説明

高電圧電源装置

【課題】巻き線トランスを低周波で駆動するとき、出力電圧パルスの立ち上がりまたは立下りの波形を急峻にする。
【解決手段】クロック信号が供給され、該クロック信号により高速かつ低消費電力で動作し、第1の矩形パルスを発生するドライブ回路と、上記ドライブ回路から出力された前記第1の矩形パルスが供給され、第2の矩形パルスを発生する電界効果トランジスタを有する出力回路と、1次と2次の巻き線の結合度を向上し、該結合度に適合した動作速度を有する上記電界効果トランジスタの出力から上記第2の矩形パルスが供給され、上記1次と2次の巻き線比に応じた電圧パルスを発生する巻き線トランスとを有し、巻き線トランスの出力から導出される電圧パルスの立ち上がりまたは立下り波形を急峻にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧電源装置に関し、特に電子写真法を用いた複写機、あるいはプリンタ装置等の複写機に用いる巻き線トランスを用いた高電圧電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機、レーザービームプリンター等の画像形成装置では帯電工程、現像工程などに高圧交流が必要とされる。最近では1周期の間に大きな電流を流せる矩形波を用いる方が過渡的なピーク電圧、電流による感光ドラムの劣化、損傷を防止する上で好ましいことがわかってきた。交流高圧電源の周波数は種々のプロセス条件に合わせて数100Hz〜数KHzの範囲で使用され、高周波トランスに比べて低周波用の大型の巻き線トランスが使用されている。
【0003】
また、最近では低電圧の直流からスイッチングレギュレータを介して高(電)圧交流を得る方式が広く用いられる用になってきた。しかしながら、この方式で用いられるトランスの昇圧比が大きいために、2次巻き線の分布容量の影響が大きくなり、希望する電気的特性が得られない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−235255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に、従来の巻き線トランスTR3を用いた高電圧電源装置300の例を示す。
まず、高電圧電源装置300の回路構成について説明する。電源電圧を供給する端子T1cとグランド(GND)間にコンデンサC301が接続され、また端子T1cに抵抗R301の一方の端子が接続され、抵抗R301の他方の端子がクロック(MVCLK)の入力端子TCLKcと、コンデンサC302の一方の端子と、ツェナダイオードD301のカソードに接続される。このツェナダイオードD301のアノードはグランド(GND)に接続される。また、コンデンサC302の他方の端子は抵抗R303の一方の端子に接続される。
【0006】
抵抗R302の一方の端子は電源電圧を供給する端子T1cに接続され、他方の端子は抵抗R303の他方の端子と、抵抗R304の一方の端子とコンデンサC304の一方の端子に接続される。抵抗R304とコンデンサC304のそれぞれの他方の端子はグランドに接続される。
さらに、抵抗R302の他方の端子と抵抗R303の他方の端子と抵抗R304の一方の端子の共通接続点は抵抗R305、R306の一方の端子とコンデンサC303の一方の端子に接続される。
抵抗R305の他方の端子は演算増幅器OP1cの反転入力端子とコンデンサC305の一方の端子に接続される。コンデンサC303の他方の端子は演算増幅器OP1cの非反転入力端子と抵抗R309の一方の端子に接続される。
演算増幅器OP1cの出力端子はコンデンサC305の他方の端子と、抵抗R306の他方の端子に接続される。さらに、演算増幅器OP1cの出力端子は、抵抗R307の一方の端子に接続される。
【0007】
抵抗R307の他方の端子は抵抗R308の一方の端子とコンデンサC306の一方の端子に接続される。抵抗R308の他方の端子は演算増幅器OP2cの反転入力端子と抵抗R313の一方の端子に接続され、コンデンサC306の他方の端子はグランドに接続される。
演算増幅器OP2cの電源端子とグランド間にコンデンサC307が接続される。
【0008】
さらに演算増幅器OP2cの出力端子は、抵抗R310と抵抗R311の一方の端子に接続される。
抵抗R310の他方の端子はNPN(バイポーラ)トランジスタQ301のベースに接続され、このNPNトランジスタQ301のコレクタは電源電圧が供給される端子T1cに接続され、エミッタはPNP(バイポーラ)トランジスタQ302のエミッタに接続される。
抵抗R311の他方の端子はPNPトランジスタQ302のベースに接続され、このPNPトランジスタQ302のコレクタはグランドに接続される。
NPNトランジスタQ301とPNPトランジスタQ302のエミッタ共通接続点は、可変抵抗R312の一方の端子と抵抗R314とR315の一方の端子に接続される。
可変抵抗R312の他方の端子は抵抗R313の他方の端子に接続され、抵抗R313の一方の端子は演算増幅器OP2cの反転入力端子に接続される。
【0009】
抵抗R314と抵抗R315の他方の端子は共通接続され、コンデンサC308の一方の端子に接続される。コンデンサC308の他方の端子はトランスTR3の1次側の端子N1に接続される。このトランスTR3の1次側の端子N2はグランドに接続され、2次側の端子N3は抵抗R316とR321の一方の端子と、コンデンサC309の一方の端子に接続される。トランスTR3の2次側の端子N4はコンデンサC309の他方の端子とコンデンサC310の一方の端子に接続される。このコンデンサC310の他方の端子はグランドに接続される。
【0010】
