説明

麺成形ローラ装置

【課題】 素麺、ひやむぎ、うどん、中華麺等の麺の断面形状を円形に成形するようにした麺成形ローラ装置を提供する。
【解決手段】 採桶から引き出された麺紐(N)を2本の棒(14)に8字状に掛け渡す前に麺紐を成形するローラ装置であって、円板状をなし、外周部に半円凹形状の部分を有し、該半円凹形状の部分が相互に重ね合わされることにより楕円形状の隙間(27)を構成し、該楕円形状の隙間に麺紐を引き込んで加圧することにより麺紐を断面楕円形状に成形する一対の円板状の成形ローラ(21,22)と、該一対の成形ローラのを駆動する駆動機構(23,24,25)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麺成形ローラ装置に関し、特に素麺、ひやむぎ、うどん、中華麺等の麺の断面形状を円形に成形するようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、素麺は概ね次のような作業工程で製造される。まず、小麦粉、食塩及び水をこね合わせて麺生地を作り(こね前作業)、麺生地を幅ほぼ10cm、厚さほぼ5cmの麺帯にして採桶に巻き込み(板切作業)、麺帯にごま油を塗りながら延ばしロールに通して麺紐にして採桶に巻き込み(油返し作業)、熟成させた後、麺紐に縒りをかけながら延ばしロールで直径ほぼ12mmにして採桶に巻き込み(細目作業)、熟成させた後、麺紐にさらに延ばしロールで直径ほぼ6mmにして採桶に巻き込み(こなし作業)、所望の太さの麺紐を製造する。
【0003】
こうして得られた麺紐を熟成させた後、縒りをかけながら2本の棒に8の字を描くように掛け(かけば作業)、室箱(おも)に入れて熟成し、室箱から取り出した麺紐を2本の棒の間隔をほぼ50cmまで広げることによって延ばし(小引き作業)、室箱に入れ、室箱から取り出した麺紐を2本の棒の間隔をほぼ1.4mまで広げることによって延ばし(小分け作業)、はたで麺紐をさらに延ばしながら乾燥させ(門干し作業)、さらに1.6m、2mと徐々に引き延ばし、乾燥後に切断して製品の素麺が得られる。
【0004】
ところで、採桶から引き出した麺紐に縒りをかけながら麺紐を2本の棒に8の字を描くように掛け渡し、小引き作業及び小分け作業で棒の間隔をあけて延ばしを行っているので、製品の麺は断面円形状になっていると考えられている(特許文献1)。なお、特許文献1記載の技術は製品の麺が断面円形状であることを前提に、断面偏平状に成形するというものである。
【0005】
【特許文献1】実公昭58−23256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、採桶に巻き込まれた麺紐は所定の時間の間積み重ねられ、荷重が加わっているので、断面台形状となっており、この麺紐にいくら縒りを掛けても製品の麺は断面台形状のままで断面円形状にはならず、麺を茹でたときに、中心まで茹で上がるようにすると外縁に茹で過ぎの部分ができ、外縁の茹で過ぎを少なくしようとすると、中心が茹で上がらないという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、製品の麺を断面円形状に成形できるようにした麺成形ローラ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る麺成形ローラ装置は、採桶から引き出された麺紐を2本の棒に8字状に掛け渡す前に麺紐を成形するローラ装置であって、円板状をなし、外周部に半円凹形状の部分を有し、該半円凹形状の部分が相互に重ね合わされることにより楕円形状の隙間を構成し、該楕円形状の隙間に麺紐を引き込んで加圧することにより麺紐を断面楕円形状に成形する一対の円板状の成形ローラと、該一対の成形ローラのを駆動する駆動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つは麺紐を2本の棒に掛け渡す前に、一対の成形ローラによって麺紐を断面楕円形状に成形するようにした点にある。これにより、成形ローラの隙間を出た麺紐は膨らんで断面円形状となり、この麺紐が2本の棒に掛け渡されるので、製品の麺は小引き作業及び小分け作業で延ばしが行われて断面円形状のままとなる。その結果、製品の麺を茹でた時に外縁の茹で過ぎや中心が茹で上がらないといったことが起こらず、所望の茹で具合に茹で上げることができる。
【0010】
成形ローラの材質は特に限定されず、銅や砲金などの金属材料でもよいが、耐久性及び麺紐への影響などを考慮すると、少なくとも外表面の部分にMCナイロンなどの合成樹脂材料を用いるのが好ましい。
【0011】
成形ローラの隙間を楕円形状としたのは成形ローラを通過した後、麺紐が膨らんでほぼ円形状になるからである。成形ローラの半円凹形状の外周端面は平滑な面のままでもよいが、麺紐を円滑に引き込み円滑に送り出せるように、例えばサンドブラスト処理などによって微小凹凸加工を施すのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係る麺成形ローラ装置の好ましい実施形態を示す。図において、麺掛け機10では図2に示されるように、ガイド部材11に麺案内管12の端部がスライド自在に支持され、麺案内管12内に麺紐Nが挿通されるようになっている。
【0013】
ガイド部材11の前方には棒取付け部材13が設けられ、棒取付け部材13の両端部には棒15が取付けられるようになっている。この棒取付け部材13は回転軸16の廻りに揺動自在に支持されてレバー17によって揺動されるようになっている。また、棒取付け部材13はガイドレール14に沿って往復動自在に設けられている。
【0014】
麺掛け機10のフレーム18には本例の麺成形ローラ装置20が支持されている(なお、図1には麺成形ローラ装置は現れていない)。この麺成形ローラ装置20では外径の異なる2対の成形ローラ21、22を回転軸21D、22Dに支持し、回転軸21D、22Dをフレーム(図示せず)に回転自在に支持して構成され、回転軸21Dの一端部は歯車機構23を介して駆動モータ(図示せず)に連結され、回転軸21D、22Dの他端部には平歯車24、25が相互に噛合して取付けられ、駆動モータの回転によって成形ローラ21、22が回転されるようになっている。
【0015】
この成形ローラ21、22はMCナイロンなどの合成樹脂材料を用いて円板状に製作され、一方の成形ローラ21の外周端面には凹溝21Aが形成され、凹溝21Aの底面は半楕円形状に形成されている。他方の成形ローラ22の外周面には凸部22Aが形成され、凸部22Aの頂面は半楕円形状に形成されており、両成形ローラ21、22の凹溝21Aと凸部22Aとが相互に嵌入されて両者の間に楕円形状の隙間27が構成されるようになっている。さらに凹溝21Aの底面及び凸部22Aの外周面はサンドブラストなどによって微小凹凸が加工されている。
【0016】
採桶30から麺紐Nが引き出されると、麺紐Nの先端部分はガイドローラに掛けられた後、本例の麺成形ローラ装置20の成形ローラ21、22の隙間27の間に挿通され、さらに麺案内管12内に挿通され、麺案内管12の先端から引き出されて2本の棒14の間に掛け渡される。
【0017】
このように準備が完了すると、駆動モータを作動させ、成形ローラ21、22を回転駆動する。すると、採桶30から引き出された麺紐Nが成形ローラ21、22の隙間27を通過することによって断面楕円形状に成形され、隙間27を出ると断面円形状に膨らみ、その断面円形状を保持したまま麺案内管12に送られる。
【0018】
この麺案内管12はガイド部材11に沿って往復動するとともに、棒取付け部材13はガイドレール17に沿って後退されるとともに、レバー17が操作されて棒取付け部材13が揺動され、これによって2本の棒15の間に麺紐Nが8字状に掛け渡される。
【0019】
成形ローラ21、22の回転速度は麺案内管12による2本の棒14への掛け渡し速度に応じて制御するのがよい。この場合、2本の棒14の間隔と棒取付け部材13の揺動速度とから麺紐Nの送り出し速度を決定することができるので、その送り出し速度から成形ローラ21、22の回転速度を求めることができる。
【0020】
その後、棒14に掛け渡された麺紐Nは室箱(おも)にて熟成され、室箱から取り出した麺紐を2本の棒の間隔をほぼ50cmまで広げることによって延ばした後、室箱に入れ、室箱から取り出した麺紐を2本の棒の間隔をほぼ1.4mまで広げることによって延ばし、はたで麺紐をさらに延ばしながら乾燥させ、さらに1.6m、2mと徐々に引き延ばし、乾燥後に切断して製品の素麺を得る。
【0021】
このとき、かけば作業の前に、麺紐Nを断面円形状に成形しているので、製品の麺は断面円形状を維持し、この製品の麺を茹でた時に外縁の茹で過ぎや中心が茹で上がらないといったことが起こらず、所望の茹で具合に茹で上げることができる。
【0022】
なお、成形ローラ21、22の回転速度は麺案内管12による2本の棒14への掛け渡し速度に応じて制御するのがよい。この場合、2本の棒14の間隔と棒取付け部材13の揺動速度とから麺紐Nの送り出し速度を決定することができるので、その送り出し速度から成形ローラ21、22の回転速度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る麺成形ローラ装置の好ましい実施形態を備えた麺掛け機を示す全体構成図である。
【図2】上記実施形態における麺掛け機の構造例をを示す側面図である。
【図3】上記実施形態における麺成形ローラ装置を示す正面図である。
【図4】上記実施形態における成形ローラを示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 麺掛け機
11 棒
20 麺成形ローラ装置
21、22 成形ローラ
27 隙間
N 麺紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採桶から引き出された麺紐を2本の棒に8字状に掛け渡す前に断面円形状に成形するローラ装置であって、
円板状をなし、外周部に半円凹形状の部分を有し、該半円凹形状の部分が相互に重ね合わされることにより楕円形状の隙間を構成し、該楕円形状の隙間に麺紐を引き込んで加圧することにより麺紐を断面楕円形状に成形する一対の円板状の成形ローラと、
該一対の成形ローラを駆動する駆動機構と、
を備えたことを特徴とする麺成形しローラ装置。
【請求項2】
上記成形ローラは少なくとも外表面が合成樹脂材料を用いて製作されている請求項1記載の麺成形ローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−11185(P2009−11185A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173769(P2007−173769)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(506147582)
【Fターム(参考)】