説明

1−デセン/1−ドデセンに基づく高粘度PAO

本発明は、100℃(SATM D−445)において約40cSt〜約100cStの粘度を有し、約1200〜4000の数平均分子量を有する高粘度ポリα−オレフィンを生産するための1−デセン/1−ドデセン・オレフィン混合物の使用に関し、特に潤滑油ベースストックとして有用なこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度ポリα−オレフィン(PAO)を生産するための1−デセン/1−ドデセン・オレフィン混合物の使用に関する。特に、この生産物は潤滑油ベースストック
として有用である。
【背景技術】
【0002】
PAOは、潤滑油市場においての重要性を獲得した一群の炭化水素潤滑油を含む。これらの物質は典型的には、一般的には1−オクテンから1−ドデセンまでのα−オレフィン、好ましい物質としては1−デセンの触媒的オリゴマー化(低分子量生産物への重合)によって生産される。もっとも、US特許4,956,122号およびそこに引用されるその他の特許に記述されるようなエチレンおよびより長鎖のオレフィンのコポリマーを始め、エチレンおよびプロピレンのような低オレフィンのポリマーも用いることができる。PAO生産物は、100℃において約2cStの高度流動流体から100℃において100cStを超える粘度を有する高分子量の粘性物質までの広範囲の粘度をもったものとして得ることができる。
【0003】
このPAOは代表的には、AlCl3またはBF3のような触媒の存在下でオレフィン原料の重合により得ることができる。PAO潤滑油の生産プロセスは、例えばUS特許3,149,178号、3,382,291号、3,742,082号、3,780,128号、4,172,855号、および4,956,122号などの多くの特許に開示されている。
【0004】
高粘度PAO(ASTM D445に従って測定される20cStより大きな100℃における動粘度を有するPAOとして本発明において定義される)は通常、直鎖状α−オレフィンのカチオン重合によって生産される。1−デセンはオリゴマー重合用の好ましいオレフィンである。またPAOは、1−オクテンおよび1−ドデセンを含むオレフィンの混合物を用いて生産されてきた。
【0005】
AlCl3触媒オレフィン・オリゴマー重合により生産される高粘度PAOは、例えばエクソンモービル・ケミカル・カンパニー社から長年の間市販で入手されてきた。これらのPAOは1−デセン、または1−オクテン/1−ドデセンの混合物から生産されている。オレフィン混合物をオリゴマー化する場合、流動点(pouring point)、粘度、および外観につついての所望の低温特性を有する組成物を生産するために組成物を注意深く制御することが必要になる。典型的には、1−デセンよりも大きな分子量を有するオレフィンの使用により高い流動点を有するPAOが得られる。結果として、オレフィン混合物をオリゴマー化する場合、低分子量および高分子量オレフィンの組合せ(1−ドデセンに関して)が一般的に用いられる。
【0006】
US4,533,782号は、溶液中に式RnAlX3-nのアルミニウム化合物および式R’X(Xは両式においてハライド)を有する化合物を含む触媒を用いたC3〜C14の直鎖状または分枝状1−オレフィンを含む重合性モノマーのカチオン重合に関する。
【0007】
米国特許5,196,635号は、有機溶媒中でハロゲン化アルミニウムおよびC6〜C20直鎖状α−オレフィンのオリゴマー化に有用なプロトン供与体を反応させることにより調製される触媒の使用について開示している。
【0008】
米国特許6,646,174号は、100℃において約4〜約6cStの範囲の動粘度、130〜145の粘度指数、および−60℃〜−50℃の流動点(pour point)を有するPAO生成物を生産するための1−ドデセンおよび1−デセンのオリゴマー化プロセスを示している。
【0009】
米国特許6,686,511号は、第1分離装置においてオレフィン性フィードストックを分画し、第1オリゴマー化ゾーンにおいて軽オレフィン分画を第1オリゴマー化触媒と接触させて第1生成物を得る。続いて、この第1生成物を第2オリゴマー化ゾーンにおいて中間オレフィン分画およびオリゴマー化触媒と接触させ、第2生成物を得る工程を含み、全部で少なくとも4工程を有する潤滑油ベースストックの生産プロセスに関する。
【0010】
米国特許6,395,948号は、有機希釈剤の非存在下でデセンまたはドデセンから高粘度PAOを調製するための一般式Q+-で表される酸性イオン性液体オリゴマー化触媒の使用を開示している。米国出願番号第2002/0128532号および2004/0030075号も参照されたい。
【0011】
日本特許第1095108号は、ルイス酸およびアルキルシクロヘキサンを用いたオレフィン・オリゴマーの製造方法に関する。
【0012】
