説明

(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形

化合物(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の新規結晶形、ならびにそれらの結晶形の製造方法、それらを含む医薬組成物、および医療処置におけるそれらの結晶形の使用を提供する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、新規な結晶性化合物、より具体的には下記の式(I)に示す(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の新規結晶形に関する。この化合物は、アセチルCoA(アセチル補酵素A):ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)活性の阻害薬である。本発明はまた、それらの結晶形の製造方法、それらの結晶形を含む医薬組成物、および医療処置におけるそれらの結晶形の使用に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
本出願人の出願中の国際特許出願PCT/GB2005/004726には、DGAT1を阻害するオキサジアゾール含有化合物が記載されている。その出願に式(I)の化合物が例示され(国際特許出願PCT/GB2005/004726;WO2006/064189の例541)、酢酸からの再結晶後に結晶性固体として得られ、以後は結晶形1として知られている。結晶形1に関する粉末X線回折パターンを図2Aに示し、結晶形1に関する酢酸溶媒和物の熱データを図2Bに示す。
【0004】
本発明者らは今回、意外かつ予想外に式(I)の薬剤を他の結晶形で製造しうることを見いだした;以下において結晶形2および結晶形3と呼ぶ。そのような多形は、異なる溶解性および/または安定性および/または生物学的利用能および/または異なる不純物プロフィール(たとえば製造および/または単離の方法のため生じる微量の不純物)、ならびに/あるいは取扱い、微細化および/または錠剤成形がより容易な結晶形をもつ可能性がある。
【0005】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=21.4および22.7°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形2が提供される。
本発明によれば、2−シータ(2θ)=16.8、21.4および22.7°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形2が提供される。
【0006】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=4.7、9.3、16.8、21.4および22.7°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形2が提供される。
【0007】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=4.7、9.3、16.8、21.4、22.7、23.3および25.9°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形2が提供される。
【0008】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=4.7、9.3、16.2、16.8、17.7、18.1、18.6、21.4、22.7、23.3、25.9および29.2°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形2が提供される。
【0009】
結晶形2に関する粉末X線回折パターンを図1に示す。結晶形1と2の比較を図3に示し、結晶形2に関する熱データを図4に示す(無水物形の結晶形2)。
本発明によれば、実質的に図1に示す粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形2が提供される。
【0010】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=8.4、13.8および16.7°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形3も提供される。
本発明によれば、2−シータ(2θ)=7.0、8.4、13.8、16.7、21.6および24.3°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形3も提供される。
【0011】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=4.8、5.6、7.0、8.4、13.8、16.7、19.5、20.0、21.6および24.3°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形3も提供される。
【0012】
結晶形3に関する粉末X線回折パターンを図5に示し、結晶形3に関する熱データを図6に示す(無水物形の結晶形3)。
本発明によれば、実質的に図5に示す粉末X線回折パターンを有する(I)の結晶形、結晶形3も提供される。
【0013】
表1、2および3は、それぞれ結晶形2、1および3に関する主ピークを示す。
本発明により得られる結晶形2および3は、それぞれ実質的に化合物(I)の他の結晶形および非結晶形を含まない。用語”実質的に他の結晶形および非結晶形を含まない”は、目的結晶形が化合物(I)の他のいずれかの結晶形を50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満含有することを意味すると理解すべきである。
【0014】
粉末X線回折パターンは、結晶性材料の試料をSiemensシリコン単結晶(SSC)ウェーハマウントに載せ、試料を顕微鏡スライドガラスで広げて薄層にすることにより測定された。試料を毎分30回転で遠心し(計測統計値を改善するため)、Bruker D5000粉末X線回折計(Bruker AXS,Banner Lane Coventry CV4 9GH)を用いて40kVおよび40mAで作動する銅ロングファインフォーカス(long−fine focus)管により発生する波長1.5406オングストロームのX線で照射した。コリメートしたX線源を、V20に設定した自動開度可変スリットに通し、反射光を2mmの散乱防止スリットおよび0.2mmの検出スリットへ向けた。試料を0.02°の2−θ増分につき1秒間(連続走査モード)、2°から40°の2−θ範囲にわたってθ−θモードで露光した。この計測器は検出器としてシンチレーション計数器を備えていた。制御およびデータ取得は、Diffrac+ソフトウェアで作動するDell Optiplex 686 NT 4.0 Workstationにより行われた。
【0015】
