説明

1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−ベンジル]−ベンゼンの結晶性形態、その調製方法及び薬物を調製するためのその使用

【課題】1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンの安定な形態を提供する。
【解決手段】1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンの結晶性形態。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンの結晶性形態、その調製方法だけでなく、薬物を調製するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼン(以下、“化合物A”と称する)は国際特許出願WO 2005/092877に記載されており、式Aの化学構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
そこに記載された化合物はナトリウム依存性グルコースコトランスポーターSGLT、特にSGLT2に対する有益な抑制効果を有する。そこに記載された化合物Aの製造方法は結晶性形態を生じない。
或る種の医薬活性は勿論医薬活性薬剤が市場で薬物として認められる前にそれにより満たされるべき基本的な前提条件である。しかしながら、医薬活性薬剤が適合すべき種々の付加的な要件がある。これらの要件は活性物質それ自体の性質と関連している種々のパラメーターに基づいている。制限されないが、これらのパラメーターの例は種々の環境条件下の活性薬剤の安定性、医薬製剤の製造中のその安定性及び最終薬物組成物中の活性薬剤の安定性である。医薬組成物を調製するのに使用される医薬活性物質はできるだけ純粋であるべきであり、長期貯蔵におけるその安定性が種々の環境条件下で保障される必要がある。これは、実際の活性物質に加えて、例えば、その分解生成物を含む医薬組成物の使用を防ぐのに必須である。このような場合、薬物中の活性物質の含量は明記されるよりも少ないかもしれない。
製剤中の薬物の一様な分布は、特に薬物が低用量で与えられるべきである場合に、重要な因子である。一様な分布を確実にするために、活性物質の粒子サイズが、例えば、粉砕により、好適なレベルに減少し得る。粉砕(又は微粉砕)の副作用としての医薬活性物質の分解が、そのプロセス中に必要とされる過酷な条件にもかかわらず、できるだけ回避されるべきであるので、活性物質が粉砕プロセス中に高度に安定であるべきことが必須である。活性物質が粉砕プロセス中に充分に安定である場合にのみ、明記された量の活性物質を再現可能な様式で常に含む均一な医薬製剤を製造することが可能である。
所望の医薬製剤を調製するための粉砕プロセスで生じ得る別の問題はこのプロセスにより生じられるエネルギーのインプット及び結晶の表面における応力である。これは或る状況下で多形変化、無定形化又は結晶格子の変化をもたらし得る。医薬製剤の医薬品質は活性物質が常に同じ結晶性形態を有することを必要とするので、結晶性活性物質の安定性及び性質が同様にこの観点から厳しい要件に従うべきである。
医薬活性物質の安定性はまた特別な薬物の貯蔵寿命を測定するために医薬組成物で重要である。貯蔵寿命は薬物がリスクなしに投与し得る間の時間の長さである。それ故、種々の貯蔵条件下の上記医薬組成物の高い安定性が患者及び製造業者の両方にとって付加的な利点である。
水分の吸収は水の取り込みにより生じた増大された重量の結果として医薬活性物質の含量を低下する。水分を吸収する傾向を有する医薬組成物は、例えば、好適な乾燥剤の添加により、又は薬物をそれが水分から保護される環境中で貯蔵することにより貯蔵中に水分から保護されるべきである。それ故、医薬活性物質はほんのわずかに吸湿性であることが好ましい。
更に、良く特定された結晶性形態の入手可能性は再結晶による薬物物質の精製を可能にする。
先に示された要件とは別に、物理的かつ化学的安定性を改良することができる医薬組成物の固体状態の変化が同薬物のそれ程安定ではない形態に対し有意な利点を与えることが一般に留意されるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうして、本発明の目的は上記医薬活性物質に課せられた重要な要件を満足する化合物Aの安定な結晶性形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の局面において、本発明は化合物Aの結晶性形態に関する。
