説明

高靭性ナノコンポジット材料およびその製造方法

【課題】高靭性ナノコンポジット材料の提供。
【解決手段】長炭素鎖アルキルアミノ塩および官能基含有シリコーン化合物で改質された層状粘土であって、改質粘土層にポリマー化合物を挿入することにより高い剛性および靭性を有する。イオン交換反応を利用して、粘土層間に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物を挿入し、長炭素鎖の固体効果によって粘土の各層間の間隔を拡張するとともに、シリコーン化合物を用いて粘土層の間を充填し、高靭性ナノコンポジットを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機改質層状粘土およびこの層状粘土を利用するための製造方法、より詳細には、上記有機改質層状粘土から製造されたナノコンポジット材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノコンポジット材料は、無機組成物分散相を有し、その粒子径は1〜100ナノメートル(10−9m)である。それにより、複合材料のナノ効果を得ることができる。最新技術によれば、ナノコンポジット材料は、従来の複合材料より高い機械的強度、剛性、および耐熱性、並びに低い吸水性、可燃性、および通気性を提供することができる。市販のナノコンポジット材料の場合、例えば、ナイロン6/粘土ナノ材料は、層状粘土をポリマーマトリックス中に分散させることによって、機械的強度、加熱たわみ温度および吸水性/耐水性を改善し得ることを示している。
【0003】
現在のナノコンポジット材料プロセスは、ポリマーマトリックス、カップリング剤および有機粘土を二軸押出機で溶融混合するものである。有機粘土を挿入し、プロセス中に、カップリング剤とポリマーマトリックスで分散させる。この種の層状粘土コンポジット材料は、高強度、高剛性、高耐熱性、低吸水性、低通気性および複数回にわたる再利用可能性を含む分子級の構造的特性を示すことができる。しかしながら、このコンポジット材料は、引張強度、曲げ強度および曲げ弾性率を向上することはできるが、耐衝撃性はまだ高められていない。したがって、剛性を低下させない高靭性ナノコンポジット粘土材料の開発には高い利用価値があるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の上記不都合に対処するために、本発明の目的は、ポリマー−ナノ粘土コンポジット材料を提供することにある。そのようなポリマー−ナノ粘土コンポジット材料は高剛性を有する必要があるだけでなく、さらにこの材料が耐衝に耐え得るように靭性を高めることも必要である。
【0005】
さらに、本発明は、粘土を改質することにより、ポリマーと粘土との表面の親和性を高め、さらに、層状粘土間にポリマーを挿入すると表面をより均質にすることができる。本発明はナノコンポジット材料の特性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の有機改質層状粘土は、層状粘土と、長炭素鎖を有するアルキルアミノ塩化合物(以下「長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物」と称する)と、層状粘土層間に位置する、官能基を含むシリコーン化合物(以下、「官能基含有シリコーン化合物」と称する)とを含む。本発明の有機改質層状粘土は、シリコン化合物の靭性効果によりナノコンポジット材料の靭性を向上する。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明の有機改質層状粘土は、カップリング剤をさらに含む。カップリング剤は官能基を有するシラン化合物である。カップリング剤の官能基を利用すると、有機改質粘土用途におけるナノコンポジット材料とポリマーマトリックスとの親和性を高めることができる。
【0008】
上記有機改質層状粘土を製造するために、本発明は、有機改質粘土の製造方法を提供し、この方法は、以下の工程、(a)層状粘土を得る工程、(b)溶液中に層状粘土を分散
させる工程、(c)工程(b)の溶液に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物を添加して反応させる工程、(d)官能基含有シリコーン化合物を添加して反応させ、沈殿物を形成する工程、および(e)工程(d)の沈殿物を乾燥する工程を含む。
【0009】
