説明

高難燃性ポリウレタンフォーム

【課題】難燃剤として非ハロゲン系難燃剤を用いたポリウレタンフォームであって、難燃性が著しく高く、特に燃焼時の溶融物の着火性が低減され、また、ポリウレタンフォームに要求される圧縮反発性等の特性にも優れた高難燃性ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を配合してなるポリウレタンフォーム配合物を発泡させて得られる高難燃性ポリウレタンフォーム。該難燃剤が非ハロゲン系難燃剤であり、該ポリオールがフタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールとを含み、フタル酸変性ポリオールの配合量が全ポリオール100重量部に対して15〜40重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高難燃性ポリウレタンフォームに係り、特に、難燃剤として非ハロゲン系難燃剤を用いた非ハロゲン系高難燃性ポリウレタンフォームであって、ポリオールとしてフタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールを併用することにより、難燃性と圧縮反発性を高めた高難燃性軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォームはOA機器やプラズマテレビ等の電化製品、その他、家庭用品等、幅広い分野で使用されており、これらの用途において、難燃性に優れることは、必須の要件とされている。
【0003】
また、プラズマテレビ用途等では、難燃性以外にも、導電性、更には、電子機器の隙間に圧縮して設置されることから、隙間の形状に追随する為の柔軟性及び高い圧縮反発力が必要とされる。このような要求特性に対して、ポリウレタンフォームは、他の材質と比較して柔軟性に優れ、特に圧縮反発力を発現できることから、電化製品の芯材等として好適に用いられている。
【0004】
こうした用途においては、ポリウレタンフォーム芯材又は製品加工後において、それぞれの用途に属した難燃規格を満たす必要がある。
近年では、プラズマテレビ等の弱電用途において、高い難燃性が強く要求されるようになってきており、難燃性の指標であるUL規格のV−0を達成することが必須となってきている。
【0005】
ポリウレタンフォームに難燃性を付与する方法としては、旧来、ハロゲン系難燃剤を用いることが一般的に行われてきた。ハロゲン系難燃剤の配合で極めて優れた難燃性を付与することができるが、ハロゲン系難燃剤は燃焼時に腐食性のハロゲンガスを発生する問題があり、また、近年の環境保護の観点から、ハロゲン系難燃剤ではなく、ハロゲンを含まない非ハロゲン系難燃剤を用いて難燃性を付与する技術が望まれている。
【0006】
従来、非ハロゲン系難燃剤の最も代表的なものとして、リン酸エステル系難燃剤があるが、このものはハロゲン系難燃剤と比較すると難燃性付与効果に劣り、その使用量を相当に多くする必要がある。しかも、液状であるために、これを多量に配合すると、圧縮反発性等の難燃性以外の要求特性が損われ、また、ウレタン反応時の発泡のバランスが崩れ、フォーム形成が困難になるという問題があった。また、液状難燃剤は、それ自体可塑性を有し、可塑剤として機能するために、その配合量が多いと、燃焼時の溶融物及びその着火性が増し、UL規格のV−0を達成し得なくなる。
【0007】
このようなリン系液状難燃剤以外の非ハロゲン系難燃剤として、水酸化マグネシウムや熱膨張性黒鉛等も知られているが、これらはいずれも十分な難燃性を得るためには、その配合量を相当に多くする必要があり、上記リン酸エステル系難燃剤の場合と同様に、難燃剤の多量配合のために、圧縮反発性等の難燃性以外の要求特性が損われ、また、ウレタン反応時の発泡のバランスが崩れ、フォーム形成が困難になるという問題がある。
【0008】
特許文献1には、ポリオールとしてフタル酸系ポリエステルポリオールを用い、難燃剤としてメラミンパウダーを用いた低燃焼性ポリウレタンフォームが提案されている。この特許文献1において、フタル酸系ポリエステルポリオールの使用量は、これを除くポリオール100重量部に対して1〜10重量部とされており(全ポリオール100重量部に対して0.99〜9重量部)、これよりも多くのフタル酸系ポリエステルポリオールを用いると、酸素原子の含有量が多くなるため燃焼しやすくなると記載されている。
【0009】
なお、ポリウレタンフォーム原料としてのポリオール中にフタル酸系ポリエステルポリオールを配合することについては、種々の提案がなされており、例えば特許文献2〜5には、フタル酸系ポリエステルポリオールを全ポリオール100重量部中に50重量部以上配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−2036号公報
【特許文献2】特開2007−217648号公報
【特許文献3】特開2002−363241号公報
【特許文献4】特開2003−246829号公報
