説明

高速通信システム

【課題】無電柱化された住宅街等においても、各住宅に光ファイバケーブルを引き込むことなく、FTTHサービスを提供すること。
【解決手段】この高速通信システムは、住宅18に電力を供給する電力ケーブルを利用して電力線搬送通信(PLC)を行う。住宅の各々は電力ケーブルとして埋設複合電力ケーブル15及び埋設引込線17を用いる無電柱化地域に位置し、電力は変電所、路上変圧器11、及び路上低圧分岐箱12を介して住宅の各々に供給され、少なくとも路上変圧器と路上低圧分岐箱との間が埋設複合電力ケーブルで接続され、路上低圧分岐箱から埋設引込線によって住宅の各々が接続されている。埋設複合電力ケーブルには光ファイバケーブル13が備えられ、路上低圧分岐箱には電力線搬送通信を行うためのPLC変換装置16が備えられ、PLC変換装置に光ファイバケーブルを接続するとともに埋設引込線を接続して、電力線搬送通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルを用いた高速通信システムに関し、特に、光ファイバケーブルを用いたデータ通信サービスであるFTTH(Fiber To The Home)に用いるための電力線搬送通信(Power Line Communications:PLC)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットを用いて大容量データ通信等を行うため、例えば、一般家庭に光ファイバケーブルを引き込むFTTHサービスが普及しつつある。FTTHサービスを行う際には、一般に、電柱等に敷設された光ファイバケーブルを分岐して、一般家庭に光ファイバケーブルを引き込み、この引き込んだ光ファイバケーブルを、メディアコンバータを介してパソコン等の端末装置に接続することになる。
【0003】
ところで、近年、都市部において、美観上のニーズから所謂無電柱化が進行しており、例えば、大きな住宅街で無電柱化が行われると、電柱が存在しないため、光ファイバケーブルを架設することができず、FTTHサービスを行えないという事態が生じることもある。
【0004】
一方、一般家庭への光ファイバケーブルの引き込みを行うことなく、電力線(低圧配電線)に高周波信号を重畳して通信を行う電力線搬送通信システムが知られている。この電力線搬送通信システムでは、例えば、柱上変圧器までの通信に光ファイバケーブルを用い、柱上変圧器からユーザまでの通信に低圧配電線を用いて、ユーザ家屋と電柱上にそれぞれPLCモデム(子モデム及び親モデム)を備え、電柱上のPLCモデムを、柱上変圧器と光ファイバケーブルの接続箱とに接続し、ユーザが受信する場合には、柱上変圧器の低圧側(二次側)に高周波信号を重畳し、屋外の低圧配電線、ユーザ家屋の引き込み線、及び宅内配線を経て宅内コンセントに接続されたPLCモデムで高周波信号を抽出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−318786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、無電柱化が行われた住宅街等では、各住宅への配電は地中埋設ケーブルを用いて行われることになる。しかしながら、路上低圧分岐箱と各住宅との間では、光ファイバケーブルを埋設するためのファイバ配線用管路がないか又は光ファイバケーブルを配線するスペースがないのが現状である(つまり、路上低圧分岐箱から各住宅までの地下管路又は地下配線ピットに余裕がないのが現状である)。したがって、このような住宅街においては、前述のように、FTTHサービスを行うことができないことになってしまう。
【0007】
特に、無電柱化が行われた既存の住宅街等では、路上低圧分岐箱から各住宅までの地下管路又は地下配線ピットに全く余裕がなく、新たに、FTTHサービスに対するニーズが生じたとしても、そのニーズに対処することができないのが現状である。
【0008】
一方、光ファイバケーブルを住宅に引き込むことなく、低圧配電線を用いた電力線搬送通信を行おうとしても、無電柱化された住宅街においては、そもそも電柱が存在しないのであるから、光ファイバケーブルを架設することができず、低圧配電線を用いて通信を行うことは不可能である。
【0009】