本発明は、イオン交換反応を利用して、粘土層間に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物を挿入し、長炭素鎖の固体効果(solid effect)によって粘土の各層間の間隔を拡張するとともに、シリコーン化合物を用いて粘土層の間を充填することによって、ナノコンポジット材料に利用される粘土の靭性を向上する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明の有機改質層状粘土の製造方法の工程(d)は、官能基含有シリコーン化合物の添加だけでなく、カップリング剤の添加をさらに含む。カップリング剤としては、例えば官能基を含有するシランが挙げられるがそれには限定されない。カップリング剤は、得られた有機改質層状粘土の表面に官能基を導入することができ、これは層状粘土とポリマーマトリックスとの界面親和性を高めるのに有用である。
【0011】
本発明の有機改質層状粘土は、ナノ級のナノコンポジット材料を形成するためにポリマーマトリックスと溶融混合することができる。
したがって、本発明はさらに、層状粘土と、長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物と、層状粘土層間に位置する官能基含有シリコーン化合物と、層状粘土間に混合された少なくとも1種のポリマーマトリックスとを含むナノコンポジット材料を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明のナノコンポジット材料はさらにカップリング剤を含み、カップリング剤は、官能基を有するシラン化合物を有し、粘土とポリマーマトリックスとに良好な界面反応性を与える。
【0013】
本発明の有機改質層状粘土は、靭性を向上し得るシリコーン化合物を含む。さらに、界面反応性を高めるためにカップリング剤を加えることにより、粘土とポリマーマトリックスとに良好な界面親和性が与えられる。粘土とポリマーマトリックスとを溶融混合して形成したナノコンポジット材料は、優れた靭性と優れた剛性を有する。
【0014】
本発明の他の目的、利点および新規特徴は、添付図面と併せて記載された以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、層状粘土1と、長炭素鎖アルキルアミン塩化合物2と、層状粘土1間に位置する官能基含有シリコーン化合物3とからなる本発明の有機改質層状粘土10の構造を示す図である。組成比は、層状粘土1の材料特性によって異なり、本発明の一般的な実施例において、本発明の有機改質層状粘土10は、10〜80重量%の層状粘土1と、10〜80重量%の長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2と、10〜80重量%の官能基含有シリコーン化合物3とからなる。
【0016】
本発明の有機改質層状粘土10は、層状粘土1の各層に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2を挿入することにより層状粘土層間の間隔が拡張される。挿入反応の工程は、溶液中に層状粘土1を分散させ、イオン交換反応処理するために、溶液中で長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2を粘土と接触させることである。この反応は比較的酸性条件下で行なうことが好ましい。アミノ塩の官能基は4価の陽電荷を有するアミノ基を形成する。イオン交換反応処理を行なうために、アミノ塩を、50〜200meg/100gのイオン交換当量を有する粘土、例えば、NMT、マイカ、滑石粉末またはそれらの混合物と混合し得る。
【0017】
本発明の長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2は、8〜20個の炭素を有し、層状粘土1に挿入すると、長い炭素鎖の固体構造によって、層状粘土層間の間隔を拡張することができる。長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2としては、下記式(I)を有するオクタデシルアミノまたはアルキルベンジルアンモニウム塩が挙げられるが、それらには限定されない。
【0018】
【化1】

【0019】
本発明の有機改質層状粘土10は、長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2により層状粘土層間の間隔が拡大されるだけでなく、官能基含有シリコーン化合物3により改質される。上記の目的は、シリコーン化合物3の靭性効果を利用して粘土の靭性を高めることにあり、官能基含有シリコーン化合物3は、シリコーン構造を有するシロキサン、例えば、末端または分枝鎖にアミノ基を有するシリコーンオイルを含む。
【0020】
本発明の有機改質層状粘土10は、シリコーン化合物3によって改質されるのに加えて、表面改質効果を達成するためにカップリング剤が添加される。図1を参照すると、カップリング剤4は、粘土1の各層に反応性を与えて、ナノコンポジット材料を製造する際にポリマーマトリックスへの界面親和性を付与することができる。カップリング剤の添加量は、有機層状改質粘土の約0.1〜20重量%である。カップリング剤は、アミノ、アクリルグリシジル、アクリル酸またはメタクリル酸官能基を含有するシラン化合物を含む。シラン化合物は、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリルグリシジルプロピルトリメトキシシランまたはγ−メタクリル酸プロピルトリメトキシシランを含むが、それらには限定されない。
