説明

(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−保護ピロリジンの改良された製造方法

【課題】 (2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニルピロリジン(3)を簡便な操作でかつ高収率で製造する方法の提供。
【解決手段】 塩基の存在下にトランス−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリン(1)に対し2.5当量以上のメタンスルホン酸クロリドと反応させた後、反応液の温度上昇を4℃以下に制御しながらジメチルアミンを反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記一般式(1):
【0002】
【化3】

【0003】
(式中、Rは前述と同じ意味を有する)で示されるトランス−1−保護−4−ヒドロキシ−L−プロリンを塩基の存在下にメタンスルホン酸クロリドと反応させ下記一般式(2):
【0004】
【化4】

【0005】
(式中、Rは前述と同じ意味を有する)で示される混合酸無水物とした後に、ジメチルアミンと反応させ下記一般式(3):
【0006】
【化5】

【0007】
(式中、Rは前述と同じ意味を有する)で示される(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−保護ピロリジンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0008】
前記式(3)で示される化合物は、優れた抗菌活性を有するペネム化合物およびカルバペネム化合物の2位側鎖部分を構築する際に、重要な中間体として用いられる(特許文献1)。
【0009】
従来、化合物(3)の製造方法としては、化合物(1)を塩化メチレン中でトリエチルアミン存在下にメタンスルホン酸クロリドと反応させ混合酸無水物(3)とした後にジメチルアミンと反応させる方法(特許文献1、非特許文献1)や、化合物(1)を塩化メチレン中でトリエチルアミン存在下にメタンスルホン酸クロリドと反応させ混合酸無水物(3)とした後にジメチルアミンと反応させ、得られた反応混合物をさらにメタンスルホン酸クロリドとの反応およびジメチルアミンとの反応に付する方法(特許文献2)が知られている。
【特許文献1】特開平4−217661号公報
【特許文献2】特開2002−97180号公報
【非特許文献1】ヘテロサイクルス(Heterocycles)、147〜159頁、1995年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前者(特許文献1、非特許文献1)の方法ではジメチルアミンとの反応の際に下記一般式(4):
【0011】
【化6】

【0012】
で示されるカルボン酸が副生することにより化合物(3)の収率が低下するという問題があった。後者(特許文献2)ではこの問題を解決するために副生した化合物(4)に対し再度トリエチルアミン、メタンスルホン酸クロリド及びジメチルアミンを作用させることで収率面での改善が行なわれた。しかし、後者の方法においては同じ操作を2度繰り返す必要があり煩雑であるという問題があった。操作の簡便さと高収率を同時に達成する改善が望まれており、本発明の目的は、化合物(3)を簡便な操作でかつ高収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討の結果、混合酸無水物(2)とジメチルアミンとを反応させる際に反応液の温度上昇を4℃以下に制御することにより、カルボン酸(4)の副生を大幅に抑制できることを見出した。また、本発明において混合酸無水物(2)の合成に用いるメタンスルホン酸クロリドを化合物(1)に対し2.5当量以上用い、かつ混合酸無水物(2)とジメチルアミンとを反応させる際に反応液の温度上昇を4℃以下に制御することにより、驚くべきことに1段階の反応で化合物(3)の収率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、前記式(1)
で示されるトランス−1−保護−4−ヒドロキシ−L−プロリンを塩基の存在下にメタンスルホン酸クロリドと反応させた後、反応溶液中の温度上昇を4℃以下に制御しながらジメチルアミンと反応させることを特徴とする、前記式(3)で示される(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−保護ピロリジンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
化合物(4)の副生を抑制し、化合物(3)を簡便な操作でかつ高収率で製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、下記一般式(1)
【0017】
【化7】

【0018】
(以下、化合物(1))で示される1−保護−4−ヒドロキシ−L−プロリンを塩基の存在下にメタンスルホン酸クロリドと反応させ下記一般式(2)
【0019】
【化8】

【0020】
(以下、化合物(2))で示される混合酸無水物とした後に、得られた混合酸無水物(2)とジメチルアミンと反応させ下記一般式(3)
【0021】
【化9】