したがって、本発明は、無電柱化された住宅街等においても、各住宅に光ファイバケーブルを引き込むことなく、FTTHサービスを提供することのできる高速通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、住宅に電力を供給する電力ケーブルを利用して電力線搬送通信(PLC)を行うための高速通信システムであって、前記住宅の各々は前記電力ケーブルとして埋設複合電力ケーブル及び埋設引込線を用いる無電柱化地域に位置し、前記電力は変電所、路上変圧器、及び路上低圧分岐箱を介して前記住宅の各々に供給され、少なくとも前記路上変圧器と前記路上低圧分岐箱との間が前記埋設複合電力ケーブルで接続され、前記路上低圧分岐箱から前記埋設引込線によって前記住宅の各々が接続されており、前記埋設複合電力ケーブルには光ファイバケーブルが備えられ、前記路上低圧分岐箱には前記電力線搬送通信を行うためのPLC変換装置が備えられており、前記PLC変換装置に前記光ファイバケーブルを接続するとともに前記埋設引込線を接続して、前記電力線搬送通信を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
(1)に記載の高速通信システムでは、電力ケーブルとして光ファイバケーブルを有する埋設複合電力ケーブルを用いて、路上低圧分岐箱内にPLC変換装置を配置し、このPLC変換装置を埋設引込線に接続するようにしたので、無電柱化された住宅街等においても、各住宅に光ファイバケーブルを引き込むことなくFTTHサービスを提供することができる。
【0012】
(2)本発明は、(1)に記載の高速通信システムにおいて、前記路上低圧分岐箱は、前記埋設複合電力ケーブルの電力ケーブルを複数の分岐端子に分岐する分岐回路を有し、前記分岐端子に前記埋設引込線の各々が接続されており、前記PLC変換装置は通信ケーブルを介して前記分岐回路に接続されることを特徴とするものである。
【0013】
(2)に記載の高速通信システムでは、路上低圧分岐箱が、埋設複合電力ケーブルの電力ケーブルを複数の分岐端子に分岐する分岐回路を有して、これら分岐端子に埋設引込線の各々を接続し、PLC変換装置を、通信ケーブルを介して分岐回路に接続するようにしたので、一台のPLC変換装置によって複数の住宅で電力線搬送通信を行うことができる。
【0014】
(3)本発明は、(2)に記載の高速通信システムにおいて、前記PLC変換装置は、少なくとも光電変換を行う光電コンバータ及び前記電力線搬送通信を行うためのPLCモデムを有し、前記光電コンバータが前記光ファイバケーブルに接続され、前記PLCモデムが前記通信ケーブルに接続されることを特徴とするものである。
【0015】
(3)に記載の高速通信システムでは、PLC変換装置が少なくとも光電変換を行う光電コンバータと電力線搬送通信を行うためのPLCモデムとを有し、光電コンバータを光ファイバケーブルに接続し、PLCモデムを通信ケーブルに接続するようにすれば、容易に各住宅で電力線搬送通信を行うことができる。
【0016】
(4)本発明は、(1)〜(3)のいずれかに記載の高速通信システムにおいて、前記埋設引込線はシールド材で覆われていることを特徴とするものである。
【0017】
(4)に記載の高速通信システムでは、埋設引込線をシールド材で覆うようにしたので、埋設引込線に高周波信号が流れても、周囲に悪影響を及ぼすことがない。
【0018】
(5)本発明は、(1)〜(4)のいずれかに記載の高速通信システムにおいて、前記埋設引込線の各々には、高周波成分をカットする高周波カットフィルタが備えられ、前記電力線搬送通信を行う契約をした住宅について前記高周波カットフィルタを前記埋設引込線から除去するようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
(5)に記載の高速通信システムでは、埋設引込線の各々に、高周波成分をカットする高周波カットフィルタを備えて、電力線搬送通信契約をした住宅について高周波カットフィルタを埋設引込線から除去するようにしたので、契約を行っていない住宅が勝手に電力線搬送通信を行うことはない。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、電力ケーブルとして光ファイバケーブルを有する埋設複合電力ケーブルを用い、路上低圧分岐箱内にPLC変換装置を配置して、当該PLC変換装置を埋設引込線に接続するようにしたので、無電柱化された住宅街において、各住宅に光ファイバケーブルを引き込むことなくFTTHサービスを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による高速通信システムの一例を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す高速通信システムにおいて、路上変圧器と複合電力ケーブルとの接続関係の一例を示す図である。
