説明

(メタ)アクリル酸系単量体と不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の共重合体組成物およびその製造方法

【課題】分散能、キレート能および耐ゲル性に優れた低分子量の水溶性重合体である不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液において、不純物量が少なく低温保持時の不純物析出もなく、より一層の性能向上および保存安定化が図られてなる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物を提供する。
【解決手段】S=(ポリマーに含まれるS量)/(全S量)×100で定義される硫黄元素導入量S値が3以上であることを特徴とする不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系の分散剤、スケール防止剤、セメント添加剤あるいは洗剤ビルダーなどの用途として好適に用いられる(メタ)アクリル酸系単量体と不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の共重合体組成物およびその製造方法、並びにこれを用いてなる洗剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物などの不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸系単量体の共重合体は、液体洗剤用ビルダーとして有用であることが知られており、このような共重合体を得る方法としては、特開2002−60785号公報(特許文献1)などに開示されている方法が知られている。
【0003】
上記の公報に開示されている方法では、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体のいずれかと不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を必須に含む単量体成分を共重合する際に、過硫酸塩あるいは過酸化水素を開始剤として用いて重合している。この方法を用いれば、分子量数万までの共重合体を再現性良く得ることができる。
【0004】
この方法により得られる重合体は、液体洗剤との相溶性や分散能に優れており、洗剤ビルダー、特に液体洗剤用ビルダーに好適に用いることができるものとなっている。
【0005】
また、上述したような不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を含有する重合体ではないが、低分子量の(メタ)アクリル酸系重合体を高濃度で製造する技術として、特開平11−315115号(特許文献2),特願2002−180455号に記載されている方法を挙げることができる。
【0006】
上記に記載されている方法では、(メタ)アクリル酸系単量体を必須に含む単量体成分を重合する際に、過硫酸塩、重亜硫酸塩を開始剤として用いて、40重量%以上の高濃度で重合している。この方法を用いれば、分子量数万までの低分子量重合体を再現性良く得ることができる。
【0007】
この方法により得られる重合体は分子量分布が狭く、着色が少ない。しかも、この重合体の直鎖の末端または側鎖には、定量的に硫黄酸素酸が導入されている。それゆえ、上記重合体は、分散能や耐ゲル化性に優れており、無機顔料の分散剤、洗剤ビルダー、洗浄剤、スケール防止剤に好適に用いることができるものとなっている。
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、(メタ)アクリル酸単量体と不飽和ポリアルキレングリコール系単量体との共重合体の場合において、重合濃度を20質量%程度まで下げなければ、重合体の分子量が増大してしまい、場合によってはゲル化してしまうという問題が生じうる。 また、上記特許文献2または特願2002−180455号に記載されている技術は、低分子量の重合体を高濃度で製造することが可能であるものの、主に(メタ)アクリル酸系単量体を用いて重合体を製造する技術であるため、得られる重合体は、液体洗剤への相溶性が不十分である。
このように、従来の技術においては、色相が良く、液体洗剤への相溶性,分散能,耐ゲル化性に優れた低分子量の重合体を、高濃度で効率よく製造することにおいてさらなる改善の余地がある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−60785号公報
【特許文献2】特開平11−315115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体は、液体洗剤との相溶性や分散能に優れるものの、色相が悪く、さらに生産性が悪いという欠点を有していた。したがって、本発明が解決しようとする課題は、液体洗剤との相溶性や分散能に優れ、色相が良い、液体洗剤用ビルダーあるいはセメント添加剤、そして、その液体洗剤用ビルダーを含んでなる洗剤組成物を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする課題は、液体洗剤との相溶性や分散能に優れ、色相が良い、不飽和ポリアルキレングリコール系重合体組成物の製造方法において、高濃度で生産性良く重合できる、不飽和ポリアルキレングリコール系重合体組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討した。その結果、40質量%以上の高濃度で、末端に硫黄酸素酸を導入するとともに、酸性条件下でポリアルキレンオキサイドの繰り返し単位が6以上300以下、あるいはアリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加させてなる不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を含む単量体組成物を重合することにより、色相が良く、液体洗剤への相溶性を有し、分散能やキレート能,耐ゲル化性に優れた低分子量重合体と、この重合体水溶液を効率的に製造する方法とを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の目的は、下記(1)〜(10)の(メタ)アクリル酸系単量体と不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の共重合体組成物およびその製造方法、並びに該組成物を用いてなる用途である洗剤ビルダーおよび洗剤組成物,セメント添加剤により達成されるものである。
【0011】
(1)(メタ)アクリル酸系単量体Aとポリアルキレンオキサイドの繰り返し単位が6以上300以下である不飽和ポリアルキレングリコール系単量体Bおよび単量体A、Bに共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体Cを共重合した重合体であって、末端に硫黄酸素酸を持ち、S=(ポリマーに含まれるS量)/(全S量)×100で定義される硫黄元素導入量S値が3以上であることを特徴とする重合体組成物。
(2)単量体Bがアリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加させてなる不飽和ポリアルキレングリコールである請求項1記載の重合体組成物。
(3)(メタ)アクリル酸系単量体Aとアリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加させてなる不飽和ポリアルキレングリコール系単量体Dおよび単量体A、Dに共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体Cを共重合した重合体であって、末端に硫黄酸素酸を持ち、S=(ポリマーに含まれるS量)/(全S量)×100で定義される硫黄元素導入量S値が3以上であることを特徴とする重合体組成物。
40質量%水溶液の色相(b値)が2以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の重合体組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体組成物の製造方法であって、開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩をそれぞれ1種類以上組み合わせて用いることを特徴とする製造方法。
(6)過硫酸塩/重亜硫酸塩が重量比で0.1〜10で、その2つの合計が単量体1molあたり1〜30gの範囲で(メタ)アクリル酸系単量体と(1)又は(2)に記載の単量体B、あるいは(3)に記載の単量体Dを必須に含む単量体成分を共重合した重合体組成物の製造方法。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体組成物を含有してなる洗剤用ビルダー。
(8)(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体組成物を含有してなる液体洗剤用ビルダー。
(9)(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体組成物を含有してなる洗剤組成物。
(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体組成物を含有してなるセメント添加剤
【発明の効果】
【0012】
本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、高いキレート能および分散能に加え、従来の重合体以上に良好な耐ゲル性を示すことができる。とりわけ、上記に規定する硫黄元素導入量S値を満足することにより、こうした高性能な不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物において、不純物量を格段に低減でき、性能低下や低温保持時の不純物析出などの問題もなく、高品質で保存安定性に優れた重合体組成物とすることができる。 本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の製造方法では、従来よりも高濃度の条件下で、低分子量の重合体を効率よく製造することができるという効果を奏する。さらに低温での重合を長持間にわたって行うことで排出亜硫酸ガスを低減でき、さらに開始剤量を減らす(好ましくは重合中の中和度についても低くする)ことで不純物を低減でき、該不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の持つ性能を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。
本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、S=(ポリマーに含まれるS量)/(全S量)×100で定義される硫黄元素導入量S値が3以上であることを特徴とするものである。とりわけ、(メタ)アクリル酸系単量体Aとアルキレンオキサイドの繰り返し単位が6以上300以下である不飽和ポリアルキレングリコール系単量体B、またはアリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加させてなる不飽和ポリアルキレングリコール系単量体Dおよび単量体A、B、Dに共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体Cを含む単量体組成物を水溶液中で重合してなる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体であって、末端にスルホン酸基等の硫黄含有基を有する。
すなわち、分散能、キレート能に加えて、耐ゲル性にも優れた低分子量の水溶性重合体である。不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物において、硫黄元素導入量S値を3以上とするには、製造過程で重合温度と中和度を所定の範囲でコントロールすれば達成可能であることを見出し、これにより多量の亜硫酸ガスの発生を抑制し、さらに不純物の発生を抑制することができ、こうした製造過程を経て得られる硫黄元素導入量S値が3以上の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、不純物が極めて少なく、該不純物に起因する性能低下を格段に低く抑えることができ、また水溶液形態での低温保存時の不純物の析出も格段に低く抑えることができ、従来の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液に比べて無色透明で色調も良好であるなど、より一層の性能向上を図ることができるものである。
【0014】
ここで、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の硫黄元素導入量S値は、3以上、好ましくは3〜50、より好ましくは3〜30の範囲であるのが望ましい。該硫黄元素導入量S値が3未満の場合は、重合に用いた開始剤量が必要以上ということであり、それにより不純物の生成や亜硫酸ガスの発生を過剰に招き、さらにそれによる性能低下や低温保存時における不純物の析出を招く恐れがある。一方、硫黄元素導入量S値の上限については、特に制限されるべきものではない。
【0015】
なお、上記硫黄元素導入量S値の定義に用いた「ポリマーに含まれるS量」とは、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体に含まれるS量をいう。詳しくは、実施例で説明する透析法により、重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の固形分濃度を調整してなる水溶液から不純物や開始剤断片などの低分子量成分を取り除いた後の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体からなる高分子成分中に含まれるS量をいう。言い換えれば、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の末端や側鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基として導入されているS量ともいえるものである。したがって、硫黄元素導入量S値が大きいほど、使用した開始剤などに含まれるS成分のより多くが重合反応により好適に不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体に導入されているものといえる。また、上記硫黄元素導入量S値の定義に用いた「全S量」とは、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液に含まれる全てのS量をいう。詳しくは、実施例で規定する透析法を行う前の、重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物であって、不純物や開始剤断片などの低分子量成分が含まれている不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物に含まれるS量をいう。なお、ここで、全S量として、重合に用いる原料組成物中のS量を用いなかったのは、亜硫酸ガスとして系外に排出されてしまったS量(硫黄分)については、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液中に存在しないため、低温保存時にS含有不純物として析出するおそれがないため、こうしたS量を含む原料組成物を基準としなかったものである。