抵抗R316の他方の端子は抵抗R317の一方の端子に接続され、この抵抗R317の他方の端子はコンデンサC311の一方の端子に接続される。
コンデンサC311の他方の端子はダイオードD302のアノードとダイオードD303のカソードに接続される。ダイオードD302のカソードはコンデンサC312の一方の端子と抵抗R318の一方の端子に接続され、ダイオードD303のアノードはグランドに接続される。
抵抗R318の他方の端子は可変抵抗R319の一方の端子に接続され、この可変抵抗R319の他方の端子は抵抗R320の一方の端子に接続される。抵抗R320の他方の端子はグランドに接続され、上述した可変抵抗R319の出力端子はトランスTR3の2次側の端子N4に接続される。
トランスTR3の2次側の端子N3は抵抗R321の一方の端子に接続され、他方の端子から制御電圧が導出される。
【0011】
次に、図7に示した高電圧電源装置300の動作について説明する。
入力端子TCLKcにクロック信号(MVCLK)が入力すると、コンデンサC302と抵抗R303を介して演算増幅器OP1cで構成されるL.P.F(ローパスフィルタ)の入力端子に供給される。
このL.P.Fは2次のバターワース型のL.P.Fであり、具体的には抵抗R303、R305、R306、コンデンサC303、C305と演算増幅器OP1cで構成される。
このL.P.Fのカットオフ周波数fcは、
[数1]
fc=1/2π*(C303*R305*C305*R306)1/2・・・・(1)
で与えられる。
すなわち、L.P.Fの出力端子から、カットオフ周波数fcより高い周波数の信号やノイズ等は減衰され、これより低い周波数成分のクロック信号が導出される。
【0012】
演算増幅器OP1cの出力端子から出力されたクロック信号は、抵抗R307、R308とコンデンサC306で構成されるフィルタに供給され、クロック信号の立ち上がりまたは立ち下がり直後に発生するリンギングを除去または減衰する。
リンギング等が除去されたクロック信号が演算増幅器OP2cの反転入力端子に供給され、一方コンデンサC303の他方の端子から供給された交流成分のクロック信号が抵抗R309を介して演算増幅器OP2cの非反転入力端子に供給され、非反転入力端子と反転入力端子に入力された両信号が比較され、この比較結果に応じて出力端子からクロック信号(矩形パルス)が出力される。
【0013】
演算増幅器OP2cの出力端子から出力される矩形パルスが、“H”レベルになると、NPNトランジスタQ301が導通(ON)し、一方PNPトランジスタQ302は非導通状態(OFF)となる。NPNトランジスタQ301のエミッタから出力された矩形パルスは、抵抗R314、R315とコンデンサC308を介してトランスTR3に入力され、トランスTR3の1次側の端子N1からN2を介してグランドに電流が流れる。なお、抵抗R314とR315の並列抵抗がNPNトランジスタQ301とPNPトランジスタQ302のエミッタ共通接続点とトランスTR3の1次側の端子N1間に接続されているが、これはトランスTR3に入力される矩形パルスのリンギングの発生を防止するために設けられている。
一方、演算増幅器OP2cの出力端子から出力される矩形パルスが“L”レベルになると、今度はPNPトランジスタQ302が導通し、NPNトランジスタQ301は非導通状態となり、トランスTR3の1次側の端子N2からN1、コンデンサC308、抵抗R314、R315とPNPトランジスタQ302を介してグランドに電流が流れる。
【0014】
トランスTR3の2次側の端子N3,N4間に発生したパルス電圧は、整流回路(D302,D303,コンデンサC312)で整流されてDC電圧を発生し、この発生したDC電圧を可変抵抗R319で調整し、導出されたDC電圧をトランスTR3の2次側の端子N4に帰還し、動作点を制御している。
また、NPNトランジスタQ301とPNPトランジスタQ302の共通エミッタ接続点で発生する電圧を可変抵抗R312と抵抗R313を介して演算増幅器OP2cの反転入力端子に帰還し、動作点を安定化している。
【0015】
しかしながら、高電圧電源装置300において、従来の巻き線トランスTR3の昇圧比が例えば1:100〜400と大きいために、2次巻き線の分布容量の影響が大きくなり、トランスTR3の1次側を矩形波で駆動しても出力波形のエッジが鈍ったり、波形が崩れたり、矩形波の立上り、立下りが遅くなり、期待する電流を確保できない等の問題があった。
また、2次側の巻数を減らして波形を良くしようとするとトランスの励磁電流が増え効率が悪くなる問題があった。
【0016】
本発明は、上記問題を解決するために、分布容量の少ないトランスと1次側の入力高速で駆動できるスイッチング素子を組み合わせ、1次側と2次側の巻き線比を減らすことなく、矩形波の立上り、立下りを速くすることで大きな電流をドラムに供給でき、また結合を良くすることで効率を向上することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の高電圧電源装置は、クロック信号が供給され、該クロック信号により高速かつ低消費電力で動作し、第1の矩形パルスを発生するドライブ回路と、上記ドライブ回路から出力された前記第1の矩形パルスが供給され、第2の矩形パルスを発生する電界効果トランジスタを有する出力回路と、1次と2次の巻き線の結合度を向上し、該結合度に適合した動作速度を有する上記電界効果トランジスタの出力から上記第2の矩形パルスが供給され、上記1次と2次の巻き線比に応じた電圧パルスを発生する巻き線トランスとを有する。
【0018】
