説明

高速液体パターン塗布装置

受像基板上にパターニングされた液体層を固着させる、たとえば連続式インクジェットプリンタのような、液滴塗布装置が開示されている。液体塗布装置は、液滴放出体を有し、その液滴放出体は正圧の液体を含み、その正圧の液体は、複数の連続した液体流を放出する1次元アレイのノズルとつながっている。その連続した液体流は、公称流速vj0を有する。複数のノズルは、実効ノズル径D0を有し、実効ノズル間隔Lyを有するアレイ方向に向かって延びている。抵抗ヒーター(18)装置は、複数の連続した液体流を、所定の公称液滴体積V0を有する複数の液滴流(66)に分割させるのに十分な周期τ0の熱エネルギーパルスを、複数のノズルとつながっている液体へ送るように備えられている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、連続流型液滴放出体、特にインクジェットプリントシステムに関する。より具体的には本発明は、熱エネルギーパルスによって、連続流型インクジェットプリンタ内のインクを刺激し、かつ非常に高解像度の液体パターン塗布を行う能力を有するプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリントは、デジタル制御の電子印刷の競争で最も有力な存在とみなされている。その理由は、衝撃がなく、低ノイズ特性で、普通紙に使用でき、並びにトナーの移動及び固着が避けられるためである。非常に精密でかつ非接触の液体パターン塗布が要求される他の用途は、非常に高解像度のインクジェットプリントヘッドと同様な特性を有する液滴放出体によって実現されて良い。非常に高解像度の液体パターンとは、2次元において、1インチにつき少なくとも300の空間密度を有するパターンセル(画素)で構成されるパターンを意味する。またさらに非常に高解像度の液体パターンとは、10pLよりも小さな最小ユニットの液滴体積を用いて“グレースケール”効果を発生させるため、複数のサブユニット内のパターンセル内部で、液体を徐々に一定量で供給できることをも意味する。
【0003】
インクジェットプリント機構は、ドロップ・オン・デマンドインクジェット又は連続式インクジェットのいずれかの技術に分類され得る。第1の技術である、“ドロップ・オン・デマンド”インクジェットプリントは、加圧アクチュエータ(熱、圧電等)を用いることによって記録面に影響を及ぼすインク液滴を供する。一般に用いられているドロップ・オン・デマンド技術の多くは、熱作用を用いることで、ノズルからインク液滴を引き出す。ノズル又はその付近に位置するヒーターは、インクが十分沸騰する程度に加熱する。それにより、インク液滴を引き出すのに十分な内圧を生じさせる気泡が生成される。他の周知なドロップ・オン・デマンドの液滴引き出し機構には、圧電アクチュエータが含まれる。
【0004】
ドロップ・オン・デマンド放出体システムは、個々のノズルが耐えうる液滴の繰り返し周波数で制限される。一定した液滴体積を生成し、かつ前面での液滴の氾濫に対抗するため、インク供給の際には、わずかに負圧の状態が保たれる。修正時間を含む、液滴生成チャンバ及び流路を再充填するのに必要な時間は、液滴繰り返し周波数を制限する。10ピコリットル(pL)以下の体積を有する液滴では、最大で〜50KHzにわたる液滴繰り返し周波数が可能である。しかし液滴周波数の最大が50KHzであるので、高品質パターニング層の塗布用ドロップ・オン・デマンド放出体の有用性が、〜0.5m/secの処理速度に制限される。
【0005】
一般的には“連続式”インクジェット(CIJ)プリントと呼ばれる第2インクジェット技術は、ノズルからインク液滴の連続流を生じさせる加圧インク源を用いる。何らかの方法でそのインク流に外乱が与えられることで、そのインク流は、ノズルから名目上一定間隔、つまり分割長、をとる均一な大きさを有する複数の液滴に分割される。圧力源がノズルから離れているため(典型的にはポンプは、加圧インクをプリントヘッドへ供給するのに用いられる)、ノズルによって占められる空間は非常に小さい。液滴の形成はノズルから引き出された後に生じるので、CIJ液滴発生装置は、“再充填”の制限を有していない。従ってCIJ液滴発生装置は、メガヘルツ近くでの動作が可能になる。これらの特性を考えると、CIJ液滴発生装置が、非常に速い速度でかつ非常に高品質の材料塗布用である高密度アレイに用いられないというのは驚くべきことである。しかしそのような塗布を行う装置、たとえば高解像度パターンで電子材料を塗布する装置、の必要性があるにもかかわらず、高密度アレイは報告されていないし、市販もされていない。
【0006】
CIJ液滴発生装置は、制約を受けない流体ジェットの物理に基づいている。制約を受けない流体ジェットは最初に、F.R.S.レイリー(卿)著、“ジェットの不安定性(Instability of jets)”、ロンドン数学会誌第10巻4号1878年出版、によって、2次元について解析された。レイリー卿の解析は、圧力Pの液体が、穴又はノズルから流れ出ることで、直径Djのジェットが形成され、速度vjで移動することを示した。ジェット直径Djは、実効ノズル直径Dnにほぼ等しい。ジェット速度は、容器圧力Pの2乗根に比例する。レイリーの解析は、πDj以上の波長λ、つまりλ≧πDjであるλを有する表面波に基づいて、ジェットは、様々な大きさの液滴に自然に分割することを示した。レイリーの解析はまた、表面波が十分な大きさで生じた場合には、特定の表面波長が支配的になることで、ジェットを“同期”させて単一サイズの液滴を生成することをも示した。個々のCIJ液滴発生装置又は低密度アレイをなす複数のCIJ液滴発生装置は、1秒あたり100〜1000個の小さな(>10pL)液滴を生成するように備えられて良い。これは、高品質パターニング層の塗布過程を0.5m/secよりも速くするのに必要となる要件の1つである。
【0007】
しかし材料の高品質パターニング塗布に求められる要件を満たす、300ジェット数/インチよりも緊密なジェットを有するCIJジェットの大きなアレイを、たとえばニッケル電鋳法のような従来のノズル製造法並びに複数の層及び部品を集積させた液滴発生装置を用いて製造するのは難しい。それに加えて、市販されているCIJプリントヘッドは、プリントヘッドと音響的に結合する圧電素子を用いる。その圧電素子がプリントヘッドと音響的に結合することで、ジェットに支配的な表面波を起こす。それにより、ジェットを単一サイズの液滴流に分割する“レイリー”分割が生じる。近接するジェットの長いアレイにとって、均一な音響的刺激を発生させるのはかなり難しい。さらに従来のCIJノズル製造法は、10pL未満の液滴を形成するのに必要な15ミクロンよりも小さい直径を有するノズルの長いアレイを製造することには成功していない。
【0008】
従来のCIJ製造技術及び音響的刺激が困難であるため、たとえ連続式液滴放出体が、高い液滴繰り返し周波数を発生させる能力を有していても、0.5m/secよりも速い処理速度で非常に高解像度のパターニング層を生成することのできるCIJノズルの大きなアレイを有する実際のシステムは、そのようなアレイが画像印刷及び薄膜電子材料のような材料のパターニングに用いられることが必要であるにもかかわらず、製品レベルでは実現されていない。そのようなアレイが画像印刷及び薄膜電子材料のような材料のパターニングに用いられることで、市場が成長し、かつ利益がもたらされる可能性があることは、広く認められている。単一ジェットCIJシステムについて、音響的刺激の問題点を克服する他のジェットへの外乱の考え方が、特許文献1に開示された。特許文献1は、局在した光エネルギー、又はノズルに位置する、すなわち流体ジェットが生成される地点に位置する抵抗ヒーターによって、ジェット流体フィラメントを熱的に刺激する方法を開示している。特許文献1は、具体的には表面張力のような、ジェットの加熱部分の流体特性が、加熱されていない部分に対して十分に変化して、ジェットの直径の局所的変化を引き起こすために、適切な周波数が印加されれば支配的となる表面波が発生することを明らかにしている。
【0009】
特許文献1は、それに係る発明を、計算例及びおよそ1970年代初期での最先端のインクジェットプリント用途に関連するパラメータを用いて教示している。1970年代初期での最先端のインクジェットプリントは、液滴周波数が100KHzで、かつノズル直径が〜25ミクロンであるので、液滴体積は〜60pLである。かなり高い液滴周波数で1桁小さい液滴をプリントするのに必要となる、熱的に刺激されるCIJプリントヘッドの配置方法又は動作方法について、特許文献1は教示も開示もしていない。
【0010】
特許文献2は、熱インクジェット素子と似たような方法で製造された、熱的に刺激される複数のジェットを有するCIJ液滴発生装置について開示している。つまり特許文献2は、高圧インクを供給し、かつ同期した分割を生じさせながらも気泡が発生しないようにするのに十分なようにエネルギーパルスをヒーターに付与することによって、従来技術に係る熱インクジェット(TIJ)のエッジシューター又はルーフシューター素子をCIJモードで動作させる方法について開示している。特許文献2で主張され、かつ教示されている発明は、1つに結合した2の基板を用いて作製されるCIJ素子に特有である。一の基板は平坦で、かつヒーター電極を有する。その一方で、他の基板は、個々のインクチャネル及び共通のインク供給連結管を形成する構造上の特徴部位を有する。特許文献2は、高解像度で、非常に高速のCIJとなる構成について開示していない。
【特許文献1】米国特許第3878519号明細書
【特許文献2】米国特許第4638328号明細書
【特許文献3】米国特許第6588888号明細書
【非特許文献1】リー(H.C.Lee)、「流体ジェット中での液滴形成(“Drop formation in a liquid jet”)」、IBM Journal of Research and Development、pp.364-369、1974年7月
【非特許文献2】ファルラニ(Furlani)、Journal of Physics、第38巻、pp.263-276、2005年
【非特許文献3】カースロー及びジェージャー(Carslaw and Jaeger)、「固体中での熱伝導(“Conduction of Heat in Solids”)」、第13章、オックスフォード大学出版会(Oxford University Press)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
熱的に刺激されるCIJ素子は、新興の微小電気機械(MEMS)製造の方法及び材料を用いて製造されて良い。マイクロエレクトロニクス製造プロセスの精度を熱的に刺激されたCIJ液滴発生装置に適用することによって、本発明の発明者らは、従来知られていなかった解像度及び処理速度能力を有する液体パターン塗布装置を供することができると認識した。パターン解像度、グレースケール、液滴体積の均一性、ミスト及びスパッタの最小化、並びに処理速度についての所望の組み合わせを供する能力を保証するため、液滴の連続流の形成に関する物理パラメータは、特定の境界内部に制限されている。係る装置は、非常に高速な写真品質のプリントについての用途、及び高精度のパターンを有する液体層の非接触塗布を必要とする製造についての用途を有する。非常に高速でかつ高品質の材料塗布を供するMEMS製造法の能力は、これまで認識されてこなかった。その理由は、多くの素子及び素子製造パラメータの解析、並びに係る素子の製造についての設計規則の解析が行われてこなかったためである。たとえ高速でかつ高品質な材料塗布の要件の一部を満たす実験用素子が作られ、かつ開示されたとしても、熱的に刺激されたCIJプリントヘッドに係る多くの設計及び動作パラメータについて指針が与えられていない状態で実験による探索を行っても、高速でかつ高品質の材料塗布を供する能力を有するCIJノズルの機能的アレイを供することはできない。そのような解析は、熱的に刺激されるインクジェット素子に適用されるようなMEMS製造技術の予測の評価を含まなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る上記及び他多数の特徴、目的、及び利点は、明細書、請求項及び図面を参照することですぐに明らかとなる。これらの特徴、目的、及び利点は、たとえば連続式インクジェットプリンタのような、受像基板上にパターンを有する液体層を固着させるために構築された液滴塗布装置によって実現される。受像基板上にパターンを有する液体層を固着させる、たとえば連続式インクジェットプリンタのような、液滴塗布装置が開示されている。液体塗布装置は、液滴放出体を有し、その液滴放出体は正圧の液体を含み、その正圧の液体は、複数の連続した液体流を放出する1次元アレイのノズルへ進むことができる。その連続した液体流は、公称流速vj0を有する。複数のノズルは、実効ノズル径D0を有し、実効ノズル間隔Lyを有するアレイ方向に向かって延びている。抵抗ヒーター(18)装置は、複数の連続した液体流を、所定の公称液滴体積V0を有する複数の液滴流(66)に分割させるのに十分な周期τ0の熱エネルギーパルスを、複数のノズルへ進むことができる液体へ送るように備えられている。相対運動を起こす装置は、液滴発生装置と受け取り基板とが相互に対して、処理方向を処理速度Sで動くように備えられている。それにより、個々の液滴は、受像基板に対してアドレス指定が可能となる。処理方向でのアドレス指定能力はAp0Sである。実効的ノズル間隔は85μm未満である。処理速度Sは少なくとも1m/secである。処理方向における受像基板での個々の液滴のアドレス指定能力は、6μm未満である。液滴塗布装置が開示されている。その液滴塗布装置では、所定の体積を有する液滴が、単位体積V0の液滴、及び単位体積の整数倍mV0である体積を有する液滴を含む。さらなる他の装置は、少なくとも1の液滴を誘導的に帯電させ、かつ帯電した液滴の電場を偏向させるように備えられている。
【0013】
従って本発明の目的は、ミスト及びスパッタを制御しながら、受像基板上に非常に高解像度のパターンを有する液体層を固着させる液滴塗布装置の提供である。
【0014】
本発明の目的はまた、高い処理速度で層を塗布することを可能にする高繰り返し周波数で動作する、熱的に刺激される連続式液滴放出体を利用する液体パターン塗布装置の提供である。
【0015】
本発明の目的はさらに、ジェット内での液滴体積の均一性を維持しながらパターニングされた液体パターン内に多数のグレースケールレベルを供することである。
【0016】
本発明の目的はさらに、液滴の帯電及び偏向を利用して液体パターンを形成する液体パターン塗布システムの提供である。
【0017】
本発明の目的はまた、非常に速いプリント媒体速度で非常に高い品質を得る能力を有するインクジェットプリント装置の提供である。
【0018】
本発明に係るこれら及び他の目的、特徴及び利点は、図と共に以降の詳細な説明を参照することで、当業者には明らかとなる。図には、本発明の例示である実施例が示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好適実施例の詳細な説明では、添付の図が参照されている。
【0020】
本発明は、特定の好適実施例を参照することによって、詳細に説明される。しかし、本発明の技術的思想及び範囲の中で変化型及び修正型を実行することが可能であることに留意して欲しい。本説明は、特に本発明に従った装置の一部を構成する素子、又はその装置と協働する素子に関する。機能的素子及び特徴部位が同一の素子である場合、又は本発明の理解という点で同一の機能を示す場合には、図中において、それらの素子には同一参照番号が与えられる。特に図示又は記載のない素子は、当業者にとって周知である様々な形態を取ってよいことに留意して欲しい。
【0021】
図1(a)及び図1(b)を参照すると、液体放出装置の一部分500が図示されている。その一部分500では、液体62の連続流62つまり液体ジェットが、ノズル30から液体60によって供給される。液体60は、液体放出体チャンバ48内において、高圧で保持されている。液体放出装置500の一部分500は、本明細書では液滴発生装置又は液滴放出体と呼ばれる。液体は、ジェット速度vj0でノズル30から放出される。このジェット速度vj0は、容器圧力の2乗根に比例する。液体流62が、ノズル30からある進行距離77を進んだ後で、液滴66に分割される様子が図1(a)に図示されている。図示されている液体流は、自然の液体ジェット、又は不確定な体積100を有する液滴流と呼ばれる。進行距離77は、分割長(BOL)と一般的に呼ばれる。図1(a)に図示されている液体流62は、様々な体積の液滴に自然に分割する。上述したように、自然な液体ジェットの分割についての物理は、レイリー卿と他の科学者によって、19世紀後半に解析された。レイリー卿は、表面波が、空間波長λを有する液体ジェット上に生成されることを説明した。なおλはジェットの直径Djに関連づけられる。直径Djはノズル30の直径D0にほぼ等しい。これらの自然発生する表面波λnの長さは、ほぼπDj≦λn≦10Djの範囲にわたって分布する。
【0022】
図1(b)は、所定体積80を有する液滴に所定間隔λ0で分割されるように制御される液体流62を図示している。液体流62の分割制御又は同期は、抵抗ヒーター素子によって実現される。その抵抗ヒーター素子は、ノズル30の直前で、加圧された液体流60に熱エネルギーパルスを印加するように備えられている。本発明に従った適切な抵抗ヒーター装置の一実施例が、流体流60を取り囲むヒーター抵抗器18によって示されている。本発明に従った抵抗ヒーター装置については、以降でより詳細に論じる。同期した液体流62は、ジェット上に支配的な表面波70の放出を引き起こす熱パルスが印加されることによって、所定体積V0≒λ0(πD02/4)の液滴流に分割される。同期する波長λ0の表面波を放出するため、熱パルスが、周波数f0=νj00で導入される。νj0は、液体流の速度の所望動作値である。熱刺激パルス周期は、t0=1/f0である。
【0023】
本発明を理解することを目的として、ジェット直径は、ノズル30の直径D0によって近似される。つまりDj=D0である。比較的低い粘性、つまりν<20、を有する液体のジェット直径は、ノズル直径よりもわずか数%だけ小さい。さらに、無次元量である“波比(wave ratio)Lを用いて表面波の波長λnをジェット直径D0に関連づけるのが通常である。本明細書での本発明の説明では、無次元の波比Lは、波長λn=LD0の代わりに頻繁に用いられる。
【0024】
様々な波長を有する自然の表面波64の振幅は、連続流が様々な体積を有する液滴66に分割されるまで、大きくなる。様々な体積は、上述した波長範囲に対応する範囲では確定しない。つまり自然発生する液滴66は、体積Vn≒λn(πD02/4)、又は体積範囲(π2D03/4)≦Vn≦(10πD03/4)を有する。それに加えて、主たる液滴の中に“付随(satellite)”液滴と呼ばれる小さな液滴を形成する余分である小さなひも状の流体が存在する。それにより、自然な流体流すなわちジェットによって生成される液滴体積の分散はより大きくなる。図1(a)は、時間内で一度発生する自然な流れの分割の様子を図示している。実際には、分割は、様々な表面波が様々な状態で生成かつ成長するので、無秩序状態である。自然の液体ジェット100についての分割長さ、BOL、について示されている。しかしこの長さはまた、強く時間依存し、かつ広い範囲の長さでは決定もされない。
【0025】
レイリー卿の解析を綿密に近似したジェットの分割についての1次元解析は、非特許文献1に示された。非特許文献1は、長さ無限長の1次元流については、流れを分割するには、表面波形δが必要であることを示した。δは時間tに対して、たとえば次式のように指数関数的に増大する。
【0026】
【数1】