【0016】
なお、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物とは、重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液そのものであってもよいし、さらに固形分濃度を調整するために水などの水性の溶媒を適量添加ないし除去してなるものであってもよいし、該水性の溶媒を除去し乾燥して固形物としたものであってもよいし、さらに重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液から、適当に不純物を除去し精製してなる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物であってもよいし、さらに固形分濃度を調整するために水性の溶媒を添加ないし除去してなるものであってもよいし、さらに乾燥して固形物とした不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体であってもよいし、さらに必要に応じて、重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の性能に影響を与えない範囲で、適当な添加剤、例えば、保存安定剤(紫外線吸収剤や抗酸化剤など)、着色剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、難燃化剤、発泡剤などを加えてなるものであってもよいなど、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含むものであればよく、その形態や成分組成などに関しては特に制限されるべきものではない。
したがって、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物には、精製されてなる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体だけの場合も当該組成物に含まれるものとする。このように、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、上記硫黄元素導入量S値を満足するものであればよく、その名称に拘泥されることなく最も広義に解釈されるべきものであり、単に不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物だけに狭く解釈(制限)されるべきものではない。すなわち、製造工程の簡素化の観点からは、重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液をそのまま、分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダーなどとして利用するのが望ましい。また、輸送コスト低減の観点からは、水溶液のようにかさばる形態ではなく、固形物として輸送し、分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダーなどとして配合する際に、必要に応じて水溶液化してもよい。また、製品の品質安定化、保存安定性の観点からは、重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液から不純物を取り除いた形で製品化してもよいなど、使用用途に応じて適宜最適な形態や成分組成にすればよいといえる。
【0017】
すなわち、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液では、重合により得られた重合体組成物につき、所定の測定方法(実施例で説明する)によって分析して得られた硫黄元素導入量S値が3以上のものであればよいのであり、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の形態や組成成分を制限するものではない。
また、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の色相(b値)は、2以下。好ましくは1.5以下であるのが望ましく、黄〜褐色を帯びた従来技術の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物に比べて無色透明性に優れるものである。そのため、洗剤のようにほぼ白色である製品では、一般消費者(利用者)が品定めする上で、洗剤の色調までも考慮に入れられることはよくあることであり、洗剤自体に黄色を帯びているようなものよりも無色透明性に優れるものが商品力が高いものとなっていることから、無色透明性に優れることは極めて有利である。
【0018】
次に、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、上記硫黄元素導入量S値をも満足した上で、後述する実施例で説明するCa捕捉能が200以上の場合には後述する実施例で説明するゲル化度qが0.1以下であることが望ましい。また、Ca捕捉能が200未満の場合にはQ=(Ca捕捉能)2/ゲル化度q/105が30以上であることが望ましい。これは、従来では、耐ゲル性を有する重合体は、低分子量の重合体の中でも特に分子量が小さいものであった。すなわち、良好な耐ゲル性を得るためには低分子量である重合体の分子量をさらに小さくすることが必要であった。しかしながら、分子量が小さすぎる重合体では、重合体末端や側鎖に対して定量的に、具体的には上記に規定する硫黄原子導入量S値を満足するようにスルホン酸基等の硫黄含有基を導入することが難しく、そのため分散能やスケール防止能を十分に発現することができず、分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダーなどの用途には好適に用いることができなかった。
【0019】
これに対して、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、重合体末端や主鎖に対して定量的に、具体的には上記に規定する硫黄原子導入量S値を満足するようにスルホン酸基等の硫黄含有基が導入されており、かつ上記Q値を満足し得るものである。そのため、当該不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、低分子量の重合体組成物ではあるが、従来の耐ゲル性を有する重合体に比べて分子量が比較的大きくなっているにも関わらず、良好な耐ゲル性を示すことができる。すなわち、上記S値に加えて、耐ゲル能Q値が上記範囲内であれば、水系の分散剤、スケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどの用途に用いる際に、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物のゲル化が抑えられ、非常に良好な耐ゲル性、さらにはCa捕捉能を発現することができるものである。そのため、かかる水系の分散剤、スケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどの用途に好適に利用することができる。すなわち、使用環境下において、さらには他の成分と混合(配合)後の保存環境下において、ゲル化を抑えることができるため、製品のより一層の性能向上および品質安定化を図ることができる。
ここで、Ca捕捉能が200以上の場合、ゲル化度q値は、0.1未満、好ましくは0.095未満であることが望ましい。また、Ca捕捉能が200未満の場合、耐ゲル能Q値は、30以上、好ましくは35以上、より好ましくは40以上であることが望ましい。該q値が0.1以上の場合、あるいは該Q値が、30以下の場合には、耐ゲル能が十分でないために、その使用用途が制限される場合がある。なお、該q値の下限あるいは該Q値の上限に関しては特に制限されるべきものではない。
【0020】
上記「ゲル化度q」としては、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物のゲル化の度合を測定する従来公知の方法を好適に用いることができる。例えば、緩衝液中に、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の低濃度水溶液(例えば、固形分濃度が1質量%)と塩化カルシウム水溶液とを加えて混合することにより試験液を調製し、この試験液を、所定の温度および所定の時間(例えば、90℃、1時間)で静置した後に、紫外線(UV)波長域で該試験液の吸光度を測定することによりゲル化度を測定することができる。ゲル化度qの測定方法のより具体的な方法、あるいはCa捕捉能については、後述する実施例で説明する。
【0021】
次に、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の重量平均分子量Mwは、2000〜100000、好ましくは3000〜50000、より好ましくは4000〜20000である。重量平均分子量がこの範囲内であれば、上記不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、分散能、キレート能および耐ゲル性といった各種性能をより顕著かつ効果的に発揮することができるものである。そのため、分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダーなどの用途に、より一層好適に用いることができる。不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の重量平均分子量が2000未満の場合には、十分な分散能およびキレート能が得られない場合があり、使用用途が制限される場合もある。一方、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の重量平均分子量が100000を超える場合には、高分子量化するため良好な水溶性や耐ゲル性を発現しにくくなる。
【0022】
なお、本発明では、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の重量平均分子量につき規定したが、重合後の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液を適当な方法で精製して得た不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の重量平均分子量についても、重合後の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液と殆ど差異は生じないことから、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体またはその水溶液のいずれか一方の重量平均分子量を測定すれば足りるものである。言い換えれば、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の重量平均分子量も、2000〜100000、好ましくは3000〜50000、より好ましくは4000〜20000であればよいといえる。
なお、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体またはその水溶液の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定方法については、後述する実施例にて説明する。
【0023】
また、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の分散度(Mw/Mn)は、Mwにもよるが、(1)Mwが9000未満のときには、1.5〜2.9、好ましくは1.8〜2.7、より好ましくは2.0〜2.5である。この場合に、分散度が1.5未満の場合には合成が繁雑となる。一方、分散度が2.9を超える場合には、性能上有効な成分が減少するので性能の低下をまねく恐れがあるほか、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の分散能が十分でない場合があり、使用用途が制限される場合がある。また、(2)Mwが9000〜20000のとき、分散度は1.5〜4.5、好ましくは2.0〜4.0、より好ましくは2.5〜3.5である。この場合に、分散度が1.5未満の場合には合成が繁雑となる。。一方、分散度が4.0を超える場合には、性能上有効な成分が減少するので性能の低下をまねく恐れがある。
【0024】
また、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物のCa捕捉能(キレート能の1種)は、Mwや不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成にもよるが、例えば、Mw5000〜10000で(メタ)アクリル酸系単量体が80質量%、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体が20質量%の組成のときには、160以上、好ましくは180以上、さらに好ましくは200以上である。Ca捕捉能が160未満の場合には、洗剤に配合したときに、十分な洗浄力が得られない恐れがある。特に本発明では、上記硫黄元素導入量S値、さらに好ましくはQ値の要件を具備し、不純物を低減してなる本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、先に本発明者らが提案した発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物よりも格段にCa捕捉能(キレート能)に優れるものとなっている(実施例の表9参照のこと)。そのため、例えば、衣類の汗汚れや泥汚れなど、Ca成分を含む汚れやCaを含む水道水に対して極めて高い分解洗浄力を発現させk ることができる点で有利である。
また、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の中和度の範囲は、特に制限されるべきものではなく、利用目的に応じて適宜調整すればよく、1〜100%、好ましくは20〜99%、より好ましくは50〜95%の範囲である。