測定条件(たとえば装置、試料調製または使用する機器)に応じて1以上の測定誤差をもつ粉末X線回折パターンが得られる可能性があることは当業者に自明である。特に、粉末X線回折パターンの強度が測定条件および試料調製に応じて変動する可能性があることは一般に知られている。たとえば、ピークの相対強度はたとえば30ミクロンを超える大きさの結晶粒および不統一なアスペクト比により影響を受ける可能性があり、これが試料の分析に影響を及ぼす可能性があることを、当業者は認識しているであろう。反射の位置は回折計中に試料を置く厳密な高さおよび回折計のゼロ検量により影響を受ける可能性があることも、当業者は認識しているであろう。試料の表面平面性もわずかな影響を及ぼす可能性がある。したがって、本明細書に提示した回折パターンデータを絶対と解釈すべきでないことは、当業者に認識されるであろう(これ以上の情報についてはJenkins,R & Snyder,R.L. ’Introduction to X−Ray Powder Diffractometry’ John Wiley & Sons,1996を参照)。
【0016】
したがって、化合物(I)の結晶形はそれぞれ図1および5に示す粉末X線回折パターンと同一の粉末X線回折パターンを提示する結晶に限定されず、それぞれ図1および5に示すものと実質的に同じ粉末X線回折パターンを提示する結晶はいずれも本発明の範囲に含まれることを理解すべきである。
【0017】
結晶形2および3は、標準法に従って示差走査熱量測定(DSC)および熱重量測定分析(TGA)など当技術分野で既知の分析技術により特性分析することもできる;たとえばHoehne,G.W.H. et al(1996),Differential Scanning Calorimetry,Springer,ベルリン、に記載。
【0018】
DSCの開始/ピーク温度値およびTGAに関する重量損失値が機器毎または試料毎にわずかに変動する可能性があり、したがって熱トレース図に引用した数値を絶対とみなすべきでないことは理解されるであろう。用いた技術を以下にさらに詳細に記載する。
【0019】
示差走査熱量測定は、分析機Mettler DSC820eを用いて実施された。一般に、有孔蓋付きの40μlアルミニウム皿に入れた5mg未満の材料を温度範囲25〜325℃にわたって毎分10℃の一定の加熱速度で加熱した。窒素を用いるパージガスを使用した−流速毎分100ml。
【0020】
熱重量測定分析は分析機Mettler TG851を用いて実施された。一般に、70μlのアロックス(alox)(酸化アルミニウム)るつぼに入れた3〜12mgの材料を温度範囲25〜325℃にわたって毎分10℃の一定の加熱速度で加熱した。ヘリウムを用いるパージガスを使用した−流速毎分50ml。
【0021】
結晶形2および3は後記の実施例の説明に従って結晶化できる。
したがって本発明の他の観点においては、式(I)の化合物の結晶形2の製造方法であって、化合物(I)を製造し、水およびメタノールから単離し、次いで得られた固体の水中懸濁液を撹拌し(たとえば1〜5日間、たとえば3日間)、得られた固体を単離する(たとえば濾過、場合により水で洗浄、および乾燥による)ことを含む方法が提供される。
【0022】
本発明の他の観点においては、式(I)の化合物の結晶形2の製造方法であって、化合物(I)の水中懸濁液を撹拌することを含む方法が提供される。
本発明の他の観点においては、式(I)の化合物の結晶形3の製造方法であって、アセトニトリル中における化合物(I)の結晶形1および2の混合物を高められた温度(たとえば30〜70℃、特に50℃またはその付近)で撹拌し(たとえば1〜5日間、たとえば3日間)、得られた固体を単離する(たとえば濾過、場合により適切な溶媒で洗浄、および乾燥による)ことを含む方法が提供される。
【0023】
本発明の他の態様によれば、本明細書に開示するいずれかの方法または実施例により得られる新規結晶形の式(I)の化合物が提供される。
本発明の他の観点によれば、前記または後記に定める結晶形2または結晶形3を医薬的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと共に含む医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明組成物は下記のために適切な剤形であってもよい:経口用(たとえば錠剤、トローチ剤、硬または軟カプセル剤、水性または油性懸濁液剤、乳剤、分散性の散剤または顆粒剤、シロップ剤またはエリキシル剤)、局所用(たとえばクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、または水性もしくは油性の液剤もしくは懸濁液剤)、吸入による投与(たとえば微細に分割した散剤または液体エアゾル剤)、吹入による投与(たとえば微細に分割した散剤)、または非経口投与(たとえば、静脈内、皮下、筋肉内または筋肉内投与用の無菌の水性もしくは油性液剤、または直腸投与用坐剤)。
【0025】
本発明の組成物は、当技術分野で周知の常法によって一般的な医薬賦形剤を用いて得ることができる。したがって、経口用組成物はたとえば1種類以上の着色剤、甘味剤、着香剤および/または保存剤を含有することができる。
【0026】
錠剤配合物に適切な医薬的に許容できる賦形剤には、たとえば不活性希釈剤、たとえば乳糖、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム、造粒剤および崩壊剤、たとえばトウモロコシデンプンまたはアルゲン酸;結合剤、たとえばデンプン;滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク;保存剤、たとえばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピル;ならびに酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸が含まれる。錠剤配合物はコーティングしなくてもよく、あるいはそれらの崩壊およびその後の消化管内における有効成分の吸収を改変するために、あるいはそれらの安定性および/または外観を改善するために、コーティングしてもよく、いずれの場合も当技術分野で周知の一般的なコーティング剤および方法を用いる。
【0027】
経口用組成物は、有効成分を不活性固体希釈剤、たとえば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合した硬ゼラチンカプセル剤、あるいは有効成分を水または油、たとえばラッカセイ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合した軟ゼラチンカプセル剤の形であってもよい。
【0028】
水性懸濁液剤は、一般に有効成分を微粉末状で1種類以上の下記のものと共に含有する:懸濁化剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガントゴムおよびアラビアゴム;分散剤または湿潤剤、たとえばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物(たとえばポリオキシエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、たとえばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合物、たとえばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、たとえばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合物、たとえばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合物、たとえばポリエチレンソルビタンモノオレエート。水性懸濁液剤は、1種類以上の保存剤(たとえばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはプロピル)、酸化防止剤(たとえばアスコルビン酸)、着色剤、着香剤、および/または甘味剤(たとえばショ糖、サッカリンまたはアスパルテーム)を含有することもできる。
