説明

(S,R)−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−5−イソオキサゾール酢酸−一酸化窒素ならびに抗癌剤および抗ウイルス剤としてのその使用

本発明は、イソオキサゾール誘導体、以下GIT27−NOと称す式(I)の化合物に関し、これは、以下VGX−1027と称す(S,R)−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−5−イソオキサソール(isoxasole)酢酸の、NO供与により構造的修飾された形である。3種の腫瘍細胞株、ラット星状細胞腫C6、マウス繊維肉腫L929、およびマウス黒色腫B16の細胞をGIT27−NOで処理すると、細胞呼吸および生細胞数の有意な減少がもたらされたが、VGX−1027はまったく効果がなかった。NOスカベンジャーとして働くヘモグロビンは、細胞生存率を回復させ、このことから化合物(I)のNO媒介性の殺腫瘍性作用が示された。GIT27−NOはL929細胞培養物においてアポトーシス性細胞死を引き起こしたが、自食性細胞死がC6およびB16細胞の生存率減少の主な原因である。さらに、GIT27−NOは、抗酸化剤N−アセチルシステイン(NAC)によって無効化され得る活性酸素種の産生を誘発し、これによって活性酸素種(ROS)が細胞生存率の低下に少なくとも部分的に関与していることが示された。GIT27−NOの抗腫瘍活性は、細胞特異的な方法でMAPキナーゼ(ERK1/2、p38、およびJNK)の活性化によって媒介される。MAPキナーゼの役割はさらに、これらの分子の特異的阻害剤PD98059、SB202190、およびSP600125によって確認された。最後に、GIT27−NOによるin vivo処置は、B16黒色腫を移植した同系C57BL/6マウスの腫瘍増殖を有意に低下させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイソオキサゾリン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一酸化窒素(NO)は、多数の生理学的および病理学的過程に関与する高反応性分子である。血管拡張、神経伝達、および免疫におけるNOの役割は、多くの面で複雑である(Tarr、2006年)。この分子はまた、非特異的抗腫瘍免疫応答の主な関与物質として知られている(Roshni、2003年)。しかし、最近の研究は、癌細胞との相互作用が以前考えられていたよりも複雑であることを示している。NOは、腫瘍の増大および転移を阻害することができるが、促進させることもできる(Tarr、2006年、Lechner、2005年)。腫瘍−NO相互作用の結果は、NO源、曝露細胞のタイプ、細胞内のNOの局在性、NO曝露の期間、およびNOが相互作用する可能性がある他のフリーラジカル種の存在に依存する(Tarr、2006年)。一般に、宿主マクロファージおよびNK細胞によって産生されたNOは、抗腫瘍応答を媒介する(Roshni、2003年)。一方、NOの腫瘍化促進の役割は、この分子を生成し、それに応じて増殖を自己調節する腫瘍細胞の内因性潜在能力によるものとされている(Lechner、2005年)。NOは、電子供与、ならびに鉄、亜鉛、および銅などの遷移金属との反応によって腫瘍細胞の増殖に直接影響を及ぼし、それ故に酵素活性および転写因子活性が調整される。NOは、新しいラジカルの発生によって、細胞成分のさらなる破壊を間接的に媒介する(Li、2005年、Tarr、2006年、Lechner、2005年)。
【0003】
最近、いくつかの有効な抗癌剤が入手可能である。しかし、癌用薬の設計は、多くの科学者にとって依然として大きな難題である。調査は、効果を高め、副作用を低減し、投与経路が適切である物質の発見を目的としている。癌の予防および/または治療での特に重要な新規な治療法は、NO供与非ステロイド性抗炎症薬(NO−NSAID)によって代表される。
【0004】
NO−NSAIDは、NO供与基が芳香族または脂肪族スペーサーによって共有結合されているNSAIDからなる(RigasおよびKashfi、2004年を参照)。これらの薬剤はその親化合物といくつかの薬理学的性質を共有するが、現在のデータは、それらの構造変化が効力の向上および毒性の減少に寄与していることを示唆している(Keeble、2002年)。
【0005】
NO−NSAIDは、アルツハイマー病、ならびに心血管、リウマチ、および肺疾患に有効である(Del Soldatoら、1999年)。NSAIDのシクロオキシゲナーゼ阻害性とNOの殺腫瘍能とを組み合わせることにより、これらの薬剤は悪性疾患の治療に対する最適な候補になる(RigasおよびKashfi、2004年を参照)。
【0006】
様々なNO−NSAIDが、in vitroでもin vivoでも癌細胞の増殖に影響を及ぼすことが実証されている。これらの薬剤は、ヒトの膀胱、結腸、前立腺、肺、膵臓、および舌の癌細胞、ならびに白血病細胞株に対して強力な抗増殖能およびアポトーシス促進能を有する(Kashfiら、2003年、Yeh、2004年、Huguenin、2005年、Huguenin、2004a年、Huguenin、2004b年、Gao、2005年、Nath、2004年、Spiegel、2005年)。さらに、NO−アスピリンおよびNO−インドメタシンは、ラットおよびマウスでの胃腸の癌発に対して有効である(Bak、1998年、Williams、2004年、Rao)。NO供与アスピリンは、ハムスター腫瘍モデルでの膵臓癌を予防した(Ouyang、2006年)。これらの薬剤の作用に関与する正確な機序はまだ完全には理解されていないが、潜在的標的は、NF−κB、誘導型NO合成酵素、およびシクロオキシゲナーゼであると考えられている(Rigas、rew、2004年)。
【0007】
最近、イソオキサゾリン化合物、(S,R)−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−5−イソオキサソール(isoxasole)酢酸(VGX−1027)が強力な免疫調節特性を有することが示されている。VGX−1027は、マクロファージおよび/またはT細胞からのTNF−α合成を阻害することによって、マウスをLPSの致死作用から保護する(Stojanovicら、印刷中)。さらに、自発型もしくは加速型の糖尿病、または低用量ストレプトゾトシンの複数回投与により誘発された免疫炎症性糖尿病のNODマウスにVGX−1027を投与すると、糖尿病の進行が有意に低減される(Stosic−Grujicicら、2006年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tarr JM,Eggleton P,Winyard PG.Nitric oxide and the regulation of apoptosis in tumour cells.Curr Pharm Des.2006;12(34):4445−68.
【非特許文献2】Lechner M,Lirk P,Rieder J.Inducible nitric oxide synthase(iNOS)in tumor biology:the two sides of the same coin.Semin Cancer Biol.2005 Aug;15(4):277−89.
【非特許文献3】Li CQ,Wogan GN.Nitric oxide as a modulator of apoptosis.Cancer Lett.2005 Aug 8;226(1):1−15.
【非特許文献4】Rigas B,Kashfi K.Nitric−oxide−donating NSAIDs as agents for cancer prevention.Trends Mol Med.2004 Jul;10(7):324−30.
【非特許文献5】Keeble JE,Moore PK.Pharmacology and potential therapeutic applications of nitric oxide−releasing non−steroidal anti−inflammatory and related nitric oxide−donating drugs.Br J Pharmacol.2002 Oct;137(3):295−310.
【非特許文献6】Del Soldato P,Sorrentino R,Pinto A.NO aspirins:a class of new antiinflammatory and antithrombotic agents.Thrends Pharmacol Sci 1999;20(8):319−23.
