
例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを重合してなる単独重合体または共重合体、ジフェノール化合物とジカルボン酸化合物の縮合重合体、分子内に炭酸エステル基を有する重合体、分子内に−SO−基を有する重合体、セルロース誘導体などが挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂(C)のより詳細な具体例として、ポリビニルアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピレート、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメタクリロニトリル、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ−1,2−ジクロロエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロースブチレート、ポリ−α−ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリ−p−フェニルスチレン、ポリ−2,5−ジクロロスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリアリーレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニリデン、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、脂環式アクリル樹脂であるオプトレッツ(日立化成)や、脂環式オレフィン樹脂であるAPEL(三井化学)、ZEONEX(日本ゼオン)、ARTON(JSR)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(C)の上記例示物は単独で用いても2以上の組合わせで用いてもよい。
熱可塑性樹脂(C)として、可視光線透過率が85%以上のものが好ましく用いられ、この場合、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテートブチレート、オプトレッツ、APEL、ZEONEX、ARTONなどが、より好ましく例示される。
【0019】
光増感色素(D)
400〜800nmに吸収波長を持つ光増感色素(D)としては、例えば、ミヒラケトン、アクリジンイエロー、メロシアニン、メチレンブルー、カンファーキノン、エオシン、脱カルボキシル化ローズベンガル等が好ましく使用される。
上記以外には、例えば、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、フタロシアニン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、アクリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、キノロン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジン誘導体、p−アミノフェニル不飽和ケトン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、チオキサンテン、チアジン系色素等も使用可能であり、更には「色素ハンドブック」(大河原信他編、講談社、1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編、シーエムシー、1983年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編、シーエムシー、1986年)に記載される光増感色素も用いることができる。これらは単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0020】
特に好ましく用いられる光増感色素(D)としては、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、ケトクマリン誘導体、クマリン誘導体、p−アミノフェニル不飽和ケトン誘導体が挙げられる。
【0021】
シアニン誘導体の具体例としては、2−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)メチル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウム パークロレイト、3−エチル−2−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾイリデン)メチル]ベンゾチアゾリウム アイオダイド、5−クロロ−2−[[5−クロロ−3−(3−スルホプロピル)−2(3H)−ベンゾチアゾリデン]メチル]−3−(3−スルホプロピル)ベンゾチアゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト,ソディウム塩、3−エチル−2−[(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリデン)メチル]ベンズオキサゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[(1−エチル−2(1H)−キノリニリデン)メチル]ベンゾチアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[(1−エチル−2(1H)−キノリニリデン)メチル]ベンゾセレナゾリウム アイオダイド、1−エチル−2−[(1−エチル−2(1H)−キノリニリデン)メチル]キノリニウム ブロマイド、1−エチル−2−[(1−エチル−4(1H)−キノリニリデン)メチル]キノリニウム アイオダイド、1−エチル−4−[(1−エチル−4(1H)−キノリニリデン)メチル]キノリニウム アイオダイド、3−エチル−2−[(3−エチル−2(3H)−ベンズオキサゾリデン)−1−プロペニル]ベンゾオキサゾリウム