説明

高電圧が加えられることが可能な冷却エレメントのための中空絶縁ボディ

中空絶縁ボディ(5)が、高電圧が加えられることが可能な冷却エレメントのために意図される。設備の中で、冷却エレメントの運転の間、この中空ボディ(5)は、電気的絶縁ギャップ(I)を形成し、そのボディの中を、液体および/または気体として流れる媒体が運ばれる。この中空ボディ(5)は、繊維強化ポリマーで構成された機械的に荷重を支えるプラスチック・チューブ(50)、及び、このプラスチック・チューブ(50)により同軸状に保持された拡散バリア(51)を有している。この中空絶縁ボディ(5)のデザインは、前記中空絶縁ボディが高電圧設備のための冷却エレメントに対して生ずる要求を、信頼性高く満足することを可能にする(図2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧が加えられることが可能な冷却エレメントのための中空ボディ、この中空絶縁ボディを含む冷却エレメント、及び、この中空絶縁ボディの製造のための方法に係る。
【0002】
この場合、原則として、「高電圧」との表現は、1kV以上の動作電圧を意味するものとして理解されるべきである。好ましい電圧の範囲は、100kV以下であり、大電流を運び典型的に10から50kVの定格電圧を持つ装置及び設備に主として関係している。
【背景技術】
【0003】
これらのような装置及び設備の電流移送能力は、熱的な制約を受ける。冷却リブのような受動的冷却エレメントが、比較的低い定格電流範囲に対して使用される。しかしながら、従来の受動的冷却エレメントを使用して、定格電流範囲を増大させるためのオプションは、非常に限られている。能動的冷却エレメント、例えば、ファンを備えた空気−空気熱交換器が、それ故に、発電機スイッチの形態であるところの大電流機器において用いられるような、比較的大きな定格電流に対して使用される。
【0004】
これらのような能動的冷却エレメントに加えて、大電力の受動的冷却エレメントもまた、大電流のスイッチギアにおける使用のために、既に、提案されている。これらのような大電力の受動的冷却エレメントは、ヒートハイプを有している。ヒートハイプの場合、スイッチの中での電流損失によって発生した熱は、媒体を気化させるために使用される。その気化された媒体は、外部熱交換器に移送され、そこで、スイッチで発生した熱損失を凝縮により放出する。
【0005】
発電機スイッチは、一般的に、単一の相毎に密封され、密封容器の中に収容され、高電圧の電位にある内部導体を有している。この内部導体での電流損失により生じた熱は、接地された密封容器を介して、周囲の空気に放散されなければならない。このことは、高電圧の電位にある気化器と、接地電位にあるヒートハイプのための凝縮器との間に、電気的に絶縁する経路が設けられなければならず、且つ、要求される高電圧(例えば、150kV BIL)に対して適切にデザインされなければならない、と言うことを意味している。気化器及び凝縮器は、中空絶縁ボディの両端に、気密状態で保持される。
【0006】
このような大電力の受動的冷却エレメントは、ファンのような移動部材を有していないので、この冷却エレメントは、熱損失を密封容器から低コストで且つ効率良く取り除くための使用されることが可能である。この場合、中空絶縁ボディは、複数の機能を果たし、特に、媒体を運ぶ機能、及び、気化器及び凝縮器の電位を絶縁する機能を果たす。このような大電力の受動的冷却エレメントの信頼性、及び、このような冷却エレメントを備えた高電圧設備の信頼性は、その中空絶縁ボディが上述の機能を長期間に渡り果たす場合に限り、確保される。
【0007】
上述のタイプの中空絶縁ボディが、独国特許出願公開第 DE 2 051 150 A 号明細書に記載されている。この中空絶縁ボディは、中空のポスト・インシュレータの形態であって、高電圧の電位にあるスイッチ・ポール・コンダクタ・トラックが、スイッチング液で満たされたポール・ハウジングの壁面から、距離を開けた状態で維持される。冷却器が、壁面上に保持され、ポスト・インシュレータの中に配置された二つの流線を介して、電流経路を取り囲む環状のスペースに接続される。気化手段が、冷却器の中、流線の中、及び環状のスペースの中に配置されている。電流経路の中を運ばれる電流は、気化媒体の、環状のスペースの中に位置する部分を、スイッチング液を介して加熱する。プロセスの中で発生した蒸気は、二つの流線の一つを介して、冷却器の中に送られ、その中で凝縮して、気化の間に吸収された熱を放出する。その結果として生ずる凝縮液は、冷却器に流れ、冷却器の中にある液体気化媒体を、もう一方の流線を介して、環状のスペースの中に再び戻す。その環状のスペースの中で、新しい気化−凝縮サイクルが、供給された液体気化媒体に対して開始される。