【非特許文献7】Kashfi K,Ryan Y,Qiao LL,Williams JL,Chen J,Del Soldato P,Traganos F,Rigas B.Nitric oxide−donating nonsteroidal anti−inflammatory drugs inhibit the growth of various cultured human cancer cells:evidence of a tissue type−independent effect.J Pharmacol Exp Ther.2002 Dec;303(3):1273−82.
【非特許文献8】Yeh RK,Chen J,Williams JL,Baluch M,Hundley TR,Rosenbaum RE,Kalala S,Traganos F,Benardini F,del Soldato P,Kashfi K,Rigas B.NO−donating nonsteroidal antiinflammatory drugs(NSAIDs)inhibit colon cancer cell growth more potently than traditional NSAIDs:a general pharmacological property? Biochem Pharmacol.2004 Jun 15;67(12):2197−205.
【非特許文献9】Huguenin S,Vacherot F,Fleury−Feith J,Riffaud JP,Chopin DK,Bolla M,Jaurand MC.Evaluation of the antitumoral potential of different nitric oxide−donating non−steroidal anti−inflammatory drugs(NO−NSAIDs)on human urological tumor cell lines.Cancer Lett.2005 Feb 10;218(2):163−70.
【非特許文献10】Huguenin S,Fleury−Feith J,Kheuang L,Jaurand MC,Bolla M,Riffaud JP,Chopin DK,Vacherot F.Nitrosulindac(NCX 1102):a new nitric oxide−donating non−steroidal anti−inflammatory drug(NO−NSAID),inhibits proliferation and induces apoptosis in human prostatic epithelial cell lines.Prostate.2004 Oct 1;61(2):132−41.
【非特許文献11】Huguenin S,Vacherot F,Kheuang L,Fleury−Feith J,Jaurand MC,Bolla M,Riffaud JP,Chopin DK.Antiproliferative effect of nitrosulindac(NCX 1102),a new nitric oxide−donating non−steroidal anti−inflammatory drug,on human bladder carcinoma cell lines.Mol Cancer Ther.2004 Mar;3(3):291−8.
【非特許文献12】Gao J,Liu X,Rigas B.Nitric oxide−donating aspirin induces apoptosis in human colon cancer cells through induction of oxidative stress.Proc Natl Acad Sci U S A.2005 Nov 22;102(47):17207−12.
【非特許文献13】Nath N,Labaze G,Rigas B,Kashfi K.NO−donating aspirin inhibits the growth of leukemic Jurkat cells and modulates beta−catenin expression.Biochem Biophys Res Commun.2005 Jan 7;326(1):93−9.
【非特許文献14】Spiegel A,Hundley TR,Chen J,Gao J,Ouyang N,Liu X,Go MF,Tsioulias GJ,Kashfi K,Rigas B.NO−donating aspirin inhibits both the expression and catalytic activity of inducible nitric oxide synthase in HT−29 human colon cancer cells.Biochem Pharmacol.2005 Oct 1;70(7):993−1000.
【非特許文献15】Bak AW,McKnight W,Li P,Del Soldato P,Calignano A,Cirino G,Wallace JL.Cyclooxygenase−independent chemoprevention with an aspirin derivative in a rat model of colonic adenocarcinoma.Life Sci.1998;62(23):PL 367−73.
【非特許文献16】Williams JL,Kashfi K,Ouyang N,del Soldato P,Kopelovich L,Rigas B.NO−donating aspirin inhibits intestinal carcinogenesis in Min(APC(Min/+))mice.Biochem Biophys Res Commun.2004 Jan 16;313(3):784−8.
【非特許文献17】Ouyang N,Williams JL,Tsioulias GJ,Gao J,Iatropoulos MJ,Kopelovich L,Kashfi K,Rigas B.Nitric oxide−donating aspirin prevents pancreatic cancer in a hamster tumor model.Cancer Res.2006 Apr 15;66(8):4503−11.
【非特許文献18】Ivana Stojanovic;Salvatore Cuzzocrea;Katia Mangano;Emanuela Mazzon;Djordje Miljkovic;Mingjun Wang;Marco Donia;Yousef Al Abed;Joseph Kim;Stanislava Stosic−Grujicic;Mogens Claesson.In vitro,ex vivo and in vivo immunopharmacological activities of the isoxazoline compound VGX−1027:Modulation of cytokine synthesis and prevention of both organ−specific and systemic autoimmune diseases in murine models.Clin Immunol,in press.
【非特許文献19】Stosic−Grujicic S,Cvetkovic I,Mangano K,Fresta M,Maksimovic−Ivanic D,Harhaji L,Popadic D,Momcilovic M,Miljkovic D,Kim J,Abed YA,Nicoletti F.A Potent Immunomodulatory Compound,(S,R)−3−Phenyl−4,5−dihydro−5−isoxasole Acetic Acid,Prevents Spontaneous and Accelerated Forms of Autoimmune Diabetes in NOD Mice and Inhibits the Immunoinflammatory Diabetes Induced by Multiple Low Doses of Streptozotocin in CBA/H Mice.J Pharmacol Exp Ther.2007 Mar;320(3):1038−49.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の説明
本発明は、式(I)のイソオキサゾリン化合物に関し、
【0010】
【化1】