ロシア特許第2212936号は、活性アルミニウムを有する触媒および有機ハライド化合物RX(ここで、Rはn−、sec−、およびtert−のアルキル、アリル、ベンジル、アセチル、またはベンゾイルであり、Xは塩素、臭素、またはヨウ素である。)である共触媒(co-catalyst)を用いるオレフィンのカチオンオリゴマー化に関する。
【0013】
その他の関連のある特許には、WO99/38938号、米国特許第6,706,828号および6,713,582号が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現行のプラクティスは、工業的潤滑剤のような最終製品に適した十分な低温性能を有する高粘度PAO組成物を得る経済的な方法を可能とする原料オレフィン/オレフィン混合物の選択において十分な融通性を提供するものではない。
【0015】
驚くことに本発明では、1−デセン/1−ドデセン混合物から優れた低温性能を有する高粘度PAOを生産する方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
本発明者らは、100℃(ASTM D−445)において約40〜約100cStの動粘度の特徴を有し、一つの態様において低流動点のような望ましい低温特性を有する高粘度PAOにオリゴマー化することができる1−デセン/1−ドデセン混合物を見出した。
【0017】
一つの態様において前記プロセスは、オレフィンと触媒の混合物を第1反応槽に導入して部分的に反応した生成物を生産し、該反応生成物は第2反応槽に供給され、反応を完結させる。さらにもう一つの態様において、前記プロセスは反応を完結させるために連続した3つの反応槽を用いる。
【0018】
もう一つの態様において前記プロセスは溶媒の非存在下において100℃における40cStPAOを生産し、さらにもう一つの態様において前記プロセスは溶媒を用いて100℃における100cStPAOを生産する。さらにもう一つの態様において、本発明の高粘度PAOは約1200〜約4000の数平均分子量を有する。
【0019】
これらの又は他の態様、対象、特徴、および利点は、以下の図面、詳細な説明、実施例、および添付特許請求の範囲を参照することにより明確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、一つの態様において100℃(ASTM D−445)における約40〜約100cStの動粘度の特徴を有し、一つの態様において低流動点のような望ましい低温特性を有する高粘度PAOを生産するためのハロゲン化アルミニウムと水との複合体を用いてオリゴマー化した1−デセンおよび1−ドデセンを含む直鎖状α−オレフィンの混合物に関する。
【0021】
本発明のプロセスは、触媒とともに1−デセンおよび1−ドデセンを含む直鎖状α−オレフィン(LAO)の混合物を共供給(co-feeding)する工程を含む。この触媒はAlCl3のようなLAOからPAOsへの重合のための既知の任意の触媒であり得る。好ましくは、この触媒は水のようなプロトン供与体とハロゲン化アルミニウムとを含む複合体であり、好ましくは塩化アルミニウム1モルあたり0.5モルの水を有する三塩化アルミニウム−水複合体である。前記反応は単一または多段階反応槽におけるバッチ式、半バッチ式、または連続式であることができる。好ましい態様において、触媒および直鎖状α−オレフィン(LAO)の混合物は、好ましくは部分的に反応がすすむ第1オリゴマー化反応槽に供給され、次に反応が完結するまで継続できる、または反応がさらに進行する第2オリゴマー化反応槽に進み、次に触媒、直鎖状α−オレフィン、およびオリゴマーの混合物は反応が完結する第3オリゴマー化反応槽に供給される。追加のオリゴマー化反応槽を連続して用いることができる。
【0022】
前記反応ゾーンは、LAO原料からオリゴマーを生産するために維持および制御された好適条件下での反応を提供する当該技術分野で既知の任意の反応手段であり得る。このLAO原料は1−デセンおよび1−ドデセンの混合物を含み、前記第1反応ゾーンに触媒を各別にまたはともに導入することができる。それぞれの反応槽は、緊密な接触を可能とするため原料と触媒との混合用の混合または撹拌手段を装備していることが好ましい。より好ましい態様において、連続撹拌タンク反応槽(CSTR)が連続して用いられる。CSTRそれ自体は当該技術分野で既知である。また、好ましい態様において、未変換モノマーの再循環は用いられない。
【0023】
有効量の触媒が提供される。本発明の開示を理解する当業者は過度の実験を伴うことなく有効量を決定できる。好ましい態様において、前記触媒濃度は総反応量(例えば、モノマー、触媒、希釈剤および/または他の任意の成分)の0.5〜4重量%である。少量の芳香族化合物の添加によりLAOのオリゴマー化が向上することが当該技術分野で知られている。下記の100cStの実施例においては、0.5重量%のキシレンが原料中に存在する。