【特許文献1】独国特許出願公開第 DE 2 051 150 A 号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、請求項に規定されているように、最初に述べたタイプの中空絶縁ボディを提供することにある。この中空絶縁ボディは、容易に製造されることが可能であり、且つ冷却エレメントの中に、容易に取り付けられることが可能であり、また、厳しい電気的、熱的及び化学的な負荷条件下での長期間に渡る運転の後であっても、運転時の高い信頼性で識別されるものである。また、本発明の目的は、この中空絶縁ボディを製造するための好ましい方法を規定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく中空絶縁ボディは、繊維強化ポリマーで構成され機械的に荷重を支えるプラスチック・チューブ、並びに、前記プラスチック・チューブにより同軸状に保持された拡散バリアを有している。このようなデザインは、前記中空絶縁ボディが、高電圧設備の中の冷却エレメントに対する要求を信頼性高く満足することを可能にする。その理由は、プラスチック・チューブが、冷却エレメントの取付け及び運転の間に生ずる機械的及び熱的な負荷を吸収することが可能であるので、それによって、比較的脆い材料ではあるが、拡散プロセスを特に効果的に抑制する材料(ガラスまたはセラミックなど)が、拡散バリアとして選択されることが可能になるからである。
【0010】
プラスチック・チューブによりもたらされる負荷の軽減のために、拡散バリアが、機械的に荷重をほとんど受ないので、拡散バリアの中に亀裂が発生したとしても、それは、この拡散バリアの拡散抑制効果に、不利な影響を及ぼすことがない。その理由は、冷却エレメントの運転の間、これらのような亀裂に大きな力が加えられることがないので、十分に大きく成長することができないからである。適切な拡散の抑制は、それ故に、常に確保される。
【0011】
更に、金属継手が、プラスチック・チューブの両端に、製造エンジニアリング上の観点で特に好ましいやり方で(特に、接着により)、取付けられることが可能であり、それらは、気化器、凝縮器、及びベローズのような、冷却エレメントの主要部分の取付けのために使用される。なお、上記のベローズは、膨張の補償のため、及び冷却エレメントに、例えば振動により、加えられる機械的力の吸収のために設けられる。
【0012】
更に、プラスチック・チューブの中に供給された繊維が、中空絶縁ボディの断片化を防止して、この中空ボディに設けられた冷却エレメントの運転時の信頼性、並びに、この冷却エレメントが組み込まれる高電圧設備の信頼性を、増大させる。
【0013】
高温度においても、ガラス及びセラミックは、冷却エレメントの中で使用され化学的に攻撃的なこともあり得る媒体に対して、抵抗性を有しているので、ガラスまたはセラミックのチューブは、好ましくも、拡散バリアとして使用され、プラスチック・チューブの内側に配置される。ガラス及びセラミックの延性が低いので、機械的な力の影響に対して拡散バリアをこのように保護するために、可逆的に変形可能な緩衝層が、プラスチック・チューブとガラスまたはセラミックのチューブの間に配置されることが、推奨される。
【0014】
ガラスまたはセラミックのチューブの内表面を、フィルムの形態であるところの断片化防止材で覆うこともまた、好ましい。このことは、拡散バリアに機械的な損傷が生じた場合に、断片が剥離して剥落することを防止する。損傷が生じた場合に発生した亀裂は、それ故に伝播することができず、それによって、拡散バリア拡散抑制効果が実質的に維持されることになる。
【0015】
中空絶縁ボディの製造のための一つの実証された方法は:
予めポリマーが含浸されたまたは含浸されていない繊維状材料が、チューブの形態であるところの拡散バリアのケーシング表面の上に巻き付けられて、前もって形成されたボディを形成すること;
前記前もって形成されたボディが、含浸された繊維状材料を含んでいない状況においては、このようにして形成された前記前もって形成されたボディが、モールドの中に配置され、ポリマーで浸漬されること;及び、
予め含浸されることによりまたは浸漬されることにより導入された前記ポリマーが、前記モールド内で高温で硬化されること;を特徴とする。
【0016】
もし、前記拡散バリアが、前もって製作されたチューブの形態でない場合には、他の製造方法がある。この方法によれば:
予めポリマーが含浸されたまたは含浸されていない繊維状材料が、除去可能な巻き付けコアのケーシング表面の上に巻き付けられ;
前記巻き付けプロセスの間、フィルムの形態であるところの前記拡散バリアの部分が、前記繊維状材料の中に挿入され;
