説明

鮮度保持用包装袋及び鮮度保持包装体

【課題】 青果物の変色も無く、異臭も発生せずに鮮度を保ったまま長期間保存可能な、かつ見栄えの良く、コストの点で優れた鮮度保持包装袋を提供する。
【解決手段】 包装袋に1kg以下のヤマノイモ科のイモをいれて密封包装する包装袋において、前記包装袋がポリプロピレンフィルムであり、イモを前記包装袋に密封包装して48時間後の前記包装袋内の酸素濃度が0.05〜1%、二酸化炭素濃度が12〜18%、エタノール濃度が10〜150ppmである鮮度保持用包装袋である。より好ましくは、ポリプロピレンフィルムの厚みが35〜50μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物、特にヤマノイモ科のイモの鮮度保持用包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年青果物の販売において裸で売るよりもフィルム包装されつつある。単に包むだけでなく密封包装し、MA(Modified Atomosphere)効果を有する青果物鮮度保持資材が開発され、萎れ、変色、腐敗、異臭による鮮度低下を防止できるため主に流通用に使用されている。
上記の発明としては、例えば、特開平4−4841号公報などがあるが、必ずしも十分な効果が見られない場合もあり、例えば、変色、強烈なアルコール臭を発生する場合もあった。特開平9−163926号公報は、包装体内の酸素濃度が1〜9%、二酸化炭素濃度が20%以下のものを開示しているが、この範囲では、ヤマノイモ科に属するイモは変色が発生する危険がある。
また、真空パックで販売されている形態も有るが、開封の際に強烈な異臭を発生していることが多い。変色、アルコール臭がなく、長期間保存しても鮮度が良い青果物鮮度保持包装袋はいままでなかった。
一方、包装された青果物を食するために包装袋から青果物を取り出すと、包装材は用済みとなるため、包装材が高いと高級な青果物以外には使用されにくいという問題がある。
【特許文献1】特開平4−4841号公報
【特許文献2】特開平9−163926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
青果物、特にヤマノイモ科に属するイモの変色も無く、異臭も発生せずに鮮度を保ったまま長期間保存可能であり、かつ見栄えが良く、コストの安い鮮度保持用包装袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、包装袋に1kg以下のヤマノイモ科のイモをいれて密封包装する包装袋において、前記包装袋がポリプロピレンフィルムであり、イモを前記包装袋に密封包装して48時間後の前記包装袋内の酸素濃度が0.05〜1%、二酸化炭素濃度が12〜18%、エタノール濃度が10〜150ppmである鮮度保持用包装袋である。
更に好ましい形態としては、ポリプロピレンフィルムの厚みが、35〜50μmであり、ポリプロピレンフィルムの酸素透過量が1000〜2300cc/m・day・atm、二酸化炭素透過量が3000〜7000cc/m・day・atmであり、包装袋が実質的に人工的な穴を有しない鮮度保持用包装袋である。
また、上記に記載の鮮度保持用包装袋を用いた鮮度保持包装体である。
【発明の効果】
【0005】
本発明に従うと、青果物、特にヤマノイモ科に属するイモの鮮度を保つことができ、また、異臭もなく、変色もなく、発芽、発根もなく、最良の状態で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のヤマノイモ科のイモとは、ヤマノイモ科に属する青果物であれば特に限定されないが、例えば、山芋、長芋、とっくりいも、自然薯、いちょういも、大和いも、仏掌いも、つくねいも、伊勢いも、丹波いもなどがある。
包装袋に入れるイモの重量としては1kg以下である。1kg超えると、袋の強度が不足し、また、買い物の持ち運びにも不便である。
【0007】
本発明では、ヤマノイモ科のイモを密封包装して48時間後の包装袋内の酸素濃度は、0.05〜1%である。より好ましい酸素濃度は、0.1〜0.95%であり、更に好ましくは0.2〜0.8%である。酸素濃度が0.05%未満では、酸素欠乏による過剰なエタノール、アセトアルデヒドなどの嫌気臭を発生し、また1%を超えると呼吸を抑制できずに、糖の低下や酸化による変色を引き起こす。