【0029】
油性懸濁液剤は、有効成分を植物油(たとえばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油)または鉱油(たとえば流動パラフィン)に懸濁させることにより配合することができる。油性懸濁液剤は、増粘剤、たとえば密ろう、パラフィンまたはセチルアルコールを含有することもできる。美味な経口製剤を得るために、甘味剤、たとえば前記のもの、および着香剤を添加することができる。これらの組成物は、酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸の添加により保存処理することができる。
【0030】
水の添加により水性懸濁液を調製するのに適切な分散性の散剤および顆粒剤は、一般に有効成分を分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1種類以上の保存剤と共に含有する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は既に前記に述べたものにより例示される。追加の賦形剤、たとえば甘味剤、着香剤および着色剤が存在してもよい。
【0031】
本発明の医薬組成物は、水中油型乳剤の形であってもよい。油相は植物油、たとえばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、たとえば流動パラフィン、またはこれらのいずれかの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、たとえば天然ゴム、たとえばアラビアゴムまたはトラガントゴム、天然ホスファチド、たとえば大豆、レシチン、脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル(たとえばソルビタンモノオレエート)、およびこの部分エステルとエチレンオキシドの縮合物、たとえばポリエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。乳剤は甘味剤、着香剤および保存剤を含有してもよい。
【0032】
シロップ剤およびエリキシル剤には、甘味剤、たとえばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテームまたはショ糖を配合することができ、粘滑剤、保存剤、着香剤および/または着色剤を含有させてもよい。
【0033】
医薬組成物は、無菌の注射用水性または油性懸濁液剤の形であってもよく、これらは既知の手法に従い、前記に述べた1種類以上の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて配合できる。無菌注射用製剤は、非経口用として許容できる無毒性の希釈剤または溶剤中における、無菌の注射用液剤または懸濁液剤、たとえば1,3−ブタンジオール中の液剤であってもよい。
【0034】
吸入による投与のための組成物は、微細に分割した固体または液滴を含有するエアゾールとして有効成分を配分するように調整した、一般的な加圧エアゾール剤の形であってもよい。一般的なエアゾール噴射剤、たとえば揮発性のフッ素化炭化水素または炭化水素を使用でき、計量した量の有効成分を配分するようにエアゾール器具を調整するのが好都合である。
【0035】
配合物に関するこれ以上の情報については、Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;編集長),Volume 5,Chapter 25.2,Pergamon Press 1990、および疎水性薬物の経口による生物学的利用能の改善のための粒度低下:G.G.Liversidge,K.C Cundy International J.Pharmaceutics,12(1995),91−97が参照される(これらの関連セクションを本明細書に援用する)。
【0036】
1種類以上の賦形剤と組み合わせて単一剤形を調製するための有効成分の量は、処置されるホストおよび特定の投与経路に応じて必然的に異なるであろう。たとえばヒトに経口投与するための配合物は、一般に0.5mg〜2gの有効薬剤化合物を適切かつ好都合な量の賦形剤と混合して含有するであろう;賦形剤の量は全組成物の約5〜約98重量%であってよい。投与単位剤形は、一般に約1〜約500mgの有効成分を含有するであろう。投与経路および投与計画に関するこれ以上の情報については、Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;編集長),Volume 5,Chapter 25.3,Pergamon Press 1990が参照される。
【0037】
本発明の他の観点によれば、ヒトまたは動物の身体を療法により処置する方法に使用するための、前記または後記に定める結晶形2または結晶形3が提供される。
本発明者らは、本発明化合物がDGAT1活性を阻害し、したがってそれらがトリグリセリド合成および/または体重減量および/または血糖低下に及ぼす効果のため重要であることを見いだした。DGAT1の役割に関する情報は、本出願人の国際特許出願WO2005/044250およびそれの参考文献に含まれている。
【0038】
本発明の他の態様は、医薬として使用するための結晶形2または結晶形3である。好都合には、これはヒトなどの温血動物においてDGAT1活性の阻害を発生させる医薬として使用するための結晶形2または結晶形3である。特に、これはヒトなどの温血動物において糖尿病および/または肥満症を処置する医薬として使用するための結晶形2または結晶形3である。
【0039】
したがって本発明の他の観点によれば、ヒトなどの温血動物においてDGAT1活性の阻害を発生させる際に用いる医薬の製造における、結晶形2または結晶形3の使用が提供される。
【0040】
したがって本発明の他の観点によれば、ヒトなどの温血動物において糖尿病および/または肥満症を処置する際に用いる医薬の製造における、結晶形2または結晶形3の使用が提供される。
【0041】
本発明の他の観点によれば、ヒトなどの温血動物においてDGAT1活性の阻害を発生させる際に使用するための、結晶形2または結晶形3を医薬的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと共に含む医薬組成物が提供される。
【0042】
本発明の他の観点によれば、ヒトなどの温血動物において糖尿病および/または肥満症を処置する際に使用するための、結晶形2または結晶形3を医薬的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと共に含む医薬組成物が提供される。
【0043】
