説明

高防湿性を有する包装袋

【課題】アルミニウム箔に起因する優れた防湿性を有すると共に、内容物の視認性にも優れていて、電気・電子機器関連部材、光学関連部材等の包装等を包装に好適に用いることが可能な、高防湿性を有する包装袋の提供。
【解決手段】防湿性に優れる少なくとも2種類の積層シート状包装部材が組み合わされてなる包装袋であって、一方の積層シート状包装部材は、高分子フィルムからなる基材の上にアルミニウム箔層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなるアルミ包材2であって、他方の積層シート状包装部材は、高分子フィルムからなる基材の上に無機酸化物からなる蒸着薄膜層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなる透明蒸着包材3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、日用品、エレクトロニクス系商品、光学系商品等の包装に用いられる包装用の袋、特に、電気・電子機器関連部材、光学関連部材等の防湿対策が必要とされる物品の包装に好適に用いられる、高防湿性を有する包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器関連部材や光学関連部材等の包装に用いられる包装用シートや包装体は、包装される内容物の変形や性能劣化を抑制してそれらの機能や性質を保持できるようにするために、酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を受けないようにするためのガスバリア性を有している必要がある。特に、前記した電気・電子機器関連部材や光学関連部材等の包装に用いられる包装材料には、水蒸気による影響を受けないようにするための高防湿性が強く要求されている。そして、昨今のIT産業の進歩により、電気・電子機器関連部材や光学関連部材等にあっては、高機能化・高精度化・緻密化が進み、それらの包装に用いられる種々の包装用シートや包装体にもより高い防湿性が求められるようになってきている。
【0003】
このような状況のもと、従来は、高分子物質の中では比較的にガスバリア性に優れる塩化ビニリデン樹脂からなるフィルムまたはそれらをコーティングしたフィルム等が包装材料としてよく用いられてきた。しかし、それらのガスバリア性は温度や湿度等の影響を受け易く、高度なガスバリア性が要求される包装には使用できなかった。そこで高度なガスバリア性が要求される包装に供される包装材料としては、アルミニウム等の金属からなる金属箔等をガスバリア層として有するものを用いざるを得なかった。
【0004】
ところが、アルミニウム等の金属からなる金属箔等をガスバリア層として具備してなる包装材料は、温度や湿度等による影響を受け難い高度なガスバリア性を有しているが、それを介して内容物を確認することができず、また使用後の廃棄の際には不燃物として処理しなければならず、さらには包装されている内容物の検査の際には金属探知器が使用できず、解決すべき種々の問題点を有していた。特に、電気・電子機器関連部材や光学関連部材等は海外で生産されているものが多いが、これらが上記したような包装用シートや包装体によって包装されて輸出されたような場合には、税関等での内容物の検査には包装用シートや包装体の一部を破壊する必要がでてくることから、高防湿性を有するとと共に、内容物を目視または金属探知機等で非破壊方式で検査できる透明性を有する包装材料の開発が強く望まれていた。
【0005】
このような状況のもと、温度や湿度等により内容物の品質に影響が出難いようにしたもの、高い防湿性を有するもの、透明性に優れるもの、燃焼廃棄が出来るもの、金属探知機検査適性を有するもの、等々の包装用シートや包装体が、コーティング・真空蒸着・スパッタリング等の技術を駆使して種々開発されてきている(例えば、独鈷文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】米国特許第3442686号明細書
【特許文献1】特公昭63−28017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような状況に基づいてなされたものであって、アルミニウム箔に起因する優れた防湿性を有すると共に、内容物の視認性にも優れていて、電気・電子機器関連部材、光学関連部材等の包装等を包装に好適に用いることが可能な、高防湿性を有する包
装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような目的を達成すべくなされ、請求項1記載の発明は、防湿性に優れる少なくとも2種類の積層シート状包装部材が組み合わされてなる包装袋であって、一方の積層シート状包装部材は、高分子フィルムからなる基材の上にアルミニウム箔層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなるアルミ包材であって、他方の積層シート状包装部材は、高分子フィルムからなる基材の上に無機酸化物からなる蒸着薄膜層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなる透明蒸着包材であることを特徴とする高防湿性を有する包装袋である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記透明蒸着包材の面積率とアルミ包材の面積比が、1:99〜50:50であることを特徴とする。
【0009】
さらにまた、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の高防湿性を有する包装袋において、前記2種類の積層シート状包装部材がそれらの周縁部のヒートシール層の部分で貼り合された構成となっていて、一方の積層シート状包装部材は前記アルミ包材からなり、他方の積層シート状包装部材は前記透明蒸着包材であることを特徴とする。
【0010】
さらにまた、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、包装袋を構成する各積層シート状包装部材の最外層には静電気帯電防止層が設けられていて、最外層表面の表面抵抗率が1010Ω/□以下であることを特徴とする請求項1。
