説明

黒色着色組成物、ブラックマトリックスの製造方法およびカラーフィルタ

【課題】波長330〜430nmのレーザを露光光源として露光する方式に適用される黒色着色組成物であって、顔料含有量が高い、あるいは膜厚が厚くとも、現像耐性・解像性に優れ、且つ高感度で残膜率が高い黒色着色組成物、また、この黒色着色組成物を用いたブラックマトリックスを有するカラーフィルタの製造方法、およこの方法により製造されたカラーフィルタを提供する。
【解決手段】黒色顔料、樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーおよび特定のオキシムエステル系光重合開始剤を含有し、かつ、レーザ光を照射することにより硬化可能である黒色着色組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置やカラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタの製造に使用される黒色着色組成物。この黒色着色組成物を用いたカラーフィルタの製造方法、およびこの方法により製造されたカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)を構成するカラーフィルタは、ガラス等の透明な基板の表面に2種以上の異なる色相の微細な帯(ストライプ)状のフィルタセグメントを平行または交差して配置したもの、あるいは微細なフィルタセグメントを縦横一定の配列で配置したものからなっている。フィルタセグメントは、数μm〜数100μmと微細であり、しかも赤色、緑色、青色など色相毎に所定の配列で整然と配置されている。
【0003】
また、コントラスト向上のため、カラーフィルタの各色のフィルタセグメント間にブラックマトリックスが配置されるのが一般的である。ブラックマトリックスは、近年、環境問題、低反射化、低コスト化の観点から、金属クロム製ブラックマトリックスに代わり、樹脂に遮光性の黒色顔料、例えばカーボンブラックなどを分散させた樹脂製ブラックマトリックスが着目されている。
【0004】
カラーフィルタはカラー液晶表示装置の視認性を左右する重要な部材の一つであり、視認性の向上、すなわち、鮮明な画像を得るためにはブラックマトリックスでは遮光性向上を達成する必要がある。ブラックマトリックスは、複数色の間に格子状に配設され、表示の際のコントラスト向上の役目を担う。
【0005】
カラーフィルタの色再現特性向上およびブラックマトリックスの遮光性向上のためには、感光性着色組成物中の色素の含有量を多くするか、あるいは、膜厚を厚くする必要がある。しかし、色素の含有量を多くする方法においては、感度低下、現像性、解像性が悪化する等の問題が発生する。膜厚を厚くする方法においては、膜底部まで露光光が届かず、パタ−ン形状が不良となる等の問題が発生する。
【0006】
このような問題を解決するため、感光性着色組成物では一般的に、(1)樹脂の反応性二重結合の付与、(2)光重合開始剤、増感剤の増量、(3)モノマーの選択あるいは増量等が行われる。例えば、特許文献1では、顔料を高濃度で含む場合でも優れた現像性を示す感放射線性組成物として、着色剤、アルカリ可溶性樹脂、多官能性単量体に、特定の構造を持つ化合物から選ばれた光ラジカル発生剤を含有した組成物が開示されている。また、特許文献2では、着色剤濃度を高くしても低露光量で着色パターンを与えうる着色感光性樹脂組成物として、光重合開始剤として、少なくとも1種のアセトフェノン系化合物および少なくとも1種のトリアジン系化合物を含有し、光重合開始助剤として少なくとも1種のアミン系化合物を含有する組成物が開示されている。
【0007】
一方、近年のカラーフィルタを使った製品の大型化に伴い、ブラックマトリックス形成のためのフォトマスクも大型化を余儀なくされ、製造コストの増大に繋がっている。一般に使用されるプロキシミティ露光法(紫外光源近接露光法)では、大型基板を処理するには基板サイズに合せた大サイズの高額なフォトマスクを必要とするが、レーザ露光法ではフォトマスクの小型化もしくはマスクレスが可能であり、コストの低減が期待できる。例えば、特許文献3には、露光光源に波長405nmの半導体レーザを用いる、硬化性組成物中に炭素数5以上のエチレン性不飽和基含有化合物を含有した高感度な硬化性組成物が開示されている。また、特許文献4には、露光光源に430nm未満の光源波長を有する
レーザ装置を用いる、430nm以上の分光感度を有さない開始剤を使用し、この開始剤と重合成化合物との質量比をある特定の数値範囲とした、高感度露光に適した硬化性組成物が開示されている。また、特許文献5には、開始剤種についてオキシムエステル化合物が、特許文献6には開始剤種についてオキシムエステル化合物及び該化合物が含まれる光重合開始剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−264530号公報
【特許文献2】特開2003−156842号公報
【特許文献3】特許第3912405号公報
【特許文献4】特開2007−114602号公報
【特許文献5】特開2008−179611号公報
【特許文献6】特許第4223071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、波長330〜430nmのレーザを露光光源として露光する方式に適用される黒色着色組成物であり、顔料含有量が高い、あるいは膜厚が厚くとも、現像耐性・解像性に優れ、且つ高感度で残膜率が高い黒色着色組成物、また、この黒色着色組成物を用いたブラックマトリックスを有するカラーフィルタの製造方法、およびこの方法により製造されたカラーフィルタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、本発明の請求項1に係る発明は、黒色顔料、樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーおよび下記式(1)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤を含有し、かつ、レーザ光を照射することにより硬化可能であることを特徴とする黒色着色組成物である。
【化1】