【0022】
(以下、化合物(3))で示される(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−保護ピロリジンを合成する。
【0023】
化合物(1)〜(3)において、Rはアミノ基の保護基を表す。具体的には、プロテクティヴ・グループス・イン・オーガニックシンセシス第2版(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd. Ed.)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILEY&SONS)出版(1991年)に記載されている保護基を使用することができる。Rとして好ましいものは、特に限定されないが、例えば、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンジル基などがあげられる。好ましくはp−ニトロベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基であり、さらに好ましくはp−ニトロベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基である。
【0024】
本発明で、原料として用いる化合物(1)は、公知の方法で合成可能であるが、Rがp−ニトロベンジルオキシカルボニル基である場合は、例えば、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを塩基の存在下にクロロ炭酸p−ニトロベンジルと反応させ調製することができる(例えば特開平4−217661号公報)。
【0025】
まず、化合物(1)を塩基の存在下にメタンスルホン酸クロリドと反応させて、混合酸無水物である化合物(2)を得る工程について説明する。
【0026】
メタンスルホン酸クロリドの使用量は、化合物(1)1モルに対して、通常2.5モル以上、好ましくは2.6モル以上である。上限は、4.0モル以下であり、好ましくは3.5モル以下である。ここで、混合酸無水物(2)を得るために必要なメタンスルホン酸クロリドの量は、化合物(1)1モルに対して、通常2.0モル以上、2.5モル以下の範囲であり、これを越える使用量は後述の混合酸無水物(2)とジメチルアミンとの反応を行なう際に使用される。化合物(2)とジメチルアミンとの反応を行なう前であれば、メタンスルホン酸クロリドの添加は上記の使用量の範囲で分割して行ってもよい。
【0027】
塩基としては、通常使用される、有機塩基及び無機塩基を使用することができ、特に制限されないが、本反応においては、アミン類が好ましい。アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミンなどが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(1)1モルに対して、通常2.5モル以上、好ましくは2.6モル以上である。上限は5.0モル以下、好ましくは4.0モル以下であり、メタンスルホン酸クロリドに対して1モル以上、1.5モル以下用いるのが好ましい。塩基の添加に関しても、上記メタンスルホン酸クロリドと同様の理由から、分割して添加してもよい。
【0028】
反応溶媒としては、不活性有機溶媒、例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、塩化メチレンやアセトンが好ましく、環境への影響を考慮すると、アセトンが特に好ましい。溶媒の使用量は、化合物(1)に対する溶媒の重量比率として、通常0.5〜25、好ましくは5〜20の範囲である。
【0029】
反応温度は、通常−25〜10℃、好ましくは−20〜5℃の範囲である。
【0030】
試剤の添加順は、特に制限されないが、化合物(1)およびメタンスルホン酸クロリドを溶媒に溶解した中に塩基を加えるか、もしくは、メタンスルホン酸クロリドを溶媒に溶解した中に化合物(1)と塩基の混合物(溶液、塩など)を添加するのが、不純物生成抑制の観点から好ましい。
【0031】
上記のようにして得られた化合物(2)は、そのまま化合物(2)を含有する反応溶液としてジメチルアミンを反応させ、化合物(3)を得ることができる。
【0032】
ジメチルアミンの使用量は、化合物(1)1モルに対して、通常、下限は1.5モル以上、好ましくは2モル以上、上限は、8モル以下、好ましくは6モル以下使用すればよい。また、この際、化合物(2)を得る工程で用いた塩基をさらに添加しても良い。この場合の塩基の使用量は化合物(1)1モルに対して1.0以上、2.0以下が好ましい。
【0033】
ジメチルアミンは、ガス状で使用しても良く、冷却して液体状として使用しても良い。また、必要に応じ上記の反応溶媒に溶解させた溶液として使用しても良い。更に、ジメチルアミンの塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩など)と上記のアミン類を混合して系内でジメチルアミンを発生させても良い。好ましくはガス状、液体状または溶液である。
【0034】
反応温度は、−25〜10℃、好ましくは−20〜5℃の範囲であるが、本発明においては、ジメチルアミンとの反応において、化合物(2)を含有する反応溶液の温度の上昇を4℃以下、好ましくは3℃以下に制御することが肝要である。反応溶液の温度の上昇を制御することにより、一般式(4):
【0035】
【化10】

