説明

1−[2−(ベンゾイミダゾル−1−イル)キノリン−8−イル]−ピペリジン−4−イルアミン誘導体の製造方法

式(I)の化合物、またはその医薬的に許容できる塩、プロドラッグ、水和物もしくは溶媒和物(式中、R、R、RおよびRは明細書中に定めたものである)の製造方法に関する。式(I)の化合物は、哺乳動物における異常な細胞増殖、たとえば癌の処置に有用である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、哺乳動物における異常な細胞増殖、たとえば癌の処置に有用なベンゾイミダゾール誘導体を製造するための新規方法に関する。本発明はまた、これらのベンゾイミダゾール誘導体に変換できる中間体を製造するための新規方法に関する。ベンゾイミダゾール誘導体、それらのベンゾイミダゾール誘導体の製造に有用な中間体、ならびにそれらのベンゾイミダゾール誘導体および中間体の製造方法は、国際特許出願公開WO01/40217(2001年6月7日公開)および米国仮特許出願番号60/406,524および60/417,047(それぞれ2002年8月28日および2002年10月28日出願)に開示されている。
【0002】
発明の概要
本発明は、式Iの化合物:
【0003】
【化1】

【0004】
またはその医薬的に許容できる塩、プロドラッグ、水和物もしくは溶媒和物の製造方法であって
[式中:
、RおよびRはそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1213よりなる群から選択され;
は、−(CRH、または−(CR(4−10員)−芳香族もしくは非芳香族複素環(それぞれO、SおよびNから選択される1個以上の異種原子を含む)であり、ここでmは1〜5の整数であり、nは0〜5の整数であり、4−10員複素環は、芳香族の場合は1〜3個のR置換基により置換されていてもよく、4−10員複素環は、非芳香族の場合は任意の位置において1〜3個のR10置換基により置換されていてもよく、異種原子に隣接または直接結合しない任意の位置において1〜3個のR11置換基により置換されていてもよく;
、R、RおよびRはそれぞれ、独立してHおよび(C−C)アルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチルよりなる群から選択され;
はそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチル、(C−C)シクロアルキル、ハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1415から選択され;
10はそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキルおよび(C−C)シクロアルキルから選択され;
11はそれぞれ、独立してハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1617から選択され;
12、R13、R14、R15、R16およびR17は、独立してH、(C−C)アルキルおよび(C−C)シクロアルキルよりなる群から選択され;
前記の(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、−O(C−C)アルキルおよび−O(C−C)シクロアルキル置換基はそれぞれ独立して、いずれの場合も、独立してハロ、シアノ、アミノ、(C−C)アルキルアミノ、[(C−C)アルキル]−アミノ、ペルハロ(C−C)アルキル、ペルハロ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、および(C−C)アルコキシよりなる群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい];
式IIの化合物:
【0005】
【化2】

【0006】
(式中:BOCはt−ブトキシカルボニルであり、R、R、RおよびRは式Iの化合物について前記に定めたものである)と金属アルコキシド、好ましくはアルカリ土類金属アルコキシドを水の存在下で反応させて式Iの化合物を得ることを含む方法に関する。好ましくは、水は約1当量(すなわち、式IIの化合物に対して1当量)の量で存在する。アルカリ土類金属アルコキシドは、好ましくはアルカリ土類金属(C−C)アルコキシドである。アルカリ土類金属は、好ましくはナトリウムまたはカリウムであり、(C−C)アルコキシドは好ましくはt−ブトキシドである。
【0007】
反応は、好ましくは溶媒、たとえばエーテル類の存在下で実施される。エーテル類は、好ましくは環状エーテルであるが、非環状エーテルも使用できる。適切なエーテル類の例には、ジオキサン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、テトラヒドロフランおよび2−メチルテトラヒドロフラン、またはその少なくとも2種類の混合物が含まれる。テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、またはその混合物が特に好ましい。好ましくは、この反応は約50〜約110℃の温度、より好ましい態様においては約60〜約80℃の温度で実施される。
【0008】
本発明の1態様は、4−10員複素環が4−8員複素環、他の態様においては4−6員複素環、他の態様においては6員複素環、他の態様においては5員複素環、他の態様においては4員複素環である方法に関する。本発明の他の態様は、mが1〜5の整数、他の態様においては1、他の態様においては2である方法に関する。本発明の他の態様は、nが0〜5の整数、他の態様においては1、他の態様においては2である方法に関する。本発明の他の態様は、4−10員複素環が芳香族である場合に1個のR置換基により置換されていてもよい方法に関する。
【0009】
本発明の1態様は、4−10員複素環式基が芳香族複素環式基である方法に関する。適切なそのような芳香族複素環式基の例には、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チオフェニル、フラニル、インドリルおよびベンゾフラニルが含まれる。
【0010】
本発明の他の態様は、4−10員複素環式基が非芳香族複素環式基である方法に関する。適切な4−10員非芳香族環式基の例には、テトラヒドロチオピラニル、チオモルホリノ、ジオキサニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、ホモピペリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリル、および4H−ピラニルが含まれる。
【0011】
本発明の他の態様は、それぞれO、SおよびNから選択される1個以上の異種原子を含む4−10員芳香族複素環式基がそれぞれO、SおよびNから選択される1〜4個の異種原子を含み、ただし4−10員芳香族複素環は2個の隣接するOまたはS原子を含まない方法に関する。好ましい態様において4−10員複素環式基は1〜2個のO原子を含み、他の態様においては1個のO原子を含む。他の態様において4−10員複素環式基は1〜2個のN原子を含み、好ましい態様においては1個のN原子を含む。
【0012】
本発明の他の態様は、式Iの化合物が下記のものから選択される方法に関する:
1−{2−[5−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
(±)−1−{2−[5−(テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
(+)−1−{2−[5−(テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
(−)−1−{2−[5−(テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
1−{2−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
ならびに前記化合物の医薬的に許容できる塩類、プロドラッグ、水和物および溶媒和物。
【0013】
特に好ましい態様において、本発明は式Iの化合物が1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミンのベンゼンスルホン酸塩である方法に関する。
【0014】
本発明はまた、式VIの化合物:
【0015】
【化3】