〔式(1)において、Rは、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又はCNを表し、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、−NCOR22−OCOR23、CN、ハロゲン原子、−CR21=CR2223又は−CO−CR21=CR2223で置換されていてもよく、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、Rは、R11又はOR11を表し、R11は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又を表し、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基の水素原子は、更にハロゲン原子で置換されていてもよく、Rは、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、上記R、R、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよく、上記置換基
のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、Rは、隣接するベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、CN又はハロゲン原子を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜3である。)
【0011】
次に、本発明の請求項2に係る発明は、基板上に請求項1に記載する黒色着色組成物を用いて着色塗膜を形成する工程と、前記着色塗膜のブラックマトリックスの形成予定領域に、光源波長330〜430nmのレーザを照射して硬化させる工程と、前記着色塗膜の未硬化部分を除去してブラックマトリックスを形成する工程とを具備することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載する方法により製造されたブラックマトリックスを具備することを特徴とするカラーフィルタである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の黒色着色組成物は、黒色顔料、樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーおよび特定のオキシムエステル系光重合開始剤を含有しているため、これを用いることで、レーザ露光方式において、感度、パターンの直線性、断面形状に優れたブラックマトリックスを形成することができる。
【0014】
また、本発明に係るオキシムエステル化合物は、活性の高いラジカルを生成するため、少ない露光量でパターンを形成させることができ、更に330〜430nmに吸収波長を有するため、各種紫外可視光源による反応効率が高い。そのため、本発明のカラーフィルタの製造方法によると、特定の波長のレーザを短時間照射することにより、黒色着色組成物を極短時間で硬化させることができるため、小さなフォトマスクを使用して、もしくはマスクを用いないで、形状の優れたフィルタセグメントを低コストで形成することができる。更に、本発明によると、高品質で、安価なカラーフィルタが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の黒色着色組成物について説明する。本発明の黒色着色組成物は、顔料、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーおよび光重合開始剤を含有し、かつ、330〜430nmのレーザ照射で硬化可能な黒色着色組成物である。
【0016】
[光重合開始剤]
本発明に係る光重合開始剤は、式(1)の化合物を含有する。
【化2】