前記前もって形成されたボディが含浸された繊維状材料を含んでいない状況においては、このようにして形成された前もって形成されたボディが、モールドの中に配置され、ポリマーで浸漬され;
それに続いて、予め含浸されることによりまたは浸漬されることにより導入された前記ポリマーが、前記モールド内で高温で硬化される。
【0017】
もし、プラスチック・チューブ、及びチューブの形態であるところの拡散バリアが前もって製作される場合には、前記中空絶縁ボディの製造のために、モールドが必要でなくなる。前記拡散バリアの外径と前記プラスチック・チューブの内径は、互いに適合され、前記拡散バリアの前記プラスチック・チューブの中への挿入の後、これら二つのチューブが互いに接着される。
【0018】
本発明の更なる特徴及びそれらの好ましい効果は、以下のテクストの中に記載された例示的な実施形態から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明のこの例示的な実施形態が、図面を参照しながら、より詳細に説明される。全ての図面において、同じ参照符号は、同じ機能を有する部分を示している。
【0020】
図1に示されている高電圧設備20の部分は、多相発電機の出力ラインの一つの相の一部であり、接地された金属製の密封容器22、この密封容器の中に収容された導電体21、並びに冷却エレメント1を含んでいる。密封容器22は、設備の運転の間に生ずる帰還電流を運ぶために使用される。これに対して、導電体21は、発電機の中で作り出される電流を運ぶために使用され、その電流は、典型的に10から50kVの電圧に対して、典型的に10から50kAである。
【0021】
この図から分かるように、導電体21、即ち、発電機スイッチGまたは絶縁スイッチTの形態であるところの導電体の部分は、各ケースにおいて、冷却エレメント1の内の二つと、熱的に伝導性の接触をしている。
【0022】
冷却エレメント1は、それぞれ、密封された気密ボリュームを有し、その中に媒体が収容され、その媒体は、一般的に、重力の影響の下、または毛管引力により、循環されることが可能である。重力の助けで動作する冷却エレメント1は、それ故に、水平面に対して傾斜して配置される。そのとき、気化器3は、冷却エレメント1の低い側の端部に配置され、凝縮器4は、その高い側の端部に配置される。気化器3は、金属で作られ、導電体21に対して熱的に接合される。凝縮器4もまた、金属で作られる。この凝縮器は、密封容器22上に取り付けられているが、密封容器22の横に並んで取り付けられることも可能である。
【0023】
原則として、凝縮器4は、密封容器22の外側に取り付けられ、熱を外部に放出する別個の機器であって良い。凝縮器はまた、密封容器22に熱的に接続されることが可能である。一般的に、凝縮器は、導電体21から加熱効果を引き出す冷却リブを有している。
【0024】
図1から分かるように、より良い気化器性能を実現するために、冷却エレメント1もまた、二つの気化器(または、場合によれば三つ以上の気化器)を持つことが可能である。気化器から凝縮器4へ伸びる毛管が、冷却エレメント1の内側に配置されることも可能である。凝縮器4の中で液化される媒体は、次いで、凝縮器4から気化器3へ、毛管引力により、供給される。
【0025】
毛管を有する冷却エレメントは、その位置とは独立に、設備20の中に、組み込まれることが可能であり、即ち、上方に、下方に、水平に、斜め上方に、または斜め下方に、揃えられる。この場合、絶縁ギャップとして働く中空絶縁ボディ5が、気化器3または導電体21と、凝縮器4または密封容器22との間の電位差をブリッジするために、設けられる。
【0026】
この中空絶縁ボディは、図1の中に示されているように、沿面距離(creepage distance)を拡大するシールド55を有していても良い。この中空絶縁ボディ5は、設備20の運転の間、高い電気的な負荷に曝されるのみではなく、同時に、そのボディの内側を液体としておよび/または蒸気として循環する媒体に起因する熱的及び化学的な負荷にも曝される。
【0027】
収集コンテナ(図示されていない)が、凝縮器4の領域の中に設けられることが可能であり、そのボリュームは、冷却エレメント1の内側での圧力変化の場合に、可変である。更に、例えば空気のような数百ミリバールの分圧の、補助のガスが、冷却エレメントの内側に供給されることも可能であり、並びに、低い温度において生じ得るような媒体の分圧が低いときであっても、冷却エレメント1が高い絶縁耐力を有することを確保するための媒体も、冷却エレメントの内側に供給されることが可能である。
【0028】
運転の間、導電体21の中を運ばれ、発電機の中で作り出される定格電流が、設備を相当程度、加熱する。特定のリスクに曝される設備の部分、例えば導電体が取り付けられるインシュレータは、典型的な温度限界である105℃を超えてはならないので、特定の定格電流(例えば、13kAであり得る)のみが、冷却無しで運ばれることが可能である。