【0011】
これをまた以下(GIT27−NO)と称し、次の反応式によって合成することができる。
【0012】
【化2】

【0013】
化合物(I)は、動物モデルにおいて、抗腫瘍剤および抗ウイルス剤として胃潰瘍の予防および治療に有効であることが分かった。したがって、これは、抗腫瘍および抗ウイルス薬剤組成物の製剤化、ならびに当業者に周知の手順に従って賦形剤および/または媒体と共に製剤化することができる、虚血再灌流障害に関連する胃腸潰瘍、出血性ショック、および器官損傷を治療するように設計された組成物に使用することができる。薬剤組成物、非経口、経口、および局所用組成物、ならびに眼のウイルス感染治療のための点眼薬。
【0014】
本発明の目的はまた、有効量の化合物(II)の投与を含む、腫瘍病態およびウイルス感染症の治療方法である。投与の用量および時間は、患者の必要に応じて医師によって決定されるであろう。
【0015】
本発明はまた、化合物(I)の前駆体、式(II)の化合物に関し、
【0016】
【化3】

【0017】
これはまた、NOを放出することができ、抗腫瘍剤および抗ウイルス剤として有効であることが証明されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】C6ラット星状細胞腫、L929マウス繊維肉腫、およびB16マウス黒色腫を種々の濃度のVGX−1027またはGIT27−NOで24時間インキュベートした後の細胞生存率を示す図である。
【図2】C6、B16、およびL929細胞に対しての様々な細胞障害効率ならびにGIT27−NOの動態を示す図である。
【図3】GIT27−NOがC6およびB16細胞の自食性細胞死を誘発することを示す図である。
【図4】GIT27−NOの細胞障害作用におけるROSの関与を示す図である。
【図5】GIT27−NOがMAPキナーゼおよびPTKの活性化を特異的に調節することを示す図である。
【0019】
次に、本発明を次の実験の部でより詳細に例示する。
【0020】
実験の部
化学的性質
【0021】
【化4】

【0022】
この反応は、以下に開示の手順に従って実施した:テトロン酸および誘導体;パートVI。新規な4−オキソ−2−フェニル−2H−4,6−ジヒドロフロ[3,4−d]トリアゾールおよび4−オキソ−4,6−ジヒドロフロ[3,4−c]フラザン系の簡便な合成。Parick Pollet、Suzanne Gelin。Synthesis、1979年、977〜979頁。
【0023】
亜硝酸ナトリウム(6.9g、100mmol)を、テトロン酸(10g、100mmol)を含む3MのHCl(60mL)撹拌溶液に少しずつ添加した。紫色の溶液を室温で15分間撹拌し、次いで、激しく撹拌しているヒドロキシルアミン塩酸塩(13.9g、200mmol)を含む水溶液(150mL)に滴下した。紫色の呈色は、室温で徐々に退色し、3,4−ビス[ヒドロキシルイミノ]−2−オキソテトラヒドロフラン(9.11g、63%)が白色針状晶として沈澱した。
【0024】
【化5】

【0025】
この反応は、DE4401150A1に開示の手順に従って実施した。
【0026】
3,4−ビス[ヒドロキシルイミノ]−2−オキソテトラヒドロフラン(5.5g、38.2mmol)とCH2Cl2(60mL)とメタノール(21mL)との混合物に、Pb(OAc)4(16.9g、38.2mmol)を5〜10℃で添加した。室温で2時間撹拌した後、トリエチルアミン(5mL、38.2mmol)を添加し、さらに30分間撹拌した。CH2Cl2(150mL)を添加し、混合物を水で洗浄した。CH2Cl2抽出物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸イソプロピルと共に撹拌し、ろ過し、ろ液を酢酸イソプロピルから再結晶して、4−ヒドロキシメチル−2−オキシフラザン−3−カルボキシメチルエステル(1g、15%)を得た。1H NMR(300MHz,C36O)δ 3.94(3H,s)、4.85(2H,s)。13C NMR(75MHz,C36O)δ 52.6、56.2、107.9、156.9、157.8。
【0027】
【化6】

【0028】
4−ヒドロキシメチル−2−オキシフラザン−3−カルボキシメチルエステル(611mg、3.51mmol)を、2Mのアンモニアと共にMeOH(25mL)中に添加した。溶液を室温で2時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮して、4−ヒドロキシ−2−オキシフラザン−3−カルボン酸アミド(551mg、98%)を得た。1H NMR(300MHz,C36O)δ 4.80(2H,s)。13C NMR(75MHz,C36O)δ 56.1、111.3、157.1、158.8。
【0029】
【化7】

【0030】
4−ヒドロキシ−2−オキシフラザン−3−カルボン酸アミド(170mg、1.07mmol)、(3−フェニル−4,5−ジヒドロ−イソオキサゾール−5−イル)酢酸(262mg、1.28mmol)、およびDMAP(65mg、0.53mmol)を含むCH2Cl2(10mL)の撹拌溶液を、DCC(264mg、1.28mmol)。に添加した。室温で24時間撹拌した後、ジエチルエーテル(50mL)を添加し、混合物をセライトでろ過した。ろ液を濃縮し、続いて、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン=4:1)にかけて、所望のエステル(356mg、96%)を得た。1H NMR(300MHz,C36O)δ 2.78(d,J=5Hz,1H)、2.91(d,J=5Hz,1H)3.30(d,J=8Hz,1H)、3.62(d,J=8Hz,1H)、5.14(m,1H)、5.48(s,2H)、7.42(m,3H)、7.68(d,J=8Hz,2H)。13C NMR(75MHz,C36O)δ 39.2、39.4、57.1、77.5、110.7、126.6、128.7、130.0、154.9、155.8、156.5、169.3。
【0031】
【化8】