アイオダイド、5−クロロ−2−[2−[[5−クロロ−3−(4−スルホブチル)−2(3H)−ベンズオキサゾリデン]メチル]−1−ブテニル]−3−(4−スルホブチル)ベンズオキサゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト,3−エチル−2−[2−(3−エチル−5−フェニル−2(3H)−ベンズオキサゾリデン)メチル]−1−ブテニル]−5−フェニルベンズオキサゾリウム アイオダイド、5−フェニル−2−[2−[[5−フェニル−3−(3−スルホプロピル)−2(3H)−ベンズオキサゾリデン]メチル]−1−ブテニル]−3−(3−スルホプロピル)ベンズオキサゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、5,6−ジクロロ−2−[3−(5,6−ジクロロ−1,3−ジエチル−2(3H)−ベンズイミダゾリデン)−1−プロペニル]−1,3−ヂエチルベンズイミダゾリウム アイオダイド、5,6−ジクロロ−2−[3−(5,6−ジクロロ−1−エチル−3−(3−スルホプロピル)−2(3H)−ベンズイミダゾリデン)−1−プロペニル]−1−エチル−3−(3−スルホプロピル)ベンズイミダゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、2−[3−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−1−プロペニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウム アイオダイド、2−[3−(1,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチル−2H−ベンズインドール−2−イリデン)−1−プロペニル]−1,3,3−トリメチル−1H−ベンズインドリウム アイオダイド、3−エチル−2−[3−エチル−2−チアゾリジニリデン)−1−プロペニル]−4,5−ジヒドロチアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[3−エチル−4−メチル−2(3H)−チアゾリリデン)−1−プロペニル]−4−メチルチアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−1−プロペニル]ベンゾチアゾリウム アイオダイド、3−(3−スルホプロピル)−2−[3−[3−(3−スルホプロピル)−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン]−1−プロペニル]ベンゾチアゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、3−エチル−2−[3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−2−メチル−1−プロペニル]ベンゾチアゾリウム アイオダイド、5−クロロ−2−[3−[5−クロロ−3−(3−スルホプロピル)−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン]−2−メチル−1−プロペニル]−3−(3−スルホプロピル)ベンゾチアゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、3−エチル−2−[2−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)メチル]−1−ブテニル]ベンゾチアゾリウム アイオダイド、5−クロロ−2−[3−[5−クロロ−3−(4−スルホブチル)−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン]−1−プロペニル]−3−(4−スルホブチル)ベンゾチアゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、3−エチル−2−[3−[(3−エチルナフト[2,1−d]チアゾール−2(3H)−イリデン)−1−プロペニル]ナフト[2,1−d]チアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[3−[(3−エチルナフト[2,1−d]チアゾール−2(3H)−イリデン)−2−メチル−1−プロペニル]ナフト[2,1−d]チアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[2−[(3−エチルナフト[2,1−d]チアゾール−2(3H)−イリデン)メチル]−1−ブテニル]ナフト[2,1−d]チアゾリウム アイオダイド、1−エチル−2−[3−[(3−エチルナフト[1,2−d]チアゾール−2(1H)−イリデン)−1−プロペニル]ナフト[1,2−d]チアゾリウム アイオダイド、2−[2−メチル−3−[1−(3−スルホプロピル)ナフト[1,2−d]チアゾール−2(1H)−イリデン]−1−プロペニル]−1−(3−スルホプロピル)ナフト[1,2−d]チアゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、2−[2−メチル−3−[3−(3−スルホプロピル)−2−(3H)−ベンゾセレナゾリデン]−1−プロペニル]−3−(3−スルホプロピル)ベンゾセレナゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、1−エチル−2−[2−[(1−エチルナフト[1,2−d]チアゾール−2(1H)イリデン)メチル]−1−ブテニル]ナフト[1,2−d]チアゾリウム ブロマイド、1−エチル−2−[3−[(1−エチル−2(1H)キノリニリデン)−1−プロペニル]キノリニウム アイオダイド、3−エチル−2−[3−[(3−エチル−2(3H)ベンゾセレナゾリリデン)−1−プロペニル]ベンゾセレナゾリウム アイオダイド、1−エチル−4−[3−[(1−エチル−4(1H)キノリニリデン)−1−プロペニル]キノリニウム