ここでη=z-νj0tは、z方向を速度νj0で移動する流れに対して静止しているフレームへの座標変換である。δ0は、t=0、2π/λ=2π/LD0での表面波の初期振幅である。γは成長因子で、波長だけではなく、表面張力σ、及び密度ρの関数である。
【0027】
【数2】

成長因子は、s-1の単位を有する。
【0028】
式(1)及び(2)によって表される解析においては、粘性の効果は無視されている。つまり流体は非粘性であると推定されている。粘性は表面波の成長を弱める効果を有する。また粘性は、それが含まれる場合には、正の成長因子の項であるγtの効果を弱める負の指数関数項に寄与する。本明細書で用いられる非粘性流体解析は、約20cpoise未満の粘性を有する液体の噴出に適している。
【0029】
成長因子γは、特定波長λ0=L0D0で流体が分割する確率を表す典型的な指標である。つまり、最も大きな成長因子を有する自発表面波が、ジェット上で速く成長する。それにより、より迅速に振幅δ(η,t)=D0/2となり、ジェットをくびれ切るようにして液滴にする。図2は、Lに対するγ(バー)のプロットを示している。γ(バー)は、式(3)中で定義された規格化成長因子である。
【0030】
【数3】

図2における規格化成長因子のプロット302は、連続式液滴発生装置を設計する際の刺激波長の重要性を理解するのに有用である。
【0031】
π未満の波比を有する表面波は、負の成長因子を有する。よってその表面波は、成長せずに減衰することで、ジェットの分割を引き起こす。リーの一次元解析(式(1)-(3))では、所与の流体及びノズルの直径(σ及びρ)についての成長因子は、最適波比Lopt=π√2=4.443で最大値γ(バー)=5.0を有する。比較すると、レイリー卿によるより厳密な2次元解析は、Lopt=4.51で最大値γ(バー)=4.8であることを除いて図3とほぼ同一な成長因子のプロットを生成する。成長因子は、πから迅速に最大値に上昇し、続いてLの増加に伴ってゆっくりと減少する。Lの値が10以上である表面波でも依然として液滴の分割が生じて良い。しかし波比の小さな自然発生波が、初期振幅以上の振幅を有して存在する場合、これらの波はかなり速く成長し、早い段階でジェットの分割が生じる。同期した連続式インクジェットを用いるには、表面波が、選ばれた波比で、自然発生的な分割を引き起こす自然発生的な表面波を抑圧するのに十分な振幅で刺激される必要がある。
【0032】
式(2)から分かるように、成長因子は、流体の表面張力σ、流体の密度ρ、ジェット又はノズル直径D0、及び波比Lに依存する。波比がLoptのときに生じるγmaxは式4で表される。
【0033】
【数4】

