説明

麦若葉加工物含有組成物

【課題】 新たな機能性を有し、かつ水溶液への優れた分散性を示す、麦若葉加工物含有組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明は、麦若葉加工物、ヘミセルロース、難消化性オリゴ糖、および糖アルコールを含有する組成物を提供する。特に、麦若葉末、ヘミセルロース、キシロオリゴ糖、および還元麦芽糖を含有する組成物が好適である。本発明の麦若葉加工物含有組成物は、血液流動性改善作用、脂質の抗酸化作用、および便通改善作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦若葉加工物を含有する組成物に関する。より詳細には、血液流動性改善作用、脂質の抗酸化作用、および便通改善作用を有し、かつ優れた成形性ならびに水溶液への優れた分散性を示す組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
麦若葉の乾燥粉末やエキス末を含有する食品は、現代人に不足しがちな食物繊維やミネラルなどを補給する目的で、健康食品として利用されるようになっている。これまでに麦若葉末は、SOD作用、血液浄化作用、抗高血圧作用などの様々な生理作用(機能性)を有することが明らかとなっており、機能性を有する食品としても摂取されるようになってきた(特許文献1および2参照)。
【0003】
このように、麦若葉自身は優れた機能性を有する。しかし、麦若葉の乾燥粉末やエキス末と組み合わされる原料によっては、単に組み合わされた食品原料の生理作用が追加されるのみであったり、原料によっては、生理作用が相殺される場合もある。また、微粉砕されている麦若葉の乾燥粉末は、造粒が困難であるだけでなく、いわゆる「青汁」として摂取する場合に、水への分散性が悪くなることがある。
【特許文献1】特開2000−300209号公報
【特許文献2】特開2000−232864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新たな機能性を有し、かつ水溶液への優れた分散性を示す、麦若葉加工物含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(A)麦若葉加工物、(B)ヘミセルロース、(C)難消化性オリゴ糖、および(D)糖アルコールを含有する組成物を提供する。
【0006】
好ましい実施態様では、上記組成物は、血液流動性改善剤である。
【0007】
さらに好ましい実施態様では、上記組成物は、脂質の抗酸化剤である。
【0008】
より好ましい実施態様では、上記組成物は、食品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の麦若葉加工物含有組成物は、それぞれの素材が有する生理作用だけでなく、新たに血液流動性改善作用ならびに脂質の抗酸化作用も有する。また、本発明の組成物は、乾燥粉末の形態に調製された場合、適度な粒径に容易に成形でき、そして水への優れた分散性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の記載のみに限定されず、当業者が理解し得る特許請求の記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0011】
まず、本発明の組成物に含有される主な成分について説明する。
【0012】
(本発明の組成物の成分)
(A)麦若葉加工物
本発明の組成物に含まれる麦若葉加工物は、大麦、小麦、ライ麦、燕麦などの麦類の若葉を乾燥して粉末化した乾燥粉末、乾燥前に圧搾して得られた搾汁、該搾汁を乾燥した搾汁乾燥粉末、水または有機溶媒で抽出して得られたエキス、該エキスをさらに乾燥したエキス末などをいう。
【0013】
麦若葉加工物の原料となる麦若葉としては、例えば、分けつ開始期から出穂開始期(背丈が20〜40cm程度)までに収穫した麦若葉を用いる。収穫した麦若葉は、通常、水などで洗浄し、適切な長さ(例えば、10cm)に切断した後、必要に応じて、素材の変質(緑色の褪色や風味の変化)を防ぐために、ブランチング(熱水)処理、マイクロウェーブ処理などを施す。栄養分保持の観点から、ブランチングは短時間であることが好ましい。
【0014】
