説明

麺類用ほぐれ剤および麺類のほぐれ改善方法

【課題】麺類のほぐれ剤として、従来一般に用いられている油脂や乳化油脂を用いずに、ほぐれ効果が顕著であり、油臭や喫食時につゆの汚れが生じない、かつ麺類の品質の低下を伴わない、麺類用ほぐれ剤および麺類のほぐれを改善する方法を提供する。
【解決手段】水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物からなり、おのおのの無水換算量による質量比が、水溶性ヘミセルロース5〜25質量部:乳化剤0.5〜7質量部:グアーガム分解物8〜20質量部であることを特徴とする麺類用ほぐれ剤、および該ほぐれ剤100質量部と水150〜350質量部を混合して得た乳化液または水溶液を、α化麺類100質量部に対し1〜5質量部の割合で、α化麺類の表面にほぼ均一に付着させることを特徴とする麺類のほぐれを改善する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類用ほぐれ剤および麺類のほぐれを改善する方法に関し、さらに詳しくは、中華麺、うどん、そば、ひやむぎ、そうめん、きしめん、スパゲッティー等の麺類用ほぐれ剤およびこの麺類用ほぐれ剤を用いる麺類のほぐれを改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の生活スタイル、食の多様化により、加工食品のニーズが増大している。特に、中華麺、うどん、そば、ひやむぎ、そうめん、きしめん、スパゲッティー等の麺類は、大量に加工・調理された製品がコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで販売され、多くの消費者に食されるようになってきた。これら麺類の加工食品において、特に問題となるのが調理の利便性と時間の経過による品質劣化である。
コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで販売されている調理麺類等は製造後、冷蔵又はチルド流通された後に喫食に供されるが、麺線同士が結着して団子状となる問題があった。
【0003】
こうした麺類は澱粉を使用していることが一般的であり、加工時や茹で等の調理の後に、麺線同士が結着してしまうことが多い。その結果、加工時や茹で等の調理の後に団子状になったり、その団子状の麺線をほぐすのに手間がかかり麺線が切れたり、潰れたりし、品質を損なう問題が生じる。また、湯戻しの時に加熱ムラを生じて食味を低下させたり、或いは、多食分包装の場合など一食分に小分けすることが困難になる。
【0004】
これらの欠点の改良方法として、従来より麺線同士の付着を防止するためにその表面に食用油脂を噴霧する方法、乳化油脂類を練り込む方法、蒸煮麺を乳化分散液に浸漬、乃至噴霧する方法等が知られている。その中には、中鎖級脂肪酸トリグリセライド(MCT)の乳化組成物を茹で麺類に噴霧する方法(例えば、特許文献1参照)、特定の脂肪酸の水添油に乳化剤を添加した麺ほぐれ改良油脂組成物(例えば、特許文献2参照)、グアーガム等のガム類の分解物を含む水溶液でめん線を蒸煮前又は蒸煮後に処理してめん線の付着を防止する方法(例えば、特許文献3参照)、水溶性ヘミセルロースを用いる技術が開発され、水溶性ヘミセルロースからなる穀類加工食品用ほぐれ改良剤(例えば、特許文献4参照)、油脂と増粘多糖類と水溶性ヘミセルロースとを含む混合物を乳化して得られる、ほぐれ改良剤(例えば、特許文献5および6参照)、さらに、水溶性ヘミセルロースのような水溶性多糖類を主成分とし、これにキレート剤および乳化剤とを含む、穀類用ほぐれ向上剤(例えば、特許文献7参照)が知られている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の油脂の乳化組成物、或いは特許文献2に記載の油脂に特定の乳化剤を配合したものは、ほぐれ性はよいが油脂の存在のために食味性を低下するという欠点を有していた。また、特許文献3記載のガム類分解物を使用する方法、および特許文献4記載の水溶性ヘミセルロースだけの使用では、十分なほぐれ性を得ようとすると使用量が多くなり、作業性、呈味性に問題があった。さらに、特許文献5および6記載の油脂と増粘多糖類および水溶性ヘミセルロースを含有する麺ほぐれ剤では、十分なほぐれ作用は得られず、また、油脂を含有することから、油臭や喫食時にツユの汚れが問題となる。さらに、特許文献7記載の水溶性ヘミセルロースとキレート剤を含む穀類用ほぐれ剤は、長期の保存に優れているとはいえ、風味に影響を及ぼすものであった。