また、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、上記硫黄元素導入量S値の要件を具備し、さらに30〜99質量%の(メタ)アクリル酸系単量体と、1〜70質量%不飽和ポリアルキレングリコール系単量体、0〜60質量%の上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体とを含む単量体組成物(ただし、(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体および上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体の質量%の合計は100とする。)を水溶液中で重合してなる重合体であって、末端や主鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基を有する不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液であることが望ましい。かかる要件を満足する不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、重合体末端や側鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基を有していることから、低分子量の重合体とはいえ、従来の耐ゲル性を有する重合体に比べて分子量が比較的大きくなっているにも関わらず、上記従来の重合体以上の良好な耐ゲル性を示すことができる。さらに、不純物が少なく重合体組成物が潜在的(本来的)に持ち得る分散能、キレート能および耐ゲル性などの高い性能を低下させることなく最大限に引き出させることができる優れた低分子量の水溶性重合体とすることができ、分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダーなどの用途に好適に用いることができる。なお、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、必ずしも30〜99質量%の(メタ)アクリル酸系単量体と、1〜70質量%不飽和ポリアルキレングリコール系単量体、0〜60質量%の上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体とを含む単量体組成物(ただし、(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体および上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体の質量%の合計は100とする。)を水溶液中で重合してなる重合体であって、末端や主鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基を有する要件を外れるものであっても、上記硫黄元素導入量S値の要件を満足することができるものであれば、本発明の作用効果を奏することができるものである。例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、そのコポリマーなど、後述する単量体Cに例示される単量体とのコポリマーなどの不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液についても、本発明の上記硫黄元素導入量S値の要件を満足するものであれば、本発明に含まれるものである。
【0025】
なお、分散剤やスケール防止剤などに用いられる既存の低分子量の重合体では、重量平均分子量が1000以上であると、該水溶性重合体の分子量が小さいほど、すなわち重量平均分子量が1000に近づくほど耐ゲル性は高い性能を示すことになる。一方、キレート能は、該水溶性重合体の重量平均分子量が大きいほど高い性能を示すことになる。それゆえ、従来の水溶性重合体では、分散能、キレート能、および耐ゲル性の三つの性能を全て良好に向上させることが困難であった。
【0026】
これに対して、上記30〜99質量%の(メタ)アクリル酸系単量体と、1〜70質量%不飽和ポリアルキレングリコール系単量体、0〜60質量%の上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体とを含む単量体組成物(ただし、(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体および上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体の質量%の合計は100とする。)を水溶液中で重合してなる重合体であって、末端や主鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基を有する不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を含む水溶液であって、かつ上記硫黄元素導入量S値の要件を具備する不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、重合体の末端や側鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基が導入されているため、重量平均分子量が比較的大きくても上記分散能および耐ゲル性は良好なものとなる。特に、重量平均分子量の大きさを考慮した上で上記耐ゲル性は、相対的に非常に良好な性能を示すことになる。それゆえ、かかる要件を満足する不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、従来と同程度の重量平均分子量を有する不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体と同じキレート能を示すことに加え、高い分散能および非常に優れた耐ゲル性を示すものとなっている。
【0027】
以上のように、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、末端や主鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基を有しているとともに、高い耐ゲル性を有しているものが望ましい。かかる末端スルホン酸基等の硫黄含有基により分散能やキレート能を向上させることができるとともに、さらに高い耐ゲル性を発現させることができるためである。そのため、該不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液では、無機顔料の分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダーなどに好適に利用することができる。
【0028】
なお、上記30〜99質量%の(メタ)アクリル酸系単量体と、1〜70質量%不飽和ポリアルキレングリコール系単量体、0〜60質量%の上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体とを含む単量体組成物(ただし、(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体および上記単量体に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体の質量%の合計は100とする。)を水溶液中で重合してなる重合体であって、末端や側鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基を有するとの要件に関しては、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の製造方法の説明と合わせて、以下に説明する。
【0029】
次に、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の製造方法は、開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩をそれぞれ1種類以上組み合わせて用いるに際し、過硫酸塩を質量比で1とした場合に、重亜硫酸塩を質量比で0.1〜10の範囲内となるように用いると共に、重合反応系に添加される過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計量が単量体組成物1mol当たり1〜30g当量の範囲内であり、かつ重合温度が25〜99℃の範囲内であることを特徴とするものである。
【0030】
これにより、開始剤として過硫酸塩だけでなく、重亜硫酸塩を上記の範囲内で加えることで、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体が必要以上に高分子量化することが抑制され、低分子量の重合体を効率よく製造することができる。加えて、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体にスルホン酸基等の硫黄含有基を定量的に、具体的には、上記に規定する硫黄元素導入量S値の範囲になるように導入できるものである。しかも、スルホン酸基等の硫黄含有基を定量的に導入できるということは、過硫酸塩および重亜硫酸塩が開始剤として非常に良好に機能していることを示している。そのため、重合反応系に過剰な開始剤を添加する必要がなく、開始剤量をより一層低減できるため、重合体組成物の製造コストの上昇を抑制し、製造効率を向上させることができる。よって、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物では、カルシウムなどの金属塩で凝集が抑えられ、良好な耐ゲル性を有しているものとなっている。さらに、重合反応系への開始剤の添加量ならびに重合温度をある幅でコントロールすることにより、多量の亜硫酸ガスの発生を抑制することができ、さらに不純物の発生を低減することができ、より一層の性能向上が図られると共に、重合体組成物の製造コストの上昇を抑制し、製造効率を向上させることができるものである。
【0031】
本発明の製造方法に用いられる単量体組成物としては、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を重合することができる単量体成分からなるものであればよく、特に制限されるべきものではないが、少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体(以下、単量体Aともいう)と不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(以下、単量体Bともいう)を含有するものであればよいが、必要があればこれらA,Bに共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(以下、単量体Cともいう)が含まれていてもよい。ここでいう単量体組成物は、単量体成分で構成されるものであって、重合の際に用いる他の成分である溶媒や開始剤その他の添加剤は含まないものとする。
上記単量体A成分としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸をナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;アンモニアあるいはモノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩が挙げられる。これらは、1種単独であってもよいし、双方を併用してもよいが、好ましくは、アクリル酸単独もしくはアクリル酸とメタクリル酸とを所定比率で混合してなる混合物を用いるのが望ましい。
上記単量体組成物中の単量体Aの配合量は、単量体組成物全量に対して、30〜99質量%、好ましくは40〜99質量%、より好ましくは50〜99質量%の範囲である。該単量体Aの配合量が30質量%未満の場合には、キレート能と分散能をバランスよく発現させることができない。
【0032】
なお、単量体Aを後述する溶媒、好ましくは水に溶解して単量体Aの溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加してもよい。単量体A溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、10〜100質量%、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。ここで、単量体A溶液の濃度が10質量%未満の場合には、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑となる。一方、上限については特に制限されるべきものではなく、100質量%(すなわち、全量)単量体A(溶液)、すなわち、無溶媒であってもよいといえる。
【0033】
上記単量体B成分としては、具体的には、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、アリルアルコール等の不飽和アルコール1molに対して、炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを6〜300mol、好ましくは7〜200mol、さらに好ましくは8〜100mol、最も好ましくは9 ̄50mol付加した化合物を挙げることができる。また、不飽和アルコールはアリルアルコールが単量体A成分との共重合性が最も良いため、好ましい。
また、上記単量体Bにおいて炭素数2〜18のアルキレンオキサイドとしては、スチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を挙げることができるが、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを用いるのが好ましい。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合、その結合順序に制限はない。
エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加mol数が6mol以下の場合、アルキレンオキサイドが付加していない不飽和アルコールが多く存在することもあり、液体洗剤への相溶性に悪影響を与える恐れがあるため、好ましくない。また、300molを超えた場合、本発明の効果の向上は見られず、単に多量の添加量が必要となるだけとなり、好ましくない。
【0034】
また上記単量体D成分としては具体的にはアリルアルコール等の不飽和アルコール1molに対して、炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを付加した化合物を挙げることができる。
また、上記単量体Dにおいて炭素数2〜18のアルキレンオキサイドとしては、スチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を挙げることができるが、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを用いるのが好ましい。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合、その結合順序に制限はない。
【0035】
上記単量体組成物中の単量体BまたはDの配合量は、単量体組成物全量に対して、1〜70質量%、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%の範囲である。該単量体Bの配合量が1質量%未満の場合には、キレート能と分散能をバランスよく発現させることができない。
【0036】
なお、単量体BまたはDを後述する溶媒、好ましくは水に溶解して単量体BまたはDの溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加してもよい。単量体B溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、10〜100質量%、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。ここで、単量体B溶液の濃度が10質量%未満の場合には、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑となる。一方、上限については特に制限されるべきものではなく、100質量%(すなわち、全量)単量体BまたはD(溶液)、すなわち、無溶媒であってもよいといえる。
【0037】
本発明に係る新規な水溶性共重合体は、(メタ)アクリル酸系単量体A、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体BまたはDを必須に含む単量体成分を共重合して得られるものであるが、当該単量体成分中には単量体A,B、D以外に、必要に応じて、単量体A,B、Dと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体Cを含んでいてもよい。