【特許文献5】特開平9−328530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の技術でも難燃性は十分に満足できるとは言えず、また、難燃剤としてメラミンパウダーを用いるために、粉塵吸引による作業者への悪影響の問題がある。
【0012】
また、ポリオールとして、フタル酸系ポリエステルポリオールを用い、これを難燃剤と併用することにより、難燃性を高めることができるが、フタル酸系ポリエステルポリオールをポリオールの主成分として用いる特許文献2〜5の技術でも、燃焼時の溶融物の着火防止性において、十分な効果は得られていない。
【0013】
なお、特許文献1〜5に記載されるフタル酸系ポリエステルポリオールは、エチレングリコールやポリエチレングリコール等のグリコール類等のジヒドロキシ化合物にフタル酸を反応させて得られるものであり、例えば、特許文献1では、下記(式1)で表される無水フタル酸/ジエチレングリコールエステル縮合物又はテレフタル酸/ジエチレングリコールエステル縮合物であると記載され、本発明で好適に用いられるフタル酸変性ポリエーテルポリエステルポリオールとは異なる。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明は上記従来の問題点を解決し、難燃剤として非ハロゲン系難燃剤を用いたポリウレタンフォームであって、難燃性が著しく高く、特に燃焼時の溶融物の着火性が低減され、また、ポリウレタンフォームに要求される圧縮反発性等の特性にも優れた高難燃性ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリオールとしてフタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールとを併用し、フタル酸変性ポリオールを従来にない適量配合とすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0017】
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0018】
[1] ポリオール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を配合してなるポリウレタンフォーム配合物を発泡させて得られる高難燃性ポリウレタンフォームであって、該難燃剤が非ハロゲン系難燃剤であり、該ポリオールが少なくともフタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールとを含み、フタル酸変性ポリオールの配合量が全ポリオール100重量部に対して15〜40重量部であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【0019】
[2] [1]において、該メラミン樹脂含有ポリオールの配合量が全ポリオール100重量部に対して40〜80重量部であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【0020】
[3] [1]又は[2]において、該非ハロゲン系難燃剤の配合量が全ポリオール100重量部に対して5〜40重量部であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【0021】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、該フタル酸変性ポリオールがフタル酸変性ポリエーテルエステルポリオールであることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【0022】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、該メラミン樹脂含有ポリオールが、ポリオール中で、重合性モノマーを重合させることによりメラミン樹脂微粒子を形成してなるメラミン樹脂微粒子分散ポリオールであることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【0023】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、該非ハロゲン系難燃剤がリン酸エステル系難燃剤であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、難燃剤として非ハロゲン系難燃剤を用いたポリウレタンフォームにおいて、ポリオールとしてフタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールとを併用し、フタル酸変性ポリオールの配合量を制御することにより、難燃性が著しく高く、特に燃焼時の溶融物の着火性が低減され(以下、この特性を「耐ドリップ性」と称し、燃焼時の溶融物の着火性が低いことを「耐ドリップ性に優れる」と称す。)、また、ポリウレタンフォームに要求される圧縮反発性等の特性にも優れた高難燃性ポリウレタンフォームを提供することができる(請求項1)。
【0025】