二酸化炭素濃度は12〜18%である。二酸化炭素濃度が12%未満では呼吸を抑制できない可能性があり、18%を超えると嫌気臭を発生する可能性がある。
イモを密封包装して48時間後の包装体内のエタノール濃度は、10〜150ppmが好ましい。エタノール濃度が10ppm未満では、変色を引き起こす可能性があり、150ppmを越えると嫌気臭が起こる可能性がある。
【0008】
包装袋の包装形態としては、イモを入れる開口部など少なくとも1箇所以上をヒートシールした方が良い。包装形態として、例えば、溶断袋、三方シール袋、合掌背張り、スタンディングパウチ、容器にトップシールをした形態などがある。青果物の形状に合わせても良い。フィルムや容器の貼り合わせに2mm以上のシール幅を有することが望ましい。ジッパーを付与して開口部をヒートシールしても良い。また、青果物投入後のシールはヒートシールが望ましく、開口部がバッグシールや糊だけで封をする方法は、余分な酸素が入るため品質上好ましくない。
また、包装の際に空気を抜いたり、窒素ガスを充填したりしても構わない。
【0009】
包装材の費用が高いと高級な青果物以外には使用されにくいという問題があり、その為には、青果物の鮮度保持機能を有しながら、包装材として用いる素材の価格を安くする必要があり、かつ包装袋にする加工コストも安くする必要がある。そのような点より、包装袋の材質としては、ポリプロピレンフィルムが好ましいことを見出した。ポリプロピレンフィルムとしては、延伸ポリプロピレンでも未延伸ポリプロピレンでも構わない。ポリプロピレン以外のフィルムと比較して、ポリプロピレンフィルムは、価格、包装袋の製袋のし易さ、特に袋を形成するためのシールのし易さ、最適な鮮度保持機能を得るなどの点において優れていることが判明した。ポリプロピレンと他の樹脂とラミネートすると価格が上がり、透明性も不足し、透過量の調整が難しくなってくる。
合成樹脂フィルムの厚みは、35〜50μmが好ましく、40〜50μmがより好ましい。35μm未満ではコシが不足してフィルムの強度がなくイモを入れた包装袋を持ち上げると破れる可能性があり、50μmを超えるとコシが強すぎて袋の口が開きにくく、イモが入れにくいなど包装時に問題を生じる可能性がある。
合成樹脂フィルムは延伸されていても良く、また、フィルムには陳列時の見栄えの為防曇処理が施されていても良い。防曇剤は衛生上問題なければどんなものでも良く、表面に塗布しても、練りこんでも良い。
【0010】
合成樹脂フィルムの酸素透過量は、1000〜2300cc/m2・day・atmが好ましい。酸素透過量が1000cc未満では包装袋内で青果物が呼吸に必要な酸素が不足し、エタノール、アセトアルデヒドなどの強烈な嫌気臭を発生する可能性があり、2300ccを超えると酸素濃度が高すぎて変色、発根を引き起こす可能性がある。
二酸化炭素透過量は、3000〜7000cc/m・day・atmが好ましい。二酸化炭素透過量が3000cc未満では呼吸抑制効果が無く、二酸化炭素が蓄積し、強烈な嫌気臭(エタノール、アセトアルデヒドなど)を発生する可能性があり、7000ccを越えると呼吸抑制ができず変色、発芽、発根を引き起こす可能性がある。
【0011】
本発明では、ヤマノイモ科のイモを包装する時に、包装袋内の条件として、酸素濃度が0.05〜1%、二酸化炭素濃度が12〜18%、エタノール濃度が10〜150ppmの何れかまたは二つ以上を組み合わせた条件のガスを包装袋に充填しても構わない。
【0012】
包装前に、イモを次亜塩素酸ナトリウム水溶液や、アスコルビン酸、酢酸、コウジ酸などの水溶液で浸漬処理しても構わない。これらは、殺菌、褐変防止処理に必要であり、包装前に水気を除去して包装すれば何ら問題は無い。
また、アリルイソチオシアネートを含む液体に浸したり、それを含有するシートを内在させても構わない。
イモは、乾燥した後包装した方が良い。その条件の保存庫あるいは場所に置いても構わない。送風機能があった方が早く乾くが、なくても構わない。当然のことながら放置される雰囲気の条件により放置する時間は異なってくる。例えば、温度0〜20℃、湿度80%以下の雰囲気ではイモを6時間以上放置すると良い。
【実施例】
【0013】
《実施例1》
40μmの二軸延伸ポリプロピレン(酸素透過量1300cc/m・24hr・atm、二酸化炭素透過量5000cc/m・24hr・atm)で140×550mmの10mmヒートシール幅の三方袋を作成し、長芋800gを詰めて、開口部をヒートシールで密封した。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0014】