【0006】
【特許文献1】特開平4−58859号公報
【特許文献2】特開2001−352926号公報
【特許文献3】特開平4−311360号公報
【特許文献4】特開平6−121647号公報
【特許文献5】特開2003−265128号公報
【特許文献6】特開2005−13135号公報
【特許文献7】特開2005−278406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、食味の低下やツユの汚れの原因となる油脂を用いずに、製造後一定の時間が経過しても、ほぐれやすくかつ麺表面がソフトで中心に生麺の茹で直後特有のコシが残り、美味しい麺を製造するための、麺類用ほぐれ剤、及び麺類のほぐれを改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究した結果、従来公知である特定の成分である、水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物を特定の割合で配合することにより、麺類の風味を損わずに麺類のほぐれ性に顕著な効果を奏することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物からなり、おのおのの質量比(無水換算)が、水溶性ヘミセルロース5〜25質量部:乳化剤0.5〜7質量部:グアーガム分解物8〜20質量部であることを特徴とする麺類用ほぐれ剤に関する。
【0010】
また本発明は、前記記載の麺類用ほぐれ剤100質量部と水150〜350質量部を混合して得た乳化液または水溶液を、α化麺類100質量部に対し1〜5質量部の割合で、α化麺類の表面にほぼ均一に付着させることを特徴とする麺類のほぐれを改善する方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の麺類用ほぐれ剤を使用した麺類は、冷蔵又はチルド流通された後でも、麺の茹で直後のように麺を持ち上げるとそのままほぐれるなど、顕著なほぐれ改善効果を奏し、また、麺表面がソフトで、中心に生麺の茹で直後特有のコシが残り、美味しい麺として調製することができる上に、ほぐれ剤による品質低下を伴わない。
本発明の麺類用ほぐれ剤は、油脂を使用しないため、白濁せず、麺類と接触したときの透明感に優れ、麺類の外観が損なわれない。特に、ざるそば、うどんなどに使用したときに、従来のほぐれ剤では、つけ汁あるいはだし汁が濁る、あるいは油膜が生じるため商品価値が低減するが、本発明のほぐれ剤で処理して得られる麺線は、麺線同士のほぐれが改善されて食べやすいだけでなく、外観も損なわれることがない。さらに、つけ汁あるいはだし汁に濁りが生じず、油膜の形成もないので、商品価値が高い麺類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の麺類用ほぐれ剤は、水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物からなり、おのおのの質量比(無水換算)が、水溶性ヘミセルロース5〜25質量部好ましくは10〜16.5質量部:乳化剤0.5〜7質量部好ましくは0.9〜5質量部:グアーガム分解物8〜20質量部好ましくは13.2〜16質量部である。ここで、質量比(無水換算)とは、水分を含有しないとした場合の質量の比を意味する。
