説明

高速無線測定システム

【課題】 トンネル壁面や路側帯付近にセンサを設置し、該センサのデータを高速で通過する車両で受信する高速通信システムを提供する。
【解決手段】 所定の測定範囲において測定値がリニアな電圧として取り出せるように設定した複数のセンサと、これらセンサの出力を送信データとして送信し、アンテナに接続され、CPUを内蔵する複数の送信機と、この送信機からの送信電波を受信する受信機で高速無線測定システムを構成し、前記送信機は、自身のIDデータと前記複数のセンサからCPUが取得したデータを一括して送信すること、前記複数の送信機に接続されたアンテナとアンテナの中間点においては、前記受信機が前記送信データをデータとして取り込まないように前記送信機の出力を設定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルや道路など特定軌道に沿って設置された異なるタイプのセンサから発射する無線で搬送するデータを、例えば、時速300kmで受信できる高速無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非接触ICカードなどでは輻輳制御機能を使って複数タグが同一領域に入っても衝突を防止して問題を回避していた。前記輻輳制御機能には読み取り装置に用意されるアルゴリズムを使って論理的に認識の順番を決めたり、パルススロット方式で早い者勝ちで有限数のスロットに割り当てたりしていた。
【0003】
例えば、識別無線タグにおいて、コイルとコンデンサからなるLC共振回路と通信を行うとき複数の信号から混信せず個別の信号を認識させる衝突防止手段および情報記憶手段と制御手段との構成において、識別無線タグに信号を識別する識別衝突防止手段を設けているため、情報記憶手段に記憶された識別データを混信させることなく識別無線タグ読み取り装置に送信することが出来るので、多数の識別できる識別無線タグを形成する技術が知られている。(特許文献1)
【0004】
また、リーダライタとICカードとの通信において、衝突を防止すると共に、通信の効率化、高速化を図る目的で、ICカードを識別するために、メモリに個別情報及び当該ICカードの属性を示す属性情報を記憶し、制御手段は、前記メモリに記憶された前記ICカードの個別情報及び属性情報を前記通信の衝突のための識別子として利用する技術も知られている。(特許文献2)
【0005】
更に、荷物の物流過程における環境からの影響を簡単に確認し、品質保証を行う目的で、中央演算装置CPU、データキャリアに複数のセンサ、A/D変換手段、メモリ手段、リアルタイムクロック、赤外線データ通信インターフェースを使い、前記複数のセンサからの出力をシグナルコンディショナを介して前記A/D変換手段によりデジタル信号に変換してから前記CPUでデータ処理を行い、必要に応じて前記メモリ手段からデータを読み出す技術も知られている。(特許文献3)
【0006】
しかし、上記のいずれの特許文献1〜3においても、センサを接続したデータキャリアからの高速読み出し技術(例えば時速300km)についての開示や示唆は無い。
【特許文献1】特開2001−134729号公報
【特許文献1】特開2005−084926号公報
【特許文献1】特開2000−302211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、高速通信、例えば新幹線のように時速300km以上のスピードで走行する車両に読み取り装置を搭載し、トンネル内に設けた発信装置からの電波を受信するような場合には、前記発信装置が高速受信に必要な電波を出していたのでは輻輳制御に時間がかかり、前記発信装置からのデータを確実に受信することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、センサで測定したデータを高速無線通信するために、所定の測定範囲において測定値がリニアな電圧として取り出せるように設定した複数のセンサと、これらセンサの出力を送信データとして送信し、アンテナに接続され、CPUを内蔵する複数の送信機と、この送信機からの送信電波を受信する受信機で構成された高速無線測定システムであって、前記送信機は、自身のIDデータと前記複数のセンサからCPUが取得したデータを一括して送信すること、前記複数の送信機に接続されたアンテナとアンテナの中間点においては、前記受信機が前記送信データをデータとして取り込まないように前記送信機の出力を設定するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高速無線測定システムは、トンネルや高速道路などの軌道が固定されている場所において、複数のセンサからのデータを送信機でバンドルし、これらバンドルデータを前記送信機のIDデータと一緒にふたつのアンテナから送信することにより確実に高速無線通信出来るので、例えば時速300kmで走行する新幹線や時速150kmで走行する高速道路点検車両などに受信機を設置することによってトンネルや高速道路のメンテナンスデータの収集と異常箇所へのフィードバックが短時間で実施出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一機能を有するものは同一の符号とし、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
