説明

1−メチルカルバペネム化合物の結晶を含有する医薬

【課題】
化合物(I)
【化1】


の結晶の中で、保存安定性及び水への溶解性が改善されたものを見出すこと。
【解決手段】
銅のKα線の照射で得られる粉末X線回折において、特定の主ピークを示すことを特徴
とする式(I)で表される1−メチルカルバペネム化合物からなる結晶を有効成分として
含有する医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた抗菌活性及び保存安定性を有し、かつ取り扱いの容易な、特に水への
溶解性に優れた1−メチルカルバペネム化合物からなる結晶を有効成分として含有する医
薬、特に細菌感染症の予防若しくは治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には式
【0003】
【化1】

【0004】
で表される1−メチルカルバペネム化合物が開示されている。本化合物(I)はグラム陰
性菌のみならずグラム陽性菌にも優れた抗菌活性を示し、抗菌剤としての有用性が期待で
きる。
【0005】
特許文献3及び特許文献4には、本化合物(I)又はその薬理上許容される塩の特定結
晶が開示されている。当該結晶は凍結乾燥粉末に比べれば保存安定性に優れ、取り扱いが
容易であるが、それでもなお、保存安定性や、取り扱いの容易さ、特に水への溶解性とい
う点では、必ずしも全く問題がないとは言い切れない。
【特許文献1】特開平10−204086号公報
【特許文献2】特開平11−71277号公報
【特許文献3】特開2001−72681号公報
【特許文献4】特開2002−161034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医薬の原薬はその品質を保持しながら、長期間保管できることが重要である。保管条件
が低温であることが必要な場合は、品質の保持のために大掛かりな冷蔵設備が必要となる
ため、室温で保管できるような安定な結晶を見出すことは工業的に有意義である。また、
特に医薬が注射剤として開発される場合は、工場における製剤化工程や患者への製剤投与
時に、より速やかに水に溶解する結晶が好ましい。以上のことから、保存安定性を保ち、
かつ水へ速やかに溶解する結晶が見出せれば、医薬の生産性及び利便性をより向上させる
ことができると考えられる。
【0007】
そこで発明者等は、これらの課題を解決するため種々検討を行った結果、1−メチルカ
ルバペネム化合物の特定の新規の結晶を得ることに成功した。この結晶は、従来知られた
結晶と比較して同等以上の保存安定性を有し、かつ水に対する溶解性に優れ、医薬(特に
抗菌剤)の特に注射剤原薬として非常に優れた結晶であることを見出し、本発明を完成し
た。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)銅のKα線の照射で得られる粉末X線回析において、面間隔d=13.30、9.
86、8.17、7.00及び4.59に主にピークを示すことを特徴とする上記式(I
)で表される1−メチルカルバペネム化合物からなる結晶を有効成分として含有する医薬

(2)銅のKα線の照射で得られる粉末X線回析において、面間隔d=13.30、9.
86、8.17、7.00及び4.59に主にピークを示すことを特徴とする式
【0009】
【化2】