【0032】
トリフルオロ酢酸無水物(0.3mL、2.02mmol)を、(3−フェニル−4,5−ジヒドロ−イソオキサゾール−5−イル)酢酸−4−カルバモイル−5−オキシフラザン−3−イルメチルエステル(348mg、1.01mmol)および乾燥ピリジン(0.15mL、2.02mmol)を含むTHF(10mL)の氷塩冷却下の撹拌溶液に滴下した。冷却浴を取り去り、撹拌を室温で1時間継続した。反応混合物を水に注ぎ、10%HCl(aq)で酸性化し、EtOAcで抽出した。一緒にした有機層をNa2SO4で乾燥し、蒸発させて残渣を得、それをフラッシュクロマトグラフィーで精製して、所望のニトリル(275mg、83%)を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ 2.79(d,J=5Hz,1H)、2.93(d,J=5Hz,1H)、3.12(d,J=8Hz,1H)、3.55(d,J=8Hz,1H)、5.11(m,1H)、5.29(s,2H)、7.38(m,3H)、7.59(d,J=8Hz,2H)。13CNMR(75MHz,CDCl3)δ 39.2、40.2、56.2、76.2、96.5、105.2、126.8、128.9、130.6、152.5、156.8、169.2。
【0033】
薬理作用
親化合物とNO共役化合物(I)の両方の抗腫瘍効果を、in vitroでのマウス繊維肉腫L929、マウス黒色腫B16、およびラット星状細胞腫C6細胞株において、ならびにC57BL/6マウスの黒色腫のin vivoモデルにおいて試験した。
【0034】
材料および方法
試薬、細胞、および動物
アクリジンオレンジは、Labo−Moderna(フランス)から得た。カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステルは、Molecular Probes(ユージーン、米国)から得た。ビスチロホスチンは、ICN Biomedicals(アーヴィン、カリフォルニア州)から得た。実験で使用する他のすべての化学薬品は、Sigma(セントルイス、米国)から購入した。GIT27−NOは、2.5%DMSOを含むH2O中において5μg/mlの濃度で+4℃で保存し、使用直前に培地で希釈した。対照細胞培養物は、実験で使用するGIT27−NOの濃度が最も高い溶液と同量のDMSOを含有した。
【0035】
ラットグリオーマ細胞株C6は、Dr.Pedro Tranque(Universidad de Castilla−La Mancha、アルベセテ、スペイン)からの寛大な寄贈品であり、ネズミメラノーマB16細胞株は、Dr.Sinisa Radulovic(Institute for Oncology and Radiology of Serbia、ベオグラード、セルビア)からの寛大な寄贈品であり、マウス繊維肉腫L929は、European Collection of Animal Cell Cultures(ソールズベリー、英国)から得た。細胞は、5%FCS、2mMのグルタミン、0.01%ピルビン酸ナトリウム、5×10-5Mの2−メルカプトエタノール、および抗生物質(培地)を補充したHEPES緩衝RPMI1640培地中で5%COの加湿雰囲気下において37℃で増殖させた。従来のトリプシン処理後、細胞を、104細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに、2×105細胞/ウェルの濃度で6ウェルプレートに、または3×104細胞/ウェルで4ウェルチャンバースライドに播種し、一晩培養し、次いで試験化合物に曝露した。
【0036】
近交系C57BL/6マウスは、Institute for Biological Research「Sinisa Stankovic」(ベオグラード、セルビア)の本発明者らの施設からのものであり、標準的な実験室条件(非特定病原体除去)下で食物および水に自由に近づける状態にしておいた。動物の取り扱いおよび試験プロトコルは、国際的なガイドラインに従い、現地の研究機関の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認された。
【0037】
MTT、CV、およびCFSE染色
平底96ウェルプレートに細胞を播種(104細胞/ウェル)し、培地の最終体積を200μlにし、一晩インキュベートし、次いで、種々の濃度の試験化合物で処理した。24時間のインキュベーション後、細胞生存率を、すでに記載されているように(Mijatovicら、CMLS、2004年)、3−4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)からホルマザンへのミトコンドリア依存性還元に基づくMTT試験を使用するか、または付着細胞のクリスタルバイオレット(CV)染色によって評価した。結果は、未処理培養物で得られた対照値の%として示す。細胞増殖の速度はまた、CFSEで標識した細胞のフローサイトメトリー分析を使用して決定した(Kang、2005年)。細胞を脱離し、1.5μMのCFSEを添加し、37℃で15分間静置し、次いで2回洗浄し、2×105で6ウェルプレートに播種した。細胞を化合物で24時間および48時間処理し、トリプシン処理し、2回洗浄した。最後に、細胞をPBS中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。488nmの励起光で照射された細胞からの緑色蛍光発光をFACS Calibur(BD、ハイデンベルグ、ドイツ)を用いて測定し、CellQuestソフトウェアを使用して分析した。
【0038】
細胞死の決定
壊死性細胞死のマーカーとして、ピルビン酸塩の存在下で2,4−ジニトロフェニルヒドラジンから可視のヒドラゾン沈澱物への転換を媒介する細胞内酵素LDHの放出を測定した。すでに記載されているように(Deckerら)、上記の通りに細胞を平底96ウェルプレートに播種し、24時間のインキュベーション後にアッセイを行った。死細胞のパーセンテージは、次式を使用して決定した:[(E−C)/(T−C)]×100、式中、Eは、492nmで測定された処理培養物の実験吸光度であり、Cは、対照未処理細胞の上澄み液の吸光度であり、Tは、トリトン溶解細胞の最大(100%)LDH放出に対応する吸光度である。文献(Mijatovic、CMLS、2005年)に記載のように、細胞周期分析およびアポトーシス検出を正確に行った。酸性小胞の細胞小器官は、自食作用を特徴とし、生体染色色素アクリジンオレンジによって染色される。赤色蛍光の強度は細胞小器官の酸性度および体積に比例し、一方、細胞質および核小体は鮮緑色および暗赤色を発光する(Kanzawa、2004年)。自食作用の検出に関しては、先に記載されているように細胞を6ウェルプレートで培養し、脱離し、1μg/mlのアクリジンオレンジで室温にて15分間染色した。インキュベーション期間の最後に、細胞を洗浄し、最後にPBS中に再懸濁させた。青色(488nm)励起光で照射された104細胞からの緑色(510〜530nm)および赤色(>650nm)蛍光発光は、FACSCaliburを用いて測定し、CellQuestソフトウェアを使用して分析した。
【0039】
ROSおよび亜硝酸塩蓄積の測定
6ウェルプレート中で増殖させた細胞を、試験化合物で処理する前に、1μMのジヒドロローダミン123(DHR)で20分間染色した。培養期間の最後に、細胞を脱離し、洗浄し、PBS中に再懸濁させた。ROS放出の分析は、FACSCaliburを用いて行い、CellQuest Proソフトウェアを使用して分析した(Kaludjerovic、2005年)。
【0040】
すでに記載されているように(Mijatovicら、CMLS、2004年)、亜硝酸塩蓄積は、グリース反応によって測定した。
【0041】
細胞ベースELISA
MAPキナーゼ(p38MAPK、細胞外シグナル制御キナーゼ−ERK、およびJun−N末端キナーゼ−JNK)または核内因子−κB(NF−κB)の活性化は、Versteegらによる細胞ベースELISA(Versteeg、2000年)をわずかに修正した方法によって決定した。本発明者らは、リン酸化形態にしたMAPキナーゼ(p−p38、p−ERK、およびp−JNK)およびIκB(p−IκB)に特異的な抗体を使用した。と言うのは、MAPキナーゼはリン酸化によって活性化され、抑制性サブユニットIκBのリン酸化はNF−κB活性化に必要なステップだからである。96ウェル平底プレートにおいて0.5%FCSを含む培地で細胞を一晩増殖させ、次いで、従来の培地で希釈した試験化合物によって処理した。処理期間の最後に、細胞を4%パラホルムアルデヒドに固定し、内因性ペルオキシダーゼを1%H22を含む0.1%トリトンX−100含有PBS(PBST)で失活させ、抗体の非特異的結合を10%FCS含有PBST溶液で阻止した。ラット/マウスp−ERK、p−p38、p−JNK、p−IκBに特異的な一次マウスモノクローナル抗体(1:200;Santa Cruz Biotechnologyからすべて入手、サンタクルーズ、カリフォルニア州)を、2%ウシ血清アルブミンを補充したPBST(PBSTB)に加え、続いて、抗p−ERK、抗p−JNK、および抗p−IκBには二次ペルオキシダーゼ標識(conjugated)ヤギ抗マウスIgG(PBSTB中で1:2500;USB corporation、クリーヴランド、オハイオ州)を、または抗p−p38の検出には抗マウスIgM(1:4000;USB corporation)を加えた。抗体とのインキュベーションを37℃で1時間実施した。ペルオキシダーゼ基質TMBと共にインキュベートし、続いて0.1MのHClを添加してから15分後、450nmの吸光度を自動マイクロプレートリーダーで測定した。処理と対照との間の比較を可能にするために、得られた吸光度は、オリジナルプロトコルに記載される、クリスタルバイオレット染色によって決定された細胞数に関して補正した。結果は、任意に1に設定した対照値と比較する相対表示として示す。