【0021】
本発明の有機層状改質粘土層間の間隔は、X線分析して12Åから25〜30Åまで拡大することができる。拡大された層間隔により本発明の粘土が構成され得ることは、粘土層にポリマーを分散させるのに有効である。
【0022】
本発明の有機改質層状粘土を得るために、本発明は、図2に示すような有機改質層状粘土製造方法を提供し、その工程は以下の通りである。先ず、粘土材料が上記定義の通りである層状粘土1を準備し、層状粘土1を溶液中に分散させる。この溶液は、各工程の反応物質と反応するときには不活性であり、かつ反応後に乾燥により除去しやすいものでなければならない。水は入手しやすく、かつ適当な溶媒でもあるので、本発明の実施形態には水溶液を用いる。
【0023】
さらに、粘土を含む溶液に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2を添加する前に、溶液中に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2を加えたときにアミノ塩官能基が4価の陽電荷を有するアミノ基を形成するのを助けるために、溶液を比較的酸性状態に調節することができる。加えて、その後の反応の進行を支援するために、溶液の温度を溶液の沸点未満の加熱状態に調節することが可能である。例えば、溶媒の温度を約75℃に調節し、これを維持すると、反応の進行に有益である。
【0024】
粘土を含む溶液中に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2を加えて反応させる。イオン交
換反応工程により粘土1の各層に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2を挿入し、さらに粘土層間の間隔を拡大させる。長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2は、8〜20個の炭素を有する。長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物2としては下記式(I)を有するオクタデシルアミンまたはアルキルベンジンアンモニウム塩が挙げられるが、それらには限定されない。
【0025】
【化2】

【0026】
次いで、層状粘土を改質するために、溶液中に官能基含有シリコーン化合物3を添加する。改質後において、ナノコンポジット材を形成する材料および高靭性を有する官能基含有シリコーン化合物は、上記定義の通りである。
【0027】
上記反応から沈殿物を得、沈殿物を乾燥させる前に反応溶媒(例えば、水)で洗浄し、次いで、粗生成物を再度乾燥して、本発明の有機改質層状粘土を得る。
有機改質層状粘土の製造方法において、粘土表面の改質処理のために、官能基含有シリコーン化合物を添加した後または添加と同時に、さらにカップリング剤を加え得る。カップリング剤は、官能基を有するシラン化合物であることが好ましい。カップリング剤の選択は上述のように行う。カップリング剤は、ナノコンポジットマトリックスを調製する際、ポリマーマトリックスの界面親和性を与える。
【0028】
高剛性および高靭性を有するナノコンポジット材料を形成するために、本発明の有機改質層状粘土をポリマーマトリックスと溶融混合する。したがって、本発明のナノコンポジット材料は、層状粘土と、長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物と、官能基含有シリコーン化合物と、少なくとも1種のポリマーマトリックスとを含む。層状粘土、長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物、および官能基含有シリコーン化合物は上記定義の通りである。ポリマーマトリックス材料は、ナノコンポジット材料分野では周知であり、ポリオレフィン、ポリアミドまたはポリエステルを含むがそれらには限定されない。さらに、有機改質層状粘土組成物がカップリング剤を含む場合、ナノコンポジット材料はカップリング剤を含む。
【0029】
