説明

高速製造された3次元物体のための表面処理方法

表面処理された3次元物体を形成するための方法(10)であって、高速製造された3次元物体の外表面を平滑化する溶剤(16)と、溶剤によって平滑化された外表面の少なくとも一部をブラスト加工する媒体(22)と、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
本発明は、概して、試作品、工具、および量産部品等の3次元(3D)物体の高速製造に関する。特に、本発明は、高速製造された3D物体を表面処理する方法に関する。
【0002】
3D物体の製造および試験は、一般に、幅広い範囲の産業において、新しい製品、機械、およびプロセスを開発するために使用される。3D物体を構築するための種々の高速製造技術が存在する。それぞれの技術は、コンピュータ制御下において、幾何学的なコンピュータモデルから物体を開発するものである。これらの技術では、概して、所望の物体のデジタル表現(例えば、コンピュータ支援設計(CAD))を水平層にスライスまたは分割し、次いで、材料を繰り返し供給することによって、層毎に物体を構築する。本明細書における「高速製造」とは、1つ以上の、層基材の添加技術によって3D物体を構築することを指す。高速製造技術との例として、溶解蒸着成型、インクジェット噴射、選択的レーザ焼結、および立体造形プロセスが挙げられる。
【0003】
高速製造技術によって構築された3D物体は、概して、特に、湾曲または角度を成す外表面において、「階段状」の外観を呈する。階段状の印象は、角縁の外形を有する横断面形状の積層によって生じ、層厚が増加すると、より顕著となる。階段状の印象は、概して、3D物体の強度に影響を与えない一方、所望の美的品質を著しく低減し得る。種々の研磨技術を使用して、高速製造された3D物体の表面仕上げが改良されてきた。しかしながら、高速製造された3D物体に対して美的に満足できる表面を提供する表面処理技術は継続的に求められている。
[概要]
本発明は、表面処理された3D物体を形成するための方法に関する。本方法は、溶剤を用いた平滑化工程によって、高速製造された3D物体の外表面を平滑化するステップと、溶剤によって平滑化された外表面の少なくとも一部をメディア(媒体)を用いてブラスティング(ブラスト加工)するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】表面処理された3D物体を形成するための方法のフロー図である。
【図2】蒸気による平滑化プロセスを経た後の3D物体の写真である。3D物体は、平滑かつ光沢のある外表面を有するとともに、目に見える表面欠陥を含む。
【図3】メディア(媒体)を用いたブラスト加工プロセスを経た後の3D物体の写真である。3D物体は、平滑かつ艶のある外表面を有し、表面欠陥はもはや視認できない。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1は、平滑かつ艶のある外表面を有する3D物体を形成するための方法10のフロー図である。方法10は、ステップ12−24を含む。最初に、高速製造技術によって、3D物体の少なくとも一部を構築するステップを伴う(ステップ12)。ステップ12の高速製造技術の好適な例として、層基材の添加技術が挙げられる。例えば、溶解蒸着成型、インクジェット噴射、選択的レーザ焼結、立体造形、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、3D物体全体が、高速製造技術によって構築される。
【0006】
一実施形態では、高速製造技術は、3D物体のデジタル表現(例えば、STLファイル)を水平な層にスライスするステップを伴う。次いで、ラスタまたはベクトルパスが、3D物体を構築するための水平な層から生成されてもよく、高速製造技術に準じて構築材料が層毎に繰り返し供給されてもよい。使用される構築材料の種類は、3D物体を構築するために使用される特定の高速製造システムに依存してもよい。また、高速製造技術は、単一の構築プロセスまたは複数の構築プロセスから構成されても良い。
【0007】
蒸着プロセス(例えば、溶解蒸着成型およびインクジェット噴射)を伴う高速製造技術が使用される際、3D物体の張り出し部分または空洞は、支持構造によって支持されてもよい。支持構造は、構築材料が蒸着されるのと同一の高速製造技術およびシステムを利用して構築されてもよい。また、構築プロセスの完了後に除去されてもよい。3D物体のデジタル表現が、水平な層にスライスされる際、支持構造の層もまた、支持材料を繰り返し供給することによって、層毎に、生成および構築されてもよい。
【0008】
高速製造プロセスの完了の際、高速製造された3D物体において、平滑化プロセスの前の事前プロセスを1つ以上実施してもよい(ステップ14)。事前プロセスの好適な例として、支持構造の除去、複数の物体の接着、3D物体の外表面への染料または着色剤の添加(平滑化ステップの際、3D物体の表面近傍材料内に浸透させてもよい)、事前の清浄ステップ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0009】