【図3】図1に示す高速通信システムで用いられる路上変圧器の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は上面図である。
【図4】図1に示す高速通信システムで用いられる路上変圧器の内部を示す図である。
【図5】図1に示す高速通信システムにおいて、路上低圧分岐箱と複合電力ケーブル及び各住宅との接続関係の一例を示す図である。
【図6】図1に示す高速通信システムで用いられる路上低圧分岐箱の内部を示す図である。
【図7】図1に示す高速通信システムで用いられる路上低圧分岐箱12の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による高速通信システムの一例について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態による高速通信システムの一例を概略的に示す図であり、(a)は高速通信回線を電力系統とともに示す図、(b)は高速通信回線(光ファイバケーブル)の系統を示す図である。図1において、無電柱化された住宅街では、一般に、配電ケーブルは地中に埋設されることになる。このような住宅街においては、柱上変圧器と同様な路上変圧器11が住宅街の各所に配置されており、この路上変圧器11に、例えば、変電所(図示せず)から、地中に埋設された6,600ボルト幹線が引き込まれ、路上変圧器11において、200ボルト又は100ボルトに降圧されて、200/100V配電線を介して路上低圧分岐箱(低圧引込盤)12に供給される。なお、6,600ボルト幹線(電力ケーブル)は地中に埋設されて変電所まで敷設される以外に、例えば、美観地区に至る手前において電柱から引き降ろして地中に埋設される場合もある。また、図1においては、後述するクロージャ等は省略されている。
【0024】
この路上低圧分岐箱12には、後述するように、複数の出力端子部(電力供給端子部)が設けられており、各電力供給端子部が、地中に埋設された配電線等によって各住宅に接続されて、各住宅に電力が供給されることになる。
【0025】
ところで、路上低圧分岐箱12と各住宅との間に配設される引込管路には一般に余裕はなく、また、変電所と路上変圧器11との間に配設される送電管路、路上変圧器11と路上低圧分岐箱12との間に配設される配電管路にも余裕がないため、一般に、所謂複合電力ケーブルが用いられる。
【0026】
図示の例では、6,600V幹線として、光ファイバである光芯線(光芯線は被覆されている。つまり、光ファイバケーブルである)13が配設された複合電力ケーブル14を用い(複合電力ケーブル14には複数の電力ケーブルが配置されている)、200/100V配電線として、同様に光ファイバケーブル13を有する複合電力ケーブル15を用いている(変電所から高圧(6,600V)RST相がよじられて1フィーダー1本送出され、途中で分岐されて路上変圧器11に接続されるため、複合電力ケーブル14には複数の電力ケーブル備えられていることになる)。図示のように、複合電力ケーブル15は、路上低圧分岐箱12に備えられた電力入力端子部12aに接続される。
【0027】
路上低圧分岐箱12内には、PLC変換装置(メディアコンバータ(電気/光変換装置)及びルータを含む)16が配設されており、複合電力ケーブル15の光ファイバケーブル13は、PLC変換装置16の第1の入出力端子部16aに接続される。そして、PLC変換装置16の第2の入出力端子部16bには信号線ケーブル16cが接続されて、この信号線ケーブル16cは路上低圧分岐箱12の複数の電力出力端子部12bに接続される。
【0028】
この電力出力端子部12bには、それぞれ引込線(電力線(埋設電力ケーブル))17が接続され、各電力線17は、例えば、地中に埋設された引込管路を通って住宅18に引き込まれる(なお、電力線17はシールド材17aによってシールドされている)。そして、電力線17は、分電盤等を介して宅内配線に接続される。住宅内には子PLC装置(PLCモデム)19が備えられ、この子PLC装置19を宅内コンセントに接続し、さらに、パソコン等を子PLC装置19に接続すれば、パソコンは、子PLC装置19、宅内配線、電力線17、及びPLC変換装置16を介して光ファイバケーブル13に接続されることになり、光ファイバケーブルを介して(インターネットサービスプロバイダを介して)高速データ伝送等を行うことができる。つまり、インターネットに接続することができる。