本発明の高電圧電源装置は、制御信号が供給され安定化された直流電圧を発生する電源回路と、クロック信号が入力に供給され、第1の矩形パルスを発生するドライブ回路と、上記ドライブ回路の出力端子から上記第1の矩形パルスが供給され、該第1の矩形パルスを反転して第2の矩形パルスを出力するハイインピーダンス出力の電界効果トランジスタを有し、後段の電気的特性に適合した動作速度を有する出力回路と、1次巻き線と2次巻き線の結合度を所定値以上にし、上記出力回路から供給された上記第2の矩形パルスから上記1次巻き線と2次巻き線比に比例した電圧を発生する巻き線トランスとを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の高電圧電源装置は、巻き線トランスの1次と2次の結合度を良くし、このトランスを駆動するFETで構成された出力回路の動作速度をトランスの結合度に対して適合することによりスイッチングスピードを速くすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図1に本発明の実施形態である高電圧電源装置10のブロック構成を示す。
高電圧電源装置10は、DC(直流)変換回路11、DC安定化回路12、ドライブ回路13、出力回路14、電圧変換回路(巻き線トランス)15等で構成される。
【0021】
DC変換回路11は、PWM信号が入力されると、このPWM信号のパルス幅に応じてDC電圧を発生する。従って、このパルス幅を制御することにより異なるDC電圧の制御信号を発生する。
【0022】
DC安定化回路12は、DC変換回路11から供給されたDC電圧と、基準電圧(Vref)が供給され、比較器でこの両信号を比較し、DC電圧出力用のトランジスタの入力を制御し、安定化したDC電圧を発生する。また、このDC安定化回路12には、出力回路14の出力信号の一部が帰還され、ドライブ回路13と出力回路14に供給されるDC電圧を制御し、DC電圧の安定化を行う。
【0023】
ドライブ回路13は、低消費電力でかつ高速動作のトランジスタで構成され、例えばバイポーラ・コンプリメンタリ・プッシュプル回路で構成される。このコンプリメンタリ・プッシュプル回路を構成するバイポーラ・トランジスタのベースに例えば2.0KHzのクロック(CLK)信号が供給され、エミッタから矩形パルスが出力される。
【0024】
出力回路14は、高速で駆動能力の大きいトランジスタを用いて、ドライブ回路13から供給された矩形パルスを大電力の矩形パルスに変換して、電圧変換回路15の巻き線トランスを最適な状態で駆動できるようにする。
【0025】
電圧変換回路15は、本発明の実施形態例においては、巻き線トランスを駆動する周波数が2.0KHzの低周波数であるために、セラミック圧電高圧トランスを用いないで、コイルによる巻き線トランスを使用する。また、巻き線トランスを駆動する周波数は、2.0KHzに限定されず、例えば800Hzから10.0KHz等の範囲としても良い。そのために、巻き線トランスのストレイ容量、漏れインダクタンスなどの特性が動作速度に大きく影響を及ぼす。
【0026】
図2に本発明の実施形態である高電圧電源装置100の具体回路構成を示す。この高電圧電源装置100は、図1に示した高電圧電源装置10の1つの具体構成例である。
高電圧電源装置100は、シリーズレギュレータ回路110、ドライブ回路120、出力回路130、電圧変換回路140などで構成される。
【0027】
シリーズレギュレータ回路110は、PWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)信号を直流電圧に変換し、この直流電圧をフィルタを介して定電圧出力用のトランジスタに供給し、このトランジスタから安定化した直流電圧を出力する。
【0028】
ドライブ回路120は、小信号で高速、低消費電力の駆動用バイポーラ・トランジスタで構成される。外部からクロック(CLK)信号が駆動用トランジスタに供給され、増幅された矩形パルスで後段の出力回路130を高速に駆動する。この矩形パルスの周波数は2.0KHzの固定周波数として説明するが、この他、例えば100Hzから10.0KHzまで可変してもよく、この周波数に限定されるものではない。
【0029】
出力回路130は、PチャネルFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)とNチャネルFETで構成され、後述の巻き線トランスTR1の1次と2次の結合度に適合した動作速度の特性を有する。前段のドライブ回路120から供給された矩形パルスにより駆動され、出力回路130で駆動力を高めたパルスにより巻き線トランスTR1を駆動する。
【0030】
電圧変換回路140は、上述したように、主に巻き線トランスTR1で構成され、出力端子(N3)から例えば1,700〜2,100[V]の高電圧を発生する。高速の矩形パルスを得るために、巻き線トランスTR1の特性を向上する必要があり、例えば従来の巻き線トランスTR3に対して結合度を増やす方法がある。巻き線トランスTR1の結合度を向上させるためには構造上の工夫が必要であり、これと同時に背高寸法(巻き線コイルの基板装着時の高さに対応する)が高くならないようにする必要がある。巻き線トランスTR1の詳細については後述する。
【0031】
次に各回路ブロックについて詳細に説明する。まずシリーズレギュレータ回路110について説明する。
DC電圧供給の電源端子T1aとグランド(GND)間にコンデンサC101が接続される。基準電圧Vrefが供給される端子Tvrefaに抵抗R101、R103、R106の一方の端子が接続され、抵抗R101の他方の端子はPWM信号が供給される端子TPWMaと抵抗R102の一方の端子に接続される。
抵抗R102の他方の端子はNPN(バイポーラ)トランジスタQ101のベースに接続され、このNPNトランジスタのコレクタは抵抗R104の一方の端子に接続され、エミッタはグランドに接続される。