式(1)で表される化合物を含む光重合開始剤を含有することによって、現像耐性に優れ、カラーフィルタの生産安定性に優れた黒色着色組成物が得られる。この光重合開始剤を含有する感光性着色組成物を用いることにより、高濃度で薄膜な、高品質なブラックマトリックスを形成することができる。
【0017】
式(1)で表される化合物は、オキシムエステル化合物である。このオキシムエステル系化合物は紫外線を吸収することによって、オキシムのN−O結合の解裂がおこり、イミニルラジカルとアルキロキシラジカルを生成する。これらのラジカルは更に分解することにより活性の高いラジカルを生成するため、少ない露光量でパターンを形成させることができる。更に、ニトロカルバゾール基を付加することにより330nm〜430nmに吸収波長を有する為、各種紫外可視光源による反応効率が高い。また、式(1)中のR部位が現像耐性を高めていると考えられる。
【0018】
本発明の黒色着色組成物には、式(1)で表される化合物と共に、他の光重合開始剤を
併用することができる。他の光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系化合物、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、O−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4’−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が用いられる。これら他の光重合開始剤は1種または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。これら他の光重合開始剤は、黒色着色組成物中の式(1)で表される化合物100質量部に対して、5〜25質量部、好ましくは10〜20質量部の量で用いることができる。
【0019】
[黒色顔料]
本発明の黒色着色組成物を用いてブラックマトリックスを形成する場合には、カーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料などの黒色顔料を用いることができる。具体的にはC.I.ピグメントブラック 1、6、7、12、20、31等を用いることができる。黒色着色組成物には、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料の混合物を用いることもできる。黒色顔料としては、価格、遮光性の大きさからカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックは、樹脂などで表面処理されていてもよい。また、色調を調整するため、黒色着色組成物には、青色顔料や紫色顔料を併用することができる。
【0020】
カーボンブラックとしては、ブラックマトリックスの形状の観点から、BET法(Brunauer−Emmett−Teller Method)による比表面積が50〜200m/gであるものが好ましい。比表面積が50m/g未満のカーボンブラックを用いる場合には、ブラックマトリックス形状の劣化を引き起こし、200m/gより大きいカーボンブラックを用いる場合には、カーボンブラックに分散助剤が過度に吸着してしまい、諸物性を発現させるためには多量の分散助剤を配合する必要が生じるためである