上記モノエチレン性不飽和単量体Cとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン;スチレンスルホン酸;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;ブチル(メタ)アクリレート;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アリルアルコール;3−メチル−3−ブテン−1−オール;3−メチル−2−ブテン−1−オール;2−メチル−3−ブテン−2−オール;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンホスフェートおよびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のモノもしくはジエステル;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンサルフェートおよびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸およびその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、または、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオール;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールホスフェート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールサルフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオール;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールホスフェート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシエチレンエーテルヘキサン;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシプロピレンエーテルヘキサン;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸およびなどのスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体その1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、もしくは、有機アミン塩、または、これらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステルおよびそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、または、有機アミン塩; (メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸などのモノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸;上記モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸をアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;上記モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸をアンモニア、あるいはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸;上記モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸をアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;上記モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸をアンモニア、あるいはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩などを挙げることができるが特に限定されるものではない。
【0038】
次に、本発明の方法では、上記単量体組成物を水溶液中で重合することが望ましい。該水溶液には、溶媒、開始剤、その他の添加剤を含むものとする。
ここで、上記単量体組成物を水溶液中で重合する際に重合反応系に用いられる溶媒としては、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール類などの水性の溶媒であることが好ましく、特に好ましくは水である。これらは1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、上記単量体組成物の溶媒への溶解性を向上させるために、各単量体の重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えてもよい。
【0039】
上記有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノールなどの低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒドなどのアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;などから、1種類または2種類以上を適宜選択して用いることができる。
上記溶媒の使用量としては、単量体組成物全量に対して40〜200質量%、好ましくは45〜180質量%、より好ましくは50〜150質量%の範囲である。該溶媒の使用量が10質量%未満の場合には、分子量が高くなってしまう。一方、該溶媒の使用量が200質量%を超える場合には、製造された不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の濃度が低くなり、必要によっては溶媒除去が必要となる。なお、該溶媒の多くまたは全量は、重合初期に反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部については、単独で重合中に反応系内に適当に添加(滴下)するようにしてもよいし、あるいは単量体成分や開始剤成分やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応系内に適当に添加(滴下)するようにしてもよい。
【0040】
次に、上記単量体組成物を水溶液中で重合する際に重合反応系に用いられる開始剤としては、末端や側鎖にスルホン酸基を定量的に導入し、分散能やキレート能に加えて耐ゲル性にも優れた低分子量の水溶性重合体を得、本発明の作用効果を有効に発現し得る観点から、過硫酸塩および重亜硫酸塩をそれぞれ1種類以上組み合わせて用いるのが望ましい。過硫酸塩に加えて、重亜硫酸塩を開始剤系に加えることで、得られる重合体が必要以上に高分子量化することが抑制され、低分子量の重合体を効率よく製造することができるためである。
【0041】
上記過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムなどを挙げることができる。また、重亜硫酸塩としては、具体的には、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムおよび重亜硫酸アンモニウムなどを挙げることができる。さらに重亜硫酸塩の代わりに、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩等を用いてもよい。
【0042】
上記過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加比率は、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩は0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部の範囲内である。過硫酸塩1質量部に対して重亜硫酸塩が0.1質量部未満であると、重亜硫酸塩による効果が十分ではなくなる。そのため、重合体の末端に上記に規定する硫黄元素導入量S値を満足するだけのスルホン酸基を導入することができなくなるとともに不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の重量平均分子量も高くなる傾向にある。一方、過硫酸塩1質量部に対して重亜硫酸塩が10質量部を超えると、重亜硫酸塩による効果が添加比率に伴うほど得られない状態で、重合反応系において重亜硫酸塩が過剰に供給され(無駄に消費され)ることになる。すなわち、過剰な重亜硫酸塩は重合反応系で分解され、亜硫酸ガスを多量に発生するほか、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物中の不純物が多く生成し、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の性能低下や低温保持時の不純物析出を招くことになり得る。
【0043】
上記開始剤である過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加量は、単量体組成物1モルに対して、開始剤の過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計量が1〜30g、好ましくは3〜20g、より好ましくは5〜15gである。このように低い添加量の範囲で過硫酸塩および重亜硫酸塩を加えても、本発明では、重合温度を低く制限していることもあり、製造過程で亜硫酸ガスの発生や不純物の発生を格段に低減でき、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の末端や側鎖に上記に規定する硫黄元素導入量S値を満足するだけのスルホン酸基等の硫黄含有基を導入することができるほか、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の性能低下や低温保持時の不純物析出を防止することができるものである。上記開始剤の過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加量が1g未満の場合には、得られる重合体の分子量が上がってしまうほか、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の末端に上記に規定する硫黄元素導入量S値を満足するだけのスルホン酸基等の硫黄含有基を導入することができなくおそれがあり、該重合体組成物の重量平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が30gを超える場合には、開始剤の過硫酸塩および重亜硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、逆に、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の純度が低下するなどの悪影響を及ぼすことになる。
【0044】
なお、開始剤の1種である上記過硫酸塩を上記溶媒、好ましくは水に溶解して過硫酸塩の溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加してもよい。該過硫酸塩溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、1〜35質量%、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%である。ここで、過硫酸塩溶液の濃度が1質量%未満の場合には、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑となる。一方、過硫酸塩溶液の濃度が35質量%を超える場合には、過硫酸塩が析出するおそれがある。
また、開始剤の1種である重亜硫酸塩を上記溶媒、好ましくは水に溶解して重亜硫酸塩の溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加してもよい。該重亜硫酸塩溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、10〜40質量%、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは30〜40質量%である。ここで、重亜硫酸塩溶液の濃度が10質量%未満の場合には、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑となる。一方、重亜硫酸塩溶液の濃度が40質量%を超える場合には、重亜硫酸塩が析出するおそれがある。
【0045】
なお、本発明においては、さらに他の開始剤(連鎖移動剤を含む)を併用する実施態様を排除するものではなく、必要があれば、本発明の作用効果に悪影響を及ぼさない範囲で、適宜使用してもよい。さらに、本発明では、開始剤系として上記過硫酸塩および重亜硫酸塩の組み合わせが好適に用いられるが、この組み合わせに特に限定されるものではなく、上記に規定するS値を満足するようにスルホン酸基等の硫黄含有基を導入可能であり、低分子量の重合体を一段で重合できる開始剤系であれば使用可能である。
【0046】
他の開始剤(連鎖移動剤を含む)としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、及び過酸化水素が挙げられる。
【0047】
これらの開始剤についても、上記溶媒、好ましくは水に溶解して溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加してもよい。該溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、本発明の硬化を損なわない範囲であればよく、通常は、上記した過硫酸塩または重亜硫酸塩の溶液の濃度と同程度に基づき適宜決定すればよい。
【0048】
次に、上記単量体組成物を水溶液中で重合する際に重合反応系に用いることのできる開始剤以外の他の添加剤としては、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適当な添加剤を適量加えることができるものであり、例えば、重金属濃度調整剤、有機過酸化物、過酸化水素と金属塩などを用いることができる。
【0049】
上記重金属濃度調整剤としては、特に制限されるべきものではなく、多価金属化合物または単体が利用できる。具体的には、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2SO4・VSO4・6H2O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4)V(SO4)2・12H2O]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末、鉄粉末を挙げることができる。
【0050】
また、上記単量体組成物の重合に際して、重合温度は、通常25〜99℃、好ましくは50〜95℃、より好ましくは70〜90℃である。重合温度が25℃未満の場合には、分子量の上昇、不純物の増加のほか、重合時間か長くかかりすぎるため、生産性が低下する。一方、重合温度が99℃を超える場合には、開始剤の重亜硫酸塩が分解して亜硫酸ガスを多量に発生することになり、重合後に液相に溶解して不純物を形成したり、重合中に系外に排出され回収処理コストがかかるほか、開始剤の重亜硫酸塩が亜硫酸ガスとして抜けてしまうため、添加に見合うだけの十分な効果が得られなくなるため分子量が下がらなくなる。なお、ここでの重合温度とは、反応系内の反応溶液温度をいう。