【0011】
さらにまた、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、包装袋を構成する各積層シート状包装部材の最内層には静電気帯電防止剤を含有するヒートシール層が設けられていて、最内層表面の表面抵抗率が1012Ω/□以下であることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、透明蒸着包材の蒸着薄膜層は、物理蒸着法で成膜された酸化珪素または酸化アルミニウムのいずれかからなることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項7記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、透明蒸着包材の蒸着薄膜層は、化学蒸着法で成膜された酸化珪素とその副組成物からなることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、透明蒸着包材の蒸着薄膜層上に、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド及び/またはその加水分解物及び/またはその重合物の少なくとも1種類以上を成分にも持つ塗布剤の塗布薄膜を加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【0015】
さらにまた、請求項9記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、透明蒸着包材の蒸着薄膜層上に、Si(OR14およびR2Si(OR33(R1、R3はCH3,C25,C24OCH3等の加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を成分に持つ塗布剤の塗布薄膜を加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、積層シート状包装部材を構成する高分子フィルムからなる基材の片面もしくは両面には、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理により前処理層が設けられていることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、請求項11記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋において、積層シート状包装部材を構成する高分子フィルムからなる基材の片面もしくは両面には、アクリルポリオールとイソシアネート化合物及びシランカップリング剤との複合物からなるプライマー層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の高防湿性を有する包装袋は、アルミニウム箔に起因する優れた防湿性を有すると共に、内容物の視認性にも優れていて、電気・電子機器関連部材、光学関連部材等の包装等を包装に好適に用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の高防湿性を有する包装袋について図面を用いて詳細に説明する。図1と図2には、本発明の高防湿性を有する包装袋の外観が示してある。図3には、本発明の高防湿性を有する包装袋の一部を構成する透明蒸着包材の一例の概略の断面構成が示してあり、図5には、本発明の高防湿性を有する包装袋の他の一部を構成するアルミ包材の概略の断面構成が示してある。
【0020】
図1と図2にも示すように、本発明の高防湿性を有する包装袋1、5は、防湿性に優れる少なくとも2種類の積層シート状包装部材が組み合わされてなる包装袋であり、一方の積層シート状包装材料は、高分子フィルムからなる基材の上にアルミニウム箔層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなるアルミ包材2、6A、6Bであって、他方の積層シート状包装部材は、高分子フィルムからなる基材の上に無機酸化物からなる蒸着薄膜層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなる透明蒸着包材3、7である。
【0021】
このような構成の高防湿性を有する包装袋を構成する少なくとも2種類の積層シート状包装材料の一方の透明蒸着包材の概略の断面構成の一例が図3に示してあるが、この透明蒸着包材は、高分子フィルムからなる基材31の片面にプラズマを利用したRIEによる前処理によって前処理層32が形成されていて、この前処理層32の上には、無機酸化物からなる蒸着薄膜層34とガスバリア性被膜層35とポリアミド樹脂からなるポリアミド層37とヒートシール層38が順次積層されてなるものである。
【0022】
また、図4には、上記した透明蒸着包材とは一部の構成が異なる他の透明蒸着包材の概略の断面構成が示してある。この透明蒸着包材は、前述した透明蒸着包材と較べると、高分子フィルムからなる基材41と無機酸化物からなる蒸着薄膜層44の間にプライマー層42が設けられている点で異なっているがその他の構成層は同じものである。なお、図中、36、46は静電気の帯電を防止するために設けられている静電気帯電防止層を示している。
【0023】
一方、図5には、高防湿性を有する包装袋を構成する少なくとも2種類の積層シート状包装材料のもう一方のアルミ包材の概略の断面構成が示してある。このアルミ包材は、二軸延伸ポリアミドフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルム等の高分子フィルムからなる基材51の上にアルミニウム箔層52とヒートシール層53が少なくとも積層されてなるものである。図中の54、55は、接着剤層を示している。
【0024】
上述したアルミ包材と透明蒸着包材の一部を構成する基材31、41、51は高分子フ