【0042】
C57BL/6マウスにおける黒色腫の誘発およびGIT27−NOでの処置
同系C57BL/6マウスの背部右側の腰仙部にB16黒色腫細胞2×105を皮下(s.c)注射して、原発腫瘍を誘発させた。腫瘍増殖は毎日観察され、GIT27−NOでの処置は、最初の腫瘍が触知できた日(10日)から開始した。GIT27−NOは、処置直前に準備し、0.5mg/マウスの用量で14日間連続してi.p.(腹腔内)投与した。30日まで動物を観察し、次いで屠殺し、各マウスからの個々の腫瘍を三次元測定して腫瘍増殖を決定した。腫瘍体積は、次式を使用して計算した:[0.52×a×b2]、式中、aは、最長の直径であり、bは、最短の直径である(Smagurら)。
【0043】
NMRIマウスにおけるコンカナバリン(ConA)注射によって誘発された肝炎およびGit27−NOを用いた処置
ConA誘発肝炎は、ConAの単回静脈内注射によってマウス中に誘発することができるヒトの肝疾患の様々な免疫炎症状態に類似した細胞媒介性免疫炎症状態である。この疾患は、ConA投与(challenge)後短時間(8〜24時間)での血漿のトランスアミナーゼレベルの有意な上昇、ならびに好中球、マクロファージ、およびT細胞の肝臓への同時浸潤、それに続く肝細胞のアポトーシスおよび壊死を特徴とする。
【0044】
肝炎は、6〜9週の米国海軍医学調査研究所(Naval Medical Research Institute)(NMRI)の雄のマウスの尾静脈へのConA(Sigma Chemical、セントルイス、ミズーリ州)注射によって誘発した。4グループのマウスをConA投与の24時間および1時間前にGit27−NOで処置、すなわち、Git27−NOを、または媒体と共に、0.5および1mg/マウスの用量でi.p.投与、または5mg/マウスの用量でp.o.(経口)投与した。ConA注射の8時間後に血液採集のために動物を屠殺し、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性を、二色(bichromatic)分析装置を使用して、標準光度アッセイによって決定した。
【0045】
統計分析
結果は、別段の指示がない限り、類似の結果を示す少なくとも3つの実験を代表する実験の3点の観測値(triplicate observation)の平均値±SDとして示す。様々な処置間の差の有意性は、in vivoでのGIT27−NO効果を評価するための分散分析(ANOVA)、続いてスチューデント−ニューマン−クールズ検定またはマン−ホイットニーU検定によって評価した。0.05未満のp値は、有意であると考えた。
【0046】
結果
GIT27−NO対VGX−1027の抗腫瘍活性の評価
VGX−1027およびGIT27−NOの抗腫瘍効果を評価するために、本発明者らは、3種の悪性細胞株、C6ラット星状細胞腫、L929マウス繊維肉腫、およびB16マウス黒色腫を種々の濃度の薬剤と共に24時間インキュベートし、次いで、細胞生存率をMTTおよびCV試験によって決定した。図1Aに示すように、親化合物VGX−1027は、腫瘍細胞の生存率に影響を及ぼさなかった。一方、3種の細胞株すべてを同じ濃度範囲のGIT27−NOで処理(図1B)すると、ミトコンドリア呼吸の用量依存的減少が引き起こされた。効果は、CVによって推定される細胞数の減少に関して評価した(図1C)。したがって、不活性なVGX−1027の化学修飾が強力な殺腫瘍活性を有する新規化合物をもたらしたことは明白であった。これを考慮し、本発明者らは、更なる調査からVGX−1027を除外した。化合物(I)の抗腫瘍効果とそのNO放出能との関係を評価するために、本発明者らは、細胞培養物の上澄み液中の亜硝酸塩の蓄積を培地だけの場合のその量と比較した。図1Dに示すように、GIT27−NOは細胞がない状態ではNOを放出せず、亜硝酸塩を形成しないが、細胞の処理後は、有意量の亜硝酸塩が観察された。これらのデータは、従来の外因性NOドナーと異なり、GIT27−NOがNOの自発的な放出ができないことを示唆している。細胞生存率の下方調節を媒介するGIT27−NOにおけるNOの役割を調査するために、本発明者らは、NOスカベンジャーヘモグロビンと同時に腫瘍細胞を培養した。こうした条件においてGIT27−NOで処理された細胞の生存率はほぼ完全に回復し、これによって薬物媒介性細胞毒性におけるNOの重要性が示された(図1E)。この現象はさらに、光学顕微鏡によって視覚化された(図1F)。
【0047】
GIT27−NOは異なるタイプの細胞死を誘発する
化合物(I)の抗増殖効果を決定するために、本発明者らは、GIT27−NOを含むまたは含まない状態での24時間培養中のCFSE染色細胞のフローサイトメトリー分析を行った。GIT27−NOでの処理後に生存しているL929およびB16細胞の数が有意に減少したにもかかわらず(図1BおよびC)、これらの細胞は未処理対照細胞とほぼ同じ頻度で分裂しており(表1)、これによって増殖の阻害が観察された抗腫瘍効果の原因ではないことが示された。同時に、GIT27−NOでの処理はC6細胞の増殖に影響を及ぼし(表1)、これによって生細胞の減少がこの細胞株に対する薬剤の細胞増殖阻害効果によって少なくとも部分的に媒介されていることが示唆された。続いて、本発明者らは、細胞をGIT27−NOで処理したときの様々なタイプの細胞死の存在を分析した。壊死は、死につつある細胞の乱された浸透性に基づいてLDH放出アッセイによって決定した。(図2AおよびB)に示すように、GIT27−NO処理は、試験した3種の細胞株すべてにおいてLDH放出を誘発した。LDH放出は、用量依存的(図2A)でも時間依存的(図2B)でもあった。しかし、有意量のLDHが、初期の時点ではなく薬剤と共に培養した18時間後に検出可能となり、これによって観察された効果が一次の壊死性細胞死ではなくアポトーシスの末期(二次的壊死)に起因する可能性があることが示唆された。化合物(I)と共に培養した24時間後に行った細胞DNA含量の分析から、L929培養物の低二倍体細胞(PI染色細胞のサブGコンパートメント)の割合が有意に増加したことが明らかとなった(図2C)。一方、GIT27−NOの存在下でインキュベートした後のサブGコンパートメントにおけるC6およびB16細胞のパーセンテージは、L929培養物中よりも低く(10%未満)、これによって薬物媒介性細胞毒性における他のタイプの細胞死の重要性が示された(図2C)。さらに、G0/G1期での細胞周期停止が、GIT−27NOで処理されたC6細胞に観察された(図2C)。したがって、凝縮したクロマチンおよび収縮した核を有する細胞が薬物曝露培養物中に目視され、これによってB16およびC6細胞とは対照的にL929培養物でのアポトーシス性細胞死の広がりが確認された(図2D)。したがって、本発明者らは、GIT27−NOで処理した後のC6およびB16細胞において自食性細胞死として知られる別の様式の細胞死を分析した。自食作用に特有な酸性オートファゴソームの発生を確認するために、本発明者らは、アクリジンオレンジで染色された細胞のフローサイトメトリー分析を行った。図3A〜Cに示すように、両方の細胞株において、GIT27−NOは、酸性小胞の発生を示す鮮赤色蛍光の強度を有意に増大させた。化合物(I)に曝露された細胞の生存率低下における自食性細胞死の関連性を調査するために、本発明者らは、周知の自食作用の阻害剤バフィロマイシンA(Baf)および3−メチルアデニン(3−MA)と同時に細胞を処理した。3−MAは、PI−3キナーゼの阻害によって自食性分解(autophagic sequestration)を阻害し、Baf、液胞型H+−ATPアーゼ阻害剤は、オートファゴソームとリソソームとの融合を阻止した(Kanzawa、2004年)。MTTアッセイで判断されるように、GIT27−NOで処理された細胞の生存率は、試験した両方の自食作用阻害剤の存在下で回復され、それによってC6およびB16細胞へのGIT27−NO細胞毒性における自食性細胞死の寄与が確認された(図3E)。光学顕微鏡によって、3−MAの存在下で回復したC6細胞の生存率が確認された(図3F)。総合的に考えると、これらの結果は、様々な癌細胞において様々なタイプの細胞死を誘発する能力が、GIT27−NOの特性に基づくものではなく、細胞型の固有の特異性に基づくものであることを示唆している。
【0048】
【表1】