【0051】
なお、重合温度は、重合中、常に略一定に保持する必要はなく、例えば、室温(25℃未満であってもよい。すなわち、上記重合温度範囲を一時的外れることがあっても本発明の範囲を外れるものではない。)から重合を開始し、適当な昇温時間(ないし昇温速度)で設定温度まで昇温し、その後、当該設定温度を保持するようにしてもよいし、あるいは単量体組成物や開始剤などの滴下成分ごとに滴下時間を変えるなど、滴下の仕方によっては、重合途中に上記温度範囲内で経時的に温度変動(昇温または降温)させてもよいなど、本発明の作用効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるべきものではない。
【0052】
特に、室温から重合を開始する方法(室温開始法)の場合には、例えば、300分処方であれば、120分以内に、好ましくは0〜90分間、より好ましくは0〜60分間で設定温度(上記に規定する重合温度の範囲内であればよいが、好ましくは70〜90℃、より好ましくは80〜90℃程度)に達するようにし、その後、重合終了までかかる設定温度を維持することが望ましい。昇温時間が上記範囲を外れる場合には、得られる(メタ)アクリル酸系重合体が高分子量化してしまうおそれがある。なお、重合時間が300分の例を示したが、重合時間の処方が異なる場合には当該例を参照に、重合時間に対する昇温時間の割合が同様になるように昇温時間を設定するのが望ましい。
【0053】
また、上記単量体組成物の重合に際して、反応系内の圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れの圧力下であってもよい。好ましくは、重合中、亜硫酸ガスの放出を防ぎ、低分子量化が可能であることから、常圧または、反応系内を密閉し、加圧下で行うのがよい。また、加圧装置や減圧装置を併設する必要がなく、また耐圧製の反応容器や配管を用いる必要がないなど製造コストの観点からは、常圧(大気圧)下で行うのがよい。すなわち、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液の使用目的によって、適宜最適な圧力条件を設定すればよいといえる。
【0054】
また、反応系内の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいが、不活性雰囲気とするのがよく、例えば、重合開始前に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが望ましい。これにより、(反応系内の雰囲気ガス(例えば、酸素ガスなど)が液相内に溶解し、重合禁止剤として作用し)、開始剤である過硫酸塩が失活することにより低減するのを防止することができることから、より低分子量化が可能となる点で有利である。
また、本発明の製造方法では、上記単量体組成物の重合反応は、酸性条件下で行うのが望ましい。酸性条件下で行うことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇を抑制し、低分子量の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体を良好に製造することができる。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる点で極めて有利である。特に、重合中の中和度を1〜25mol%と低くすることで、上記開始剤量低減による効果を相乗的に高めることができるものであり、不純物の低減効果を格段に向上させることができる点で望ましく、さらに重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6となるように調整するのが望ましい。このような酸性条件下で重合反応を行うことにより、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができる。それゆえ、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体水溶液の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。
【0055】
上記酸性条件のうち、重合中の反応溶液の25℃でのpHは1〜6、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4である。該pHが1未満の場合には、亜硫酸ガスの発生、装置の腐食が生じるおそれがある。一方、pHが6を超える場合には、重亜硫酸塩の効率が低下し、分子量が増大する。
【0056】
上記重合中の反応溶液のpHに調整するためのpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。本明細書では、これらのものを単に「pH調整剤」あるいは「中和剤」と言う場合がある。
【0057】
重合中の中和度は1〜25mol%であるが、好ましくは2〜15mol%、より好ましくは3〜10mol%の範囲内である。重合中の中和度が1mol%未満の場合には、亜硫酸ガスの発生量が多くなり、分子量が上昇する場合がある。一方、重合中の中和度が25mol%を超える場合には、重亜硫酸塩の連鎖移動効率が低下し、分子量が上昇する場合があるほか、重合が進行するに伴い重合反応系の水溶液の粘度の上昇が顕著となる。そのため、得られる重合体の分子量が必要以上に増大して低分子量の重合体が得られなくなる。さらに、上記中和度低減による効果を十分に発揮できず、不純物を大幅に低減するのが困難になる場合がある。
【0058】
ここでの中和の方法としては、中和剤として、例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのアルカリ性の単量体成分を利用してもよいし、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などを用いてもよいし、これらを併用してもよいなど、特に制限されるべきものではない。また、中和の際の中和剤の添加形態は、固体を用いてもよいし、適当な溶媒、好ましくは水に溶解した水溶液を用いてもよい。水溶液を用いる場合に、かかる水溶液の濃度としては、10〜60質量%、好ましくは20〜55質量%、より好ましくは30〜50質量%である。該水溶液の濃度が20質量%未満の場合には、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑となる。一方、60質量%を超える場合には、析出のおそれがあり、粘度も高くなるので送液が繁雑となる。
【0059】
重合に際しては、上記単量体組成物、開始剤系の過硫酸塩および重亜硫酸塩その他の添加剤は、通常、これらを予め適当な溶媒(好ましくは被滴下液用の溶媒と同種の溶媒)に溶解してなる単量体組成物溶液、過硫酸塩溶液および重亜硫酸塩溶液その他の添加剤溶液とし、それぞれを反応容器内に仕込んだ(水性の)溶媒(必要があれば所定の温度に調節したもの)に対して、所定の滴下時間に渡って連続的に滴下しながら重合を行うのが好ましい。さらに水性の溶媒の一部についても、反応系内の容器に予め仕込んでなる初期仕込みの溶媒とは別に、後から滴下するようにしてもよい。ただし、本発明の製造方法では、これらに制限されるべきものではなく、例えば、滴下方法などに関しては、連続的に滴下せずとも断続的に何度かに小分けして滴下してもよいし、単量体は、一部または全量を初期仕込みとすることができる(すなわち、重合開始時に一時に全量ないしその一部を滴下したものと見なすこともできる)し、滴下速度(滴下量)も滴下の開始から終了まで常に一定(一定量)として滴下してもよいし、あるいは重合温度等に応じて経時的に滴下速度(滴下量)を変化させてもよいし、また、すべての滴下成分を同じように滴下せずとも、滴下成分ごとに開始時や終了時をずらせたり、滴下時間を短縮させたり延長させてもよいなど、本発明の作用効果を損なわない範囲で適当に変更可能である。また、溶液の形態で各成分を滴下する場合には、反応系内の重合温度と同程度まで滴下溶液を加温しておいてもよい。こうすることで、重合温度を一定に保持するような場合に、温度変動が少なく温度調整が容易である。
【0060】
さらに、重亜硫酸塩ないしその溶液の滴下に関しては、重合初期の分子量が最終分子量に大きく影響するため、初期分子量を低下させるために、重合開始より60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは10分以内に重亜硫酸塩ないしその溶液を5〜20質量%添加(滴下)するのが望ましい。特に、後述するように、室温から重合を開始する場合には有効である。
【0061】
また、重合の際の総滴下時間は、重合温度を低くして亜硫酸ガスの発生を抑え、不純物の形成を防止することがより重要であるため、180〜600分、好ましくは210〜480分、より好ましくは240〜420分と長く必要である。しかしながら、製造過程で発生する上記問題や得られる重合体組成物の性能向上が図られることを勘案すれば極めて有意な対処法であるといえる。総滴下時間が180分未満の場合には、開始剤系として添加する過硫酸塩溶液および重亜硫酸塩溶液による効果が効率的になされにくくなる。そのため、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体に対して、末端や側鎖に硫黄元素導入量S値を満足するようにスルホン酸基等の硫黄含有基を導入することができにくくなるため、該重合体組成物の重量平均分子量が高くなる傾向にある。また、反応系内に短期間に滴下されることで過剰に開始剤が存在することが起こり得るため、こうした過剰な開始剤が分解して亜硫酸ガスが発生し、系外に放出されたり、不純物を形成することになる。一方、総滴下時間が600分を越える場合には、亜硫酸ガスの発生が抑えられるため得られる重合体組成物の性能は良好であるものの、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の生産性が低下することになるため、使用用途が制限される場合がある。ここでいう総滴下時間とは、最初の滴下成分(1成分とは限らない)の滴下開始時から最後の滴下成分(1成分とは限らない)を滴下完了するまでの時間をいうものとする。
【0062】
また、重合の際の滴下成分のうち、重亜硫酸塩ないしその溶液の滴下時間については、単量体ないしその溶液の滴下終了よりも1〜30分、好ましくは1〜20分、より好ましくは1〜15分滴下終了を早めることが望ましい。これにより、重合終了後の重亜硫酸塩量を低減できるため、該重亜硫酸塩による亜硫酸ガスの発生や不純物の形成を有効かつ効果的に抑制することができる。そのため重合終了後、気相部の亜硫酸ガスが液相に溶解してできる不純物を格段に低減することができるものである。これは、重合の終わりには重亜硫酸塩を含む開始剤が消費され残存していないことが望ましく、重合終了後に重亜硫酸塩が残存する場合には、不純物を生成し重合体組成物の性能低下や低温保持時の不純物析出等を招くことにつながるためである。
【0063】
ここで、重亜硫酸塩(溶液)の滴下時間が単量体(溶液)の滴下終了よりも1分未満しか滴下終了を早めることができない場合(これには重亜硫酸塩ないしその溶液の滴下終了と単量体(溶液)の滴下終了が同じ場合や、重亜硫酸塩(溶液)の滴下終了の方が単量体(溶液)の滴下終了よりも遅い場合も含まれるものとする)には、重合終了後に重亜硫酸塩が残存する場合があり、こうした場合には亜硫酸ガスの発生や不純物の形成を有効かつ効果的に抑制するのが困難となる場合があり、残存する開始剤が得られる重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす恐れもある。一方、重亜硫酸塩ないしその溶液の滴下時間が単量体(溶液)の滴下終了よりも30分を超えて滴下終了を早める場合には、重合終了までに重亜硫酸塩は消費されるものの、重亜硫酸塩が消費されてしまっているため、分子量の増大をまねく恐れがあるほか、重合中に重亜硫酸塩の滴下速度が単量体(溶液)の滴下速度に比して速く、短時間で多く滴下されるために、この滴下期間中に不純物や亜硫酸ガスが多く発生する恐れがある。
【0064】
また、重合の際の滴下成分のうち、過硫酸塩(溶液)の滴下時間については、単量体(溶液)の滴下終了よりも1〜30分、好ましくは1〜20分、より好ましくは1〜15分滴下終了を遅らせることが望ましい。これにより、重合終了後に残存する単量体成分量を低減できるなど、残存モノマーに起因する不純物を格段に低減することができる。
【0065】
ここで、過硫酸塩(溶液)の滴下時間が単量体(溶液)の滴下終了よりも1分未満しか滴下終了を遅らせることができない場合(これには過硫酸塩(溶液)の滴下終了と単量体(溶液)の滴下終了が同じ場合や、過硫酸塩(溶液)の滴下終了の方が単量体(溶液)の滴下終了よりも早い場合も含まれるものとする)には、重合終了後に単量体成分が残存する場合があり、不純物の形成を有効かつ効果的に抑制するのが困難となる。一方、過硫酸塩(溶液)の滴下時間が単量体(溶液)の滴下終了よりも30分を超えて滴下終了を遅らせる場合には、重合終了までに単量体成分は消費されるものの、その効果は小さくなり、重合終了後に過硫酸塩または、その分解物が残存し、不純物を形成する恐れがある。
【0066】
次に、上記各成分の滴下が終了し、重合反応系における重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度(すなわち単量体の重合固形分濃度)は、35質量%以上、好ましくは40〜70質量%、より好ましくは45〜65質量%であることが望ましい。このように重合反応終了時の固形分濃度が35質量%以上と高ければ、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができるなど、効率よく低分子量の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物を得ることができる。それゆえ、その製造効率を大幅に上昇させたものとすることができ、その結果、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の生産性を大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。
【0067】
ここで、上記固形成濃度が35質量%未満の場合には、濃縮工程を省略することが困難となるなど、(メタ)アクリル酸系重合体組成物の生産性を大幅に向上することができない場合がある。
【0068】
このように重合反応系において固形分濃度を高くすると、従来の方法では、重合反応の進行に伴う反応溶液の粘度の上昇が顕著となり、得られる重合体組成物の重量平均分子量も大幅に高くなるという問題点を生じていた。しかしながら、本発明では、重合反応は酸性側(25℃でのpHが1〜6であり、中和度が1〜25mol%の範囲)でなされているために、重合反応の進行に伴っても反応溶液の粘度の上昇を抑制することができる。そのため、重合反応を高濃度の条件下で行っても低分子量の重合体を得ることができるので、重合体組成物の製造効率を大幅に上昇させることができるものである.
ここで、重合反応が終了した時点(重合時間終了時点)とは、全ての滴下成分の滴下が終了した時点であってもよいが、好ましくはその後、所定の熟成時間を経過し(重合が完結し)た時点を言うものとする。
【0069】