本発明の他の観点によれば、その処置を必要とするヒトなどの温血動物においてDGAT1活性の阻害を発生させる方法であって、該動物に有効量の前記または後記に定める結晶形2または結晶形3を投与することを含む方法が提供される。
【0044】
本発明の他の観点によれば、その処置を必要とするヒトなどの温血動物において糖尿病および/または肥満症を処置する方法であって、該動物に有効量の前記または後記に定める結晶形2または結晶形3を投与することを含む方法が提供される。
【0045】
前記のように、特定の疾病状態の治療処置または予防処置に必要な投与量は、処置されるホスト、投与経路、および処置する疾病の重症度に応じて必然的に異なるであろう。好ましくは、1〜50mg/kgの一日量を使用する。ただし一日量は、処置されるホスト、特定の投与経路、および処置する疾病の重症度に応じて必然的に異なるであろう。したがって、最適量はいずれか特定の患者を処置する専門家が決定できる。前記のように、本発明に定める化合物はそれらがDGAT1の活性を阻害する能力のため重要である。したがって本発明化合物は、糖尿病、より具体的にはII型糖尿病(T2DM)およびそれから生じる合併症(たとえば網膜障害、神経障害および腎障害)、糖耐性障害(IGT)、空腹時血糖障害、代謝性アシドーシス、ケトーシス、代謝障害症候群、関節炎、骨粗鬆症、肥満症および肥満症関連障害(末梢血管疾患(間欠性跛行を含む)、心不全およびある種の心筋障害、心筋虚血、脳虚血および再潅流、高脂血症、アテローム硬化症、不妊症ならびに多嚢胞卵巣症候群を含む)を含む広範な疾病状態の予防、遅延または治療に有用な可能性がある;本発明化合物は、筋虚弱、皮膚疾患、たとえばアクネ、アルツハイマー病、各種の免疫調節性疾患(たとえば乾癬)、HIV感染症、炎症性腸症候群および炎症性腸疾患、たとえばクローン病および潰瘍性大腸炎にも有用である。
【0046】
特に、本発明化合物は、糖尿病および/または肥満症および/または肥満症関連障害の予防、遅延または治療に重要である。1観点において、本発明化合物は糖尿病の予防、遅延または治療に用いられる。他の観点において、本発明化合物は肥満症の予防、遅延または治療に用いられる。他の観点において、本発明化合物は肥満症関連障害の予防、遅延または治療に用いられる。
【0047】
本明細書に記載するDGAT1活性の阻害を唯一の療法として、または処置すべき適応症に対する他の1種類以上の物質および/または処置と組み合わせて適用できる。そのような併用処置は、処置の個々の構成要素の同時、逐次または個別投与により達成できる。同時処置は、単一錠剤または個別の錠剤中において行なうことができる。たとえば、そのような併用処置はメタボリックシンドローム[腹部肥満症(人種別および性別のカットポイントに対する腰周囲により測定)プラス下記のうちの2つとして定義:高トリグリセリド血症(>150mg/dl;1.7mmol/l);低HDLc(男性については<40mg/dlまたは<1.03mmol/l、女性については<50mg/dlまたは1.29mmol/l)、または低HDL(高密度リポタンパク質)のための治療中;高血圧症(SBP130mmHg,DBP85mmHg)または高血圧症のための治療中;および高血糖症(空腹時血糖値100mg/dlもしくは5.6mmol/l、または糖耐性障害もしくは既存の糖尿病)−International Diabetes Federation、およびIAS/NCEPから入力]の処置に有益な可能性がある。
【0048】
そのような併用療法には下記の主カテゴリーを含めることができる:
1)抗肥満症療法薬、たとえば食物摂取、栄養素吸収またはエネルギー消費に作用することにより体重減量を生じるもの、たとえばオルリスタット(orlistat)、シブトラミン(sibutramine)など;
2)インスリン分泌促進薬:スルホニル尿素類(たとえばグリベンクラミド(glibenclamide)、グリピジド(glipizide))、食事グルコース調節薬(たとえばレパグリニド(repaglinide)、ナテグリニド(nateglinide))を含む;
3)インクレチン作用を改善する薬剤(たとえばジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬、およびGLP−1アゴニスト);
4)インスリン感受性増強薬:PPARガンマアゴニスト(たとえばピオグリタゾン(pioglitazone)およびロシグリタゾン(rosiglitazone))、ならびにPPARアルファおよびガンマ活性を合わせもつ薬剤を含む;
5)肝グルコースバランスを調節する薬剤(たとえばメトホルミン(metformin)、フルクトース1,6−ビスホスファターゼ阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害薬、グルコキナーゼ活性化薬);
6)腸からのグルコース吸収を減少させるために設計された薬剤(たとえばアカルボース(acarbose));
7)腎臓によるグルコース再吸収を阻害する薬剤(SGLT阻害薬);
8)持続型高血糖症の合併症を治療するために設計された薬剤(たとえばアルドースレダクターゼ阻害薬);
9)抗異脂肪血症薬、たとえばHMG−CoAレダクターゼ阻害薬(たとえばスタチン類);PPARアルファアゴニスト(フィブレート類、たとえばゲムフィブロジル(gemfibrozil));胆汁酸分泌促進薬(コレスチラミン(cholestyramine));コレステロール吸収阻害薬(植物スタノール類、合成阻害薬);胆汁酸吸収阻害薬(IBATi)、ならびにニコチン酸および類似体(ナイアシンおよび徐放性製剤);
10)抗高血圧症薬、たとえばベータ遮断薬(たとえばアテノロール(atenolol)、インデラル(inderal));ACE阻害薬(たとえばリシノプリル(lisinopril));カルシウムアンタゴニスト(たとえばニフェジピン(nifedipine));アンギオテンシン受容体アンタゴニスト(たとえばカンデサルタン(candesartan))、アルファ−アンタゴニスト、および利尿薬(たとえばフロセミド(furosemide)、ベンゾチアジド(benzthiazide));
11)止血調節薬、たとえば抗血栓薬、線維素溶解の活性化薬および抗血小板薬;トロンビンアンタゴニスト;Xa因子阻害薬;VIIa因子阻害薬);抗血小板薬(たとえばアスピリン、クロピドグレル(clopidogrel));抗凝固薬(ヘパリンおよび低分子量類似体、ヒルジン(hirudin))およびワルファリン(warfarin);
12)グルカゴンの作用に拮抗する薬剤;ならびに
13)抗炎症薬、たとえば非ステロイド系抗炎症薬(たとえばアスピリン)およびステロイド系抗炎症薬(たとえばコルチゾン(cortisone))。
【0049】
本発明の化合物形態の有用性は下記により証明できる:
ヒト酵素アッセイ
DGAT1阻害薬を同定するためのインビトロアッセイには、昆虫細胞膜に発現したヒトDGAT1を酵素源として用いる(Proc.Natl.Acad.Sci.1998,95,13018−13023)。要約すると、sf9細胞にヒトDGAT1コード配列を含む組換えバキュロウイルスを感染させ、48時間後に収集した。細胞を音波処理により溶解し、28000rpm、4℃、41%ショ糖勾配上で1時間の遠心分離により膜を単離した。中間相の膜画分を採集し、洗浄し、液体窒素中に保存した。
【0050】
