説明

黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮蔽膜並びに黒色遮蔽膜付基材

【課題】黒色度及び光遮蔽性に優れ、しかも、環境負荷が小さく、安価な黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮蔽膜並びに黒色遮蔽膜付基材を提供する。
【解決手段】本発明の黒色微粒子は、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子が混在した銅錫合金微粒子を含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮蔽膜並びに黒色遮蔽膜付基材に関し、特に、黒色度が高く、光遮蔽性に優れた黒色微粒子と黒色微粒子分散液、この黒色微粒子を含むことで情報記録媒体や表示装置に用いて好適な黒色遮蔽膜並びに黒色遮蔽膜付基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、黒色材料としては、カーボンブラック、低次酸化チタン、酸化鉄、クロム、銀微粒子等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
これらの黒色材料は、黒色芯、黒色インキ、黒色紙、黒色布、黒色光遮蔽性フイルム、黒色光遮蔽性ガラス、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)のブラックマトリックス材料、ブラックシール材、ブラックマスク材等に黒色や光遮蔽性を付与する材料として利用されている。
例えば、ブラックマトリックスの黒色材料としては、金、銀、白金、銅等の金属、あるいはこれらの合金を含む金属微粒子が用いられている。特に、銀微粒子を分散媒中に分散させた銀微粒子分散体は、希釈した場合の吸光度が非常に高いために、黒色度及び光遮蔽性に優れたものとなる。また、銀コロイドを用いた塗膜は、光遮蔽性に優れたものとなる(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
この黒色材料を実際に使用とする場合には、粉末として使用することは少なく、黒色材料を希望する溶媒、例えば環境負荷が小さい水、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、またはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、あるいはレジストとの混合を考慮して1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール類に分散させた分散体として利用されている。
黒色材料の分散体を得るには、ボールミルやビーズミル等の湿式混合粉砕機により、粉砕された微粒子の自重による重力沈降と該微粒子の体積から生じる浮力を釣り合わせることによる分散状態を形成する必要がある。この分散状態を形成するためには、黒色材料の表面と溶媒との間で大きな反発力を生じさせることのできる分散剤を添加する必要がある。
分散剤としては、高分子量のカルボン酸のナトリウム塩やアンモニウム塩、高分子量のシリコン系カップリング剤、このカップリング剤の側鎖の一部をアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基に変性させた高分子量の変性シリコン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤の群から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0004】
一方、金属微粒子を黒色化する場合、この金属微粒子の表面に黒色酸化物からなる被膜を形成する方法が採られているが、この方法では、黒色酸化物が金属微粒子から剥離し易く、耐久性のある黒色材料が得られなかった。そこで、金、白金族元素、またはこれらの合金、または前記いずれかの金属または合金に銀を添加した合金に、銅、ニッケル、鉄等の金属を添加し、酸化することにより、表面に密着性の良い黒色酸化物層を形成した黒色合金が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−127433号公報
【特許文献2】特開2004−240039号公報
【特許文献3】特開平10−8235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のカーボンブラック、低次酸化チタン、酸化鉄等は、黒色ではあるが光遮蔽性が不十分である。そこで、これらの黒色材料を含む膜を用いて光を遮蔽するためには、黒色材料を含む塗布液を厚く塗布して厚みのある膜を基材に形成する必要がある。
これらの黒色材料を白色基材上に黒色の線を描く記録材として用いた場合、光遮蔽性が弱いために下地の白色基材との境界線部分がぼやけてしまい、シャープな線を描くことができないという問題点があった。
これらの黒色材料を光遮蔽材料として用いた場合、光遮蔽性を高めるためには材料中の黒色材料の体積比を多くする必要があり、相対的にバインダーの含有量が減少することになる。したがって、これらの黒色材料を用いて黒色塗膜を作製した場合、塗膜の強度が低下し、信頼性を維持することができないという問題点があった。
【0006】
また、黒色材料に限らず、微粒子を分散媒中に分散させる際に基準となるのが一次粒子径であり、この一次粒子径が小さいほど、得られた微粒子分散液の物性は大きく異なる。
例えば、カーボンブラックを分散媒中に分散させる場合、カーボンブラックと分散媒との相溶性を確保することが難しく、したがって、用いることが可能な分散媒の種類が限られてしまうという問題点があった。
また、低次酸化チタンや酸化鉄を分散させた微粒子分散体は、低次酸化チタンや酸化鉄と分散媒との相溶性は確保し易いものの、低次酸化チタンや酸化鉄の一次粒子径の制御が難しく、所望の黒色度、特に高い黒色度を得ることが難しいという問題点があった。
【0007】
