麻酔薬スプレー組成物
局所麻酔薬および粘膜付着性ポリマーを含んでなる、咽喉の奥への適用に適した麻酔薬スプレー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、咽喉炎を一時的に和らげるために使用され得る、処方箋なしで購入可能な麻酔薬スプレー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
店頭販売(OTC)市場は、長年、咽喉炎を処置するためのスプレー製品を提供してきた。これらの製品のほとんどは、有効成分としてフェノールを使用している。フェノールは、ベンゼンの単純アルコール誘導体である。フェノールおよびベンゼンはいずれも、環境保護庁(EPA)によって、極めて有害な化合物と位置付けられている。
【0003】
WatkinsらによるUS 6,159,473に開示されているように、主な有効成分としてフェノールに代えてカバ(Piper methysticum)を含有する、代替の咽喉炎用スプレーが提供されている。複数の他のホメオパシー成分(主として植物抽出物)と組み合わせたエキネシア(Echinacea angustifolia)の添加は、カバの鎮痛効果とエキネシアの免疫効果および殺菌効果とを組み合わせると言われており、嗄声、副鼻腔鬱血、後鼻漏、および咽喉の粘膜の病気を含む咽喉炎の随伴症状および深刻な病状に対処する。
【0004】
咽喉炎用スプレーのための付加的有効成分は、21 CFR 356のOTC Oral Discomfort Monographに記載されている。それらの成分のうち、Dyclonine HClだけは市販品に広範に使用されている。そのような市販品の1つは、商標名Cepacol(登録商標)で販売されている。他の非店頭販売有効薬剤は、カバを含有し得る。
【0005】
常套の咽喉用スプレーは咽喉炎を一時的に和らげるが、スプレー組成物が、より長期間の効果を有し、咽喉の奥の所望の部位により正確に適用できなくてはならないといった要求が存在する。特に、現在のスプレー製品は、通常、大量投与され(約3ml)、15秒間口を漱ぐかまたはうがいをすることが意図されている。このタイプの適用法を、咽喉の奥まで達し得るスプレー組成物を供給することによって排除するという要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 6,159,473
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の不足を解決するために、本発明は、より制御して適用でき、より長期間効果を持続する改良スプレー組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、スプレー組成物は、局所麻酔薬およびキャリヤーを含んでなり、粘膜付着性ポリマーを含んでなる。特に局所麻酔薬が疎水性であるならば、キャリヤーは麻酔薬用溶媒、水および乳化剤を含有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図1B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図2A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図2B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図3A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図3B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図4A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図4B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図5A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図5B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図6A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図6B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図7A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図7B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図8A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図8B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図9A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図9B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図10A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図10B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図11】実施例4に従ったスプレーパターンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の麻酔薬スプレーは、主な有効成分として局所麻酔薬を含有する。