また本発明の麺類用ほぐれ剤を使用して麺類のほぐれを改善する方法として、前記記載の麺類用ほぐれ剤100質量部に水150〜350質量部好ましくは200〜300質量部を混合して得た乳化液または水溶液を、α化麺類100質量部に対し1〜5質量部好ましくは2〜4質量部の割合で、α化麺類の表面にほぼ均一に付着させることにより本発明の目的が達成される。
【0013】
本発明における麺類とは、茹で上げた後冷蔵保存され喫食される調理麺の他、ロングライフ麺、チルド麺、冷凍麺、ノンフライ即席麺などを挙げることができる。麺類の種類としては、中華麺、うどん、そば、ひやむぎ、そうめん、きしめん、スパゲッティー等を挙げることができ、特に、従来のほぐれ剤では十分なほぐれ効果が得られていない、麺線が細いもの(中華麺、そば、ひやむぎ、そうめん)、薄い平麺タイプ(きしめん)、うどんなどに好適である。
【0014】
本発明で用いる水溶性ヘミセルロースは、油糧種子(大豆、パーム、椰子、コーン、綿実等)または穀類(米、小麦等)や豆類(小豆、エンドウ豆等)を原料とし、それらから通常の方法で油脂、タンパク質、澱粉質を除いたヘミセルロース含有物から、水抽出、酸又はアルカリ条件下での加熱溶出、酵素による分解溶出などにより得ることができるが、豆類由来のもの、特に大豆を原料として抽出される大豆抽出繊維を好適に例示することができる。このような大豆由来の水溶性ヘミセルロースは市販されており、容易に入手することができる。市販品としては、例えば「ソヤファイブS(不二製油社製:水溶性ヘミセルロースの無水換算含有割合100質量%)」、「ソヤアップM(不二製油社製:水溶性ヘミセルロースの無水換算含有割合50質量%)」等を挙げることができる。
【0015】
本発明の麺類用ほぐれ剤における水溶性ヘミセルロースの無水換算量による質量比は、5質量部未満であるとほぐれ効果が十分でなく、25質量部を超えると、呈味性の問題が生じるので好ましくない。
【0016】
本発明で用いる乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等、食品に使用可能な乳化剤であれば特に限定されないが、レシチンが好ましい。レシチンとしては、大豆、卵黄など動植物由来のどちらでもよく、また、分画レシチン 、水添レシチン 、酵素分解レシチンなども使用可能である。また、レシチンの形状は、ペースト状、粉末状、塊状などあるが、どのレシチンも使用可能である。いずれの場合でも乳化剤は市販のものを用いればよい。
【0017】
本発明の麺類用ほぐれ剤における乳化剤の無水換算量による質量比は、0.5質量部未満であるとほぐれ効果が十分ではなく、7質量部を超えると、ほぐれ効果には問題はないが呈味性の問題が生じるので好ましくない。
【0018】
本発明で用いるグアーガム分解物は、グアーガムの加水分解物であり、ガラクトマンナナーゼ活性を有する酵素で加水分解後、分離、精製、粉末化して製造することができるが、商品名サンファイバーR(太陽化学社製:グアーガム分解物の無水換算含有割合70質量%)等の市販品を用いることもできる。
【0019】
本発明の麺類用ほぐれ剤におけるグアーガム分解物の無水換算量による質量比は、8質量部未満であるとほぐれ効果が十分でなく、20質量部を超えると、混合液の粘性が高くなり、作業性の問題が生じるので好ましくない。
【0020】
本発明の麺類用ほぐれ剤には、上記した水溶性ヘミセルロース、乳化剤、グアーガム分解物の他、本発明の麺類用ほぐれ剤の有する効果を損ねない範囲で、酸味料、糖類、調味料、香料、増粘剤など、通常、ほぐれ剤に用いられる食品材料を配合することができるが、油脂は前述のとおりの問題を生じることから、本発明では油脂を用いないことが重要である。
【0021】
上記酸味料としては、酢酸、アジピン酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、クエン酸、DL−リンゴ酸、グルコノデルタラクトン、L−酒石酸、DL−酒石酸などの、食品に用いられる有機酸、ならびにこれらの塩が挙げられる。これらは、ほぐれ改良剤の保存性、pHなどを考慮して、適宜選択すればよい。