本発明において、メラミン樹脂含有ポリオールの配合量は、全ポリオール100重量部に対して40〜80重量部であることが好ましく、これにより優れた難燃性と耐ドリップ性を両立することができる(請求項2)。
【0026】
また、非ハロゲン系難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤を用いることが、難燃性付与効果の面で好ましく(請求項6)、非ハロゲン系難燃剤の配合量は、全ポリオール100重量部に対して5〜40重量部とすることが、難燃性と耐ドリップ性の両立の面で好ましい(請求項3)。
【0027】
本発明で用いるフタル酸変性ポリオールは、フタル酸変性ポリエーテルエステルポリオールであることが、難燃性のみならず、圧縮反発性の向上、即ち、大きな圧縮反発力を得ると共に、その経時低下を防止する面で好ましい(請求項4)。
【0028】
また、メラミン樹脂含有ポリオールとしては、ポリオール中で、重合性モノマーを重合させることによりメラミン樹脂微粒子を形成してなるメラミン樹脂微粒子分散ポリオールであることが、難燃性、取り扱い性、反応性等の面で好ましい(請求項5)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の高難燃性ポリウレタンフォームの実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
本発明の高難燃性ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を配合してなるポリウレタンフォーム配合物を発泡させて得られる高難燃性ポリウレタンフォームであって、該難燃剤が非ハロゲン系難燃剤であり、該ポリオールがフタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールとを含み、フタル酸変性ポリオールの配合量が全ポリオール100重量部に対して15〜40重量部であることを特徴とする。
【0031】
本発明の高難燃性ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を必須原料とするが、必要に応じて、更に、触媒、架橋剤、整泡剤、その他の添加剤を配合したポリウレタンフォーム配合物を発泡させて製造される。
【0032】
[ポリオール]
本発明におけるポリオールは、フタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールとを必須成分とし、必要に応じて、その他のポリオールを含むものである。
【0033】
<フタル酸変性ポリオール>
フタル酸変性ポリオールは、ポリオールの水酸基部分にフタル酸をエステル結合して得られるものであり、フタル酸変性ポリオールの使用で、難燃性、耐ドリップ性を高め、非ハロゲン系難燃剤の必要量を低減すると共に、非ハロゲン系難燃剤の多量配合による耐ドリップ性の低下の問題を改善する。また、フタル酸変性ポリオールは、圧縮反発性の向上にも有効であり、圧縮反発力が大きく、圧縮反発力の経時低下の少ないポリウレタンフォームの実現を可能とする。
【0034】
フタル酸変性ポリオールにおいて、フタル酸とのエステル結合に供されるポリオールとしては、各種のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールが挙げられるが、本発明では、これらのうち、ポリエーテルエステルポリオールをフタル酸変性して得られるフタル酸変性ポリエーテルエステルポリオールを用いることが、得られる高難燃性ポリウレタンフォームの圧縮反発性の面で好ましい。
【0035】
この場合、フタル酸変性に用いるポリエーテルエステルポリオールは、25℃における粘度がフタル酸変性体として40000〜80000mPa・sで、水酸基価が54〜58mg−KOH/g程度となるものが好ましい。
また、このようなポリエーテルエステルポリオールをフタル酸変性して得られるフタル酸変性ポリエーテルエステルポリオールの官能基数は1.5〜4.5であることが好ましい。
【0036】
本発明においては、このようなフタル酸変性ポリエーテルエステルポリオール等のフタル酸変性ポリオールを、全ポリオール100重量部中に15〜40重量部、好ましくは20〜35重量部、より好ましくは20〜30重量部用いる。フタル酸変性ポリオールの使用量が上記範囲よりも多いと相対的に後述のメラミン樹脂含有ポリオールの割合が低減し、難燃性が不足する傾向にあり、逆に少ないとフタル酸変性ポリオールを用いることによる圧縮反発性の向上効果や耐ドリップ性の改善効果を十分に得ることができない。
【0037】
<メラミン樹脂含有ポリオール>
本発明で用いるメラミン樹脂含有ポリオールは、好ましくはポリオール中で、重合性モノマーを重合させることによりメラミン樹脂微粒子を形成してなるメラミン樹脂微粒子分散ポリオールであり、メラミン樹脂含有ポリオール中のメラミン樹脂による難燃性付与効果で、ポリウレタンフォームの難燃性を向上させることができると共に、メラミン樹脂の微粒子がポリオール中に均一に分散していることにより、微粒子の凝集等でウレタン反応を阻害することなどの不具合を生じることがなく、また、取り扱い性にも優れる。即ち、難燃性の向上を目的に、特許文献1のようにメラミン樹脂を別途配合する場合のようなメラミン樹脂微粒子による粉塵の問題も解消される。