DGAT1活性をColemanが記載した方法(Methods in Enzymology 1992,209,98−102)の変法によりアッセイした。1〜10μMの化合物を、0.4μgの膜タンパク質、5mMのMgClおよび100μMの1,2−ジオレオイル−sn−グリセロールと共に、全アッセイ体積200μlでプラスチック試験管内においてインキュベートした。14Cオレオイル補酵素A(最終濃度30μM)の添加により反応を開始し、室温で30分間インキュベートした。1.5mLの2−プロパノール:ヘプタン:水(80:20:2)の添加により反応を停止した。放射性トリオレイン生成物を1mLのヘプタンおよび0.5mLの0.1M炭酸緩衝液 pH9.5の添加により有機相中へ分離した。上部のヘプタン層の一部を液体シンチログラフィーで計数することによりDGAT1活性を定量した。この試験で、式(I)の化合物は2.5nMのIC50をもつ。
【0051】
式(I)の化合物および対応する医薬的に許容できる酸塩がDGAT1活性を阻害する能力は、下記の全細胞アッセイ1)および2)を用いてさらに証明できる:
1)3T3細胞におけるトリグリセリド合成の測定
マウス脂肪細胞3T3細胞を6ウェルプレート内でウシ新生仔血清含有培地において集密状態まで培養した。10%のウシ胎仔血清、1μg/mLのインスリン、0.25μMのデキサメタゾンおよび0.5mMのイソブチルメチルキサンチンを含有する培地中でインキュベートすることにより、細胞の分化を誘導した。48時間後、10%のウシ胎仔血清および1μg/mLのインスリンを含有する培地中にさらに4〜6日間、細胞を維持した。実験のために培地を無血清培地に交換し、DMSOに溶解した化合物(最終濃度0.1%)と共に30分間、細胞をプレインキュベートした。0.25mMの酢酸ナトリウムおよび1μCi/mLの14C−酢酸ナトリウムを各ウェルにさらに2時間添加しておくことにより、新規脂質生成を測定した(J.Biol.Chem.,1976,251,6462−6464)。細胞をリン酸緩衝化生理食塩水中で洗浄し、1%ドデシル硫酸ナトリウムに溶解した。タンパク質推定キット(Perbio)を用いるタンパク質測定のために一部を取り出した;Lowry法(J.Biol.Chem.,1951,193,265−275)に基づく。ヘプタン:プロパン−2−オール:水(80:20:2)混合物、続いて少量の水およびヘプタンを用いて、脂質を有機相中へ抽出した;Coleman法(Methods in Enzymology,1992,209,98−104)に従う。有機相を採集し、溶媒を窒素流下で蒸発させた。抽出物をイソヘキサン:酢酸(99:1)に溶解し、順相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、Lichrospher diol−5、4×250mmカラム、ならびにイソヘキサン:酢酸(99:1)およびイソヘキサン:プロパン−2−オール:酢酸(85:15:1)の勾配溶媒系、流速1mL分を用いて脂質を分離した;SilversandおよびHauxの方法(1997)に従う。トリグリセリド画分中への放射性標識の取込みを、HPLC機器に接続したRadiomatic Flo−one検出器(Packard)により分析した。
【0052】
2)MCF7細胞におけるトリグリセリド合成の測定
ヒト乳房上皮(MCF7)細胞を6ウェルプレート内でウシ胎仔血清含有培地において集密状態まで培養した。実験のために培地を無血清培地に交換し、DMSOに溶解した化合物(最終濃度0.1%)と共に30分間、細胞をプレインキュベートした。50μMの酢酸ナトリウムおよび3μCi/mLの14C−酢酸ナトリウムを各ウェルにさらに3時間添加しておくことにより、新規脂質生成を測定した(J.Biol.Chem.,1976,251,6462−6464)。細胞をリン酸緩衝化生理食塩水中で洗浄し、1%ドデシル硫酸ナトリウムに溶解した。タンパク質推定キット(Perbio)を用いるタンパク質測定のために一部を取り出した;Lowry法(J.Biol.Chem.,1951,193,265−275)に基づく。ヘプタン:プロパン−2−オール:水(80:20:2)混合物、続いて少量の水およびヘプタンを用いて、脂質を有機相中へ抽出した;Coleman法(Methods in Enzymology,1992,209,98−104)に従う。有機相を採集し、溶媒を窒素流下で蒸発させた。抽出物をイソヘキサン:酢酸(99:1)に溶解し、順相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、Lichrospher diol−5、4×250mmカラム、ならびにイソヘキサン:酢酸(99:1)およびイソヘキサン:プロパン−2−オール:酢酸(85:15:1)の勾配溶媒系、流速1mL分を用いて脂質を分離した;SilversandおよびHauxの方法(J.Chromat.B,1997,703,7−14)に従う。トリグリセリド画分中への放射性標識の取込みを、HPLC機器に接続したRadiomatic Flo−one検出器(Packard)により分析した。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】結晶形2に関するX線回折パターン。
【図2A】結晶形1に関するX線回折パターン。
【図2B】結晶形1(酢酸溶媒和物)に関する熱データ。
【図3】結晶形1と2に関するX線回折パターンの比較。
【図4】結晶形2に関する熱データ。
【図5】結晶形3に関するX線回折パターン。
【図6】結晶形3(無水物)に関する熱データ。
【0054】
本発明をここで下記の実施例により説明する:
実施例
本発明をここで下記の実施例により説明する;実施例中、別途記載しない限り:
(i)温度を摂氏(℃)で示す;操作は室温または周囲温度、すなわち18〜25℃の範囲の温度で、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下に実施された;
(ii)有機溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた;溶媒の蒸発はロータリーエバポレーターを用いて減圧下に(600〜4000Pa;4.5〜30mmHg)、最高60℃の浴温で実施された;
(iii)クロマトグラフィーはシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーを意味する;Biotageカートリッジと述べた場合、これはKP−SIL(商標)シリカを収容したカラムを意味する、60Å粒度、32−63mM;供給:Biotage,Dyax Corp.部門,1500 Avon Street Extended,Charlottesville,VA 22902,USA;
(iv)一般に反応経過をTLCにより追跡し、反応時間は説明のために示したにすぎない;
(v)収量は説明のために示したにすぎず、必ずしも綿密なプロセス開発により得ることができるものではない;より多量の物質が必要な場合は製造を繰り返した;
(vi)NMRデータ(H)を示した場合、それはテトラメチルシラン(TMS)に対比した百万分率(ppm)で示す主診断プロトンに関するデルタ値の形であり、300または400MHzで(別途記載しない限り)、別途記載しない限りペルジュウテリオジメチルスルホキシド(DMSO−d)を溶媒として用いて測定された;ピーク多重度をたとえば以下のように示す:s,一重線;d,二重線;dd,二重の二重線;dt,二重の三重線;dm,二重の多重線;t,三重線,q,四重線;m,多重線;br,幅広い;