第二の局面において、本発明は18.84°2θ、20.36°2θ及び25.21°2θ(±0.05°2θ)にピークを含むX線粉末回折パターン(前記X線粉末回折パターンはCuKα1放射線を使用してつくられる)を有する化合物Aの結晶性形態に関する。
第三の局面において、本発明は前記物質の少なくとも50%が先に、また後に特定されるような結晶性形態の形態で存在する化合物Aに関する。
化合物Aの医薬効力に鑑みて、本発明の第四の局面は先に、また後に特定されるような結晶性形態を含む医薬組成物又は薬物に関する。
第五の局面において、本発明はナトリウム依存性グルコースコトランスポーターSGLT、好ましくはSGLT2を抑制することにより影響し得る疾患又は症状の治療又は予防に適している医薬組成物を調製するための先に、また後に特定されるような結晶性形態の使用に関する。
第六の局面において、本発明は代謝障害の治療又は予防に適している医薬組成物を調製するための先に、また後に特定されるような結晶性形態の使用に関する。
第七の局面において、本発明はナトリウム依存性グルコースコトランスポーターSGLT2を抑制するための医薬組成物を調製するための先に、また後に特定されるような結晶性形態の使用に関する。
第八の局面において、本発明は膵臓ベータ細胞の変性を予防し、かつ/又は膵臓ベータ細胞の機能を改善かつ/又は回復するための医薬組成物を調製するための先に、また後に特定されるような結晶性形態の使用に関する。
第九の局面において、本発明は治療を要する患者の肝臓脂肪の異常な蓄積に起因する疾患又は症状を予防、遅延又は治療するための医薬組成物を調製するための先に、また後に特定されるような結晶性形態の使用に関する。
第十の局面において、本発明は先に、また後に特定されるような結晶性形態の製造方法であって、前記方法が下記の工程:
(a) 化合物Aを溶媒又は溶媒の混合物に溶解して飽和又はほぼ飽和溶液を生成する工程、
(b) その溶液を好ましくは冷却により貯蔵して結晶性形態を沈殿させ、こうして懸濁液を得る工程、
(c) 沈殿をその懸濁液から単離する工程、及び
(d) 過剰の前記溶媒又は溶媒の混合物が除去されるまで沈殿を乾燥させる工程
を含むことを特徴とする、前記結晶性形態の製造方法に関する。
本発明の更なる局面は以下の発明の詳細な説明及び実施例から当業者に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
驚くことに、前記の重要な要件を満足する化合物Aの結晶性形態が存在することがわかった。それ故、本発明は化合物Aの結晶性形態に関する。
この結晶性形態はそれらの特徴的なX線粉末回折(XRPD)パターンにより同定し得る。
結晶性形態は18.84°2θ、20.36°2θ及び25.21°2θ(±0.05°2θ)にピークを含むX線粉末回折パターン(前記X線粉末回折パターンはCuKα1放射線を使用してつくられる)により特徴づけられる。特に、前記X線粉末回折パターンは14.69°2θ、18.84°2θ、19.16°2θ、19.50°2θ、20.36°2θ及び25.21°2θ(±0.05°2θ)にピークを含み、前記X線粉末回折パターンはCuKα1放射線を使用してつくられる。
更に詳しくは、結晶性形態はCuKα1放射線を使用してつくられた、X線粉末回折パターンにより特徴づけられ、これは表1に含まれるような°2θ(±0.05°2θ)にピークを含む。
【0008】
表1:結晶性形態のX線粉末回折パターン(30°2θまでのピークのみがリストされる)

【0009】
表1続き

【0010】
更に詳しくは、結晶性形態はCuKα1放射線を使用してつくられた、X線粉末回折パターンにより特徴づけられ、これは図1に示されるような°2θ(±0.05°2θ)にピークを含む。
更に、化合物Aの結晶性形態は約149℃±3℃の融点(DSCにより測定された;開始温度として評価された;加熱速度10K/分)により特徴づけられる。得られたDSC曲線が図2に示される。
X線粉末回折パターンは、本発明の範囲内で、位置感受性検出器(OED)及びX線源(CuKα1放射線、λ=1.54056Å、40kV、40mA)としてのC-アノードとフィットされたトランスミッション様式のSTOE-STADI P-ディフラクトメーターを使用して記録される。上記表1中、値“2θ[°]”は回折の角度(°)を表し、また値“d[Å]”は格子面間の特定距離(Å)を表す。図1に示された強さはcps(秒当りのカウント)の単位で示される。
実験誤差を許容するために、上記2θ値は正確には±0.05°2θと考えられるべきである。即ち、化合物Aの結晶の所定のサンプルが本発明の結晶性形態であるか否かを分析する場合、サンプルについて実験で観察される2θ値はそれが特徴的な値の±0.05°2θ内に入る場合に上記された特徴的な値と同じと考えられるべきである。