好ましくは、この局所麻酔薬はベンゾカインである。しかしながら、他の局所麻酔薬を使用することもでき、その例は、リドカイン、塩酸リドカイン、テトラカイン、塩酸塩、ベンジルアルコール、塩酸ジクロニン、ヘキシルレゾルシノール、メントール、フェノール製剤(フェノールナトリウムおよびナトリウムフェノラート)、サリチルアルコール、カバなどである。有効成分の所望の組み合わせも使用できる。
【0011】
本発明の組成物は、粘膜付着性ポリマーも含有する。粘膜付着性ポリマーは、口腔にスプレーされるスプレー液滴の表面張力を高める。これによって、スプレーパターンは著しく変化し、より規則的になり制御される。特に、表面張力の増大は液滴寸法を大きくする(即ち、液滴はほとんど霧化されない)。従って、スプレーパターンはより狭くなり、スプレーされた物質は、口腔への拡散とは対照的に咽喉の奥まで達し得る。
【0012】
液滴レオロジーの変化に加えて、粘膜付着性ポリマーは、スプレーの長時間持続効果も改善する。特に粘膜付着性ポリマーは、その粘膜付着性の故に、より長い期間、咽喉の奥に麻酔薬を保持できる。
【0013】
本発明に従って使用され得る粘膜付着性ポリマーの例は、Gantrez(登録商標)、合成セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルプロピルメチルセルロースナトリウムなど)、天然ゴム(アルギン酸ナトリウム、カラヤ、カラギーナン、キサンタン、グアー、キトサンなど)、および合成ポリマーを包含するが、それらに限定されない。合成ポリマーの例は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(PVP/VA)、他のコポリマー、例えばBASFのKOLLIDON VA64、ポリエチレンオキシド、PLURONIC(登録商標)ポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどを包含する。好ましくは、麻酔薬組成物はPVPを含有する。
【0014】
粘膜付着性ポリマーは、少量でさえ、咽喉の奥までスプレーを適用する能力への有意な効果を有し得る。粘膜付着性ポリマー含有量が多すぎる場合、スプレーパターンは濃厚になりすぎ、所望の部位を覆うために多量の麻酔薬の適用を必要とし得る濃いスプレー流れをもたらす。過剰量の麻酔薬組成物は滴ることがあり、不快感を招くおそれがある。
【0015】
スプレー組成物は、好ましくは約0.01重量%〜約5重量%の粘膜付着性ポリマーを含有する。これらおよび他の目的のため、PVP含有量は、好ましくは約0.05重量%〜約0.5重量%、より好ましくは約0.08重量%〜約0.3重量%、更に好ましくは約0.09重量%〜約0.2重量%または約0.09重量%〜約0.11重量%である。所望の効果を発揮するのに十分なレオロジー変更および粘膜付着性を与えるために、十分な量のPVPを使用する。
【0016】
キャリヤーは、粘膜付着性ポリマーにとっての溶媒を包含する。そのような溶媒の1つはアルコールであり得る。アルコールは、スプレー組成物の約5重量%〜約45重量%を占め得る。アルコール含有量は、好ましくは約15重量%〜約35重量%である。エタノール、またはLyondell Chemical Companyから市販されている、認可された特別変性アルコール(例えばSD-38F)を使用できる。
【0017】
キャリヤーのもう1つの構成成分は水であり得る。水は、スプレー組成物の約15重量%〜約95重量%を占め得る。水の含有量は、好ましくは約23重量%〜約70重量%、より好ましくは約23重量%〜約29重量%である。好適には、水は脱イオン化されている。
【0018】
麻酔薬がベンゾカインのように疎水性であり、組成物中に水が存在するならば、別の可溶化剤および/または乳化剤を含有することが好ましい。使用される特定の乳化剤は、例えば化学的適合性、コストおよび要求される保存寿命安定性に基づいて選択される。
【0019】
スプレー組成物中の乳化剤/可溶化剤として、非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性乳化剤は、ベンゾカインのような疎水性麻酔薬が溶解しにくいアルカリ性環境を一般に提供するので、あまり好ましくない。カチオン性乳化剤は、望ましい酸性環境を典型的には提供するが、刺激性であることが一般に知られており、従って非イオン性界面活性剤ほど望ましくない。
【0020】
適当な非イオン性界面活性剤の数は多い。約200〜600の分子量を有するポリエチレングリコールと特にC12〜18脂肪酸とのエステル;ソルビトールとC12〜18脂肪酸とのエステル(例えばソルビタンステアレート)およびそれらエステルのポリエテノキシエーテル(例えばPolysorbate-60);アルカンおよびC12〜18リン酸アルキルのポリエテノキシエーテル(Coceth-6およびPEG-75-Lanolin)を最も頻繁に使用する。
【0021】
