説明

高酸末端を有するポリアミド組成物

(A群(I)のポリアミドからなる群から独立して選択されるポリアミド樹脂であって、群(I)のポリアミドは、少なくとも260℃の融点を有し、(a)95モルパーセント超の半芳香族反復単位と;(b)5モルパーセント未満の脂肪族反復単位とを含むポリアミド樹脂;(B)0重量パーセントから60重量パーセントの1種または複数種の補強剤;および(C)0重量パーセントから50重量パーセントの1種または複数種のポリマー強化剤を含む熱可塑性組成物であって;重量パーセントは、前記熱可塑性組成物の全重量に基づき;前記ポリアミド樹脂が,少なくとも約50meq/Kgの酸末端を有する熱可塑性組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高酸末端を有し、耐加水分解性の改善したポリアミドの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドに基づく樹脂は、望ましい耐化学薬品性、加工性および耐熱性を有する。このため、要求の厳しい高性能の自動車および電気/エレクトロニクスの用途に、非常に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
あいにく既存の技術では、ポリアミド組成物に基づく成形製品は、高温では限られた耐加水分解性しか有さない。加水分解条件への長期曝露、例えば、120℃で5日から50日後に、良好な耐加水分解性を示し、また良好な機械的特性を保持する製品の製造に好適なポリアミド組成物に対する必要性がまだ存在している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
A)群(I)のポリアミドからなる群から独立して選択されるポリアミド樹脂であって、群(I)のポリアミドは、少なくとも260℃の融点を有し、および
(a)i)8個から20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4個から20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン
からなる群の1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される95モルパーセント超の半芳香族反復単位;と
(b)ii)6個から20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および4個から20個の炭素原子を有する前記脂肪族ジアミンと;
iii)4個から20個の炭素原子を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群の1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される5モルパーセント未満の脂肪族反復単位と
を含んでなるポリアミド樹脂;
B)0重量パーセントから60重量パーセントの1種または複数種の補強剤;および
C)反応性官能基および/またはカルボン酸の金属塩を含んでなる0重量パーセントから50重量パーセントの1種または複数種のポリマー強化剤
を含んでなる熱可塑性組成物が開示され、重量パーセンテージは前記熱可塑性組成物の全重量に基づき、前記ポリアミド樹脂が少なくとも約50meq/Kgの酸末端を有する。
【0005】
ポリアミドは、1種または複数種のジカルボン酸と1種または複数種のジアミン、および/または1種または複数種のアミノカルボン酸の縮合産物、および/または1種または複数種の環状ラクタムの開環重合産物である。好適な環式ラクタムは、カプロラクタムおよびラウロラクタムである。ポリアミドは、完全脂肪族でもよいし、半芳香族でもよい。好ましいポリアミドは、半芳香族ポリアミドである。
【0006】
半芳香族ポリアミドは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、または芳香族基を含有するモノマーから形成されたより高度のポリマーである。芳香族基は、テレフタレートまたはテレフタレートとイソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸およびナフタル二酸などの1つまたは複数の他のカルボン酸との混合物などの芳香族カルボン酸から誘導される反復単位であることが好ましい。また、1種または複数種の芳香族カルボン酸を、下記に開示した1種または複数種の脂肪族ジカルボン酸と混合してもよい。
【0007】
本発明の樹脂組成物に有用な脂肪族反復単位は、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸、およびそれらの反応性等価体などの脂肪族モノマーおよび脂環式モノマーから形成される。好適なアミノカルボン酸は、11−アミノドデカン酸である。好適なラクタムは、カプロラクタムおよびラウロラクタムである。
【0008】
脂肪族カルボン酸モノマーとしては、限定はしないが、アジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、デカン二酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、トリデカン二酸(C13)、テトラデカン二酸(C14)、およびペンタデカン二酸(C15)が挙げられる。ジアミンは、限定はしないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン、および/またはそれらの混合物を含む4個以上の炭素原子を有するジアミンの中から選択できる。