乾燥粉末とする場合は、水分含量が5%以下となるように乾燥して粉末化する。乾燥は、凍結乾燥、あるいは90℃以下の低温加熱乾燥(例えば、温風乾燥)であることが好ましい。このようにして得られる麦若葉の乾燥粉末は、上記のように、麦若葉を搾汁することなく、そして、栄養分を損なわないような条件下で乾燥粉末化しているために、麦若葉の栄養成分をそのまま含んでいる。さらにこの乾燥粉末は、食物繊維を多く含み、その大部分は、不溶性食物繊維である。この不溶性食物繊維は、大腸がん予防効果、腸内環境の改善効果などを有する。
【0015】
麦若葉の搾汁を得るためには、当業者が通常使用するスライス、細断などの植物体を細片化する手段により、例えば、麦若葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、麦若葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にスラリー化し、遠心分離、濾過などによって固液分離して麦若葉搾汁とすることができる。あるいは、麦若葉を直接または細片化した後、圧搾してもよい。このようにして得られた搾汁を、上記乾燥粉末の場合と同様に乾燥して、搾汁の乾燥粉末とすることができる。
【0016】
麦若葉のエキスは、麦若葉に水、エタノール溶液などの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて加温して抽出したものであり、これを濃縮したもの含む。麦若葉エキス末は、麦若葉エキスを乾燥粉末化したものである。
【0017】
(B)ヘミセルロース
本発明の組成物に含まれるヘミセルロースは、食物繊維をアルカリ処理することによって得られる多糖類の総称である。糖の種類によって、キシラン、β−グルカン、キシログルカン、マンナンなどに分類される。また、ヘミセルロースは、その抽出過程からも分類されており、植物体よりアルカリ抽出した後に酢酸などで中和して生じる沈殿物に含まれる水不溶性の「ヘミセルロースA」、さらにエタノールを添加することによって生じる沈殿物に含まれる水可溶性の「ヘミセルロースB」、および植物体からアルカリ抽出した後に残る残渣を水酸化ナトリウム溶液で抽出し、中和した時に生ずる沈殿に含まれる「ヘミセルロースC」が存在する。本発明では、水可溶性のヘミセルロースB、特に、キシロースとアラビノースとが結合したアラビノキシランを含むヘミセルロースが好ましく用いられ、これは、トウモロコシの外皮より得ることが可能である。このようなヘミセルロースは、血糖値上昇抑制作用、血圧上昇抑制作用などを有するだけでなく、乾燥粉末の成形性を向上させることができる。
【0018】
(C)難消化性オリゴ糖
本発明の組成物に含まれる難消化性オリゴ糖は、ヒト消化管内の消化酵素によりほとんど分解されずに大腸に到達し、腸内細菌の炭素源として利用される成分である。このような難消化性オリゴ糖としては、キシロオリゴ糖のようなホモオリゴ糖、ならびにガラクトシルスクロース、大豆オリゴ糖、転移ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ラフィノース、パラチノースオリゴ糖などのヘテロオリゴ糖が挙げられる。中でも腸内細菌叢の改善作用およびミネラルの吸収促進作用を有するため麦若葉加工物中の栄養成分の吸収が促進されると考えられる点で、キシロオリゴ糖またはフラクトオリゴ糖が好ましく用いられる。特に、より優れた赤血球変形能向上効果およびDNAの酸化障害抑制効果を有する組成物が得られる点で、フラクトオリゴ糖が好ましく用いられる。
【0019】
(D)糖アルコール
本発明の組成物に含まれる糖アルコールは、ブドウ糖、果糖などの糖のアルデヒド基あるいはケトン基を還元して得られる多価アルコールである。例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、エリスリトールなどが挙げられる。麦芽糖に水素添加して得られるマルチトール(還元麦芽糖)は、カロリーが少ないだけでなく、体脂肪の蓄積抑制作用、血糖値上昇抑制作用、カルシウムの吸収促進作用などを有するため、好ましい。
【0020】
(E)その他の成分
本発明の組成物は、必要に応じて、上記(A)〜(D)の成分以外の成分を含む。
【0021】
例えば、本発明の組成物は、整腸作用を有する成分の含有量が比較的多いので、さらに整腸作用を改善するという目的で、乳酸菌を含むことが好ましい。このような乳酸菌としては、特に腸内への到達効率の高い乳酸菌が好ましく、例えば、有胞子性の乳酸菌、腸溶性物質をコーティングする方法などによって調製された乳酸菌、腸内への到達率が高い特定株の乳酸菌が挙げられる。腸内への到達率が高い特定株の乳酸菌としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ヘルベチカス、ラクトバチルス・デルブロイキ、ストレプトコッカス・サーモフィラスなどの亜種が挙げられる。特に、腸内細菌叢改善作用に優れた組成物を得る点で、腸溶性物質をコート処理した乳酸菌が好ましく用いられる。