ポリオキシル40水素化ひまし油は、本発明での使用に好ましい乳化剤および可溶化剤である。この剤は、BASFからCremophor(登録商標)RH 40として市販されている。
【0022】
スプレー組成物に含有され得る他の成分は、ユーカリ(Eucalyptus globulus)、カバ、コモンタイム(Thymus vulgaris)、ヒカゲノカズラ(Lycopodium clavatum)、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca decandra)、トウガラシ(Capsicum annuum)、セイヨウハッカ(Mentha piperita)、およびリン(全て、純水からなる基剤中に存在)、甘味料および香味料を包含する。
【0023】
天然甘味料の例は、フルクトース、スクロース、米飴、グルコース、ステビア、グリセリン、ハチミツ、大麦モルトなどを包含するが、それらに限定されない。他の甘味料は、ネオテーム、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、スクラロースなどを包含する。他のタイプの香味料は、天然香味料および人工香味料のいずれも包含し、例えば、スペアミント、チェリー、ヒメコウジ、タイム、フェンネル、アニスなどを包含するが、それらに限定されない。
【実施例1】
【0024】
表1に示したような咽喉用スプレー組成物を調製した。
【表1】
【0025】
ベンゾカイン、アルコール、PEG−40水素化ひまし油、香味料およびPVPを、均質な混合物(アルコール相)が生成するまで混合する。水、グリセリンおよび甘味料を別の容器で、均質な混合物(水相)が生成するまで混合する。水相をアルコール相にゆっくりと添加する。必要に応じて、得られた組成物を冷却および/または濾過してよい。
【0026】
別の態様として、ベンゾカインをまずアルコールに溶解し、続いてPEG−40水素化ひまし油および香味料を溶解してもよい。透明になるまで混合物を混合する。甘味料およびPVPをゆっくりと添加し、完全に溶解するまで混合する。次いでグリセリンを添加し、均一になるまで混合する。水を添加し、組成物が透明になって未溶解粒子が無くなるまで混合する。
【実施例2】
【0027】
表2に示したような咽喉用スプレー組成物を調製した。
【表2】
この組成物の調製方法は、実施例1の調製方法と同様である。
【実施例3】
【0028】
複数の麻酔薬スプレー組成物を調製し、PVPの濃度がスプレーパターンおよび液滴レオロジーに与える影響を調べるために試験した。それらの組成を表3に示す。
【表3】
【0029】
表3に記載した順に成分を混合し、次の成分を添加する前に各成分を溶解または水和させることによって、組成物A〜Fを調製した。
MeadWestvaco Calmarから入手可能な2種のスプレーポンプオプションを用いて、2インチ離れたところから組成物AおよびC〜Fをスプレーした。スプレーポンプオプションは、2種の異なったインサートHV6およびHV9を備えたM300ポンプ、並びに2つの異なったスプレー量を有し同じインサートWS2を用いるMark VIIポンプであった。これらスプレー試験の分析結果を表4〜8に示す。HELOS Sympatech液滴寸法分析装置を用いて得た、これらの試験各々についての液滴寸法分布を図1〜10に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
表4〜8において、10%の列は、液量の10%が示した液滴寸法(ミクロン)以下の大きさであったことを示している。50%の列は、液量の半分がこの液滴寸法より大きく、液量の半分がこの液滴寸法以下であったことを示している。90%の列は、液量の90%が示した液滴寸法以下であったことを示している。ザウター平均径(SMD)は、体積の表面積に対する比がスプレー全体における体積の表面積に対する比と同じである液滴の直径を特定する「平均」直径である。体積平均径(VMD)または質量中央径(MMD)は、スプレー量の半分がVMDより大きい液滴を含み、残りの半分がより小さい液滴を含む、液滴の直径を示す。表4〜8の最後の列は、15.5ミクロン未満の液滴寸法を有する液体の割合を示す。
【0036】
表4〜8および図1〜10に示した結果から分かるように、異なったスプレーポンプおよびインサートは、液滴寸法およびレオロジーに軽度の影響しか与えなかったが、全てのケースにおいてスプレー液滴寸法およびスプレーパターンは、主として、適当な粘膜付着性ポリマー(例えばPVP)の濃度を変更することによって影響を受けた。これらの結果は、スプレー組成物中の粘膜付着性ポリマー(例えばPVP)の量を少しでも変更すると、液滴寸法およびスプレーパターンに著しい影響を与え得ることを示している。
【実施例4】
【0037】
スプレーパターンを視覚的に観察するために、表3に示した組成物A〜Dを、22/414 Nozzlerを備えたEmsar 37MS霧状ミストスプレーを用いて2インチ離れたところからシートにスプレーした。この試験結果を図11に示す。粘膜付着性ポリマー不含有組成物のスプレーパターンは不規則であった。組成物がPVPを含有すると、スプレー流れがより整うようになり、規則的なスプレーパターンがもたらされた。PVP濃度が0.3重量%に達すると、スプレー流れがより濃くなり、液体がより濃厚に付着した。図11のDに示されているように、適用後、スプレー組成物の一部は液だれした。