【0029】
図2は、路上変圧器11と複合電力ケーブル14及び15との接続関係の一例を示す図であり、図3は、路上変圧器11の外観を示す図である。また、図4は、路上変圧器11の内部を示す図である。
【0030】
図2において、複合電力ケーブル14は第1のアタッチメント21によって、路上変圧器11の1次側に接続される。図示のように、路上変圧器11の1次側には、第1〜第3の入力端22a〜22cが設けられており(以下青、白、赤相端と呼ぶ)、これら青、白、赤相端に複合電力ケーブル14の1つの電力ケーブル14aが接続される(図示の例では、青相端にのみ電力ケーブル14aが接続されているが、他の相端にも他の電力ケーブルが接続される)。
【0031】
青、白、赤相端はそれぞれ高圧カットアウト23a〜23cを介して路上変圧器11の変圧部24に接続される。路上変圧器11の2次側には、第1〜第4の出力端25a〜25dが設けられており(以下白、黒、緑、赤端子と呼ぶ。なお、そのうちの1つは接地端子である)、これら白、黒、緑、赤端子はそれぞれ低圧限ヒューズ26a〜26dを介して変圧部24に接続される。
【0032】
これら白、黒、緑、赤端子にそれぞれ複合電力ケーブル15の電力ケーブル15aが接続される(図示の例では、説明の便宜上白端端子にのみ電力ケーブル15aが接続されているが、他の端子にも他の電力ケーブルが接続される)。なお、複合電力ケーブル15は第2のアタッチメント27を介して路上変圧器11の2次側に接続される。図示のように、光ファイバケーブル13は、複合電力ケーブル14から引き出されて、路上変圧器11において、変圧部24を迂回して複合電力ケーブル15に達している。
【0033】
図3において、図3(a)は、路上変圧器11の正面図、図3(b)はその右側面図、図3(c)は左側面図、そして、図3(d)は上面図である。路上変圧器11は地表面上に基礎ボルト31等によって固定されている。路上変圧器11は変圧器筐体32を有し、その正面には通気のためのガラリ33aが複数形成されている。
【0034】
変圧器筐体32の左右側面にはそれぞれ開閉扉33及び34が取り付けられており、開閉扉33及び34を開くと、それぞれ高圧側(1次側)及び低圧側(2次側)が露出する。なお、図3(b)及び(c)に示すように、開閉扉33及び34の各々には鍵35〜37が設けられている。
【0035】
図4において、変圧器筐体32内には開閉器41(図2には示されていない)及び変圧部24が配設され、地中に埋設された複合電力ケーブル14の電力ケーブル14aは、1次側端子部22(青、白、赤相端)に接続される。そして、1次側端子部22は開閉器41を介して高圧カットアウト部23(高圧カットアウト23a〜23c)に接続された後、変圧部24に接続される。
【0036】
変圧部24は、低圧限ヒューズ部26(低圧限ヒューズ26a〜26d)を介して2次側端子部25(白、黒、緑、赤端子)に接続され、2次側端子部25には、地中に埋設された複合電力ケーブル15の電力ケーブル15aが接続される。
【0037】
第1のアタッチメント21で分岐された光ファイバケーブル13は、地中においてクロージャ(閉包)42によって第2のアタッチメント27に至り、複合電力ケーブル15内に収納される。なお、クロージャ42を地中に設置する場合には、浸水を防止するため、当然に浸水対策を施したクロージャを使用する。また、変圧器筐体32内のスペースに余裕があれば、クロージャ42は変圧器筐体32内に収納することが望ましい。
【0038】
図5は、路上低圧分岐箱12と複合電力ケーブル15及び各住宅との接続関係の一例を示す図であり、図6は、路上低圧分岐箱12の内部を示す図である。また、図7は、路上低圧分岐箱12の外観を示す図である。
【0039】
図5及び図6を参照して、路上低圧分岐箱12は引込盤筐体61を有しており、複合電力ケーブル15は第3のアタッチメント51によって、路上低圧分岐箱12に接続される(路上低圧分岐箱12の電力入力端子部12aに接続されることになる)。図示のように、路上低圧分岐箱12内には、前述のように、PLC変換装置16が配設されており、このPLC変換装置16は、PLC装置(PLCモデム)52、ルータ53、及びメディアコンバータ54を有し、PLC装置は、契約の都度逐次実装・増設される。また、図6の例では、メディアコンバータ54の下側にはスペースが規定され、このスペースは、光ファイバケーブル13の余長処理部として、光ファイバケーブル13の余長の処理、あるいはクロージャの格納に利用できる。