【0024】
反応条件は、モノマーから所望の生成物への効果的な転換を生じ得る条件である。そのような条件も過度の実験を伴わずに本発明の開示により当業者が決定することができる。好ましい態様において、前記反応温度は約80〜140°Fの間(26〜60℃の間)であり、第1反応槽における滞留時間は約1.5〜約3時間であり、もし第2反応槽が用いられるときは、該第2反応槽における滞留時間は約0.5〜約1.5時間である。もし第3反応槽が用いられるときは、第3反応槽における滞留時間は典型的には約10分〜約1時間であることになる。前記反応は特に圧力依存性ではなく、低い圧力、好ましくは凡そ大気圧から約50psiaにおける反応槽を運転することが最も経済的である。
【0025】
一つの態様において、溶媒は用いられない。もう一つの態様において、不活性な希釈剤、好ましくはC5〜C19パラフィン性炭化水素、好ましくはエクソンモービル・ケミカル・カンパーニー社(テキサス州ベイタウン)から入手できるNorpar(商標)12流体のようなC6〜C13パラフィン性流体、主に炭素12の脂肪族化合物を有する脂肪族(パラフィン性)溶媒から選択される不活性な希釈剤を用いることができる。
【0026】
前記反応生成物は典型的にはC20〜24ダイマー、C30〜36トリマー、C40〜48テトラマー、C50〜60ペンタマー、およびC60+重分子を含む。
【0027】
次に前記反応混合物は未反応のモノマー性およびダイマー性分子種を除去するために蒸留される。好ましい態様において、得られた生成物は典型的には、例えば100℃において40cStまたは100cStの所望の粘度を有する生成物を提供するためにオリゴマーを飽和化するため水素化される。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明を具体的に示し、他の方法およびそれにより生産される生成物との比較を示すことを意味する。数字上の変更および変動は可能であり、添付特許請求の範囲内においてここで特記する場合を除きこれらを本発明に属するものとして実施することができるものと理解される。
【0029】
反応は、モーター駆動撹拌機および調節装置を備えた蔽いを有するた三口5L丸底ガラスフラスコ(反応槽)で行った。反応温度を制御するためにボンプにより冷却水を前記蔽いを通して循環させた。約2000gのLAO原料を原料ビュレットに充填した。100cStPAOの場合、Norpar(商標)12流体もオリゴマー化中の混合および熱移動を改善するためオレフィン混合物(25〜30重量%のオレフィン)に添加した。40cStPAOの場合、希釈剤は添加しなかった。制御された速度で反応槽にLAOを供給するためにポンプを用いた。反応槽を、オリゴマー化の開始前の湿気を除去するために乾燥し、乾燥窒素でパージした。同様に反応の間、反応槽を少量の窒素で連続的にパージした。所望の量のAlCl3触媒を原料の0.8〜4.0重量%予め量りとり、閉めたガラスバイアルに保存した。AlCl3は多くの販売元から市販で入手できる。下記に用いたAlCl3はガルブランツェン・ケミカル社から購入した。AlBr3のような他のカチオンオリゴマー化触媒も本発明の研究によって有効になる。AlCl3の場合、本発明者らは細かな顆粒触媒ほどより少ない触媒で足りることを見出した。
【0030】
重合の開始時点において、激しい攪拌下および冷却水を蔽いを通して流しながら、原料オレフィン混合を15分でフラスコに送り込んだ。次にガラスバイアルからのAlCl3触媒を空になるまで反応槽に入れ、測定量のDI(脱イオン)水を長い針シリンジを通してフラスコに注入した。注入したDI水の量は、1モルAlCl3あたり0.5モルの水に対応した。原料を連続的に2〜5時間をかけて反応槽に添加した。必要量の触媒および水を15分間隔で添加した。オレフィンおよび触媒の添加が完了後、オリゴマー化反応をさらに1〜3時間進行させた。反応温度は30℃〜60℃の範囲であった。
【0031】
反応内容物を同量の65〜70℃のアルカリ性溶液(5重量%水酸化ナトリウム水溶液)に添加することにより反応を止めた。反応を止めた塊を引き続き65〜70℃の熱水で2回洗浄した。粘調な油を水相から分離し、水、未変換モノマー、およびダイマー(もし存在すれば溶媒も)を除去するために蒸留した。蒸留の物質残渣は98〜99%の原料オレフィンの変換を示した。前記粘調な油を熱的に脱塩素化し、Pd触媒上で水素化した。
【0032】
下記の実施例のそれぞれについて、100℃および40℃の動粘度をそれぞれの温度についてASTM D−445に従って測定した。流動点をASTM D−97に従って決定した。また、粘度指数(VI)をASTM D−2270に従って決定した。数平均分子量(Mn)を示差屈折指数(DRI)検出器を装備したウォーターズ社150ゲル浸透クロマトグラフを用いてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。数値分析を市販で入手可能な標準ゲル浸透クロマトグラフィー・ソフトウエアパッケージを用いて行った。