【0038】
本発明を詳細な説明と合わせて記載してきたが、先の記載は、本発明を説明するためのものであり、特許請求の範囲によって規定される以外は本発明の範囲を制限するものではないことが意図されている。他の態様、改良および修正は、特許請求の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、咽喉炎を一時的に和らげるために使用され得る、処方箋なしで購入可能な麻酔薬スプレー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
店頭販売(OTC)市場は、長年、咽喉炎を処置するためのスプレー製品を提供してきた。これらの製品のほとんどは、有効成分としてフェノールを使用している。フェノールは、ベンゼンの単純アルコール誘導体である。フェノールおよびベンゼンはいずれも、環境保護庁(EPA)によって、極めて有害な化合物と位置付けられている。
【0003】
WatkinsらによるUS 6,159,473に開示されているように、主な有効成分としてフェノールに代えてカバ(Piper methysticum)を含有する、代替の咽喉炎用スプレーが提供されている。複数の他のホメオパシー成分(主として植物抽出物)と組み合わせたエキネシア(Echinacea angustifolia)の添加は、カバの鎮痛効果とエキネシアの免疫効果および殺菌効果とを組み合わせると言われており、嗄声、副鼻腔鬱血、後鼻漏、および咽喉の粘膜の病気を含む咽喉炎の随伴症状および深刻な病状に対処する。
【0004】
咽喉炎用スプレーのための付加的有効成分は、21 CFR 356のOTC Oral Discomfort Monographに記載されている。それらの成分のうち、Dyclonine HClだけは市販品に広範に使用されている。そのような市販品の1つは、商標名Cepacol(登録商標)で販売されている。他の非店頭販売有効薬剤は、カバを含有し得る。
【0005】
常套の咽喉用スプレーは咽喉炎を一時的に和らげるが、スプレー組成物が、より長期間の効果を有し、咽喉の奥の所望の部位により正確に適用できなくてはならないといった要求が存在する。特に、現在のスプレー製品は、通常、大量投与され(約3ml)、15秒間口を漱ぐかまたはうがいをすることが意図されている。このタイプの適用法を、咽喉の奥まで達し得るスプレー組成物を供給することによって排除するという要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 6,159,473
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の不足を解決するために、本発明は、より制御して適用でき、より長期間効果を持続する改良スプレー組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、スプレー組成物は、局所麻酔薬およびキャリヤーを含んでなり、粘膜付着性ポリマーを含んでなる。特に局所麻酔薬が疎水性であるならば、キャリヤーは麻酔薬用溶媒、水および乳化剤を含有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図1B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図2A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図2B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図3A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図3B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図4A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図4B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図5A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図5B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図6A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図6B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図7A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図7B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図8A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図8B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図9A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図9B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図10A】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図10B】実施例3に従って実施したスプレー試験の結果として得られた、液滴寸法および分布を示す。