アイオダイド、1−エチル−2−[5−[(1−エチルナフト[1,2−d]チアゾール−2(1H)イリデン)−1,3−ペンタジエニル]ナフト[1,2−d]チアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[5−[(3−エチル−2(3H)ベンゾセレナゾリデン)−1,3−ペンタジエニル]ベンゾセレナゾリウム アイオダイド、2−[3−クロロ−5−(1−エチル−2(1H)キノリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]−1−エチルキノリニウム ブロマイド、1−エチル−2−[5−[(1−エチル−2(1H)キノリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]キノリニウム アイオダイド、4−[3−クロロ−5−(1−エチル−4(1H)キノリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]−1−エチルキノリニウム ブロマイド、2−[[3−[(5,6−ジメチル−3−フェニル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)メチル]−5,5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−イリデン]メチル]−3−(3−スルホプロピル)ナフト[2,1−d]チアゾリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、1−エチル−4−[5−(1−エチル−4(1H)キノリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]−1−エチルキノリニウム アイオダイド、3−エチル−2−[7−(3−エチル−2(3H)ベンズオキサゾリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]ベンズオキサゾリウム アイオダイド、2−[7−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウム アイオダイド、2−[7−(1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−(3−スルホプロピル)−2H−インドール−2−イリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]−3,3−ジメチル−1−(3−スルホプロピル)−3H−インドリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、2−[7−(1,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]−1,1,3−トリメチル−1H−ベンズ[e]インドリウム パークロレイト、1−(2−カルボキシエチル)−2−[7−[1−(2−カルボキシエチル)−5−クロロ−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−2H−インドール−2−イリデン]−1,3,5−ヘプタトリエニル]−5−クロロ−3,3−ジメチル−3H−インドリウム ハイドロキサイド,インナーソルト、3−エチル−2−[7−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]ベンゾチアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[7−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]ベンゾチアゾリウム ブロマイド、1−エチル−2−[7−(1−エチルナフト[1,2−d]チアゾール−2(1H)−イリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]ナフト[1,2−d]チアゾリウム アイオダイド、3−エチル−2−[7−(3−エチル−2(3H)−ベンゾセレナゾリリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]ベンゾセレナゾリウム アイオダイド、1−エチル−2−[7−(1−エチル−2(1H)−キノリニリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]キノリニリウム アイオダイド、1−エチル−4−[7−(1−エチル−4(1H)−キノリニリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]キノリニリウム アイオダイド、2−[[3−[(1,3−ジヒドロ−1−エチル−3,3,5−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)メチル]−2−ヒドロキシ−4−オキソ−2−シクロブテン−1−イリデン]メチル]−1−エチル−3,3,5−トリメチル−3H−インドリウム,インナーソルト、2−[7−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−1,3,5−ヘプタトリエニル]−3H−インドニウム ブチルトリフェニルボレート、が挙げられる。
【0022】
メロシアニン誘導体の具体例としては、5−(3−エチル−2(3H)−ベンズオキサゾリデン)−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−エチル−5−(1−メチルナフト[1,2−d]オキサゾール−2(1H)−イリデン)−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−カルボキシメチル−5−[3−(4−スルホブチル)−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン,ソジウムソルト、3−エチル−5−[2−[5−フェニル−3−(3−スルホプロピル)−2(3H)−ベンズオキサゾリデン]エチリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−アリル−1−カルボキシメチル−5−[2−(1−エチルナフト[1,2−d]オキサゾール−2(1H