次いで、高速製造された3D物体は、溶剤を用いた平滑化プロセス(ステップ16)を経て、3D物体の外表面の少なくとも一部が、溶剤の使用によって平滑化される。前述のように、高速製造技術によって3D物体が構築された後、その3D物体は、階段状の外観を示し得る。階段状の外観は、角縁外形を有する断面(輪切り面)を積層することに起因する。溶剤を用いた平滑化プロセスは、3D物体の外表面の少なくとも一部を平滑化する一方、3D物体の形状および微細的な特徴は実質的に保持する。平滑化プロセスによって、3D物体の外表面は、平滑かつ光沢のある状態に仕上がる。階段状の外観形状は、低減するかまたは除去される。
【0010】
平滑化プロセスは、まず、架台から3D物体を支持するステップを含む。望ましくは、架台と3D物体の外表面との接触は最小限に抑えられると良い。3D物体の外表面と異物成分との間の接点では、平滑化プロセスの際、その外表面において局所的に欠陥が形成される。したがって、3D物体の外表面上の接触面積を減少させることは、欠陥がもたらされる強度(激しさ、intensities)を抑えることにつながる。
【0011】
平滑化システムにおいて3D物体を支持するための好適な技術は、Priedeman, Jr.らの米国特許出願公開第2005/0173838号に開示される。加えて、3D物体を支持するための特に好適な技術は、単一のフック状部材から3D物体を懸架することを含む。その技術では、懸架された3D物体の平衡が保たれる。また、フック状部材と3D物体の外表面との間においては接点は単一のものとなる。代替として、複雑な3D物体の場合、複数のフック状部材が使用されて3D物体が吊り式で懸架されてもよい。
【0012】
ステップ16の溶剤を用いた平滑化プロセスの特に好適な例では、高速製造された3D物体を、蒸気を用いた平滑化システム(蒸気平滑化システム)によって蒸気により平滑化することを含む。蒸気平滑化システムは、溶剤蒸気を含む。溶剤蒸気は、3D物体における露出した外表面領域を平滑化し、それによって、階段状の印象を低減または排除するものである。蒸気平滑化に使用される溶剤としては、3D物体を形成するために使用される構築材料と相溶性のあるものが選択されることが望まれる。蒸気平滑化に使用される溶剤の好適な例として、塩化メチレン、臭化n−プロピル、ペルクロロエチレン、トリクロロエチレン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、キシレン、トルエン、水、アルコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
ステップ16において使用するための蒸気平滑化システムの好適な例は、Priedemanらの米国特許出願第2005/0173838号に開示される。蒸気平滑化システムは、望ましくは、密閉されたチャンバ内で、3D物体を溶剤蒸気に暴露するよう機能する。チャンバは、溶剤の沸点以上に維持されてもよい。溶剤は、蒸気の状態の間、3D物体に影響を及ぼさない。しかしながら、3D物体は、最初は、実質的には溶剤の沸点を下回る温度(例えば、常温)であるため、溶剤は、3D物体の外表面上に凝結する。凝結した溶剤は、露出した3D物体の外表面に浸透する。それによって、露出した外表面における材料が溶解する。これにより、材料の還流および分散が外表面のより広い面積にわたって生じる。3D物体が、チャンバ温度まで加熱されると、凝結していた溶剤は再蒸発する。分散した材料は、新しい分散位置に残留する。そして、光沢のある仕上がり状態を有して実質的に平滑な表面が形成される。
【0014】
蒸気平滑化は、いくつかの相互作用要因に依存する。例えば、3D物体が凝結した溶剤に曝される暴露時間、使用される溶剤の種類と濃度、3D物体に使用される構築材料、3D物体の外表面面積、および3D物体の特徴である精細さ等である。したがって、蒸気平滑化プロセスの持続時間は、変化させてもよい。蒸気平滑化プロセスの持続時間の好適な例は、約10秒から約5分の範囲である。特に好適な例は、約30秒から約1分の範囲である。
【0015】
一実施形態では、3D物体は、蒸気平滑化プロセスに先立って、(例えば、常温を下回る温度に)冷却されてもよい。これによって、溶剤蒸気と3D物体との間の温度差を増大させ、蒸気平滑化プロセス中の溶剤凝結速度を増進させる。本実施形態では、低沸点を有する溶剤(例えば、塩化メチレン)の使用が特に好適である。また、本実施形態は、蒸気平滑化プロセスの再現性を向上させる。例えば、沸点が約40℃(104°F)である塩化メチレンは、周囲温度16℃(60°F)に維持された3D物体に対して、その3D物体が周囲温度27°C(80°F)に維持された場合と比較して、蒸気平滑化に関する異なる結果を提供する。より低い温度(例えば、0°C(32°F)から4°C(40°F))に3D物体を冷却することによって、蒸気平滑化に関する結果の一貫性および予測性が向上する。
【0016】