上記熟成時間としては、通常1〜120分間、好ましくは5〜60分間、より好ましくは10〜30分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成不十分につき単量体成分が残ることがあるため、残存モノマーに起因する不純物を形成し性能低下などを招くおそれがある。一方、熟成時間が120分間を超える場合には、重合体溶液の着色の恐れがあるほか、既に重合が完結しており、更なる重合温度を印加することは不経済である。
【0070】
また、熟成中は、上記重合反応期間内であり、重合中に含まれるため、上記重合温度が適用される。したがって、ここでの温度も一定温度(好ましくは滴下終了時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。したがって、重合時間は、上記総滴下時間+熟成時間をいい、最初の滴定開始時点から熟成終了時点までに要した時間をいう。
【0071】
また、本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の製造方法では、上記酸性条件下(重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であり、重合中の中和度が1〜25mol%である)で重合を行うために、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の中和度(最終中和度)は、重合が終了した後に、必要に応じて、後処理として適当なアルカリ成分を適宜添加することによって所定の範囲に設定することができる。
【0072】
該最終中和度としては、例えば、素肌に優しいといわれている弱酸性洗剤などに、洗剤ビルダーとして利用するような場合には、酸性のまま中和せずに使用してもよいし、また、中性洗剤やアルカリ洗剤などに使用するような場合には、後処理としてアルカリ成分で中和して中和度90mol%以上に中和して使用してもよいなど、その使用用途によって異なるため特に制限されるべきものではなく、1〜100mol%の極めて広範囲に設定可能である。特に酸性の重合体組成物として使用する場合の最終中和度としては、好ましくは1〜75mol%、より好ましくは5〜70mol%である。中性ないしアルカリ性の重合体組成物として使用する場合の最終中和度としては、好ましくは75〜100mol%、より好ましくは85〜99mol%である。また、中性ないしアルカリ性の重合体組成物として使用する場合の最終中和度が99mol%を超える場合には重合体水溶液が着色する恐れがある。
【0073】
上記アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類で代表されるようなものが挙げられる。上記アルカリ成分は1種類のみを用いても良いし、2種類以上の混合物を用いても良い。
【0074】
なお、従来の完全中和方式や部分中和方式で得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物を脱塩処理することで、最終中和度を設定することは可能ではあるが、この場合、脱塩工程の追加により製造工程が煩雑化するとともに、製造コストも上昇することになるため、使用用途が制限される場合がある。
【0075】
また、上述したように酸性のまま中和せずに使用するような場合には、反応系内が酸性のため、反応系内の雰囲気中に毒性のある亜硫酸ガス(SO2ガス)が残存している場合がある。こうした場合には、過酸化水素などの過酸化物を入れてつぶす(分解する)か、あるいは空気や窒素ガスを導入(ブロー)して追い出しておくのが望ましい。
【0076】
また、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の製造方法は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0077】
以上、説明したように本発明に係る不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の製造方法は、開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩をそれぞれ1種類以上組み合わせて用いるに際し、過硫酸塩を質量比で1とした場合に、重亜硫酸塩を質量比で0.1〜10の範囲内となるように用いるとともに、重合反応系に添加される過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計量が単量体組成物1mol当たり1〜30g当量の範囲内であり、かつ重合温度が25〜99℃の範囲内であることを特徴とするものであるが、さらに酸性条件下(重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であり、重合中の中和度が1〜25mol%である)で、各滴下成分の滴下時間を調節しながら重合を行い、重合反応終了時の重合固形分濃度が35質量%以上であると共に、得られる重合体組成物の重量平均分子量が2000〜100000の範囲内になっていることが特に好ましい。すなわち、得られる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の重量平均分子量が上記の範囲内であれば、重合反応系への開始剤の添加量を格段に抑制することができるため、コスト面でより有利となる。さらに、製造過程での亜硫酸ガスの発生や不純物の発生を有効かつ効率的に防止(低減)することができるため、高分散能、高キレート能および高耐ゲル性といった各種性能を高い次元でより顕著かつ効果的に発揮することができる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物を効率よく製造することができる。そのため、無機顔料の分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダーなどとして好適に用いることができる重合体組成物を高品位かつ低コストで製造することができる。さらに、重合反応系に添加する開始剤の量の増加を格段に抑制することができるなど、コストを低減することも可能となっている。
【0078】
なお、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の用途としては、水系の分散剤(炭酸カルシウム、カオリン、顔料の分散剤を含む)、水処理剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、セメント添加剤、洗剤ビルダー(液体、粉末洗剤を含む)およびこれを用いた洗剤組成物などが挙げられるが、これらに制限されるべきものではなく、例えば、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダーなどの用途などにも幅広く適用できるものである。
【0079】
次に、本発明の水系の分散剤は、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物(上記したように不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の精製物を含む)を含有してなることを特徴とするものである。これにより、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物中の不純物量が格段に低減されているため、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物が本来有する極めて優れた分散能、キレート能および耐ゲル性を発現できる低分子量の水系の分散剤を提供できる。さらに長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れた水系の分散剤を提供できる。
【0080】
なお、本発明の水系の分散剤においては、上記不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物以外の他の組成成分や配合比率に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知の水系の分散剤に有効に適用されてなる各種成分およびその配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で、適宜適用(利用)することができるものである。
【0081】
次に、本発明に係るスケール防止剤は、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物(上記したように不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の精製物を含む)を含有してなることを特徴とするものである。これにより、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物中の不純物量が格段に低減されているため、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物が本来有する極めて優れた分散能、キレート能および耐ゲル性を発現できる低分子量の水溶性のスケール防止剤を提供できる。さらに長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れたスケール防止剤を提供できる。
【0082】
なお、本発明のスケール防止剤においては、上記不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物以外の他の組成成分や配合比率に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のスケール防止剤に有効に適用されてなる各種成分およびその配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で、適宜適用(利用)することができるものである。
【0083】
また、本発明に係るセメント添加剤は、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物(上記したように不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の精製物を含む)を含有してなることを特徴とするものである。これにより、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物中の不純物量が格段に低減されているため、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物が本来有する極めて優れた分散能、キレート能および耐ゲル性を発現できる低分子量の水溶性のセメント添加剤を提供できる。さらに長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れたセメント添加剤を提供できる。
なお、本発明のセメント添加剤においては、上記不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物以外の他の組成成分や配合比率に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のスケール防止剤に有効に適用されてなる各種成分およびその配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で、適宜適用(利用)することができるものである。
【0084】
次に、本発明に係る洗剤ビルダーは、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物(上記したように不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の精製物を含む)を含有してなることを特徴とするものである。これにより、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物中の不純物量が格段に低減されているため、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物が本来有する極めて優れた液体洗剤への相溶性、分散能、キレート能および耐ゲル性を発現できる低分子量の水溶性の洗剤ビルダーを提供できる。そのため、洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れるものである。さらに長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れた洗剤ビルダーを提供できる。
【0085】
なお、本発明の洗剤ビルダーにおいては、上記不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物以外の他の組成成分や配合比率に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知の洗剤ビルダーに有効に適用されてなる各種成分およびその配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で、適宜適用(利用)することができるものである。
【0086】
次に、本発明に係る洗剤組成物は、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物(上記したように不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体の精製物を含む)を含有してなることを特徴とするものである。これにより、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物中の不純物量が格段に低減されているため、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物が本来有する極めて優れた分散能、キレート能および耐ゲル性を発現できる低分子量の水溶性の洗剤組成物を提供できる。さらに長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れた洗剤組成物を提供できる。
【0087】
本発明の洗剤組成物においては、本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の配合量が洗剤組成物全体の1〜20質量%であり、界面活性剤の配合量が洗剤組成物全体の5〜70質量%であることが好ましく、場合により酵素を5質量%以下の範囲で添加しても良い。
本発明の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の配合量が1質量%未満であると添加効果が現れず、また20質量%を超えるともはや添加した効果が洗浄力の向上につながらず経済的にも不利となり好ましくない。また、洗剤組成物の主剤である界面活性剤の量が上記の範囲を外れると、他の成分とのバランスが崩れ洗剤組成物の洗浄力に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。酵素を配合した場合、洗浄力の向上に寄与するが、5質量%を超えると、もはや添加した効果が現れず経済的にも不利となり好ましくない。
【0088】
本発明に係る洗剤用ビルダーは、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよいが、不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物が液体洗剤組成物に用いられると、後述の界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤組成物となるため好ましい。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、これらの界面活性剤は1種または2種以上使用することができる。2種以上使用する場合にはアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を合わせた使用量は、活性剤全体に対して50質量%以上が好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上が最も好ましい。