)−イリデン)エチリデン]−2−チオヒダントイン、3−アリル−1−カルボキシメチル−5−[2−(3−エチル−2(3H)−ベンズオキサゾリデン)エチリデン]−2−チオヒダントイン、3−エチル−5−[2−(3−メチル−2−チアゾリジニリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−エチル−5−[2−(3−エチル−4−メチル−2(3H)−チアゾリリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、1,3−ジエチル−5−[2−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオヒダントイン、3−カルボキシメチル−5−[2−(3−エチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−エチル−5−[2−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、4−[2−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−3−フェニル−2−イソキサゾリン−5−オン、5−[2−(5,6−ジクロロ−1,3−ジエチル−2(3H)−ベンズイミダゾリリデン)エチリデン]ジヒドロ−2−チオキソ−4,6(1H,5H)−ピリミジンジオン、1−カルボキシメチル−5−[2−(1−メチル−2−ピロリジニリデン)エチリデン]−3−フェニル−2−チオヒダントイン、4−[2−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−3−メチル−1−(4−スルホフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン、3−エチル−5−[4−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−2−ブテニリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−エチル−5−[3−エチル−5−[2−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−4−オキソ−2−チアゾリジニリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−エチル−5−[3−エチル−5−[2−(3−エチル−4(1H)−キノリニリデン)エチリデン]−4−オキソ−2−チアゾリジニリデン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、3−エチル−5−[2−(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジノン、5−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−3−エチル−2−チオキソ−4−オキサゾリジノン、が挙げられる。
【0023】
ケトクマリン誘導体の具体例としては、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が挙げられる。
【0024】
クマリン誘導体の具体例としては、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−(2−ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7,−テトラメチル 1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−カルベトキシ−7−(ジエチルアミノ)クマリンが挙げられる。
【0025】
p−アミノフェニル不飽和ケトン誘導体の具体例としては、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘプタノン、2,5−ビス〔(4−ジエチルアミノ)−2−メチルベンジリデン〕シクロペンタノン、2,5−ビス〔(4−ジエチルアミノ)−2−メチルベンジリデン〕シクロヘキサノン、2,5−ビス〔(4−ジエチルアミノ)−2−メチルベンジリデン〕シクロへプタノン、が挙げられる。
【0026】
特に好ましく用いられる光増感色素(D)としては、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン:DS−B(林原生物化学研究所社製)、2,5−ビス〔(4−ジエチルアミノ)−2−メチルベンジリデン〕シクロペンタノン:DS−A(林原生物化学研究所社製)、1H−インデン−1−オン、2,3−ジヒドロ−5,6−ジメトキシ−2−〔(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ〔i,j〕キノリジン−9−イル)メチレン〕−:DS−C(林原生物化学研究所社製)、メロシアニン系色素:NK−4795(林原生物化学研究所社製)が挙げられる。
【0027】
光増感色素(D)は、組成物の合計を100重量部としたとき、0.01〜3重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0028】
本発明によるホログラム記録材料組成物は、必要に応じて、可塑剤、増粘剤、貯蔵安定剤、連鎖移動剤等の添加剤や、溶剤等を含むことができる。
可塑剤
可塑剤は、ラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、および光増感色素(D)と非反応性の化合物である。可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレートに代表されるフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジエチルサクシネートに代表される脂肪族二塩基酸エステル類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートに代表される正リン酸エステル類;グリセリルトリアセテート、2−エチルヘキシルアセテートに代表される酢酸エステル類;トリフェニルホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイトに代表される亜リン酸エステル類等の不活性化合物が例示される。