「溶融混合」とは、押出機および他の混合機を介して有機改質層状粘土とポリマーマトリックスとを均質に混合する技術を意味する。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスの靭性を高め、かつ層状粘土の混合の均質度を高めるために、混合物にプロセスオイルを添加してから押出機で溶融混合することによりこれを達成し得る。種々のプロセスオイルは、白色鉱油、ゴム軟化油またはシリコーンモノマー溶液(シリコーンオイルの一実施形態)を含む。その添加量は約2重量%である。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明のナノコンポジット材料は、1〜12重量%の層状粘土と、1〜10重量%の長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物と、1〜12重量%の官能基含有シリコーン化合物と、80〜90重量%のポリマーマトリックスとを含み、さらに、0.1〜20重量%のカップリング剤を含み得る。しかしながら、各組成は、有機改質粘土およびナノコンポジット材料の特性に応じて変動する。
【0031】
実施例を例示して本発明をさらに説明するが、実施例に記載した説明は、本発明の実際の適用を制限するものと解釈すべきではない。
実施例1: 本発明の有機改質層状粘土とナノコンポジット材料の調製
有機改質層状粘土
粘土の改質を開始するために、先ず、粘土を水中に分散させ、次いで、pH値を7未満に調節し、温度を約75℃にする。長炭素鎖アルキルアミノ塩を粘土とイオン交換させ、粘土に挿入するために、ジメチルドデシルベンジルアンモニウムクロリド塩またはオクタデシルアミンを加え、連続攪拌する。次いで、シリコーンポリマー構造を有するシリコーンオイルを加え、場合により、その間またはその後に、カップリング剤を加える。その溶液を攪拌し、次いで、沈殿物を乾燥させるが、これは、生成物中の不純物を取り除くために洗浄などのいくつかの工程と連携させることができ、その後、本発明の有機改質層状粘土が得られる。
【0032】
高靭性ナノコンポジット材料は、長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物およびシリコーン化合物によって表面改質した後に、シリコーン化合物を付与されたナノ有機改質層状粘土を、次いでポリマーマトリックスと混合することによって形成される。押出機で溶融混合することにより、本発明のポリマー−粘土ナノコンポジット材料が得られる。
【0033】
比較1: 本発明のナノコンポジット材料と従来技術の比較
本発明のナノコンポジット材料の製造方法は実施例1を参照し得る。従来技術の比較は、PolyOneという市販のポリプロピレン−粘土複合材料である。前記ポリプロピレン−粘土複合材料は、先ず、38〜42重量%の濃縮粒子(MB1001)として有機粘土を調製され、次いで、ポリプロピレンマトリックスに添加したものである。添加量は約10〜20重量%である。
【0034】
表1は本発明のナノコンポジット材料と従来技術との比較である。
【0035】
【表1】

表1に示すように、従来技術のノッチ付きアイゾッド衝撃強度は約2kg−cm/cmであるが、本発明のノッチ付きアイゾッド衝撃強度は80kg−cm/cm以上に高めることができ、これは、ナノコンポジット材料の靭性を高めるのに有効である。
【0036】
実施例2: ナノコンポジット材料のノッチ付きアイゾッド衝撃
表2は、ポリプロピレン−粘土ナノコンポジット材料のノッチ付きアイゾッド衝撃強度の比較であり、TL−17は、長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物/シリコーン化合物/カップリング剤で改質した本発明の粘土を意味し、TL−15は、長炭素鎖アルキルアミノ塩のみで改質した粘土である。プロセスオイルの一実施形態はシリコーンオイルである。表2によれば、PP−76233の場合、少量のシリコーンオイルの添加は、ナノコンポジット材料のノッチ付きアイゾッド衝撃の改良に有益である。シリコーン化合物によって改質されたナノ有機改質層状粘土(TL−17)を加える場合、ポリプロピレン/粘土ナノコンポジット材料のノッチ付きアイゾッド衝撃特性は、粘土の量を増加することによって靭性を改善する。しかし、シリコーン化合物を含まないTL−15の場合、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度は、最初に粘土量を増加すると上昇し、次いで、粘土量をさらに増加すると、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度は低下する。耐衝撃性がシリコーン化合物を含む有機改質粘土と比べると有意に低下することは明らかである。一方、ポリマーマトリックスの配合物としてPP−6331を用いた場合、変化はPP−7633と同様であり、PP−7633を用いた場合のノッチ付きアイゾッド衝撃強度の向上は250〜300%を
超え、PP−6331を用いた場合には、50〜100%を超える。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例3: ナノコンポジット材料の機械的性質