【0036】
で表される化合物(4)の副生を大幅に抑制できる。反応中の温度ではなく、反応溶液の温度の上昇幅を制御することにより、化合物(4)の副生を抑制することができることは、驚くべきことである。本発明によれば、反応の開始温度が低くても、反応溶液の温度上昇幅が4℃以上であれば、化合物(4)の副生量が増加する。反応温度の上昇幅が大きいほど、化合物(4)の副生量が多くなり、収率が低下する。
【0037】
反応溶液の温度の上昇を4℃以下に制御する方法としては、特に制限されないが、例えば、反応容器の除熱能力を向上させ、温度の上昇を4℃以下に制御できるようにコントロールする方法、ジメチルアミンの添加速度を遅くする方法、ジメチルアミンの温度を低下させる方法などがあげられる。これらの方法は組み合わせて実施しても良いし、他の方法を用いても良い。
【0038】
ジメチルアミンの添加速度を遅くして温度の上昇を4℃以下に制御する方法について、具体的に説明する。ジメチルアミンによるアミド化反応は、ジメチルアミンの添加量に応じて反応熱が生じるため、添加を停止すれば反応熱も発生しなくなる。このため、反応容器の単位時間当たりの除熱能力に合わせた速度でジメチルアミンを添加すれば、反応溶液の温度をほぼ一定に保つことができることになる。添加速度をゆっくりとすることで単位時間当たりの反応熱量を少なくすることができるため、高い除熱能力を備えた反応容器を使用しなくても、温度の上昇を制御することができる。この場合、ジメチルアミンを逐次添加、または分割添加することが好ましく、ジメチルアミンを全量添加するために要する時間が、1時間以上、さらに好ましくは2時間以上であることが好ましい。もちろん、ジメチルアミンの添加速度を遅くするため、ジメチルアミンを反応に影響のない溶媒で希釈して添加しても良い。
【0039】
次に、反応容器の除熱能力を向上させて、温度の上昇を4℃以下に制御する方法について、具体的に説明する。除熱能力を向上させる方法としては、反応液量当たりの伝熱面積が広い反応容器(例えば、ジャケットと冷却用内部コイルを備えた反応容器など)を用いる方法、反応容器のジャケット温度を反応液温よりも低温にする方法などを例示することができる。
【0040】
好ましい伝熱面積(A)やジャケットと反応液温の温度差(T)は、使用する反応容器の容量と総括伝熱係数(U)及びジメチルアミンの添加速度などにより異なるが、U×A×Tで算出される単位時間当たりの除熱量とジメチルアミン添加により発生する単位時間当たりの反応熱量がほぼ等しくなるように選定すればよい。
【0041】
化合物(2)を含有する溶液とジメチルアミンを反応させる場合、化合物(2)を含有する溶液にジメチルアミンを添加するのがよい。
【0042】
上記のようにして得られた化合物(3)は、水を添加し反応を停止した後に、溶媒を濃縮除去することで、化合物(3)を油状物として分離することができる。この際の水の使用量は、化合物(1)に対する水の重量比率として、通常0.5〜20、好ましくは1〜10の範囲である。
【0043】
上記のようにして得られた化合物(3)の油状物を含む水層を、撹拌することで化合物(3)の晶析を行なうこともできる。この際、必要に応じ種晶の添加を行なうことができる。種晶の添加量は、化合物(3)に対する重量比率として、通常0.001〜0.1、好ましくは0.005〜0.05である。また、晶析の温度は、0〜30℃の範囲で行なうことができる。
【0044】
また、上記の化合物(3)の油状物を含む水層から、水と2層を成す有機溶媒を用いて化合物(3)を抽出し、必要に応じ洗浄、乾燥、濃縮などを行なった後に、晶析を行い、化合物(3)の結晶を取得することもできる。水と2層を成す有機溶媒としては、20℃で同体積の水と混ぜ合わせたときに2層を形成する有機溶媒があげられ、例えば、酢酸エチル、塩化メチレン、メチルイソブチルケトンなどがあげられる。晶析の際には、冷却や貧溶媒として、例えば、トルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの添加を行なうことができる。また、必要に応じ種晶の添加を行なうことができる。種晶の添加量は、化合物(3)に対する重量比率として、通常0.001〜0.1、好ましくは0.005〜0.05である。また、晶析の温度は、−20〜30℃の範囲で行なうことができる。
【0045】
上記のようにして得られた化合物(3)の結晶は、一般的な固液分離操作により単離することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例、比較例を用いて、本発明をより一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】