可塑剤は上記例示物を単独で用いても2以上の組合わせで用いてもよい。
【0029】
増粘剤
増粘剤としては無機微粒子、例えばシリカゲルの微粒子としてダイソー社製の「ダイソーゲルSPシリーズ」、富士シリシア化学社製の「サイリシア」や「フジシリカゲル」、シオノギ製薬社製の「カープレックス」、日本アエロジル社製の「アエロジル」、トクヤマ社製の「レオロシール」、「トクシール」、「ファインシール」等が使用できる。または有機微粒子、例えば特開平10−72510、特開平10−310684各公報に記載の方法で作製され得るジアリルフタレート系ポリマー、若しくは「新材料シリーズ『超微粒子ポリマーの最先端技術』」(シーエムシー、室井宗一監修、1991年)に記載のある花王社製「PB,200シリーズ」、鐘紡社製「ベルパールシリーズ」、積水化成品社製「テクポリマーシリーズ」、積水ファインケミカル社製「ミクロパールシリーズ」、綜研化学社製「MRシリーズ」「MPシリーズ」等が使用できる。
これら微粒子の粒径はホログラムの膜厚よりも小さければよく、通常は0.1〜20μmの範囲が好ましい。
【0030】
溶剤
有機溶媒は、粘度調整、相溶性調節の外、製膜性等を向上させるために有効であり、例えば、アセトン、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、等がよく用いられる。しかしながら、水は、粘度調整、相溶性調節、成膜性等を阻害するので使用できない。水はエマルジョン形態でも媒質として使用できない。
溶剤の使用量は、ラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、および光増感色素(D)の合計を100重量部としたとき、通常1〜1500重量部程度である。
【0031】
貯蔵安定剤
光重合開始剤(A)と光増感色素(D)の組合せによっては貯蔵安定性、特に暗所貯蔵安定性のよくないものがあるので、その場合には貯蔵安定剤を併用してもよい。
貯蔵安定剤として、第4級アンモニウムクロライド、例えばベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシアミン、環状アミド、ニトリル化合物、置換尿素、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セパケートや、有機酸、例えば乳酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ハイドロキノン、およびそのメチルエーテル、tert-ブチルピロカテコール、(ROPと銅化合物、有機ホスフィンP(R)および亜リン酸塩、銅化合物、例えばナフテン酸銅、亜リン酸トリクロロエチルと塩化第一銅の付加物、可溶の鉄およびマンガン化合物、例えばカプリル酸塩、ナフテン酸塩、スルホキサイドなどが挙げられる。
【0032】
連鎖移動剤
連鎖移動剤の例としては、α−メチルスチレンダイマー、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、tert−ブチルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、プロピレン、塩化ビニル等が挙げられる。
【0033】
ホログラム記録材料用フォトポリマー組成物の調製
ホログラム記録材料組成物を調製するには、例えば、ラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、光増感色素(D)、および可塑剤をはじめとする上記任意添加成分を、ガラスビーカー等の耐有機溶剤性容器に入れて、全体を撹拌する。この場合、固体成分の溶解を促進するために、組成物の変性が生じない範囲で、これを例えば40〜90℃程度に加熱してもよい。
【0034】
ホログラム記録媒体の作製方法
本発明によるホログラム記録材料用フォトポリマー組成物を用いてホログラム記録媒体を作製するには、同記録材料組成物を基板の片面に塗布し、生じた塗膜すなわち記録層と基板とからなる2層構造の記録媒体を得る。また、必要に応じて、基板上の記録層の上にフィルム状、シート状ないしは板状の保護材を被せて3層構造体を得る。組成物の調製工程で有機溶媒を用いた場合、ラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、光増感色素(D)、および可塑剤をはじめとする上記任意添加成分を溶剤に溶解させ、得られた溶液を基板上に塗布し、その後、溶剤を揮散させ記録層を形成することができる。記録層に保護材を被せる場合は、保護材被覆の前に溶媒を風乾や減圧蒸発等によって除去しておくのがよい。基板は光学的に透明な材料、例えばガラス板やポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板のようなプラスチック板もしくはフィルム等からなる。基板の厚みは好ましくは0.02〜10mmである。基板は平面である必要はなく屈曲や湾曲あるいは表面に凹凸構造のあるものでもよい。保護材も基板と同じく光学的に透明な材料からなる。保護材の厚みは好ましくは0.02〜10mmである。塗布方法はグラビア塗布、ロールコーティング塗布、バーコート塗布、スピンコート塗布等である。溶媒除去後の記録層の厚みは、1〜500μm、好ましくは1〜100μmになるように塗布する。
【0035】
ホログラムの記録方法
本発明におけるホログラム組成物を用いて、例えば以下のような記録方法でホログラムを作成することができる。
本発明によるホログラム記録媒体に被記録物をホログラムとして記録するには、通常の記録方法が採用できる。すなわち、波長が300〜800nmの範囲にある光を2つに分け、そのうち一方の光線(参照光)と、他方の光線を記録すべき物体に照射して得られる物体からの反射光(物体光)を、該記録物体に対してそれぞれ同一平面より、あるいは表裏面より入射させて、干渉させることにより得られる干渉縞を捕らえることが出来る位置に、該ホログラム記録材料用媒体を配置し、同媒体に上記物体を記録する。