【0009】
本明細書に開示された好ましい半芳香族ポリアミドは、ホモポリマーまたはコポリマーであり、ここでコポリマーと言う用語は2つ以上のアミドおよび/またはジアミド分子の反復単位を有するポリアミドのことである。ホモポリマーおよびコポリマーは、それぞれの反復単位によって同定される。本明細書に開示されたコポリマーに関し、反復単位は、コポリマーに存在するモル%反復単位の減少する順序で挙げられる。以下のリストは、ホモポリマーポリアミドおよびコポリマーポリアミド(PA)におけるモノマーおよび反復単位を同定するために用いられる略号を示す:
HMD ヘキサメチレンジアミン(または二酸と組み合わせて用いられた場合6)
T テレフタル酸
AA アジピン酸
DMD デカメチレンジアミン
6 ε−カプロラクタム
DDA デカン二酸
DDDA ドデカン二酸
I イソフタル酸
TMD 1,4−テトラメチレンジアミン
2−MPMD 2−メチルペンタメチレンジアミン
4T TMDとTから形成されたポリマー反復単位
6T HMDとTから形成されたポリマー反復単位
DT 2−MPMDとTから形成されたポリマー反復単位
66 HMDとAAから形成されたポリマー反復単位
10T DMDとTから形成されたポリマー反復単位
410 TMDとDDAから形成されたポリマー反復単位
510 1,5−ペンタンジアミンとDDAから形成されたポリマー反復単位
610 HMDとDDAから形成されたポリマー反復単位
612 HMDとDDDAから形成されたポリマー反復単位
6 ε−カプロラクタムから形成されたポリマー反復単位
11 11−アミノウンデカン酸から形成されたポリマー反復単位
12 12−アミノドデカン酸から形成されたポリマー反復単位
【0010】
当業界において、単独で用いられる場合の語「6」は、ε−カプロラクタムから形成されたポリマー反復単位を示すことに注意されたい。あるいは、Tなどの二酸と組み合わせて用いられた場合の「6」、例えば、6Tの場合、「6」はHMDのことである。ジアミンと二酸とを含んでなる反復単位において、ジアミンは最初に示される。さらに、「6」がジアミンと組み合わせて用いられる場合、例えば66の場合、最初の「6」はジアミンHMDのことであり、2番目の「6」はアジピン酸のことである。同様に、他のアミノ酸またはラクタムに由来する反復単位は、炭素原子の数を称する単独の数として示される。
【0011】
熱可塑性組成物用の好ましいポリアミドは、群(I)のポリアミドであり、群(I)のポリアミドは、少なくとも260℃の融点を有し、および
(a)i)8個から20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4個から20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンからなる群の1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される95モルパーセント超の半芳香族反復単位;と
(b)ii)6個から20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および4個から20個の炭素原子を有する前記脂肪族ジアミン;と
iii)4個から20個の炭素原子を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸からなる群の1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される5モルパーセント未満の脂肪族反復単位、
を含んでなるポリアミドである。
【0012】
好ましい群(I)のポリアミドは、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)PA4T/DT、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)PA4T/6T、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/デカメチレンテレフタルアミド)PA4T/10T、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)PA4T/12T、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA4T/DT/6T)、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA4T/6T/DT)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA6T/DT)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド)(PA6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/デカメチレンテレフタルアミド)PA6T/10T、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA6T/12T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(PA6T/DT/10T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/デカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA6T/10T/12T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(PA10T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA10T/4T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA10T/DT)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA10T/12T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/(デカメチレンテレフタルアミド)(PA10T/DT/12T)。ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA12T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA12T/4T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/ヘキサメチレンテレフタルアミド)PA12T/6T、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/デカメチレンテレフタルアミド)(PA12T/10T)、およびポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA12T/DT)からなる群から選択され;最も好ましい群(I)のポリアミドはPA6T/DTである。
【0013】
熱可塑性組成物は、上記に開示した群(I)のポリアミドからなる群から独立して選択される20重量パーセントから100重量パーセントのA)ポリアミドを含んでなることが好ましい。
【0014】
熱可塑性組成物は、0重量パーセントから60重量パーセントの1種または複数種の補強剤を含んでもよい。一実施形態において、熱可塑性組成物は、約10重量パーセントから60重量パーセントの1種または複数種の補強剤を含む。
【0015】
別の実施形態において、組成物は、10重量パーセント未満の1種または複数種の補強剤を含み、好ましくは、1重量%未満を含む。
【0016】
補強剤は、任意の充填剤でよいが、炭酸カルシウム、円形断面および非円形断面を有するガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、タルク、雲母、珪灰石、焼成クレー、カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸ナトリウムアルミニウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0017】
非円形断面を有するグラスファイバーとは、グラスファイバーの長軸方向に垂直であって、断面において最長の直線距離に相当する主軸を持つ断面を有するグラスファイバーのことである。非円形断面は、主軸に垂直な方向に、断面における最長直線距離に相当する短軸を有する。線維の非円形断面は、繭型(八形)形状、長方形形状;楕円形状;粗三角形形状;多角形形状;および長楕円形形状など、種々の形状を有し得る。当業者により認識されるとおり、断面は他の形状をとることもできる。副軸の長さに対する主軸の長さの比は、約1.5:1と約6:1の間であることが好ましい。この比は、約2:1と5:1の間であることがより好ましく、約3:1と約4:1の間であることがさらに好ましい。好適なグラスファイバーは、欧州特許第0190001号明細書および欧州特許第0196194号明細書に開示されている。
【0018】
熱可塑性組成物は、反応性官能基および/またはカルボン酸の金属塩を含んでなる0重量パーセントから50重量パーセントの1種または複数種のポリマー強化剤を任意選択的に含んでなる。一実施形態において、熱可塑性組成物は、エチレン、グルシジル(メタ)クリレート、および任意選択的に1種または複数種の(メタ)クリレートエステルのコポリマー;不飽和無水カルボン酸とグラフトしたエチレン/α―オレフィンまたはエチレン/α―オレフィン/ジエンコポリマー;エチレン、2−イソシアナトエチル(メタ)クリレート、および任意選択的に1種または複数種の(メタ)クリレートエステルのコポリマー;Zn、Li、MgまたはMn化合物と反応して対応するイオノマーを形成するエチレンとアクリル酸のコポリマーからなる群から選択される2重量パーセントから20重量パーセントの1種または複数種のポリマー強化剤を含んでなる。用語「(メタ)クリレート」は、アクリレートエステルおよびメタクリレートエステルを含むことを意味する。
【0019】
熱可塑性組成物は、「補助安定化剤」、静電防止剤、発泡剤、滑剤、可塑剤、および着色剤ならびに色素と称される他の熱安定化剤または抗酸化剤など、当業界で一般的に用いられる他の添加剤も含み得る。
【0020】
銅安定化剤、第二級アリールアミン、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、ヒンダードフェノール、およびそれらの混合物などの補助安定化剤を、本発明の組成物に使用できる。好ましい補助安定化剤は、第二級アリールアミン、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、ヒンダードフェノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