【0033】
以下の実施例は40cStPAOの作成および比較対照に関する。
【0034】
実施例1および2
従来のオレフィン原料(実施例1については1−デセン、実施例2については1−オクテン/1−ドデセン)を用いて製造した市販PAOの物理特性データを下記表1の実施例1および2に示した。生成物について−42℃の流動点が得られた。生成物の粘度指数VIは150〜151の範囲であった。
【0035】
実施例3
C10/C12オレフィン(1−デセンおよび1−ドデセン)の55/45重量%混合物のオリゴマー化を前述の操作により1.45重量%のAlCl3濃度を用いて行った。オレフィン添加時間は2時間(添加時間)であり、全体の反応はさらに1時間(維持時間)維持した。温度は反応中に45℃〜61℃の間を変動した。これにより−42℃の流動点および152のVIを有するPAO生成物が得られた。
【0036】
実施例4
原料組成物が50/50重量%のC10/C12オレフィン混合物であり、触媒濃度が1.33重量%AlCl3であることを除き、操作は実施例3と同様であった。反応温度は45℃〜58℃の間で変動した。生成物の流動点は−42℃であり、VIは151であった。
【0037】
実施例5
原料組成物が100%のC12オレフィン混合物であることを除き、操作は実施例3と同様であった。添加時間は3時間、維持時間は1時間であり、触媒濃度が1.3重量%AlCl3であった。反応温度は45℃〜50℃の間で変動した。生成物の流動点は−33℃であり、VIは158であった。
【0038】
実施例6
原料組成物が50/50重量%のC12/C14オレフィン混合物であることを除き、操作は実施例3と同様であった。添加時間は3時間、維持時間は1時間であり、触媒濃度は1.4重量%、反応温度は45℃〜50℃の間で変動した。生成物の流動点は−21℃であり、VIは161であった。
【0039】
上記実施例の結果を下記表1に示した。C10/C12オレフィンの注意深く制御された組成物が所望の流動点を有する40cStPAOを生産するために必要であることは明らかである。
【表1】

【0040】
以下の実施例は100cStPAOの作成および比較対照に関する。
【0041】
実施例7および8
従来のオレフィン原料(実施例7については1−デセン、実施例8については1−オクテン/1−ドデセン)を用いて製造した市販PAOの物理特性データを下記表2の実施例7および8に示した。生成物について−33℃の流動点が得られた。生成物の粘度指数VIは168であった。
【0042】
実施例9
C10/C12オレフィンの55/45重量%混合物の実験室における重合を実験項の前述の操作により2.45重量%のAlCl3濃度を用いて行った。原料添加時間は3時間であり、維持時間は2時間であった。反応温度は37℃〜45℃の間で変動した。生成物のPAOは−33℃の流動点を有し、VIは173であった。
【0043】
実施例10
原料が50/50重量%のC10/C12オレフィン混合物であり、触媒濃度が3.0重量%AlCl3であり、反応温度は37℃〜45℃の間で変動したことを除き、実施例9と同様に行った。生成物の流動点は−33℃であり、VIは173であった。
【0044】
実施例11
原料が100%のC12オレフィン混合物であることを除き、操作は実施例9と同様に行った。添加時間は3時間、触媒濃度が3重量%AlCl3であり、反応温度は40℃〜45℃であった。生成物の流動点は−27℃であり、VIは176であった。
【0045】
実施例12
C12/C14オレフィンの60/40(重量%)混合物を用いた場合、流動点は−21℃に上昇した。重合操作は実施例9と同様であった。添加時間は3時間、維持時間は2時間であり、触媒濃度は2.8重量%であった。生成物は180のVIを有した。
【0046】
上記実施例の結果を下記表2に示した。C10/C12オレフィンの注意深く制御された組成物が所望の低流動点を有する100cStPAOを生産するために必要であることは明らかである。所望の低流動点を有する100cStPAOが、12より大きな炭素数を有するオレフィンまたはオレフィン混合物を用いた本技術により生産することができないことも観察された。
【表2】

【0047】
実施例13
C10/C12オレフィンの55/45重量%混合物の2−CSTR市販設定におけるオリゴマー化を行い、40cStPAOを生産した。このプロセスでは、1.2重量%のAlCl3濃度、50℃の反応温度、AlCl31モルあたり0.5モルの水、および反応槽1および2におけるそれぞれ2時間および1時間の滞留時間を用いた。生成物のPAOは40.19cStの100℃粘度、152のVI、および−51℃の流動点を有した。