より詳しくは、レーザー光をビームスプリッターなどで2つの光線に分割し、ミラーなどの使用により両者を再度合わせることで干渉縞を得る(二光束露光法)。あるいは1つのレーザー光をミラーにより反射させ、入射光と反射光の両者を再度合わせることにより干渉縞を得る(一光束露光法)。このように形成した干渉縞パターンの明暗の強度分布を捕らえることの出来る位置に記録媒体を設置する。この状態で、通常、数秒から数分間レーザー光照射を行うと、ホログラムとなる干渉縞が記録媒体上に記録される。用いるレーザー光の光量は、光強度と照射時間との積で表して、好ましくは0.1〜10,000mJ/cm程度、より好ましくは1〜1,000mJ/cm程度である。
本発明で用いられる光源は、光重合開始剤または光重合開始剤と光増感色素の組み合わせからなる光重合開始系に該光源から発する光を照射した際に電子移動を伴い、重合性化合物の重合を誘発させるものであればよい。代表的な光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が例示できる。これらは該記録媒体にマスターホログラムの情報をコピーする時などに使用できる。また、これらは、干渉縞を記録したホログラムの定着処理を行う際の光源としても利用できる。好ましい光源としては、レーザーが使用できる。レーザーは単一波長であり、コヒーレンス性を有しているため、ホログラム記録において好ましい光源である。より好ましい光源はコヒーレンス性に優れた光源、例えば、上記レーザーにエタロン等の光学素子を装着したものであり、これは該単一波長の周波数を単一周波数にしたものである。代表的なレーザーとしては、発振波長300〜800nmのもの、具体的にKr(波長647nm)、He−Ne(波長633nm)、Ar(波長515nm, 488nm)、YAG(波長532nm)、He-Cd(波長442nm)等が例示できる。これら光源は単独で用いても、2個以上組み合わせて使用しても良い。また、該光源は連続光でも、ある一定または任意間隔にてパルス発振しても良い。該光源より得られる光は記録材料に対し、記録時以外に記録前後にも照射して良い。
【0036】
ホログラムの定着方法
ホログラム形成後においては、全面光照射行い、残存している未反応のラジカル重合性化合物(B)を後重合させることが好ましい。全面光照射に用いる光源としては、先に示した高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が例示できる。照射する光量は、通常0.1〜10J/cm程度である。
また、必要に応じて重合を促進させるために加熱処理を行ってもよい。加熱処理の方法としては、40〜150℃程度のオーブンに0.5〜500分程度入れると良い。これらの後処理は、形成された像の安定化、記録したホログラムの耐候性をよくする上で重要である。
【0037】
作用
本発明のホログラム記録材料用組成物は、ホログラム露光前は必須成分として所定のラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、および光増感色素(D)を含み、コヒーレンスな活性線を照射することで、ラジカル重合開始剤(A)と光増感色素(D)が活性化され重合活性種が発生し、ラジカル重合性化合物(B)が重合して、ホログラム潜像が形成される。
ホログラム潜像を形成した後、全面露光を行うことで、残存するラジカル重合性化合物(B)を反応させてホログラム像が定着される。この定着のための全面露光には、ホログラム感材中に残るラジカル重合開始剤(A)と光増感色素(D)を分解し退色させる効果も得られる。しかし、湿式現像処理を行わない乾式フォトポリマーの場合、ラジカル重合開始剤(A)、光増感色素(D)、およびこれらの分解物・反応生成物などの着色の原因物質が感材中に残り退色が不十分である。
本発明で使用されるラジカル重合開始剤(1)は、反応性が高く、干渉縞露光時はもちろん全面露光時にも速やかに反応し分解される。また、発生したラジカルは、反応性が非常に高い上、他の化合物と反応しても発色団を形成しにくい構造をもつことから、光増感色素(D)は十分に分解され、着色の原因物質が生成されることがない。
また、熱可塑性樹脂(C)をバインダーポリマーに使用することで、定着露光後も加熱による物質の拡散が可能となり、開始剤などの分解を十分に行うことができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を幾つか挙げ、本発明を具体的に説明する。ただし、これら実施例は本発明を限定するものではない。
[実施例1]
1)ラジカル重合開始剤(A)として、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン〔BTTB〕(日本油脂社製、BTTB25:トルエン溶液純度25%の溶媒を留去し、ジエチルエーテルで洗浄することで精製した物)を0.30g、ラジカル重合性化合物(B)として、フェノキシエチルアクリレート(共栄化学社製、ライトアクリレートPO−A)を4.6g、熱可塑性樹脂(C)として、セルロースアセテートブチレート(Aldrich社製、Mn=3万)を5.0g、光増感色素(D)として2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン(林原生物化学研究所社製、DS−B)を0.030g、貯蔵安定剤として、4−メトキシフェノール(社製)0.001gをおよび溶媒としてアセトン20gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
2)この組成物を60mm×60mmのガラス基板(厚さ約1.3mm)の片面に乾燥後の厚みがおよそ15μmになるようにスピンコートにより塗布し、加熱処理を施すことにより塗布層から溶媒を除去し、基板と記録層からなる2層構造の記録媒体を作成した。
3)この記録媒体の記録層に厚み50μmのPETフィルムを被せて3層構造のホログラム記録用感光板を作成した。
4)次に488nmのArイオンレーザーをビームスプリッターで分岐し、それぞれをミラーにより角度を変えて、両者を再び合成して干渉させ干渉縞を得た。この干渉縞を捉えることができる位置に上記感光板をガラス面から光が入射するように設置した。