本明細書において、熱可塑性組成物は、全てのポリマー成分が十分に混合され、全ての非ポリマー成分がポリマーマトリックスに十分に分散される溶融混合による混合物である。本発明のポリマー成分および非ポリマー成分の混合には任意の溶融混合法が使用できる。例えば、ポリマー成分および非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、攪拌機、一軸スクリュー混練機もしくは二軸スクリュー混練機、またはバンバリーミキサーなどの溶融混合機内に投入でき、追加ステップは、バッチ内で一度に、または徐々に全成分を加えることであってもよい。バッチ内でポリマー成分および非ポリマー成分を徐々に加える場合、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部を先ず加えてから、十分に混合された組成物が得られるまで、引き続き加えられる残りのポリマー成分および非ポリマー成分と溶融混合する。補強充填剤が長い物理的形状(例えば、長グラスファイバー)を呈する場合、補強組成物を調製するために、延伸押出成形を使用できる。
【0022】
ポリアミドは、少なくとも約50meq/Kgの酸末端、好ましくは、少なくとも約60meq/Kgの酸末端、より好ましくは、少なくとも約80meq/Kgの酸末端を有する。酸末端は、ベンジルアルコール中、0.03Nの水酸化カリウム溶液により、o−クレゾール/o−ジクロロベンゼン(容量比95:5)の溶媒混合物中、2パーセントのポリアミド溶液の滴定により決定される。終点は、電位差滴定により決定される。
【0023】
アミン末端は、0.1Nの塩酸により、フェノール/メタノール/水混合物(容量比50:25:25)中、2パーセントのポリアミド溶液の滴定により決定され得る。終点は、電位差滴定または電気伝導度滴定により決定され得る(Kohan,M.I.編集、Nylon Plastics Handbook、Hanser:Munich,1995年;79頁およびWaltz,J.E.;Taylor,G.B.Anal.Chem.1947年19、448−50頁を参照)。
【0024】
ポリアミドは、m−クレゾール、引き続きASTM D5225中で測定した場合、少なくとも約0.8から約1.20、好ましくは、0.8から約1.15の対数粘度数を有することが好ましい。
【0025】
ポリアミドは、少なくとも260℃の融点を有する。「融点」とは、ISO 11357およびASTM D3418によって測定した場合のポリマーの第二の融点を意味する。
【0026】
ポリアミドは、例えば、オートクレーブを用いるか、または連続法を用い、バッチ法など、当業者に知られた任意の手段により調製できる。例えば、Kohan,M.I.編集、Nylon Plastics Handbook、Hanser:Munich、1995年;13−32頁を参照されたい。滑剤、消泡剤およびエンドキャッピング剤などの添加剤を重合混合物に添加できる。
【0027】
別の態様は、高温適用に関する上記に開示した熱可塑性組成物の使用に関するものである。
【0028】
別の適用は、本発明の熱可塑性組成物の成形により製品を製造するための方法に関するものである。製品の例としては、薄膜またはラミネート、自動車部品またはエンジン部品または電気部品/エレクトロニクス部品がある。「成形」とは、例えば、押出、射出成形、熱成形、圧縮成形またはブロー成形など、任意の成形技法を意味する。製品は、射出成形またはブロー成形により成形することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本明細書に開示された組成物は、以下の要件の一つまたは複数に合致する多くの車両構成要素において適用を有し得る。すなわち、高衝撃要件;有意な重量減少(例えば、通常の金属以上に);高温に対する耐性;油環境に対する耐性;冷却剤などの化学薬品に対する耐性;および騒音減少;よりコンパクトおよび一体化した設計を可能にすること。具体的な成形熱可塑性製品または押出熱可塑性製品は、給気冷却器(CAC);シリンダヘッドカバー(CHC);油受け;サーモスタットならびにヒーターのカバーおよび冷却剤ポンプなどのエンジン冷却システム;マフラーおよび触媒コンバーター用カバーなどの排気システム;空気取入れマニホルド(AIM);およびタイミングチェーンベルトフロントカバーからなる群から選択される。長期高温曝露に対する所望の機械的耐性の例として、給気冷却器を挙げることができる。給気冷却器は、エンジン燃焼効率を改善した車両のラジエータの一部である。給気冷却器は、給気温度を低下させ、ターボ過給機内圧縮後の空気の密度を増加させ、したがってシリンダー内へのより多くの空気流入を可能にし、エンジン効率を改善する。流入空気が給気冷却器に入る時の温度は200℃を超えることがあり得るため、この部分は、長時間、高温下で良好な機械的特性を保持する組成物から製造されることが必要である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
方法
配合法および成形法
組成物は、Caperion26mmのメガ配合機中340℃から360℃の間の溶融温度で、約25kg/時間の公称率で混合することにより作製した。樹脂成分と添加物の全ては、押出機の背後にある一フィーダから供給された。短繊維は、押出機の中間にあるサイドフィーダから供給された。配合されたペレットを、約325℃の溶融温度でNissie FN3000射出成形機上の4mmの多目的引張り試験片内に成形した。