【0022】
あるいは、例えば、本発明の組成物を任意の形状に成形する目的で、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤などが含まれ得る。例えば、サンゴカルシウムや難消化性デキストリン(特にタピオカ由来の難消化性デキストリン)などの粘性の低い材料は、造粒性の改善ならびに水への分散性の向上の目的で含まれ得る。さらに、嗜好性を向上するさせるために、着色料、香料、食品添加物、糖液、調味料などが含まれ得る。
【0023】
本発明の組成物が食品として製造される場合、組成物中に、例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、ペプチド、アミノ酸、カルシウム、キトサン、レシチンなどが含まれ得る。あるいは、ケール、アシタバ、桑葉などのいわゆる「青汁」として利用され得る他の植物原料由来の乾燥粉末やエキス末を含んでいてもよい。
【0024】
(本発明の組成物)
上記(A)〜(D)の成分を含有する本発明の組成物は、血液の流動性を改善し得る。すなわち、血液中の血球(赤血球や白血球)の柔軟性が増加し、粘着性が低下することで、血液の流動性を改善し得る。さらに、SOD作用だけではなく、脂質に対する酸化を直接的に防止することもできる。
【0025】
本発明の組成物に含有される上記の各成分の量は、特に制限はない。上記(A)〜(D)の成分の合計量に対して、(A)麦若葉末は、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜90質量%、(B)ヘミセルロースは、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは0.9〜10質量%、(C)難消化性オリゴ糖は、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、そして(D)糖アルコールは、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは20〜50質量%含まれ得る。また、本発明の組成物中の上記(A)〜(D)の成分の合計量は、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30質量%〜95質量%である。
【0026】
本発明の組成物の形態は、特に限定されず、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状、固体などであり得る。用途に応じて、錠剤や飲料などの形態にすることもできる。必要に応じてハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいはティーバッグ状、もしくは飴状などの形態にし得る。これらの形状または好みに応じて、そのまま食してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでもよい。また、ティーバッグ状などの場合、成分を浸出させてから飲んでもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、以下の実施例に制限されないことは言うまでもない。
【0028】
(実施例1:食品の調製)
麦若葉末(株式会社東洋新薬)、ヘミセルロース(日本食品化工株式会社)、キシロオリゴ糖(サントリー株式会社)、フラクトオリゴ糖(明治製菓株式会社)、還元麦芽糖(株式会社林原商事)、デキストリン、水溶性食物繊維(タピオカ由来の難消化性デキストリン、松谷化学工業株式会社)、乳酸菌末(コート処理済、セルバイオテック社)、サンゴカルシウム、および抹茶を、以下の表1に記載の量で混合し、流動層造粒を行って、顆粒の食品調製例1および2ならびに比較調製例の3種類の食品を調製した。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例2:水分散性の評価)
上記実施例1で得た3種類の顆粒の食品を3gずつ各5検体準備し、各検体を150mLの水に添加し、30秒間攪拌した後に、各食品の水への分散性を下記基準によって評価を行った。
【0031】
均一に分散している : 3点