また、蒸気平滑化プロセスは、複数の連続的な蒸気平滑化ステップにより構成されてもよい。例えば、最初の蒸気平滑化プロセスの後、3D物体を検査し、平滑化の程度を判断してもよい。追加的な平滑化プロセスが必要な場合、平滑化が不十分な3D物体は、追加的な蒸気平滑化プロセスにて1回以上処理されても良い。蒸気平滑化プロセスの完了の際、平滑化された3D物体は冷却および乾燥されてもよい。
【0017】
ステップ16の代替実施形態では、溶剤を用いた平滑化プロセスは、高速製造された3D物体を液体溶剤を含む槽内に浸漬させるまたは沈めるステップを含んでも良い。あるいは高速製造された3D物体に液体溶剤を噴霧するステップを含んでもよい。好適な溶剤の例として、蒸気平滑化プロセスに関して上述したものが挙げられる。使用される溶剤は、望ましくは、3D物体を形成するために使用される構築材料と相溶性のあるものが選択される。液体溶剤は、露出した3D物体の外表面に浸透する。それによって、露出した外表面における材料が溶解する。これにより、材料の還流および分散が外表面のより広い面積にわたって生じる。3D物体は、望ましくは、十分な持続時間の間、液体溶剤に暴露され、外表面の少なくとも一部に平滑かつ光沢のある仕上げ面が形成される。次いで、3D物体を乾燥させ(例えば、自然乾燥)、平滑化された外表面から溶剤を蒸発させる。それにより、さらなる平滑化(溶剤を用いた平滑化)を防止する。
【0018】
一実施形態では、溶剤を用いた平滑化プロセスの際、3D物体の外表面の鏡面反射率が監視される。表面の鏡面反射率とは、単一入射方向からの光線が単一出射方向に反射する表面におけるその鏡面のような反射性を示す。溶剤を用いた平滑化プロセスに先立って、3D物体の外表面は粗く、それによって、単一入射方向からの光線が、広範囲の出射方向に反射される広範性の反射性を示す。しかしながら、平滑化プロセスは、外表面の光沢度を増大させ、それによって、外表面の鏡面反射率を増加させる。
【0019】
外表面の鏡面反射率は、平滑化プロセスのサイクルの間、鏡面反射率を監視する種々の鏡面反射率監視システムによって監視されてもよい。代替として、リアルタイム監視を妨害しない平滑化システム(例えば、蒸気平滑化システム)の場合、監視は、平滑化プロセスの間中行われてもよい。一実施形態では、鏡面反射率は、3D物体の外表面の1つ以上の場所において監視される。代替として、または加えて、鏡面反射率の均一性が、3D物体全体にわたって監視されてもよい。外表面の鏡面反射率が、平滑化プロセスに関する所定のレベルに到達すると、平滑化プロセスは中断されても良く、平滑化された3D物体は乾燥されてもよい。
【0020】
溶剤を用いた上述の平滑化プロセスは、3D物体の外表面に対し、平滑かつ光沢のある仕上げを提供する。加えて、溶剤を用いた平滑化プロセスはまた、3D物体の外表面における気孔率を低下させる。方法10におけるステップ12の構築プロセスの間に、小径・多孔性の領域が、3D物体の層内に形成され得る。そのような領域が形成されることは、3D物体の物理的特性に不利益となる可能性がある。しかしながら、溶剤による平滑化作用の間の表面材料の溶解および還流によって、外表面における3D物体の気孔率が低下する。このことは、3D物体の構造上の完全性および密封特性の向上につながる。
【0021】
対照的に、研磨、および、媒体による直接ブラスト加工等の他の平滑化技術では、光沢仕上げはもたらされず、3D物体の気孔率は低下しない。加えて、手動研磨または電動研磨等の平滑化技術は、時間がかかり、定期的に監視されない場合、材料が過剰に除去される可能性がある(例えば、内部ラスタパターンを露出するための周縁層の研磨の場合)。粉砕された媒体(例えば、酸化アルミニウムおよびガラス玉)による直接的なブラスト加工は、高速な表面平滑化を提供し得る。しかしながら、外表面から階段状の外観を除去するために必要なブラスト加工が継続することもまた、3D物体の周縁層を除去し、微細的な特徴を破壊する可能性がある。加えて、溶剤を用いた平滑化プロセスと異なり、研磨および直接的なブラスト加工は、3D物体の内部特徴(例えば、空洞)にアクセスするために好適ではなく、不完全かつ指向性の(一方向の)平滑化によって、美的に満足できない表面仕上げをもたらし得る。
【0022】
平滑化プロセスの完了後、平滑化された3D物体は、次いで、表面欠陥に関して検査されてもよい(ステップ18)。平滑かつ光沢のある外表面は、種々の要因から1つ以上の表面欠陥を被る場合がある。例えば、3D物体と平滑化用の架台との間の接触によって、平滑化プロセスの際、架台の一部を3D物体の表面内に溶融させ得る。残念ながら、外表面の光沢のある仕上げによって、そのような表面欠陥が強調され、裸眼でも欠陥が容易に目に見えるようになってしまう。これは、平滑化された3D物体の美的品質を損なわせる。
【0023】