【0021】
また、カーボンブラックとしては、感度の点から、フタル酸ジブチルの吸油量が120cm/100g以下のものが好ましく、少なければ少ないものほどより好ましい。更に、カーボンブラックの平均1次粒子径は、20〜50nmであることが好ましい。平均1次粒子径が20nm未満のカーボンブラックは、高濃度に分散させることが困難であり、経時安定性の良好な感光性黒色組成物が得られ難く、50nmより大きいカーボンブラックを用いると、ブラックマトリックス形状の劣化を招くことがあるためである。
【0022】
[エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー]
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーは、330〜430nmのレーザ照射で硬化する成分である。エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0023】
またエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとて、カルボキシ基を含有する多官能(メタ)アクリレートを用いても良い。カルボキシ基を含有する多官能(メタ)アクリレートは、カルボキシ基を含有しない多官能アクリレートと比較して、フィルタセグメントの直線性や断面形状がより改善されさらに好ましい。カルボキシ基を含有する多官能(メタ)アクリレートとしては、3価以上の多価アルコールと(メタ)アクリレートおよび多価カルボン酸のエステル化物等が挙げられる。カルボキシ基を含有する多官能(メタ)アクリレートは、構造中にウレタン結合を有していても良い。カルボキシ基を含有する多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの二塩基酸無水物付加物を含有する商品名:TO−1382が挙げられる。
【0024】
[樹脂]
樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0025】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0026】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子を
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0027】
[溶剤]
本発明の黒色着色組成物には、顔料を充分に樹脂や光重合開始剤などの色素担体中に分散させ、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が0.2〜10μmとなるように塗布してフィルタセグメントやブラックマトリックスを形成することを容易にするために溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えば1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、N−メチルピロリドン、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
【0028】
次いで、本発明のブラックマトリックスの製造方法について説明する。本発明のブラックマトリックスの製造方法は、基板上に、感光性着色組成物を用いて黒色塗膜を形成する工程と、前記着色塗膜のブラックマトリックスとなる部分に、波長330〜430nmのレーザを照射して硬化させる工程と、前記黒色塗膜の未硬化部分を除去する工程と、焼成を施す工程を順次行うことによりブラックマトリックスを形成するものである。
【0029】
[黒色塗膜形成工程]
黒色塗膜形成工程では、スピンコート法やダイコート法によって、黒色着色組成物を塗布し、必要に応じて余分な溶剤を除去することにより、基板上に黒色塗膜を形成する。ブラックマトリックスの基板としては、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等、公知の透明基板材料を使用できる。特にガラス基板は、透明性、強度、耐熱性、耐候性において優れているために好ましい。また、塗工した黒色着色組成物の溶剤成分を除去するため必要に応じて、減圧乾燥処理やプリベーク処理を施すことができる。
【0030】
[露光・硬化工程]
露光・硬化工程では、前記黒色塗膜のブラックマトリックスとなる部分に、塗膜面側から330〜430nmのレーザを照射して硬化させる。露光光源としてはHeNeレーザ、アルゴンイオンレーザ、YAGレーザ、HeCdレーザ、半導体レーザ、ルビーレーザ等が挙げられる。
【0031】
レーザの波長は、固体(YAG)レーザでは343nm、355nmが特に用いられ、エキシマレーザでは、351nm(XeF)が特に用いられ、さらに半導体レーザでは405nmが特に用いられる。この中でも出力、安定性の点から405nmが特に好ましい。本発明では405nmの半導体レーザを用い、DMD(Dgital Micromirror Device)描画方式により描画を行う。レーザの出力は3〜20mWで、バンド幅は1〜20mmであり、より好ましくは出力が6〜9mW、バンド幅8〜12mmとなる。
【0032】
[黒色塗膜の未硬化部分を除去する工程]
未硬化部分の除去工程では、黒色塗膜の未硬化部分を除去してブラックマトリックスを形成する。未硬化部分の除去に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0033】
[硬化工程]
硬化工程では、形成したブラックマトリックスを200℃から250℃の熱処理を施すことによって、完全に硬化させ、十分な耐性が得られる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例及び比較例においては、透明基板として、無アルカリガラス“#1737”(コーニング社製)を用いた。
【0036】
また、以下の実施例及び比較例においては、露光光源に405nmの半導体レーザを用い、DMD描画方式により露光を行った。レーザの出力は6mW、バンド幅は9mmとし、平均照度は5500mW/cmであった(FieldMAX II PM30「COHIRENT社製」)。また、10μmライン幅のデータを露光エンジンを通して投影・照射し、露光量は走査速度を変化させることにより10〜200mJ/cmまで制御した。
【0037】
次に、実施例に用いた、本発明に係る前記した式(1)の光重合開始剤である、式(11)〜(1−19)の化合物の製造方法を下記に示す。
【0038】
<ステップ1 アシル体の製造>
窒素雰囲気下、塩化アルミニウム10.4g(78ミリモル)及び二塩化エタン33.0gを仕込み、氷冷下で酸クロリド36ミリモル、続いてニトロカルバゾール化合物30ミリモル及び二塩化エタン33.0gを徐々に滴下し、5℃で30分間撹拌した。反応液を氷水にあけ、油水分離を行った。脱溶媒して、目的物であるアシル体をそれぞれ得た。
【0039】
<ステップ2 式(1)の化合物(1−1)〜(1−19)の作製>
窒素気流下、前記ステップ1で得られたアシル体の20ミリモル、塩酸ヒドロキシルアミン2.1g(30ミリモル)、及びジメチルホルムアミド16.9gを仕込み、80℃で1時間撹拌した。室温に冷却して油水分離を行った。溶媒を留去して、残渣に酢酸ブチル25.4g、続いて無水酢酸2.45g(24ミリモル)を加えて90℃で1時間撹拌し、室温に冷却した。5%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、油水分離、脱溶媒、酢酸エチルからの再結晶を経て、目的物である光重合開始剤である式(1−1)〜(1−19)で表される化合物をそれぞれ得た。これら得られた化合物の構造式を下記に示す。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【0040】
<実施例1>
(黒色着色組成物の調製)
下記の材料を混合攪拌して黒色感光性樹脂組成物を得た。
(A)光重合開始剤“式(1−1)のオキシムエステル化合物”: 5.3質量部
(B)アクリル樹脂: 10.7質量部
(C)エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー: 4.4質量部
(D)黒色顔料分散液: 23.4質量部
(E)溶剤“プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート”: 56.2質量部
【0041】
(ブラックマトリックスの形成)
上記の黒色着色組成物を、10cm×10cmのガラス基板上にスピンコータで約1.4μmの厚さに塗工し自然乾燥させた。この塗膜を減圧乾燥し、90℃で1分間加熱して、余剰の溶剤を除去乾燥させた。その後、露光を行い、現像を行った。現像時間は、未露光部分の塗布膜が完全に溶解する時間の1.3倍の時間とした。その後、230℃にて1時間オーブンでブラックマトリックス・パターンの硬化を行った。
【0042】
<実施例2~実施例19>
表1に示すように、(A)光重合開始剤として、式(1−2)〜(1−19)で表される化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、黒色着色組成物の調整、ブラックマトリックスの形成を行い、それぞれ実施例2〜実施例19とした。
【表1】