また、クロムを黒色材料として使用する場合、黒色度及び光遮蔽性には優れているものの、重金属である点、環境負荷が大きい点等のために使用すること自体が難しい。そこで、使用する場合には、スパッタリング法を用いた成膜方法等のような密閉系の成膜方法が一般的となるが、密閉系の成膜装置自体が複雑で高価なことから、製造コストが割高となり、適用可能な製品が制限されるという問題点があった。
また、銀微粒子を分散させた銀微粒子分散体は、黒色度及び光遮蔽性に優れていると考えられるものの、銀微粒子の比重が大きいために、分散体中に銀微粒子を均一に分散させることが困難であること、銀は貴金属であり高価であること、塗膜は乾燥後に反射膜化すること等の理由により、黒色材料としての汎用製品への用途展開は困難である。
さらに、銀コロイドを用いて黒色塗膜を形成する場合、光遮蔽性には優れているものの、成膜乾燥後に反射膜化するために、優れた黒色度を発現することができないという問題点があった。
さらに加えて、銀、金、白金等は貴金属であるから、非常に高価であり、汎用には不向きである。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、黒色度及び光遮蔽性に優れ、しかも、環境負荷が小さく、安価な黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮蔽膜並びに黒色遮蔽膜付基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、黒色度に優れ、かつ光遮蔽性に優れた材料について鋭意検討を行った結果、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下の銅錫合金微粒子を用い、さらに、この銅錫合金微粒子を、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在したものとすることで、黒色度が高く、光遮蔽性に優れ、しかも、銀、金、白金等の貴金属と比べて安価であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の黒色微粒子は、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した銅錫合金微粒子を含有してなることを特徴とする。
前記銅錫合金微粒子は、複数種の銅錫合金相からなることが好ましい。
【0011】
本発明の黒色微粒子分散液は、本発明の黒色微粒子を含有してなることを特徴とする。
本発明の黒色遮蔽膜は、本発明の黒色微粒子を含有してなることを特徴とする。
本発明の黒色遮蔽膜付基材は、基材上に、本発明の黒色遮蔽膜を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の黒色微粒子によれば、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した銅錫合金微粒子を含有したので、黒色度及び光遮蔽性に優れたものとすることができる。また、重金属を含まないので、環境負荷を小さくすることができる。また、貴金属を含まないので、安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮蔽膜並びに黒色遮蔽膜付基材を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
本実施形態の黒色微粒子は、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した銅錫合金微粒子を含有してなる黒色の微粒子である。
【0015】
この銅錫合金微粒子の合金相としては、CuSnで表される単相の銅錫合金相でもよいが、互いに異なる複数種の銅錫合金相からなることが好ましい。
CuSnで表される合金相としては、例えば、CuSn、CuSn、CuSn、Cu6.26Sn、Cu10Sn、Cu40.5Sn11、Cu41Sn11、Cu81Sn22等があり、これらの合金相のうち2種以上の合金相を選択したものが好適である。
この複数種の銅錫合金相の組み合わせとしては、例えば、Cu41Sn11−Cu6.26Sn、Cu40.5Sn11−Cu6.26Sn、Cu41Sn11−CuSn、Cu41Sn11−CuSn、Cu10Sn−CuSn等が挙げられる。
【0016】
この銅錫合金微粒子の平均粒子径は、1nm以上かつ200nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上かつ100nm以下、さらに好ましくは20nm以上かつ50nm以下である。
ここで、平均粒子径を1nm以上かつ200nm以下と限定した理由は、平均粒子径を上記の範囲内とすることで所望の薄膜を容易に形成することができるからである。ここで、平均粒子径が1nm未満では、可視光線に対応した波長と比較して小さ過ぎるために透過光量が増加し、所望の黒色度が得られない。一般に、1nm未満の平均粒子径の微粒子を作製することは困難である。
一方、平均粒子径が200nmを越えると、薄膜にて所望の黒色度を得ることが困難になる。
【0017】
この銅錫合金微粒子の形状としては、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した状態が好ましい。
このように、互いに異なる2種類以上の微粒子形状を混在させることにより、この銅錫合金微粒子を用いて形成された塗膜に入射する光は、塗膜中にて乱反射をより多く繰り返すことになり、塗膜全体の黒色度及び光遮蔽性を高くすることができる。
【0018】
なお、微粒子の形状が一種類の場合には、塗膜中の微粒子の分散状態が理想的なものとなるので、所望の厚みの塗膜を容易に得ることができるが、この塗膜を乾燥した後の表面状態は平坦性に優れたものとなるため、反射率が大きくなる。したがって、所望の黒色度を有する黒色膜が得難くなる。
【0019】
この黒色微粒子の合成法としては、気相反応法、噴霧熱分解法、アトマイズ法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法等、通常の微粒子合成法を用いて作製することができる。この黒色微粒子は、形状が互いに異なる2種類以上の銅錫合金微粒子を混在させるために、液相反応法を用いて作製することが望ましい。