1つ以上の表面欠陥が3D物体上に見つかる場合、次いで、欠陥を除去するために十分な持続時間の間、欠陥上で研磨材料(例えば、やすりおよび研磨紙)を摩擦させることによって、欠陥を除去してもよい(ステップ20)。しかしながら、欠陥除去プロセスはまた、欠陥が除去される場所における外表面の光沢のある仕上げ状態を悪化させる。これらの光沢の悪化した領域はまた、くすんで光沢のない表面領域として、容易に目に見える。これもまた、平滑化された3D物体の美的品質を損なわせる。
【0024】
平滑化された3D物体の美的品質を向上させるため、平滑化された3D物体を、媒体を用いたブラスト加工システムに装填して、媒体を用いてブラスト加工し、外表面から光沢のある仕上げを除去する(ステップ22)。これによって、磨き上げられた外表面が形成される。その磨き上げられた外表面は、光沢のある仕上げよりも、平滑かつ艶のある仕上げを有する。異なる種類および種々のサイズのブラスト加工媒体を使用して、3D物体の外表面の質感を変化させてもよい。ブラスト加工媒体の好適な例として、塩(例えば、重炭酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム)、胡桃殻、ドライアイス、ナノ粒子、市販の艶出し媒体、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ブラスト加工媒体は、高純度の媒体(例えば、ドライアイスおよび高純度重炭酸ナトリウム)である。その場合、清浄な3D物体がもたらされる。媒体を用いたブラスト加工システムの好適な例として、Alexanderの米国特許第7,134,945号に開示されるものが挙げられる。
【0025】
媒体を用いたブラスト加工の持続時間および強度は、外表面の所望の質感および使用されるブラスト加工媒体(例えば、材料の違いおよび粒子サイズの違い)に応じて変化させてもよい。しかしながら、階段状の外観は、溶剤による平滑化作用によって前もって除去されているため、媒体を用いたブラスト加工のプロセスの持続時間および強度は、望ましくは、外表面から光沢のある仕上げを実質的に除去するのに必要な値に制限される。例えば、外表面の各領域は、数秒間、媒体を用いてブラスト加工されても良く、その領域における光沢のある仕上げが除去されてもよい。これによって、3D物体の周縁層を除去する危険性、微細的な特徴を破壊する危険性を低減する。
【0026】
また、媒体を用いたブラスト加工のプロセスは、複数の連続的なブラスト加工ステップによって構成されてもよい。例えば、最初の媒体を用いたブラスト加工のプロセスの後、3D物体を検査し、ブラスト加工の程度を判断してもよい。追加的にブラスト加工が必要な場合、3D物体は、追加的なブラスト加工によって1回以上処理されてもよい。
【0027】
一実施形態では、媒体を用いたブラスト加工のプロセスの際、3D物体の外表面の鏡面反射率が監視される。前述のように、溶剤を用いた平滑化プロセスの後は、3D物体の外表面は、光沢がある。それによって、高い鏡面反射率を呈する(表面欠陥のある場所を除く)。しかしながら、媒体を用いたブラスト加工のプロセスは、外表面の光沢度を低減させ、それによって、鏡面反射率を低下させる(すなわち、広範性の反射性を増進させる)。外表面の鏡面反射率は、媒体を用いてブラスト加工するプロセスのサイクルの間、鏡面反射率を監視する種々の鏡面反射率監視システムによって監視されてもよい。一実施形態では、鏡面反射率は、3D物体の外表面の1つ以上の場所において監視される。代替として、または加えて、鏡面反射率の均一性が、3D物体の全体にわたって監視されてもよい。外表面の鏡面反射率が、媒体を用いてブラスト加工するプロセスに関する所定のレベルに到達すると、媒体を用いたブラスト加工のプロセスは中断されてもよい。
【0028】
代替実施形態では、方法10のステップ18およびステップ20の一方または両方が省略される。また、ステップ22の、媒体を用いてブラスト加工するプロセスは、ステップ16の、溶剤を用いた平滑化プロセスの間に形成される軽微な表面欠陥を除去するために好適である。これによって、目に見える表面欠陥が実質的にない、平滑かつ艶のある外表面が提供されるとともに、3D物体の表面処理に必要とされる時間が短縮される。
【0029】
媒体を用いたブラスト加工のプロセスの完了後、次いで、平滑化された3D物体が清浄(例えば、洗浄)されても良く、媒体を用いたブラスト加工に基づくあらゆる残留粒子を除去してもよい(ステップ24)。結果として生じる3D物体は、美的に満足し得る、平滑かつ艶のある状態に仕上げられた外表面を有する。加えて、その外表面については、溶剤によって平滑化された表面と同様に、気孔率が低減する。しかしながら、溶剤によって平滑化された表面における光沢のある仕上がりとは対照的に、方法10によって得られる艶のある仕上げにより、溶剤を用いた平滑化プロセスの際に得られる目に見える表面欠陥、除去可能な位置の表面欠陥は減少し、または排除される。
【0030】
結果として生じる3D物体の外表面が、所望の美的品質を呈さない場合、ステップ16−24を1回以上繰り返してもよい(矢印26によって表されるように)。つまり、3D物体は、所望の美的品質が得られるまで、溶剤を用いた平滑化および媒体を用いたブラスト加工のプロセスを複数回受けてもよい。これによって、方法10の柔軟性が向上し、個々の必要性に合致する。