【0049】
GIT27−NOの細胞毒性はROS発生に依存する
酸化ストレスが細胞死を引き起こすことは周知である。したがって、本発明者らは、観察されたGIT27−NOの細胞障害作用における酸化ストレスの役割を調査した。対照細胞と比べて、ROSの細胞内産生は、細胞内DHR蛍光によって推定されるように、GIT27−NOで細胞を処理した後に著しく増加した(図4A〜C)。スカベンジャーNACによってROSを無効化すると、GIT27−NOで処理された細胞の生存率が回復されて、ROSの放出が薬剤の殺腫瘍性作用の少なくとも部分的な原因であることが示された(図4D)。
【0050】
GIT27−NOは、C6、B16、およびL929腫瘍細胞におけるMAPキナーゼ経路を差次的に調節する
マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼは、生存、増殖、および死に含まれる、細胞外シグナルから重要な細胞内シグナルへの転換に不可欠なセリンスレオニンキナーゼのファミリーである(Schindler、2001年、Wada、2004年、Arbabi、2002年)。したがって、本発明者らは、これらのシグナル伝達経路の活性化に対するGIT27−NOの影響を分析した。細胞ベースELISAによって決定されるように、様々なシグナル伝達分子は、様々な細胞株での標的である。C6細胞では、GIT27−NOは、ERK1/2およびJNKの永続的な活性化を誘発した(図5A)。一方、B16細胞の培養物において異なるパターンが観察された。GIT27−NOはB16細胞のERK1/2の活性化に影響を及ぼさなかったが、JNKの時間依存性の有意な活性化およびp38のほんのわずかな活性化が観察された(図5B)。最後に、L929をGIT27−NOで処理すると、JNKの発現に影響を及ぼすことなく、ERK1/2の著しい持続的活性化およびp38の有意な一時的活性化がもたらされた(図5C)。細胞生存率の減少におけるMAPキナーゼ活性化の生物学的意義を評価するために、本発明者らは、これらの分子の既知の薬理学的阻害剤:ERK活性化にはPD98059、JNK活性化にはSP600125、およびp38活性化にはSB202190を使用した。GIT27−NOと共にインキュベートする前に、これらの阻害剤の各々で当該細胞を30分間パルスし、培養24時間後にMTTによって生存率を推定した。C6細胞を特異的なERKおよびJNK阻害剤で(図5D)、B16細胞をJNK阻害剤で(図5E)、L929細胞をERKおよびp38阻害剤(図5F)で処理すると、腫瘍細胞株の生存が有意に改善され、これによって薬物媒介性細胞毒性におけるこれらの分子の役割が確認された。したがって、データは、GIT27−NOのシグナル伝達カスケードにおいて様々な分子を誘発する能力が、主に細胞型によって決定されることを示唆している。上流のシグナル伝達分子の影響を調査するために、本発明者らは、GIT27−NOと同時に、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)阻害剤、チロホスチンを用いて細胞を処理した。図5Gに示すように、PTKの阻害は試験した細胞株すべての生存率をほぼ完全に回復させ、これによって薬物作用の標的位置が同じであることが示された。光学顕微鏡によって、GIT27−NOで処理されたC6細胞に対するチロホスチンの効果を視覚化した(図5H)。
【0051】
GIT27−NOは、B16黒色腫を担持するC57BL/6マウスの腫瘍増殖を阻害する
本発明者らは、in vitroでのGIT27−NOの細胞毒性特性を実証した後、B16黒色腫担持マウスにおけるそのin vivo抗腫瘍特性を評価した。表2に例示するように、GIT27−NOによる短期処置(0.5mg/マウス/日を10日間)は、最初の腫瘍が触知できた腫瘍移植10日後に開始し、未処置対照動物に比べて腫瘍増殖の有意な低下を伴った。GIT27−NOの投与を中断した後でも効果は安定していた。対照群では2匹の動物だけが死亡したが、GIT27−NOで処置した動物はすべて、30日間の追跡期間生存した(図示せず)。総合的に考えると、B16黒色腫細胞へのGIT27−NOの細胞毒性特性は、そのin vivo抗腫瘍効果に関連している。
【0052】
【表2】