【0016】
(式中:Bnは、ベンジルであり、R、R、RおよびRは式Iについて前記に定めたものである)の製造方法であって、式VIIの化合物:
【0017】
【化4】

【0018】
(式中:RおよびRは式Iについて前記に定めたものである)と式VIIIの化合物:
【0019】
【化5】

【0020】
(式中:RおよびRは式Iについて前記に定めたものである)を、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、塩基およびパラジウム触媒、たとえばパラジウム(0)またはパラジウム(II)触媒の存在下で反応させることを含む方法に関する。パラジウム触媒は、好ましくはトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)または酢酸パラジウムであり、後者が最も好ましい。適切な塩基の例には、リン酸カリウム、ナトリウムt−ブトキシドおよび炭酸セシウムが含まれる。本発明の特に好ましい1態様は、パラジウムが酢酸パラジウムであり、かつ塩基が炭酸セシウムである方法に関する。この反応は、好ましくは芳香族溶媒、たとえばトルエン、エーテル類、たとえばジオキサン、ジメトキシエタンもしくはテトラヒドロフラン、または極性窒素含有溶媒、たとえばジメチルホルムアミド(DMF)の存在下で実施される。溶媒混合物も使用できる。この反応は、約90〜約120℃の温度で実施できる。
【0021】
本発明の特に好ましい態様は、式VIIIの化合物中のRおよびRが両方とも水素であり、式VIIの化合物が式VIIAの化合物:
【0022】
【化6】