抵抗R104の他方の端子は抵抗R105の一方の端子と抵抗R103の他方の端子に接続される。抵抗R106の他方の端子は演算増幅器OP1aの反転入力端子と抵抗R107の一方の端子に接続され、抵抗R107の他方の端子はグランドに接続される。
抵抗R105の他方の端子は抵抗R105aの一方の端子とコンデンサC102の一方の端子に接続される。コンデンサC102の他方の端子はグランドに接続される。
抵抗R105aの他方の端子は演算増幅器OP1aの非反転入力端子とコンデンサC103の一方の端子と演算増幅器OP2aの非反転入力端子に接続される。また、コンデンサC103の他方の端子はグランドに接続される。
演算増幅器OP2aの反転入力端子は抵抗R108、R110の一方の端子と、コンデンサC104の一方の端子に接続される。
抵抗R108の他方の端子は抵抗R109の一方の端子に接続され、この抵抗R109の他方の端子はグランドに接続される。
演算増幅器OP2aの出力端子は、コンデンサC104の他方の端子と、抵抗R110の他方の端子と抵抗R111の一方の端子に接続される。
電源端子T1aが抵抗R112の一方の端子に接続され、この抵抗R112の他方の端子はNPNトランジスタQ102のコレクタに接続される。
NPNトランジスタQ102のベースは抵抗R111の他方の端子に接続される。そしてこのNPNトランジスタQ102のエミッタから安定化されたDC電圧が後段のドライブ回路120と出力回路130に出力される。
【0032】
次に、ドライブ回路120について説明する。
クロック(CLK)信号が供給される端子TCLKaは抵抗R122の一方の端子に接続され、抵抗R122の他方の端子は抵抗R121の一方の端子とツェナダイオードD100のカソードに接続される。このツェナダイオードD100のアノードはグランドに接続される。
抵抗R121の他方の端子は、NPN(バイポーラ)トランジスタQ102のエミッタに接続され、抵抗R121とR122の共通接続点は、NPNトランジスタQ103のベースとPNP(バイポーラ)トランジスタQ104のベースに接続される。また、NPNトランジスタQ103のコレクタはNPNトランジスタQ102のエミッタに接続される。
NPNトランジスタQ103のエミッタはPNPトランジスタQ104のエミッタと抵抗R123の一方の端子に接続される。PNPトランジスタQ104のコレクタはグランドに接続される。
【0033】
次に、出力回路130について説明する。
抵抗R123の他方の端子は、PチャネルFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)Q105のゲートとNチャネルFETQ106のゲートに接続される。
PチャネルFETQ105のソースは抵抗R124の一方の端子に接続され、ドレインはNチャネルFETQ106のドレインと抵抗R126の一方の端子に接続される。抵抗R124の他方の端子は、シリーズレギュレータ回路110のNPNトランジスタQ102のエミッタに接続される。また、NチャネルFETQ106のソースはグランドに接続される。
NPNトランジスタQ102のエミッタとグランド間に並列に抵抗R125とコンデンサC121がそれぞれ接続される。
ここで使用するPチャネルFETQ105とNチャネルFETQ106のスイッチングスピードなどの電気的特性は、波形の急峻な立ち上がりまたは立ち下がり波形を得るために後述の巻き線トランスTR1の結合度に適合させる。
【0034】
次に、電圧変換回路140について説明する。
抵抗R126の他方の端子は、巻き線トランスTR1の1次側の端子N1に接続され、この巻き線トランスTR1の1次側の端子N2はグランドに接続される。
この巻き線トランスTR1の2次側の端子N3は抵抗R127の一方の端子に接続され、抵抗R127の他方の端子は抵抗R128の一方の端子に接続され、抵抗R128の他方の端子は、抵抗R129の一方の端子に接続される。そして、この抵抗R129の他方の端子から出力電圧が導出される。また、巻き線トランスTR1の2次側の端子N4はグランドに接続される。
なお、この巻き線トランスTR1は、後述するように、巻き線トランスの構造を改良し、従来の巻き線トランスTR3と比較して1次と2次の結合度を良くしている。
【0035】
次に、高電圧電源装置100の動作について説明する。
まずシリーズレギュレータ回路110の動作について説明する。PWM信号が抵抗R102を介してNPNトランジスタQ101のベースに供給され、このPWM信号が“H”レベルになるとON(導通)する。その結果、NPNトランジスタQ101のコレクタは“L”レベルとなる。一方、PWM信号が“L”レベルとなると、NPNトランジスタQ101はOFF(非導通)になるので、コレクタの電圧は基準電圧Vrefとなる。すなわち、NPNトランジスタQ101のコレクタからはPWM信号の反転された信号が出力される。
この反転されたPWM信号は、抵抗R105とコンデンサC102、また抵抗R105aとコンデンサC103によりデューティ比に応じた直流電圧に変換され、この変換された直流電圧が演算増幅器OP1aの非反転入力端子と演算増幅器OP2aの非反転入力端子にそれぞれ入力される。
演算増幅器OP2aの反転入力端子には演算増幅器OP2aの出力電圧を抵抗R110とR108,R109で分圧された電圧が供給され、非反転入力端子と反転入力端子の電圧を比較してその誤差分を増幅して出力端子から導出した制御電圧を抵抗R111を介してNPNトランジスタQ102のベースに供給し、NPNトランジスタQ102のエミッタ電圧を安定化する。