【0053】
GIT27−NOは、ConA誘発肝炎におけるALTグルコース血中濃度を低下させる
Git27−NOによる予防的処置は、試験した用量すべてにおいて、媒体処置のマウスと比べてALTグルコース血中濃度を有意に低下させた。
【0054】
【表3】

【0055】
考察
この試験は、VGX−1027の化学修飾によって、強力な殺腫瘍能を有する新規なNO供与化合物が得られることを示すものである。3種の異なる細胞株、L929マウス繊維肉腫、C6ラット星状細胞腫、およびB16黒色腫を修飾済み物質GIT27−NOで処理すると、それらの生存率が劇的に低減された。対照的に、親化合物VGX−1027は、GIT27−NOと同じまたはより高い(データ不掲載)濃度範囲において腫瘍細胞増殖に影響を及ぼさなかった。GIT27−NOの抗腫瘍効果は、その細胞増殖阻害効果によって媒介されるのではなく、むしろ細胞死誘導をまねく細胞内現象のカスケードを引き起こす能力に基づくものである。しかし、GIT27−NOがG0/G1期での細胞分裂の停止を引き起こしたので、C6細胞株は例外となった。多数の証拠から、NOが共有結合して修飾した抗炎症性非ステロイド薬の強力な抗悪性腫瘍特性が明らかとなった(Rigas、2004年)。例えば、ヒトの膀胱、前立腺、結腸癌、およびジャーカット白血病細胞の有意な増殖低下は、様々なNO−NSAIDでの処置時に観察された(Kashfiら、2003年、Yeh、2004年、Huguenin、2005年、Huguenin、2004年、Huguenin、2004年、Gao、2005年、Nath、2004年、Spiegel、2005年)。本発明者らは、細胞の生存率の減少が、壊死性細胞死の典型的な特徴と見なされるLDHの放出に付随するものであることを観察した。しかし、薬剤存在下での18時間のインキュベーション後に壊死が観察され、これによってLDH放出が一次の壊死ではなく二次のアポトーシスに主として起因する可能性があることが示唆された。抗癌剤作用において最もよく起こる機序は、アポトーシスの誘導である(Ferreira、2002年)。腫瘍細胞がアポトーシス性細胞死に対して耐性があるという多くの証拠がある(Kim、2005年)。この現象は、抗アポトーシス特性を有するシグナル伝達分子の過剰発現によって説明することができよう(Gabriel、2003年)。GIT27−NOの非常に興味深い特徴は、殺腫瘍の機序を細胞特異性に適応させる能力である。L929細胞株は、中胚葉由来のものであり、主としてアポトーシスによって死滅した。したがって、NO−アスピリンは結腸癌細胞のアポトーシスを誘発することができ、一方、別の薬剤、NO−スリンダクは、膀胱および前立腺癌のアポトーシス性死に関与することが報告された(Gao、2005年、Huguening、2004年)。L929細胞とは対照的に、GIT27−NOで処理されたC6およびB16細胞中にほんの少量の低二倍体細胞が検出された。一方、GIT27−NOは、C6およびB16細胞株の培養物中で自食作用を誘発した。最近、放射線、およびタモキシフェン、アロエエモジン、三酸化ヒ素などの抗癌剤の作用様式としての自食作用の誘導が報告された(Mijatovic、2005年、Kanzawa、2004年、Bilir、Paglin、Gorka、2003年)。細胞を特異的阻害剤3−MAおよびバフィロマイシンAで処理すると、細胞生存率が回復され、これによって本発明者らの条件下では自食作用は救済(salvaging)機序ではなく破壊機序として働くことが確認されている。細胞が既知のPI−3K阻害剤3−MAによってGIT27−NO誘発毒性から効率的に救出されたことにより、この経路の重要性が指摘された。これは今後の研究の対象となろう。アポトーシス性細胞死と自食性細胞死との間の相互作用は、十分立証されている。これらの2タイプの細胞死は細胞中で共存し、状況に応じて、両者は互いを誘因または阻害することができよう(Kim、2006年)。しかし、アロエエモジンはアポトーシス誘発剤と考えられているが、本発明者らは、この薬剤がグリオーマ細胞株では自食性細胞死の誘発によって優先的に作用することを見出した(Pecere、2000年、CMLS、2005年)。興味深いことに、GIT27−NOは、外因性ドナーのようにNOを自発的に放出することはできないが、細胞の存在下では有意量の亜硝酸塩を検出することができた。したがって、NO放出に関して、GIT27−NOが細胞との接触を必要とすることは明白である。さらに、NOスカベンジャーヘモグロビンはこの化合物の効果をほぼ完全に無効にし、これによって腫瘍増殖の抑制におけるNOの重大な役割が確認された。NOが、遊離のアミノ酸、ペプチド、もしくはタンパク質のチオール基への強力な親和性、電子供与性、および/または新規なフリーラジカルを形成する能力を有する高反応性種であることは周知である(Schindler、2001年)。ROSおよびRNSがアポトーシス性および自食性細胞死を媒介することは以前示された(Li、2005年、Kanzawa、2004年、Erdal、2005年)。VGX−1027で細胞を処理してもROSは放出されないが(データ不掲載)、GIT27−NOの存在下では有意量のROSが測定された。DHRはまたペルオキシ亜硝酸塩も検出し、これはO2-とNOとの反応生成物であり、実際に最も反応性のある破壊分子(destroying molecule)の1つである(Lechner 2005年、Li 2005年)。NO放出が反応性ラジカルの産生を引き起こし、結果として細胞生存率の低下をまねいたことは明白であり、これは抗酸化剤NACでの処置によってさらに確認された。本発明者らの研究と一致して、Gaoらは、NO供与アスピリンが酸化ストレスの誘発によってヒト結腸癌細胞でアポトーシスを誘発したことを示した(Gao、PNAS)。さらに、NOが、酵素および転写因子の活性を劇的に調節し、その結果、増殖、分化、および細胞死過程の調節に含まれる細胞シグナル伝達経路を変えることは周知である(Schindler、2001年)。NO供与アスピリンの抗腫瘍効果は、MAPキナーゼの活性化によって媒介される(Hundley、2005年)。NO供与薬が結腸癌細胞中のJNKおよびp38を活性化し、その結果AP−1複合体の活性化が導かれたが、特異的阻害剤によるこれらのキナーゼの阻害が薬剤の細胞障害効果を部分的に阻止したことがこれらの著者らにより報告された。GIT27−NOは、細胞型に応じてMAPキナーゼファミリーのメンバーの活性を特異的に変更した。L929細胞では、GIT27−NOが、ERK1/2の強力な時間依存的上方調節、続いてp−38の一過性上方調節を誘発したが、B16細胞を同じ薬剤で処理すると、JNKの強力なリン酸化およびp38のほんのわずかな増加がもたらされた。C6グリオーマ細胞は処理中にJNKおよびERKを同時に上方調節したが、p38の活性は影響を受けなかった。GIT27−NOに対する細胞応答の変化が細胞死の機序に関係するという仮説が成り立つ。シスプラチンによって誘発されるL929細胞でのERK1/2の強力な活性化が細胞をアポトーシスヘ導き、その抑制が薬剤の抗腫瘍能を無効にすることは周知である。