【図11】実施例4に従ったスプレーパターンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の麻酔薬スプレーは、主な有効成分として局所麻酔薬を含有する。好ましくは、この局所麻酔薬はベンゾカインである。しかしながら、他の局所麻酔薬を使用することもでき、その例は、リドカイン、塩酸リドカイン、テトラカイン、塩酸塩、ベンジルアルコール、塩酸ジクロニン、ヘキシルレゾルシノール、メントール、フェノール製剤(フェノールナトリウムおよびナトリウムフェノラート)、サリチルアルコール、カバなどである。有効成分の所望の組み合わせも使用できる。
【0011】
本発明の組成物は、粘膜付着性ポリマーも含有する。粘膜付着性ポリマーは、口腔にスプレーされるスプレー液滴の表面張力を高める。これによって、スプレーパターンは著しく変化し、より規則的になり制御される。特に、表面張力の増大は液滴寸法を大きくする(即ち、液滴はほとんど霧化されない)。従って、スプレーパターンはより狭くなり、スプレーされた物質は、口腔への拡散とは対照的に咽喉の奥まで達し得る。
【0012】
液滴レオロジーの変化に加えて、粘膜付着性ポリマーは、スプレーの長時間持続効果も改善する。特に粘膜付着性ポリマーは、その粘膜付着性の故に、より長い期間、咽喉の奥に麻酔薬を保持できる。
【0013】
本発明に従って使用され得る粘膜付着性ポリマーの例は、Gantrez(登録商標)、合成セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルプロピルメチルセルロースナトリウムなど)、天然ゴム(アルギン酸ナトリウム、カラヤ、カラギーナン、キサンタン、グアー、キトサンなど)、および合成ポリマーを包含するが、それらに限定されない。合成ポリマーの例は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(PVP/VA)、他のコポリマー、例えばBASFのKOLLIDON VA64、ポリエチレンオキシド、PLURONIC(登録商標)ポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどを包含する。好ましくは、麻酔薬組成物はPVPを含有する。
【0014】
粘膜付着性ポリマーは、少量でさえ、咽喉の奥までスプレーを適用する能力への有意な効果を有し得る。粘膜付着性ポリマー含有量が多すぎる場合、スプレーパターンは濃厚になりすぎ、所望の部位を覆うために多量の麻酔薬の適用を必要とし得る濃いスプレー流れをもたらす。過剰量の麻酔薬組成物は滴ることがあり、不快感を招くおそれがある。
【0015】
スプレー組成物は、好ましくは約0.01重量%〜約5重量%の粘膜付着性ポリマーを含有する。これらおよび他の目的のため、PVP含有量は、好ましくは約0.05重量%〜約0.5重量%、より好ましくは約0.08重量%〜約0.3重量%、更に好ましくは約0.09重量%〜約0.2重量%または約0.09重量%〜約0.11重量%である。所望の効果を発揮するのに十分なレオロジー変更および粘膜付着性を与えるために、十分な量のPVPを使用する。
【0016】
キャリヤーは、粘膜付着性ポリマーにとっての溶媒を包含する。そのような溶媒の1つはアルコールであり得る。アルコールは、スプレー組成物の約5重量%〜約45重量%を占め得る。アルコール含有量は、好ましくは約15重量%〜約35重量%である。エタノール、またはLyondell Chemical Companyから市販されている、認可された特別変性アルコール(例えばSD-38F)を使用できる。
【0017】
キャリヤーのもう1つの構成成分は水であり得る。水は、スプレー組成物の約15重量%〜約95重量%を占め得る。水の含有量は、好ましくは約23重量%〜約70重量%、より好ましくは約23重量%〜約29重量%である。好適には、水は脱イオン化されている。
【0018】
麻酔薬がベンゾカインのように疎水性であり、組成物中に水が存在するならば、別の可溶化剤および/または乳化剤を含有することが好ましい。使用される特定の乳化剤は、例えば化学的適合性、コストおよび要求される保存寿命安定性に基づいて選択される。
【0019】
スプレー組成物中の乳化剤/可溶化剤として、非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性乳化剤は、ベンゾカインのような疎水性麻酔薬が溶解しにくいアルカリ性環境を一般に提供するので、あまり好ましくない。カチオン性乳化剤は、望ましい酸性環境を典型的には提供するが、刺激性であることが一般に知られており、従って非イオン性界面活性剤ほど望ましくない。
【0020】
適当な非イオン性界面活性剤の数は多い。約200〜600の分子量を有するポリエチレングリコールと特にC12〜18脂肪酸とのエステル;ソルビトールとC12〜18脂肪酸とのエステル(例えばソルビタンステアレート)およびそれらエステルのポリエテノキシエーテル(例えばPolysorbate-60);アルカンおよびC12〜18リン酸アルキルのポリエテノキシエーテル(Coceth-6およびPEG-75-Lanolin)を最も頻繁に使用する。