融点はDSC821(メトラー・トレド)を使用してDSC(示差走査熱量測定)により測定される。
【0011】
本発明の更なる局面は先に、また後に特定されるような化合物Aの結晶性形態の製造方法であって、前記方法が下記の工程:
(a) 化合物Aを溶媒又は溶媒の混合物に溶解して飽和又はほぼ飽和溶液を生成する工程、
(b) その溶液を貯蔵して結晶性形態を溶液から沈殿させる工程、
(c) 沈殿をその溶液から除去する工程、及び
(d) 過剰の前記溶媒又は溶媒の混合物が除去されるまで沈殿を乾燥させる工程
を含むことを特徴とする、前記結晶性形態の製造方法に関する。
“飽和”又は“ほぼ飽和”という用語は工程(a)で使用されるような化合物Aの出発物質に関する。例えば、化合物Aの出発物質に関して飽和される溶液はその結晶性形態に関して過飽和されているかもしれない。
好適な溶媒はC1-4-アルカノール、水、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、ジエチルエーテル及びこれらの溶媒の2種以上の混合物からなる群から選ばれることが好ましい。
更に好ましい溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、アセトン、水及びこれらの溶媒の2種以上の混合物、特に前記有機溶媒の一種以上と水の混合物からなる群から選ばれる。
特に好ましい溶媒は酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール並びにエタノール及び/又はイソプロパノールと水の混合物からなる群から選ばれる。
水と一種以上のC1-4-アルカノール、特にメタノール、エタノール及び/又はイソプロパノール、最も好ましくはエタノールの混合物が採用される場合、水:アルカノールの好ましい容積比は約1:4〜4:1、更に好ましくは約1:2〜2:1、更に好ましくは約2:3〜3:2の範囲である。
工程(a)はほぼ室温(約20℃)又は使用される溶媒もしくは溶媒の混合物のほぼ沸点までの高温で行なわれることが好ましい。
【0012】
溶液中の化合物Aの溶解性を低下するために、工程(a)及び/又は工程(b)で一種以上のアンチソルベント(antisolvent)又は非溶媒が、好ましくは工程(a)中又は工程(b)の開始時に、添加されてもよい。水が好適なアンチソルベント又は非溶媒の例である。アンチソルベントもしくは非溶媒又はこれらの混合物の量は過飽和溶液又はほぼ過飽和溶液を得るように選ばれることが好ましい。
工程(b)で、溶液が沈殿を得るのに充分な時間にわたって貯蔵される。工程(b)における溶液の温度は工程(a)とほぼ同じ又はそれよりも低い。貯蔵中に、化合物Aを含む溶液の温度が、好ましくは20℃〜0℃の範囲の温度又は更に低い温度に、低下されることが好ましい。工程(b)は撹拌を用いて、又は用いずに行ない得る。当業者に知られているように、工程(b)における時間の期間及び温度の差により、得られる結晶のサイズ、形状及び品質が変化し得る。更に、結晶化は当業界で知られているような方法、例えば、引掻き又はラビングにより誘導し得る。必要により、(ほぼ)飽和溶液が種結晶で接種されてもよい。
工程(c)で、一種以上の溶媒が既知の方法、例えば、濾過、吸引濾過、デカンテーション又は遠心分離により沈殿から除去し得る。
工程(d)で、過剰の一種以上の溶媒が当業者により知られている方法、例えば、一種以上の溶媒の分圧を、好ましくは真空で、下げることにより、かつ/又は約20℃以上、好ましくは80℃以下、更に好ましくは50℃以下の温度範囲で加熱することにより沈殿から除去される。
【0013】
化合物Aは国際特許出願WO 2005/092877に詳しく、かつ/又は一般に記載又は引用された方法により合成し得る。更に、化合物Aの生物学的性質はそれが国際特許出願WO 2005/092877(これがそのまま本明細書に参考として含まれる)に記載されるように調べられてもよい。
本発明の結晶性形態は実質的に純粋な形態、即ち、化合物Aのその他の結晶性形態を実質的に含まない形態で薬物活性物質として使用されることが好ましい。それにもかかわらず、本発明はまた別の一種以上の結晶性形態と混合した本明細書に特定された結晶性形態を含む。薬物活性物質が結晶性形態の混合物である場合、その物質は少なくとも50%の本明細書に記載された結晶性形態を含むことが好ましい。