【0010】
で表される1−メチルカルバペネム化合物・アセトン和物の結晶を有効成分として含有す
る医薬、及び、
(3)前記結晶を有効成分として含有する抗菌剤に関する。
【0011】
上記において、
式(I)で表される1−メチルカルバペネム化合物は特開平10−204086号及び
特開平11−071277号公報に開示された化合物であり、グラム陽性菌からグラム陰
性菌まで広範囲の細菌に対して強力な抗菌活性を有する化合物である。
【0012】
式(I−1)で表される化合物は、化合物(I)のアセトン和物である。
【0013】
本発明の結晶は、式(I)で表される1−メチルカルバペネム化合物又はその塩を、例
えば水−アセトン溶液に溶かし、必要に応じて塩基を加え、この溶液から結晶を析出させ
ることにより製造することができる。
【0014】
化合物(I)の塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;
炭酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエ
ン酸塩等の有機酸塩;またはメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエン
スルホン酸塩等のスルホン酸塩のような酸付加塩、並びに、ナトリウム塩、カリウム塩、
リチウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、コバルト塩等の金
属塩;またはアンモニウム塩のようなアンモニウム四級塩のような塩基付加塩を挙げるこ
とができる。
【0015】
本発明において、化合物(1)は、大気に放置しておくことにより、水分を吸収し、吸
着水が付いたり、水和物となる場合があり、また、他のある種の溶媒を吸収し、溶媒和物
となる場合もあるが、そのような水和物又は溶媒和物も化合物(I)に含まれる。
【0016】
本発明において、化合物(1)の水和物又は溶媒和物は、好適には水和物又はアセトン
和物であり、より好適にはアセトン和物である。
【0017】
本発明の結晶は、その内部構造が三次元的に構成原子(またはその集団)の規則正しい
繰り返しでできてきる固体をいい、そのような規則正しい内部構造を持たない無定形の固
体とは区別される。
【0018】
同じ化合物の結晶であっても、結晶化の条件によって、複数の異なる内部構造および物
理化学的性質を有する結晶が生成することもあるが、本発明の結晶は、これら結晶形のい
ずれであってもよく、2以上の結晶形の混合物であってもよい。
【0019】
本発明の結晶を少しでも含有する化合物(1)の結晶は本発明の結晶に含まれ、本発明
の結晶は、好適には50%以上、より好適には70%以上、更により好適には80%以上
の本発明の結晶を含有する化合物(1)の結晶である。
【0020】
式(I―1)で表される1−メチルカルバペネム化合物の結晶は、銅のKα線(波長λ
=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回析において、面間隔d=13
.30、9.86、8.17、7.00及び4.59に主にピークを示す。
【発明の効果】
【0021】
本発明の結晶は、化合物(I)の結晶の中で、保存安定性及び水への溶解性が改善され
たものであり、工業生産において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
式(I)で表される1−メチルカルバペネム化合物は特開平10−204086号、特
開平11−071277号及び特開2002−212183号公報に開示された方法又は
それに準ずる方法に従って製造することができる。
【0023】
本発明の結晶は、例えば、化合物(I)又はその塩を適当な溶媒(良溶媒)に溶解し、
必要に応じて濃縮し、必要に応じて貧溶媒を加え、必要に応じて冷却する等して、化合物
(I)を過飽和状態に導き、結晶を析出させ、次いで析出した結晶を単離し、乾燥させる
ことによって達成される。
【0024】
結晶の析出は、反応容器中で自然に開始し得るが、種結晶の接種、超音波刺激、反応器
の表面を擦る等の機械的刺激を与えることによっても開始又は促進させることができる。
【0025】
化合物(I)の溶液を取り扱う場合、化合物(I)の分解を抑えるため、通常−10℃
乃至60℃の温度で取り扱い、好適には0℃乃至25℃で取り扱う。
【0026】
結晶化させるための冷却温度としては0℃乃至10℃が好適である。
【0027】
化合物(I)の溶液を濃縮する方法としては、例えば、ロータリーエバポレーター等を
用いて常圧若しくは減圧下で加温しながら溶媒を蒸発させて濃縮する方法、逆浸透圧膜を
用いて濃縮する方法などがある。水溶液の濃縮に使用する逆浸透膜としては、例えばポリ
アクリロニトリル系膜、ポリビニルアルコール系膜、ポリアミド系膜、酢酸セルロース系
膜等から選択する事ができる。
【0028】
化合物(I)の良溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルム
アミド、メタノールを挙げることができるが、好適には水である。
【0029】
化合物(I)の貧溶媒としては、例えばアセトン単独、又は、エタノール、プロパノー
ル、ブタノールのような炭素数2乃至4個のアルコール類;メチルエチルケトンのような
ケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類;酢酸メチル、酢
酸エチルのようなエステル類といった溶媒とアセトンとの混合溶媒を挙げることができる
が、好適にはアセトンである。
【0030】
出発原料の化合物(I)又はその塩は凍結乾燥粉末や既存の結晶として単離したものを
用いてもよいが、結晶化により精製することも可能であるので、化合物(I)又はその塩
を含む合成反応粗生成物の溶液を使用することもできる。
【0031】
過飽和状態は、例えば、化合物(I)の水溶液を30℃乃至60℃の加温下に飽和状態
まで濃縮し、0℃乃至10℃まで、徐々に冷却することによって、或いは、飽和状態の水
溶液にアセトンのような貧溶媒を徐々に加え、必要に応じて冷却することによって得るこ
とができる。
【0032】
本発明の結晶は、好適には、化合物(I)を含む水溶液を必要に応じて濃縮し、貧溶媒
を加え、更に必要に応じて冷却することによって析出する。
【0033】
更に好適には、本発明の結晶は、化合物(I)を含む水溶液を必要に応じて濃縮し、ア
セトンを加え、必要に応じて冷却することによって析出する。
【0034】
析出した結晶は、例えば、濾過、遠心分離、又は傾斜法によって単離することができる
。単離した結晶は、必要に応じて、適当な溶媒で洗浄する。洗浄は結晶化に用いた溶媒で
行うのが好ましい。
【0035】
単離した結晶は、通常10℃乃至50℃の温度で、好ましくは20℃乃至30℃の温度
で、重量がほぼ一定になるまで乾燥させる。結晶の乾燥は、必要に応じて、シリカゲル、
塩化カルシウムのような乾燥剤の存在下、又は、減圧下で行うこともできる。
【0036】
このようにして得られた結晶は、従来知られている水和物の結晶、エタノール和物の結
晶、又は、水、エタノールを共に溶媒和として保有する化合物の結晶に比較して、常湿、