【0022】
糖類としては、グルコース(ブドウ糖)、マルトース、フラクトース(果糖)、ガラクトース、トレハロース、オリゴ糖、蔗糖、ソルビトールなどが挙げられ、これら糖類は、糖度、味等が異なるので、適宜麺の種類により選択すればよい。
【0023】
調味料としては、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸、DL−アラニン、グリシン、ベタイン、酵母エキス、並びに鰹、昆布、肉などに由来する天然調味料(例えば、鰹だし、昆布だし、肉エキスなど)が挙げられる。
【0024】
本発明の麺類用ほぐれ剤を使用して麺類のほぐれ改善を行なうには、本発明の麺類用ほぐれ剤100質量部に水150〜350質量部好ましくは200〜300質量部を混合して乳化液または水溶液を得る。この混合は例えば、ホモミキサーなど通常用いる乳化装置を用いて均質混合することによって行なえばよい。
【0025】
次に、この乳化液または水溶液をα化麺類の表面に、α化麺類100質量部に対し1〜5質量部好ましくは2〜4質量部の割合で、ほぼ均一に付着させる。この方法としては、該乳化液または水溶液を茹で又は蒸し処理したα化麺類の表面に均一に噴霧するか、麺類にふりかけてからよく揉むか、または該乳化液または水溶液にα化麺類を浸漬する等してα化麺類の表面にほぼ均一に付着させることができる。中でも、噴霧処理するのが最も好ましい。
【0026】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0027】
[実施例1〜5および比較例1〜8](ほぐれ剤の調製)
水溶性ヘミセルロース「ソヤアップM800」(不二製油社製:水溶性ヘミセルロースの無水換算含有割合50量%)、乳化剤レシチン粉末「ベイシスLP−2070R」(日清オイリオ社製:レシチンの無水換算含有割合70質量%)、グアーガム分解物「サンファイバーR」(太陽化学社製:グアーガム分解物の無水換算含有割合100質量%)、発酵調味粉末「CBW30」(森永乳業社製)およびデキストリン「サンデック#30」(三和澱粉工業社製)を表1に示す割合で混合してほぐれ剤を調製した。なお、表1中の各数値は、無水換算した値である。
【0028】
【表1】

※表1において各成分の数値は質量部を表す
【0029】
【表2】

【0030】
[試験例1〜6](冷やしうどんのほぐれ)
中力小麦粉70質量部、タピオカ澱粉30質量部、小麦グルテン2.5質量部に対して、食塩3質量部を水43質量部に溶解した水溶液を加え、これを横型一軸ミキサー(新トーキョーメンキ社製)で14分間混捏した。その後、常法により複合、圧延を行ない、厚み2.0mmの麺帯にした後、角刃の切刃#10を用いて麺線に切り出した。次いで、切り出した麺線を100℃の条件下で5分間茹で処理して、その後水洗槽にて1分間冷却した。得られた茹でうどんを140gずつに分けた後、ほぐれ剤をスプーンにとって偏らないように茹でうどん100質量部に対して3質量部添加し、麺を軽く持ち上げるようにして茹でうどんとほぐれ剤をよく混合し、茹でうどん表面にほぐれ剤をほぼ均一に付着させた。冷蔵庫で一晩保存した後、そのままの状態(つゆ無し)で表2に示す評価基準表にしたがって、パネラー数10人でほぐれを評価しその平均をとった。その結果を表3に示す。同様に、冷蔵庫で一晩保存した茹でうどんに40mlのうどんつゆを注ぎ(つゆ有り)、前記と同様にパネラー数10人でほぐれを評価しその平均をとった。その結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

※表3において水の数値は質量部を表し、ほぐれ剤100質量部に対し水250質量部の割合になるようにした。
【0032】
