説明

黒ニンニク製造方法および黒ニンニク添加食品

【課題】 従来に増してニンニク独特の臭気が著しく解消された黒ニンニクの製造方法を提供すること。
【解決手段】 熟成の際に米ぬかを用いる。米ぬかには予め酵母菌と乳酸菌が添加され、ペースト状に形成した米ぬかペーストとして用いる。米ぬかペーストは各原料が混和されてペースト状に形成された後、加温処理または恒温処理される。米ぬかペーストと、サラシ袋に入れた生ニンニクを同一容器中に入れて、所定の温度および湿度条件にて、一定期間ニンニクを熟成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒ニンニク製造方法および黒ニンニク添加食品に係り、特に、ニンニク独特の香味をほとんど感じさせず、単独食品としても、添加用の食材としても幅広く利用することのできる黒ニンニク製造方法、および黒ニンニク添加食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の黒ニンニク製造方法としては、たとえば、後掲特許文献に挙げる技術がある。これは、生ニンニクを自己発酵させて醗酵黒ニンニクを製造する際の熟成温度および湿度条件について検討し、適した範囲を確認したというものである。
【0003】
【特許文献1】特開2006−149325号公報「醗酵黒ニンニク及びこれを用いるペースト状食品並びにこれらの製造方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献の開示技術を含む従来の黒ニンニク製造方法では、無臭化の程度は未だ充分に高いものとはいえない。また、臭気だけではなくニンニク独特の味も相当残るものであった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を除き、従来に増してニンニク独特の臭気が著しく解消された黒ニンニク、また、ニンニク独特の味についても相当程度解消された黒ニンニクの製造方法を提供することである。さらにかかる黒ニンニクを用いた食品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は上記課題について検討した結果、米ぬかを用いることにより上記課題が解決可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0007】
(1) ニンニクを発酵させてなる黒ニンニクを製造する方法であって、熟成の際に米ぬかを用いることを特徴とする、黒ニンニク製造方法。
(2) 前記米ぬかには酵母菌が添加されていることを特徴とする、(1)に記載の黒ニンニク製造方法。
(3) 前記米ぬかには乳酸菌が添加されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載の黒ニンニク製造方法。
(4) 前記米ぬかは水を用いてペースト状に形成した米ぬかペーストとして用いることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法。
【0008】
(5) 前記米ぬかペーストは、各原料が混和されてペースト状に形成された後、加温処理または恒温処理されることを特徴とする、(1)または(2)に記載の黒ニンニク製造方法。
(6) (4)または(5)に記載の米ぬかペーストを用い、ニンニクと米ぬかペーストを同一容器中に入れて、ニンニクを熟成させることを特徴とする、黒ニンニク製造方法。
(7) ニンニクは直接米ぬかペーストに漬けたり接触させるのではなく、少なくとも一層の被覆物または介在物を介した状態で同一容器中に入れられることを特徴とする、(6)に記載の黒ニンニク製造方法。
【0009】
(8) ニンニクは生ニンニクを用いることを特徴とする、(1)ないし(7)のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法。
(9) (1)ないし(8)のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法により製造された黒ニンニクを食用粉類に、またはその他の材料に添加して製造される、黒ニンニク添加食品。
(10) (1)ないし(8)のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法により製造された黒ニンニクを食用粉類に添加して製造される、黒ニンニク添加麺。
【発明の効果】
【0010】
本発明の黒ニンニクの製造方法および黒ニンニク添加食品は上述のように構成されるため、これによれば、従来に増してニンニク独特の臭気が著しく解消された黒ニンニクを得ることができる。また、ニンニク独特の味についても相当程度解消された黒ニンニクを得ることができる。もちろん、ニンニク独自の栄養・有効成分・機能性成分が損なわれることなしに、香味面での短所が大いに解消される。
【0011】
本発明製造方法による黒ニンニクはこの他、甘みが著しく増大する、製造条件によって食感を良好に制御できる、という特長もあり、単独の食品としても非常に優れたものであるが、これを食材として添加した食品もまた、ニンニク独自の栄養・有効成分・機能性成分が損なわれることなしに、香味面での短所が大いに解消されたものを得ることができ、食材としての応用範囲が広い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明が実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