(vii)化学記号はそれらの通常の意味をもつ;SI単位および記号を用いる;
(viii)溶媒比を体積:体積(v/v)により示す;
(ix)質量スペクトル(MS)(ループ)は、HP 1100検出器を備えたMicromass Platform LCで記録された;別途記載しない限り、引用した質量イオンは(MH)である;
(x)LCMS(液体クロマトグラフィー−質量分析)は、Waters 996 Photodiode array検出器を備えたWaters 2790 LCおよびMicromass ZMD MSからなるシステムで、Phenomenex(登録商標)Gemini 5u C18 110A 50x2mmカラムを用い、流速1.1ml/分で溶離して記録された;5%(水/アセトニトリル(1:1)+1%ギ酸)および最初の4分間にわたってアセトニトリル0%から95%まで上昇する勾配、残り(95−0%)は水。HPLC保持時間を報告した場合、別途記載しない限りこれらはこのシステムにおける分(minute)である;別途記載しない限り、引用した質量イオンは(MH)である;
(xi)相分離カートリッジと述べた場合、ISOLUTE Phase Separator 70mlカラムを用いた;供給:Argonaut Technologies,New Road,Hengoed,Mid Glamorgan,CF82 8AU,United Kingdom;
(xii)SiliCycleカートリッジと述べた場合、これはUltra Pure Silica Gel、粒度230〜400メッシュ、孔径40〜63umを意味する;供給:SiliCycle Chemical Division,1200 Ave St−Jean−Baptiste,Suite 114,Quebec City,Quebec G2E 5E8,CANADA;
(xiii)Isco Companionと述べた場合、Combiflash companionクロマトグラフィー機器を用いた;供給:ISOC Inc. Address Teledyne ISOC Inc,4700 Superior Street,Lincoln,NE 68504,USA;
(xiv)マイクロ波と述べた場合、これはBiotage Initiator sixtyまたはSmith Creatorマイクロ波を意味する;供給:Biotage,Dyax Corp.部門,1500 Avon Street Extended,Charlottesville,VA 22902,USA;
(xv)GCMSと述べた場合、ガスクロマトグラフィー−質量分析は、AOC 20i自動サンプリング装置を備え、’GCMS solutions’ソフトウェア、バージョン2.0により制御されるQP−2010 GC−MSシステムで実施された;供給:Shimadzu,Milton Keynes,MK12 5RE,UK;GCカラムは、長さ25m、内径0.32mm、膜厚0.52μmのDB−5MSであった;供給:J & W Scientific,Folsom,CA,USA;
(xvi)遠心分離と述べた場合、これはGenevac EZ−2plusを意味する;供給:Genevac Limited,The Soveriegn Centre,Farthing Road,Ipswich,IP1 5AP,UK;
(xvii)キラルクロマトグラフィーと述べた場合、これは一般に20μm Merck 50mm Chiralpak ADカラム(Chiral Stationary Phase;供給:Chiral Technologies Europe,Parc d’Innovation,Bd. Gonthier d’Andernach,67404 Illkirch Cedex,France)を用い、MeCN/2−プロパノール/AcOH(90/10/0.1)を溶離剤として用いて、流速80mL/分、波長300nmで、Gilson分取用HPLC機器(200mlヘッド)により実施される;
(xviii)融点はBuchi 530装置で測定され、未補正である;
(xix)当量(equiv)と述べた場合、これはモル当量を意味するものとする;
(xx)以下において、または前記もしくは後記の方法セクションにおいて、下記の略号を用いる場合がある:
EtOまたはエーテル ジエチルエーテル
DMF ジメチルホルムアミド
DCM ジクロロメタン
DME 1,2−ジメトキシエタン
MeOH メタノール
EtOH エタノール
O 水
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
DMSO ジメチルスルホキシド
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
EDCI(EDAC) 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DEAD アゾジカルボン酸ジエチル
EtOAc 酢酸エチル
NaHCO 重炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム
PO リン酸カリウム
PS ポリマー支持された
BINAP 2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’ビナフチル
Dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
dba ジベンジリデンアセトン
PS−CDI ポリマー支持されたカルボニルジイミダゾール
CHCNまたはMeCN アセトニトリル
h 時間
min 分
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキソフルオロホスフェート
NaOH 水酸化ナトリウム
AcOH 酢酸
DMA ジメチルアセトアミド
nBuLi n−ブチルリチウム
MgSO 硫酸マグネシウム
NaSO 硫酸ナトリウム
CDCl ジュウテロクロロホルム
CDOD ペルジュウテリウム化メタノール
Boc tert−ブトキシカルボニル。
【0055】
実施例1:結晶形2(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸
【0056】
【化2】

【0057】
水(中間体1のモル当たり2.23L)中の水酸化リチウム1水和物(10当量)を、メチル(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)アセテート(中間体1;1当量)のメタノール(中間体1のモル当たり9.38L)中における撹拌懸濁液に添加した。反応混合物を30℃で2時間撹拌し、次いで0℃に冷却し、濃塩酸でpH2の酸性にした(温度を10℃より低く維持しながら)。生成した白色沈殿を濾過し、水およびメタノールで洗浄し、次いで50℃で真空乾燥すると、表題化合物が固体として得られた(82%の収率)。次いでこの固体を水(化合物のg当たり約28ml)に撹拌しながら懸濁し、次いで懸濁液を3日間撹拌した。次いで固体を濾別し、真水で洗浄した(低速濾過)。得られた白色固体を一定重量になるまで50℃で高真空乾燥オーブン内において乾燥させ、分析した(図1、3および4を参照)。
【0058】
中間体1:メチル(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)アセテート