【0021】
ポリオキシル40水素化ひまし油は、本発明での使用に好ましい乳化剤および可溶化剤である。この剤は、BASFからCremophor(登録商標)RH 40として市販されている。
【0022】
スプレー組成物に含有され得る他の成分は、ユーカリ(Eucalyptus globulus)、カバ、コモンタイム(Thymus vulgaris)、ヒカゲノカズラ(Lycopodium clavatum)、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca decandra)、トウガラシ(Capsicum annuum)、セイヨウハッカ(Mentha piperita)、およびリン(全て、純水からなる基剤中に存在)、甘味料および香味料を包含する。
【0023】
天然甘味料の例は、フルクトース、スクロース、米飴、グルコース、ステビア、グリセリン、ハチミツ、大麦モルトなどを包含するが、それらに限定されない。他の甘味料は、ネオテーム、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、スクラロースなどを包含する。他のタイプの香味料は、天然香味料および人工香味料のいずれも包含し、例えば、スペアミント、チェリー、ヒメコウジ、タイム、フェンネル、アニスなどを包含するが、それらに限定されない。
【実施例1】
【0024】
表1に示したような咽喉用スプレー組成物を調製した。
【表1】
【0025】
ベンゾカイン、アルコール、PEG−40水素化ひまし油、香味料およびPVPを、均質な混合物(アルコール相)が生成するまで混合する。水、グリセリンおよび甘味料を別の容器で、均質な混合物(水相)が生成するまで混合する。水相をアルコール相にゆっくりと添加する。必要に応じて、得られた組成物を冷却および/または濾過してよい。
【0026】
別の態様として、ベンゾカインをまずアルコールに溶解し、続いてPEG−40水素化ひまし油および香味料を溶解してもよい。透明になるまで混合物を混合する。甘味料およびPVPをゆっくりと添加し、完全に溶解するまで混合する。次いでグリセリンを添加し、均一になるまで混合する。水を添加し、組成物が透明になって未溶解粒子が無くなるまで混合する。
【実施例2】
【0027】
表2に示したような咽喉用スプレー組成物を調製した。
【表2】
この組成物の調製方法は、実施例1の調製方法と同様である。
【実施例3】
【0028】
複数の麻酔薬スプレー組成物を調製し、PVPの濃度がスプレーパターンおよび液滴レオロジーに与える影響を調べるために試験した。それらの組成を表3に示す。
【表3】
【0029】
表3に記載した順に成分を混合し、次の成分を添加する前に各成分を溶解または水和させることによって、組成物A〜Fを調製した。
MeadWestvaco Calmarから入手可能な2種のスプレーポンプオプションを用いて、2インチ離れたところから組成物AおよびC〜Fをスプレーした。スプレーポンプオプションは、2種の異なったインサートHV6およびHV9を備えたM300ポンプ、並びに2つの異なったスプレー量を有し同じインサートWS2を用いるMark VIIポンプであった。これらスプレー試験の分析結果を表4〜8に示す。HELOS Sympatech液滴寸法分析装置を用いて得た、これらの試験各々についての液滴寸法分布を図1〜10に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
表4〜8において、10%の列は、液量の10%が示した液滴寸法(ミクロン)以下の大きさであったことを示している。50%の列は、液量の半分がこの液滴寸法より大きく、液量の半分がこの液滴寸法以下であったことを示している。90%の列は、液量の90%が示した液滴寸法以下であったことを示している。ザウター平均径(SMD)は、体積の表面積に対する比がスプレー全体における体積の表面積に対する比と同じである液滴の直径を特定する「平均」直径である。体積平均径(VMD)または質量中央径(MMD)は、スプレー量の半分がVMDより大きい液滴を含み、残りの半分がより小さい液滴を含む、液滴の直径を示す。表4〜8の最後の列は、15.5ミクロン未満の液滴寸法を有する液体の割合を示す。
【0036】
表4〜8および図1〜10に示した結果から分かるように、異なったスプレーポンプおよびインサートは、液滴寸法およびレオロジーに軽度の影響しか与えなかったが、全てのケースにおいてスプレー液滴寸法およびスプレーパターンは、主として、適当な粘膜付着性ポリマー(例えばPVP)の濃度を変更することによって影響を受けた。これらの結果は、スプレー組成物中の粘膜付着性ポリマー(例えばPVP)の量を少しでも変更すると、液滴寸法およびスプレーパターンに著しい影響を与え得ることを示している。
【実施例4】
【0037】
スプレーパターンを視覚的に観察するために、表3に示した組成物A〜Dを、22/414 Nozzlerを備えたEmsar 37MS霧状ミストスプレーを用いて2インチ離れたところからシートにスプレーした。この試験結果を図11に示す。粘膜付着性ポリマー不含有組成物のスプレーパターンは不規則であった。組成物がPVPを含有すると、スプレー流れがより整うようになり、規則的なスプレーパターンがもたらされた。PVP濃度が0.3重量%に達すると、スプレー流れがより濃くなり、液体がより濃厚に付着した。図11のDに示されているように、適用後、スプレー組成物の一部は液だれした。