また、演算増幅器OP2aを構成する回路は、抵抗R110、コンデンサC104と抵抗R108、R109によりL.P.Fを構成するので、入力端子間の誤差電圧を増幅すると共に、カットオフ周波数以上の信号やノイズを減衰し、NPNトランジスタQ102のベースに安定した制御電圧を出力する。
【0036】
演算増幅器OP1aの反転入力端子には、基準電圧Vrefが抵抗R106とR107で分圧された電圧が供給され、非反転入力端子には抵抗R105aとコンデンサC103の共通接続点で発生するDC電圧が供給される。演算増幅器OP1aの入力端子間の差電圧が増幅され、非反転入力端子の電圧と比較して反転入力端子の電圧が高いと、出力端子から“H”レベルの電圧が出力され、比較結果が逆の場合、出力端子からは“L”レベルの電圧が出力される。この演算増幅器OP1aの出力電圧により後段のドライブ回路120の動作を強制的に制御する。
【0037】
端子TCLKaから入力されるクロック(CLK)信号が抵抗R122を介してコンプリメンタリ・プッシュプル回路(NPNトランジスタQ103,PNPトランジスタQ104)の入力に供給される。クロック(CLK)信号が“L”レベルになると、“L”レベルの信号が入力され、PNPトランジスタQ104はONし、NPNトランジスタQ103はOFFする。その結果、ドライブ回路120(PNPトランジスタQ104のエミッタ)の出力は“L”レベルとなる。
一方、クロック(CLK)信号が“H”レベルになると、NPNトランジスタQ103とPNPトランジスタQ104のベースは“H”レベルとなり、NPNトランジスタQ103はONし、PNPトランジスタQ104はOFFする。その結果、ドライブ回路120(NPNトランジスタQ103のエミッタ)の出力は“H”レベルとなる。
なお、このクロック(CLK)信号の周波数は2.0KHzだけでなく、100Hz〜10.0KHzの範囲と可変し、ドライブ回路120を駆動することもできる。
すなわち、ドライブ回路120は、入力されたクロック信号に応じて、“H”レベルをシリーズレギュレータ回路110の出力電圧のレベルとし、“L”レベルをグランドレベルとするクロック信号を発生する。
【0038】
さらに、コンプリメンタリ・プッシュプル・トランジスタ(NPNトランジスタQ103,PNPトランジスタQ104)のベースに演算増幅器OP1aの出力電圧が供給されているので、動作が制御される。例えば、PWM信号のデューティ比が小さくなり、演算増幅器OP1aの非反転入力端子の電圧が、基準電圧Vrefが分圧された所定電圧より低くなると、演算増幅器OP1aの出力端子から“L”レベルの電圧が出力され、強制的にドライブ回路120の動作を停止する。
【0039】
ドライブ回路120から出力された信号電圧が“H”レベルになると、NチャネルFETQ106がONし、PチャネルFETQ105はOFFする。その結果、巻き線トランスTR1の1次側の端子N2からN1を介してNチャネルFETQ106のドレイン、ソース(グランド)に電流が流れる。
一方、ドライブ回路120から出力された信号電圧が“L”レベルになると、NチャネルFETQ106はOFFし、PチャネルFETQ105はONする。電源電圧が供給されるNPNトランジスタQ102のエミッタから、抵抗R124、PチャネルFETQ105のソース、ドレイン、抵抗R126を介して、巻き線トランスTR1の1次側の端子N1からN2(グランド)に電流が流れる。
その結果、巻き線トランスTR1の1次と2次の巻き線比に比例した高圧パルスが出力側(2次側)の端子N3、N4間に発生する。
なお、出力回路130の抵抗R124は、PチャネルFETQ105のソースにおいてパルスの立ち上がり、または立下がりの直後に発生する鋭いパルスを吸収する。この鋭いパルスは、特に、ドライブ回路120に入力されるクロック(CLK)信号を可変し、クロックの周波数が高く成った時に発生しやすい。
また、巻き線トランスTR1の2次側の端子N3と出力端子Tout間に直列に接続された抵抗R127、R128、R129も同様に、巻き線トランスTR1から出力されたパルスの立ち上がりまたは立下りの直後に発生する鋭いパルスを吸収するために設けている。
【0040】
このように、巻き線トランスTR1を高速で駆動する場合、巻き線トランスTR1の1次と2次の結合度を向上する必要があり、この結合度とPチャネルFETQ105とNチャネルFETQ106のスイッチングスピードを適合することにより、巻き線トランスTR1から導出されるパルス電圧の立ち上がり波形を急峻にすることができる。もしこれらの特性を適合できないと、巻き線トランスTR1の出力電圧波形の立ち上がりが緩慢(時定数が大きくなる)となる。
【0041】
図3に本発明の他の実施形態である高電圧電源装置200を示す。
高電圧電源装置200は、DC変換回路210、DC安定化回路220、レギュレータ出力回路230、ドライブ回路240、出力回路250、電圧変換回路260で構成される。
DC変換回路210は、PWM信号のデューティ比に応じたDC電圧を発生し、DC安定化回路220に出力する。さらに、このPWM信号により発生したDC電圧と基準電圧Vrefとを比較して、比較して得られた制御信号によりDC安定化回路220またはレギュレータ出力回路230を制御する。
【0042】
DC安定化回路220は、DC変換回路210から供給されたDC電圧と出力回路250の出力端子から帰還された制御電圧により、レギュレータ出力回路230のNPNトランジスタQ201のベースを制御する。
【0043】
レギュレータ出力回路230は、NPNトランジスタQ201、抵抗R201、コンデンサC201、ツェナダイオードD201、ダイオードD202で構成される。
