説明

麺帯圧延機および麺帯圧延方法

【課題】一対の圧延ロール間を通過して圧延された麺帯の品質を向上させ、且つ麺帯を圧延するのに必要な一対の圧延ロール数を低減させる麺帯圧延機および麺帯圧延方法の提供を図る。
【解決手段】一対の圧延ロール間に麺帯Bを通過させて圧延する麺帯圧延機1が、圧延ロール11、13を正回転と逆回転で切換可能に回転させる圧延ロール駆動部10と、圧延ロール11、13の一方を他方に対して近接離間する往復動をさせて、圧延ロール11,13の間隔Gを調整するロール間隔調整部20と、圧延ロール駆動部10とロール間隔調整部20を制御するロール制御部30とを備え、麺帯Bを正回転により第1のピッチだけ送り出し、逆回転により第1のピッチよりも短い第2のピッチだけ送り戻し、以後、これを繰り返すように、圧延ロール駆動部10を制御し、間隔Gを麺帯Bが通過するたびに所定の麺帯厚みに圧延するように、圧延ロール間隔調整部20を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の圧延ロール間に麺帯を通過させて圧延する麺帯圧延機および麺帯圧延方法に関するものである。詳しくは、一対の圧延ロールの回転方向を切換えることにより、麺帯の同一部分を一対の圧延ロール間を計3回以上通過させて圧延する麺帯圧延機および麺帯圧延方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の圧延ロール間を通過させて麺帯を圧延する技術が知られている。一対の圧延ロール間を通過して圧延された麺帯は、いわゆる旨味成分とよばれるグルテン組織が圧延された麺帯の中央部において、圧延方向に先送りされる傾向がある。
【0003】
特許文献1には、一対の圧延ロールの回転方向を正逆交互に切り替えて、一定間隔の一対の圧延ロールに麺帯の同一部分を正方向、逆方向、正方向に計3回通過させて圧延することによりグルテン組織が麺帯の中央部において圧延方向に先送りされる問題を解決する技術が提案されている。この技術は、一対の圧延ロール間で麺帯を正方向に一定長さ圧延した後に、一対の圧延ロールを逆転させて麺帯を逆方向に戻しながら正方向の一定長さよりも短い長さを圧延するという往復圧延を繰り返して、麺帯を連続圧延するものである。
【特許文献1】特許第4134213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
麺帯の一回の圧延量は、通常、圧延する前の麺帯厚みに対して70パーセント程度に制限されるため、一対の圧延ロールを複数配置して、上流の一対の圧延ロールから下流の一対の圧延ロールへ麺帯を通過させることにより、麺帯を徐々に圧延することが一般的である。
【0005】
しかしながら、近年、設備の小型化および省電力化の観点から、麺帯の品質を向上させるとともに、一対の圧延ロール数を減少させたいという要求がある。
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑みて、圧延された麺帯の品質を向上させるとともに、麺帯を圧延するのに必要な一対の圧延ロール数を低減させる麺帯圧延機および麺帯圧延方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の麺帯圧延機は、一対の圧延ロール間に麺帯を通過させて麺帯を圧延する麺帯圧延機において、一対の圧延ロールを回転させるとともに、この一対の圧延ロールの回転を正回転と逆回転との間で切換可能な圧延ロール駆動部と、一対の圧延ロールの少なくとも一方を他方に対して近接離間する往復動をさせることにより、一対の圧延ロールの間隔を調整するロール間隔調整部と、圧延ロール駆動部およびロール間調整部を制御するロール制御部とを備え、このロール制御部が、麺帯を一対の圧延ロールを正回転させて第1のピッチだけ送り出し、次いで、一対の圧延ロールを逆回転させて第1のピッチよりも短い第2のピッチだけ送り戻し、以後この送り出しおよび送り戻しを繰り返すように、圧延ロール駆動部を制御するとともに、一対の圧延ロールの間隔を麺帯が一対の圧延ロール間を通過するたびにより小さい所定の麺帯厚みに圧延するようにロール間調整部を制御するものであることを特徴とする。
【0008】