室温での保存安定性が改善された結晶であり、更に、従来知られている他の結晶に比較し
て、水への溶解性に非常に優れた結晶である。
【0037】
式(I−1)で表される本化合物は1/4アセトン和物であり、この結晶は45℃、2
Pa、60時間乾燥し、重量の変化が一定になった状態であるが、ろ過直後の未乾燥の状
態から乾燥終了までの途中のいずれの状態の結晶であっても、同じ粉末X線解析のパター
ンを示す限り本発明に含まれる。
【0038】
本発明の結晶は、グラム陽性菌、グラム陰性菌及び嫌気性菌に対して、セファロスポリ
ナーゼ生産菌も含めて、幅広い抗菌スペクトルと強力な抗菌活性を示す。その抗菌活性は
寒天平板希釈法により測定することができ、例えば、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄
色ブドウ球菌、肺炎球菌、腸球菌などのグラム陽性菌、大腸菌、赤痢菌、肺炎桿菌、変形
菌、セラチア、エンテロバクター、緑膿菌などのグラム陰性菌及びバクテロイデスフラジ
リスのような嫌気性菌を包含する広範囲な病原菌に対して、強力な抗菌活性を示す。更に
、慢性胃炎や消化性潰瘍において高率に検出されるヘリコバクターピロリ菌に対しても強
力な抗菌活性を示す。
【0039】
本発明の結晶は、適当な溶剤に溶解してマウスに投与すると、従来の同系薬剤に比べて
長い血中濃度半減期を示し、高い尿中回収率を示す。
【0040】
また、本発明の結晶は、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、大腸菌または緑膿菌によるマウス
全身感染において、皮下投与により優れた感染治療効果を示す。従って、本発明の結晶は
、医薬(特に、抗菌剤)、及び、その製造原末として有用である。
【0041】
本発明の結晶は、医薬(特に抗菌剤)として使用する場合には、それ自体又は適宜の薬
理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若し
くはシロップ剤等により経口的に、注射剤等により非経口的に、又は軟膏剤等により局所
的に投与することができる。
【0042】
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビットの
ような糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン
、カルボキシメチルデンプンのようなデンプン誘導体;結晶セルロース、低置換度ヒドロ
キシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセル
ロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロース
ナトリウムのようなセルロール誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無
水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体
;リン酸カルシウムのようなリン酸塩誘導体;炭酸カルシウムのような炭酸塩誘導体;硫
酸カルシウムのような硫酸塩誘導体等)、結合剤(例えば、前記の賦形剤;ゼラチン;ポ
リビニルピロリドン;マクロゴール等)、崩壊剤(例えば、前記の賦形剤;クロスカルメ
ロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンの
ような化学修飾された、デンプン、セルロース誘導体等)、滑沢剤(例えば、タルク;ス
テアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸
金属塩;コロイドシリカ;ビーガム;ビーズワックス、ゲイロウのようなワックス類;硼
酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸のようなカルボン酸類;安息香酸ナトリウムのよ
うなカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウムのような硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫
酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和
物のような珪酸類;前記の賦形剤におけるデンプン誘導体等)、安定剤(例えば、メチル
パラベン、プロピルバラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール
、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザル
コニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;無水酢酸;ソ
ルビン酸等)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等)、懸濁
化剤(例えば、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、希釈
剤、製剤用溶剤(例えば、水、エタノール、グリセリン等)、溶解補助剤(非イオン性界
面活性剤、アニオン性界面活性剤等)、局所麻酔剤(塩酸リドカイン、塩酸メビバカイン
等)等の添加物を用いて周知の方法で製造される。
【0043】
経口的投与に適した剤形としては、例えば、錠剤、コーティング剤、カプセル剤、トロ
ーチ剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ドライシロップ剤等の固体製剤、或いはシロップ剤等の
液体製剤を挙げることができる。非経口投与に適した剤形としては、例えば、注射剤、点
滴剤、座剤等を挙げることができる。また、局所投与に適した剤形としては、例えば、軟
膏剤、チンキ剤、クリーム剤、ゲル剤等を挙げることができる。これらの製剤は製剤学の
分野でそれ自体公知の方法で調整することができる。
【0044】
本発明の結晶性1−メチルカルバペネム化合物は、特に注射剤又は点滴剤の形態で非経
口的に投与するのが好適である。その投与量は、年齢、体重、症状によって異なるが、通
常、成人に対して1日当り下限10mg(好適には、50mg)、上限6000mg(好
適には、4000mg)を、1乃至4回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例、試験例及び製剤例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこ
れらに制限されるものではない。
【0046】
実施例1
(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−
[(2S,4S)−2−[(3S)−3−(2−グアニジノアセチルアミノ)ピロリジン
−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルパペン−2
−エム−3−カルボン酸・アセトン和物
【0047】
【化3】