5)透過型ホログラムの光学系の例を図1に示す。
6)この状態で感光板を露光し、ホログラムとなる干渉縞を感光板上に記録した。ビーム強度比はおよそ1:1に保ち、感光板上での1つの光強度を1.0mW/cmとして、5秒間から60秒間、露光量として10mJ/cmから120mJ/cm露光した。
7)ホログラム潜像の定着のため、高圧水銀灯(ウシオ電気社製、UM−102)を用いて全体を10
mW/cmで3J/cmPETフィルム側から照射した。
【0039】
[実施例2]
1)実施例1の配合で、ラジカル重合性化合物(B)として、フェノキシエチルアクリレート(共栄化学社製、ライトアクリレートPO−A)を3.7gとトリブロモフェニルアクリレート(第一工業製薬社製、ニューフロンティアBR−30)を0.9g使用した。
その他の点は全て実施例1と同様の操作を行った。
【0040】
[実施例3]
1)実施例1の配合で、光重合開始剤(A)として、PBIFを0.30g、ラジカル重合性化合物(B)として、フェノキシエチルアクリレート(共栄化学社製、ライトアクリレートPO−A)を3.7g、熱可塑性樹脂(C)として、ポリメチルメタクリレート(Aldrich社製、Mn=10万)を5.0g使用した。
その他の点は全て実施例1と同様の操作を行った。
【0041】
[実施例4]
1)実施例1の配合で、光増感色素(D)として、1H−インデン−1−オン、2,3−ジヒドロ−5,6−ジメトキシ−2−〔(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ〔i,j〕キノリジン−9−イル)メチレン〕−、(林原生物化学研究所社製、DS−C)を0.001g使用したこと以外は、全て実施例1と同様の操作を行った。
【0042】
[実施例5]
1)実施例1の配合で、光増感色素(D)として、2,5−ビス〔(4−ジエチルアミノ)−2−メチルベンジリデン〕シクロペンタノン(林原生物化学研究所社製、DS−A)を0.001g使用した。
4)532nmのYAGレーザーを使用した。
その他の点は全て実施例1と同様の操作を行った。
【0043】
[実施例6]
1)実施例1の配合で、光増感色素(D)として、メロシアニン系色素NK−4795(林原生物化学研究所社製)を0.001g使用した。
その他の点は全て実施例1と同様の操作を行った。
【0044】
[実施例7]
1)実施例1の配合で、光増感色素(D)として、シアニン系色素NK−6141(林原生物化学研究所社製)を0.001g使用した。
4)515nmのArイオンレーザーを使用した。
その他の点は全て実施例1と同様の操作を行った。
【0045】
代表的な先行技術のラジカル重合開始剤(A´)を含む組成物で比較実験を行った。
[比較例1]
実施例1の配合で、ラジカル重合開始剤(A´)として、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(保土ヶ谷化学社製、B−CIM)を0.18g、水素ドナーとして2−メルカプトベンズオキサゾール(大内新興化学工業社製、BOZ)0.12gを使用した。
その他の点は全て実施例1と同様の操作を行った。
【0046】
[比較例2]
実施例2の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、B−CIMを0.18g、水素ドナーとして、BOZを0.12g使用した。
その他の点は全て実施例2と同様の操作を行った。
【0047】
[比較例3]
実施例3の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、B−CIMを0.18g、水素ドナーとして、BOZを0.12g使用した。
その他の点は全て実施例3と同様の操作を行った。
【0048】
[比較例4]
実施例3の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、B−CIMを0.18g、水素ドナーとして、BOZを0.12g使用した。
その他の点は全て実施例4と同様の操作を行った。
【0049】
[比較例5]
実施例5の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、B−CIMを0.18g、水素ドナーとして、BOZを0.12g使用した。
その他の点は全て実施例5と同様の操作を行った。
【0050】
[比較例6]
実施例6の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、B−CIMを0.18g、水素ドナーとして、BOZを0.12g使用した。
その他の点は全て実施例6と同様の操作を行った。
【0051】
[比較例7]
実施例7の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、B−CIMを0.18g、水素ドナーとして、BOZを0.12g使用した。
その他の点は全て実施例7と同様の操作を行った。
【0052】
[比較例8]
1)実施例5の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、ジフェニルヨードニウム クロリド(東京化成社製)を0.30g、溶媒としてクロロホルム28gとエタノール2gを使用した。
その他の点は全て実施例5と同様の操作を行った。
【0053】
[比較例9]
実施例6の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、ジフェニルヨードニウム クロリド(東京化成社製)を0.30g、溶媒としてクロロホルム28gとエタノール2gを使用した。
その他の点は全て実施例5と同様の操作を行った。
【0054】
[比較例10]
実施例7の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、ジフェニルヨードニウム クロリド(東京化成社製)を0.30g、溶媒としてクロロホルム28gとエタノール2gを使用した。
その他の点は全て実施例7と同様の操作を行った。
【0055】
[比較例11]