<1>黒ニンニクの製造方法(その1 米ぬか天蓋法)
以下、材料および分量の例を記す。
生ニンニク 6kg(約80個)
米ぬか 2kg(1.5リットル瓶4本)
酵母菌 6g (ドライイースト)
乳酸菌 3cc
(市販の無糖ヨーグルト10gを精製水10ccに溶かし、遠心分離後上澄み水の3ccを用いる。)
お 70〜80℃ 3リットル
水 2リットル
【0014】
以下、製造手順を記す。
1.ステンレス製(230X330X85)のバットに米ぬか6kgを入れ、次に酵母菌を入れて良く混ぜる。
2.水2リットルに乳酸菌を入れ、バットに入れて良くかき混ぜる。
3.だま状となった米ぬかに、湯を加え、かき混ぜながら徐々に温度を上げていく(図1)。
4.ペースト状の米ぬか(米ぬかペースト)が41〜42℃になったら20〜30分間置く。
5.その後、米ぬかペーストを40℃にセットした恒温器に入れ30分〜40分間待つ。
【0015】
6.米ぬかペーストの恒温処理をしている間、用意してあるニンニク(図2)をサラシの袋に入れ、別のステンレス製(230X330X85)のバットにセットする(図3)。
7.恒温処理後、米ぬかを、ニンニクをセットしてあるサラシ袋の上に蓋をするように乗せる(図4)。
【0016】
8.サラシの袋の入り口が判るように一部を外に出しておいた状態で、恒温恒湿器に入れて熟成させる(図5)。なお、熟成条件の例は下記の通りである。
設定条件 温度 70℃ 湿度 80% 約2週間熟成させる。
9.熟成期間経過後、できあがった熟成黒ニンニクを、調理用クッキングシートの上に並べて、1日以上、扇風機等の送風により乾燥させる。
以上の過程を経ることにより、本発明に係る黒ニンニクを得ることができる(図6)。
【0017】
<2>黒ニンニクの製造方法(その2 米ぬか非接触法)
以下の方法によっても、本発明に係る黒ニンニクを得ることができる。材料および分量の例を記す。
生ニンニク 6kg(約80個)
米ぬか 2kg(1.5リットル瓶4本)
酵母菌 6g (ドライイースト)
乳酸菌 3cc
(市販の無糖ヨーグルト10gを精製水10ccに溶かし、遠心分離後上澄み水の3ccを用いる。)
湯 70〜80℃ 3リットル
水 2リットル
【0018】
以下、製造手順を記す。
1.ステンレス製(230X330X85)のバットに米ぬか6kgを入れ、次に酵母菌を入れ、良く混ぜる。
2.水2リットルに乳酸菌を入れ、バットに入れて良くかき混ぜる。
3.だま状の米ぬかに、湯を加えかき混ぜながら徐々に温度を上げていく。
4.ペースト状の米ぬか(米ぬかペースト)が41〜42℃になったら20〜30分間置く。
5.40℃にセットした恒温器に入れ30分〜40分間待つ。
【0019】
6.米ぬかペーストの恒温処理の間、用意してあるニンニクをサラシの袋に入れておく。
7.別のステンレス製(230X330X85)のバットに、恒温器より取り出した米ぬかを、底に3〜4cmぐらいの厚みで敷き詰める。
8.次に米ぬかの上に調理用クッキングシートを敷き、用意してあるニンニクのサラシの袋をセットする。
【0020】
9.軽く絞って湿ったタオル3枚を、サラシ袋の上から、サラシ袋が見えなくなるように敷き詰める。
10.サラシ袋の入り口が判るように一部を外に出した状態で恒温恒湿器に入れる。
設定条件 温度 70℃ 湿度 80% 約2週間熟成させる。
11.熟成期間経過後、できあがった熟成黒ニンニクを、調理用クッキングシートの上に並べて、1日以上、扇風機等の送風により乾燥させる。
【0021】
<3>黒ニンニクラーメンの麺の製造方法
以下、本発明に係る黒ニンニクを添加利用した食品加工の一例として、製麺、特にラーメンの麺の製造方法について説明する。材料および分量の例を記す。
a.小麦粉(中力粉)10kg (冷蔵庫で4℃冷却)
b.卵白粉 10g
c.食塩 170g (事前に水に溶かしておき冷水として冷蔵庫で4℃冷却)
d.かんすい 200cc (冷蔵庫で4℃冷却)業務用市販品 水溶液
e.冷水 3300cc (冷蔵庫で4℃冷却)
f.黒ニンニク 800g (冷蔵庫で4℃冷却)
黒ニンニクは、上述したいずれの製造方法によってもよい。
【0022】
季節による冷水分量の目安
作業温度 25℃±3 湿度 50%±5 での分量
冬場の乾燥時 e.冷水 3500cc使用(増量)
梅雨の多湿時 e.冷水 3000cc使用(減量)
【0023】
黒ニンニクラーメン製造手順
1.小型ミキサーに、冷却しておいた小麦粉(中力粉)10kgを入れる。
2.卵白粉10gを、一カ所に固まらないように振りかける。
3.小型ミキサーを作動させ、撹拌を進めながら食塩170gが入った冷水3300ccとかんすい200ccを、全体に混ざる様に少しずつ順次加えていき、小麦粉混捏物とする。
【0024】
4.上記撹拌処理中に、黒ニンニクを軽く潰し、ペースト状にしておく。
5.よく混じり合った状態となった小麦粉混捏物に、ペースト状の黒ニンニクを添加する。
6.黒ニンニクを添加した後、約20分〜25分間撹拌する。
7.撹拌が終わった後の混捏物を2〜3個のトレイに移す。
【0025】
8.パスタマシンのローラーに、混捏物を挟めて伸ばして帯状にしてロールを2本作る。
9.2本のロールを重ね合わせてローラーに挟めて伸ばしていき、ロールを2本作る。
10.この操作を合わせて4回ほど行い、混捏物を1.5mmの厚みにする。