4の表面張力の値σ=30、40、50又は60dyn/cmついて、式(4)による最大成長因子が、図3において、実効ノズル直径に対してプロットされている。ここで液体は密度ρ=1mg/cm3である。プロット308、306、304及び302はそれぞれ、表面張力の値がρ=30、40、50及び60 dyn/cmの場合のプロットを表す。液体の特性値は、たとえば水性インクジェットのような水性で使用する流体に適している。最大成長因子γmaxは、sec-1(Hz)の単位を有する。また最大成長因子γmaxは、図3でプロットされているノズル直径の範囲、つまり5μm≦D0≦15μm、にわたって105のオーダーの大きさを有する。成長因子はまた、成長時定数τ=1/γで表されても良い。従って図3で用いられるパラメータについては、成長時定数τは、約1.5<τ<10μsecの範囲の大きさを有する。
【0034】
図3から分かるように、成長因子は、水性の系にとって現実的な範囲では液体の表面張力には弱くしか依存せず、ノズル直径に強く依存する。本発明の中心となることは、非常に高い像又はパターン品質のための非常に小さな液滴を塗布する液体パターン塗布システムである。従って、約12μm未満のノズルにとっては、ノズル直径に対する成長因子の強い依存性は最適なシステムを設計する上で重要な観点である。ノズルアレイ内部でのノズル直径の制御不能なばらつきによって、ジェット間での表面波に係る成長因子が大きくばらついてしまう。従って、ジェット間でのジェット流の分割に、望ましくないばらつきが生じてしまう。一般的には、たとえば電鋳法によるノズル製造技術のような、広く用いられているCIJノズルアレイの製造技術では、たとえばMEMS製造技術のような新たに開発された技術に固有なばらつきと比較して、ノズル直径及び形状に係るばらつきは、より大きくなってしまう。新たな製造技術の効果についての分析が不足しているため、高速でかつ高品質のCIJノズルアレイを供することができない状態である。
【0035】
成長因子が表面波の実際の大きさへ及ぼす影響は、複数の異なるγの値についての規格化された表面波振幅δ(バー)(0,t)のプロット310、312、314及び316によって図示されている。複数の異なるγの値は、L及びD0の値が複数の異なる値を有することに起因する。流体については、σ=50dyn/cm及びρ=1mg/cm3である。
【0036】
【数5】

ここでη=z-νj0t=0は、表面波の1つが流れにそって移動する際の表面波の成長を検討することと等価である。図4では、式(5)は、片対数(常用)スケールでプロットされている。それにより、時間に対する規格化表面波振幅は、γlog10eの傾きを有する直線となる。プロット310及び312はそれぞれ、L=Lopt及びL=10である。ただしいずれの場合もD0=6μmである。プロット314及び316はそれぞれ、L=Lopt及びL=10である。ただしいずれの場合もD0=10μmである。
【0037】
図4のプロットは、このパラメータ範囲において、数十μsecで発展しうる、ジェットの規格化表面波振幅の値の範囲が大きいことを示している。たとえばわずか20μsec後でも、表面波が成長する範囲は、ほぼ3桁である。40μsec後では、その範囲は6桁となる。そのような変化の範囲は、現状で行われている製造能力についての重要な解析がなされていないことで、高速でかつ高品質の材料の塗布を行うようにCIJノズルアレイを動作させる能力を制限していることは明らかである。たとえば、最適な波比、L=4.443、を有する直径6μmのジェットに加えられる表面波刺激δ0は、波比、L=10、を有する直径10μmのジェットに加えられる、同一の初期振幅を有する表面波よりも、100万倍より大きく成長する。図4のプロットはまた、表面波の成長に対する波比の影響が、ノズル直径の減少と共に強くなることを示している。つまりプロット310とプロット312とが互いに異なってゆく程度は、プロット314とプロット316とが互いに異なってゆく程度よりも大きい。現状で行われている製造能力についての重要な解析がなされていないことで、そのような違いが、高速でかつ高品質の材料塗布に要求される非常に小さな液滴体積を供することを制限していることが分かる。
【0038】
結局は、ジェット流を意図的に刺激することで、選ばれた体積及び周波数を有する液滴に分割するには、特に最小のノズルについては、小さな初期外乱振幅δ0しか必要ないことが、図4から分かるだろう。たとえば初期外乱の大きさが、流体直径のわずか1%である場合、初期外乱の大きさは流体直径に等しくなるほどに成長するので、同期された液滴が、プロット310の場合であればわずか10μsec以内で、プロット316の場合であれば〜35μsec以内で分割する。よって図4から、液滴形成の同一性は、ノズル直径のみならず、液滴刺激に係るパラメータの変化に敏感であることが分かる。液滴刺激に係るパラメータとはたとえば、ノズル間又は動作中での、音波又は熱による摂動の均一性である。ノズルアレイ間での刺激パラメータの大きさ又は位相の意図しない変化により、ジェット間で表面波の成長因子のばらつきが大きくなるため、ジェット間で、ジェット流分割の望ましくないばらつきが生じる。たとえばMEMS製造技術のような新たに開発された技術が、高速でかつ高品質のCIJノズルアレイを供する能力の観点から、本願発明の発明者らによって解析された。
【0039】
以降でさらに説明するように、高品質の液体パターン塗布システムは、適切なターゲットである液滴体積を選択することで始まる。ノズル直径及び波比は、液滴の体積を決定する2の設計因子である。図4から分かるように、成長因子を介して、印加された刺激の有効性を決定する際にも重要な因子が存在する。従ってシステム全体の最適化は、液滴体積及び液滴を分割する刺激に関する性能因子を調整すなわち最適化しようとする。
【0040】
図1(b)はまた、76で分割する所定体積110を有する液滴流をも図示している。76は、所定の好適動作である分割長距離BOL0である。流体の分割周期が刺激波長で決定される一方で、分割長は、刺激強度によって決定される。刺激である熱パルスによって生じる主要な表面波は、流体の直径を超えるまで、指数関数的に成長する。刺激である熱パルスが大きな振幅で発生する場合には、分割を起こす指数関数的成長は、刺激波長のわずか数波長の範囲内で生じるだろう。典型的には、弱く同期したジェット、つまり分割が生じる前に刺激がかろうじて支配的となり得るようなジェットについては、〜12λ0の分割長が観測される。図1(b)に図示された動作分割長は、8λ0である。短い分割長が選ばれても良い。図3及び図4から分かるように、特に小さなノズルについては、〜1λ0程度のBOLさえも可能である。
【0041】
高速でかつ高品質の材料塗布システムの設計に用いられる分割長を選ぶ際、熱による刺激強度を制御する製造パラメータ、及び摂動の成長レートを制御する製造パラメータを解析することが重要である。その理由は、図3に図示されているように、成長レートが設計パラメータの影響を受けやすいことに起因して、成長レートにばらつきが生じる場合において、ノズルを貫流する高粘性流体ジェットへ、熱エネルギーを伝える能力のばらつきによる影響を分割長が受けるため、分割長は、所望の分割長とは異なった値をとってしまうためである。そのようなばらつきには、トランジスタ特性のばらつき、及びヒーターと流体ジェットとの間の伝熱特性のばらつきが含まれる。トランジスタ特性はヒーターの駆動電流を制御する。トランジスタ特性はこれまでにも解析されてきた。そしてトランジスタ特性の設計規則は周知である。ヒーターと流体ジェットとの間の伝熱特性は、加熱素子の製造及びノズルに対する加熱素子の設置の精度によって支配される。これらのばらつきはこれまで解析されてこなかった。一般的には、そのようなばらつきは、そのばらつきの効果が、たとえば分割長の一貫性のようなシステムパラメータに数%よりも大きなばらつきを生じさせるときには、高品質像にとっては有害である。
【0042】
ファルラニは、特許文献2において、熱による刺激の場合ではあるが、最小ジェット半径で評価された、式(1)(特許文献1参照)に類似した近似式を提供している。その式は以下で与えられる。
【0043】
【数6】

ここでΔσは、ジェットがノズルから噴出する際に、ヒーターによって誘起される表面張力の初期変化である。式(1)におけるγに類似した、式(6)における成長因子は、次式で与えられる。
【0044】
【数7】

式(1)、式(6)、式(7)及び式(8)を比較することで、式(6)における、初期の熱による摂動の大きさ及び前因子を次式のように特定することができる。
【0045】
【数8】

議論を簡単にするため、式(7)及び(8)では、低粘性近似が用いられ、レイリー数はLoptとされた。議論を簡単にするためであるこれらの近似は、本明細書での解析結果に必須ではない。またこれらの近似は、高粘性液体の塗布を厳密に理解するのに用いられてはならない。
【0046】
Δσは、ノズル口径での表面張力σの変化である。熱による刺激については、この変化は、表面温度の上昇に関する。表面温度の上昇は、例として、γ-1=2.6μsec、D0=10μm、及びBOL=300μmのパラメータ組について、水性流体についての表面張力の温度係数の平均値を用いることによって、約0.1Kと計算される。つまり、多くの水性の塩基性材料の表面張力は、典型的には約5Kの温度上昇につき約1%変化する。本発明で用いられる如何なる特定の液体塗布材料に係る表面張力の温度係数の厳密な値が用いられても良い。
【0047】
図5は、ファルラニによって再現されたデータであって、公称表面張力の比率で表される初期刺激に対する分割時間Tbの依存性をプロットしている。分割長BOLは、分割時間Tbとジェット速度νj0との積である。つまりBOL=Tbνj0である。刺激の大きさに伴う分割時間の急激な減少は、沸騰を防ぐのに必要である小さな熱による摂動に典型的である。このような状態は例として、図5では、約1%のパラメータ変化で生じる。図5に図示された刺激に対して分割時間が感受性を有するということは、刺激の一部が小さく変化することによってさえも、分割時間が変化し、それによって液滴放出体の大きなアレイにとって望ましいBOL分布を超えたBOL分布となることを意味する。たとえば分割時間が2μsec変化することで、20m/sの速度を有する流体ジェットのBOLは40μm変化する。ノズル間又は大きなジェットノズル内でのノズル群間での、このBOLの変化量は、一般的に静電的に偏向するCIJプリントヘッドの最適動作にとって受け入れ可能な上限であると考えられる。
【0048】
分割時間変化へのMEMS製造パラメータの定量的影響は、ヒーターから流体ジェットへの熱の流れを1次元熱拡散問題と近似することによって理解することができる。1次元熱拡散問題では、ヒーターからのエネルギーパルスが、絶縁性材料を介してジェットへ向かって拡散する。ジェットは、距離xにおいて、ヒーターからのエネルギー束Jを有する。Jは周知である次式で表される。
【0049】
【数9】

ここでkは熱伝導率、ρは密度、Cpは定圧熱容量、κは絶縁性材料の熱拡散率(κ=k/ρCp)で、tは時間である。Qはエネルギーパルス中での熱量で、t=0では空間的に強く局在していると推定される。
【0050】
初期の熱エネルギー位置から距離x0離れた位置にあるノズルに到達する最大熱流束Jmaxは、ほぼ拡散時間tD=x02/κで生じる。Jmaxが、各液滴を生成するためのジェットへのパルスによって供給されるエネルギーの変化に対して空間的に依存することが予想され、かつヒーターからノズルまでの距離に関係ない液滴の分割を保証するため、移動する流体ジェットへは、一定時間内でエネルギーが供給されなければならないと仮定すると、Jmaxは、ヒーターからノズルへの距離の2乗に逆比例する。従ってJmaxは、次のように近似される。
【0051】
【数10】