DC安定化回路220から供給された制御電圧により、NPNトランジスタQ201のベース電位が制御され、NPNトランジスタQ201のエミッタから出力回路250に安定化されたDC電圧が出力される。またDC安定化回路220から出力されるDC電圧が、抵抗R202とダイオードD202を介して、小電力消費のドライブ回路240に供給される。
【0044】
次にドライブ回路240の回路構成について説明する。
抵抗R210の一方の端子にクロック(CLK)信号が供給され、他方の端子は抵抗R203の一方の端子とNAND回路231の第1の入力端子に接続される。抵抗R203の他方の端子はダイオードD202のカソードに接続される。NAND回路231の第2の入力端子は抵抗R204の一方の端子とコンデンサC202の一方の端子に接続される。抵抗R204の他方の端子は、上述したダイオードD202のカソードに接続され、コンデンサC202の他方の端子はグランドに接続される。
NAND回路231の出力端子は、NAND回路232の第1と第2の入力端子に接続される。このNAND回路232の出力端子は、抵抗R205の一方の端子に接続され、抵抗R205の他方の端子は、NPN(バイポーラ)トランジスタQ202とPNP(バイポーラ)トランジスタQ203のベースに接続される。NPNトランジスタQ202のコレクタはダイオードD202のカソードに接続され、エミッタは抵抗R206の一方の端子とPNPトランジスタQ203のエミッタに接続される。PNPトランジスタQ203のコレクタはグランドに接続される。
なお、クロック(CLK)信号を論理演算してコンプリメンタリ・プッシュプル回路を構成するNPNトランジスタQ202とPNPトランジスタQ203のベースに供給する構成において、NAND回路231とNAND回路232で構成される論理回路は、たとえばインバータ回路などの他の回路で構成しても良く、これらの回路に限定されるものではない。
【0045】
次に、出力回路250の回路構成について説明する。
抵抗R206の他方の端子は、PチャネルFETQ204のゲートとNチャネルFETQ205のゲートに接続される。PチャネルFETQ204のソースはNPNトランジスタQ201のエミッタに接続され、ドレインはNチャネルFETQ205のドレインとコンデンサC204の一方の端子に接続される。NチャネルFETQ205のソースはグランドに接続される。また、この出力回路250の出力は、DC安定化回路220に接続され、出力電圧が帰還され、電圧の安定化を行う。
【0046】
次に、電圧変換回路260の回路構成について説明する。
コンデンサC204の他方の端子は、巻き線トランスTR2の1次側の端子N1に接続され、この巻き線トランスTR2の1次側の端子N2はグランドに接続される。巻き線トランスTR2の2次側の端子N3は抵抗R208の一方の端子に接続され、端子N4はグランドに接続される。そして、抵抗R208の他方の端子は抵抗R209の一方の端子に接続され、またこの抵抗R209の両端に並列にコンデンサC205が接続される。そして、抵抗R209の他方の端子から出力電圧(Vo)が導出される。
【0047】
次に、高電圧電源装置200の動作について説明する。
DC変換回路210、DC安定化回路220、レギュレータ出力回路230までの動作は図2に示すシリーズレギュレータ回路110と同様であるので、ここではその詳細な説明は省略し、それ以後のパルス電圧を発生する回路について説明する。
【0048】
端子TCLKbから入力されたクロック(CLK)信号が“H”レベルになると、NAND回路231の第1の入力端子は“H”レベルとなり、第2の入力端子も“H”レベルであるので、出力端子から“L”レベルの電圧が出力される。NAND回路231の出力端子から出力された“L”レベルの電圧がNAND回路232の第1と第2の入力端子に入力され、出力端子から“H”レベルの電圧が出力される。
NPNトランジスタQ202とPNPトランジスタQ203のベースが“H”レベルになると、NPNトランジスタQ202がONし、PNPトランジスタQ203はOFFする。その結果、NPNトランジスタQ202のエミッタは“H”レベルとなり、この“H”レベルの電圧が抵抗R206を介して出力回路250を構成するPチャネルFETQ204とNチャネルFETQ205のゲートに供給される。
NチャネルFETQ205のゲートに“H”レベルの電圧が供給されるのでONし、一方、PチャネルFETQ204はOFFする。この状態において、巻き線トランスTR2の1次側の端子N2、N1、コンデンサC204、NチャネルFETQ205のドレイン、ソースを介して電流がグランドに流れる。
【0049】
一方、クロック(CLK)信号が“L”レベルになると、NAND回路231の第1の入力端子は“L”レベルとなり、第2の入力端子は“H”レベルであるので、出力端子から“H”レベルの電圧が出力される。NAND回路231の出力端子から出力された“H”レベルの電圧がNAND回路232の第1と第2の入力端子に入力され、出力端子から“L”レベルの電圧が出力される。
NPNトランジスタQ202とPNPトランジスタQ203のベースが“L”レベルになると、NPNトランジスタQ202がOFFし、PNPトランジスタQ203はONする。その結果、PNPトランジスタQ203のエミッタは“L”レベルとなり、この“L”レベルの電圧が抵抗R206を介して出力回路250を構成するPチャネルFETQ204とNチャネルFETQ205のゲートに供給される。
NチャネルFETQ205のゲートに“L”レベルの電圧が供給されるのでOFFし、一方、PチャネルFETQ204はONする。この状態において、レギュレータ出力回路230からDC電圧を供給するNPNトランジスタQ201のエミッタから電流が、PチャネルFETQ204のソース、ドレイン、コンデンサC204、巻き線トランスTR2の1次側の端子N1,N2を介してグランドに流れる。