SGLT活性を抑制するそれらの能力に鑑みて、本発明の結晶性形態はSGLT活性、特にSGLT-2活性の抑制により影響し得るあらゆるこれらの症状又は疾患の治療又は予防措置のための医薬組成物を調製するのに適している。それ故、結晶性形態は疾患、特に代謝障害、又は症状、例えば、型1及び型2真性糖尿病、糖尿病の合併症(例えば、網膜症、腎症又は神経障害、糖尿病性脚部、潰瘍、大血管障害)、代謝性アシドーシス又はケトーシス、反応性低血糖、高インスリン血症、グルコース代謝障害、インスリン耐性、メタボリック症候群、異なる起源の脂質異常、アテローム硬化症及び関連疾患、肥満、高血圧、慢性心不全、浮腫及び高尿酸血の予防又は治療のための医薬組成物の調製に特に適している。結晶性形態はまたベータ細胞変性、例えば、膵臓ベータ細胞のアポトーシス又は壊死を予防するための医薬組成物の調製に適している。結晶性形態はまた膵臓細胞の機能を改善かつ/又は回復し、また膵臓ベータ細胞の数及びサイズを増大する医薬組成物の調製に適している。本発明の結晶性形態はまた利尿薬又は抗高血圧薬として有益かつ急性腎不全の予防及び治療に適している医薬組成物の調製に使用し得る。
本発明の結晶性形態の投与により、肝臓中の脂肪の異常な蓄積が軽減又は抑制し得る。それ故、本発明の別の局面によれば、本発明の医薬組成物が投与されることを特徴とする治療等を要する患者の肝臓脂肪の異常な蓄積に起因する疾患又は症状を予防、遅延又は治療するための方法が提供される。肝臓脂肪の異常な蓄積に起因する疾患又は症状は特に一般の脂肪肝、非アルコール中毒脂肪肝(NAFL)、非アルコール中毒脂肪肝炎(NASH)、過栄養誘発脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコール中毒誘発脂肪肝又は中毒性脂肪肝からなる群から選ばれる。
【0014】
特に、本発明の結晶性形態は糖尿病、特に型1及び型2真性糖尿病、及び/又は糖尿病合併症の予防又は治療のための医薬組成物の調製に適している。
加えて、本発明の結晶性形態は過体重、肥満(クラスI、クラスII及び/又はクラスIII肥満を含む)、内臓肥満及び/又は腹部肥満の予防又は治療に特に適している。
治療又は予防のための相当する活性を得るのに必要とされる用量は通常患者、病気又は症状の性質及び重度並びに投与の方法及び頻度に依存し、患者の医師が決めるためである。適当に、用量は静脈内経路により1〜100mg、好ましくは1〜30mg、また経口経路により1〜1000mg、好ましくは1〜100mgであってもよく、夫々の場合に1日1〜4回投与されてもよい。この目的のために、本発明の医薬組成物は一種以上の通常の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に結晶性形態を含むことが好ましい。このような医薬組成物は通常のガレン製剤、例えば、単純錠剤もしくは被覆錠剤、カプセル、粉末、懸濁液又は座薬として製剤化されてもよい。
以下の合成の実施例は化合物A及びその結晶性形態を調製する方法を説明するのに利用できる。それは例として記載された可能な方法と見なされるべきであり、本発明をその内容に限定するものではない。
【実施例】
【0015】
出発化合物の調製:
例I
【0016】
【化2】

【0017】
(5-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタノン
塩化オキサリル38.3ml及びジメチルホルムアミド0.8mlをジクロロメタン500ml中の5-ブロモ-2-クロロ-安息香酸100gの混合物に添加する。その反応混合物を14時間撹拌し、次いで濾過し、ロータリーエバポレーター中で全ての揮発性成分から分離する。残渣をジクロロメタン150mlに溶解し、得られる溶液を-5℃に冷却し、アニソール46.5gを添加する。次いで三塩化アルミニウム51.5gを回分添加し、その結果、温度が5℃を超えない。その溶液を1〜5℃で更に1時間撹拌し、次いで砕いた氷に注ぐ。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで3回抽出する。合わせた有機相を1M塩酸水溶液、1M水酸化ナトリウム溶液で2回、そして食塩水で洗浄する。次いで有機相を乾燥させ、溶媒を除去し、残渣をエタノールから再結晶する。
収量:86.3g(理論値の64%)
質量スペクトル(ESI+):m/z=325/327/329(Br+Cl)[M+H]+
例II
【0018】
【化3】

【0019】
4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-メトキシ-ベンジル)-ベンゼン