【0031】
サンプルの調製および物理試験
実施例および比較例の組成物を、4mmのISO汎用試験片内に成形した。試験片を用いて、23℃かつ、成形乾燥時におけるサンプルの機械的性質を測定した。
引張り強度、破断時の伸び率、および引張り弾性率は、成形乾燥時、23℃でのISO 527−1/−2、および室温で5mm/分の着色速度により、引張り試験機上で試験した。
ノッチ付アイゾッド試験に関しては、多目的引張り試験片を切断してノッチ付し、成形乾燥時23℃でのISO 180によりCEAST衝撃試験機上で試験片を試験した。
【0032】
プレッシャクッカ試験
また、事前設定時間に121℃、2気圧、100%の相対湿度でのオートクレーブ中で試験片を調整した。機械的性質は、調整された試験片上で測定し、結果を、無調整試験片の性質と比較した。調整試験片の機械的性質と物理的性質の保持パーセントを、表中に記載してある。物理的性質の保持性が大きいほど、耐加水分解性がより良好であることを示している。
【0033】
材料
銅安定化剤とは、無機銅塩の熱安定化剤のことである。
【0034】
Licowax(登録商標)OPは、Clariant社、Charlotte、ノースカロライナ州28205、米国により製造された部分的けん化エステルのワックスである。
【0035】
タルクは、Barretts Minerals社、Dillon、モンタナ州、米国により製造されたM10−52タルクである。
【0036】
PPG3540は、PPG Industriesから入手できる3.2mm長の細断サイズガラスである。
【0037】
ポリマーAとは、ポリアミド6T/DTコポリマーであるHTN501 NC010のことであり、295℃から305℃の範囲の融点、約0.88の固有粘度(IV)、約40の酸末端基価、約50のアミン末端基価を有し、E.I.DuPont de Nemours、Wilmington、デラウェア州から入手できる。
【0038】
ポリマーBとは、ポリアミド6T/DTコポリマーのことであり、295℃から305℃の範囲の融点、0.90のIV、34の酸末端基価、および77のアミン末端基価を有し、以下の手法に従って調製される。
【0039】
ポリアミド塩の調製:水中およそ40重量パーセントのポリアミド6T/DTの50/50塩溶液を以下のとおり調製した。すなわち、水中92重量パーセントのヘキサメチレンジアミンと2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミンの重量比50:50の混合物352kg、テレフタル酸464kgおよび水1210kgを塩タンクに加えた。塩溶液を窒素で散布し、再循環させ、90℃に加熱した。完全に溶解したら、塩溶液のpHを8.5±0.2に調整した。さらなる量として、水中92重量パーセントのヘキサメチレンジアミンと2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミンの50:50混合物17.7kg、純粋な2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン17.7kg、次亜リン酸ナトリウム145gおよび水中28重量パーセントの酢酸2.0kgを塩タンクに加えた。次にこのように調製したポリアミド6T/DT塩溶液を供給タンクに入れ、塩溶液を90℃に維持した。
【0040】
連続重合法の条件:次に重合装置中で90分の持続時間を維持するために必要な塩速度で、塩溶液を、供給タンクから重合装置へ連続して汲み出した。1.2kgの水、7.7kgの2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、7.0kgの水中28重量パーセントの酢酸、および1.5gのCarbowax8000からなるマスターバッチ溶液を、重合装置に流入する塩供給液へ20ml/分の速度で注入した。重合装置は、245℃、395ポンド/平方インチ圧力で操作し、そこで塩を濃縮し、予備重合し、蒸気および他の揮発性成分を連続的に排気した。次いで濃縮プレポリマーを、フラッシャフィードポンプによりフラッシング装置に供給し、そこでプレポリマーをさらに重合し、水を除去し、圧力を徐々に周囲圧に低下させた。その間、フラッシング装置の出口温度は、245℃から320℃に上昇した。次にポリマーを、400mmHgの減圧に維持された仕上機に供給し、そこでさらなる分子量増加を実施し、水を除去した。仕上機の温度は320℃であり、持続時間を調節して所望のIV生成物を得た。最後にポリマー溶融物を、転送ラインを通して仕上機からダイに汲み出し、細いより糸に押出し、冷却し、ペレットに切断し、回収した。ポリマー率は、およそ1時間当り30kgであった。
【0041】
ポリマーCとは、295℃から305℃の範囲の融点、約1.02のIV、34の酸末端基価、および83のアミン末端価を有するポリアミド6T/DTコポリマーのことである。
【0042】
ポリマーCは、マスターバッチ溶液が、7.0kgの水、6.3kgの2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2.6kgの水中28重量パーセントの酢酸、および1.5gのCarbowax8000であること以外、ポリマーBと同じ処方および同じ重合法の条件を用いて作製した。
【実施例】
【0043】
実施例1