ィルムからなるものである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート等からなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等からなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性プラスチックフィルム等が挙げられる。これらは、延伸されていても、未延伸であってもよいが、機械的強度に優れるものや寸法安定性を有するものが好ましく用いられる。これらの中では、耐熱性等の面から二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートがより好ましく用いられる。またこの基材の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等からなる薄膜層が設けられていてもよく、さらには、この上に形成される薄膜層との密着性をよくするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理等を適宜施しておいても構わない。なお、透明蒸着包材を構成する基材としては、透明性を有しているものを用いる必要がある。
【0025】
基材の厚さは1μm以上であることが好ましいが、包装材料としての適性、種々の層を積層する場合も在ること、さらには後述する無機酸化物からなる蒸着薄膜層やガスバリア性被膜層等を形成する場合の加工性等を考慮すると、実用的には3〜200μm程度の範囲とすることが好ましい。
【0026】
図3に示す透明蒸着包材にあっては、基材31と無機酸化物よりなる透明蒸着薄膜層34との密着性を向上させるため、基材31の表面にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施し、前処理層32が設けられている。このRIEによる処理を行うことで、処理時に発生したラジカルやイオンを利用して基材の表面に官能基を持たせることができる(化学的効果)と共に、表面をイオンエッチングして不純物等を飛散させたり、平滑化が図られる(物理的効果)ことが期待される。したがって、このような表面処理を行うことにより、無機酸化物の緻密な蒸着薄膜を形成させることができる。その結果、基材31と無機酸化物よりなる蒸着薄膜層34との密着性をより強化することができ、ガスバリア性や防湿を向上させ、蒸着薄膜層34でのクラック発生を防止できるようになる。
【0027】
RIEによる前処理は表面処理を目的としているので、前述したコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、フレーム処理等の一般的な前処理を採用しても構わない。
【0028】
このRIEによる前処理を行うためのガスとしては、アルゴン、酸素、窒素、水素、亜酸化窒素、ヘリウム等を使用することが出来る。これらのガスは単独であっても、2種類以上のガスを混合したものであってもよい。ガス種の選択は、処理中に与えられるエネルギーの大きさや扱いやすさ等を考慮して適宜に行えばよい。
【0029】
また、処理に当たっては、複数基の処理器を用いて連続してRIEによる前処理を行うようにしてもよい。この時、複数基の処理器は同じものを使用する必要はない。
【0030】
RIEによる前処理の処理条件は、基材の種類、放電装置特性等に応じて適宜のものを設定すればよい。ただし、プラズマの自己バイアス値は200V以上2000V以下にすることが好ましい。200Vより若干低い値でもある程度の密着性を発現させることが可能であるが、処理をしていないものに比べて優位性が低い。また、2000Vを越える高い値であると、強い処理がかかりすぎて基材の表面が劣化し、密着性が低下する原因にもなる。また、処理に用いるガス及びその混合比等に関しては、処理器のポンプ性能や放電装置の取り付け位置等によってガス導入分と実効分とでは流量が異なってくるので、基材の種類、処理装置特性等に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
また、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施す代替として、アクリルポリオール、イソシアネート化合物、シランカップリング剤とを含んでなる複合物からなるプライマー層を設けるようにしてもよい。このような層が設けられているのが図4に示す透明蒸着包材である。要するに、このプライマー層42は、基材41と無機酸化物からなる蒸着薄膜層44との間の密着性を高めるために設けられる層である。
【0032】
発明者等が鋭意検討の結果、このプライマー層42の構成材料としてより好ましく用られるものは、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物、シランカップリング剤等からなる組成物であるという知見を得ている。
【0033】
しかし、密着性向上の目的を達成出来れば、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系等の一般的なプライマー剤を用いることも可能である。
【0034】
以下、上記したプライマー層42を構成するアクリルポリオール及びイソシアネート化合物、シランカップリング剤等からなる組成物について、さらに詳細に説明する。
【0035】
アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物もしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価は5〜200(KOHmg/g)の間にあることが好ましい。
【0036】
また、前記イソシアネート化合物は、アクリルポリオールと反応してできるウレタン結合により基材や無機酸化物からなる蒸着薄膜層との密着性を高めるために添加されるもので、主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これらの作用を達成するため、イソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のモノマー類と、これらの重合体、誘導体が好ましく用いられる。これらは単独でまたは混合して用いられる。
【0037】
これらのアクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるのもではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生して加工上問題になることがある。そこでアクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合比としては、イソシアネート化合物由来のイソシアネート基がアクリルポリオール由来の水酸基の50倍以下となるようにすることが好ましい。特に好ましいのはイソシアネート基と水酸基が等量で配合される場合である。混合方法は、汎用的な方法が採用され、特に限定されるものではない。
【0038】
また上記したシランカップリング剤としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができる。具体的には、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカ
ップリング剤或いはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0039】
さらにこれらのシランカップリング剤のうち、アクリルポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものは特に好ましく用いられる。より具体的には、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N―β―(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むもの、さらにはγ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ―(3、4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むもの等であり、これらを単独で、または2種以上を混合して用いることができる。これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がアクリルポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはアクリルポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることにより、さらに強固なプライマー層を形成し、他端のアルコキシ基等の加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物中の金属や、無機酸化物の表面の活性の高い水酸基等と強い相互作用を示し、無機酸化物とのより高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができる。よって上記シランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0040】
アクリルポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比で1/1から100/1の程度の範囲であることが好ましい。より好ましくは2/1から50/1の程度の範囲にあればよい。
【0041】
溶解および希釈溶媒としては、上記したそれぞれの構成成分を溶解および希釈可能とするものであれば特に限定されるものではない。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等を単独で、あるいは任意に配合させて用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸や酢酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることがより好ましい。
【0042】
また、シランカップリング剤の配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性および重合安定性の点から塩化錫(SnCl2、SnCl4)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)2Cl2)、錫アルコキシド等の錫化合物が好ましい。これらの触媒は、配合時に直接添加して使用してもよく、またメタノール等の溶媒に溶かして使用してもよい。そのときの添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果が得られないため、シランカップリング剤に対してモル比で1/10〜1/10000の範囲、より好ましくは1/100〜1/2000の範囲であればよい。
【0043】
プライマー層42は、例えば、上記したアクリルポリオール、イソシアネート化合物、シランカップリング剤等を任意の配合比で混合して調合した複合溶液の薄膜層を基材上にコーティングして形成するが、その調合法としては、シランカップリング剤とアクリルポリオールを混合し、溶媒と希釈剤を加えて任意の濃度になるように希釈した後、イソシアネート化合物と混合して複合溶液とする方法、または予めシランカップリング剤を溶媒中
に混合しておき、その後にアクリルポリオールを混合させたものを溶媒と希釈剤に加えて任意の濃度になるように希釈し、しかる後にイソシアネート化合物を加えて複合溶液とする方法等がある。
【0044】
このような複合溶液中には、各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を必要に応じて添加することも可能である。
【0045】
プライマー層42の厚さは、上記した複合溶液からなる均一な薄膜が形成できる程度のものであれば特に限定されるものではないが、薄膜の乾燥膜厚は0.01〜2μm程度の範囲にあることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な薄膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は厚いために薄膜にフレキシビリティを保持させることが難しくなり、外部から力が加わると薄膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。
【0046】