【0048】
(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−
[(2S,4S)−2−[(3S)−3−(2−グアニジノアセチルアミノ)ピロリジン
−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルパペン−2
−エム−3−カルボン酸(50.0g)を水(500ml)に懸濁した後、この懸濁液に
1規定塩酸を加えpH5とし結晶を溶解した。この溶液を1規定苛性ソーダ水溶液にてp
H9に調整した後、活性炭2.5gを添加し、室温で10分間攪拌した。活性炭を濾別し
た後、反応液に液に室温でアセトン(2250ml)を滴下し、0℃に冷却した後1時間
攪拌した。析出した結晶をろ取し、75%アセトン水溶液及びアセトンで洗浄した後、減
圧乾燥することにより標記化合物(41.20g)を得た。収率82.4%。
【0049】
赤外線吸収スペクトル(KBr) νmax(cm-1): 3409, 3345, 3275, 3185, 2967, 2884, 17
61, 1674, 1644, 1586, 1551, 1452, 1415, 1380, 1369, 1340, 1282, 1254.
核磁気共鳴スペクトル(400MHz, DMSO) δ ppm: 1.13-1.24(4.5H, m), 1.30(3H, d, J
=6.4Hz), 1.57-1.72(1H, m), 1.93-2.10(1H, m), 2.15-2.35(1H, m), 2.27,2.29(3H, sX
2), 2.68-2.88(2H, m), 3.09(1H, d, J=10.6Hz), 3.29-3.73(7H, m), 3.75-3.93(2H, m),
4.01(2H, s), 4.12-4.30(2H, m), 4.38-4.50(1H, m).
粉末X線(Cu Ka,λ=1.54オングストローム)d(オングストローム): 13.30,9.86
,8.17,7.00,4.59。
【0050】
実施例2
(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−
[(2S,4S)−2−[(3S)−3−(2−グアニジノアセチルアミノ)ピロリジン
−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルパペン−2
−エム−3−カルボン酸・アセトン和物
(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−
[(2S,4S)−2−[(3S)−3−[2−[3−(4−ニトロベンジルオキシカル
ボニル)グアニジノ]アセチルアミノ]ピロリジン−1−イルカルボニル]−1−メチル
ピロリジン−4−イルチオ]−1−カルパペン−2−エム−3−カルボン酸4−ニトロベ
ンジルエステル]−1−カルパペン−2−エム−3−カルボン酸 4−ニトロベンジルエ
ステル(46.68g)のテトラヒドロフラン(372ml)溶液に、水(258ml)
を加えた後、酢酸エチル(140ml)、7.5%パラジウム炭素(12.92g)及び
活性炭(9.34g)を添加した。この反応液を水素気流下(3kPa)、室温で4時間
撹拌した後、窒素で置換し、氷冷下40分間攪拌した。反応液をろ過した後、66%テト
ラヒドロフラン水溶液(282ml)で洗浄した。得られたろ液を酢酸エチル(560m
l)で洗浄した後、水層を308mlまで減圧濃縮した。得られた水層に活性炭(3.7
3g)を添加後、5℃で40分間撹拌した。活性炭をろ別し、水(93ml)にて洗浄し
た後、ろ液に水(30ml)を注加した。得られた水溶液を1規定苛性ソーダ水溶液でp
H8.9に調整した後、室温にてアセトン(616ml)を滴下した。この溶液に種晶(
70mg)を添加し、室温にて1時間攪拌した後、更にアセトン(616ml)を滴下し
、同温で1時間撹拌した後、氷冷下にて更に1時間攪拌した。析出した結晶をろ取し、7
5%アセトン水溶液にて洗浄した後、減圧乾燥することにより標記化合物(21.03g
)を得た。収率78.9%。
【0051】
試験例1
保存安定性試験−1
実施例2により得られた本発明結晶及び特開2001−72681号公報に記載の結晶
((1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−
[(2S,4S)−2−[(3S)−3−(2−グアニジノアセチルアミノ)ピロリジン
−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルパペン−2
−エム−3−カルボン酸・1エタノール和物・3水和物。結晶1とする。)を、25℃の
恒温下褐色ガラス瓶に密封し、試験開始時、1ヶ月後及び2ヶ月後における純度を高速液
体クロマトグラフィー(カラム:Develosil RPAQUEOUS 4.6x150mm、カラム温度:60℃、
展開液流速:1.0ml/min、展開液:0.02M りん酸二水素カリウム水溶液/アセトニトリル=9
5/5〜50/50)を用いて測定した。得られた純度はクロマトグラフィーのピーク面積比で表
し、その結果を表1に示す。