【0040】
複合電力ケーブル15の光ファイバケーブル13は、第3のアタッチメント51で分岐され、クロージャ(閉包)71で保護されて、引込盤筐体61内に挿入されて第1の入出力端子部16aによってメディアコンバータ54に接続される(メディアコンバータと光ファイバケーブルの接続はコネクタ接続である)。そして、PLC変換装置16が第2の入出力端子部16bによって信号線ケーブル(電力線)16cが接続される。具体的には、クロージャ71内で、光ファイバケーブル13の被覆を剥いで、光芯線同士を融着接続することになる。よって、クロージャ71から出た光芯線は被覆で包まれた光ファイバケーブルである。また、クロージャ71を地中に配設する場合には、当然のことながら、浸水対策が施されるが、路上低圧分岐箱12内のスペースに余裕があれば、クロージャ71は路上低圧分岐箱12に収納することが望ましい。例えば、クロージャ71は光ファイバケーブル13の余長処理部13aに格納することが望ましい。
【0041】
路上低圧分岐箱12は、分岐線路55を有しており、この分岐線路55がヒューズ56を介して電力入力端子部12aに接続され、電力入力端子部12aには複合電力ケーブル15の電力ケーブル15aが接続されることになる。そして、分岐線路55は電力出力端子部12bの各々に接続され、電力出力端子部12bの各々には引込線(電力線)17が接続される。また、信号線ケーブル16cは上記の分岐線路55に接続される。なお、図示の例は、8個の電力出力端子部12bを有する例である(つまり、8回路を有する例である)。
【0042】
図示のように、各引込線17はそれぞれ住宅18に引き込まれる。前述したように、各住宅18では引込線17は宅内配線に接続され、住宅18に配置された子PLC装置(図5には示さず)にパソコンを接続すれば、光ファイバケーブル13に接続されることになり、光ファイバケーブル13を介してインターネットに接続することができる。
【0043】
なお、図示の例では、各引込線17には高周波カットフィルタ57が配置されており、PLC契約を締結する前においては、この高周波カットフィルタ57によって高周波成分がカットされる。つまり、商用周波数(50Hz又は60Hz)に重畳された高周波信号がカットされるから、インターネット接続等を行うことはできない。
【0044】
一方、PLC契約を締結した住宅18においては、対応する引込線17の高周波カットフィルタ57が除去され、商用周波数に重畳された高周波信号がカットされることなく、当該住宅18に伝送されることになる。
【0045】
複数の住宅18がPLC契約を締結した際には、伝送する情報(データ)が漏れる恐れがあるので、秘密としない情報の伝送を行うことが望ましいが、各住宅で情報漏れが生じないようにするため、タグを利用してセキュリティーを確保するようにしてもよい。
【0046】
図7において、図7(a)は、路上低圧分岐箱12の正面図、図7(b)はその側面図、図7(c)は上面図である。
【0047】
図7(a)及び(c)に示すように、路上低圧分岐箱12は地表面上に基礎ボルト(図示せず)等によって固定されている。路上低圧分岐箱12は引込盤筐体61を有し、その正面には観音開きの一対の扉62及び63が取り付けられており、図示の例では、扉62に2つの錠前64〜66が備えられている。また、扉62及び63の下側において、引込盤筐体61のベース67には複数の通気口68が形成されている。また、図7(b)に示すように、引込盤筐体61の側面には、一対の換気口69及び70が形成されている。
【0048】