【0038】
このメラミン樹脂含有ポリオールのベースとなるポリオールとしては、各種のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールが挙げられるが、本発明では、これらのうち、25℃における粘度が200〜2500mPa・sで、水酸基価が20〜80mg−KOH/g程度のポリエーテルポリオールが好ましい。
また、メラミン樹脂含有ポリオール中のメラミン樹脂微粒子の含有量は、5〜60重量%、特に20〜45重量%であることが、メラミン樹脂微粒子の分散安定性等の面から好ましい。
【0039】
本発明において、メラミン樹脂含有ポリオールの使用割合は、用いるメラミン樹脂含有ポリオールのメラミン樹脂含有量によっても異なるが、全ポリオール100重量部中にメラミン樹脂含有ポリオールを40〜80重量部、特に50〜70重量部用いることが好ましい。メラミン樹脂含有ポリオールの使用量が上記範囲よりも多いと相対的にフタル酸変性ポリオールの割合が低減し、フタル酸変性ポリオールを用いることによる耐ドリップ性及び圧縮反発性の向上効果を十分に得ることができず、逆に少ないとメラミン樹脂含有ポリオールを用いることによる難燃性の向上効果を十分に得ることができない。
【0040】
メラミン樹脂含有ポリオールは、特に、そのメラミン樹脂含有ポリオール中に含まれるメラミン樹脂微粒子の配合量が、全ポリオール100重量部に対して10〜30重量部となるように用いることが、難燃性、耐ドリップ性、ウレタン反応性を十分なものとする上で好ましい。
【0041】
<その他のポリオール>
本発明においては、ポリオールとして、上記のフタル酸変性ポリオール及びメラミン樹脂含有ポリオール以外のその他のポリオールを用いてもよい。
この場合、その他のポリオールとしては、通常のポリウレタンフォームの製造に使用される25℃における粘度が200〜2000mPa・sで、水酸基価が20〜80mg−KOH/g程度の各種のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
その他のポリオールは、全ポリオール中のフタル酸変性ポリオール及びメラミン樹脂含有ポリオール含有量が上記好適範囲を満たすような量で用いられ、通常、全ポリオール100重量部に対して45重量部以下、例えば5〜20重量部程度である。
【0043】
<イソシアネート>
イソシアネートとしては、ポリウレタン発泡原料として用いられる通常のイソシアネートであればいずれも用いることができ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリフェニルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0044】
イソシアネートの配合量は、特に制限されるものではないが、ポリウレタンフォーム配合物のイソシアネートインデックスが通常90〜120程度となるようにイソシアネートを配合することが好ましい。このイソシアネートインデックスが小さ過ぎるとポリウレタンフォームの樹脂化反応が進まない場合があり、大き過ぎると樹脂化反応が進みすぎ、独立気泡となり収縮してしまう。
【0045】
<発泡剤>
発泡剤としては、水及び低沸点の有機化合物を単独又は併用にて使用できる。低沸点の有機化合物としては、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフロロメタン、モノクロロジフロロメタン、トリクロロトリフロロエタン、メチレンクロライド等がある。
【0046】
発泡剤の配合量は、用いる発泡剤の種類によっても異なるが、例えば、発泡剤として水を用いる場合、ポリオール100重量部に対して1.5〜5.0重量部程度とすることが好ましい。
【0047】
<難燃剤>
本発明において、難燃剤としては、非ハロゲン系難燃剤を用いる。非ハロゲン系難燃剤としては、特に制限はないが、難燃性付与効果に優れ、また、本発明による耐ドリップ性改善効果が顕著に機能することから、リン酸エステル系難燃剤を用いることが好ましい。
【0048】
リン酸エステル系難燃剤としては、具体的には、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジエチルフェニルホスフェート、ジメチルフェニルホスフェート、レゾルシノールジフェニルホスフェート、或いはリン酸エステルの重合体等が用いられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良く、リン酸エステル系難燃剤以外の非ハロゲン系難燃剤の1種又は2種以上を併用しても良い。
【0049】