ジクロロメタン75ml及びアセトニトリル150ml中の(5-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタノン86.2g及びトリエチルシラン101.5mlの溶液を10℃に冷却する。次いで温度が20℃を超えないように三フッ化ホウ素エーテラート50.8mlを撹拌しながら添加する。その溶液を周囲温度で14時間撹拌し、その後にトリエチルシラン更に9ml及び三フッ化ホウ素エーテラート4.4mlを添加する。その溶液を45〜50℃で更に3時間撹拌し、次いで周囲温度に冷却する。水70ml中の水酸化カリウム28gの溶液を添加し、得られた混合物を2時間撹拌する。次いで有機相を分離し、水相をジイソプロピルエーテルで3回抽出する。合わせた有機相を2M水酸化カリウム溶液で2回そして食塩水で1回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を除去した後、残渣をエタノールで洗浄し、再度分離し、60℃で乾燥させる。
収量:50.0g(理論値の61%)
質量スペクトル(ESI+):m/z=310/312/314(Br+Cl)[M+H]+
例III
【0020】
【化4】

【0021】
4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェノール
ジクロロメタン150ml中の4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-メトキシ-ベンジル)-ベンゼン14.8gの溶液を氷浴中で冷却する。次いでジクロロメタン中の三臭化ホウ素の1M溶液50mlを添加し、その溶液を周囲温度で2時間撹拌する。次いでその溶液を再度氷浴中で冷却し、飽和炭酸カリウム水溶液を滴下して添加する。周囲温度で、その混合物を1M塩酸水溶液で1のpHに調節し、有機相を分離し、水相を酢酸エチルで更に3回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を完全に除去する。
収量:13.9g(理論値の98%)
質量スペクトル(ESI-):m/z=295/297/299(Br+Cl)[M-H]-
例IV
【0022】
【化5】

【0023】
[4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェノキシ]-tert-ブチル-ジメチル-シラン
ジクロロメタン140ml中の4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェノール13.9gの溶液を氷浴中で冷却する。次いでジクロロメタン20ml中のtert-ブチルジメチルシリルクロリド7.54gを添加し、続いてトリエチルアミン9.8ml及び4-ジメチルアミノピリジン0.5gを添加する。その溶液を周囲温度で16時間撹拌し、次いでジクロロメタン100mlで希釈する。有機相を1M塩酸水溶液で2回そして炭酸水素ナトリウム水溶液で1回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を除去した後に、残渣をシリカゲルにより濾過する(シクロヘキサン/酢酸エチル100:1)。
収量:16.8g(理論値の87%)
質量スペクトル(EI):m/z=410/412/414(Br+Cl)[M]+
例V
【0024】
【化6】

【0025】
2,3,4,6-テトラキス-O-(トリメチルシリル)-D-グルコピラノン
テトラヒドロフラン200ml中のD-グルコノ-1,5-ラクトン20g及びN-メチルモルホリン98.5mlの溶液を-5℃に冷却する。次いで温度が5℃を超えないようにトリメチルシリルクロリド85mlを滴下して添加する。次いでその溶液を周囲温度で1時間、35℃で5時間、再度周囲温度で14時間撹拌する。トルエン300mlの添加後に、その溶液を氷浴中で冷却し、温度が10℃を超えないように水500mlを添加する。次いで有機相を分離し、リン酸二水素ナトリウム水溶液、水、及び食塩水で夫々の場合に1回洗浄する。溶媒を除去し、残渣をトルエン250mlに吸収し、溶媒を再度完全に除去する。
収量:52.5g(純度約90%)
質量スペクトル(ESI+):m/z=467 [M+H]+
例VI
【0026】
【化7】

【0027】
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(4-ヒドロキシベンジル)-ベンゼン