【0089】
アニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。これらのアニオン界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分岐していても良い。
【0090】
ノニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。これらのノニオン界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分岐していても良い。
【0091】
両性界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
カチオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0092】
本発明における洗剤組成物に配合される酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等を使用することができる。特に、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
さらに、本発明の洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、可溶化剤、蛍光剤、漂白剤、漂白助剤、香料等の洗剤組成物に常用される成分を配合してもよい。また、ゼオライトを配合してもよい。
【0093】
アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等を用いることができる。キレートビルダーとしては、ゼオライト、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等を必要に応じて使用することができる。あるいは公知の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを本発明の効果を損なわない範囲で使用しても良い。
【0094】
また、本発明の洗剤組成物においては、上記(メタ)アクリル酸系重合体組成物は、洗剤組成物の販売時の形態(例えば、液状物または固形物)に応じて、重合後の水溶液の形態のまま配合してもよいし、ある程度水分を飛ばして濃縮した状態で配合してもよいし、あるいは乾燥固化した状態で配合してもよいなど、特に制限されるべきものではない。
なお、該洗剤組成物には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤など特定の用途にのみ用いられる洗剤組成物も含まれるものとする。
(実施例)
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に記載の「%」は、特に断りがなければ「質量%」を示す。
また、本発明にかかる不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の
(1)ポリマーに含まれるS量、全S量およびこれらを測定するのに用いる透析法
(2)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)
(3)耐ゲル能を求めるのに用いるゲル化度
(4)色相(b値)
(5)Ca補足能
(6)クレー分散能
(7)液体洗剤への相溶性
は、以下に示す方法により測定または定量した。
【0095】
(1)ポリマーに含まれるS量および全S量の測定
重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の透析処理前後のS量を誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma,ICP)発光分光分析法によって定量した。ここで、透析処理前の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物のS量を「全S量」とし、透析処理後の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体のS量を「ポリマーに含まれるS量」とした。以下にここでの透析法につき説明する。
【0096】
≪透析法≫
1.重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物につき、適量の純水を加えて、固形分濃度30質量%の(メタ)アクリル酸系重合体組成物を調製し、これを透析膜40cm(長さ)中に20g入れ密閉した。透析膜にはSpectra/Por Membrane MWCO:1000 分画分子量1000(SPECTRUM LABORATORIES INC製)を用いた(なお、本発明では、当該透析膜と同程度の分画分子量を有するものであればよい。)。
2.これを2リットルビーカーに入った2000gの純水に浸し、スターラーで攪拌した。
3.6時間後、ビーカーから透析膜を取り出し、透析膜の外側を水でよく洗い流した後、透析膜の中身を取り出した。
4.これをエヴァポレーターで濃縮したものを透析処理後の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物サンプルとした。
なお、透析処理前の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物サンプルには、上記1.の重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物を上記4.と同様にしてエヴァポレーターで濃縮したものを用いた。
【0097】
(2)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定
不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、共にGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:日立社製L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:SHODEX社製 Asahipak GF310−HQ,GF710−HQ,GF−1G 7B
カラム温度:40℃
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
GPCソフト:日本分光社製BORWIN
溶離液:0.1M酢酸バッファー(pH8.0)/アセトニトリル=3/1(重量比)
(3)ゲル化度(q値)の測定
ゲル化度qの測定においては、まず、ホウ酸緩衝溶液、塩化カルシウム水溶液、および1%重合体溶液を調製した。ホウ酸緩衝溶液は、ホウ酸7.42g、塩化ナトリウム1.75gおよびホウ酸ナトリウム10水和物7.63gに純水を加えて全量を1000gとしたものである。塩化カルシウム水溶液は、塩化カルシウム2水和物1.47gに純水を加えて全量を2500gとしたものである。ここで、上記1%重合体水溶液には、上記(1)の透析法1.の重合により得られた不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物を適量の水で希釈して固形分濃度1質量%に調整したものを用いた。
次に、上記各溶液を所定の順序および所定の量で500mlのトールビーカーに仕込んだ。この所定の順序および所定の量を示すと、第一番目として純水250mlを仕込み、第二番目としてホウ酸緩衝溶液10mlを仕込み、第三番目として1%重合体水溶液5mlを仕込み、最後に塩化カルシウム水溶液250mlを仕込んだ。
この順序で仕込まれた各溶液を混合することにより、1%重合体水溶液に含まれる重合体をゲル化させて試験液とした。試験液を仕込んだトールビーカーに蓋をして、あらかじめ90℃に調整しておいた恒温槽に該トールビーカーを1時間静置した。1時間経過後、直ちに試験液を5cmの石英セルに入れ、UV波長380nmにおける吸光度aを測定した。
一方、上記試験液として仕込まれる四つの成分のうち、塩化カルシウム水溶液250mlを純水250mlに代えてブランク溶液とした。このブランク溶液に対して、上記試験液と同様の操作を行い、UV波長380nmでブランク溶液の吸光度(ブランク値)bを測定した。そして、上記吸光度aおよびブランク値bから、ゲル化度q=a−bとして算出した。
【0098】
(4)色相(b値)
重合体または重合体水溶液を純水で希釈、または濃縮し、重合体濃度が40質量%になるように調整する。日本電色工業社製測色色差計ND−1001DPを用い、調整した水溶液の透過測定を行うことにより、Lab値のb値を測定した。b値は、正の数の方向で、大きいほど水溶液の黄色が濃くなる。
【0099】
(5)Ca捕捉能の測定
検量線用カルシウムイオン標準液として、塩化カルシウム2水和物を用いて、0.01mol/l、0.001mol/l、0.0001mol/lの水溶液を50g調製し、4.8%NaOH水溶液でpH9〜11の範囲に調製し、更に4mol/lの塩化カリウム水溶液(以下4M−KCl水溶液と略す)を1ml添加し、更にマグネチックスターラーを用いて十分に攪拌して検量線用サンプル液を作製した。また、試験用カルシウムイオン標準液として、同じく塩化カルシウム2水和物を用いて、0.001mol/lの水溶液を必要量(1サンプルにつき50g)調製した。
次いで、100ccビーカーに試験サンプル(重合体)を固形分換算で10mg秤量し、上記の試験用カルシウムイオン標準液50gを添加し、マグネチックスターラーを用いて十分に攪拌した。更に、検量線用サンプルと同様に、4.8%NaOH水溶液でpH9〜11の範囲に調製し、4M―KCl水溶液を1ml添加して、試験用サンプル液を作製した。
この様にして、作製した検量線用サンプル液、試験用サンプル液を平沼産業株式会社製滴定装置COMTITE−550を用いて、オリオン社製カルシウムイオン電極93−20,比較電極90−01により測定を行なった。
検量線及び試験用のサンプル液の測定値より、サンプル(重合体)が捕捉したカルシウムイオン量を計算により求め、その値を重合体固形分1gあたりの捕捉量を炭酸カルシウム換算のmg数で表し、この値をカルシウムイオン捕捉能値とした。
【0100】
(6)クレイ分散性
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファー・とする)。バッファー・60gに塩化カルシウム二水和物0.3268gを加え、更に純水を加え、1000gとした(これをバッファー・とする)。測定対象の共重合体の0.1重量%水溶液(固形分重量換算)4gに、バッファー・を36g加え、攪拌し分散液とした。試験管(IWAKI GLASS製:直径18mm、高さ180mm)にクレー(社団法人日本粉体工業技術協会製、試験用ダスト8種)0.3gを入れた後、上記の分散液を30g加え、密封する。
試験管を振り、クレーを均一に分散させた。その後、試験管を暗所に20時間静置した。20時間後、分散液の上澄みを5cc取り、UV分光器(島津製作所、UV−1200;1cmセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この値が大きいほど、クレイ分散性が高いことを示す。
【0101】
(7)液体洗剤に対する相溶性
下記実施例で得られた新規共重合体を含む洗剤組成物について、液体洗剤に対する相溶性の評価を行った。
すなわち、実施例で得られた新規共重合体及び以下の成分を用いて各種洗剤組成物を調整した。各成分が均一になる様に充分に攪拌し、25℃での濁度値を測定した。濁度値は、日本電色株式会社製NDH2000(濁度計)を用いてTurbidity(カオリン濁度mg/l)を測定した。
評価結果は次の3段階を基準とした。
○:濁度値(0〜50(mg/l))、目視で分離、沈殿又は白濁していない。
△:濁度値(50〜200(mg/l))、目視で僅かに白濁している。
×:濁度値(200(mg/l)以上)、目視で白濁している。
洗剤配合:
SFT−70H(ソフタノール70H、日本触媒社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル);11g
ネオペレックスF−65(花王株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム);32g
ジエタノールアミン;10g
エタノール;5g
プロピレングリコール;15g
実施例で得られた新規共重合体および比較重合体;1.5g
純水;バランス
実施例1
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、純水145.0gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、90℃まで昇温した。
次いで攪拌下、約90℃一定状態の重合反応系中に80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す)180.0g(2.00mol)、48%水酸化ナトリウム(以下、48%NaOHと称す)8.33g(0.10mol)、80%3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを10mol付加した不飽和アルコール(以下80%IPN−10と称す)328.8g(0.50mol)、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下15%NaPSと略す)66.7g(対単量体投入量(ここで、単量体投入量とは、単量体組成物の全ての投入量をいう。以下同様とする。)に換算すると4.0g/mol)、35%重亜硫酸ナトリウム水溶液(以下、35%SBSと略す)57.1g(対単量体投入量に換算すると8.0g/mol)、純水100gをそれぞれ別個の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、48%NaOHを180分間、80%IPN−10を170分間、35%SBSを175分間、15%NaPS、純水を210分間とした。また、それぞれの滴下時間の間、各成分の滴下速度は一定とし、連続的に滴下した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結せしめた。重合の完結後、反応溶液を放冷し、48%水酸化ナトリウム水溶液75.0g(すなわち0.90mol)を攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度が45質量%、最終中和度が50mol%の不飽和ポリアルキレングリコール系共重合体組成物(以下、重合体組成物(1)とする)を得た。重合処方を下記表1にまとめた。
得られた重合体組成物(1)を用いて、その分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12,14に示す。
【0102】
実施例2〜8
実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表1および表2にまとめた。
得られた重合体組成物(2)〜(8)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す
【0103】
【表1】