本発明において、リン酸エステル系難燃剤等の非ハロゲン系難燃剤の配合量は、ポリオール100重量部に対して5〜40重量部、特に8〜35重量部程度とすることが好ましい。非ハロゲン系難燃剤の配合量がこの範囲よりも少な過ぎると非ハロゲン系難燃剤を用いることによる難燃性付与効果を十分に得ることができず、逆に多過ぎると耐ドリップ性が悪くなる。
【0050】
本発明は、ポリオールとして所定量のフタル酸変性ポリオールを用いることにより、非ハロゲン系難燃剤をポリオール100重量部に対して40重量部まで配合しても十分な耐ドリップ性を実現するものである。一方で、メラミン樹脂含有ポリオールの併用で、非ハロゲン系難燃剤による難燃性付与効果を高め、非ハロゲン系難燃剤の必要量を低減するものでもある。
【0051】
<触媒>
触媒としては、アミン系、錫系のいずれの触媒も好適に使用することができ、アミン系触媒としては、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、テトラメチルプロピレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等を、錫系触媒としては、スタナスオクテート、ジブチルチンジラウレートや、後掲の実施例で用いている2−エチルヘキシル酸第一錫等を挙げることができる。これらの触媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
触媒の配合量は、ポリオール100重量部に対して、通常0〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部である。
【0052】
<架橋剤>
架橋剤としては、水酸基を2つ以上有するモノマーを用いることが好ましく、このような架橋剤を用いることにより、架橋密度を上げて、フォームの強度、硬度を高め、この結果、形状保持性を高めることができる。水酸基を2つ以上有するモノマーとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。なお、架橋剤としては、アミン系触媒として機能し得るジエタノールアミンを用いることもできる。これらの架橋剤は、1種を単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0053】
架橋剤は必要に応じて用いられるが、架橋剤を用いる場合、その使用量は、通常ポリオール100重量部に対して0.5〜5重量部程度である。
【0054】
<整泡剤>
整泡剤としては、例えば、オルガノポリシロキサン、アルキルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができる。
整泡剤の配合量は、ポリオール100重量部に対して、通常0〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
【0055】
<その他の添加剤>
本発明に係るポリウレタンフォーム配合物には、必要に応じて各種添加剤を配合することができ、例えば、顔料等の着色剤、炭酸カルシウム等の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、カーボンブラック等の導電性物質、抗菌剤などを配合することができる。
【0056】
<製造方法>
本発明の高難燃性ポリウレタンフォームは、上述のような成分を含むポリウレタンフォーム配合物を常法に従って発泡成形することにより製造される。
【0057】
なお、本発明の高難燃性ポリウレタンフォームの密度は特に限定されず、用途に応じて適宜設計されるが、通常20〜100kg/m程度である。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例で用いた材料は次の通りである。
【0059】
ポリオール1:旭硝子(株)製「M−950」
(メラミン樹脂微粒子分散ポリエーテルポリオール)
メラミン樹脂含有量=25重量%
ポリエーテルポリオールの粘度(25℃)=2200mPa・s
ポリエーテルポリオールの水酸基価=25.5mg−KOH/g
ポリオール2:三井化学ポリウレタン(株)製「アクトコール3P−56D」
(フタル酸変性ポリエーテルエステルポリオールと非変性ポリエーテル
エステルポリオールとの混合物)
フタル酸変性ポリエーテルポリエステルポリオール含有量=75重量%
フタル酸変性ポリエーテルエステルポリオール:
粘度(25℃)=15000mPa・s
水酸基価=56mg−KOH/g
非変性ポリエーテルエステルポリオール:
粘度(25℃)=475mPa・s
水酸基価=56mg−KOH/g
ポリオール3:ダウ・ケミカル社製「ボラノール3943A」
(スチレン−アクリロニトリルコポリマーグラフトポリオール)
イソシアネート:日本ポリウレタン工業(株)製「T80」
(トリレンジイソシアネート(TDI)
(2,4−TDI:2,6−TDI=80:20))
架橋剤1:ジエタノールアミン(大八化学工業(株)製)
架橋剤2:三井化学(株)製「アクトコール T880」(ポリオキシアルキレンポリ
オール)
難燃剤:大八化学工業(株)製「ダイガード880」(脂肪族縮合リン酸エステル)