表3の試験例1〜3に示すように、実施例1のほぐれ剤を使用すると、ほぐれの程度は、つゆ無しで評点4.5であったが、比較例1および2のほぐれ剤を使用すると、ほぐれの程度は、つゆ無しで評点3.0と2.5であった。同様に表3の試験例4〜6に示すように、実施例2のほぐれ剤を使用すると、ほぐれの程度は、つゆ有りで評点4.8であったが、比較例3および4のほぐれ剤を使用すると、ほぐれの程度は、つゆ有りで評点3.3と3.1であった。このように、本発明のほぐれ剤は、特定量の水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物を必須の成分とすることがわかり、グアーガム分解物を配合しないほぐれ剤や、グアーガム分解物の代わりに発酵調味粉末やデキストリンを配合したほぐれ剤では、所期のほぐれ効果を奏することができないことがわかる。
なお図1に、冷やしうどん(つゆ無し)のほぐれ評価を写真で示す(参考写真1参照)。
【0033】
[試験例7〜16](冷やし中華麺のほぐれ)
中力小麦粉80質量部、タピオカ澱粉15質量部、小麦グルテン3質量部、卵白粉1質量部に対して、かん水2質量部を水43質量部に溶解した水溶液を加え、これを横型一軸ミキサー(新トーキョーメンキ社製)で15分間混捏した。その後、常法により複合、圧延を行ない、厚み1.25mmの麺帯にした後、角刃の切刃#22を用いて麺線に切り出した。切り出した麺線を100℃の条件下で5分間茹で処理して、その後水洗槽にて1分間冷却した。得られた茹で麺を140gに分けた後、ほぐれ剤をスプーンにとって偏らないように茹で麺100質量部に対して3質量部添加し、麺を軽く持ち上げるように茹で麺とほぐれ剤をよく混合し、茹で麺表面にほぐれ剤をほぼ均一に付着させた。冷蔵庫で一晩保存した後、そのままの状態(つゆ無し)で表2に示す評価基準表にしたがってパネラー数10人でほぐれを評価しその平均をとった。その結果を表4に示す。同様に、冷蔵庫で一晩保存した中華麺に40mlの中華スープを注ぎ(つゆ有り)、次いで表2に示す評価基準表にしたがってパネラー数10人でほぐれを評価しその平均をとった。その結果を表4に示す。
【0034】
【表4】


※表4において水の数値は質量部を表し、ほぐれ剤100質量部に対し水250質量部の割合になるようにした。
【0035】
表4の試験例7〜9に示すように、冷やし中華麺において実施例2または3のほぐれ剤を使用すると、ほぐれの評点はつゆ無しで4.6と4.5であったが、比較例8のほぐれ剤を使用すると評点はつゆ無しで2.2であった。また、試験例10〜16に示すように実施例2〜4のほぐれ剤を使用すると、ほぐれの評点はつゆ有りで4.6〜4.9であったが、比較例3または5〜7のほぐれ剤を使用すると、ほぐれの評点はつゆ有りで2.7〜3.2であった。このように、本発明のほぐれ剤は、特定量の水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物を必須の成分とすることがわかり、グアーガム分解物および乳化剤の一方を使用しない比較例3または5〜7のほぐれ剤を使用すると、所期のほぐれ効果を奏することができないことがわかる。なお図2に、冷やし中華(つゆあり)のほぐれ評価を写真で示す(参考写真2参照)。
【0036】
さらに、上記の試験例7,8および10〜12の麺類では、上記3成分を用いることによるほぐれ効果が顕著であるばかりでなく、従来の油脂を用いるほぐれ剤の欠点である、つけ汁あるいはだし汁に油膜や白濁を生じる外観上の問題点や、脂っこさなどの食感、および長期間経過後での分離現象は、何ら認められず優れたものであった。
【0037】
[試験例17〜19](ノンフライ即席麺のほぐれ)
中力小麦粉70質量部、馬鈴薯澱粉30質量部に対して、食塩1.5質量部を水35質量部に溶解した水溶液を加え、これを横型一軸ミキサー(新トーキョーメンキ社製)で15分間混捏した。その後、常法により複合、圧延を行ない、厚み1.1mmの麺帯にした後、角刃の切刃#10を用いて麺線に切り出した。切り出した麺線を100℃の条件下で2分30秒間蒸熱処理してα化させ、90g/個に小分けした後、この麺100質量部に対して約2.4質量部のほぐれ剤を噴霧して麺表面に均一に付着させた。次いでこれを型詰して、温度90℃の条件下で水分が9%になるまで熱風乾燥して、ノンフライ即席うどんを得た。得られたノンフライ即席うどんを容器中に入れ、450mlの沸騰水を注ぎ、蓋をしてから5分後に蓋をとり、粉末のうどんスープを入れた。この麺を表2に示す評価基準表にしたがってパネラー数10人でほぐれを評価しその平均をとった。その結果を表5に示す。