図1は、高速道路等のトンネルにおけるデータ測定の設置例を示している。トンネル内壁9には、トンネル内壁亀裂10を挟んで鉄板2とプローブ3が取り付けられ、プローブ3から発信する電波で鉄板2に渦電流が発生し、該渦電流をプローブ3で検出し、送信機1にてデータ処理することにより鉄板2とプローブ3の距離を測定し、距離データとして送信機1内部にキャッシュされ、送信機1の送信タイミングに合わせて送信アンテナ4から無線送信されている。
【0012】
前記距離データを搬送する無線電波は、測定器搭載車両5が通過する時に受信アンテナ6から受信機7にて受信され、受信データとしてPC8に送られてデータ処理される。
【0013】
図2は、送信機1の機能ブロック図である。ここでは、鉄板2に発生した渦電流をプローブ3で検出し、コネクタ3aを経由して送信側CPU11に測定データを送出している。コネクタ3aには、プローブ3からの測定データ以外に、3つの端子を持っていて、この3ビット端子をクローズ(接地)あるいはオープン(開放)することにより、3ビット全てオープン以外の7通りのプローブIDを生成している。前記プローブIDを送信側CPU11が検出することによりあらかじめ送信側CPU11にインストールしてあるプローブのプロファイルを使って送信機1の出力データレベルにおいてリニアに補正することが可能となっている。
【0014】
これにより、渦電流センサだけでなく、異なる種類のセンサ、例えば温度センサ、湿度センサ、水位センサなどを送信側CPU11に接続しても、必要な校正(例えばゼロ点のキャリブレーションなど)が適切に行われるので、受信機7側では余計な計算をしなくとも高速な処理が可能となるので、例えば送信機1側にアラーム表示を設けることにより、送信側CPU11に設定した基準値を超えるようなデータを検出したら、前記アラーム表示を設定する信号を送信することにより前記基準値を超えるデータを送信した送信機1に目印を付けることも可能である。
【0015】
送信側CPU11にはメモリ12が接続されており、複数プローブ3からのデータを一時的に保存しておいて、全てのデータが揃った段階で送信側CPU11からまとめて送信RF回路13にデータを一括送出することにより、個々のプローブ3からのデータを単独で送信する場合に較べて全てのセンサからのデータ送信を完了するまでのサイクル所要時間が短くなっている。
【0016】
ここで、メモリ12はキャッシュメモリとしての利用以外に、複数データを蓄積することにより、送信側CPU11で加工すれば、例えば温度であれば所定時間(例えば3時間)毎の平均温度や最高/最低温度などを送信することも可能である。
【0017】
また、図2では送信RF回路13とアンテナ4は実線ではひとつずつしか記載していないが、点線で表示したように、これを複数ペアにして、異なる周波数で同時発信することにより様々な電波環境、あるいは測定器搭載車両5スピードに対応することが出来るようになる。
【0018】
つまり、測定器搭載車両5のスピードが200kmを超えて、受信のエラーレートが高くなる場合においてでも、複数の搬送波周波数を使えば、送信機1に前記複数の搬送波周波数に合わせた各一対のアンテナとRF回路を取り付けることにより、周波数ホッピングを使って同時に複数周波数で同一信号を送信することが考えられる。こうすれば、複数同時発信するアンテナから受信した複数データを照合することにより正しいデータが抽出出来るので、測定器搭載車両が例えば300km以上の高速で走行しても確実にデータを受信することができるようになる。
【0019】
図3は、受信機7の機能ブロック図である。アンテナ6で受信した電波を受信RF回路14で復調して、受信側CPU15で信号を中間処理し、ケーブル接続したPC8でデータ処理および画面表示する流れである。
【0020】
実線ではアンテナ6はひとつしか図示していないが、点線で示すアンテナ6のように複数のアンテナと受信RF回路14を備えることにより受信の正確度を高めることが出来る。
【0021】