整泡剤1:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「NIAX
SILICONE L−638」(シリコーン系整泡剤)
整泡剤2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「NIAX
SILICONE L−655」(シリコーン系整泡剤)
錫系触媒:日本化学産業(株)製「ニッカオクチックス錫」(2−エチルヘキシル酸
第一錫(有効成分量28重量%)
アミン系触媒1:東ソー(株)製「TEDA L33」(ジプロピレングリコールと
トリエチレンジアミンの混合物)
アミン系触媒2:東ソー(株)製「TOYOCAT ET33B」(ビス(2−ジメチ
ルアミノエチル)エーテルとジプロピレングリコールの混合物)
【0060】
また、実施例及び比較例で製造されたポリウレタンフォームの密度、通気性、50%圧縮残留歪は、JIS K6400に記載の方法により測定した。
【0061】
[実施例1,2、比較例1〜3]
表1に示す配合及びイソシアネートインデックスのポリウレタンフォーム配合物を調製し、これを20℃で発泡成形して軟質ポリウレタンフォームを製造した。
この軟質ポリウレタンフォームについて、サンプル密度、通気性、50%圧縮残留歪を測定し、結果を表1に示した。
また、サンプル厚み13mmで、UL−94規格のHF−1、HF−2、HBF材料分類の試験方法により評価を行い、結果を表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
[実施例3、比較例4,5]
表2に示す配合及びイソシアネートインデックスのポリウレタンフォーム配合物を調製し、これを20℃で発泡成形して軟質ポリウレタンフォームを製造した。
この軟質ポリウレタンフォームについて、サンプル密度、通気性、50%圧縮残留歪を測定した。
また、この軟質ポリウレタンフォームを用いて、以下の方法で電磁波シールドガスケットを作成し、作成したガスケットについて、UL−V0規格のV−0、V−1、V−2材料分類の試験方法により評価を行った。
また、同様に作成したガスケットを用いて、以下の方法で経時圧縮歪を測定した(実施例3、比較例5のみ)。
これらの結果を表2に示した。
【0064】
<ガスケットの作成>
軟質ポリウレタンフォームを10mm角、長さ12.5cmの棒状に切り出し、長手方向の4側面に導電布(ポリエステル系繊維布に、銅とニッケルで表面被覆を行って目止め処理を施したもの)を貼着した。
【0065】
<経時圧縮歪の測定>
ガスケットを2枚のアルミ板で挟んだ状態で60℃の恒温条件に置き、120時間後、250時間後の圧縮歪を測定した。
【0066】
【表2】

【0067】
表1,2より、本発明の高難燃性ポリウレタンフォームは、難燃性、耐ドリップ性に優れる上に圧縮反発性も良好であり、特に難燃性、耐ドリップ性については、UL−V0規格をも満たし得る優れた難燃性、耐ドリップ性を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤及び難燃剤を配合してなるポリウレタンフォーム配合物を発泡させて得られる高難燃性ポリウレタンフォームであって、
該難燃剤が非ハロゲン系難燃剤であり、
該ポリオールが少なくともフタル酸変性ポリオールとメラミン樹脂含有ポリオールとを含み、
フタル酸変性ポリオールの配合量が全ポリオール100重量部に対して15〜40重量部であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1において、該メラミン樹脂含有ポリオールの配合量が全ポリオール100重量部に対して40〜80重量部であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、該非ハロゲン系難燃剤の配合量が全ポリオール100重量部に対して5〜40重量部であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該フタル酸変性ポリオールがフタル酸変性ポリエーテルエステルポリオールであることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該メラミン樹脂含有ポリオールが、ポリオール中で、重合性モノマーを重合させることによりメラミン樹脂微粒子を形成してなるメラミン樹脂微粒子分散ポリオールであることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該非ハロゲン系難燃剤がリン酸エステル系難燃剤であることを特徴とする高難燃性ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2011−52104(P2011−52104A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201797(P2009−201797)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】