上記式から、図5でプロットされているような、最先端技術のMEMS製造技術には様々な設計規則が存在することに起因する、Δσ/σでの様々な微小変化δiが推定される。たとえば、特定の熱刺激を受けるCIJアレイの設計に係るヒーターと口径との設置距離が距離z1で、かつ製造プロセスの設計規則が距離z1についての設計許容のばらつきx1の大きさ特定する場合、係るΔσ/σでの微小変化δ1は、以下の近似式で与えられる。
【0052】
【数11】

式(12)では、ノズル口径は長さと幅を有する長方形であって、ヒーターは、長さ方向に沿って、口径の各側面に隣接して設けられ、かつ理想的には口径端部から距離の間隔で設けられている、と仮定されている。なぜなら熱によって刺激されるCIJ液滴放出体の中には、上記仮定が適切なものもあるからである。
【0053】
ヒーター及び口径形成についての多くのMEMSプロセスでの、典型的なマスク-マスク位置合わせ許容度は、0.1-2.0μmの範囲である。その位置合わせ許容度は、マスクが基板の同一面上又は反対面上のどちらかで作製されたのか、及び他のプロセスパラメータに依存する。典型的なヒーター-口径間距離は、0.1から4.0μmの範囲であり、噴出する材料の流体パラメータに依存する。係る設計特性及びプロセス設計規則から、液滴形成の分割時間についての予想されるばらつき、及びそれに従った分割長についての予想されるばらつきが、図5のプロットから決定されて良い。これまで論じてきたように、高速でかつ高品質の材料塗布を行うCIJアレイにとっては、ノズル間又はノズル群間での分割長についてのばらつきが約10-20μmよりも大きくなることは避けられなければならない。たとえば円形の口径のような他の口径設計については、たとえば非特許文献3で論じられているように円柱座標系を用いることによって、式(12)と類似の公式が導出されて良い。この場合、その公式は、ベッセル関数及びその導関数で表現することができる。任意のヒーターの幾何学形状についての数値を発見するのに計算モデルが存在するわけだが、そのようなモデルは、時間がかかる上に複雑で、高速でかつ高品質のCIJ材料塗布を行うためのCIJアレイを供するための指針をほとんど与えない。
【0054】
たとえばヒーター抵抗器材料のような、CIJ液滴形成にとって重要な塗布及びエッチング材料の線幅についての設計規則を根拠としても良い。理想的にはz2で特定される幅、及びz2よりもはるかに長い周辺の長さを有するヒーターについては、図5でプロットされているように、Δσ/σでの微小変化δ2は、以下の近似式で与えられて良い。
【0055】
【数12】

ここでx2は、たとえばヒーター抵抗器材料のエッチングから生じる線幅のばらつきに起因する、予想されたプロセスのばらつきz2である。ヒーターの厚さに係るプロセス許容度はx3で、理想的なヒーターの厚さがz3である場合では、第3の考えられ得る微小変化δ3を表す公式は、式(13)と同一の形式である。よく知られているように、論じられてきた全ての設計規則は、図5のプロットから決定される液滴形成の分割時間での全ばらつき、及びそれによる分割長についての予想されたばらつきに対して、各独立に寄与する。ヒーター材料のエッチングについての典型的な線幅許容度は、多くのMEMSプロセス及びヒーター材料では0.1-1.0μmである一方、典型的なヒーターの幅は、0.5から4.0μmの範囲である。ヒーターの厚さは、典型的には0.05から2.0μmである。プロセス設計規則を反映したこれらの厚さについてのばらつきは、典型的には0.01から0.2μmである。よって分割長への設計規則の影響は、特定のパラメータの組み合わせについてはかなり大きくなりうる。
【0056】
これらの式から、効率的なエネルギー輸送にとって、つまりヒーターが口径に近い場合、かつ高密度アレイにとって、つまりノズル直径が短くてヒーター幅が狭い場合、設計規則に対する熱輸送の感受性が増大する。しかし、ノズル直径が短い後者の場合、好都合なことに、以降の式(14)から分かるように、式(1)のγは大きいので、刺激パラメータの変化に対する分割長のばらつきの感受性は緩和される。式(1)の導関数をとり、分割時間Tbに代わって分割長BOLを、及びジェット速度νj0を表すことで、
【0057】
【数13】

が見いだされる。
【0058】
現在用いられている製造能力についての重要な解析によって、高速でかつ高品質の材料塗布に要求される非常に小さな体積の液滴を供する上で制約となる、多くの設計上のばらつきが回避される。
【0059】
図6は、本発明の好適実施例の側面図を示している。その好適実施例は、基板50に集められたマルチジェット液滴放出体500で構築されている。基板50には、誘電帯電装置210が供されている。液滴放出体500の構造のわずか一部のみが図示されている。加圧流体供給管の一部のみが図示されていて、流体供給接続部は図示されていない。図6は、本発明に従った単一ジェット液滴放出体及びマルチジェット液滴放出体500中の複数のジェットのうちの1のジェットをも表すものと理解されて良い。さらに図6の液滴放出体は、図1(a)及び図1(b)で図示されている液滴放出体500用の構成部品と同一の構成部品を有する。
【0060】
基板50は、帯電電極210を有する誘導液滴帯電装置を支える。帯電電極210は、マルチジェット液滴放出体500の各ジェットについてそれぞれ別個の電極を有するように備えられている。それにより、個々の流れの中にある個々の液滴が帯電可能となる。帯電電極210と接続し、かつ絶縁層53及び54によって保護されている帯電電極コンタクトリード線55が図示されている。絶縁層54は、液滴発生装置500と帯電電極基板50とを結合する結合層として機能しても良い。液滴放出システムの構造500の全体は、帯電電極コンタクトリード線55への外部電気接続が図示されないように、図6の左側で切られている。
【0061】
また図6では、完全な液滴放出システム550の他の素子も図示されている。誘導帯電電極210を有する液滴放出体500にはさらに、接地面型液滴偏向装置252、液滴ガター270、及び液滴放出システム支持体43が集積される。ガターによって戻される液体の流路274は、真空源(図示されていないが、276で示されている)と接続する。その真空源は、受像面300で所望パターンを形成するのに用いられない液滴がガター内に蓄積することで生成される液体を除去する。
【0062】
接地面の液滴偏向装置252は、接地電位に保持されている導電性部分である。接地された導体表面の近くを飛行する帯電液滴は、導体中に異なる符号の電荷パターンを有する。異なる符号の電荷パターンとは、所謂“電荷像”であって、帯電液滴を引き付ける。つまり導体表面近くを飛行する帯電液滴は、その表面と、導体表面の背後で等間隔に位置する帯電液滴像との間で作用する力であるクーロン力によって、その表面に引き付けられる。接地面液滴偏向装置252は、導体表面と液滴流とが近くなるように配置することによって、この鏡像力の有効性を増大させるような形状をとる。それにより直ちにジェットの分割が生じる。帯電液滴84は、それ自身の鏡像力によって偏向して、図示されている曲がった経路を進む。その曲がった経路では、帯電液滴84は、ガター270の縁で捕獲され、又は、偏向装置252の表面に到着し、かつ、帯電液滴84の運動量によって真空領域へ運ばれる。接地面型偏向装置252はまた、ステンレス鋼のような焼成金属で作られることが有用である。また接地面型偏向装置252は、図示されているように、ガター管274の真空領域と接続して良い。非帯電液滴82は、接地面型偏向装置252によっては偏向されず、対をなす2つの液滴82で図示されているように、受像面300に向かう初期進路に沿って進む。
【0063】
液滴放出システム550の様々な構成部品装置は、図6の縮尺上図示されていない。実際に、たとえば図示されている接地面型252のようなクーロン偏向装置は、軸から外れるような運動を起こすことでガター270の縁をきれいにしておくため、典型的な流体分割長及び帯電装置よりもはるかに長い。
【0064】
図7は、本発明に従った液滴放出システム550の上から見た断面図を示している。誘導帯電装置200は複数の帯電電極210を有し、各電極は各ジェット流に用いられる。液滴放出体部分500の構築は、図1(b)の断面で示された構築と類似している。接地面型偏向部252及びガター270は、図6の接地面型偏向部及びガターと同様の方法で構築される。帯電液滴84は、静電鏡像力によって、ガター270へ向けて偏向される。非帯電液滴82は、媒体すなわち受像面300へ進む。
【0065】
この例では、液体塗布パターンは、各ジェットから受像面300に衝突することができる非帯電液滴により、ジェットアレイの軸方向に沿って生成される。受像体300と液滴放出体500は、ジェットアレイ方向に交差する方向で、相互に移動する。それにより、液体パターンは、液滴がアレイの各ジェットから受像体に衝突する時間内に選択することによって、その方向で形成することができる。このようにして液体パターンは、一液滴を単位とし、かつジェット間隔、液滴分割タイミング、及び、液滴放出体550と受像面300との相対速度によって決定される空間的増分として生成することができる。
【0066】
図8は、本発明に従った制御装置のエレクトロニクス素子のいくつかを概略的に示している。入力データ源400は、たとえば像又は機能性材料層のような液体パターン情報と、システム又はユーザー命令の両方の入力手段を表す。
【0067】
制御装置410は、液滴放出システムを制御する能力を有するコンピュータ装置を表す。制御装置410が実行可能な特定の機能には、流体の分割の同期を行うために印加される電気パルスのタイミング及びシーケンスを決定する手順が含まれる。複数の流体のうちの各流体に印加されるエネルギー準位は、各流体の分割長及び液滴電荷信号を制御する。
【0068】
抵抗ヒーター装置420は、レイリー同期化を引き起こし、かつ所定体積V0、実施例によってはmV0(mは整数)の液滴流に分割するのに十分な熱エネルギーパルスを、各加圧液体流に印加する。抵抗ヒーター装置420は少なくとも、各ジェットにとって所望の電気パルスシーケンスを設定する回路、及び、電力駆動回路を有する。電力駆動回路は、十分な電圧及び電流をヒーター抵抗器に出力することで、加圧流体の各連続流に送られる必要な量の熱エネルギーを生成する。
【0069】
実施例によっては、液滴放出体430は少なくとも、マルチジェット連続式流体放出体のノズル近傍に存在するヒーター抵抗器、及び帯電装置を有する。
【0070】
図8に図示されているハードウエア及び機能の配置及び区分は、考えられ得る本発明の構成のすべてを表しているわけではない。
【0071】
本発明に従って液体パターンが生成される様子が図9に図示されている。液体パターンは、2次元空間格子上に塗布された単位液体体積V0のスポット154で構成される。理解を単純にするため、本明細書において、空間格子は、長方形であって、かつノズルアレイ方向、つまり図7のy軸、に沿って配向する1の軸を有するものとする。垂直であるx軸は、図6において下向きで、かつ図7において紙面へ向かう方向で表されていている、液滴放出体と受像面とが相対運動する方向である。図9では、一般的には画像の構成要素すなわち像パターンの“画素”と呼ばれる、液体パターンの領域150は、パターンの最小構成要素である。“画素”及び“パターンセル”の語は、本明細書においては、最小のパターン構成要素を指すものとして同義的に用いられる。図9に図示されている単一の長方形画素150は、x方向に長さLx、及びy方向に長さLyを有する。
【0072】
非常に高品質の像プリント又は機能材料パターニングは、本発明に従った連続式液滴放出体を用いて、放出体/受像体が相対運動する方向であるプロセス方向P、つまり図9のx方向、に沿って複数の液滴Nの塗布を引き起こすことによって作成されて良い。可能な複数の液滴、たとえばN=16、が塗布されている様子が、16の円形スポット154によって図示されている。これらの円形スポットの中心は画素150内に収まる。レイリー分割プロセスが高周波数で液滴を生成する能力を有するので、画素あたりにつきそのような多数の液滴を塗布することが可能となる。図9は、個々のスポット中心を、微細な間隔を有するプロセス方向に沿っている1の画素内に位置させることが可能であることを示している。本明細書において、このことはプロセス方向指定能力(process direction addressability)Apと呼ばれる。液滴放出体と受像体は、プロセス速度Sで、互いに移動する。
【0073】
図9の例については、プロセス方向指定能力は、x方向の画素長の1/16である。つまりAp=Lx/N=Lx /16である。図示された塗布プロセスを実行するため、液滴生成周波数f0は、プロセス速度、及び多数の塗布可能な液滴/画素に対応するため、十分高くなければならない。つまり、
【0074】
【数14】

画素領域150につき可能な液滴数であるパラメータNは、塗布可能なパターンの品質を決定する重要な要因である。像にとっては、Nは、グレーレベルの数、つまり各画素内に塗布することのできる色素の密度を表す。機能材料パターンにとっては、Nは、各画素位置への一定量の供給が可能な液体の増分量を表す。
【0075】
本発明は、大きなプリントヘッドにわたって液滴を生成する特性を実現するための適切な制御と両立する、非常に高品質の像及び機能材料パターンの生成に関する。従って、考えられるLx及びLyの最大値は、1/300インチすなわち〜85μmである。つまり、Lx、Ly <85μmである。また考えられる画素あたりにつき指定可能な液滴の最大値は、Lx=Ly≒85μmのときには、N=16である。
【0076】
“1回通過”プリント(“single pass” printing)と呼ばれる、受像体300と液滴放出体システム550とが、互いに一度だけ通過するシステムについては、ノズル間の間隔が、Ly、つまりプロセス方向に垂直である画素の幅、の最小値を設定する。従って1回通過プリントについて、本発明では、実効ノズル間隔を85μm未満にすることが検討される。実効ノズル間隔は、複数の相互に入り組んだジェット列を用いることによって実現されて良い。それに加えて、偏向システムが、ノズルアレイ方向に液滴を偏向させるように実装される場合、所与の1ノズルは2画素領域以上に液滴を与え、かつ液滴周波数が増加する限りノズル間隔を増大させることが可能である。
【0077】
高品質像プリント及び機能材料パターニングではまた、適切な厚さの液体が、十分にコーティングされた領域に供給されることも要件となる。画像化用途では、この要件は、十分な光学濃度を実現するだけの光を吸収するため、単位領域あたりにつき、ある程度の量の色素分子又は色素粒子を塗布する必要性に相当する。十分な光学濃度とは、典型的には1.0ODよりも大きな値で、より望ましくは1.2ODよりも大きな値である。本発明では、液体の粘性が20cpoise未満であることが検討される。この要件、及び、水性インク中に高い質量濃度の色素を溶解又は懸濁させることが困難であることにより、実用可能な色素の量は、約8質量%で、より典型的には約3〜6質量%に制限される。この量は、色素、溶媒及び分散添加物の化学的性質に依存する。
【0078】
何十年にもわたる印刷産業での経験から、20質量%〜30質量%の色素を有するインクが、液体層厚さhwが、約1.5〜3μmの膜の状態で塗布されることで、適切な光学濃度が実現されることが分かっている。同様に、水性インクジェットプリントシステムでの経験から、1.0OD以上の光学濃度を実現するには、約12〜18μmの液体層厚さが必要であることが分かっている。紙媒体へのインク印刷についてのこのような経験は、高品質プリントには、色素の厚さhcが0.4〜0.6μmであることが必要であるという結論と一致する。液体層の厚さを約6.7μmにするには、6質量%の色素を有するインクを用いることによって、最低でも4μmの厚さの色素を有することが必要となる。また3質量%の色素インクには、13.4μmの液体層が必要である。8質量%のインクが信頼性のある状態で維持可能な場合、紙の種類によっては、最低で5μmの液体層の厚さを用いることが可能である。本発明では、印刷用途に適用されるときには、最低の考えられる液体層の厚さhwは、5μmである。
【0079】
上述した最低の液体層厚さが5μmであるということは、紙媒体への像プリントでの経験から導かれる。しかし本発明はまた、液体状態である他の機能材料の塗布に用いることも考えられる。この用途では、“活性”成分は色素ではなく、かつ所望の機能を実行するのに4μmの層は必要ないと考えられる。たとえば用いられる流体は、表面の伝導性パターンを生成する塩、又は表面の疎水性を変化させる分子等を有して良い。そのような非印刷液体パターニングでの5μm未満の液体層厚さは、非印刷用途に適用されることも考えられる。
【0080】
上で提示した高品質の液体パターニングについての複数の系での目的を実現するため、最大でNの液滴が単一画素領域LxLyに塗布されるときには、単位液滴体積V0は、ターゲットである液体層厚さhwを実現するのに適切な大きさに選ばれなければならない。つまりV0は、以下の関係を満足するような大きさでなければならない。
【0081】
【数15】

ここで、長方形パターンセルに据え付けされた、最大のパターンセルの液体体積Vmは、Vm=hwLxLyである。図10では、ターゲットである液体層厚さhwに対する単位液滴体積V0が、複数の場合について、式(16)に従ってプロットされている。ここでLx=Ly=84.6μmで、両方向において、画素密度は1インチにつき300ドット(300dpi)である。hwに対するV0の値が、N=16,32,48,及び64についてプロットされている。N=16,32,48,及び64についてのプロットはそれぞれ、曲線321、曲線322、曲線323、及び曲線324である。液滴体積はピコリットルの単位で与えられ、ターゲットである液体層の厚さはμmで与えられる。これらの単位間の便利な関係は、1pL=103μm3である。1ピコリットルの体積は、1辺が10μmの立方体に等しい。
【0082】
図9から、N≧16、Lx、Ly<85μm及びhw<18μmであることを特徴とする本発明によって生成される最低限の品質のパターン塗布を実現するには、8pL未満の単位液滴体積が必要であることが分かる。図10での、N=16,32,48,及び64についてのプロットは、300ラインのスクリーンプリントについて、最低限である数%のドットサイズを実現するのに必要とされる単位液滴体積を示すものとして解することも可能である。この方法は、グラフィック技術分野でのプリント品質能力を表す一般的な方法である。1画素領域内でのインクの量の1/16を供給するのは、6%のハーフトーンドットをプリントすることとほぼ等価である。1画素領域内でのインクの量の1/32を供給するのは、3%のハーフトーンドットをプリントすることとほぼ等価である。1/48の供給は、2%のハーフトーンドットに等価である。グラフィック技術の当業者は、300ライン/インチスクリーンについて2%ハーフトーンドットをプリントする能力を有するシステムが、最先端の画像品質を生成することを理解する。本発明の好適実施例は、この非常に高レベルの画像又はパターン品質を、従来可能であった処理速度よりも高速に実現できる。
【0083】
これまでの議論により、非常に高品質の画像及びパターンを生成するのに必要な単位液滴体積についての要件に行き着く。ここで先述した液滴放出体に戻ると、単位液滴体積は、実効ノズル直径D0及び適用されるレイリー刺激波比L0によって決定される。
【0084】
【数16】

単位液滴体積及び波比を用いて実効ノズル直径の表式を再定式化した式(17)は、
【0085】
【数17】

である。
波比Lに対する複数の単位液滴体積を有する液滴を生成するのに必要な実効ノズル直径D0は図11でプロットされている。
【0086】
図11は、1,2,3,4,5,7及び9pLの単位液滴体積を生成するのに必要な実効ノズル直径D0を、波比Lに対して図示している。波比Lに対する、1,2,3,4,5,7及び9pLの単位液滴体積を生成するのに必要な実効ノズル直径D0はそれぞれ、プロット331,332,333,334,335,336及び337で表される。プロットされる波比の範囲は、πから10である。連続式液滴放出体の特定は、グレーレベル、すなわち、所望の一定量供給の増分レベルN、及び必要な液体層hwで始めて、単位液滴体積V0に到達する。続いて所望の単位液滴体積が得られるように、ノズル直径D0及び波比Lが選択される。たとえばN=48であるレベル能力及びhw=15である液体層厚さが必要である場合、ほぼ2.2pLの液滴体積が必要となる(図10のプロット323参照)。図11の2pLを表す曲線を、Lが大きくなる方向に外挿すると、ほぼ6.5〜8.5μmの実効ノズル直径が必要となることが分かる。必要な実効ノズル直径は波比の選択に依存する。波比の選択は後述するように、処理速度を検討する際に決定されることである。
【0087】
300dpiの画素密度でのN=16の能力、つまり本発明で考えられている最低限の品質レベルでは、hw =15μmである液体層について、約7pLの液滴体積が必要となる。必要とされる実効ノズル直径は、10〜13μmの範囲である。従って本発明では、実効ノズル直径は、約13μm未満でなければならない。
【0088】
ノズル直径の選択は、実際の製造を考慮することによって、その下限が画定される。現代の光加工技術によって、特徴部位の解像度が向上してきた。特徴部位は、マイクロエレクトロニクスの製造において、非常に小さく作ることが可能となった。公称ノズルサイズが図11によって示されている範囲内でなければならないとき、最先端の光加工技術は、十分に均一な形状及び実効フロー領域を有する大きなアレイをなすノズルを実現するのに必要である。実効ノズル直径が、液滴放出体アレイ中の数百又は数千のジェットの集合で、ある程度変化する場合、生成される液滴体積、及び分割を引き起こす表面波成長因子もそれに従って変化することで、最低品質のパターン及び像が生成される。
【0089】
図12は、2の異なるレベルの光加工設計規則が利用された場合に生じる液滴体積のばらつきを図示している。図12における、2の異なるレベルとは、0.15μm及び0.09μmである。本明細書において、“設計規則”とは、妥当な歩留まり及び再現性を有した状態での製造が可能な大きさに対する許容度を意味する。0.09μmから0.15μm範囲での設計規則の利用は、先端技術の中でも最先端である。また0.09μmから0.15μm範囲での設計規則を利用して、8.5インチ以上の大きさを有する頁全体に延在しなければならないノズルアレイ素子を作成するのは不可能である。図11のプロット321及び322は、実効ノズル直径でのばらつきがそれぞれ、±0.15μm又は±0.09μmの場合に生じる、波比L=4.5で生成される液滴の体積変化を%で示している。公称体積に対する%での体積変化がプロットされている。許容されうる液滴体積のばらつき量は、液滴パターニングシステムによって供される用途にある程度依存する。
【0090】
高品質プリントの場合、一貫した色相を実現し、かつ中間トーンの画像領域での縞模様が現れるのを避けるには、画像内又は画像間での液滴体積のばらつきが10%未満であることが必要であると一般的に認められている。よって図12から、約6μm未満の実効ノズル直径は、非常に高品質の液体パターン塗布を行う液滴放出体アレイの作製にとっては現実的でないことが分かるだろう。
【0091】
上で示した式(2)で得られた、D0及び波比に対するγの依存性から分かるように、実効ノズル直径D0のばらつきはまた、適用されたレイリー同期表面波の成長レートにも影響を及ぼす。図12で推定された体積のばらつきについては、名目上同一の実効ノズル直径D0を有するように光加工されたジェットのアレイは、ある程度のばらつきΔを除けば、設計規則に等しいと推定される。つまりこの解析では、Δ=0.15μm又は0.09μmである。上で示した式(2)及び(5)は、公称サイズよりもΔだけ大きい又は小さいノズルの場合について評価される。それにより、それぞれδ+及びδ-で表される、大きなノズル及び小さなノズルの表面波成長についての表式が得られる。ノズル直径のばらつきから発生する成長レートのばらつきがもたらす結果を理解するため、典型的時間tでの比δ-+が評価される。
【0092】
【数18】