【0023】
である方法に関する。
式VIの化合物は式Iの化合物を製造するための中間体として有用である。
本明細書中で用いる用語”ハロ”は、別途指示しない限り、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを含む。好ましいハロ基はフルオロおよびクロロである。
【0024】
本明細書中で用いる用語”アルキル”は、別途指示しない限り、直鎖または分枝鎖部分をもつ飽和一価炭化水素基を含む。このアルキル基が環式部分を含むためには、それが少なくとも3個の炭素原子を含有しなければならないことは理解される。
【0025】
本明細書中で用いる用語”シクロアルキル”は、別途指示しない限り、環式(単環式または多環式)部分をもつ飽和一価炭化水素基を含む。
本明細書中で用いる用語”アルケニル”は、別途指示しない限り、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合をもつ、前記に定めたアルキル基を含む。
【0026】
本明細書中で用いる用語”アルキニル”は、別途指示しない限り、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合をもつ、前記に定めたアルキル基を含む。
本明細書中で用いる用語”アルコキシ”は、別途指示しない限り、−O−アルキル基を含み、ここでアルキルは前記に定めたものである。
【0027】
本明細書中で用いる用語”溶媒和物”は、非共有結合性の分子間力により結合した化学量論的量または非−化学量論的量の溶媒をさらに含有する本発明化合物またはその塩を含む。好ましい溶媒和物は、揮発性、無毒性であり、および/またはヒトへの局所投与のために許容できるものである。
【0028】
本明細書中で用いる用語”水和物”は、非共有結合性の分子間力により結合した化学量論的量または非−化学量論的量の水をさらに含有する本発明化合物またはその塩を含む。
本明細書中で用いる用語”4−10員複素環”は、別途指示しない限り、それぞれO、SおよびNから選択される1個以上の異種原子を含む芳香族および非芳香族の複素環式基を含み、複素環式基はそれぞれその環系中に4−10個の原子をもつ。非芳香族複素環式基には、それらの環系中に4個の原子のみをもつ基が含まれるが、芳香族複素環式基はそれらの環系中に少なくとも5個の原子をもたなければならない。複素環式基には、ベンゾ縮合環系および1個以上のオキソ部分で置換された環系が含まれる。4員複素環式基の例は、アゼチジニル(アゼチジンから誘導)である。5員複素環式基の例はチアゾリルであり、10員複素環式基の例はキノリニルである。非芳香族複素環式基の例は下記のものである:ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H−インドリルおよびキノリジニル。芳香族複素環式基の例は下記のものである:ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニル。スピロ部分もこの定義の範囲に含まれ、これには1−オキサ−6−アザ−スピロ[2.5]オクツ−6−イルが含まれる。前記に挙げた基から誘導される上記の基は、C−結合、または可能な場合はN−結合していてもよい。たとえば、ピロールから誘導される基は、ピロル−1−イル(N−結合)またはピロル−3−イル(C−結合)であってよい。さらに、イミダゾールから誘導される基は、イミダゾル−1−イル(N−結合)またはイミダゾル−3−イル(C−結合)であってよい。2個の環炭素原子がオキソ(=O)部分で置換された複素環式基の例は、1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。
【0029】
本明細書中で用いる句”医薬的に許容できる塩(類)”は、別途指示しない限り、式Iの化合物中に存在する場合がある酸性基または塩基性基の塩類を含む。塩基性である式Iの化合物は、種々の無機酸または有機酸により、広範な塩類を形成できる。そのような塩基性である式Iの化合物の医薬的に許容できる酸付加塩を調製するために使用できる酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち薬理学的に許容できるアニオンを含有する下記の塩類を形成する酸である:たとえば酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭素水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、ブロミド、エデト酸カルシウム(calcium edetate)、カムシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、クロリド、クラブラン酸塩(clavulanate)、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジスリエート(edislyate)、エストラート(estolate)、エシル酸塩(esylate)、エチルコハク酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシナート、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨージド、イソチオン酸塩(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩(napsylate)、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(teoclate)、トシラート、トリエチオドード(triethiodode)、および吉草酸塩。本発明の単一化合物が1以上の酸性または塩基性部分を含む場合があるので、本発明化合物は単一化合物中にモノ、ジまたはトリ塩を含む可能性がある。
【0030】
一般に式Iの化合物の”プロドラッグ”は、式Iの化合物の機能性誘導体であり、必要な式Iの化合物にインビボで容易に変換できる。適切なプロドラッグ誘導体の選択および製造のための一般法は、たとえば”Design of Prodrugs”,H.Bundgaard編, elsevier, 1985に記載されている。
【0031】
プロドラッグは、生物活性物質(”親薬物”または”親分子”)の薬理学的に不活性な誘導体であって、有効薬物を放出するためには体内で変換される必要があり、親薬物分子より改良された送達特性をもつものである。インビボでの変換は、たとえばある代謝プロセス、たとえばカルボン酸エステル、リン酸エステルもしくは硫酸エステルの化学的もしくは酵素による加水分解、または感受性官能基の還元もしくは酸化の結果であってもよい。
【0032】
本発明方法において述べた遊離のアミノ、アミド、ヒドロキシまたはカルボン酸基をもつ化合物を、プロドラッグに変換できる。プロドラッグには、アミノ酸残基、または2以上の(たとえば2、3または4)アミノ酸残基のポリペプチドが、アミドまたはエステル結合により本発明化合物の遊離のアミノ、ヒドロキシまたはカルボン酸基に共有結合した化合物が含まれる。アミノ酸残基には、一般に3文字記号で表示される20種類の天然アミノ酸が含まれるが、これらに限定されず、4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デモシン、イソデモシン、3−メチルヒスチジン、ノルバリン、ベータ−アラニン、ガンマ−アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチンおよびメチオニンスルホンも含まれる。他のタイプのプロドラッグも包含される。たとえば遊離カルボキシル基は、アミドまたはアルキルエステルとして誘導体化することができる。遊離ヒドロキシ基は、ヘミスクシネート、リン酸エステル、ジメチルアミノアセテートおよびホスホリルオキシメチルオキシカルボニルを含めた基を用いて誘導体化できるが、これらに限定されない;Advanced Drug Delivery Reviews, 1996, 19,115に概説。ヒドロキシ基およびアミノ基のカルバメートプロドラッグ、ならびにヒドロキシ基のカーボネートプロドラッグ、スルホン酸エステルおよび硫酸エステルも含まれる。ヒドロキシ基の(アシルオキシ)メチルエーテルおよび(アシルオキシ)エチルエーテルとしての誘導体化も包含され、ここでアシル基はアルキルエステルであって、所望によりエーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含めた基(これらに限定されない)で置換されていてもよく、あるいはアシル基は前記のアミノ酸エステルである。このタイプのプロドラッグは、たとえばJ. Med. Chem. 1996, 39, 10に記載されている。遊離アミンは、アミド、スルホンアミドまたはホスホンアミドとして誘導体化することもできる。これらのプロドラッグ部分すべてを、エーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含めた基(これらに限定されない)が取り込むことができる。
【0033】
本発明方法において述べる化合物は1以上の不斉中心をもつ場合があり、したがって鏡像異性体としてもジアステレオマーとしても存在する可能性がある。そのような異性体およびその混合物がすべて本発明化合物の範囲に包含されることを理解すべきである。式Iのある化合物は複数の不斉中心をもつ場合があり、したがって種々の鏡像異性体形で存在する可能性がある。式Iの化合物のすべての光学異性体および立体異性体ならびにその混合物が式Iの化合物の範囲内にあるとみなされる。式Iの化合物は、ラセミ体、1種類以上の鏡像異性体形、1種類以上のジアステレオマー形、またはその混合物を含むことができる。式Iの化合物は、互変異性体として存在することもできる。式Iの化合物という表現は、そのような互変異性体およびその混合物すべての使用の表現を含む。
【0034】
用語”Me”はメチルを意味し、”Et”はエチルを意味し、”Ac”はアセチルを意味する。
本明細書中で用いる用語”DMF”は、別途指示しない限り、ジメチルホルムアミドを意味する。
【0035】
本明細書中で用いる用語”NMP”は、別途指示しない限り、N−メチルピロリジノン(1−メチル−2−ピロリジノンとしても知られる)を意味する。
本明細書中で用いる頭字語”DIPHOS”は、別途指示しない限り、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを表わす。
【0036】
本明細書中で用いる用語”BINAP”(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルの略語)は、別途指示しない限り、次式により表わされる:
【0037】
【化7】