プライマー層42の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用される条件が適宜採用される。
【0047】
一方、無機酸化物からなる蒸着薄膜層34、44は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物等の無機酸化物の蒸着薄膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を有するものである。その中でも、特に酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム等からなる蒸着薄膜層は酸素及び水蒸気に対するバリア性に優れるので好ましい。ただし、無機酸化物からなる蒸着薄膜層は、上述した無機酸化物からなるものに限定されるものではなく、上記条件に適合する材料であれば適宜用いることができる。
【0048】
無機酸化物からなる蒸着薄膜層34,44の厚さは、用いられる無機酸化物の種類や組成等により最適な値が決められるが、一般的には5〜300nm程度の範囲にあることが望ましい。ただし厚さが5nm未満であると均一な膜が得られ難く、膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことが難しい場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることが難しくなり、薄膜層成膜後に折り曲げ、引っ張り等の外力が加わると、薄膜層に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、5〜100nm程度の範囲にあればよい。
【0049】
無機酸化物からなる蒸着薄膜層34、44を、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)により設けられた前処理層32やプライマー層42上に形成する方法としては種々のものがある。通常は真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等を用いることもできる。現時点では真空蒸着法が最も優れている。また、真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が好ましく、蒸着薄膜層と基材の密着性及び蒸着薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着薄膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガス等を吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0050】
プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施す場合、この無機酸化物からなる蒸着薄膜層の形成はインラインで行うことができる。
【0051】
一方、 無機酸化物からなる蒸着薄膜層34、44上に設けられているガスバリア性被膜層35,45は、金属箔並の高度なガスバリア性を付与するために、また蒸着薄膜層を物理的に保護するために、さらには後加工で印刷を可能とするため等の目的により設けられるものである。
【0052】
このような目的を達成するため、このガスバリア性被膜層35、45は、水酸基含有高分子のみ、またはそれと、1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物を主剤とするガスバリア性の塗布剤を用いて形成されることが好ましい。ガスバリア性の塗布剤に含まれる各成分についてさらに詳細に説明する。
【0053】
ガスバリア性の塗布剤に用いられる水酸基含有高分子とは、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略す。)やポリ(ビニルアルコール−CO−エチレン)、セルロース、デンプン等を指す。これらの中では、とりわけPVAが取り扱い性やガスバリア性を向上させる能力に優れるが、必ずしもこれに限定されるものではない。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであり、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等を含むものである。
【0054】
金属アルコキシドには種々のものがあるが、取り扱い性やコスト等を考えれば珪素のアルコキシドが好ましく用いられる。また、ガスバリア性被膜層にさらなる柔軟性や密着性等の向上が要求されるのであれば、テトラアルコキシドに限ることなく、いわゆるシランカップリング剤を用いるようにしてもよい。
【0055】
また前述したものの代わりに、ガスバリア性被膜層38、48は、Si(OR14およびR2Si(OR33(R1、R3はCH3,C25,C24OCH3等の加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を混合してなる塗布剤を塗布してなる薄膜を加熱乾燥して得るようにしてもよい。以下、この塗布剤に含まれる各成分について詳述する。
【0056】
2Si(OR33においては、R3はCH3,C25,C24OCH3等の加水分解性基、R2は有機官能基であり、一般的にはシランカップリング剤として有機層と無機層との密着を向上させるために使用されている。本発明の透明蒸着包材においても、無機酸化物からなる蒸着薄膜層とガスバリア性被膜層との密着性向上のため用いられることが望まれる。なかでも有機官能基(R2)がビニル基、エポキシ基、ウレイド基、イソシアネート基等の非水性官能基を有するものは、非水性であるためにレトルト処理等で用いられる熱水に対する耐熱性が高く、さらにはイソシアネート基が重合したイソシアヌレートは、ガスバリア性被膜液中での取り扱いが容易で、塗布剤のゲル化も遅く、シランカップリング剤を添加することによるバリア低下も起こさずに、密着を向上させることができるため特に好ましい。
【0057】