ここでL±j0/f0(D0±Δ)である。式(19)-(21)は、Δ=0.15μm及び0.09μmについて、t=20μsecで評価され、かつ図13において、Δ=0.15μmの場合は曲線338で、及びΔ=0.09μmの場合は曲線339でそれぞれプロットされる。Lを介したΔに対する成長因子の依存性は、(Δ/D)の3次の項であるので、図13の曲線を計算する際にはその依存性を無視した。
【0093】
図13のプロット338及び339は、実効ノズル直径の小さなばらつきが、アレイ中のジェットの分割長に大きな差異をもたらすことを示している。このばらつきは、公称ノズル直径が減少することで顕著となる。0.15μmの設計規則能力を用いて作製されたノズルについては、20μsecでの表面波振幅の広がりは、D0=6μmで2倍に到達する。設計規則能力が0.09μmである場合には、広がりは、D0=5μmで2倍に到達する。表面波成長でのこれらの差異により、アレイ中のそれぞれ異なるジェットで分割長はそれぞれ異なってしまう。そして最終的には、それぞれ異なるジェットからプリント面への液滴の到達を適切に選択する能力、及びその到達時間を決定する能力の差異をもたらしてしまう。
【0094】
ノズル直径のばらつきに加えて、ヒーターの間隔、幅及び長さのばらつきに起因する、刺激パルスの熱伝導のばらつきは、ジェット間での分割の振る舞いと似たようなばらつきを引き起こす。式(12)及び(13)で表されたヒーター製造許容度のばらつきについての成長因子が同様に評価された場合、分割時間及び分割長について、MEMSプロセス設計規則の限界の効果によって得られる結果も同様であることが分かる。
【0095】
実効ノズル直径及び波比に関する上述の考察に加えて、液体パターン塗布の処理速度Sとジェット流体速度νj0とのトレードオフを解決することもまた必要である。処理速度Sは、用途に係る要件によって決定される。たとえば本発明では、1m/s以上の速度で、様々な媒体紙上にカラー画像をプリントする能力を有する液体塗布システムが考えられている。個々のノズルは、プロセス方向におけるパターンセルの長さLxの範囲内で、少なくともNの液滴を供給できなければならない。少なくともNの液滴は、グレーレベル又はパターンが一定量供給する増分のレベルに相当する。つまりレイリー刺激周波数f0は少なくとも、単位時間あたりに十分な数の液滴が生成されるようにジェットを分割させることで、用途に係るパラメータである、処理速度Sと画素あたりのパターン品質レベルNとを同時に満足する程度の高さでなければならない。刺激による流体の分割に係る物理は、ジェット速度、波比、及び周波数と一緒に関連するので、所与の組の用途に係るパラメータである、N、Lx、hw及びSについての、動作波比L0、ノズル直径D0、及びジェット速度νj0の選択に制約が課されることになる。
【0096】
複数の用途とジェットについての物理変数との設計に係るトレードオフをさらに理解するため、用途に係るパラメータの様々な組み合わせを可能にするジェット速度と波比の選択を検討することは有用である。ジェット速度は、以下のように、用途パラメータの関数として表されて良い。
【0097】
【数19】

式(22)-(25)中の全パラメータは、これまでに定義されている。流体が、必要な時間内に必要な体積を有する液滴を十分な数だけ分割されるように、ジェット速度は、式(25)の右辺の値よりも大きくなければならない。式(25)は、パターニング層の品質についての用途因子(hw,Lx,Ly,N)及び処理速度(S)と、流体分割の物理による制約(L0)とを合わせた式である。必要な最小ジェット速度は、その速度が式(25)の右辺に等しいときに見いだされる。
【0098】
用途によっては、式(22)の右辺で示された、パターン固着についての要件を満足するのに必要な液滴Nよりも多い液滴Mが生成されて良い。余分な、つまり“プリントされない”液滴は、液滴の飛行中での空気による相互作用及び静電相互作用を変化させる、又は、所与のジェット流に沿って、時間内にパターンデータをシフトさせることによって、液滴塗布のタイミングを調節することを可能にする、“案内液滴”として用いられて良い。従って各ジェットは、単位パターンセルの長さを進む時間tx=Lx/Sの間に、整数(M+N)の液滴を生成しなければならない。従って、(M+N)τ0=Lx/Sである。そのような液滴放出システムの設計では、 “プリントされない”液滴のために十分な液体を供給し、かつf0=1/τ0=SLx/(M+N)の周波数での動作を可能にするため、ジェット速度を増大させなければならない。
【0099】
図14から図21では、用途パラメータの様々な設定について、式(25)による最小の動作ジェット速度νj0が波比に対してプロットされている。本発明に従ったジェット速度の選択は、以降で図14から図21の多くのプロットを参照しながら説明する。式(25)から、必要なジェット速度は、必要な処理速度Sに直接比例し、かつ画素あたりの必要なグレーレベル数にほぼ比例(2/3乗)することが分かる。処理速度の要件、及び/又はグレーレベルの要件を2倍にすることで、ジェット速度の要件が2倍又は4倍になる。従って、高速でかつ高品質の液滴塗布システムの実装は、必要なジェット速度を、実用上の限界にまですることが必要となる。
【0100】
ジェット速度についての実用上の限界は明確ではない。一般的には、上述の範囲の表面張力及び粘性を有し、かつ5μmから20μmのターゲット層厚さで塗布される流体については、ジェット速度は、25m/sec未満に制限されなければならず、20m/sec以下に制限されることがより好ましい。より大きなジェット速度を試みる場合には、液体のスパッタ及びミストが、パターン品質と液滴放出体システムの信頼性の両方を深刻に劣化させる。本発明に本質的である、画素あたりに複数の(N>2)液滴が塗布されるパターンについては、液滴が、先に受像面上に塗布された液滴と、数μ秒以内で衝突する。それにより、流体の小さな液滴が、表面から跳ね返されてくる恐れがある。小さい跳ね返されたインク液滴は、空気中に浮遊するミストとなるか、又は意図した画素パターンから外れる、誤った液体の再付着を起こす。ミスト及びスパッタの生成は、入ってくる液滴の運動エネルギー、及びこのエネルギーを消失させる機構によって、部分的に制御される。ジェット速度を制限することによって運動エネルギーを制限することは、ミスト及びスパッタの制御に対して最も直接的な手法である。従って本発明は、ジェット速度は20m/sを超えてはいけないという制約の範囲内で構成される。
【0101】
動作波比L0の実用上の限界もまた明確ではない。しかしL0<4での動作は、本発明にとっては現実的ではないと考えられる。その理由は、図2のプロット302によって示されているπ<L0<4の領域では成長因子が急速に変化するためである。成長因子は表面張力に依存する。表面張力は、温度及びインク組成の変化によって変化する。それに加えて、ジェット直径、ここでは実効ノズル直径と同一であると見なされる、も実際、これまでの解析で無視されてきた粘性効果を介して、温度変化と共に変化する。従って、余計な時間及び液滴分割長についての温度依存するばらつきを避けるため、本発明は、L0>4となるような刺激周波数f0を用いて機能する。
【0102】
図14は、S=1m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=84.6μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線341,342,343及び344は、それぞれN=64,32,16及び8での関係をプロットしている。
【0103】
図15は、S=2m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=84.6μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線345,346及び347は、それぞれN=16,8及び4での関係をプロットしている。
【0104】
図16は、S=1m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=42.3μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線348,349及び350は、それぞれN=32,16及び8での関係をプロットしている。
【0105】
図17は、S=2m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=42.3μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線351,352及び353は、それぞれN=12,8及び4での関係をプロットしている。
【0106】
図18は、S=3m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=42.3μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線354,355及び356は、それぞれN=8,6及び4での関係をプロットしている。
【0107】
図19は、S=1m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=21.15μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線357,358及び359は、それぞれN=24,16及び8での関係をプロットしている。
【0108】
図20は、S=2m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=21.15μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線360,361及び362は、それぞれN=8,6及び4での関係をプロットしている。
【0109】
図21は、S=3m/s、hw=15μmのターゲット層厚さ、及びLx=Ly=21.15μmの液体パターンを形成するのに必要な、波比に対するジェット速度のプロットを示している。曲線363,364及び365は、それぞれN=4,3及び2での関係をプロットしている。
【0110】
図14から図21は、処理速度S及びグレーレベル能力Nの限界を図示している。これらの限界は、ジェット速度を20m/s以下に制限することによって生じる。たとえば図14にプロットされている曲線341は、N=64の能力を有する、1インチあたりにつき300画素のセルが、処理速度S=1m/sにとって現実的ではないことを示している。プロット341は、L<4での動作が依然として可能ではあるが、先述したように、成長因子がL=π〜4の間で、表面張力及びジェット直径に対して急激に変化するため、4未満の波比でジェットの集合体を制御するのは難しいことを示している。なお表面張力及びジェット直径は、温度及び使用する液体の組成に依存する。
【0111】
300dpiの画素セル密度では、処理速度が2m/secと2倍になる場合、図15のプロット345で示されているように、N=16の能力さえも現実的ではなくなる。よって液体パターン塗布システムに、300セル/インチ品質で少なくとも3%ドットを実現することを求める場合には、実効ノズル間隔が300/インチ(Ly=84.6μm)であれば、そのシステムを1m/sec以下で動作させなければならない。図14及び図15のプロットは、最大である20/msecの速度によって課される限界は、より速い処理速度でより高品質のプリントを実現するには、より多くの1インチあたりのジェット数が必要であることを意味している、ことを示している。単純な塗布でかつ単位時間あたりでより多くの液滴が必要となる。また連続流の分割の物理によると、より高い液滴生成周波数は、非現実的である。
【0112】
図16、図17、及び図18は、600ジェット/インチ、Lx=42.3μmで、かつプロセス方向で600ジェット/インチ、Ly=42.3μmの実効アレイ密度のジェットを有する構成にとって必要なジェット速度をプロットしている。600パターンセル/インチでは、N=16を有する画像又は機能材料パターンは、品質の点では、300パターンセル/インチでの64液滴/セルパターンと少なくとも同等である。同様に、600パターンセル/インチでは、N=12のシステムは、300ハーフトーンセル/インチ(cpi)で2%ドットの再生と同等なパターン品質を供することができる。図16〜18から、300cpiレベルの品質での2%ドットでは、1m/secの処理速度を供することが可能だが、2m/secの処理速度を供することはできない。3m/secの処理速度では、600ジェット/インチの液滴放出体構成が、300cpiで6.7%ドットと同等である、N=4を実現できる。
【0113】
図19、図20、及び図21は、1200ジェット/インチ、Lx=21.15μmで、かつプロセス方向で1200ジェット/インチ、Ly=21.15μmの実効アレイ密度のジェットを有する構成にとって必要なジェット速度をプロットしている。1200パターンセル/インチでは、N=4を有する画像又は機能材料パターンは、品質の点では、300パターンセル/インチでの64液滴/セルパターンと少なくとも同等である。同様に、1200パターンセル/インチでは、N=3のシステムは、300ハーフトーンセル/インチ(cpi)で2%ドットの再生と同等なパターン品質を供することができる。図19〜21から、300cpiレベルの品質での2%ドットでは、3m/secの処理速度を供することさえも可能である。
【0114】
図22、図23、図24、及び図25は、密度がそれぞれ300cpi、300cpi、600cpi、及び1200cpiのパターンセルで多数の液滴を固着させる様子を図示している。図22に図示されている300cpiパターンについては、8の液滴154が、16の可能な液滴位置152の中から選ばれた8の位置に、プロセス方向Pに沿って塗布された。このN=16の能力を記述する別法は、プロセス方向でのアドレス指定能力Apを定義することである。
【0115】
【数20】