乾燥ジエチルエーテル42ml中の[4-(5-ブロモ-2-クロロ-ベンジル)-フェノキシ]-tert-ブチル-ジメチル-シラン4.0gの溶液をアルゴン雰囲気下で-80℃に冷却する。ペンタン中のtert-ブチルリチウムの1.7M溶液11.6mlをその冷却溶液に徐々に滴下して添加し、次いでその溶液を-80℃で30分間撹拌する。次いでこの溶液を-80℃に冷却したジエチルエーテル38ml中の2,3,4,6-テトラキス-O-(トリメチルシリル)-D-グルコピラノン4.78gの溶液に移入ニードル(これはドライアイスで冷却されている)により滴下して添加する。得られる溶液を-78℃で3時間撹拌する。次いでメタノール35ml中のメタンスルホン酸1.1mlの溶液を添加し、その溶液を周囲温度で16時間撹拌する。次いでその溶液を固体の炭酸水素ナトリウムで中和し、酢酸エチルを添加し、メタノールをエーテルと一緒に除去する。炭酸水素ナトリウム水溶液を残っている溶液に添加し、得られる混合物を酢酸エチルで4回抽出する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させる。残渣をアセトニトリル30ml及びジクロロメタン30mlに溶解し、その溶液を-10℃に冷却する。トリエチルシラン4.4mlの添加後に、温度が-5℃を超えないように三フッ化ホウ素エーテラート2.6mlを滴下して添加する。添加が完結した後、その溶液を-5〜-10℃で更に5時間撹拌し、次いで炭酸水素ナトリウム水溶液の添加により反応停止する。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで4回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去し、残渣をシリカゲルによるクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール1:0→3:1)により精製する。次いで得られた生成物はβ/αの約6:1の混合物であり、これはジクロロメタン中の無水酢酸及びピリジンによるヒドロキシ基のグローバルアセチル化及びエタノールからの生成物の再結晶により純粋なβ-アノマーに変換し得る。こうして得られた生成物を4M水酸化カリウム水溶液によるメタノール中の脱アセチル化により標題化合物に変換する。
収量:1.6g(理論値の46%)
質量スペクトル(ESI+):m/z=398/400(Cl)[M+H]+
化合物Aの調製:
【0028】
【化8】

【0029】
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼン
(R)-3-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)-テトラヒドロフラン0.19gをジメチルホルムアミド2.5ml中の1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(4-ヒドロキシベンジル)-ベンゼン0.20g及び炭酸セシウム0.29gの混合物に添加する。その混合物を75℃で4時間撹拌し、その後に炭酸セシウム更に0.29g及び(R)-3-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)-テトラヒドロフラン0.19gを添加する。75℃で更に14時間撹拌した後、その混合物を周囲温度に冷却し、食塩水を添加する。得られる混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去する。残渣をシリカゲルによるクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール1:0→5:1)により精製する。
収量:0.12g(理論値の49%)
質量スペクトル(ESI+):m/z=451/453(Cl)[M+H]+
【0030】
結晶性形態の調製:
別法1:
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼン(上記のようにして得られた)30mgを約50℃までの加熱により酢酸エチル(0.5-3%の水を含む)0.8mlに溶解する。その溶液を約20℃に徐々に冷却する(約1〜3時間)。48時間後に、結晶性形態を濾過により白色の結晶として単離する。結晶を高温(40〜50℃)で減圧で約3〜4時間貯蔵することにより過剰の溶媒を除去する。
別法2:
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼン1gを約50℃までの加熱により水/エタノール混合物(2:3の容積比)5mlに溶解する。水8mlを添加し、その溶液を1〜3時間で約20℃に冷却する。16時間後に、結晶性形態を濾過により白色の結晶として単離する。結晶を約4〜6時間にわたって高温(40〜50℃)で貯蔵することにより過剰の溶媒を除去する。
別法3:
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼン1gを約50℃までの加熱によりイソプロパノール11mlに溶解する。その溶液を1〜3時間にわたって約20℃に冷却する。16時間後に、結晶性形態を濾過により白色の結晶として単離する。結晶を約4〜6時間にわたって高温(40〜50℃)で貯蔵することにより残留溶媒を除去する。
別法4:
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼン8.9gを約50℃までの加熱により水/エタノール混合物(2:3の容積比)60mlに溶解する。その溶液を3時間で約20℃に冷却し、結晶性化合物を濾過により単離する。分離した白色の固体を40℃で16時間乾燥して結晶性形態約6gを得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】結晶性形態のX線粉末回折図を示す。
【図2】結晶形態のDSCによる熱分析及び融点の測定を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンの結晶性形態。
【請求項2】
18.84°2θ、20.36°2θ及び25.21°2θ(±0.05°2θ)にピークを含むX線粉末回折パターン(前記X線粉末回折パターンはCuKα1放射線を使用してつくられる)を有する1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンの結晶性形態。
【請求項3】
X線粉末回折パターンが14.69°2θ、19.16°2θ及び19.50°2θ(±0.05°2θ)にピークを更に含み、前記X線粉末回折パターンがCuKα1放射線を使用してつくられる、請求項2記載の結晶性形態。
【請求項4】
少なくとも50%が請求項1、2又は3記載の結晶性形態の形態で存在する、1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼン。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の結晶性形態を含む医薬組成物。
【請求項6】
ナトリウム依存性グルコースコトランスポーターSGLTを抑制することにより影響し得る疾患又は症状の治療又は予防に適している医薬組成物を調製するための請求項1、2又は3記載の結晶性形態の使用。
【請求項7】
代謝障害、特に型1及び型2真性糖尿病、糖尿病の合併症、代謝性アシドーシス又はケトーシス、反応性低血糖、高インスリン血症、グルコース代謝障害、インスリン耐性、メタボリック症候群、異なる起源の脂質異常、アテローム硬化症及び関連疾患、肥満、高血圧、慢性心不全、浮腫及び高尿酸血からなる群から選ばれた代謝障害の治療又は予防に適している医薬組成物を調製するための請求項1、2又は3記載の結晶性形態の使用。
【請求項8】
ナトリウム依存性グルコースコトランスポーターSGLT2を抑制するための医薬組成物を調製するための請求項1、2又は3記載の結晶性形態の使用。
【請求項9】
膵臓ベータ細胞の変性を予防し、かつ/又は膵臓ベータ細胞の機能を改善かつ/又は回復するための医薬組成物を調製するための請求項1、2又は3記載の結晶性形態の使用。
【請求項10】
請求項1、2又は3記載の結晶性形態の製造方法であって、
前記方法が下記の工程:
(a) 1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-[4-((R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンを溶媒又は溶媒の混合物に溶解して飽和又はほぼ飽和溶液を生成する工程、
(b) その溶液を貯蔵して請求項1、2又は3記載の結晶性形態を溶液から沈殿させ、こうして懸濁液を得る工程、
(c) 沈殿をその懸濁液から単離する工程、及び
(d) 過剰の前記溶媒又は溶媒の混合物が除去されるまで沈殿を乾燥させる工程
を含むことを特徴とする、前記結晶性形態の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−46513(P2009−46513A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265492(P2008−265492)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【分割の表示】特願2008−509429(P2008−509429)の分割
【原出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】