【0038】
本発明方法において述べる化合物には、同位体標識化合物も含まれる。これらは、1個以上の原子が自然界で通常みられる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数をもつ原子により交換されているという事実以外は、本明細書中で述べる化合物と同一である。本発明化合物に取り込ませることができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、たとえばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clが含まれる。本明細書中で述べる化合物、そのプロドラッグ、ならびにそれらの化合物およびプロドラッグの医薬的に許容できる塩類であって、これらの同位体および/または他の原子の他の同位体を含有するものは、本発明化合物の範囲内にある。本明細書中で述べるある種の同位体標識化合物、たとえば放射性同位体、たとえばHおよび14Cを取り込ませたものは、薬物および/または基質の組織分布アッセイに有用である。トリチウム化、すなわちH、および炭素−14、すなわち14C同位体は、それらの製造しやすさおよび検出適性のため特に好ましい。さらに、相対的に重い同位体、たとえばジュウテリウム、すなわちHは、代謝安定性の増大、たとえばインビボ半減期の延長により、または薬物投与必要量の減少により生じる療法上の利点をもたらす可能性があり、したがってある状況では好ましいであろう。同位体標識した本発明の式Iの化合物およびそのプロドラッグは、一般に、同位体標識していない試薬を容易に入手できる同位体標識試薬で置き換えて後記の反応経路ならびに/あるいは実施例および製造例に開示する方法を実施することにより製造できる。
【0039】
本明細書に引用した特許、特許出願、国際特許出願公開および科学刊行物の全体を本明細書に援用する。
発明の詳細な記述
式Iの化合物を製造するために参照できる一般合成法は、USP5,990,146(1999年11月23日発行)(Warner-Lambert Co.)およびPCT出願公開WO99/16755(1999年4月8日公開)(Merck & Co.)およびWO01/40217(2001年7月7日公開)(Pfizer, Inc.)に示されている。
【0040】
式Iの化合物は、以下の反応経路および考察に従って製造することもできる。別途指示しない限り、以下の反応経路および考察中におけるR、R、RおよびRは前記に定めたものである。
【0041】
【化8】