【0029】
媒体は、気化器3の中で気化され、熱が、プロセスの中の導電体21から取り出される。もし、例えば、アセトンまたはハイドロ・フルオロ・エーテルのような、適切な媒体が使用された場合には、冷却されていない設備と比較して定格電流がかなり大きい場合であっても、導電体21が、温度限界以下に維持されることが可能である。気化された媒体は、凝縮熱を凝縮器4に放出して、液化され、傾斜の付けられた冷却エレメント1を介して、重力により気化器3に再び戻される。
【0030】
もし、冷却エレメントが毛管を有している場合には、液化された媒体は、毛管引力の結果として、重力に反して気化器に到達する。急速な液化を追加的に実現するため、凝縮器4は、典型的に、せいぜい約70℃まで加熱されるべきである。
【0031】
設備の中で、適切にデザインされ且つ適切に配置された冷却エレメントは、予め定められた温度限界を超えることなく、定格電流を増大させること(例えば、22kAに)を可能にする。しかしながら、これは、適切に動作する冷却エレメント1を用いてのみ可能であるので、設備の安全で信頼性の高い運転にとって、冷却エレメント及び特にそれらの中空絶縁ボディ5が、長い寿命及び高い運転時の信頼性を有していることにより識別されることが、重要である。
【0032】
図2は、このような中空絶縁ボディ5の形態を示している。この図から分かるように、この中空ボディは、管状であって、繊維強化ポリマーで構成された機械的に荷重を支えるプラスチック・チューブ50、並びに、このプラスチック・チューブにより同軸状に保持された拡散バリア51を有している。このプラスチック・チューブ50は、数センチメートル、例えば5センチメートルの内径、及び、数十センチメートル、例えば20または30センチメートルの長さを有し、ファイバー・ボディを含んでいる。このファイバー・ボディは、例えば、ガラス、セラミックおよび/またはブラスチック・ファイバで構成された(特に、アラミド、ポリアミドまたはポリエステルに基づく)糸または織地を巻き付けることにより作られ、このファイバー・ボディは、硬化された熱硬化性材料(例えばエポキシまたはポリエステルなど)の中に埋め込まれる。典型的なブラスチックの管の壁厚は、3から10mmである。
【0033】
図2に示された中空絶縁ボディ5の実施形態の中で、拡散バリア51は、典型的に1から3mmの壁厚を備えたガラスまたはセラミックのチューブの形態である。製造上の理由で、このチューブは、攻撃性の物質に曝されたときに、約100℃の温度であっても不活性なガラス(例えば、ボロン・シリケート・ガラスまたはクォーツ・ガラス)から作られ、プラスチック・チューブ50の内側に配置される。媒体及び供給される可能性のある補助のガスのような、冷却エレメント1の内側に供給される物質は、それ故に、プラスチック・チューブ50の中に拡散すること、あるいは、その中に流れることができない。逆に、空気または水のような、冷却エレメント1の周囲を取り囲む物質は、冷却エレメント1の内側に入ることができない。
【0034】
可逆的に変形可能な緩衝層52が、プラスチック・チューブ50と、ガラスまたはセラミックのチューブの形態であるところの拡散バリア51の間に配置される。高電圧設備20が使用される位置に依存して、冷却エレメント1は、−40℃と105℃の間の温度に曝される可能性があるので、例えばシリコーンに基づく、エラストマー・ポリマーが、緩衝層52として、一般的に、使用される。同時に、この緩衝層もまた、プラスチック・チューブ50と拡散バリア51の間の、接着による接合を作り出す。少なくとも約1mmの壁厚が、緩衝層52とともに、一般的に、望ましくない高い応力負荷に対する拡散バリア51のための適切な保護を提供する。
【0035】
ガラスまたはセラミックのチューブの形態であるところの、拡散バリア51の内表面は、断片化防止材53で覆われていて、その断片化防止材は、好ましくは、フィルム、例えばPTFEに基づくフィルムで形成される。このような断片化防止材は、もし、ガラスまたはセラミックのような脆い材料で一般的に構成された拡散バリア51が、不適切な取り扱いによりまたは冷却エレメントの運転の間に、損傷され、亀裂および/または不連続を生じたときに、断片の剥離を防止する。そのような亀裂および/または不連続は、その機械的強度減少させるが、その拡散性能を大幅に低下させることはない。
【0036】
この断片化防止材53は、ガラスまたはセラミックのチューブの内表面に、接着されまたは、直接に取付けられることが可能である。もし、それがフレキシブル・フィルムの形態である場合には、それは、僅かなプレストレスが与えられて、単一の層または二重の層のチューブとして、巻き付けられることが可能であり、そして、ガラス及びセラミックのチューブの中に挿入された後に、プレストレスの力の助けで、このチューブの内表面に固定されることが可能である。