一部沈殿が見られる : 2点
ほとんどが沈殿している : 1点
【0032】
各食品の5検体の合計値は、食品調製例1および2では15であり、そして比較調製例では11であった。このように、(A)〜(D)のすべての成分を含む食品調製例1および2の食品の方が、水への分散性が優れていた。
【0033】
(実施例3:血液流動性改善効果の検討1)
上記実施例1で得た食品調製例1の食品を用いて、以下のようにして血液流動性改善効果を測定した。まず、男女合わせて15名の被験者から血液を採取し、採取した血液を株式会社レオロジー機能食品研究所にてニッケルメッシュフィルトレーション法により測定し、血液の流動性の指標である赤血球変形能を測定した。測定後、各被験者に3週間にわたって食品調製例1の食品を1日あたり9.9g摂取させた。摂取期間終了後に再度採血し、同様にして赤血球変形能を測定した。摂取前および摂取後における赤血球変形能の値を表2に示す。なお、表2の値は、値が大きいほど赤血球の変形能が向上していること示す。
【0034】
【表2】

【0035】
食品調製例1の食品を摂取することによって、赤血球変形能が摂取前に比べて有意に向上していた(p<0.05)。すなわち、赤血球変形能の向上という効果が、食品調製例1の食品の摂取によって得られることがわかった。このことから、(A)〜(D)のすべての成分を含む本発明の組成物が血液流動性改善剤としても利用できると考えられる。
【0036】
(実施例4:血液流動性改善効果の検討2)
食品調製例1の食品の代わりに、実施例1で得られた食品調整例2の食品を用いたこと、および被験者を15名から8名にしたこと以外は、実施例3と同様にして赤血球変形能を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3の結果から、食品調製例2の食品は、優れた血球変形能向上効果を有することがわかる。特にこの食品調製例2の食品を摂取した場合に得られる血球変形能向上効果(摂取前後の赤血球変形能の数値の差が6.2)は、表2の食品調整例1の食品を摂取した場合に得られる効果(摂取前後の赤血球変形能の数値の差が3.0)と比較しても優れていた。
【0039】
(実施例5:脂質の抗酸化効果の検討)
上記実施例1で得た食品調製例1の食品の脂質に対する抗酸化効果について、以下のように評価を行った。
【0040】
まず、終容量を5mLとしたときに、Tris−HClを0.25mmol、塩化カリウムを0.75mmol、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.2%(質量/容積)、リノール酸エチルを7.5mg、塩化鉄(FeCl)を1μmol、および過酸化水素を0.5μmol含むような混合液(pH7.4)を作成した。次に、ジメチルスルホキシド(DMSO)に懸濁した食品(10mg/mL)を、最終濃度が70μg/mLとなるように上記混合液に加え、水を加えることにより、液全体の容積を5mLとした(試験液1とする)。
【0041】
また、食品の代わりに、アスタキサンチンを用いて、試験液2を調製した。さらに、対照として、食品を添加しない対照液を調製した。
【0042】
上記のように調製した試験液1、試験液2、および対照液をよく攪拌した後、ウオーターバス内で、37℃で16時間インキュベートした。インキュベーション終了後、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT:4%エタノール溶液)を50μL加えて、酸化を停止させた。
【0043】
次に、各反応液0.2mLを取り、これに8%SDS(0.2mL)、1M酢酸(1.5mL)、および0.67%チオバルビツール酸(TBA)溶液(1.5mL)を加え、試験管内でよく混合した。混合された液を、90℃で60分間、インキュベーター内で加熱した後、室温で冷却した。冷却された液に、5mLのブタノールを加えて、遠心分離した。遠心分離後、上清のブタノール層を取り出して、532nmで吸光度を測定した(この測定においては、過酸化脂質の量が増えるに従って、吸光度の値が大きくなる)。さらに、以下に示す式により、脂質酸化阻害率(%)を算出した。なお、下記式における吸光度の値には、3回測定して得られた値の平均値を用いた。
【0044】
脂質酸化阻害率(%)={1−(試験液の吸光度/対照液の吸光度)}×100
【0045】
試験液1(食品調製例1の食品)の脂質酸化阻害率は39.8%であり、試験液2(アスタキサンチン)は21.8%であった。このように、本発明の食品は、脂質に対する抗酸化作用を示し、これはアスタキサンチンよりも高かった。