図22では、Ap=84.6μm/16=5.3μmである。図23は、300cpiの構成についての1セルあたりに16の液滴を固着させる様子を図示している。図23は、図22よりもはるかに小さなスケールで描かれている。図23は、液滴がすぐに表面全体に拡がらない場合、どのようにして十分な厚さの層が現れるのかを図示している。本発明の低粘性でかつ高表面張力の液体は、均一な厚さhwの層を形成するように拡がることが期待される。
【0116】
図24及び図25は、図23に図示されているものと全体の厚さが同一な液体層を固着させる様子を図示している。ただし、600cpiでは1セルあたり8の液滴が塗布され(図24)、又は1200cpiでは1セルあたり4の液滴が塗布されている(図25)点は異なる。図23、図24、及び図25は、ほぼ同一スケールで描かれている。また図23、図24、及び図25は、1インチあたりのジェット数を増大させた結果、塗布の均一性が改善されることを示している。プロセス方向での3つ全ての構成のアドレス指定能力Apは、Ap=5.3μmで同一である。しかしジェットアレイ方向Lyでの改善されたアドレス指定能力は、先述した大幅に向上した処理速度に加えて、層の塗布の均一性を改善する点で有利である。非常に高速でかつ高品質の材料塗布用CIJ装置の動作と両立する、この改善されたアドレス指定能力はこれまで認識されてこなかった。その理由は、システム動作はこれまで、ノズル構造の設計規則の観点から考慮されなかったためである。
【0117】
図26は、液滴放出体520を用いることによって、実効的なジェットアレイ密度の増加を実現させる方法を図示している。液滴放出体520はジェット110からなる複数の列を有し、その複数の列では、ジェットは互い違いになっている。図26の例では、2のジェット列が供されることで、アレイ方向Lyでの実効パターンセル密度は、単一列Lj内のジェット間隔の1/2となる。
【実施例1】
【0118】
図27は、本発明の代替実施例を図示している。図27では、複数の単位体積に相当する体積を有する液滴を発生させる熱刺激パルスは、パターン中から削除されている。連続液体ジェットの分割を熱パルスで同期することは、所定体積を有する液滴流を生成する能力を供するものとして知られている。単位体積V0の整数倍である体積mV0を有する液滴が生成されても良い。たとえば特許文献3を参照のこと。図27(a)-27(c)は、複数の異なる電気パルスシーケンスによって連続流が熱による刺激を受ける様子を図示している。エネルギーパルスシーケンスは、時間周期τ0の間での、ヒーター抵抗器の“オン”及び“オフ”の切り換えとして概略的に表されている。
【0119】
図27(a)では、刺激パルスシーケンスは、単位周期パルス610からなる。このパルス列によって刺激される連続ジェット流は、体積がすべてV0である液滴85に分割される。液滴85には、τ0の時間間隔が設けられ、かつ飛行経路に沿ってλ0の間隔が設けられている。図27(b)に図示されたエネルギーパルス列は、単位周期パルス610に加えて、副シーケンス612についての4τ0の時間周期、及び副シーケンス616についての3τ0の時間周期を生成するパルスの削除で構成される。刺激パルスが削除されることで、ジェット中の流体は、単位時間周期よりも長いパルスと両立する体積を有する液滴になる。つまり、副シーケンス612は、体積4V0を有する液滴86の分割を起こし、かつ副シーケンス616は、体積3V0を有する液滴87の分割を起こす。非常に高速でかつ高品質の材料塗布用CIJ装置の動作と両立する、代替的刺激パルスパターンの利用は、これまで認識されてこなかった。その理由は、システム動作はこれまで、ノズル構造の設計規則の観点から考慮されなかったためである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1a】自然に液滴に分割する連続液体流の側面図である。
【図1b】熱的に刺激されることで所定の体積を有する液滴に分割する連続液体流の側面図である。
【図2】空間波比に対するジェット流上の表面波の成長因子のプロットを示している。
【図3】液体の表面張力の3の値について、空間波比に対する最大表面波成長因子を表すプロットを示している。
【図4】表面張力、波比及びジェット直径の各異なる組み合わせについて、時間に対する表面波の規格化振幅を表すプロットを示している。
【図5】ファルラニ(E.Furlani)の参考文献から得られた熱刺激の場合での、ノズルから飛び出すジェットの初期表面張力のパーセント変化に対する液滴の分割時間のプロットを示している。
【図6】本発明に従った、熱的に刺激するエッジシュータースタイルの液滴放出体の側面図であって、液滴を帯電させ、偏向させ、及び筋になるように流す装置、並びに液滴が受像体へ塗布される様子を図示している。
【図7】本発明に従った、複数の液体流を有し、かつ液滴を帯電させ、偏向させ、及び筋になって流れる液滴を収集する装置を有する液滴放出体アレイの上部側面図である。
【図8】本発明に従った液滴塗布制御装置に係る構成要素の構成を示している。
【図9】本発明に従って、単一パターンセル内に16の液滴を塗布する様子を図示している。
【図10】本発明に従った、4の異なる数のグレーレベルについての、ターゲットである液体層の厚さに対する必要な単位液滴体積のプロットを示している。
【図11】本発明に従った、熱的刺激を発生させるのに印加される波比に対する、複数の単位液滴体積に必要な実効ノズル直径のプロットを示している。
【図12】製造に係る空間的設計規則の2つの値について、実効ノズル直径に対する単位液滴体積のばらつきを見積もったプロットを示している。
【図13】製造に係る空間的設計規則の2つの値について、実効ノズル直径に対する20μs後の刺激された表面波振幅のばらつきを見積もったプロットを示している。
【図14】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び84.6μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、1m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図15】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び84.6μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、2m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図16】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び42.3μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、1m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図17】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び42.3μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、2m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図18】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び42.3μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、3m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図19】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び21.15μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、1m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図20】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び21.15μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、2m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図21】複数のグレーレベルにとって必要な単位体積の液滴、及び21.15μmの実効ノズル間隔を有する液滴放出体アレイを用いるときに、厚さ15μmのターゲット層を、3m/secの処理速度で形成するのに必要な波比に対するジェット速度のプロットを示している。
【図22】本発明に従って、単一パターンセル内に可能な16の液滴のうちの8を塗布する様子を図示している。
【図23】本発明に従って、ターゲットである厚さの液体層を形成する84.6μmパターンを有するセルのマトリックスの各々の中に16の液滴が塗布される様子を図示している。
【図24】本発明に従って、ターゲットである厚さの液体層を形成する42.3μmパターンを有するセルのマトリックスの各々の中に8の液滴が塗布される様子を図示している。
【図25】本発明に従って、ターゲットである厚さの液体層を形成する21.15μmパターンを有するセルのマトリックスの各々の中に4の液滴が塗布される様子を図示している。
【図26】本発明に従った、2の交互にかみ合ったノズル列で構成されるジェットアレイを図示している。
【図27】本発明に従った、所定の単位体積の倍数の液滴となる、熱刺激パルスシーケンスを図示している。
【符号の説明】
【0121】
10 ヒーター抵抗素子用基板
11 加圧された液体供給チャンバ及び流体分離部分
12 絶縁層
14 保護層
16 相互接続導電層
18 抵抗ヒーター
20 下にあるMOS回路とのコンタクト
22 共通の流体の戻り導体
24 下にあるヒーター装置用MOS回路
28 流体分離装置
30 ノズル
32 ノズルプレート
40 加圧液体供給管
42 液滴放出システム支持体
44 断面から見た加圧液体吸入口
46 基板10に形成されたテンションメンバー
48 加圧液体供給チャンバ
50 液滴帯電装置用基板
53 絶縁層
54 絶縁層
55 帯電電極210に取り付けられたリード線
60 正に加圧された液体
62 液体の連続流
64 液体の連続流上で自然発生する表面波
66 自然に流体が分割される結果生じた液滴
70 液体の連続流上での刺激された表面波
76 分割長の操作
77 自然の分割長
80 所定体積の液滴
82 非帯電液滴
84 (複数の)誘導帯電液滴
85 所定単位体積V0を有する(複数の)液滴
86 mV0の体積を有する(複数の)液滴。ただしm=4
87 mV0の体積を有する(複数の)液滴。ただしm=3
88 mV0の体積を有する(複数の)液滴。ただしm=8
89 mV0の体積を有する(複数の)誘導帯電した液滴。ただしm=4
100 同期刺激を受けない流体流
110 所定体積の液滴流
120 帯電液滴及び帯電液滴からなる流体流
150 300cpiでのパターンセル
151 600cpiでのパターンセル
152 パターンセル内でアドレス指定可能な位置
153 1200cpiでのパターンセル
154 受像体に衝突した時の液滴
210 誘導帯電流62用の帯電電極
250 クーロン力を用いた偏向装置
252 有孔性導体からなる接地面型偏向装置
270 受像体への塗布に用いられない液滴を回収するガター
274 ガターによって戻される液体流路
276 ガターによって戻される液体流路へ負圧を供する真空源
400 入力データ源
410 制御装置
420 抵抗ヒーター装置
430 液滴放出ヘッド
500 複数のジェットすなわち液滴流を有する液滴放出体
520 複数の互い違いになったノズルアレイを有する液滴放出体
550 液滴塗布装置
610 液滴85を刺激する熱パルス
612 液滴86を刺激する削除された熱パルス
615 液滴88を刺激する削除された熱パルス
616 液滴87を刺激する削除された熱パルス
【図1(a)】