【0048】
実施例14
同様の2−CSTR設定により、C10/C12オレフィンの55/45重量%混合物を用いて100cStPAOを生産した。AlCl3濃度は3.0重量%であり、AlCl31モルあたり0.5モルの水を用い、反応温度は40℃であり、希釈剤濃度(Norpar(商標)12)の濃度は22重量%であり、反応槽1および2における滞留時間はそれぞれ2.5時間および1.2時間であった。生成物のPAOは104.2cStの100℃粘度、172のVI、および−39℃の流動点を有した。
【0049】
本発明の具体的な態様を詳細に記述してきたが、本発明の本質および範囲内において様々なその他の変更は当業者に明らかであり、当業者により容易になされ得るものと理解される。したがって、本発明に添付した特許請求の範囲の範囲は実施例に限定されることを意図するものではない。むしろ、上記詳細な説明に照らして多くの変更が当業者に示唆されることになる。そのような全ての明らかな変更は、添付の特許請求の範囲に含まれる。本発明の好ましい態様には、100℃において約40cSt〜約100cSt(ASTM D−445)の粘度、および約1200〜約4000の数平均分子量を有するPAOを生産するのに十分な時間、1−デセンおよび1−ドデセンを含む原料をオリゴマー化条件下でオリゴマー化反応ゾーンにおいて重合触媒と接触させる工程を含むポリα−オレフィン(PAO)の製造プロセスが含まれる。本発明のより好ましい態様には、下記から選択される少なくとも一つの限定が含まれ、本発明の開示を知った当業者に明らかで実施可能となる様式において組合せることができる。すなわち、前記原料は、モルベースで10〜90%の1−デセン・モノマー単位および90〜10%の1−ドデセン・モノマー単位を含む。或いは、前記原料は、モルベースで25〜74%の1−デセン・モノマー単位および75〜25%の1−ドデセン・モノマー単位を含む。或いは、前記原料は、モルベースで40〜60%の1−デセン・モノマー単位および60〜40%の1−ドデセン・モノマー単位を含む。或いは、前記原料は、モルベースで45〜55%の1−デセン・モノマー単位および55〜45%の1−ドデセン・モノマー単位を含む。前記PAOは、100℃で約40cStの動粘度(ASTM D−445)、約150以上の粘度指数(ASTM D−2270)、および約−42℃以下の流動点(ASTM D−97)を有し得る。前記PAOは、100℃で約100cStの動粘度(ASTM D−445)、約170以上の粘度指数(ASTM D−2270)、および約−30℃以下の流動点(ASTM D−97)を有し得る。前記原料はさらに希釈剤を含む。前記希釈剤は、C6〜C13パラフィン性流体から選択される1つ以上の炭化水素流体を含み得る。前記重合触媒はAlCl3、AlBr3、およびこれらの混合物から選択され得る。前記重合触媒は、AlCl31モルあたり0.5モルの水を有するAlCl3−水複合体であり得る。前記重合反応ゾーンは連続撹拌タンク反応槽(CSTR)を含み得る。前記重合反応ゾーンは連続した1つより多くの重合反応槽を含み得る。前記反応槽における重合条件は約26〜60℃の温度、および凡そ大気圧〜約50psiaの圧力を含み得る。未反応モノマー性およびダイマー性分子種を除去するための蒸留、引き続き更なる分離操作を伴わない生成物の水素化によるオリゴマーの飽和化、引き続き前記PAOの回収の工程をさらに含み得る。また、好ましい態様には、本発明の開示を知った当業者に明らかで実施可能な態様で上記の1以上のプロセスにより得られる組成物の実施態様を用い得る。さらに下記の少なくとも1つから選択されるより好ましい追加的限定となるようなプロセスにより作成される組成物が含まれ得る。すなわち、そのプロセスとは、前記1つ以上のPAOが、1−デセンおよび1−ドデセンのC30〜C36トリマー、C40〜C48テトラマー、およびC50〜C60テトラマーを含むか、前記1つ以上のPAOは100℃で約40cStの粘度を有するPAO、100℃で約100cStの粘度を有するPAOから選択されるものである。
【0050】
本発明で用いられる商品名は、例えば各国政府管轄における登録商標であり、特定の商標権により名称が保護されることを示す(商標)で表されている。本発明に引用される全ての特許および特許出願、試験操作規範(ASTM方法、UL方法などのような)、およびその他の書類は、その開示が本発明と一致する限り、そのような取り込みが許容されない法制の場合を除き参照により完全に取り込まれる。数値の下限および上限が本発明に記載されている場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃において約40cSt〜約100cSt(ASTM D−445)の粘度、および約1200〜約4000の数平均分子量を有するPAO生産するのに十分な時間、1−デセンおよび1−ドデセンを含む原料をオリゴマー化条件下でオリゴマー化反応ゾーンにおいてオリゴマー化触媒と接触させる工程を含むポリα−オレフィン(PAO)の製造方法。