3,4−ジフルオロイソチオシアネート(1.2当量)を、メチル[trans−4−(4−{[ヒドラジノ(オキソ)アセチル]アミノ}フェニル)シクロヘキシル]アセテート(中間体2,1当量)のDMA((中間体2のモル当たり約5.3L)中における撹拌懸濁液に添加し、混合物を45℃に加熱し、2時間撹拌した。EDAC(1.2当量)を添加し、得られた混合物を85℃に加熱し、3時間撹拌した。水(中間体2のモル当たり約4.3L)を添加した。沈殿を濾別し、水で洗浄し、次いで真空乾燥して、表題化合物を黄色固体として得た。
【0059】
中間体2:メチル[trans−4−(4−{[ヒドラジノ(オキソ)アセチル]アミノ}フェニル)シクロヘキシル]アセテート
【0060】
【化3】

【0061】
i)メチル2−[4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]アセテート
【0062】
【化4】

【0063】
トリメチルホスホノアセテート(170mL,1.05mol)を、水素化ナトリウム(鉱油中60%,27.5g,1.14mol)のTHF(3.5L)中における撹拌懸濁液(12℃に冷却)に滴加した。添加の終了後、反応混合物を周囲温度にまで高め、1時間撹拌した。別個の容器において、N,N−テトラメチルグアニジン(144mL,1.14mol)を、4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン−1−オン(235g,0.95mol)のTHF(1.2L)中における懸濁液に添加し、反応混合物を周囲温度で1時間撹拌した。ホスホノアセテート混合物を10℃に冷却し、残留発熱がみられなくなるまで温度を8〜12℃に制御しながらグアニジン溶液を徐々に添加した。温度を周囲温度にまで高め、反応混合物を16時間撹拌した。混合物を塩化アンモニウム希水溶液(2.4L)と酢酸エチル(2.4L)の間で分配した。水相を分離し、酢酸エチル(1.2L)で抽出した。有機相を合わせてブライン(2.4L)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空濃縮すると灰白色固体が残った。この固体をエーテルとヘキサンの混合物(2:1;470mL)に懸濁し、濾過し、エーテルとイソヘキサンの混合物(2:1;240mL)で洗浄して、生成物を白色固体として得た(285g,94%)。HNMR δ 1.35−1.55(2H,m),1.85−2.05(4H,m),2.25−2.40(2H,m),2.65−2.75(1H,m),3.60(3H,s),3.80(1H,m),6.66(2H,d),6.99(2H,d),9.10(1H,s)。
【0064】
ii)trans−メチル2−[4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]アセテート
【0065】
【化5】

【0066】
カーボン上10%パラジウム(50%の水で湿潤,6.9mmol)を、乾燥THF(400mL)中のメチル2−[4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]アセテート(100g,0.41mol)に添加した。反応混合物を30℃で水素雰囲気下に(2バール)加熱した。混合物をCeliteで濾過すると固体が残り、これをTHF(50mL)で洗浄した。THF溶液を真空濃縮すると残留物が残り、これを酢酸エチルで洗浄した。粗製混合物を高温の酢酸エチル(100mL)に溶解し、次いで周囲温度に冷却した。氷水で冷却した後、沈殿を濾過し、酢酸エチル(50mL)で洗浄して、表題化合物を固体として得た(42g,42%)。HNMR δ 1.02−1.17(2H,m),1.31−1.46(2H,m),1.66−1.82(5H,m),2.23(2H,d),2.28−2.38(1H,m),3.63(3H,s),6.66(2H,d),6.99(2H,d),9.10(1H,s)。
【0067】
iii)trans−メチル2−[4−(4−アミノフェニル)シクロヘキシル]アセテート
【0068】
【化6】

【0069】
trans−メチル2−[4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]アセテート(2.82g,11.4mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(2.32mL,13.3mmol)のDCM(40mL)中における溶液を4℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホニルクロライド(1.42mL,13.3mmol)を30分間かけて、温度を6℃より低く維持しながら添加した。反応混合物を4℃で45分間撹拌し、次いで15℃に高めた。撹拌を停止し、反応混合物を16時間放置した。混合物を氷水(18mL)に注入し、層を分離し、水層をDCM(7mL)で抽出した。有機相を合わせて2N水酸化ナトリウム水溶液(2mL)、次いでブライン(9mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空濃縮すると、中間体トリフレートが黄色固体として残った(4.59g,106%)。これをさらに精製せずに使用した。
【0070】
中間体トリフレート(12g,32mmol)を、炭酸セシウム(14.4g,44mmol)、酢酸パラジウム(0.43g,1.9mmol)、BINAP(1.2g,1.9mmol)およびベンゾフェノンイミン(7.9mL,47mmol)のTHF(200mL)中における混合物に添加した。撹拌を開始し、容器を排気し、窒素で5回パージした。撹拌混合物を16時間、加熱還流した。反応混合物を周囲温度に冷却し、真空濃縮すると残留物が残った。この残留物をエーテル(360mL)と水(210mL)の間で分配し、層を分離した。水層をエーテル(3x360mL)で抽出し、有機層を合わせて乾燥させ(MgSO)、真空濃縮すると粗製の黄色の油が残り、これをさらに精製せずに使用した。
【0071】
粗製イミン(21g,51mmol)をメタノール(300mL)に溶解し、溶液を4℃に冷却した。1M塩酸溶液(100mL)を、温度を7℃より低く維持しながら徐々に添加した。この懸濁液を16時間かけて周囲温度に高めた。メタノールを真空中で除去し、得られた混合物を水(100mL)で希釈した。この水性混合物をエーテル(2x30mL)で洗浄し、有機層を合わせて1M塩酸溶液(2x30mL)で洗浄した。水層を合わせて10%炭酸ナトリウム水溶液でpH9の塩基性にすると沈殿が生成した。酢酸エチル(3x200mL)を添加し、層を分離した。有機層を合わせて乾燥させ(MgSO)、沈殿が生成するまで真空濃縮した。混合物を冷却し、濾過し、ヘキサン(20mL)で洗浄すると、生成物が淡黄色固体として得られた。濾液を真空濃縮するとさらに生成物が得られ、これらを合わせて真空濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより10−50%EtOAcおよびイソヘキサンの勾配を溶離剤として用いて精製し、生成物を黄色固体として得た(5.1g,2工程の合計収率65%)。HNMR(CDCl) δ 0.98−1.06(2H,m),1.33−1.42(2H,m),1.72−1.81(5H,m),2.16−2.18(2H,m),2.28−2.34(1H,m),3.61(3H,s),6.68(2H,d),6.96(2H,d)。