【0050】
その結果、巻き線トランスTR2の2次側の端子N3,N4に高電圧のパルス電圧が発生し、このパルス電圧が抵抗R208、コンデンサC205、抵抗R209を介して出力端子から導出される。
【0051】
図4(A)に図7に示す高電圧電源装置300の出力電圧の波形を示し、図4(B)に、図2と図3に示した高電圧電源装置100,200の出力端子から導出された電圧波形を示す。図4において、クロック(CLK)信号の周波数は2.5KHzとし、このとき巻き線トランスTR1、TR2から出力されるパルス電圧は1,800Vp−pである。
図4(A)に示す従来の高電圧電源装置300の出力波形は、出力パルスにDCが重畳された波形を示す。この出力パルスの波形の立ち上がり時間は約34μs(マイクロ秒)、立下り時間は約36μsであり、動作速度が遅いことを示している。これに対して図4(B)に示す本発明の高電圧電源装置100,200の出力パルスの波形は、立ち上がり時間は約13μs(マイクロ秒)、立ち上がり時間は約13.6μsであり、立ち上がりだけでなく、立ち下りも速くなっている。すなわち本発明の高電圧電源装置100,200の出力パルスの立ち上がり時間または立下り時間は従来例と比較して著しく短くなり、動作速度が向上されたことを示している。
【0052】
図5(A)〜(C)に図2または図3で示した高電圧電源装置100、200のクロック周波数を可変した時の、出力パルスの電圧波形を示す。ただし、クロック周波数を可変するに伴い、好適な出力パルスの電圧波形を得るために、図2または図3に示す高電圧電源装置100、200の回路構成の回路定数と巻き線トランスTR1、TR2の仕様を調整した。
図5(A)に、クロック周波数が800Hzの時に、巻き線トランスTR1、TR2から出力される出力パルスの電圧波形を示す。電圧を縦軸に、時間を水平軸にそれぞれ示し、この水平軸の時間目盛を200μsとした。図5(A)に示すように、出力パルスの電圧波形の立上り、立下がり時間は、いずれも約15μsである。
図5(B)に、クロック周波数を1.00KHzとした時に、巻き線トランスTR1、TR2から出力される出力パルスの電圧波形を示す。図5(B)は、水平軸の時間目盛を200μsとしたときの電圧波形図を示し、この出力パルスの電圧波形の立上り、立下がり時間はいずれも約13μsである。
図5(C)は、クロック周波数をさらに増加して10.0KHzとした時の、巻き線トランスTR1、TR2から出力される出力パルスの電圧波形を示す。図5(C)は、水平軸の時間目盛を20μsとしたときの電圧波形図であり、出力パルスの電圧波形の立上り、立下がり時間は約9μsである。
以上示したように、高電圧電源装置100、200に供給するクロック周波数を800Hzから10.0KHzと可変しても、巻き線トランスTR1、TR2から出力される出力パルスの電圧波形の劣化は少なく、実用レベルである。
【0053】
次に、図6に本発明の高電圧電源装置100,200に用いた巻き線トランスTR1、TR2を示す。
図6(A)は巻き線トランスTR1、TR2に使用した断面構造を示し、図6(B)は巻き線トランスの正面図を示す。
図6(A)に示すように、巻き線トランスTR1、TR2は、ボビンのセンター側に設けられた各セクションS1、S2、・・・、Snと、ボビンの端子側(外側)に1次巻き線cと2次巻き線eを分離絶縁する層間テープdと、2次巻き線用領域とを設けた構造である。
図6(A)に示すように、ボビンのセンター側(内側)に設けられた各セクションS1、S2、・・・、Snに2次巻き線eが所定回数(円筒状に)巻かれ、その外側に層間テープdを巻いて2次巻き線eと1次巻き線cを分離する。さらに、このボビンの両サイドにバリアテープbを設ける。その後、層間テープdの外側に1次巻き線cを所定回数巻き、外装テープaを巻く。
このように、円筒状の単一ボビンに円筒状に1次コイルと2次コイルを層間テープを介して所定回数巻く構造にすることにより、1次巻き線と2次巻き線の結合度を向上させることができる。
また、図6の巻き線トランスTR1、TR2以外に、不図示の2ボビントランスがある。この2ボビントランスは、円筒状の大小のボビンを2個用い、例えば小ボビンに1次コイルを巻き、大きいボビンに2次コイルを所定回数巻き、その後、小ボビンを大ボビンの円筒内部に挿入してトランスを形成する。すなわち、2ボビントランスは、小ボビンに円筒状に巻かれた1次コイルと大ボビンに円筒状に巻かれた2次コイルにより結合度が向上する。
したがって、これらの巻き線トランスは、従来の巻き線トランスである1次コイルを1領域にまとめて円筒状に巻き、この1次コイルと隣接した他の領域に2次コイルを横方向に円筒状にまとめて巻いた構造と比較して、結合度を高くすることができる。
低周波数で動作する巻き線トランスの結合度を向上し、これに応じてこの巻き線トランスを駆動する駆動素子の動作速度を適合して、効率よく高電圧パルスを発生することが出来る。
【0054】
以上述べた様に、巻き線トランスの結合度を向上させるとともに、この結合度に適応したFETで構成される出力回路で巻き線トランスを駆動することにより、立ち上がりと立下りの時定数の小さい高電圧パルスを発生することができる。また、高速動作が効率よくできるため消費電力を削減でき、これに伴い発熱量を少なくでき放熱板などを削除することができる。さらに、結合度を良くした巻き線トランスの背高を低くすることができ、他の部品を同一基板に実装するとき容積を小さくすることができる。
【0055】