【0020】
液相反応法が望ましい理由は、不均一反応により2種類以上の合金単一相が生成し、これらの合金単一相の形状がそれぞれ異なるために、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した銅錫合金微粒子が容易に得られるからである。
この液相反応法においては、反応条件、キレート剤や還元剤等の組み合わせ等により生成する銅錫合金微粒子の形状が多岐に亘ることから、キレート剤の選定、錫イオン及び銅イオンを還元する際の還元剤の選定、混合溶液のpH、濃度、温度等を制御することにより、互いに異なる2種類以上の微粒子形状を混在させた銅錫合金微粒子を合成することができる。
【0021】
キレート剤としては、ギ酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、アンモニア、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、あるいはこれらの塩類の群から選択された1種または2種類以上を用いる。
【0022】
また、上記の混合溶液に含まれる錫イオン及び銅イオンを効果的に還元して銅錫合金微粒子を生成する還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、硫酸鉄、次亜リン酸ナトリウム、硫化水素、ヨウ化カリウム、二酸化硫黄、過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム、塩化第一スズ、ホルムアルデヒド、グルコース、ヒドラジン、ロンガリット、ジボラン、シュウ酸、アスコルビン酸、の群から選択された1種または2種類以上を用いる。
【0023】
このようにして得られた銅錫合金微粒子は、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した状態になっている。
また、銅錫合金微粒子は、互いに異なる複数種の銅錫合金相、例えば、CuSn、CuSn、CuSn、Cu6.26Sn、Cu10Sn、Cu40.5Sn11、Cu41Sn11、Cu81Sn22の合金相のうち2種以上の合金相により構成されている。この銅錫合金相は、粉末X線回折法により同定することができる。
【0024】
この銅錫合金微粒子は、液相中での反応にて合成が完結するため、微粒子を回収する必要等なく、容易に黒色微粒子分散液とすることが可能である。
また、この銅錫合金微粒子を用いて黒色遮蔽膜を作製する場合、感光性樹脂との分散性を考慮して、水分散系から有機溶媒分散系に変更してもよい。
有機溶媒分散系に変更する場合、液相から回収したケーキ状の銅錫合金微粒子凝集物を一旦機械的に粉砕して粉末とし、その後、ボールミル、ビーズミル等の湿式混合機を用いて有機溶媒中にて分散処理する方法が採られる。
有機溶媒としては、感光性樹脂との混合を考慮すると、グリコール類である1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
【0025】
本実施形態の黒色微粒子分散液は、本実施形態の黒色微粒子を分散媒中に分散させた分散液である。
黒色微粒子の含有率は、1重量%以上かつ80重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上かつ50重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上かつ25重量%以下である。
ここで、黒色微粒子の含有率を1重量%以上かつ80重量%以下と限定した理由は、この範囲が黒色微粒子が良好な分散状態を取りうる範囲であり、含有率が1重量%未満であると、黒色微粒子としての効果が低下し、また、80重量%を超えると、黒色微粒子の濃度が高くなり過ぎてペースト状態となり、分散液としての特徴を消失するからである。
【0026】
分散媒は、基本的には、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち少なくとも1種以上を含有したものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
上記の液状の樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等が好適に用いられる。
また、上記の液状の樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。
【0028】
この黒色微粒子分散液と、感光性樹脂等とを適宜混合し、各種塗布法にて塗膜を形成することにより、容易に黒色遮蔽膜を得ることができる。
この黒色遮蔽膜は、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した銅錫合金微粒子を含有したものであるから、黒色度及び光遮蔽性に優れている。また、重金属を含まないので、環境負荷が小さい。
この黒色遮蔽膜を、ガラス基板等の基材上に形成することにより、容易に黒色遮蔽膜付基材を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例1、2及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
錫コロイド(平均粒子径:30nm、固形分10重量%、住友大阪セメント(株)製)200gを純水2000gと混合し、混合溶液Aを作製した。
また、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)50g及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)70gを純水3000gと混合してアルカリ溶解させ、混合溶液Bを作製した。
次いで、この混合溶液Bを混合溶液Aに送液攪拌し、次いで、希硝酸を添加して中和反応を行い、実施例1の銅錫合金微粒子黒色分散液Aを作製した。
【0031】
次いで、遠心分離法により銅錫合金微粒子黒色分散液Aから銅錫合金微粒子を分離し、粉末X線回折法により銅錫合金微粒子の生成合金相を同定した。結果を表1に示す。