《実施例2》
実施例1と同様の40μmの二軸延伸ポリプロピレンで110×550mmの溶断袋を作成し、長芋800gを詰めて、開口部をヒートシールで密封した。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0015】
《実施例3》
50μmの二軸延伸ポリプロピレン(酸素透過量1040cc/m・24hr・atm、二酸化炭素透過量4000cc/m・24hr・atm)で180×260mmの三方袋を作成し、大和いも300gを詰めて、真空パックの様に空気を完全に抜いてから開口部をヒートシールで密封した。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0016】
《実施例4》
実施例1と同様の40μmの二軸延伸ポリプロピレンで200×200mmの三方袋を作成し、伊勢いも400gを詰めて、開口部をヒートシールで密封した。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0017】
《比較例1》
20μmの二軸延伸ポリプロピレン(酸素透過量2500cc/m・24hr・atm、二酸化炭素透過量11000cc/m・24hr・atm)で、110×550mmの溶断袋を作成し、長芋800gを詰めて、開口部をヒートシールした。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0018】
《比較例2》
60μmの二軸延伸ポリプロピレン(酸素透過量800cc/m・24hr・atm、二酸化炭素透過量3000cc/m・24hr・atm)で、140×550mmの10mmヒートシール幅の三方袋を作成し、長芋800gを詰めて、開口部をヒートシールした。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0019】
《比較例3》
25μmの線状低密度ポリエチレン(酸素透過量7500cc/m・24hr・atm、二酸化炭素40000cc/m・24hr・atm)で、110×550mmの溶断袋を作成し、長芋800gを詰めて、開口部をヒートシールした。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0020】
《比較例4》
15μmの延伸ナイロンと40μmのポリエチレン(酸素透過量60cc/m・24hr・atm、二酸化炭素100cc/m・24hr・atm)で、140×550mmの10mmヒートシール幅の三方袋を作成し長芋600gを詰めて、中の空気を完全に脱気して開口部をヒートシールした。20℃に2週間保管した場合の保存性を表1に示す。
【0021】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、青果物、特にヤマノイモ科に属するイモの包装に利用でき、低コストで鮮度を保ったまま消費者にイモを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋に1kg以下のヤマノイモ科のイモをいれて密封包装する包装袋において、前記包装袋がポリプロピレンフィルムであり、イモを前記包装袋に密封包装して48時間後の前記包装袋内の酸素濃度が0.05〜1%、二酸化炭素濃度が12〜18%、エタノール濃度が10〜150ppmであることを特徴とする鮮度保持用包装袋。
【請求項2】
ポリプロピレンフィルムの厚みが、35〜50μmである請求項1に記載の鮮度保持用包装袋。
【請求項3】
ポリプロピレンフィルムの酸素透過量が1000〜2300cc/m・day・atm、二酸化炭素透過量が3000〜7000cc/m・day・atmである請求項1又は2に記載の鮮度保持用包装袋。
【請求項4】
包装袋が実質的に人工的な穴を有しない請求項1、2又は3に記載の鮮度保持用包装袋。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の鮮度保持用包装袋を用いた鮮度保持包装体。

【公開番号】特開2006−8251(P2006−8251A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142873(P2005−142873)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】