本発明の高電圧電源装置において、クロック信号により高速かつ低消費電力で動作し、矩形パルスを発生するドライブ回路は、例えばNPN(バイポーラ)トランジスタQ103(Q202)とPNP(バイポーラ)トランジスタQ104(Q203)を用いたコンプリメンタリ・プッシュプル回路に対応し、上記ドライブ回路から出力された第1の矩形パルスが供給され、第2の矩形パルスを発生する電界効果トランジスタを有する出力回路は、例えばPチャネルFETQ105(Q204)とNチャネルFETQ106(Q205)で構成されるインバータ回路に対応し、1次と2次の巻き線の結合度を向上し、該結合度に適合した動作速度を有する上記電界効果トランジスタの出力から上記第2の矩形パルスが供給され、上記1次と2次の巻き線比に応じた電圧を発生する巻き線トランスは、例えば巻き線トランスTR1、TR2に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、高電圧電源装置のブロック構成を示す図であるある。
【図2】図2は、図1に示す高電圧電源装置の回路構成を示す図である。
【図3】図3は、図1に示す高電圧電源装置の他の回路構成を示す図である。
【図4】図4は、図2と図3に示した高電圧電源装置と従来例の高電圧電源装置の出力電圧の波形を示した図である。
【図5】図5は、クロック周波数を可変した時の高電圧装置の出力電圧の波形を示した図である。
【図6】図6は、巻き線トランスの構造を示した図である。
【図7】図7は、従来の高電圧電源装置の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10,100,200,300…高電圧電源装置、11,210…DC変換回路、12,220…DC安定化回路、13,120,240…ドライブ回路、14,130,250…出力回路、15,140,260…電圧変換回路、110…シリーズレギュレータ回路、Q101,Q102,Q103,Q201,Q202,Q301…NPNトランジスタ、Q104,Q203,Q302…PNPトランジスタ、Q105,Q204…PチャネルFET、Q106,Q205…NチャネルFET、TR1,TR2,TR3…巻き線トランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号が供給され、該クロック信号により高速かつ低消費電力で動作し、第1の矩形パルスを発生するドライブ回路と、
上記ドライブ回路から出力された前記第1の矩形パルスが供給され、第2の矩形パルスを発生する電界効果トランジスタを有する出力回路と、
1次と2次の巻き線の結合度を向上し、該結合度に適合した動作速度を有する上記電界効果トランジスタの出力から上記第2の矩形パルスが供給され、上記1次と2次の巻き線比に応じた電圧パルスを発生する巻き線トランスと
を有する
高電圧電源装置。
【請求項2】
上記ドライブ回路は、高速低消費電力で動作するバイポーラ・トランジスタで構成された
請求項1記載の高電圧電源装置。
【請求項3】
上記ドライブ回路は、コンプリメンタリ・プッシュプル回路である
請求項2記載の高電圧電源装置。
【請求項4】
上記出力回路は、Pチャネル電界効果トランジスタとNチャネル電界効果トランジスタで構成される
請求項1記載の高電圧電源装置。
【請求項5】
上記巻き線トランスは、2次巻き線が1次巻き線を覆うように形成された
請求項1記載の高電圧電源装置。
【請求項6】
上記巻き線トランスは、1次巻き線と2次巻き線が絶縁膜で分離された
請求項5記載の高電圧電源装置。
【請求項7】
上記クロック信号は800Hzから10.0KHzまで可変する
請求項1記載の高電圧電源装置。
【請求項8】
上記出力回路は、上記Pチャネル電界効果トランジスタとNチャネル電界効果トランジスタが直列接続され、上記Pチャネル電界効果トランジスタのソースと電源端子間に上記第2の矩形パルスの立ち上がり、立下りの直後に発生するパルス吸収用の保護抵抗を有する
請求項7記載の高電圧電源装置。
【請求項9】
制御信号が供給され安定化された直流電圧を発生する電源回路と、
クロック信号が入力に供給され、第1の矩形パルスを発生するドライブ回路と、
上記ドライブ回路の出力端子から上記第1の矩形パルスが供給され、該第1の矩形パルスを反転して第2の矩形パルスを出力するハイインピーダンス出力の電界効果トランジスタを有し、後段の電気的特性に適合した動作速度を有する出力回路と、
1次巻き線と2次巻き線の結合度を所定値以上にし、上記出力回路から供給された上記第2の矩形パルスから上記1次巻き線と2次巻き線比に比例した電圧を発生する巻き線トランスと
を有する
高電圧電源装置。
【請求項10】
上記出力回路は、電界効果トランジスタで構成されたインバータ回路である
請求項9記載の高電圧電源装置。
【請求項11】
上記ドライブ回路は、バイポーラ・コンプリメンタリ・プッシュプル回路である
請求項9記載の高電圧電源装置。
【請求項12】
上記ドライブ回路は、上記クロック信号を反転し、該反転したクロック信号を上記バイポーラ・コンプリメンタリ・プッシュプル回路に供給する論理回路を有する
請求項11記載の高電圧電源装置。
【請求項13】
上記クロック信号は、800Hzから10.0KHzまで可変する
請求項9記載の高電圧電源装置。
【請求項14】
上記出力回路は、上記インバータ回路と電源端子間に上記矩形パルスの立ち上がり、立下りの直後に発生するパルスを吸収するための保護抵抗を有する
請求項9記載の高電圧電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−213339(P2009−213339A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101682(P2008−101682)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】