ここで、「正回転」とは、一対の圧延ロールが麺帯を送り出す方向に回転するときの回転方向を意味する。上記「逆回転」とは、一対の圧延ロールが麺帯を送り戻す方向に回転するときの回転方向を意味する。上記「一対の圧延ロールの間隔」とは、圧延ロールの表面同士の最短距離を意味する。上記「所定の麺帯厚みに圧延」とは、ロール間隔が所定の麺帯厚みである一対の圧延ロール間に麺帯を通過させて圧延することを意味する。また、ここで「ロール間隔が所定の麺帯厚み」とは、圧延中ロール間隔が所定の麺帯厚み一定に維持される場合に限らず、間隔が変動していても圧延中のロール間隔が実質的に所定の麺帯厚みであると認められる場合、すなわち圧延中所定の麺帯厚みを基準としてそこから変動する場合も含むものである。この場合の典型例としては、圧延中のロール間隔の平均、例えば時間平均(ロール間隔の時系列変化の所定時間の積分値を該所定時間で除算したもの)が所定の麺帯厚みとなる場合を挙げることができる。
【0009】
また、圧延ロール駆動部およびロール間調整部は、サーボモータを有するものであってもよい。
【0010】
また、ロール制御部は、麺帯を所定の麺帯厚みに圧延する際、一対の圧延ロールの間隔を、所定の麺帯厚みからランダムに拡縮するように、一対の圧延ロールの回転に対して非同期にロール間調整部を制御するものでもよい。
【0011】
ここで、「所定の麺帯厚みから」とは、所定の麺帯厚みを基準とすることを意味する。上記「一対の圧延ロールの回転に対して非同期」とは、圧延ロールの回転運動から予想される規則性を有さないことを意味する。
【0012】
また、ロール制御部は、一対の圧延ロールの間隔を、所定の麺帯厚みから距離、速度、周期の少なくとも1つにおいてランダムに拡縮するように、一対の圧延ロールの回転に対して非同期にロール間調整部を制御するものでもよい。
【0013】
ここで、「距離」とは、一対の圧延ロール間隔そのものの長さを意味する。上記「速度」とは、一対の圧延ロール間隔の拡縮する速度を意味する。上記「周期」とは、一対の圧延ロール間隔の拡縮する周期を意味する。上記「距離においてランダムに拡縮する」とは、拡縮するときの麺帯の送り出し方向の位置における距離がランダムに変化することを意味する。上記「速度においてランダムに拡縮する」とは、拡縮するときの速度がランダムに変化することを意味する。「周期においてランダムに拡縮する」とは、拡縮するときの周期がランダムに変化することを意味する。
【0014】
本発明の麺帯圧延方法は、一対の圧延ロール間に麺帯を通過させて麺帯を圧延する麺帯圧延方法において、麺帯を一対の圧延ロールを正回転させて第1のピッチだけ送り出し、次いで、一つの圧延ロールを逆回転させて第1のピッチよりも短い第2のピッチだけ送り戻し、以後この送り出しおよび送り出しを繰り返すとともに、麺帯が一対の圧延ロール間を通過するたびにより小さい所定の麺帯厚みに圧延するように、一対の圧延ロールの少なくとも一方を他方に対して近接離間する往復動をさせて一対の圧延ロールの間隔を調整することを特徴とする。
【0015】
また、一対の圧延ロールの間隔を、麺帯を所定の麺帯厚みに圧延する際、所定の麺帯厚みからランダムに拡縮するように、一対の圧延ロールの回転に対して非同期に調整してもよい。
【0016】
また、一対の圧延ロールの間隔を、所定の麺帯厚みから距離、速度、周期の少なくとも1つにおいてランダムに拡縮するように、一対の圧延ロールの回転に対して非同期に調整してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の麺帯圧延機および麺帯圧延方法によれば、一対の圧延ロールを正回転させて麺帯を第1のピッチだけ送り出し、次いで一対の圧延ロールを逆回転させて第1のピッチよりも短い第2のピッチだけ送り戻し、以後この送り出しおよび送り戻しを繰り返し、麺帯が圧延ロールを通過するたびにより小さい所定の麺帯厚みに圧延されるように、一対の圧延ロールの少なくとも一方を他方に対して近接離間する往復動をさせて間隔を調整するため、同一の一対の圧延ロールを使用して麺帯が一対の圧延ロールを通過するたびに薄く圧延することが可能となる。これにより、所望の麺帯厚に圧延するのに必要な一対の圧延ロールの数を低減できる。また、同一部分の送り出しおよび送り戻しにより、グルテン組織が圧延方向に先送りされずに麺帯の品質も向上する。
【0018】