したがって、GIT27−NOでの処理時に上方調節したERK1/2がL929細胞の優先的なアポトーシスの原因と思われる。これは、試験した3種の細胞株すべてにおいてPTK阻害が薬剤の細胞毒性を打ち消したと述べるに値する。これは、薬物作用が最初は同じであり、各細胞株中の異なるシグナル伝達経路の活性化から差が生じ得ることを証明した。本発明者らは、NO−NSAIDが癌を含むいくつかの障害のための非常に有望なクラスの薬剤であることをすでに述べている(Riggs、2004年、概説)。NO−NSAIDは、Minマウス、結腸癌のラットモデルでの腸の発癌、さらにハムスター腫瘍モデルでの膵臓癌を阻止した(Ouang、Bak、Williams、Rao)。注目すべきことは、GIT27−NOが、C57BL/6マウスでのB16黒色腫の増殖を有意に抑制したことである。親化合物の機能変換により、NOが主に媒介する強力な殺腫瘍性が決定された。各タイプの処理済み細胞に対する作用機序の適応性は、他の化学療法と比べて有利である。本発明者らの結果は、化合物(I)の可能な治療用途のさらなる研究の開始点となろう。
【0056】
図の説明
図1。GIT27−NOは、NO放出によって腫瘍細胞の生存率を下方調節させる。B16黒色腫、L929繊維肉腫、およびC6星状細胞腫の細胞(1×104/ウェル)を、様々な濃度のVGX−1027またはGIT27−NOで処理した。24時間の培養後、細胞生存率を、MTT(A、B)およびCV試験(C)によって決定した。培地での亜硝酸塩の蓄積(D)は、GIT27−NOの存在下でC6細胞を24時間処理した後に、または細胞を含まないGIT27−NOの示した希釈液において検出した。24時間のインキュベーション後、GIT27−NO(25mg/ml)と同時にヘモグロビン(12.5μM)で24時間処理したC6細胞のMTTアッセイ(E)および光学顕微鏡分析(F)を行った。データは、独立した3つの実験の代表からの平均値±SDとして示す。*p<0.05は、未処理培養物を指す。
【0057】
図2。C6、B16、およびL929細胞に対しての様々な細胞障害効率ならびにGIT27−NOの動態。(A)細胞を様々な用量のGIT27−NOと共に24時間インキュベートし、あるいは(B)では動態学的評価のために25μg/mlのGIT27−NOと共に24時間インキュベートし、LDH放出アッセイを行った(*p<0.05)。(C)細胞を25μg/mlのGIT27−NOと共に24時間インキュベートした後にPIで染色し、細胞周期をフローサイトメトリーによって分析した。(D)細胞を25μg/mlのGIT27−NOで24時間処理し、PI染色後にアポトーシス(矢印)の核形態特性を蛍光顕微鏡法によって調査した。
【0058】
図3。GIT27−NOは、C6およびB16細胞の自食性細胞死を誘発する。(A〜D)GIT27−NOなしでまたはGIT27−NO(25μg/ml)と共に24時間培養した後、C6およびB16細胞をアクリジンオレンジで染色し、橙赤色の酸性自食小胞の存在に関してフローサイトメトリーによって分析した。(E)示すように、細胞を、何もなしで、またはGIT27−NO(25μg/ml)、3−MA(1mg/ml)、および/もしくはBaf(0.5μM)と共に24時間インキュベートし、MTTアッセイを行った。*p<0.05は、適切な対照を指す。(F)何もなしで(対照)、またはGIT27−NO(25μg/ml)および/もしくは3−MA(1mg/ml)と共に24時間インキュベートしたC6細胞の光顕微鏡写真図。
【0059】
図4。GIT27−NOの細胞障害作用におけるROSの関与。(A〜C)細胞を、GIT27−NO(25μg/ml)がない状態(対照)またはある状態でインキュベートし、24時間後にROSの産生をDHR蛍光のフローサイトメトリーによって検出した。(D)抗酸化剤NAC(2.5μM)がある状態またはない状態でGIT27−NOなしでまたはGIT27−NO(25μg/ml)と共にインキュベートした細胞の生存率を、24時間後にMTTアッセイによって決定した。*p<0.05は、適切な対照を指す。
【0060】
図5。GIT27−NOは、MAPキナーゼおよびPTKの活性化を特異的に調節する。(A〜C)細胞を25μg/mlのGIT27−NOと共にインキュベートし、示した時点でのJNK、ERK、およびp38MAPKの活性化を細胞ベースELISAによって評価した。データは、0時点での未処理対照培養物(*p<0.05)で得られた値に対する倍率(fold increase)として示す。(D〜G)細胞を、特異的阻害剤PD98059(PD、50μM)、SP600125(SP、0.75μM)、SB202190(SB、20μM)、またはチロホスチン(Tyr、5μM)がある状態またはない状態で、GIT27−NOなしで(対照)またはGIT27−NO(25μg/ml)と共にインキュベートし、24時間のインキュベーション後にMTTアッセイを行った。*p<0.05は、適切な対照を指す。(G)何もなしで(対照)、またはGIT27−NO(25μg/ml)および/もしくはTyr(5μM)と共に24時間インキュベートしたC6細胞の光顕微鏡写真図。
【0061】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
【化1】

【請求項2】
式(II)の化合物。
【化2】

【請求項3】
適切な賦形剤および/または媒体との混合物として請求項1または2に記載の化合物を含む薬剤組成物。
【請求項4】
治療有効量の請求項1または2に記載の化合物の投与を含む、腫瘍の治療方法。
【請求項5】
治療有効量の請求項1または2に記載の化合物の投与を含む、ウイルス感染症の治療方法。
【請求項6】
治療有効量の請求項1または2に記載の化合物の投与を含む、急性または慢性B型およびC型肝炎ならびに自己免疫性肝炎の間に生じるものなどの肝臓の免疫炎症事象の治療方法。
【請求項7】
治療有効量の請求項1または2に記載の化合物の投与を含む、虚血再灌流障害および関連する病態中の組織損傷に伴う胃潰瘍、出血性ショック、およびいくつかの病態の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−526112(P2010−526112A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506845(P2010−506845)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003626
【国際公開番号】WO2008/138516
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509307462)ガニアル イミュノテラペウティクス インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】GANIAL IMMUNOTERAPEUTICS INC.
【Fターム(参考)】