表3は、ポリプロピレン−粘土ナノコンポジット材料の機械的性質の比較であり、表3に示すように、PP−7633の場合には、高靭性PP−粘土ナノコンポジット材料を製造するために、ポリプロピレンコポリマーマトリクスにシリコーン化合物改質TL−17を加え、次いで、溶融混合法で押出機により押し出す。機械的性質(引張強度、伸び、曲げ強度および曲げ弾性率)は、粘土量を増加することにより高められ、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度(添加量5重量%)は、約80〜86kg−cm/cm(300%を超えて上昇)であり、これは明らかな向上である。曲げ弾性率はわずかに上昇して、ポリプロピレン−粘土ナノコンポジット材料の高い靭性および剛性をもたらす。有機改質粘土がシリコーン化合物を含まない場合(TL−15)、ノッチ付きアイゾッド衝撃は約26kg−cm/cm(上昇率25%)であり、これはシリコーンを含有する有機改質粘土より低い衝撃値であることは明らかである。さらに、PP−6331に関しては、変化量はPP−7633と類似であるが、ノッチ付きアイゾッド衝撃の向上は比較的小さい。
【0039】
【表3】

【0040】
実施例4: ナノコンポジット材料衝撃断面の表面電子顕微鏡図の比較
図3および図4は、ナノコンポジット材料の衝撃断面の表面電子顕微鏡(SEM)図の比較である。各図のサイドコードの処方は表2および表3を参照する。これらの図に示すように、PP−7633の場合、高い靭性(高ノッチ付きアイゾッド衝撃強度)を有するポリプロピレン−粘土ナノコンポジット材料の断面は、多くのねじれた帯状部分を含み、純粋ポリプロピレン−粘土ナノコンポジット材料の図は、千切れた粒子を示し、そのノッチ付きアイゾッド衝撃強度は比較的低下している。一方、PP−6331に関しては、衝撃断面の写真はPP−7633とは幾分異なり、PP−6331の衝撃断面には、多数のねじれた帯状部分は存在せず、ノッチ付きアイゾッド衝撃の値は小さい。
【0041】
要約すると、本発明の有機改質層状粘土層は、靭性を高め得るシリコーン化合物を有し、さらに、界面の反応能力を向上させるためにさらにカップリング剤を添加することが可能であり、それによって、優れた界面の能力を有する粘土−ポリマーマトリックスが形成される。粘土とポリマーマトリックスとを混合して形成したナノコンポジット材料は、高剛性かつ高靭性の性質を有する。
【0042】
他の実施形態
実施例には本発明の好ましい実施形態が開示されている。他の実施形態を含めた、本発
明および添付特許請求の範囲の精神から逸脱しない範囲のすべての変更形態および変形形態は、本発明の保護範囲および特許請求の範囲内に包含されるものとする。
【0043】
実施例には本発明の好ましい実施形態が開示されている。しかし、これらの実施例は本発明の実際の適用範囲を制限するものと解釈してはならず、当然そのようなものとして、他の実施形態を含めた、本発明および添付特許請求の範囲の精神から逸脱しない範囲のすべての変更形態および変形形態は、本発明の保護範囲および特許請求の範囲内に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の有機改質層状粘土の構造を示す図。
【図2】本発明の有機改質層状粘土の製造プロセスを示す図。
【図3】本発明のナノコンポジット材料における衝撃断面の表面電子顕微鏡比較図であり、左上はPP−7633、右上はNPP−46試料、左下はNPP−51試料、右下はNPP−41試料である。
【図4】本発明のナノコンポジット材料における衝撃断面の表面電子顕微鏡比較図であり、左上はPP−6331、右上はNPP−61試料、左下はNPP−66試料、右下はNPP−57試料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状粘土と、
長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物と、
前記層状粘土間に位置する、官能基含有シリコーン化合物と
を含む有機改質層状粘土。
【請求項2】
10〜80重量%の前記層状粘土と、10〜80重量%の前記アルキルアミノ塩化合物と、10〜80重量%の前記シリコーン化合物とを含む、請求項1に記載の有機改質層状粘土。
【請求項3】
前記層状粘土が、50〜200meg/100gの範囲のイオン交換当量を有する、請求項1に記載の有機改質層状粘土。
【請求項4】
前記層状粘土材料が、MMT、マイカ、滑石粉末またはそれらの混合物を含む、請求項3に記載の有機改質層状粘土。
【請求項5】
前記長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物は、8〜20個の炭素を有する、請求項1に記載の有機改質層状粘土。
【請求項6】
前記長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物は、オクタデシルアミンまたはアルキルベンジルアンモニウム塩を含む、請求項1に記載の有機改質層状粘土。