【図1(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受像基板上にパターンを有する液体層を固着させる液滴塗布装置であって:
液滴放出体;
抵抗ヒーター装置;及び
相対運動を起こす装置;
を有し、
前記液滴放出体は、公称流速vj0を有する複数の連続した液体流を放出する1次元アレイのノズルへ進むことができる正圧の液体を含み、
前記複数のノズルは、実効ノズル径D0を有し、かつ実効ノズル間隔がLyであるアレイ方向に向かって延び、
前記抵抗ヒーター装置は、前記複数の連続した液体流を所定の公称液滴体積V0を有する複数の液滴流に分割させるのに十分な周期τ0の熱エネルギーパルスを、前記の複数のノズルへ進むことができる液体へ送るように備えられ、
前記相対運動を起こす装置は、前記液滴放出体と前記受像基板とを相互に対して、処理方向に処理速度Sで動かすように備えられ、それにより、個々の液滴は、前記受像基板に対して、アドレス指定能力Ap0Sでのアドレス指定が可能となり、
前記実効的ノズル間隔は85μm未満で、
前記処理速度Sは少なくとも1m/secで、
前記処理方向における前記受像基板での個々の液滴の前記アドレス指定能力は、6μm未満である、
液滴塗布装置。
【請求項2】
前記液体はインクで、
前記液滴放出体は連続式インクジェットプリントヘッドで、かつ
パターンを有する液体層が像である、
請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項3】
前記相対運動を起こす装置が、前記パターンを有する液体層の固着中に、前記プロセス方向を前記処理速度で動く、請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項4】
前記公称流速が、少なくとも10m/secで、かつ20m/sec未満である、つまり10m/sec<vj0<20m/secである、請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項5】
前記実効ノズル直径が、6μmよりも長く、かつ13μmよりも短い、つまり6μm<D0<13μmである、請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項6】
前記所定の公称液滴体積V0は、外乱波長λ00νj0内にある前記液体流の体積にほぼ等しく、かつ
前記外乱波長と前記ノズル直径との波比L0は、4よりも大きくて7未満である、つまり、L00/D0で、4<L0<7である、
請求項5に記載の液滴塗布装置。
【請求項7】
前記受像基板上に固着された前記パターンを有する液体層が、所定の最大液体層厚さhwを有し、かつ
前記所定の最大液体層厚さhwは、5μmよりも厚くて20μmよりも薄い、つまり、5μm <hw <20μmである、
請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項8】
前記プロセス方向における単位パターン長Lxが、前記実効ノズル間隔以下でかつ前記プロセス方向でのアドレス指定能力とグレーレベルを表す整数値との積以上の長さとなる、つまり、NAp≦Lx≦Lyとなるように予め設定され、
前記パターンを有する液体層が、Lx×Lyの大きさを有する長方形パターンセルのマトリックスとして形成され、
前記プロセス方向でのアドレス指定能力が6μm未満で、かつ
前記グレーレベルを表す整数Nが15以上である、
請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項9】
前記受像基板上に固着された前記パターンを有する液体層が、所定の最大液体層厚さhw、及び、長方形パターン内に固着される、hwに対応する最大パターンセル液体体積Vm= hwLxLyを有し、かつ
前記公称液滴体積は、前記最大パターンセル液体体積を、前記グレーレベルを表す整数で除した値にほぼ等しい、つまりV0≒Vm/Nである、
請求項8に記載の液滴塗布装置。
【請求項10】
単位パターン長時間tx=Lx/Sの間に、整数であるM+Nの液滴が各液滴流内に生成される、つまり(M+N)τ0=Lx/Sで、
M≧1で、かつ最大でNの液滴が、前記単位パターン長時間内に、液滴流から前記受像基板上に塗布される、
請求項8に記載の液滴塗布装置。
【請求項11】
前記実効ノズル間隔Lyが43μm未満で、
前記プロセス方向における単位パターン長Lxが、前記実効ノズル間隔以下でかつ前記プロセス方向でのアドレス指定能力とグレーレベルを表す整数値との積以上の長さとなる、つまり、NAp≦Lx≦Lyとなるように予め設定され、
前記パターンを有する液体層が、Lx×Lyの大きさを有する長方形パターンセルのマトリックスとして形成され、
前記プロセス方向でのアドレス指定能力が6μm未満で、かつ
前記グレーレベルを表す整数Nが4以上である、
請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項12】
前記1次元アレイのノズルが、前記実効ノズル間隔Lyの2倍の間隔で設けられている2列のノズル列を有し、かつ
前記2列のノズル列は、互いに互い違いになっている、
請求項11に記載の液滴塗布装置。
【請求項13】
前記実効ノズル間隔Lyが22μm未満で、
前記プロセス方向における単位パターン長Lxが、前記実効ノズル間隔以下でかつ前記プロセス方向でのアドレス指定能力とグレーレベルを表す整数値との積以上の長さとなる、つまり、NAp≦Lx≦Lyとなるように予め設定され、
前記パターンを有する液体層が、Lx×Lyの大きさを有する長方形パターンセルのマトリックスとして形成され、
前記プロセス方向でのアドレス指定能力が6μm未満で、かつ
前記グレーレベルを表す整数Nが2以上である、
請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項14】
前記1次元アレイのノズルが、前記実効ノズル間隔Lyの2倍の間隔で設けられている2列のノズル列を有し、かつ
前記2列のノズル列は、互いに互い違いになっている、
請求項13に記載の液滴塗布装置。
【請求項15】
前記液体の所定体積が、単位体積V0の液滴、及び、前記単位体積の整数倍の体積mV0を有する液滴を有し、
mは1よりも大きい整数である、
請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項16】
所定公称液滴体積V0を有する前記複数の液滴流のうちの少なくとも1の液滴を誘導帯電させるように備えられた帯電装置であって、前記少なくとも1の液滴が初期飛行軌道を有する帯電装置;及び
前記初期飛行軌道を横断する方向で、前記の誘導帯電した液滴にクーロン力を発生させることで、前記の誘導帯電した液滴が偏向した飛行軌道を追随する、ように備えられた電場偏向装置;
をさらに有する、請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項17】
受像基板上にパターンを有する液体層を固着させる液滴塗布装置であって:
液滴放出体;
抵抗ヒーター装置;及び
相対運動を起こす装置;
を有し、
前記液滴放出体は、公称流速vj0を有する複数の連続した液体流を放出する1次元アレイのノズルへ進むことができる正圧の液体を含み、
前記複数のノズルは、実効ノズル径D0を有し、かつ実効ノズル間隔がLyであるアレイ方向に向かって延び、
前記抵抗ヒーター装置は、前記複数の連続した液体流を所定の公称液滴体積V0を有する複数の液滴流に分割させるのに十分な周期τ0の熱エネルギーパルスを、前記の複数のノズルへ進むことができる液体へ送るように備えられ、
前記相対運動を起こす装置は、前記液滴放出体と前記受像基板とを相互に対して、処理方向に処理速度Sで動かすように備えられ、それにより、個々の液滴は、前記受像基板に対して、アドレス指定能力Ap0Sでのアドレス指定が可能となり、
前記実効的ノズル間隔は43μm未満で、
前記処理速度Sは少なくとも2m/secで、
前記処理方向における前記受像基板での個々の液滴の前記アドレス指定能力は、6μm未満である、
液滴塗布装置。
【請求項18】
前記公称流速が、少なくとも12m/secで、かつ20m/sec未満である、つまり12m/sec<vj0<20m/secである、請求項17に記載の液滴塗布装置。
【請求項19】
前記実効ノズル直径が、6μmよりも長く、かつ10μmよりも短い、つまり6μm<D0<10μmである、請求項17に記載の液滴塗布装置。
【請求項20】
前記プロセス方向における単位パターン長Lxが、前記実効ノズル間隔以下でかつ前記プロセス方向でのアドレス指定能力とグレーレベルを表す整数値との積以上の長さとなる、つまり、NAp≦Lx≦Lyとなるように予め設定され、
前記パターンを有する液体層が、Lx×Lyの大きさを有する長方形パターンセルのマトリックスとして形成され、かつ
前記グレーレベルを表す整数Nが4以上である、
請求項17に記載の液滴塗布装置。
【請求項21】
前記実効ノズル間隔Lyが23μm未満で、
前記プロセス方向における単位パターン長Lxが、前記実効ノズル間隔以下でかつ前記プロセス方向でのアドレス指定能力とグレーレベルを表す整数値との積以上の長さとなる、つまり、NAp≦Lx≦Lyとなるように予め設定され、
前記パターンを有する液体層が、Lx×Lyの大きさを有する長方形パターンセルのマトリックスとして形成され、
前記プロセス方向でのアドレス指定能力が5μm未満で、かつ
前記グレーレベルを表す整数Nが2以上である、
請求項17に記載の液滴塗布装置。
【請求項22】
前記実効ノズル直径が、6μmよりも長く、かつ8μmよりも短い、つまり6μm<D0<8μmである、請求項21に記載の液滴塗布装置。
【請求項23】
前記処理速度Sが、少なくとも3m/secである。請求項21に記載の液滴塗布装置。
【請求項24】
前記受像基板上に固着された前記パターンを有する液体層が、所定の最大液体層厚さhwを有し、かつ
前記所定の最大液体層厚さhwは、5μmよりも厚くて15μmよりも薄い、つまり、5μm <hw <15μmである、
請求項23に記載の液滴塗布装置。
【請求項25】
前記液体の所定体積が、単位体積V0の液滴、及び、前記単位体積の整数倍の体積mV0を有する液滴を有し、
mは1よりも大きい整数である、
請求項17に記載の液滴塗布装置。
【請求項26】
所定公称液滴体積V0を有する前記複数の液滴流のうちの少なくとも1の液滴を誘導帯電させるように備えられた帯電装置であって、前記少なくとも1の液滴が初期飛行軌道を有する帯電装置;及び
前記初期飛行軌道を横断する方向で、前記の誘導帯電した液滴にクーロン力を発生させることで、前記の誘導帯電した液滴が偏向した飛行軌道を追随する、ように備えられた電場偏向装置;
をさらに有する、請求項17に記載の液滴塗布装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27(a)】
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【図27(b)】
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【図27(c)】
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【公表番号】特表2008−540118(P2008−540118A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512395(P2008−512395)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/018681
【国際公開番号】WO2006/124747
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】