また、水酸基を有する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、でんぷん、セルロース類であり、これらの中ではPVAを上記した塗布剤の一成分にに用いた場合にはガスバリア性が最も優れるようになる。
【0058】
ガスバリア性被膜層35、45を構成する塗布剤を調合する際は、加水分解したSi(OR14と水酸基をもつ水溶性高分子、R2Si(OR33をどのような順番で混合してもよい。ただし、Si(OR14とR2Si(OR33を別々に加水分解してから水溶性高分子に添加する方法はSiO2の微分散およびSi(OR14の加水分解効率を考慮すると望ましい混合方法といえる。
【0059】
また、塗布剤には、印刷インキや接着剤との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生防止性等を考慮して、イソシアネート化合物、コロイダルシリカやスメクタイト等の粘土鉱物、安定化剤、着色剤、粘度調整剤等の公知の添加剤を、ガスバリア性や耐水性を阻害しない範囲で添加しておいてもよい。
【0060】
このような塗布剤からなる塗布被膜の乾燥後の厚さは特に限定しないが、厚さが50μmを超えるとクラックが生じやすくなる可能性があるため、0.01〜50μm程度とすることが望ましい。
【0061】
塗布剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法等の従来公知の手段を用いることができる。被膜の厚さは、塗布剤の種類やコーティング機や加工条件等によって異なってくる。乾燥後の厚さが、0.01μm未満の場合は、均一な被膜が得られず十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は被膜にクラックが生じ易くなるため問題になることがある。好ましくは0.01〜50μm程度の範囲にあればよい。より好ましくは0.1〜10μm程度の範囲にあればよい。特に、塗布剤の塗布被膜の硬化が電子線の照射による場合には、ガスバリア性被膜層の層厚と電子線のエネルギー条件、加工速度および除電とのバランスが重要となる。過度のエネルギー供給は帯電を引き起こし、その結果として起こる放電によりガスバリア性が損なわれる場合がある為注意を要する。
【0062】
図示の透明蒸着包材の基材の、上述した蒸着薄膜層やガスバリア性被膜層等が設けられていない面には、静電気帯電防止層36、46が設けられている。包装袋内に収納される電気・電子機器関連部材、光学関連部材等の内容物は、静電気により品質の劣化が起きることが危惧されるが、この静電気帯電防止層36、46は内容物の静電気による影響を抑えることを目的に設けられている層である。
【0063】
この静電気帯電防止層46、46を構成する静防コート剤の成分は、表面固有抵抗を低減するものであれば特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジエタノールアマイド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
【0064】
静防コート剤の塗布方法は、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法等の従来公知の手段を用いることができる。塗布膜の厚さは、静防コート剤の組成や塗布加工機や加工条件によって異なるってくるが、包装袋とした時に上記した所期の機能を発現できるように塗布できる方法であれば、特に限定されるものではない。
【0065】
また、包装袋としたときに腰を持たせ、突き刺しや摩擦への耐性を付与するために、ヒートシール層とガスバリア性被膜層との間に、図3と図4に示すように、ポリアミド層37、47を設けておいてもよい。具体的には、ε−カプロラクタムの開環重合反応で得られる6−ナイロン、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸塩との重縮合反応で得られる6,6−ナイロン等の周知のポリアミド樹脂により形成すればよい。より具体的には、これらのポリアミド樹脂をフィルム状に加工したものを積層して設ければよい。特に二軸方向に任意に延伸されたものが、機械強度や寸法安定性に優れているので好ましく用いられる。このポリアミド層の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等により薄膜層をさらに設けるようにしてもよく、さらには薄膜との密着性を良くするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理等を施しておいてもよく、さらにまた薬品処理、溶剤処理等を施してもおいてもよい。
【0066】
ポリアミド層37、47の厚さは特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他のフィルムとラミネートする場合の加工性等を考慮すると、一般的には5〜100μm程度の範囲であればよい。実用的には10〜30μm程度とすることが好ましい。
【0067】
このポリアミド層37、47の上に設けられているのがヒートシール層38、48であり、包装袋を形成する際に接着層として作用するために設けられるものである。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂からなる薄膜層である。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μm程度の範囲にあればよい。形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるが、その他の種々の方法により積層して設けるようにしてもよい。
【0068】
以上、本発明の高防湿性を有する包装袋を構成するアルミ包材と透明蒸着包材を説明したが、本発明の高防湿性を有する包装袋はこれらの防湿性に優れる少なくとも2種類の積層シート状包装材料の組み合わせにより構成されものである。
【0069】
図1と図2には、このような構成になる高防湿性を有する包装袋の例がそれぞれ示してある。
【0070】