【0037】
拡散バリアはまた、ガラスおよび/またはセラミックに基づくフレキシブル・フィルムの形態であっても良く、そして、プラスチック・チューブ50の製造の間に、ファイバー・ボディの中に埋め込まれても良い。良い機械的強度のために、フィルムがポリマーに基づくサポートを含んでいることも好ましいこともあり、その上に、フレキシブル・ガラスまたはフレキシブル・セラミックが、拡散抑制材料として保持される。
【0038】
もし必要であれば、図2に示されているように、毛管構造54も、拡散バリアの内側に取り付けられることが可能であり、かくして、冷却エレメント1が重力に逆らって動作することをも可能にする。
【0039】
シールド55が、プラスチック・チューブ50のケーシング表面に形成されることが可能であり、あるいは、例えば押し出しコーティング(extrusion coating)により、または、その上でそれを収縮させることにより、このケーシング表面に取り付けられることも可能である。シールドが、中空絶縁ボディ5の外側で、沿面距離を拡大し、表面のフラッシュ・オーバーのリスクを相当程度、減少させる。
【0040】
二つの金属継手56,56’の一つは、プラスチック・チューブ2の両端のそれぞれで、気密状態で保持される。この図から分かるように、金属継手56または56’は、それぞれ、プラスチック・チューブ50の両端面の一つに取り付けられたそれぞれの接続層57または57’の助けで、プラスチック・チューブに接着される。このような接続層は、一般的に硬化されたポリマーで、例えば、エポキシに基づくポリマーで、構成され、接合機能に加えて、プラスチック・チューブ50の端面の保護をも確保する。この端面は、一般的に、引き続いて機械加工され、それ故に、保護されていない繊維を有している。接着による接合の強度を増大させるために、接続層57または57’は、端面に隣接するプラスチック・チューブ50のケーシング表面の部分に伸びている。
【0041】
この図から分かるように、二つの金属継手56及び56’には、互いに向かい合う端部のそれぞれで、シールドされた電極58または58’が、それぞれ取り付けられている。各電極は、プラスチック・チューブ50の周囲の環状形状の中を通る。プラスチック・チューブ50及び拡散バリア51の両端に存在することがあるシャープ・エッジは、それ故に、電気的にシールドされる。同時に、このことは、絶縁ギャップを規定する。その絶縁ギャップは、図2の中で参照符号Iで示されている。
【0042】
図2の中で破線で示されているように、冷却エレメント1の製造の間、気化器3が、気密状態で金属継手56にフランジで接続されることが可能であり(ベローズを介在させても良い)、そして、キャパシタ4が、気密状態で金属継手56’にフランジで接続されることが可能である(同様に、ベローズを介在させても良い)。
【0043】
もし拡散バリア51がチューブの形態である場合には、中空絶縁ボディ5の製造の間、予めポリマーが含浸されたまたは含浸されていない繊維状材料が、先ず最初に、拡散バリアのケーシング表面の上に巻き付けられる。このようにして形成された前もって形成されたボディは、次いで、モールドの中に挿入される。もし、含浸された繊維状材料が使用されない場合には、前もって形成されたボディは、ポリマーで浸漬される。この前もって形成されたボディは、浸漬されたまたは前もって含浸された繊維状材料を含んでおり、次いで、モールド内で高温で硬化される。
【0044】
他の製造方法において、予めポリマーが含浸されたまたは含浸されていない繊維状材料が、除去可能な巻き付けコアのケーシング表面の上に巻き付けられる。フィルムの形態であるところの拡散バリアの部分が、巻き付けプロセスの間に、繊維状材料の中に挿入される。このようにして形成された前もって形成されたボディは、先に述べたように、モールドの中に配置され、そして、含浸された繊維状材料を含んでいない前もって形成されたボディの場合には、ポリマーに浸漬される。予め含浸されることによりまたは浸漬されることにより導入されたポリマーは、モールド内で高温で硬化される。
【0045】
両者の方法において、ポリマーの硬化の間に、金属継手56及び56’が、プラスチック・チューブ50に固定されることが可能であり、それによって、接続層57及び57’が形成される。
【0046】
中空絶縁ボディ5はまた、前もって製作されたプラスチック・チューブ50、及びチューブの形態であるところの前もって製作された拡散バリア51から作られることも可能である。この製造プロセスにおいて、拡散バリア51の外径とプラスチック・チューブ50の内径は、例えば機械加工により、互いに適合される。拡散バリアがプラスチック・チューブの中に挿入された後、二つのチューブが互いに接着される。