つまり、測定器搭載車両5のスピードが200kmを超えて、受信のエラーレートが高くなる場合においてでも、複数のアンテナを使えば、送信機1のアンテナ4から発射される電波を複数回受信するチャンスが生まれるので、より受信する確率が高くなる。また、前述のように、送信側で複数の搬送波周波数を使った周波数ホッピングを使えば近傍スプリアスなどの影響も低減できるので更に受信の正確度が高まる。
【0022】
上記において、受信側CPU15では信号の中間処理のみで、データ内容はスルーで通していたが、受信側メモリ16に例えばフラッシュメモリーなどを使って一時保存しておいて、あとからPC8に接続して受信側メモリ16の保存データをPC8に送信する方法も考えられる。
【0023】
また、各プローブ3などのセンサからの情報を送信側メモリ12に一定量(例えば100回分)蓄積して、その中の最大値、最小値などを送信側CPU11で計算しておいて、定期的にこれらのデータも受信機7に送信することも考えられる。これは、例えば、高速巡航でデータを採取した後に、異常が見られたプローブ3などの特定センサの詳細データを取得することにより高度な調査が出来るようにするためである。
【0024】
上記の例では高速道路のトンネルを想定しているが、これは鉄道のトンネルでも同様であるし、またトンネルに限定せず、高速道路や一般道の路側領域に送信機やセンサを設置しても同様のシステムが使える。
【0025】
更に、上記においては、受信機7が送信機1からのデータを受信して、それらデータを受信側CPU15で分析した結果、異常な箇所を特定していたが、あらかじめ送信側CPU11に判断基準データを備えさせることにより、各送信機1で異常判断をさせることも考えられる。この場合、前記判断基準データは送信機1を設置する前にあらかじめ送信側CPU11あるいは送信側メモリ12に設定しておいても良いし、設置後に送信機1を使ってデータ送信しても良い。
【0026】
また、上記において、センサを取り付ける場所がトンネルでは無く、マンションの亀裂部などに取り付けて定期的な計測を行うことも考えられる。この場合には、指向性の高いアンテナを使えば、高い位置にある亀裂の計測データを取得することが容易になるし、マンションのベランダ部にある亀裂を測定する場合でも、回転手段を持たせたアンテナだけを上から下に昇降させるだけで計測が可能となり、いちいち係員がマンションの部屋に立ち入る必要も無いので、住民のプライバシーを損なうことなく亀裂測定を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の高速無線測定システムを鉄道や高速道路のトンネルあるいは高速道路の路側帯に敷設することにより、トンネル内の亀裂や温度湿度などを定期的に管理することができるので、不測の事故が未然に防げるし、鉄道のトンネルにおいてはより高速な新幹線あるいはリニアモーターによる高速鉄道車両の運行を安全に実施できるので高速輸送システムの発展に寄与出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】高速道路等のトンネルにおけるデータ測定の設置例
【図2】送信機の機能ブロック図
【図3】受信機の機能ブロック図
【符号の説明】
【0029】
1…送信機、 2…鉄板、 3…プローブ、 3a…コネクタ、4…送信アンテナ、 5…測定器搭載車両、 6…受信アンテナ、 7…受信機、 8…PC、 9…トンネル壁面、 10…トンネル壁面亀裂、 11…送信側CPU、 12…送信側メモリ、 13…送信RF回路、14…受信RF回路、15…受信側CPU、16…受信側メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定範囲において測定値がリニアな電圧として取り出せるように設定した複数のセンサと、これらセンサの出力を送信データとして送信し、アンテナに接続され、CPUを内蔵する複数の送信機と、この送信機からの送信電波を受信する受信機で構成された高速無線測定システムであって、前記送信機は、自身のIDデータと前記複数のセンサからCPUが取得したデータを一括して送信すること、前記複数の送信機に接続されたアンテナとアンテナの中間点においては、前記受信機が前記送信データをデータとして取り込まないように前記送信機の出力を設定することを特徴とする高速無線測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の高速無線測定システムにおいて、前記送信機のCPUがセンサの種類を判別する判別手段を持ち、この判別手段によって前記送信機に内蔵されたCPU内部にあらかじめ組み込まれたファイームウェアによって前記センサからのデータ処理のキャリブレーションを実行することを特徴とする高速無線測定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate