説明

麺類生地混練容器

【課題】 水平な公転軌道上に、開口を前記公転軌道の回転軸線上方方向に傾斜した立ち上がり状態で自転可能に配置した容器を公転させると同時に自転させて容器内に生ずる複合遠心力によって、容器内に収容された麺粉と水分とを混練する麺類生地混練装置に用いる容器を、短時間で混練できるばかりか腰の強い麺生地が作成可能なものとする。
【解決手段】 容器本体61の上端に形成された開口62を開閉可能且つ固定状態で塞ぐことが可能な上蓋63の内面にほぼ容器本体61の底壁に至る長さを有する少なくとも1枚の混練板65を容器本体61内の中心軸線から側壁に至る放射面に沿って突出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平な公転軌道上に、開口を前記公転軌道の回転軸線上方方向に傾斜した立ち上がり状態で自転可能に配置した容器を公転させると同時に自転させて容器内に生ずる複合遠心力によって、容器内に収容された麺粉と水分とを混練する麺類生地混練装置に用いる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水平の円回転をするアームの先端部に、開口をアームの回転軸の中心線上方向にに向けて傾斜した立ち上がり状態で回転自在に配し、アームの水平円回転により公転させると同時に自転させて、容器内に前記公転と自転による複合遠心力を生じさせることによって収容された麺粉と水分とを混練する麺類生地混練装置が、特開2001−299191号公報、特開2002−336138号公報に提示されている。
【0003】
これらの麺類生地混練装置は、図6に示すように、駆動源1により回転する回転軸2に取り付けられた水平の円回転をするアーム3の先端部に傾斜立ち上がり部4が形成されており、該アーム3の先端部の傾斜立ち上がり部4の裏側に、該アーム3の回転軸2の回転に同調して回転する容器6を回転させる回転機構5が配されている。アーム3の回転軸2と容器6を回転させる該容器回転機構5の間には、アーム3の回転軸2の回転力を該容器回転機構5に伝達するベルト或はギアーから成る伝達機構(図示しない)を介在させている。
【0004】
前記アーム3の先端の傾斜立ち上がり部4の表側には、該傾斜立ち上がり部4の裏側に設けられた容器回転機構5の回転軸7の先端に固定された容器装着機構8が設けられている。その容器装着機構8は、図示実施例では有底の円筒状ケースとして図示されており、その円筒状ケースの開口の中心をアーム3の回転軸2の中心線上方向に向けて傾斜して装着する構成となっている。
【0005】
そして、所定量の麺粉と水分とを充填して蓋61により開口を塞いだ容器6を前記容器装着具8に装着してアーム3を水平円回転により公転させながら自転させると、容器6内の麺粉と水分とからなる充填物にはアーム2の水平円回転の公転による遠心力と自転による遠心力とが加算された複合遠心力が作用する。
【0006】
しかも、前記複合遠心力は公転と自転との遠心力が同一方向を向いたときには両者の遠心力が加算されて最大の遠心力となり、公転と自転との遠心力が反対の方向を向いたときには両者の遠心力が打ち消されて最小の遠心力(或いはアーム2の回転軸に向けた求心力)が働き、これが繰り返されることにより容器6内の麺粉と水分とからなる充填物には大きな遠心力と小さな遠心力とが連続して常時変化する周期的な応力として作用する。加えて、容器6はアーム2の回転軸S1の中心線上方向に向けて傾斜して設けられているので容器6の底方向にかかる重力も周期的に変化するので充填物は規則的なしかも複雑な複合遠心力を繰り返し受けることになり、短時間のうちに混練されて麺生地が形成されるというものである。
【0007】
そして、前記特開2001−299191号公報では、容器として内側については特に配慮することなく、その内側は有底の円周面として形成されたどこにでもある普通の形態の容器を用いることを前提としており、いわゆる腰の強い麺生地を作るにはその要求を満足することができないきらいがある。
【0008】
そこで、特開2002−336138号公報では、腰の強い麺生地を作るために内周面に、深さ方向に凸條を設けた構成の容器が用いられている。
【特許文献1】特開2001−299191号公報
【特許文献2】特開2002−336138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記従来の麺類生地混練装置において従来にも増して短時間で混練できるばかりか腰の強い麺生地が作成可能な麺類生地混練容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、水平な公転軌道上に、開口を前記公転軌道の回転軸線上方方向に傾斜した立ち上がり状態で自転可能に配置した容器を公転させると同時に自転させて容器内に生ずる複合遠心力によって、容器内に収容された麺粉と水分とを混練する麺類生地混練装置に用いる容器であって、前記容器本体の上端に形成された開口を開閉可能且つ固定状態で塞ぐことが可能な上蓋の内面にほぼ容器本体の底壁に至る長さを有する少なくとも1枚の混練板を容器本体内の中心軸線から側壁に至る放射面に沿って突出させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明は従来の麺類生地混練装置に用いると、従来の容器を用いた場合と同様に充填された麺粉と水分とが容器内で複雑な応力を受けて移動することで混練されるが、特に、本発明では容器内の中心軸線から側壁に至る放射面に沿って混練板が配置されているので混練効果が加わって混練を迅速に行うことができるばかりか気泡を除いた生地を形成することができる。
【0012】
更に、混練物は混練板に衝って容器内を移動し混練度を増すとともに混練板と容器の内周面との間に形成される隙間を強制的に通過させられることにより腰の強い麺生地が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の最良の形態について説明する。
【0014】
図1および図2は本発明の好ましい実施の形態の一例を示すものであり、麺類生地混練容器6は、たとえばステンレス材などにより有底の円筒形に形成される上方を開口した容器本体61と、この容器本体61の上端に形成された開口62を開閉可能な上蓋63とからなり、容器本体61と上蓋63とは容器本体61の上端外周に設けられた係止具64を上蓋63に係止することにより固定状態で容器本体61の開口を塞ぐことが可能である。
【0015】
そして、上蓋63の内側面には、容器本体61に被せたときに、ほぼ容器内の底壁68および周側壁69に至る少なくとも1枚の混練板65が容器内の中心軸線から側壁に至る放射面に沿って突出するように例えば溶接などの適宜手段により固着されている。
【0016】
本実施の形態を用いて麺生地を作るには、先ず、上蓋63を外した状態で容器本体61内に所定量の例えばうどん粉なとの麺粉と水分を充填し、上蓋63を閉じて係止具64により密封固定し、これを図3に示すように、前記図4に示した従来例と同じ構成の麺類生地混練装置の容器装着機構8に装着してアーム3を水平円回転により公転させながら自転させると、容器6内の麺粉と水分とからなる充填物にはアーム3の水平円回転の公転による遠心力と自転による遠心力とが加算された複合遠心力を作用させる。更に、容器6を前記したように、その開口62をアーム3の先端に、アームの回転軸線2上方に傾斜立ち上がり状態で装着したので、容器の底面方向にも強い複合遠心力が押圧力として働くことになる。
【0017】
加えて、容器6内に配置された混練板65が障害物となって容器6に充填された麺粉と水分とが容器6内できわめて複雑な応力を受けて移動することで混練される。、特に、混練板65が配置されているので扁平な底部68や周側壁69だけでなく混練効果が加わって混練を迅速且つ確実に行うことができるばかりか気泡を除いた腰の強い生地を形成することができる。
【0018】
更に、混練物は混練板65と容器6の内周面との間に形成される隙間70,71を強制的に通過させられることにより多大な圧力が加えられることになり、腰の強い麺生地が形成される。
【0019】
麺生地が形成されたならば、上蓋63を取り去って容器本体61内に存在する麺生地を取り出せばよく、本発明では混練板65が上蓋63に取り付けられているので混練板65が邪魔になることなしに麺生地をきわめて簡単に取り出すことができ、また、使用後の洗浄も容易できわめて衛生的でもある。
【0020】
図4は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、全体の構成は前記図1乃至図3に示した実施の形態とほぼ同様であるが、混練板65における容器6の内周面側の側端が複数の凹凸が連続して形成されている(或いは波形 )。
【0021】
従って、混練物が混練板65と容器6の内周面との間に形成される隙間70を強制的に通過させられる際に、より複雑で変化に富んだ押圧力が不規則に加わるので更に腰の強い麺生地を迅速に作ることができる。
【0022】
また、図5は本発明の更に異なる実施の形態を示すものであり、全体の構成は前記図1乃至図3に示した実施の形態とほぼ同様であるが、上蓋63の内側面に突出させる混練板65が、前記上蓋63の内側面に取り外し可能に構成されている点が異なる。
【0023】
特に、本実施の形態では混練板65の基端にT字形になるように固定板8が配置されているとともに、固定板8の表面に上蓋63の厚さにほぼ等しい長さの軸部81bとその先端に連設した係止突起81aを有する複数の係止部材81cが突設されているとともに、上蓋63に前記係止突起81aと軸部81bとに併せて形成した通過孔63a,63bを連続させた係止孔63cが係止部材81cに対応する位置に形成されており、各係止部材81cを係止孔63cの通過孔63aに通過させるとともに通過孔63bに移動させて混練板65を上蓋63の裏面に固定するものであり、また、逆の操作により取り外し可能としたものである。
【0024】
本実施の形態はこのように、混練板65を取り外すことができるので使い終わった後の洗浄処理などがきわめて容易であるなどの利点を有している。
【0025】
尚、本実施の形態は、混練板65を取り外し可能とした場合の一例を示すものであり、とと取り外し可能に固着することができればよく、例えば上蓋63の裏面に差し込み溝を形成するなど(図示せず)、他の構成でもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態を示す上蓋を取り外した状態の斜視図。
【図2】図1に示した実施の形態の上蓋を被せた状態の縦断面図。
【図3】図1に示した実施の形態の使用状態を示す概略図。
【図4】本発明の異なる実施の形態を示す上蓋を取り外した状態の斜視図。
【図5】本発明の更に異なる実施の形態を示す説明図。
【図6】従来の麺類生地混練装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0027】
1 回転軸、3 アーム、4 アーム先端の傾斜立ち上がり部、6 混練容器、61 容器本体、62 開口、63 上蓋、65 混練板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な公転軌道上に、開口を前記公転軌道の回転軸線上方方向に傾斜した立ち上がり状態で自転可能に配置した容器を公転させると同時に自転させて容器内に生ずる複合遠心力によって、容器内に収容された麺粉と水分とを混練する麺類生地混練装置に用いる容器であって、前記容器本体の上端に形成された開口を開閉可能且つ固定状態で塞ぐことが可能な上蓋の内面にほぼ容器本体の底壁に至る長さを有する少なくとも1枚の混練板を容器本体内の中心軸線から側壁に至る放射面に沿って突出させたことを特徴とする麺類生地混練容器。




















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−109981(P2006−109981A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298814(P2004−298814)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000107402)ジャパンホームサプライ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】