図1に示す高防湿性を有する包装袋1は、防湿性に優れる2種類の積層シート状包装材が組み合わされた構成のもので、一方の積層シート状包装材は前記したアルミ包材2で、他方の積層シート状包装材は前記した透明蒸着包材3であって、これらが最内層のヒートシールの周辺部分でヒートシールされている。この高防湿性を有する包装袋1は、防湿性に優れていると共に、透明蒸着包材3の側から内容物4が目視で確認できるようになっている。
【0071】
一方、図2に示す高防湿性を有する包装袋5も、防湿性に優れる2種類の積層シート状包装材が組み合わされた構成のものであるが、透明蒸着包材7はアルミ包材6Bの一部にくり貫かれた矩形状の窓部を封じるように取り付けられ、窓部が設けられている点で多少異なっているが、防湿性に優れていると共に、アルミ包材6Bの側から内容物が目視で確認できるようにもなっている。
【0072】
以下、本発明の高防湿性を有する包装体を具体的な実施例を挙げてさらに説明する。
【実施例1】
【0073】
基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、このPETフィルムの片面に、プラズマ処理器を用いてRIEによる前処理を施し前処理層を設けた。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用い、処理ガスにはアルゴン/酸素混合ガスを用いた。また、プラズマの自己バイアス値は680Vであった。
【0074】
RIEによる前処理に続き、インラインでRIEにより設けられた前処理層の上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置によって、厚さ15nmの酸化アルミニウムからなる透
明蒸着薄膜層を積層した。
【0075】
次いで、透明蒸着薄膜層上に下記組成からなる塗布剤を用いてグラビアコート法により薄膜を塗布し、その後その薄膜を120℃で1分間乾燥させ、厚さ0.5μmのガスバリア性被膜層を形成した。。
[ガスバリア性塗布剤の調合]
下記するA液とB液を重量%で60/40に混合し、ガスバリア性塗布剤とした。
[A液]
テトラエトキシシラン10.4gに0.1N塩酸89.6gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分3重量%(SiO2換算)の加水分解溶液。
[B液]
水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソピロピルアルコール=90:10、重量比)。
【0076】
続いて、上記基材のガスバリア性被膜層等を設けなかった面に、テトラアルキルアンモニウム塩からなる薄膜をグラビアコート法により塗布し、その後のそ薄膜を120℃で1分間乾燥させ、厚さ0.5μmの静電気帯電防止層(表面抵抗率:1.0×109Ω/□)を形成し、積層体aを得た。
【0077】
RIEによる前処理層の代わりに、下記した組成の複合物溶液からなる薄膜をグラビアコート法により塗布、乾燥させることによって厚さ0.1μmのプライマー層を形成したこと以外は上述した積層体aと同様にして、積層体bを得た。
[複合物溶液の調合]
希釈溶媒(酢酸エチル)中に、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン1重量部とアクリルポリオール10重量部を混合し攪拌した。次いで、XDIとIPDIの混合比が7対3のイソシアネート化合物をアクリルポリオールの水酸基に対しこのイソシアネート化合物のイソシアネート基が等量となるように加えた。次に、この混合溶液を添加化合物の総濃度として2重量%となるように希釈したものを複合物溶液として用いた。
【0078】
さらに、前記した静電気帯電防止層の代わりに、アルキルスルホン酸ナトリウムからなる静電気帯電防止層(表面抵抗率:1.0×109Ω/□)を設けた以外は積層体aと同様にして、積層体cを得た。
【0079】
次に、上記の各積層体a〜cのガスバリア性被膜層の上に、厚さが15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)を、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネートし、ポリアミド層を設けた。
【0080】
そして最後に、ポリアミド層の上に、静防コート剤を混練した低密度ポリエチレンフィルムを、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネートヒートシール層(表面抵抗率:1.0×109Ω/□)を設けることにより、透明蒸着包材A〜Cをそれぞれ得た。
【0081】
一方、基材として、厚さが15μmの二軸延伸ポリアミド(ONy)フィルムと、厚さが12μmの二軸ポリエステルフィルムを用意し、それぞれのフィルムの面に厚さが9μmのアルミニウム箔を二液硬化型ポリウレタン系接着剤でドライラミネートすると共に、積層されたアルミニウム箔の面の上に静防コート剤を混練した低密度ポリエチレンフィルムを、二液硬化型ポリウレタン系接着剤でさらにドライラミネートすることにより、アルミ包材DとEを得た。
【0082】
各透明蒸着包材A、B、Cとアルミ包材D、Eの水蒸気透過率(g/m2・day、4
0℃−90%RH)は表1に示すようであった。
【0083】
【表1】

このような透明蒸着包材A、B、Cとアルミ包材D、Eのそれぞれから2種類の包材を表2に示すような組み合わせで選択し、各包材のヒートシール層側を接するように配置させてから周辺部でヒートシールすることにより、実施例1〜5に係る一辺が10cmの四方シール袋1〜5と比較のための実施例6〜9に係る一辺が10cmの四方シール袋6〜9の計9個を製袋した。各四方シール袋の防湿性と透明性とデットホールド性の評価をと総合評価と共に表2に示す。
【0084】
各四方シール袋の防湿性、透明性、デッドホールド性の評価は次のようにして行った。[防湿性の評価]
内容物として微量水分測定用塩化カルシウム約10gを四方シール袋に充填した後、40℃−90%RHの環境下に30日間保存し、m2換算して、減少率を計算した。重量減少が0.1グラム以下のものを◎、0.1から1グラムの範囲での減少のものを○として評価した。
[透視性の評価]
四方シール袋内に電子機器部品を収納した後、目視により内容物を観察し透視性を評価した。内容物が包材のどの部分からも明確に確認できたものを◎を、一方の包材側から明確に確認できたものを○、どこからも内容物が確認できなかったものを×として評価した。