[実施例]
本発明は、以下の実施例において、より具体的に説明される。以下の実施例は、例証のみを意図しており、本発明の範囲内における多数の修正および変形例は、当業者には明白であるだろう。平滑かつ艶のある外表面を呈する表面処理された3D物体を、以下の手順に従って、調製した。最初に、ミネソタ州Eden PrairieのStatasys, Inc.から「FDM TITAN」という商品名で市販される溶解蒸着成型システムにおいて、白色アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)ポリマーによって、3D物体を積層方式で構築した(方法10のステップ12に従った)。次いで、3D物体を溶解蒸着成型システムから除去し、常温に冷却した。本実施例では、方法10のステップ14に基づく事前平滑化プロセスは、実施しなかった(例えば、支持材料の除去を必要としなかった)。
【0031】
次いで、3D物体を蒸気平滑化システム内に挿入するために、3D物体の小穴を通して延在するワイヤ部材によって、3D物体を懸架した。蒸気平滑化システムは、Priedeman, Jr.らの米国特許出願公開第2005/0173838号に記載されるように構成され、また、70℃(すなわち、溶剤の沸点)に維持された臭化n−プロピルの蒸気チャンバを含んでいる。懸架された3D物体を、2回の30秒サイクルの間、蒸気平滑化システム内に挿入し、次いで、乾燥させ、常温に冷却した(方法10のステップ16に従った)。次いで、ワイヤ部材を3D物体の小穴から除去し、表面欠陥に関して、その3D物体を検査した(方法10のステップ18に従った)。
【0032】
図2は、蒸気平滑化プロセスを受けた後の3D物体の写真である。図に示されるように、3D物体は、階段状の外観が実質的に除去された平滑かつ光沢のある外表面を含んでいた。図2では、光沢のある仕上げを観察できる。それは、3D物体の外表面に沿った種々の場所における光反射による。しかしながら、さらに示されるように、3D物体の小穴はまた、プラスチック材料内に表面欠陥を含んでいた。蒸気平滑化プロセスの間、表面プラスチック材料の還流によって、プラスチック材料の一部が、ワイヤ部材上に流動した。次いで、ワイヤ部材のその後の除去によって、小穴26において、3D物体の外表面に欠陥が形成され、裸眼でも容易に目に見え、3D物体の美的品質が損なわれていた。
【0033】
表面欠陥は、研磨仕上げによって除去した(方法10のステップ20に従った)。これによって、表面欠陥に関する3D物体の美的品質は改良された。一方で、欠陥除去によって、欠陥の場所における外表面の光沢のある仕上げも排除された。図2には示されていないが、光沢のある仕上げのこのような損失はまた、外表面の残りの部分(光沢のある仕上げが保持された表面)とは対照的に、裸眼でも容易に見えた。また、これによって、3D物体の美的品質が損なわれた。
【0034】
次いで、標準的ベンチュリ型ナトリウム化合物噴射装置に、3D物体を装填した。次いで、作動圧力を276キロパスカル(40ポンド/平方インチ)に設定し、120秒間、重曹(すなわち、重炭酸ナトリウム)粉末によって、3D物体をブラスト加工した(方法10のステップ22に従った)。これによって、数秒間、3D物体の外表面の各領域に重曹を噴射した。ナトリウム化合物によるブラスト加工プロセスの後、結果として生じる3D物体を水で洗浄し、残留ナトリウム化合物粒子を除去した(方法10のステップ24に従った)。
【0035】
図3は、ナトリウム化合物を用いたブラスト加工のプロセスを経た後の3D物体の写真である。図に示されるように、3D物体は、平滑かつ艶のある外表面を含む。その表面は、鏡面的に拡散性を有する外観をなし、心地良いろう状の手触りを有していた。さらに、光沢のある仕上げが除去されたため、小穴に位置する欠陥除去部位は、裸眼では、容易に見えなかった。故に、結果として生じる3D物体は、美的に満足できる外表面を呈する。
【0036】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において、変更を成し得ることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理された3次元物体を形成するための方法であって、
高速製造された3次元物体の外表面を、溶剤を用いた平滑化プロセスによって平滑化するステップと、