また、所定の麺帯厚みに圧延する際、一対の圧延ロールの間隔を、所定の麺帯厚みからランダムに拡縮するように、一対の圧延ロールの回転に対して非同期に往復動させるように構成した場合は、一対の圧延ロールの回転動と往復動が互いに規則性を有さずに独立して駆動することで、圧延ロールの間隔が縮むことによる材料密度の密な部分と圧延ロールの間隔が拡大することによる材料密度の疎な部分が、圧延ロールの回転による麺帯の送り出しと無関係に形成される。したがって、材料密度の密な部分と材料密度の疎な部分が圧延された麺帯に不均一に形成されることになり、いわゆる手揉みのような良好な食感を麺帯に与えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の麺帯圧延機および麺帯圧延方法の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。まず、本発明の麺帯圧延機が適用される製麺装置全体の概略について説明する。
【0020】
図1は、製麺装置の概略構成図である。製麺装置100は、小麦粉と食塩水等を混練することにより麺粒Pを生成するミキサー110と、生成された麺粒Pを搬送する生地コンベア111と、搬送された麺粒Pから麺帯Bを生成する複合機120と、生成された麺帯Bを所定の厚みに圧延する複数の麺帯圧延機1と、圧延された麺帯Bを麺線Lに切り出す麺線切出機130と、麺線Lを所定の長さに切断する麺線切断機140とから構成されている。
【0021】
ミキサー110には小麦粉と食塩水等が供給され、ミキサー110が供給された小麦粉と食塩水等を攪拌棒で混練することにより、麺粒Pを生成する。この麺粒Pの粒径は、一例として低加水の場合には、1〜10mm程度となり、多加水の場合には、10mm以上となる。生成された麺粒Pは、生地コンベア111により、ミキサー110から複合機120に搬送される。なお、ミキサー110には、小麦粉の他に蕎麦粉等も供給される場合がある。
【0022】
複合機120は、図1に示すように、搬送コンベア121と、搬送コンベア121の上流に搬送方向に並んで配置される2つのホッパ122と、搬送コンベア121の下流に配置された一対の複合ロール123とから主に構成されている。一般的に複合機は、複数のホッパを有するものであり、本実施形態は、一例として2つのホッパ122を有するものとして説明する。
【0023】
各ホッパ122の上部口122aには生地コンベア111により搬送された麺粒Pが供給され、下部口122bに設けられた一対の圧延ロール124により、麺粒Pが帯状の麺帯Bとされ、2つの麺帯Bは搬送コンベア121上で互いに重なりあうように排出される。重なりあった麺帯Bは、一対の複合ロール123を通過することにより、各ホッパの圧延ロール124から圧延された麺帯B同士が複合して所定の厚みを有する麺帯Bが生成される。複合された麺帯Bの厚みは、一例として10〜12mm程度となる。
【0024】
複合機120により所定の厚みに複合された麺帯Bは麺帯圧延機1に供給される。この麺帯圧延機1は、後述する一対の圧延ロールから主に構成されている。麺帯圧延機1に供給された麺帯Bは、この一対の圧延ロール間を通過して所定の麺帯厚みに圧延される。一対の圧延ロールの間隔Gは、圧延前の麺帯厚みの通常は70%以上となるように設定される。一般的に麺帯Bは、徐々に圧延されることが望ましいため、麺帯Bを複数の麺帯圧延機1を通過させることにより、所定の厚みに圧延する。麺帯Bは、徐々に圧延されて麺帯厚みが、一例として1mm程度となる。本実施形態では、図1に示すように、一例として一対の圧延ロールを有する麺帯圧延機1が5台配置されているものとして説明するが、これに限定されるものではない。麺帯圧延機1は、少なくとも1台以上配置されていればよい。本実施形態は、一例として上流の2台の麺帯圧延機1が、後述する本発明の麺帯圧延方法を行うものとして説明する。
【0025】
通常、複数の麺帯圧延機で複数回にわたって麺帯Bを圧延して順次、麺帯厚みを小さくする場合には、各麺帯圧延機1の一対の圧延ロールは、各ロール径が上流から下流に向けて順次小さくなるように構成されている。一例としてロール径は、最上流から最下流に向けて、300mm、240mm、180mm、150mm、120mm程度に構成される。麺帯圧延機1の具体的な構成については後述する。
【0026】
所定厚みに圧延された麺帯Bは麺線切出機130に供給される。麺線切出機130は、複数枚の円板状の切刃を互いに所定間隔空けて同軸上に配列したロールと、この切刃を受けるロールとからなる一対の切刃ロール131を有しており、この一対の切刃ロール131を通過した麺帯Bは、線状の麺線Lの束として切り出される。切り出された麺線Lの束は、麺線切断機140に供給される。麺線切断機140は、一定速度で回転する麺線カッタ141を有しており、この麺線カッタ141が回転軸141aの回りを等速に回転して麺線Lの束に当接することにより、供給された麺線Lの束は所定長で幅方向に一時に切断される。
【0027】
次に、本発明の麺帯圧延機1の構成について詳細に説明する。図2は、本発明の麺帯圧延機1の概略構成図である。麺帯圧延機1は、一対の圧延ロール11、13を回転させるロール駆動部10と、一対の圧延ロール11、13の間隔を調整するロール間隔調整部20と、ロール駆動部10とロール間隔調整部20を制御するロール制御部30とから構成されている。
【0028】
ロール駆動部10は、下方に配置された雌ロール11と、雌ロール11を正回転および逆回転させる雌ロール用モータ12と、雌ロール11と所定間隔Gを有して上方に配置された雄ロール13と、この雄ロール13を正回転および逆回転させる破線で示す雄ロール用モータ14を有している。麺帯Bは、雌ロール11と雄ロール13の間を通過するものであり、両ロールにより送り出される麺帯Bの送り出し方向は、両ロールの回転軸11a、13aを結ぶ方向に対して直交方向となる。ここで、正回転とは麺帯Bを下流に送り出す回転、逆回転とは麺帯Bを上流に送り戻す回転である。
【0029】
本実施形態において、雌ロール用モータ12は、雌ロール11の回転軸11aと同軸上に配置され、回転軸同士が連結された雌ロール11を正回転および逆回転させる。雄ロール用モータ13も同様に、雄ロール13の回転軸13aと同軸上に配置され、回転軸同士が連結されて雄ロール13を正回転および逆回転をさせる。また、雌ロール11と雄ロール13は回転方向が逆となるが、後述するロール制御部30により回転速度は同一である。
【0030】
麺帯圧延機1の駆動伝達機構は、雌ロール11と雄ロール13の回転が上述の関係を満たせばよく、本実施形態に限定されるものではない。さらに、雌ロール11と雄ロール13をチェーン、ギア、タイミングベルト等を介して回転させてもよい。また、ロール間隔調整部20を有していない雌ロール用モータ12では、モータの回転をテンションローラでテンションが与えられたタイミングベルトによって雌ロール11の回転軸11aに伝達して雌ロール11を回転させる構成に変形することができる。
【0031】
本実施形態において、雌ロール用モータ12および雄ロール用モータ14は、サーボモータであり、エンコーダ12aおよび14aを有するものとして説明する。また、各モータは、図示しないギアを介することで所望のトルクを発生できる。
【0032】
図2に示される雌ロール11および雄ロール13は、ステンレス、またはステンレスの表面にフッ素樹脂等をコーティングしたものである。なお、麺帯がロール表面に付着しにくく麺帯を滑らずに送り出せるものであるならば、金属性ロールに限らず、例えば、ウレタンのような発泡性樹脂等からなるロールを一対の圧延ロール11、13として用いることができる。
【0033】
ロール間隔調整部20は、雌ロール11と雄ロール13の間隔Gを調整するものであり、雄ロール13を回転可能に支持するフランジ21と、このフランジ21と連結して、雄ロール13をフランジ21とともに平行移動させるボールネジ22と、このボールネジ22を回転させるサーボモータ23とを有している。ここで、サーボモータ23は、エンコーダ23aを内蔵しており、カップリング24を介してボールネジ22と連結されている。
【0034】
ボールネジ22の軸方向は、図2に示すように、回転軸11aと回転軸13aを結ぶ直線と平行となる。これにより、サーボモータ23の回転が、カップリング24を介してボールネジ23に伝達されると、雄ロール13は、図中矢印A方向に往復動する。
【0035】
ロール制御部30は、シーケンサ31と、雌ロール用モータ12、雄ロール用モータ14、およびサーボモータ23を駆動する3台のサーボドライバ32から構成されている。
【0036】
シーケンサ31には、3台のサーボドライバ32が接続されている。また、シーケンサ31には、供給された麺帯Bの弛みを検出するセンサ、操作ボタン等の各種センサの情報が入力され、内蔵されたプログラムに基づいて、サーボドライバ32を制御する。また、シーケンサ31には、麺帯Bの弛み検出センサ、操作ボタン等の情報が入力される。
【0037】
3台のサーボドライバ32は、シーケンサ31からの命令に基づいて、雌ロール用モータ12、雄ロール用モータ14およびサーボモータ23を所定の回転角度および回転速度となるように制御する。この各サーボドライバ32には、エンコーダ12a、14a、23aから雌ロール用モータ12、雄ロール用モータ14およびサーボモータ23の回転角度の情報が入力される。エンコーダ12a、14aの雌ロール用モータ12および雄ロール用モータ14の回転情報に基づいて、シーケンサ31は、麺帯Bの送り量の演算が可能である。
【0038】
本実施形態は、麺帯Bを最上流の麺帯圧延機1での圧延前の麺帯厚み10mmから最下流の麺帯圧延機1での圧延後の麺帯厚み1mmに圧延する。上述のとおり、麺帯Bの復元力から麺帯Bを圧延するためには、一対の圧延ロール11、13の間隔Gは、圧延前の麺帯厚みの70パーセント以上に設定される。
【0039】
従来の麺帯圧延方法によれば、各麺帯圧延機1の間隔Gを圧延前の麺帯厚の70パーセント程度と設定すると、一例として7mm、4.9mm、3.5mm、2.5mm、1.8mm、1.3mm、1mmの7段階で圧延する計7台の麺帯圧延機1が必要となる。
【0040】
本実施形態は、一例として一対のロール間隔Gを8.8mm、6.6mm、5mm、3.8mm、2.9mm、2.2mm、1.7mm、1.3mm、1mmの9段階に設定する。
【0041】
麺帯圧延機1の動作について概説する。以下の動作は、上述のとおり、上流2台の麺帯圧延機1の動作である。雌ロール11および雄ロール13が正回転し、麺帯Bを雌ロール11と雄ロール13の間を通過させるとともに、所定の第1のピッチだけ送り出す。麺帯Bを第1のピッチだけ送り出した後、雌ロール11および雄ロール13が逆回転し、麺帯Bを再び雌ロール11と雄ロール13の間を通過させて所定の第2のピッチだけ送り戻す。第1のピッチおよび第2のピッチは一定であり、第2のピッチは、第1のピッチよりも短いものである。以後、この麺帯Bの送り出し、送り戻しを繰り返すとともに、麺帯Bが雌ロール11と雄ロール13の間を通過するたびに、麺帯Bが薄くなるように、雌ロール11と雄ロール13の間隔Gを調整する。また、後述のとおり、麺帯Bの同一部分が一対の圧延ロール11、13を通過するたびに麺帯Bの同一部分を薄くするように間隔Gは調整されるが、この間隔Gが調整される通過は、同一部分の3回までの通過であり、4回以降の通過を含むものではない。
【0042】
本発明の麺帯圧延方法の実施形態について詳細に説明する。また、以下の実施形態は、最上流の麺帯圧延機1での実施形態を示すものである。図3は、第1のピッチと第2のピッチの比率を3:2とした麺帯圧延方法の実施形態、図4は、第1のピッチと第2のピッチの比率を5:4とした麺帯圧延方法の実施形態を示す図である。図中丸1は間隔Gが10mm、図中丸2は間隔Gが8.8mm、図中丸3は間隔Gが6.6mm、図中丸4は間隔Gが5mmを示す。図3および図4において、麺帯Bは局面1(最上図)から局面8(最下図)に推移して圧延される。また、理解を容易にするため、麺帯Bを破線で示す区分に分割して、図3では、第1のピッチは3区分、第2のピッチを2区分とし、図4では、第1のピッチを5区分、第2のピッチを4区分として説明する。なお、雌ロール11および雄ロール13等は省略している。
【0043】
図3について説明する。一例として、第3図における第1のピッチを375mm、第2のピッチを250mmとして説明する。
【0044】
麺帯Bを圧延位置に送り出す(局面1)。局面1での麺帯Bの圧延位置からの送り量を0mmとする。
【0045】
間隔Gを8.8mm(図中丸2)に設定して麺帯Bを第1のピッチ(375mm)だけ送り出す(局面2)。局面2での麺帯Bの圧延位置からの送り量は375mmとなる。
【0046】
間隔Gを6.6mm(図中丸3)に設定して麺帯Bを第2のピッチ(250mm)だけ送り戻す(局面3)。局面3での麺帯Bの圧延位置からの送り量は125mmとなる。
【0047】
間隔Gを最初の2区分(250mm)を5mm(図中丸4)、残りの1区分(125mm)を8.8mm(図中丸2)に設定して麺帯Bを第1のピッチ(375mm)だけ送り出す(局面4)。局面4での麺帯Bの圧延位置からの送り量は500mmとなる。以下、局面3から局面4への動作を送り出し動作1という。
【0048】
間隔Gを最初の1区分(125mm)を6.6mm(図中丸3)、残りの1区分(125mm)を5mm(図中丸4)に設定して麺帯Bを第2のピッチ(250mm)だけ送り戻す(局面5)。局面5での麺帯Bの圧延位置からの送り量は250mmとなる。以下、局面4から局面5への動作を送り戻し動作1という。
【0049】