以下の実施例、比較例において、分析は以下のHPLC分析条件を用いて行なった。
[HPLC分析条件]
機種 :(株)島津製作所製 LC−10Aシリーズ
カラム:ナカライテスク製ODSカラム
Cosmosil 5C18 AR−II(4.6mm×250mm)
溶離液:アセトニトリル/燐酸緩衝液(pH3.0)=40/60(v/v)
流速 :1.0ml/min
検出 :274nm(UV検出器)
温度 :40℃
本実施例、比較例において、始発温度とは、トランス−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンとメタンスルホン酸クロリドの反応溶液に、ジメチルアミンを添加する前の温度を意味する。温度上昇とは、ジメチルアミンを添加する前の反応溶液温度に対するジメチルアミン添加中の反応溶液温度との温度差の最大値を意味する。ジメチルアミン添加時間とは、所定量のジメチルアミンガスを添加するのに要した延べ時間を意味する。面積比率とは、(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−保護―ピロリジン(3)に対するカルボン酸(4)のHPLCにおける面積比率であり、化合物(3)の面積をA、カルボン酸(4)の面積をBとした時に、B/(A+B)×100(%)で算出される値を意味する。
【0048】
本実施例、参考例において、ジメチルアミンガスの添加速度はいずれも一定ではなく、かつ、同一の添加速度ではなく、記載の温度上昇と添加時間になるようにジメチルアミンの添加速度を変化させている。添加時間が同程度でも反応溶液の温度上昇が異なるものは、一時的または断続的に添加速度を変化させることにより温度上昇を変化させたものである。
(実施例1)
トランス−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリン(15.06g、0.049mol)にアセトン(150.2g)とメタンスルホン酸クロリド(15.18g、0.132mol)を加え、冷却装置を用いて−16℃に冷却した。そこへ、トリエチルアミン(15.17g、0.150mol)を−16℃から−14℃を保つように滴下した。そのままの温度で20分間攪拌した後、ジメチルアミン(8.4g、0.186mol、ガス状)を2時間かけて、反応溶液温度−16℃から−14℃を保つように加えた(始発温度:−16℃、温度上昇:2℃)。−16℃で1時間攪拌した後、水(46.9g)を加え反応を停止した。反応液をHPLC分析したところ、カルボン酸(4)/化合物(3)(共にRは、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基である)の面積比率は0.2%(0.2/99.8の比率を意味する)であった。
【0049】
得られた混合液を減圧濃縮して有機溶媒を留去した。そこに酢酸エチル(154.7g)を加えて室温で15分間攪拌した後、分液して有機層を取得した。取得した有機層を減圧濃縮し、室温下で種晶(0.2g)を添加して、引き続き同温度で2時間攪拌したところ、結晶化した。そこへ、貧溶媒としてヘキサン(80.8g)を滴下した後、0℃に冷却し、同温度で一晩攪拌した。結晶を濾別してトルエン(42.8g)、水(24.9g)で順に結晶を洗浄した。取得した結晶を減圧下乾燥させて(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニルピロリジン(3)(18.67g、0.045mol、収率90%)の結晶を取得した。
【0050】
得られた結晶の1H−NMR(CDCl3)は、ザ・ジャーナル・オブ・アンチビオティックス(J.Antibiot.)、519〜532頁、1990年に記載のものと一致した。
【0051】
(実施例2)
メタンスルホン酸クロリド(MsCl)とトリエチルアミン(TEA)の添加順、反応始発温度、ジメチルアミンの添加時間を変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、反応液のHPLC分析を行なった結果を以下に示す。ただし、化合物(3)、カルボン酸(4)共にRは、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基である。
【0052】
【表1】