11.そして、1.5mm厚の混捏物を2枚重ねてローラーを通し、厚みが2ミリの物を作る。
12.最後に、ローラーカッターを通しながら30cm間隔で切断を行い、1つの麺玉が約130グラム〜140グラムとなるよう計量確認しながら、10玉ずつビニール袋に入れトレーに並べる。
13.4〜7℃程度の冷蔵庫に2日間入れて熟成させ、製麺工程を終了する。
【0026】
官能評価
製造された黒ニンニク入りラーメンの麺を用いて、ラーメンを調理し、出願人社内にて官能評価を行った。ラーメンの調理においては、スープとしては、塩味スープと鳥白湯味スープの2種類を試験した。評価を実施した人数は10名である。
【0027】
その結果、「味わいがある」、「香ばしくておいしい」、「(塩味スープを用いて調理したものは)良い香りがしておいしい」、「鳥白湯味は特にこの麺に合う味で、おいしい」、「麺にコシがあり、ニンニクが含まれていても、まったく邪魔をしない味わいである」 との各自由意見による評価を得た。いずれの評価者も、ニンニクの独特の臭気や味を感じないか、ほとんど感じなかった。そしてまた、本発明に係る黒ニンニクの添加が麺の香味に悪影響するとの評価は全くなされず、むしろ良い香味を加えているとの評価が多くなされた。
【0028】
以上、ラーメンの麺を特に取り上げて、製麺への黒ニンニク添加利用の例を説明したが、本発明に係る黒ニンニクは製麺に限らず、菓子、パン、冷菓、飲料、その他幅広い食品、飲料に対して、ニンニク独特の香味を解消させかつ栄養・有効成分等は維持された食材として添加して、付加価値の高い食品等を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の黒ニンニクの製造方法および黒ニンニク添加食品によれば、従来に増してニンニク独特の臭気やニンニク独特の味が著しく解消された黒ニンニクを得ることができる。単独食品としても、また添加用の食材としても利用価値が極めて大きく、食品加工およびこれに関連する産業上の利用価値が極めて高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の黒ニンニクの製造方法実施例(その1 米ぬか天蓋法)中、米ぬかペーストの調製過程の一部を示す写真図である。
【図2】本発明の黒ニンニクの製造方法実施例(その1 米ぬか天蓋法)中、用いたニンニクを示す写真図である。
【図3】本発明の黒ニンニクの製造方法実施例(その1 米ぬか天蓋法)中、ニンニクをサラシの袋に入れ、ステンレス製のバットにセットした状態を示す写真図である。
【図4】本発明の黒ニンニクの製造方法実施例(その1 米ぬか天蓋法)中、恒温処理後の米ぬかをニンニクを入れたサラシ袋の上に蓋をするように乗せた状態を示す写真図である。
【図5】本発明の黒ニンニクの製造方法実施例(その1 米ぬか天蓋法)中、恒温恒湿器に入れて熟成させる準備が完了した状態を示す写真図である。
【図6】本発明の黒ニンニクの製造方法実施例(その1 米ぬか天蓋法)によって得られた黒ニンニクを示す写真図である。、
【図7】本発明の黒ニンニクラーメンの麺の製造方法実施例によって得られたラーメンの麺を示す写真図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンニクを発酵させてなる黒ニンニクを製造する方法であって、熟成の際に米ぬかを用いることを特徴とする、黒ニンニク製造方法。
【請求項2】
前記米ぬかには酵母菌が添加されていることを特徴とする、請求項1に記載の黒ニンニク製造方法。
【請求項3】
前記米ぬかには乳酸菌が添加されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の黒ニンニク製造方法。
【請求項4】
前記米ぬかは水を用いてペースト状に形成した米ぬかペーストとして用いることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法。
【請求項5】
前記米ぬかペーストは、各原料が混和されてペースト状に形成された後、加温処理または恒温処理されることを特徴とする、請求項1または2に記載の黒ニンニク製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の米ぬかペーストを用い、ニンニクと米ぬかペーストを同一容器中に入れて、ニンニクを熟成させることを特徴とする、黒ニンニク製造方法。
【請求項7】
ニンニクは直接米ぬかペーストに漬けたり接触させるのではなく、少なくとも一層の被覆物または介在物を介した状態で同一容器中に入れられることを特徴とする、請求項6に記載の黒ニンニク製造方法。
【請求項8】
ニンニクは生ニンニクを用いることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法により製造された黒ニンニクを食用粉類に、またはその他の材料に添加して製造される、黒ニンニク添加食品。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の黒ニンニク製造方法により製造された黒ニンニクを食用粉類に添加して製造される、黒ニンニク添加麺。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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