以後、この送り出し動作1と送り戻し動作1を交互に行うことで、麺帯Bは、局面6〜9と推移し、圧延位置からの送り量が625mm(局面6)、375mm(局面7)、750mm(局面8)、500mm(局面9)となり、局面5、7、9が示すように、麺帯厚みが10mm(図中丸1)から5mm(図中丸4)へ1区分(125mm)ごとに圧延される。また、一例として送り出し動作1に要する時間は1.15秒、送り戻し動作1に要する時間は0.97秒である。すなわち、全体として2.12秒ごとに麺帯Bは1区分(125mm)ごとに圧延される。
【0050】
図4について説明する。麺帯Bを圧延位置に送り出す(局面1)。間隔Gを8.8mm(図中丸2)に設定して麺帯Bを第1のピッチだけ送り出す(局面2)。間隔Gを6.6mm(図中丸3)に設定して麺帯Bを第2のピッチだけ送り戻す(局面3)。間隔Gの最初4区分を5mm(図中丸4)、残り1区分を8.8mm(図中丸2)にして麺帯Bを第1のピッチだけ送り出す(局面4)。以下、局面3から局面4への動作を送り出し動作2という。間隔Gを最初1区分が6.6mm(図中丸3)、残り4区分を5mm(図中丸4)に設定して麺帯を送り戻す(局面5)。以後、この送り出し動作2と送り戻し動作2を交互に繰り返すことで、麺帯Bは、局面6〜9と推移し、局面5、7,9が示すように麺帯厚みが10mm(図中丸1)から5mm(図中丸4)へ圧延される。
【0051】
図3および図4に示すように、一対の圧延ロール11、13の間の送り出しと送り戻しを交互に繰り返すことにより、同一の一対の圧延ロール11、13によって麺帯厚みを10mm(図中丸1)から5mm(図中丸4)へ3段階の圧延をすることが可能となる。
【0052】
本発明の麺帯圧延機および麺帯圧延方法によれば、従来、麺帯Bを3段階で圧延をするために、3個の一対の圧延ロール11、13が必要としていたのに対し、1個の一対の圧延ロール11,13に低減できる。すなわち、本実施形態では、最上流の麺帯圧延機1の間隔Gは8.8mm、6.6mm、5mmの3段階に変動し、次の麺帯圧延機1の間隔Gは3.8mm、2.9mm、2.2mmの3段階に変動し、残り3台の麺帯圧延機1の間隔Gは、1.7mm、1.3mm、1mmで一定とし、計5台の麺帯圧延機1で麺帯Bを9段階に圧延して麺帯厚みを1mmにできる。また、本実施形態においては、一例として本発明の麺帯圧延方法を行う麺帯圧延機1は、上流2台として説明したが、上述の計5台の麺帯圧延機1で麺帯Bを9段階に圧延して麺帯厚みを1mmにするためには、いずれか2台の麺帯圧延機1が本発明の麺帯圧延方法を行えばよい。すなわち、本発明の麺帯圧延方法を行う麺帯圧延機1は、複数の麺帯圧延機1で構成される場合は、全ての麺帯圧延機1が本発明の麺帯圧延方法を行うものでもよく、少なくともいずれか1台の麺帯圧延機1が本発明の麺帯圧延方法を行うものでもよい。
【0053】
第1のピッチと第2のピッチの比率は、麺帯Bの生産量や各モータの容量等により決定され、限定されるものではない。第3図において、第1のピッチと第2のピッチの比率を2:1に設定することも可能であり、たとえば、第1のピッチを500mm、第2のピッチを250mmとして第1のピッチの送り出し時間を1.34秒、第2のピッチの送り戻し時間を0.97秒として、全体として2.31秒で麺帯Bを250mmごとに圧延することも可能である。なお、図3および図4に示すように、麺帯Bの先頭の1区分は、麺帯厚み8.8mm(図中丸2)以下に圧延できないため、取り除かれる。
【0054】
次に、本発明の麺帯圧延方法で圧延された麺帯Bの食感を向上させる方法について説明する。一般的に、圧延された麺帯Bに材料密度の密な部分と疎な部分を形成することで、圧延された麺帯Bに良い食感を与えることができる。しかし、材料密度の密な部分と疎な部分を一対の圧延ロール11、13の回転に同期して形成すると、材料密度の密な部分と疎な部分が圧延された麺帯Bに予想できる程度に一対の圧延ロール11、13の回転に基づいて均一に形成されるため、圧延された麺帯Bの食感は、手揉みの食感からは程遠くいわゆる機械的な食感となる虞がある。したがって、圧延された麺帯Bに良い食感、すなわち、人が麺棒で麺生地を圧延したような食感を与えるためには、圧延された麺帯Bの材料密度の密な部分と疎な部分を予想できない程度に不均一にする必要がある。
【0055】