【0043】
<比較例1>
光重合開始剤として下記のオキシムエステル化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、黒色着色組成物の調整、ブラックマトリックスの形成を行った。
(A)光重合開始剤“IRGACURE OXE 02” 「チバ・ジャパン社製」
【0044】
<比較例2>
光重合開始剤として下記のオキシムエステル化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、黒色感光性樹脂組成物の調整、ブラックマトリックスの形成を行った。
(A)光重合開始剤“IRGACURE OXE 01” 「チバ・ジャパン社製」
【0045】
[レジスト感度評価]
ブラックマトリックスのパタ−ンが光源の描画寸法通りに仕上がる露光量をもってレジストの感度とした。評価は、開口が30μmのマスクを用いて露光したときに、仕上がり線幅30μm以上となる最低露光量を適正露光量とした。評価のランクは以下の通りである。結果は表2に示す。
◎:20mJ/cm未満
○:20mJ/cm以上、50mJ/cm未満
△:50mJ/cm以上、100mJ/cm未満
×:100mJ/cm以上
【表2】

【0046】
<比較結果>
表2に示すとおり、実施例1〜19の本発明に係る式(1−1〜1−19)の光重合開始剤を用いた黒色着色組成物の場合に適正露光量が低くなり、非常に高い感度を示すことがわかった。また、表2に示すとおり、実施例1〜19、比較例1及び比較例2はいずれも、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いているが、実施例1〜19すなわち本発明に係る、式(1)である式(1−1〜1−19)で表される光重合開始剤を用いた黒色着色組成物が著しく優れた効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色顔料、樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーおよび下記式(1)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤を含有し、かつ、レーザ光を照射することにより硬化可能であることを特徴とする黒色着色組成物。
【化22】

〔式(1)において、Rは、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又はCNを表し、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、−NCOR22−OCOR23、CN、ハロゲン原子、−CR21=CR2223又は−CO−CR21=CR2223で置換されていてもよく、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、Rは、R11又はOR11を表し、R11は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又を表し、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基の水素原子は、更にハロゲン原子で置換されていてもよく、Rは、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、上記R、R、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよく、上記置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、Rは、隣接するベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、CN又はハロゲン原子を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜3である。)
【請求項2】
基板上に請求項1に記載する黒色着色組成物を用いて着色塗膜を形成する工程と、前記着色塗膜のブラックマトリックスの形成予定領域に、光源波長330〜430nmのレーザを照射して硬化させる工程と、前記着色塗膜の未硬化部分を除去してブラックマトリックスを形成する工程とを具備することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載する方法により製造されたブラックマトリックスを具備することを特徴とするカラーフィルタ。

【公開番号】特開2011−22384(P2011−22384A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167662(P2009−167662)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】