なお、引込盤筐体61に余裕があれば、路上低圧分岐箱12内に複数のPLC変換装置16を配置するようにしてもよく、各住宅毎にそれぞれPLC変換装置16を対応付けるようにしてもよい。なお、PLC変換装置16(親)を、路上変圧器ではなく、路上低圧分岐箱12内に配置したのは、伝送速度がケーブル長及び分岐数に関係しているからである。例えば、ケーブル長及び電力線系統の分岐数と伝送速度との関係は、40m〜50m強の電力線系統に3〜4程度の分岐数で10Mbps程度の伝送速度が確保できることが知られており、このため、ケーブル長と分岐数との関係から、ケーブル長及び分岐数を少なくできる路上低圧分岐箱12にPLC変換装置16を配置することが望ましい。また、PLC変換装置(親)と宅内PLC装置(子)との関係から、PLC装置(子)を1つの住宅に複数個配置しても、セキュリティー上の問題はないが、複数のPLC装置(子)を、PLC変換装置(親)に対してセキュリティー上分離することは実際上困難であり、PLC変換装置(親)をPLC装置(子)毎に配置すれば、暗号化対策を施せばよく、この点を考慮するとPLC変換装置(親)を路上低圧分岐箱12に配置することが望ましい。
【0049】
上記の実施の形態においては、光ファイバケーブルを有する埋設複合電力ケーブルを用いて、路上低圧分岐箱内にPLC変換装置を配置して、このPLC変換装置を埋設引込線(埋設電力線)に接続するようにしたので、無電柱化された住宅街等においても、各住宅に光ファイバケーブルを引き込むことなくFTTHサービスを提供することができる。
【0050】
つまり、無電柱化によって、FTTHサービスが提供できなくなった地域においても簡単にFTTHサービスを行うことができる。そして、光ファイバケーブルを用いて路上変圧器及び路上低圧分岐箱の状態監視を行えるばかりでなく、開閉器等の遠隔操作を行うこともできる。さらに、ルータとして無線ルータを用いれば、周囲環境を測定するセンサーをネットワーク化することも可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
11 路上変圧器
12 路上低圧分岐箱(路上低圧分岐箱)
13 光芯線(光ファイバケーブル)
14,15 複合電力ケーブル
16 PLC変換装置
17 引込線(電力線(埋設電力ケーブル))
18 住宅
19 子PLC装置(PLCモデム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅に電力を供給する電力ケーブルを利用して電力線搬送通信(PLC)を行うための高速通信システムであって、
前記住宅の各々は前記電力ケーブルとして埋設複合電力ケーブル及び埋設引込線を用いる無電柱化地域に位置し、
前記電力は変電所、路上変圧器、及び路上低圧分岐箱を介して前記住宅の各々に供給され、
少なくとも前記路上変圧器と前記路上低圧分岐箱との間が前記埋設複合電力ケーブルで接続され、前記路上低圧分岐箱から前記埋設引込線によって前記住宅の各々が接続されており、
前記埋設複合電力ケーブルには光ファイバケーブルが備えられ、前記路上低圧分岐箱には前記電力線搬送通信を行うためのPLC変換装置が備えられており、
前記PLC変換装置に前記光ファイバケーブルを接続するとともに前記埋設引込線を接続して、前記電力線搬送通信を行うようにしたことを特徴とする高速通信システム。
【請求項2】
前記路上低圧分岐箱は、前記埋設複合電力ケーブルの電力ケーブルを複数の分岐端子に分岐する分岐回路を有し、前記分岐端子に前記埋設引込線の各々が接続されており、
前記PLC変換装置は通信ケーブルを介して前記分岐回路に接続されることを特徴とする請求項1記載の高速通信システム。
【請求項3】
前記PLC変換装置は、少なくともメディア変換を行うメディアコンバータ及び前記電力線搬送通信を行うためのPLCモデムを有し、前記メディアコンバータが前記光ファイバケーブルに接続され、前記PLCモデムが前記通信ケーブルに接続されることを特徴とする請求項2記載の高速通信システム。
【請求項4】
前記埋設引込線はシールド材で覆われていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の高速通信システム。
【請求項5】
前記埋設引込線の各々には、高周波成分をカットする高周波カットフィルタが備えられ、前記電力線搬送通信を行う契約をした住宅について前記高周波カットフィルタを前記埋設引込線から除去するようにしたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の高速通信システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−200071(P2010−200071A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43498(P2009−43498)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】