図5〜図8は、麺帯Bの通過中に間隔Gを一対の圧延ロール11、13の回転に対してランダムに拡縮することにより、圧延された麺帯Bに材料密度の密な部分と疎な部分を形成する実施形態を示すものである。また、図5〜図8は、本発明の麺帯圧延方法での、上述の麺帯Bの1区分を通過する場合の間隔Gの時系列変化を示すものであり、横軸は時間t、縦軸は一対の圧延ロール11、13の間隔Gである。また、図中の上限ULは、圧延前の麺帯Bの麺帯厚み、図中の設定STは、間隔Gの上述の設定値、すなわち、本実施形態では、上限ULは10mm,設定STは、8.8mm,6.6mm、5mmのいずれかである。すなわち、間隔Gは、設定STから上限UL以下の間をロール間隔調整部20により拡縮自在に往復動するものである。また、図5〜8において、拡縮距離Lは上記時系列変化の振幅、拡縮速度Vは上記時系列変化の勾配、拡縮周期Tは上記時系列変化の周期で示される。図5は、拡縮距離Lをランダムとした間隔Gの時系列変化、図6は、拡縮速度Vをランダムとした間隔Gの時系列変化、図7は、拡縮周期Tをランダムとした間隔Gの時系列変化、図8は、拡縮距離L、拡縮速度V、拡縮周期Tをランダムとした間隔Gの時系列変化を示す。
【0056】
図5においては、一例として拡縮距離Lを4段階(L1〜L4)に変化させることにより、間隔Gをランダムに拡縮している。また、拡縮速度V1および拡縮周期T1は一定である。圧延された麺帯Bの表面には、高さがランダムな凹凸部分が形成されることになる。すなわち、圧延された麺帯Bの表面には、材料密度の密な部分と疎な部分が予想できない程度に疎密の程度が不均一に形成されている。
【0057】
図6においては、一例として拡縮速度Vを4段階(V1〜V4)に変化させることにより、間隔Gをランダムに拡縮している。また、拡縮距離L1および拡縮周期T1は一定である。ここで、拡縮速度Vは、ボールネジ22のピッチ、サーボモータ23の容量により限界を有するものである。圧延された麺帯Bの表面には、勾配がランダムな凹凸部分が形成されることになる。すなわち、圧延された麺帯Bの表面には、材料密度の密な部分と疎な部分が予想できない程度に疎密の程度が不均一に形成されている。
【0058】
図7においては、一例として拡縮周期Tを4段階(T1〜T4)に変化させることにより、間隔Gをランダムに拡縮している。また、拡縮距離L1および拡縮速度V1は一定である。ここで、拡縮周期Tは、第2の実施形態と同様に、ボールネジ22のピッチ、サーボモータ23の容量により限界を有するものであるが、本発明の実施形態においては、一例として0.3秒以上程度である。圧延された麺帯Bの表面には、間隔がランダムな凹凸部分が形成されることになる。すなわち、圧延された麺帯Bの表面には、材料密度の密な部分と疎な部分が予想できない程度に疎密の程度が不均一に形成されている。
【0059】
図8は、拡縮距離L、拡縮速度V、拡縮周期Tをそれぞれ4段階(L1〜L4、V1〜V4、T1〜T4)に変化させることにより、間隔Gをランダムに拡縮している。なお、上述の図5〜8以外にも、拡縮距離L、拡縮速度V、拡縮周期Tのいずれか2つを変化させることにより、間隔Gをランダムに拡縮することが可能である。
【0060】
図5〜8においては、シーケンサ31に間隔Gのランダムな拡縮動作パターンを予めプログラムし、このプログラムにおいて間隔Gのランダムな拡縮動作が、麺帯Bの送り量、送り速度とは無関係に決定されることにより、材料密度の密な部分と疎な部分とが圧延された麺帯Bに予測不可能な程度に不均一に形成できる。
【0061】
また、上述の間隔Gのランダムな拡縮動作パターンは、麺帯Bを圧延する際に常に実行する必要はなく、第1のピッチの送り出し、または第2のピッチの送り戻しのいずれかで実行すればよい。なお、最下流の麺帯圧延機1においては、麺帯Bの平面が平坦とされるように圧延されることが多いため、最下流の第1のピッチの送り出し以外で、間隔Gをランダムに拡縮動作させることが望ましい。
【0062】
一対の圧延ロール11、13間の通過中の間隔Gの一対の圧延ロール11、13の回転に対してランダムな拡縮動作によれば、雌ロール11と雄ロール13の間を通過した麺帯Bには、材料の密な部分(凹部)と材料の疎な部分(凸部)が不均一に形成されることになり、圧延された麺帯Bにいわゆる手揉みで圧延されたような食感を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の麺帯圧延機が適用される製麺装置の概略構成図
【図2】本発明の麺帯圧延機の概略構成図
【図3】第1のピッチと第2のピッチの比率を3:2とした麺帯圧延方法の実施形態を示す図