【0046】
(実施例6:便通改善作用および腸内環境改善作用の検討)
上記実施例1で得た食品調製例1の食品を用いて、以下のようにして便通改善作用を評価した。まず、男女合わせて15名の健常人を被験者とし、1日当たりの排便回数を1週間にわたって毎日記録し、最終日に便を回収した。回収した便は、直ちに便中のビフィズス菌を三菱化学BCLにて測定した。次いで、各被験者に3週間にわたって食品調製例1の食品を1日あたり9.9gで摂取させ、食品の摂取期間にわたって1日当たりの排便回数を毎日記録し、最終日に摂取前と同様に便を回収し、ビフィズス菌数を測定した。なお、コート処理済の乳酸菌末の代わりに、コート処理されていない乳酸菌末(天野エンザイム社製)を用いたこと以外は、食品調製例2と同様に調製された食品(食品調製例3の食品という)を用いて、上記と同様に排便回数およびビフィズス菌数を測定した。これらの結果を表4に示す。なお、表4中の排便回数は平均値を、ビフィズス菌数は平均値および標準偏差を示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示すように、本発明の食品(食品調製例1の食品および食品調製例3の食品)を摂取することにより、便通が改善されていた。また、腸内の善玉菌であるビフィズス菌も増加していた(いずれも摂取前に対し、p<0.05で有意差あり)。このことから、本発明の食品中の成分が有する便通改善作用または腸内環境改善作用が、相殺されずに発揮され得ることがわかった。これらの中でも、特にコート処理された乳酸菌末を用いた食品調製例1の食品が便通改善作用および腸内環境改善作用に優れる傾向にあった。
【0049】
(実施例7:DNA損傷抑制効果の検討)
実施例1で得られた食品調整例2の食品を用いて、以下のようにしてDNA損傷抑制効果を評価した。まず、16名のボランティアの尿中の8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8−OHdG)濃度を8−OHdG測定用キット(日本老化制御研究所製)を用いて測定した。次いで、各ボランティアに食品調製例2の食品を1日あたり9.9gの割合で10週間にわたって摂取させた。摂取開始から6週目に再度尿中の8−OHdG濃度を測定した。結果を表5に示す。なお、8−OHdGは、グアニン(DNAの構成塩基)の酸化物であり、尿中の8−OHdG濃度が低いほど、DNAの損傷が抑制されていることを示す。
【0050】
【表5】

【0051】
表5の結果から、食品調製例2の食品摂取後の8−OHdG濃度が、摂取前に比べて有意に低下していることがわかる。このことは、本願の組成物が、優れたDNA損傷抑制効果を有することを示す。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の麦若葉加工物含有組成物は、それぞれの素材が有する生理作用(例えば、便通改善効果)だけでなく、血液流動性改善作用ならびに脂質の抗酸化作用も有する。したがって、生体内における脂質の酸化を抑制することによる様々な疾患(動脈硬化など)の予防に有用であり得る。また、本発明の組成物は、乾燥粉末の形態に調製された場合、適度な粒径に容易に成形できるため、食品や医薬品として製剤化しやすい。さらに、本発明の組成物の乾燥粉末は。水への優れた分散性を有するため、液剤や飲料の形態にしやすく、取り扱いだけでなく、嗜好性もよくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)麦若葉加工物、(B)ヘミセルロース、(C)難消化性オリゴ糖、および(D)糖アルコールを含有する、組成物。
【請求項2】
血液流動性改善剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂質の抗酸化剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
食品である、請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−45178(P2006−45178A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247835(P2004−247835)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】