実施例1は、高酸末端価を有する熱可塑性ポリアミドの合成を示してある。
【0044】
ポリマーDとは、295℃から305℃の範囲の融点、約0.88のIV、74の酸末端基価、および34のアミン末端価を有するポリアミド6T/DTコポリマーのことである。
【0045】
ポリマーDは、マスターバッチ溶液が、8.3kgの水、2.1kgの2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、5.5kgの水中28重量パーセントの酢酸、および1.5gのCarbowax8000であること以外、ポリマーBと同じ処方および同じ重合法の条件を用いて作製した。
【0046】
実施例2
実施例2は、高酸末端価を有する熱可塑性ポリアミドの合成を示している。
【0047】
ポリマーEとは、295℃から305℃の範囲の融点、約0.97のIV、101の酸末端基価、および27のアミン末端価を有するポリアミド6T/DTコポリマーのことである。
【0048】
ポリマーEは、マスターバッチ溶液が、8.9kgの水、3.3kgの2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2.2kgの水中80重量パーセントのヘキサメチレンジアミン、1.67kgの水中28重量パーセントの酢酸、および1.5gのCarbowax8000を加えて作製されたこと以外、ポリマーBと同じ処方および同じ重合法の条件を用いて作製した。
【0049】
実施例3および4ならびに比較例1−3
実施例3および4ならびに比較例1−3の組成は、表1に記載してある。組成物は各々、100.25重量部に製剤化した。表1にはまた、成形乾燥時(DAM)、および種々のPCT曝露後の試験片の物理的性質を記載してある。
【0050】
表1中のデータは、70mequiv/Kg超の酸末端価を有するポリアミドDとEを含んでなる実施例3と4の組成物が、プレッシャクッカ試験において予想外にも、より低いアミン末端価を有するものよりもより高い耐加水分解性を呈することを示してある。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)群(I)のポリアミドからなる群から独立して選択されるポリアミド樹脂であって、
前記群(I)のポリアミドは、少なくとも260℃の融点を有し、および
(a)(ii)8個から20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4個から20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン
からなる群の1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される95モルパーセント超の半芳香族反復単位;と
(b)(ii)6個から20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および4個から20個の炭素原子を有する前記脂肪族ジアミン;および
(iii)4個から20個の炭素原子を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群の1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される5モルパーセント未満の脂肪族反復単位と;
を含む、ポリアミド樹脂;
B)0重量パーセントから60重量パーセントの1種または複数種の補強剤;および
C)0重量パーセントから50重量パーセントの、反応性官能基および/またはカルボン酸の金属塩を含む1種または複数種のポリマー強化剤
を含む熱可塑性組成物であって;
前記重量パーセンテージは、前記熱可塑性組成物の全重量に基づき;前記ポリアミド樹脂は,少なくとも約50meq/Kgの酸末端を有する熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂が,少なくとも約60meq/Kgの酸末端を有する請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
10重量パーセントから60重量パーセントの1種または複数種の補強剤を含む請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
2重量パーセントから20重量パーセントの、反応性官能基および/またはカルボン酸の金属塩を含む1種または複数種のポリマー強化剤を含む請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂が、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA6T/DT)である請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)反復単位の比率が50/50である請求項5に記載の熱可塑性組成物。

【公表番号】特表2013−515100(P2013−515100A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544954(P2012−544954)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061568
【国際公開番号】WO2011/084797
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】