【図4】第1のピッチと第2のピッチの比率を5:4とした麺帯圧延方法の実施形態を示す図
【図5】拡縮距離をランダムとした間隔Gの時系列変化を示す図
【図6】拡縮速度をランダムとした間隔Gの時系列変化を示す図
【図7】拡縮周期をランダムとした間隔Gの時系列変化を示す図
【図8】拡縮距離、拡縮速度、拡縮周期をランダムとした間隔Gの時系列変化を示す図
【符号の説明】
【0064】
B 麺帯
G 間隔
L 拡縮距離
T 拡縮周期
V 拡縮速度
1 麺帯圧延機
10 ロール駆動部
11 雌ロール
13 雄ロール
20 ロール間調整部
23 サーボモータ
30 ロール制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の圧延ロール間に麺帯を通過させて該麺帯を圧延する麺帯圧延機において、
前記一対の圧延ロールを回転させるとともに、該一対の圧延ロールの回転を正回転と逆回転との間で切換可能な圧延ロール駆動部と、
前記一対の圧延ロールの少なくとも一方を他方に対して近接離間する往復動をさせることにより、前記一対の圧延ロールの間隔を調整するロール間隔調整部と、
前記圧延ロール駆動部および前記ロール間調整部を制御するロール制御部とを備え、
該ロール制御部が、前記麺帯を前記一対の圧延ロールを正回転させて第1のピッチだけ送り出し、次いで、前記一対の圧延ロールを逆回転させて前記第1のピッチよりも短い第2のピッチだけ送り戻し、以後この送り出しおよび送り戻しを繰り返すように、前記圧延ロール駆動部を制御するとともに、前記一対の圧延ロールの間隔を前記麺帯が前記一対の圧延ロール間を通過するたびにより小さい所定の麺帯厚みに圧延するように前記ロール間調整部を制御するものであることを特徴とする麺帯圧延機。
【請求項2】
前記圧延ロール駆動部および前記ロール間調整部が、サーボモータを有することを特徴とする請求項1に記載の麺帯圧延機。
【請求項3】
前記ロール制御部が、前記麺帯を前記所定の麺帯厚みに圧延する際、前記一対の圧延ロールの間隔を、前記所定の麺帯厚みからランダムに拡縮するように、前記一対の圧延ロールの回転に対して非同期に前記ロール間調整部を制御するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の麺帯圧延機。
【請求項4】
前記ロール制御部が、前記一対の圧延ロールの間隔を、前記所定の麺帯厚みから距離、速度、周期の少なくとも1つにおいてランダムに拡縮するように、前記一対の圧延ロールの回転に対して非同期に前記ロール間調整部を制御するものであることを特徴とする請求項3に記載の麺帯圧延機。
【請求項5】
一対の圧延ロール間に麺帯を通過させて該麺帯を圧延する麺帯圧延方法において、
前記麺帯を前記一対の圧延ロールを正回転させて第1のピッチだけ送り出し、
次いで、前記一対の圧延ロールを逆回転させて前記第1のピッチよりも短い第2のピッチだけ送り戻し、
以後この送り出しおよび送り戻しを繰り返すとともに、前記麺帯が前記一対の圧延ロール間を通過するたびにより小さい所定の麺帯厚みに圧延するように、前記一対の圧延ロールの少なくとも一方を他方に対して近接離間する往復動をさせて前記一対の圧延ロールの間隔を調整することを特徴とする麺帯圧延方法。
【請求項6】
前記一対の圧延ロールの間隔を、前記麺帯を前記所定の麺帯厚みに圧延する際、前記所定の麺帯厚みからランダムに拡縮して圧延するように、前記一対の圧延ロールの回転に対して非同期に調整することを特徴とする請求項5に記載の麺帯圧延方法。
【請求項7】
前記一対の圧延ロールの間隔を、前記所定の麺帯厚みから距離、速度、周期の少なくとも1つにおいてランダムに拡縮するように、前記一対の圧延ロールの回転に対して非同期に調整することを特徴とする請求項6に記載の麺帯圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11820(P2010−11820A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176565(P2008−176565)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(591286890)株式会社ソディック新横 (6)
【出願人】(301040039)株式会社ニッセーデリカ (3)
【復代理人】
【識別番号】100152401
【弁理士】
【氏名又は名称】我妻 慶一
【Fターム(参考)】