また、透過型電子顕微鏡(TEM)により銅錫合金微粒子の形状を観察し、銅錫合金微粒子20個の粒子径を測定した。この透過型電子顕微鏡(TEM)像を図1に、結果を表1に、それぞれ示す。
【0032】
次いで、
銅錫合金微粒子黒色分散液A 50重量部
純水 75重量部
シリコン系表面修飾剤 2.0重量部
メタノール 20重量部
となるように秤量・混合し、実施例1の黒色遮蔽膜形成用塗布液Aを作製した。
【0033】
この黒色遮蔽膜形成用塗布液Aを用いて、10cm×10cm×2mmの大きさのガラス基板の表面に、スピンコート法により塗膜を形成し、次いで、乾燥器を用いて120℃にて1時間、乾燥させ、実施例1の黒色遮蔽膜を作製した。ここでは、0.5μm、1.0μm、1.5μmの3種類の膜厚の黒色遮蔽膜を作製した。
【0034】
次いで、この黒色遮蔽膜の光遮蔽性を評価した。
まず、反射透過濃度計(マクベス濃度計)を用いて、3種類の膜厚の黒色遮蔽膜各々の黒色度をOD値として測定した。
次いで、上記の黒色遮蔽膜各々の膜厚を、膜厚計 TENCOR P−10(ケーエルエー・テンコール株式会社製)を用いて測定した。
次いで、図中に各膜厚に対する各OD値をプロットし、これらプロットした各点を基に近似曲線を引き、図中の近似曲線の膜厚1μmに対応するOD値を読み取り、この値を光遮蔽性の尺度とした。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例2)
錫コロイド(平均粒子径:30nm、固形分10重量%、住友大阪セメント(株)製)200gを純水2000gと混合し、混合溶液Aを作製した。
また、塩化第一銅(CuCl)20g、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)70g及び濃アンモニア水(NHを28%含有)200gを純水2000gと混合してアルカリ溶解させ、混合溶液Cを作製した。
次いで、この混合溶液Cを混合溶液Aに送液攪拌し、次いで、希硝酸を添加して中和反応を行い、実施例2の銅錫合金微粒子黒色分散液Bを作製した。
【0036】
次いで、実施例1と同様にして、銅錫合金微粒子の生成合金相の同定、銅錫合金微粒子の形状、粒子径の測定を行った。この透過型電子顕微鏡(TEM)像を図2に、結果を表1に、それぞれ示す。
次いで、実施例1と同様にして、実施例2の黒色遮蔽膜を作製し、光遮蔽性を評価した。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例)
カーボンブラック MA−7(三菱化学(株)社製)10g、及びカーボンブラックと相溶性の高い高分子エステル系分散剤5gを純水100gと混合し、次いで、分散機にて物理解砕し、比較例の黒色微粒子分散液を作製した。
【0038】
次いで、実施例1と同様にして、黒色微粒子の同定、形状、粒子径の測定を行った。結果を表1に示す。
次いで、実施例1と同様にして、比較例の黒色遮蔽膜を作製し、光遮蔽性を評価した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
粉末X線回折法よる生成合金相の同定の結果、実施例1、2の銅錫合金微粒子共に、Cu41Sn11−Cu6.26Snの2相の銅錫合金相からなることが確認された。
また、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察及び測定の結果、実施例1、2の銅錫合金微粒子共に、球状粒子、板状粒子、立方状粒子、棒状粒子が混在していることが確認された。また粒子径は1〜200nmの範囲であった。
【0041】
また、光遮蔽性については、実施例1では4.6と高く、実施例2では4.9とさらに高い。一方、汎用のカーボンブラックを用いた比較例1では3.3であった。
このように、実施例1、2では、光遮蔽性の基準となる比較例と比較して、光遮蔽性を改善する効果が高いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の黒色微粒子は、平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した銅錫合金微粒子を含有したことにより、黒色度が高く、光遮蔽性に優れ、しかも、銀、金、白金等の貴金属と比べて安価であるから、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)向けのブラックマトリックス材料、ブラックシール材、ブラックマスク材等はもちろんのこと、黒色光遮蔽性フイルム、黒色光遮蔽性ガラス、黒色紙、黒色布、黒色インキ等、黒色度または光遮蔽性、あるいは黒色度および光遮蔽性が求められるあらゆる物に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1の銅錫合金微粒子を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【図2】本発明の実施例2の銅錫合金微粒子を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1nm以上かつ200nm以下であり、かつ、球状微粒子、板状微粒子、立方状微粒子、棒状微粒子のうち2種類以上が混在した銅錫合金微粒子を含有してなることを特徴とする黒色微粒子。
【請求項2】
前記銅錫合金微粒子は、複数種の銅錫合金相からなることを特徴とする請求項1記載の黒色微粒子。
【請求項3】
請求項1または2記載の黒色微粒子を含有してなることを特徴とする黒色微粒子分散液。
【請求項4】
請求項1または2記載の黒色微粒子を含有してなることを特徴とする黒色遮蔽膜。
【請求項5】
基材上に、請求項4記載の黒色遮蔽膜を備えてなることを特徴とする黒色遮蔽膜付基材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−302838(P2007−302838A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134805(P2006−134805)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】