【0047】
この方法において、断片化防止材53が、それが実際に作られる間に、拡散バリア51の内側に取り付けられることが可能である。このことはまた、シールド55にも適用される、このシールドは、予め、前もって製作されたプラスチック・チューブ50の中に形成されることが可能であり、または、ポリマー(例えばシリコーン)を用いた押出しコーティングにより、または、その上へのポリマーの中空ボディの収縮により、そのケーシング表面に取り付けられることが可能である。金属継手56及び56’は、接着により、プラスチック・チューブ50に固定されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、冷却エレメントの部分の平面図を示し、各ケースにおいて本発明に基づく中空絶縁ボディを収容し、且つ密封される高電圧設備、及び、密封容器の上の方に向いた部分は、取り除かれている。
【図2】図2は、本発明に基づく、図1に示された設備の冷却エレメントの一つに設けられた、中空絶縁ボディの拡大図を示す。
【符号の説明】
【0049】
1…冷却エレメント、3…気化器、4…凝縮器、5…中空絶縁ボディ、20…高電圧設備、21…導電体、22…金属製密封容器、50…プラスチック・チューブ、51…拡散バリア、52…緩衝層、53…断片化防止材、54…毛管構造、55…シールド、56,56’…金属継手、57,57’…接続層、58,58’…シールド電極、G…発電機スイッチ、T…絶縁スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧が加えられることが可能な冷却エレメントのための中空ボディであって、
その運転の間、前記中空ボディが電気的な絶縁ギャップを形成し、且つ、そのボディの中を、液体および/または気体として流れる媒体が運ばれる、中空ボディにおいて、
前記中空ボディが、繊維強化ポリマーで構成された機械的に荷重を支えるプラスチック・チューブ、及び、前記プラスチック・チューブにより同軸状に保持された拡散バリアを有することを特徴とする中空ボディ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の中空絶縁ボディ:
前記拡散バリアは、ガラスまたはセラミックのチューブの形態である。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載の中空絶縁ボディ:
前記ガラスまたはセラミックのチューブは、前記プラスチック・チューブの内側に配置されている。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載の中空絶縁ボディ:
可逆的に変形可能な緩衝層が、前記プラスチック・チューブと前記ガラスまたはセラミックのチューブの間に配置されている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項2から4のいずれか1項に記載の中空絶縁ボディ:
前記ガラスまたはセラミックのチューブの内表面は、断片化防止材で覆われ、その断片化防止材は、好ましくはフィルムの形態である。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1に記載の中空絶縁ボディ:
前記拡散バリアは、ガラスおよび/またはセラミックに基づくフレキシブル・フィルムの形態である。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項6に記載の中空絶縁ボディ:
前記フィルムは、ポリマーに基づくサポートを含んでいる。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の中空絶縁ボディ:
毛管構造が、拡散バリアの内表面に適用される。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の中空絶縁ボディ:
前記プラスチック・チューブには、シールドが取り付けられている。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9のいずれか1項に記載の中空絶縁ボディ:
二つの金属継手の内の一つが、プラスチック・チューブの二つの端部のそれぞれに、気密状態で保持されている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項10に記載の中空絶縁ボディ:
前記二つの金属継手の内の少なくとも一つは、前記プラスチック・チューブの一つの端面に取り付けられた接続層の助けで、前記プラスチック・チューブに接着されている。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項11に記載の中空絶縁ボディ:
前記接続層は、前記プラスチック・チューブのケーシング表面の部分の上にガイドされている。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項10から12のいずれか1項に記載の中空絶縁ボディ:
前記二つの金属継手には、シールド電極が取り付けられ、このシールド電極は、互いに向かい合う端部のそれぞれで、前記プラスチック・チューブの周りの環状形状の中を通っている。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか1項に記載された中空絶縁ボディを有する冷却エレメントであって、
前記二つの金属継手の内の第一の金属継手は、気化器に接続され、この気化器は、高電圧設備の導電体により加熱されることが可能であり、
第二の金属継手は、凝縮器に接続され、この凝縮器は、前記高電圧設備の接地された密封容器に配置されること、を特徴とする冷却エレメント。
【請求項15】
請求項1に記載された中空絶縁ボディを製造するための方法であって、
予めポリマーが含浸されたまたは含浸されていない繊維状材料が、チューブの形態であるところの拡散バリアのケーシング表面の上に巻き付けられて、前もって形成されたボディを形成すること;
前記前もって形成されたボディが、含浸された繊維状材料を含んでいない状況においては、このようにして形成された前記前もって形成されたボディが、モールドの中に配置され、ポリマーに浸漬されること;及び、
予め含浸されることによりまたは浸漬されることにより導入された前記ポリマーが、前記モールド内で高温下で硬化されること;
を特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載された中空絶縁ボディを製造するための方法であって、
予めポリマーが含浸されたまたは含浸されていない繊維状材料が、除去可能な巻き付けコアのケーシング表面の上に巻き付けられること;
前記巻き付けのプロセスの間、フィルムの形態であるところの前記拡散バリアの部分が、前記繊維状材料の中に挿入されること;
前記前もって形成されたボディが、含浸された繊維状材料を含んでいない状況においては、このようにして形成された前もって形成されたボディが、モールドの中に配置され、ポリマーに浸漬されること;及び、
予め含浸されることによりまたは浸漬されることにより導入された前記ポリマーが、前記モールド内で高温下で硬化されること;
を特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載された中空絶縁ボディを製造するための方法であって、
プラスチック・チューブ、及びチューブの形態であるところの拡散バリアが、前もって作られること;
前記拡散バリアの外径と前記プラスチック・チューブの内径が、互いに適合されること;
前記拡散バリアが、前記プラスチック・チューブの中に挿入された後、これら二つのチューブが互いに接着されること;
を特徴とする方法。
【請求項18】
下記特徴を有する請求項15から17のいずれか1項に記載の方法:
もし拡散バリアが、ガラスまたはセラミックのチューブの形態である場合には、断片化防止材が、チューブの内側に取り付けられる。
【請求項19】
下記特徴を有する請求項15から18のいずれか1項に記載の方法:
シールドが、前記プラスチック・チューブの前記ケーシング表面に形成され;または、
シールドが、前記プラスチック・チューブの前記ケーシング表面に取り付けられる。
【請求項20】
下記特徴を有する請求項15から19のいずれか1項に記載の方法:
前記ポリマーの硬化の間、または、前記プラスチック・チューブの製造の間、前記中空絶縁ボディの、それぞれ金属継手の形態であるところの二つの端部が、プラスチック・チューブに固定される。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−521372(P2008−521372A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541626(P2007−541626)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000629
【国際公開番号】WO2006/053452
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(594075499)アーベーベー・リサーチ・リミテッド (89)
【氏名又は名称原語表記】ABB RESEARCH LTD.
【Fターム(参考)】