前記溶剤によって平滑化された外表面の少なくとも一部を媒体を用いてブラスト加工するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶剤を用いた平滑化プロセスは、蒸気による平滑化プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶剤を用いた平滑化プロセスにて、塩化メチレン、臭化n−プロピル、ペルクロロエチレン、トリクロロエチレン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、キシレン、トルエン、水、アルコール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される溶剤が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記外表面を平滑化するステップに先立って、前記高速製造された3次元物体を、常温を下回る温度に冷却するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高速製造された3次元物体を、フック状部材から懸架するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶剤によって平滑化された外表面から、少なくとも1つの表面欠陥を研磨除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記媒体を用いたブラスト加工は、重炭酸ナトリウムを用いたブラスト加工を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記3次元物体の外表面の鏡面反射率を監視するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記鏡面反射率が所定のレベルに到達すると、前記溶剤を用いた平滑化プロセスを中断する動作と、前記媒体を用いたブラスト加工を中断する動作と、から成る群から選択される動作を実施するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
表面処理された3次元物体を形成するための方法であって、
3次元物体の少なくとも一部を高速製造技術によって構築するステップであって、前記3次元物体が外表面を有する、ステップと、
溶剤を用いた平滑化プロセスによって前記外表面を平滑化するステップと、
溶剤によって平滑化された外表面の少なくとも一部を媒体を用いてブラスト加工するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記溶剤を用いた平滑化プロセスは、蒸気による平滑化プロセスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
外表面を平滑化するステップに先立って、高速製造された3次元物体を、常温を下回る温度に冷却するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記3次元物体の外表面の鏡面反射率を監視するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記媒体を用いたブラスト加工は、重炭酸ナトリウムを用いたブラスト加工を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
表面処理された3次元物体を形成するための方法であって、
3次元物体の少なくとも一部を高速製造技術によって構築するステップであって、前記3次元物体が外表面を有する、ステップと、
前記外表面の鏡面反射率を平滑化プロセスによって増加させるステップと、
前記外表面の前記鏡面反射率を媒体を用いたブラスト加工によって減少させるステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記平滑化プロセスは、溶剤を用いた平滑化プロセスを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶剤を用いた平滑化プロセスは、蒸気による平滑化プロセスを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記平滑化プロセスは、前記外表面における前記3次元物体の気孔率を減少させる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記外表面の鏡面反射率を監視するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記媒体を用いたブラスト加工のプロセスは、重炭酸ナトリウムによるブラスト加工を含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−515606(P2010−515606A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545611(P2009−545611)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/000430
【国際公開番号】WO2008/088761
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509113977)ストラタシス,インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】