【0104】
【0105】
【表2】

【0106】
実施例9〜10
80%IPN−10の代わりに50%3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50mol付加した不飽和アルコール(以下50%IPN−50と称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表3にまとめた。
得られた重合体組成物(9)〜(10)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
実施例11
80%IPN−10の代わりに80%アリルアルコールにエチレンオキサイドを5mol付加した不飽和アルコール(以下80%PEA−5と称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表4にまとめた。
得られた重合体組成物(11)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0109】
【表4】

【0110】
実施例12〜17
80%IPN−10の代わりに80%アリルアルコールにエチレンオキサイドを10mol付加した不飽和アルコール(以下80%PEA−10と称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表5にまとめた。
得られた重合体組成物(12)〜(17)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0111】
【表5】

【0112】
実施例18〜19
80%IPN−10の代わりに80%アリルアルコールにエチレンオキサイドを15mol付加した不飽和アルコール(以下80%PEA−15)と称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表6にまとめた。
得られた重合体組成物(18)、(19)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0113】
【表6】

【0114】
実施例20〜24
80%IPN−10の代わりに60%アリルアルコールにエチレンオキサイドを25mol付加した不飽和アルコール(以下60%PEA−25)と称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表7にまとめた。
得られた重合体組成物(20)〜(24)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0115】
【表7】

【0116】
実施例25〜27
80%IPN−10の代わりに60%アリルアルコールにエチレンオキサイドを35mol付加した不飽和アルコール(以下60%PEA−35)と称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表8にまとめた。
得られた重合体組成物(25)〜(27)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0117】
【表8】

【0118】
実施例28〜30
80%IPN−10の代わりに50%アリルアルコールにエチレンオキサイドを50mol付加した不飽和アルコール(以下50%PEA−50)と称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表9にまとめた。
得られた重合体組成物(28)〜(30)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0119】
【表9】

【0120】
実施例31
3種類目の単量体成分として無水マレイン酸(以下100%MAと称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表10にまとめた。
得られた重合体組成物(31)を用いて、それぞれの分子量、R、Q値、カルシウム捕捉能を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0121】
【表10】

【0122】
実施例32
3種類目の単量体成分として100%メタクリル酸(以下100%MAAと称す)を使用する以外は、実施例1と同様に重合した。重合処方を下記表11にまとめた。
得られた重合体組成物(32)を用いて、それぞれの分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表12、14に示す。
【0123】
【表11】

【0124】
比較例1
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、1000mlセパラブルフラスコに、63.87重量%のIPN−10水溶液200gを仕込み窒素置換後、攪拌しながら65℃まで昇温した。所定の温度になった時点で30重量%の過酸化水素水1.58gを一括で投入した。その後、100重量%のアクリル酸32.61g、2.1重量%のL−アスコルビン酸水溶液29.29g、3重量%メルカプトプロピオン酸水溶液17.22gをそれぞれ滴下した。ただし、アクリル酸モノマーとメルカプトプロピオン酸は、60分かけての滴下で、L−アスコルビン酸は90分かけて滴下した。L−アスコルビン酸水溶液の滴下終了後、同温度で120分間熟成し重合を完結させ、比較重合体(1)を得た。
得られた比較重合体(1)を用いて、その分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表13,14に示す。
【0125】
比較例2
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、500mlセパラブルフラスコに、純水167.24gを仕込み窒素置換後、攪拌しながら95℃まで昇温した。所定の温度になった時点で3重量%の過硫酸アンモニウム水溶液28.9g、50重量%のIPN−25水溶液82.67g、80%アクリル酸水溶液8.25gと40%アクリル酸アンモニウム48.75g混合した水溶液をそれぞれ滴下した。ただし、IPN−25とアクリル酸モノマーは、120分かけての滴下で、過硫酸アンモニウム水溶液は150分かけて滴下した。IPN−25とアクリル酸モノマーの滴下終了後、同温度で30分間熟成し重合を完結させ、重合後、28%アンモニア水1.5g加えることで、比較重合体(2)を得た。
得られた比較重合体(2)を用いて、その分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表13,14に示す。
【0126】
比較例3
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、500mlセパラブルフラスコに、純水174.2gを仕込み窒素置換後、攪拌しながら100℃まで昇温した。所定の温度になった時点で3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液32.5g、50重量%のIPN−10水溶液82.67g、80%アクリル酸水溶液8.25gと37%アクリル酸ナトリウム56.2g混合した水溶液をそれぞれ滴下した。ただし、IPN−10とアクリル酸モノマーは、120分かけての滴下で、過硫酸ナトリウム水溶液は150分かけて滴下した。IPN−10とアクリル酸モノマーの滴下終了後、同温度で30分間熟成し重合を完結させ、重合後、48%水酸化ナトリウム7.43g加えることで、比較重合体(3)を得た。
得られた比較重合体(3)を用いて、その分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表13,14に示す。
【0127】
比較例4
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、1000mlセパラブルフラスコに、純水312.9gを仕込み窒素置換後、攪拌しながら100℃まで昇温した。所定の温度になった時点で10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液68.9g、80重量%のIPN−10水溶液32.5g、80%アクリル酸水溶液15.6gと37%アクリル酸ナトリウム332.1g混合した水溶液をそれぞれ滴下した。ただし、IPN−10とアクリル酸モノマーは、120分かけての滴下で、過硫酸ナトリウム水溶液は150分かけて滴下した。IPN−10とアクリル酸モノマーの滴下終了後、同温度で30分間熟成し重合を完結させ、比較重合体(4)を得た。
得られた比較重合体(4)を用いて、その分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表13,14に示す。
【0128】
比較例5
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、1000mlセパラブルフラスコに、純水385.6gを仕込み窒素置換後、攪拌しながら100℃まで昇温した。所定の温度になった時点で10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液29.4g、60重量%のPEA−10水溶液124.3g、80%アクリル酸水溶液28.0gと37%アクリル酸ナトリウム185.2g混合した水溶液をそれぞれ滴下した。ただし、PEA−10とアクリル酸モノマーは、120分かけての滴下で、過硫酸ナトリウム水溶液は150分かけて滴下した。PEA−10とアクリル酸モノマーの滴下終了後、同温度で30分間熟成し重合を完結させ、比較重合体(5)を得た。
得られた比較重合体(5)を用いて、その分子量、S、b、Q値、カルシウム捕捉能、クレー分散能、液体洗剤への相溶性を測定した結果を下記表13,14に示す。
【0129】
【表12】

【0130】
【表13】

【0131】
【0132】
【表14】

【0133】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸系単量体Aとポリアルキレンオキサイドの繰り返し単位が6以上300以下である不飽和ポリアルキレングリコール系単量体Bを含有する単量体組成物を25〜99℃で共重合した重合体を含む重合体組成物あって、
該重合体は末端に硫黄酸素酸を持ち、
S=(ポリマーに含まれるS量)/(全S量)×100で定義される硫黄元素導入量S値が3以上であることを特徴とする重合体組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体組成物の製造方法であって、開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩をそれぞれ1種類以上組み合わせて用いることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の重合体組成物を含有してなる洗剤用ビルダー。
【請求項4】
請求項1に記載の重合体組成物を含有してなる洗剤組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の重合体組成物を含有してなるセメント添加剤。

【公開番号】特開2008−208375(P2008−208375A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69165(P2008−69165)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【分割の表示】特願2003−50740(P2003−50740)の分割
【原出願日】平成15年2月27日(2003.2.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】