【0052】
表1
室温における保存安定性試験
――――――――――――――――――――――――――――――――――
純度(%)
――――――――――――――――――――――――――
試験結晶 試験開始時 1ヶ月後 2ヶ月後
――――――――――――――――――――――――――――――――――
本発明結晶 98.35 98.43 98.40
結晶1 98.45 98.35 98.06
――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0053】
試験例2
保存安定性試験−2
実施例2により得られた本発明結晶及び結晶1を、40℃の恒温下褐色ガラス瓶に密封
し、試験開始時及び1ヶ月後における純度を高速液体クロマトグラフィー(カラム:Deve
losil RPAQUEOUS 4.6x150mm、カラム温度:60℃、展開液流速:1.0ml/min、展開液:0.02
M りん酸二水素カリウム水溶液/アセトニトリル=95/5〜50/50)を用いて測定した。得ら
れた純度はクロマトグラフィーのピーク面積比で表し、その結果を表2に示す。
【0054】
表2
40℃における保存安定性試験
――――――――――――――――――――――――――――
試験結晶 試験開始時の純度(%) 1ヶ月後の純度(%)
――――――――――――――――――――――――――――
本発明結晶 98.35 98.35
結晶1 98.45 98.26
――――――――――――――――――――――――――――。
【0055】
試験例3
水に対する溶解性試験
実施例2により得られた本発明結晶及び特開2001−72681号公報に記載の結晶
((1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−
[(2S,4S)−2−[(3S)−3−(2−グアニジノアセチルアミノ)ピロリジン
−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルパペン−2
−エム−3−カルボン酸。結晶2とする。)を、150μmのメッシュのフィルターを通
して粒径をそろえ、25℃で300mgの結晶が10mlの水に完全に溶解するのに要す
る時間を測定した。その結果を表3に示す。
【0056】
表3
水に対する溶解性試験
――――――――――――――――――――
試験結晶 溶解時間(分)
――――――――――――――――――――
本発明結晶 2.5
結晶2 8.0
――――――――――――――――――――
本発明の結晶は既知の結晶である結晶2に比べ、水に対する溶解性が極めて優れる。
【0057】
製剤例1
注射剤
実施例1の結晶250mgを無菌的にバイヤルに充填し封栓する。本製剤には必要に応
じて、塩酸リドカイン等の局所麻酔剤など公知の医薬添加物を配合することができる。本
製剤は、投与時に注射用蒸留水等の溶媒に溶解して使用する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−[(2S,4S)−2−[(3S)−3−(2−グアニジノアセチルアミノ)ピロリジン−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルパペン−2−エム−3−カルボン酸・アセトン和物(I−1)の結晶について、銅のKα線(波長λ=1.54オングストロ−ム)の照射で得られる粉末X線回析パタ−ンである。尚、粉末X線回析パタ−ンの縦軸は回析強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回析角度2θの値で示す。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の結晶は、保存安定性及び水への溶解性が改善されたものであり、医薬、特に抗
菌剤として実用的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅のKα線の照射で得られる粉末X線回析において、面間隔d=13.30、9.86
、8.17、7.00及び4.59に主にピークを示すことを特徴とする式


で表される1−メチルカルバペネム化合物からなる結晶を有効成分として含有する医薬。
【請求項2】
銅のKα線の照射で得られる粉末X線回析において、面間隔d=13.30、9.86
、8.17、7.00及び4.59に主にピークを示すことを特徴とする式
【化1】


で表される1−メチルカルバペネム化合物・アセトン和物の結晶を有効成分として含有す
る医薬。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された結晶を有効成分として含有する抗菌剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−143887(P2008−143887A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294158(P2007−294158)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】