【0038】
【表5】


※表5において水の数値は質量部を表し、ほぐれ剤100質量部に対し水250質量部の割合になるようにした。
【0039】
表5の試験例17に示すように、本発明のほぐれ剤である実施例2のものを使用すると、評点は4.5であったが、比較例3または5のほぐれ剤を使用すると、評点は3.2と2.9であった。このように、本発明のほぐれ剤は、水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物を必須の成分とし、これらを特定の配合量で配合することによりほぐれ改善効果を示すことがわかった。
【0040】
[試験例20〜22](ロングライフ麺のほぐれ)
中力小麦粉60質量部、タピオカ澱粉40質量部に対して、小麦グルテン粉末8質量部および卵白粉1質量部を加え、さらに食塩3.5質量部を水45質量部に溶解した水溶液を加え、これを横型一軸ミキサー(新トーキョーメンキ社製)で15分間混捏した。その後、常法により複合、圧延を行ない、厚み2.5mmの麺帯にした後、丸刃の切刃#12を用いて麺線に切り出した。切り出した麺線を100℃の条件下で7分間茹で処理してα化させ、その後水洗槽にて1分間冷却、さらに1%乳酸の水溶液中に1分間浸潰を行い、茹で歩留が290%の茹でうどんを得た。得られた茹でうどんを180g/個に分けた後、茹でうどん100質量部に対して約3質量部(約5g)のほぐれ剤を添加し、よく混ぜ合わせて茹でうどん表面にほぼ均一に付着させた。それらを袋詰めして、90℃の条件下で20分間蒸熱殺菌をして、ロングライフ(LL)うどんを得た。得られたそれぞれのLLうどんを容器中に入れ、70mlのつゆを注ぎ、このうどんを表2に示す評価基準表にしたがってパネラー数10人でほぐれを評価しその平均をとった。その結果を表6に示す。
【0041】
【表6】

※表6において水の数値は質量部を表し、ほぐれ剤100質量部に対し水250質量部の割合になるようにした。
【0042】
表6に示すように、本発明のほぐれ剤である実施例2のものを使用すると、評点は4.5であったが、比較例3または5のものを使用すると、評点は2.7と2.2であった。このように、本発明のほぐれ剤は、水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物を必須の成分とし、これらを特定の配合量で配合することによりほぐれ改善効果を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】冷やしうどん(つゆ無し)のほぐれ評価を写真であらわしたものであり、数字の大きい程ほぐれがよいことを示す。
【図2】冷やし中華(つゆあり)のほぐれ評価を写真であらわしたものであり、数字の大きい程ほぐれがよいことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ヘミセルロース、乳化剤およびグアーガム分解物からなり、おのおのの質量比(無水換算)が、水溶性ヘミセルロース5〜25質量部:乳化剤0.5〜7質量部:グアーガム分解物8〜20質量部であることを特徴とする麺類用ほぐれ剤。
【請求項2】
請求項1記載の麺類用ほぐれ剤100質量部と水150〜350質量部を混合して得た乳化液または水溶液を、α化麺類100質量部に対し1〜5質量部の割合で、α化麺類の表面にほぼ均一に付着させることを特徴とする麺類のほぐれを改善する方法。

【図1】
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【図2】
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