【0072】
iv)メチル({4−[trans−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)シクロヘキシル]フェニル}アミノ)(オキソ)−アセテート
【0073】
【化7】

【0074】
メチルクロロ(オキソ)アセテート(0.842mL)を、trans−メチル2−[4−(4−アミノフェニル)シクロヘキシル]アセテート(1740mg)およびピリジン(0.689mL)のDCM(50mL)中における溶液に0℃で添加した。添加の終了後、混合物を周囲温度に高め、64時間撹拌した。この溶液をDCM(100mL)で希釈し、水(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、次いで乾燥および真空濃縮して表題化合物(2267mg)を固体として得た。HNMR δ 7.60(2H,d),7.18(2H,d),3.83(3H,s),3.58(3H,s),2.58−35(1H+DMSO,m),2.21(2H,d),1.75(5H,m),1.43(2H,m),1.12(2H,m);MS m/e (M−H) 332。
【0075】
iv)ヒドラジン水和物(0.361mL)を、メチル({4−[trans−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)シクロヘキシル]フェニル}アミノ)(オキソ)アセテート(2260mg)のEtOH(50mL)中における撹拌溶液に添加した。混合物を1時間撹拌した。沈殿を濾別し、EtOで洗浄し、真空下で一夜乾燥させて表題化合物(中間体2,1845mg)を固体として得た。HNMR δ 10.44(1H,s),10.20(1H,s),7.70(2H,d),7.21(2H,d),4.60(2H,s),3.60(3H,s),2.42(1H,m),1.79(5H,m),1.45(2H,m),1.11(2H,m);MS m/e MH 334。
【0076】
実施例2:結晶形3(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸
結晶形2(実施例1に従って製造;約20mg)を、マグチックスターラーを収容した小バイアルに入れた。少量の結晶形1を種結晶として添加し、アセトニトリル(約1ml)を添加した。バイアルを蓋で密閉し、ホットプレート撹拌機に乗せて50℃で3日間撹拌し続けた。3日後、バイアルを撹拌機から取り出し、蓋を取り、残りの溶媒を自然蒸発させた。得られた結晶形3の固体を分析した(図5および6ならびに表3を参照)。
【0077】
結晶形1の物質を下記に従って製造した:
メチル2−[4−[4−[[5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]1,3,4−オキサジアゾール−2−カルボニル]アミノ]−フェニル]シクロヘキシル]アセテート(実施例1を参照;1当量)を、窒素下で撹拌しながらメタノール/テトラヒドロフラン(14vol/7vol)に懸濁し、水酸化リチウム(10当量)の水(5vol)中における溶液を添加した。黄色溶液が生成し、これを30℃に加熱した((lc/ms)によれば2時間後に終了)。次いで混合物を0℃に冷却し、温度を10℃より低く維持しながら濃塩酸でpH2の酸性にした。白色沈殿が生成し、これを濾別し、水およびメタノールで洗浄した。得られた生成物を50℃で高真空下に乾燥させると白色固体が得られた。この固体を水(50vol)に懸濁し、周囲温度で24時間撹拌し、次いで60℃に2時間加熱し、一夜放冷した。固体を濾別し、真空乾燥して生成物を得た(THF 0.57w/wが存在)。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−シータ(2θ)=16.8、21.4および22.7°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形。
【請求項2】
2−シータ(2θ)=4.7、9.3、16.8、21.4および22.7°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形。
【請求項3】
実質的に図1に示す粉末X線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形。
【請求項4】
2−シータ(2θ)=8.4、13.8および16.7°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形。
【請求項5】
2−シータ(2θ)=7.0、8.4、13.8、16.7、21.6および24.3°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する、請求項4に記載の(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形。
【請求項6】
2−シータ(2θ)=4.8、5.6、7.0、8.4、13.8、16.7、19.5、20.0、21.6および24.3°にピークをもつ粉末X線回折パターンを有する、請求項4または5に記載の(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形。
【請求項7】
実質的に図5に示す粉末X線回折パターンを有する、請求項4、5または6に記載の(trans−4−{4−[({5−[(3,4−ジフルオロフェニル)アミノ]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}カルボニル)アミノ]フェニル}シクロヘキシル)酢酸の結晶形。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物を医薬的に許容できる佐剤、希釈剤またはキャリヤーと混合して含む医薬製剤。
【請求項9】
医薬として使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載される化合物。
【請求項10】
DGAT1の阻害が必要であるかまたは望ましい状態を処置する医薬を製造するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載される化合物の使用。
【請求項11】
DGAT1の阻害が必要であるかまたは望ましい状態を処置する方法であって、療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載される化合物をその処置が必要な患者に投与することを含む前記方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−539954(P2009−539954A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514875(P2009−514875)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002097
【国際公開番号】WO2007/144571
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】