【請求項2】
前記原料が、モルベースで10〜90%の1−デセン・モノマー単位および90〜10%の1−ドデセン・モノマー単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記原料が、モルベースで25〜74%の1−デセン・モノマー単位および75〜25%の1−ドデセン・モノマー単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記原料が、モルベースで40〜60%の1−デセン・モノマー単位および60〜40%の1−ドデセン・モノマー単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記原料が、モルベースで45〜55%の1−デセン・モノマー単位および55〜45%の1−ドデセン・モノマー単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記PAOが、100℃で約40cStの動粘度(ASTM D−445)、約150以上の粘度指数(ASTM D−2270)、および約−42℃以下の流動点(ASTM D−97)を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記PAOが、100℃で約100cStの動粘度(ASTM D−445)、約170以上の粘度指数(ASTM D−2270)、および約−30℃以下の流動点(ASTM D−97)を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記原料がさらに希釈剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記希釈剤が、C6〜C13パラフィン性流体から選択される1つ以上の炭化水素流体を含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記オリゴマー化触媒が、AlCl3、AlBr3、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記オリゴマー化触媒が、AlCl31モルあたり0.5モルの水を有するAlCl3−水複合体であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記オリゴマー化反応ゾーンが連続撹拌タンク反応槽(CSTR)を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記オリゴマー化反応ゾーンが連続した1つより多くのオリゴマー化反応槽を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記反応槽における重合条件が、約26〜60℃の温度、および凡そ大気圧〜約50psiaの圧力を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
未反応モノマー性およびダイマー性分子種を除去するため蒸留する工程、オリゴマーを飽和化するための更なる分離操作を伴わずに得られる生成物の水素化してオリゴマーを飽和する工程、引き続いて前記PAOを回収する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載の製造方法により製造される1つ以上のPAOを含む潤滑剤組成物。
【請求項17】
前記1つ以上のPAOが、1−デセンおよび1−ドデセンのC30〜C36トリマー、C40〜C48テトラマー、およびC50〜C60テトラマーを含むことを特徴とする請求項16に記載の潤滑剤組成物。
【請求項18】
前記1つ以上のPAOが、100℃で約40cStの粘度を有するPAO、100℃で約100cStの粘度を有するPAO、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項17に記載の潤滑剤組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の製造方法により製造されるPAO。

【公表番号】特表2008−528709(P2008−528709A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551267(P2007−551267)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045993
【国際公開番号】WO2006/078395
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】