【0038】
本発明を詳細な説明と合わせて記載してきたが、先の記載は、本発明を説明するためのものであり、特許請求の範囲によって規定される以外は本発明の範囲を制限するものではないことが意図されている。他の態様、改良および修正は、特許請求の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所麻酔薬、粘膜付着性ポリマーおよびキャリヤーを含んでなる、麻酔薬スプレー組成物。
【請求項2】
局所麻酔薬がベンゾカインである請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項3】
粘膜付着性ポリマーがポリビニルピロリドンである請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項4】
溶媒または可溶化剤を更に含んでなる請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項5】
水を更に含んでなる請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項6】
粘膜付着性ポリマーがスプレー組成物の約0.08重量%〜約0.3重量%を占める、請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の香味料および/または甘味料を更に含んでなる、請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項8】
ベンゾカイン、ポリビニルピロリドン、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ひまし油および水を含んでなる麻酔薬スプレー組成物。
【請求項1】
局所麻酔薬、粘膜付着性ポリマーおよびキャリヤーを含んでなる、麻酔薬スプレー組成物。
【請求項2】
局所麻酔薬がベンゾカインである請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項3】
粘膜付着性ポリマーがポリビニルピロリドンである請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項4】
溶媒または可溶化剤を更に含んでなる請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項5】
水を更に含んでなる請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項6】
粘膜付着性ポリマーがスプレー組成物の約0.08重量%〜約0.3重量%を占める、請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の香味料および/または甘味料を更に含んでなる、請求項1に記載のスプレー組成物。
【請求項8】
ベンゾカイン、ポリビニルピロリドン、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ひまし油および水を含んでなる麻酔薬スプレー組成物。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【公表番号】特表2010−520297(P2010−520297A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552809(P2009−552809)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/055478
【国際公開番号】WO2008/109427
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(504396911)コーム インターナショナル リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】COMBE INTERNATIONAL LTD.
【住所又は居所原語表記】1101 Westchester Avenue, White Plains, NY 10604−3597 U. S. A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/055478
【国際公開番号】WO2008/109427
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(504396911)コーム インターナショナル リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】COMBE INTERNATIONAL LTD.
【住所又は居所原語表記】1101 Westchester Avenue, White Plains, NY 10604−3597 U. S. A.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]