<デッドホールド性の評価>
一辺が10cmの四方シール袋を開口部より2cmの位置で折り返して重ね合わせた後、200gの重さの金属板を折り返し部全体を覆うように乗せた状態で10秒間保持し、しかる後に金属板を直ちに取り外してから5秒経過した時のフィルムの立ち上がり角度を測定した。0〜10°となったものを◎、10〜20°となったものを○、20〜180°となったものを×として評価した。
【0085】
【表2】

実施例1〜5に係る四方シール袋は、高度な防湿性(0.1g/m2/day以下)を保ちつつ透視性、デッドホールド性を共に有し、極めて実用性の高い包装袋であった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の高防湿性を有する包装袋の一例の外観を示す説明図である。
【図2】本発明の高防湿性を有する包装袋の他の例の外観を示す説明図である。
【図3】本発明の高防湿性を有する包装体の一部を構成する透明蒸着包材の概略の断面構成を示す説明図である。
【図4】本発明の高防湿性を有する包装体の一部を構成する透明蒸着包材の他の例の概略の断面構成を示す説明図である。
【図5】本発明の高防湿性を有する包装体の一部を構成するアルミ包材の他の例の概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1、5 高防湿性を有する包装袋
2、6A、6B アルミ包材
3、7 透明蒸着包材
4 内容物
31、41、51 基材
32 前処理層
34、44 透明蒸着薄膜層
35、45 ガスバリア性被複層
37、47 ポリアミド層
38、48、53 ヒートシール層
42 プライマー層
52 アルミニウム箔層
54、55 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防湿性に優れる少なくとも2種類の積層シート状包装部材が組み合わされてなる包装袋であって、一方の積層シート状包装部材は、高分子フィルムからなる基材の上にアルミニウム箔層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなるアルミ包材であって、他方の積層シート状包装部材は、高分子フィルムからなる基材の上に無機酸化物からなる蒸着薄膜層とヒートシール層とが少なくとも積層されてなる透明蒸着包材であることを特徴とする高防湿性を有する包装袋。
【請求項2】
前記透明蒸着包材の面積とアルミ包材の面積の比が、1:99〜50:50であることを特徴とする請求項1記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項3】
前記2種類の積層シート状包装部材がそれらの周縁部のヒートシール層の部分で貼り合された構成となっていて、一方の積層シート状包装部材は前記アルミ包材からなり、他方の積層シート状包装部材は前記透明蒸着包材からなることを特徴とする請求項1または2記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項4】
包装袋を構成する各積層シート状包装部材の最外層には静電気帯電防止層が設けられていて、最外層表面の表面抵抗率が1010Ω/□以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項5】
包装袋を構成する各積層シート状包装部材の最内層には静電気帯電防止剤を含有するヒートシール層が設けられていて、最内層表面の表面抵抗率が1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項6】
透明蒸着包材の蒸着薄膜層は、物理蒸着法で成膜された酸化珪素または酸化アルミニウムのいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項7】
透明蒸着包材の蒸着薄膜層は、化学蒸着法で成膜された酸化珪素とその副組成物からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項8】
透明蒸着包材の蒸着薄膜層上に、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド及び/またはその加水分解物及び/またはその重合物の少なくとも1種類以上を成分にも持つ塗布剤の塗布薄膜を加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項9】
透明蒸着包材の蒸着薄膜層上に、Si(OR14およびR2Si(OR33(R1、R3はCH3,C25,C24OCH3等の加水分解性基、R2は有機官能基)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子を成分にも持つ塗布剤の塗布薄膜を加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項10】
積層シート状包装部材を構成する高分子フィルムからなる基材の片面もしくは両面には、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理により前処理層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。
【請求項11】
積層シート状包装部材を構成する高分子フィルムからなる基材の片面もしくは両面には、アクリルポリオールとイソシアネート化合物及びシランカップリング剤との複合物からなるプライマー層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の高防湿性を有する包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−213866(P2008−213866A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51237(P2007−51237)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】