実施例5の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、トリス(トリクロロメチル)トリアジン(みどり化学社製、TAZ−101)を0.30g使用した。
その他の点は全て実施例5と同様の操作を行った。
【0056】
[比較例12]
実施例6の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、トリス(トリクロロメチル)トリアジン(みどり化学社製、TAZ−101)を0.30g使用した。
その他の点は全て実施例6と同様の操作を行った。
【0057】
[比較例13]
実施例7の配合でラジカル重合開始剤(A´)として、トリス(トリクロロメチル)トリアジン(みどり化学社製、TAZ−101)を0.30g使用した。
その他の点は全て実施例7と同様の操作を行った。
【0058】
性能評価
上記実施例および比較例で得られたホログラムについて、可視光線透過率、透過色度、最大回折効率、感度(ホログラムが記録され始めた露光量)を測定した。
a)回折効率
透過型ホログラムの回折効率を、光パワーメター(PHOTODYNE社製、OPTICAL
POWER/ENERGY METER, MODEL 66XLA)により入射光と回折光の値の比をとり、次式より算出した。
回折効率(%)=(回折光強度/入射光強度)×100
b)ホログラムの可視光線透過率を、紫外可視分光光度計(日本分光社製、「V−550」)による透過率の測定により求めた。測定は、400〜800nmの範囲で行った。
c)ホログラムの透過色度を、色彩色差計(日本電色工業社製、Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)により、CIE1976L*a*b*表色系のa*、b*の測定より求めた。
透過色度c* = sqrt(a*+b*
なお、膜厚は記録後のホログラムをマイクロメーターを用いて測定した。
【0059】
結果まとめ
得られた結果を表1にまとめて示す。
【表1】

表中、可視光線透過率:400〜800nmの範囲で、最低の透過率
透過色度:CIE1976L*a*b*表色系のa*、b*の測定より、下記式から算出した。
透過色度c* = sqrt(a*+b*
最大回折効率:露光量10〜120mJ/cmの範囲で得られた最大回折効率
感度:露光量10〜120mJ/cmの範囲でホログラムが記録された最小露光量
【0060】
表1から明らかなように、実施例で得られたホログラムの可視光線透過率、および透過色度は比較例のものに比べ非常に良好であった。また、最大回折効率、および感度についても、比較例のものと同等、もしくはそれ以上の良い結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
得られるホログラムは、可視光線透過率が高く着色が少ないことから、光の吸収や散乱などによる光の欠損が少ないので、ホログラム技術が関係する光学素子や光学材料を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】透過型ホログラム記録用の光学系の例を示した概略図である。
【符号の説明】
【0063】
(A)はレーザー発生装置、(BS)はビームスプリッター、(M)はミラー、(S)は感光板、(B1)は物体光、(B2)は参照光である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合開始剤(A)、ラジカル重合性化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)、および400〜800nmに吸収波長を持つ光増感色素(D)からなり、光干渉パターンの明暗の強度分布を露光し屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用フォトポリマー組成物において、ラジカル重合開始剤(A)が下記式(1)で表わされる化合物であり、かつ当該組成物から作製されるホログラムの可視光線透過率が80%以上、透過色度cが4以下となることを特徴とするホログラム記録材料組成物。
【化1】

(式中、Xは上記2種のうち少なくともどちらか1種の置換基であり、mはXの置換数を表わしm=1〜6である。置換基の位置は任意である。置換基Xがターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト誘導体である場合のnはn=1〜5であり、置換基X上のターシャリーブチルパーオキシエステル基の位置は任意である。)
【請求項2】
ラジカル重合開始剤(A)が、下記式(1a)で表されるBTTB、または下記式(1b)で表されるPBIFであることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録材料組成物。
【化2】

【化3】

【請求項3】
400〜800nmに吸収波長を持つ光増感色素(D)が、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、ケトクマリン誘導体、クマリン誘導体、およびp−アミノフェニル不飽和ケトン誘導体から選択される少なくとも一種の誘導体であることを特徴とする請求項1または2記載のホログラム記録用感光組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載のホログラム記録材料組成物からなる記録層が基板上に形成されてなるホログラム記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜3記載のフォトポリマー組成物を基板上に塗布し、記録層を形成することを特徴とするホログラム記録媒体の製造法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−113164(P2006−113164A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298473(P2004−298473)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】