【請求項7】
前記シリコーン化合物はシロキサンである、請求項1に記載の有機改質層状粘土。
【請求項8】
前記シロキサンはアミン基を有したシリコーンオイルである、請求項1に記載の有機改質層状粘土。
【請求項9】
さらにカップリング剤を含み、前記カップリング剤が、官能基を有するシラン化合物である、請求項1に記載の有機改質層状粘土。
【請求項10】
前記カップリング剤の添加量は0.1〜20重量%の範囲である、請求項9に記載の有機改質層状粘土。
【請求項11】
前記シラン化合物の官能基は、アミノ、アクリルグリシジル、アクリル酸およびメタクリル酸基のいずれかを含む、請求項9に記載の有機改質層状粘土。
【請求項12】
前記シラン化合物は、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリルグリシジルプロピルトリメトキシシラン、およびγ−メタクリル酸プロピルトリメトキシシランのいずれかを含む、請求項9に記載の有機改質層状粘土。
【請求項13】
有機改質層状粘土の製造方法であって、
(a)層状粘土を準備する工程と、
(b)溶液中に前記層状粘土を分散させる工程と、
(c)前記工程(b)の溶液に長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物を添加して反応させる工程と、
(d)官能基含有シリコーン化合物を添加して反応させて、沈殿物を生成する工程と、
(e)前記工程(d)の沈殿物を乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記工程(b)の溶液が水溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(c)および(d)の反応がイオン交換反応である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(b)の前に、溶液のpH値を7より低い値に調節する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコーン化合物がシロキサンである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記シロキサンがアミン基を有したシリコーンオイルである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
カップリング剤を添加する工程をさらに含み、前記カップリング剤が官能基を有するシラン化合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記シラン化合物の官能基は、アミノ、アクリルグリシジル、アクリル酸またはメタクリル酸基を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記シラン化合物が、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリルグリシジルプロピルトリメトキシシランまたはγ−メタクリル酸プロピルトリメトキシシランを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ナノコンポジット材料であって、
層状粘土と、
長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物と、
前記層状粘土間に位置する官能基含有シリコーン化合物と、
前記層状粘土間に混合されている少なくとも1種のポリマーマトリックスと
を含むナノコンポジット材料。
【請求項23】
1〜12重量%の前記層状粘土と、1〜10重量%の前記長炭素鎖アルキルアミノ塩化合物と、1〜12重量%の前記官能基含有シリコーン化合物と、80〜90重量%の前記ポリマーマトリックスとを含む、請求項22に記載のナノコンポジット材料。
【請求項24】
請求項1に記載の有機改質層状粘土と前記ポリマーマトリックスとを溶融混合することにより得られる、請求項22に記載のナノコンポジット材料。
【請求項25】
前記ポリマー化合物が、ポリオレフィン化合物、ポリアミド化合物、およびポリエステル化合物のいずれかを含む、請求項22に記載のナノコンポジット材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−176781(P2007−176781A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−150448(P2006−150448)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(598132657)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティチュート (26)
【Fターム(参考)】