【0053】
(比較例1)
反応始発温度、ジメチルアミンの添加時間を変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、反応液のHPLC分析を行なった結果を以下に示す。ただし、化合物(3)、カルボン酸(4)共にRは、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基である。
【0054】
【表2】

【0055】
(実施例3)
トランス−1−p−ニトロベンジルオキシオカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリン(70.00g、0.226mol)にアセトン(700.68g)とトリエチルアミン(68.17g、0.670mol)を加え、氷浴で3℃に冷却した。そこへ、メタンスルホン酸クロリド(72.22g、0.625mol)を3℃から5℃を保つように滴下した。そのままの温度で3時間攪拌した後、ジメチルアミン(24.10g,0.536mol、ガス状)を5時間かけて、反応溶液温度2℃から6℃を保つように加えた(始発温度:2℃、温度上昇:4℃)。2.5℃で1時間攪拌した後、水(333.60g)を加えて反応を停止した。反応液をHPLC分析したところカルボン酸(4)/化合物(3)の面積比率は0.3%(0.3/99.7の比率を意味する)であった。
【0056】
得られた反応溶液を減圧濃縮して有機溶媒を留去した後、25℃で種晶(0.5g)を添加して、1時間攪拌したところ、結晶化した。同温度で3時間攪拌した後、20℃に冷却し、同温度で5時間攪拌した。結晶を濾別して10%水酸化ナトリウム水溶液(170.85g)、水(300.10g)で順に結晶を洗浄した。取得した結晶を減圧下乾燥させて(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニルピロリジン(3)(76.77g,0.185mol、収率82%)の結晶を取得した。
【0057】
(比較例2)
トランス−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリン(14.99g、0.048mol)にアセトン(150.5g)とメタンスルホン酸クロリド(12.2g、0.107mol)を加え、実施例1と同様な冷却装置を用いて1℃に冷却した。そこへ、トリエチルアミン(12.2g、0.121mol)を1℃から3℃を保つように滴下した。反応溶液の温度を1℃に保ったまま20分間攪拌した後、ジメチルアミン(8.2g、0.182mol、ガス状)を2時間かけて、反応溶液温度2℃から5℃を保つように加えた(始発温度:2℃、温度上昇:3℃)。2℃で1時間攪拌した後、反応液をHPLC分析したところ、カルボン酸(4)/化合物(3)の面積比率は13.7%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rはアミノ基の保護基を意味する)で示されるトランス−1−保護−4−ヒドロキシ−L−プロリンを塩基の存在下にメタンスルホン酸クロリドと反応させた後、反応溶液中の温度上昇を4℃以下に制御しながらジメチルアミンと反応させることを特徴とする、下記一般式(3):
【化2】

(式中、Rは前述と同じ意味を有する)で示される(2S,4R)−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メタンスルホニルオキシ−1−保護ピロリジンの製造方法。
【請求項2】
Rが、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニルからなる群より選ばれる1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
メタンスルホン酸クロリドを前記一般式(1)で示されるヒドロキシプロリン誘導体1モルに対し2.5モル以上用いる請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項4】
メタンスルホン酸クロリドを上記一般式(1)で示されるヒドロキシプロリン誘導体1モルに対し2.5モル以上、4.0モル以下用いる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
反応温度が−25〜10℃の間である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
反応溶媒がアセトンである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
メタンスルホン酸クロリドと前記一般式(1)で示されるヒドロキシプロリン誘導体を混合した後に塩基を添加する請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
塩基がトリエチルアミンである請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記式(3)で表される化合物を、晶析した後に取得することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記式(3)で表される化合物を水中で結晶化させることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記式(3)で表される化合物を有機溶媒を用いて結晶化させることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
結晶化させる際に、貧溶媒を添加することを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
貧溶媒がトルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタンからなる群より選ばれる1種または2種以上の溶媒である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
結晶化を行なう際に種晶を添加することを特徴とする請求項9〜12記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−297314(P2007−297314A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125472(P2006−125472)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】