【0042】
上記の反応経路1を参照して、式Iの化合物は以下により製造できる。2−クロロ−8−ベンジルオキシキノリン(VIII)と適切な2−アミノ−ニトロベンゼン(VII)のパラジウムアミノ化反応から出発して、キノリン(VI)を得る。接触水素化によるニトロ基の還元およびベンジル基の除去、続いて酢酸ホルムアミジンの付加によりベンゾイミダゾール(V)が得られ、次いでこれを対応するトリフラート(IV)に変換する。アミン(III)による2回目のパラジウム触媒アミノ化によりピペリジニルキノリン(II)が得られ、次いでt−ブトキシカルボニル基の除去により(I)が得られる。
【0043】
理論により拘束されたくはないが、式IIの化合物から塩基性(アルカリ性)条件下で式Iの化合物を製造するための本発明方法は、(II)の脱プロトン(NHプロトンの)に続くt−ブトキシ基の除去により生成するイソシアネート中間体(IX)を経て進行すると考えられる。イソシアネート(IX)の加水分解によりカルバミン酸(X)が生成し、これが脱カルボキシルを受けて(I)が生成すると考えられる。この機序を下記の反応経路2に示す。反応体としての水の存在をこの機序により説明できる。
【0044】
【化9】

【0045】
酢酸パラジウムおよびDIPHOS(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)の存在下で式VIIIの化合物と式VII化合物が反応して式VIの化合物を生成する反応は、酢酸パラジウム、BINAPおよびPhB(OH)を用いる同じ反応と比較して、特に予想外に有利である。DIPHOSの存在下での反応は、生成物収率を増大させ(たとえば15〜25%高い)、かつ高い規模(たとえば100g以上)の合成では特に完了までに要する時間を短縮する。この方法は、薬物の製造に使用する有効成分の製造にとって著しい商業的利点をもつ。
【0046】
反応経路1で用いる出発物質は、商業的に容易に入手でき、あるいは当業者に周知の方法を用いて容易に製造される。
前記の反応経路で考察または説明した各反応において、別途指示しない限り圧力は決定的ではない。約0.5〜約5気圧の圧力が一般に許容され、周囲圧力、すなわち約1気圧が便宜上好ましい。
【0047】
以下の実施例および製造例により、本発明化合物、それらの化合物の製造方法、および本発明方法を、さらに説明および例示する。以下の実施例および製造例の反応により本発明の反応が全く限定されないことを理解すべきである。以下の実施例において単一のキラル中心をもつ分子は、別途明記しない限りラセミ混合物として存在する。2以上のキラル中心をもつ分子は、別途明記しない限りジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一の鏡像異性体/ジアステレオマーは、当業者に既知の方法により得ることができる。
【0048】
以下の製造例および実施例においてHPLCクロマトグラフィーと述べた場合、別途指示しない限り、使用した一般条件は下記のとおりである。用いたカラムは、距離150mmおよび内径4.6mmのZORBAX RXC18カラム(Hewlet Packard製)である。試料をHewlet Packard-1100システムで分析する。10分間かけて100%酢酸アンモニウム/酢酸緩衝液(0.2M)から100%アセトニトリルまで流す勾配溶剤法を採用する。次いでこのシステムにより、100%アセトニトリルで1.5分間、次いで100%緩衝液で3分間の洗浄サイクルを実施する。この期間の流速は一定の3mL/分である。
【0049】
本発明を以下の実施例により説明する。ただし、本発明が以下の実施例の具体的な詳細事項により限定されないことは理解されるであろう。
実施例1
4−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−2−ニトロ−フェニルアミンの製造
【0050】
【化10】

【0051】
化合物3−メチル−3−オキセタンメタノール(4.68g,45.8mmol,1.05当量)、アセトニトリル(25mL,5体積)およびトリエチルアミン(6.7mL,48mmol,1.1当量)を100mLの丸底フラスコに装入し、次いで5〜15℃に冷却した。メタンスルホニルクロリド(3.4mL,43.6mmol,1.0当量)を、温度が45℃より低く維持される速度で装入した。混合物を15〜20℃で2〜6時間撹拌し、次いで0〜5℃に冷却した。固体をセライト(Celite)のパッドにより濾過し、フラスコおよびフィルターケークを10mLのアセトニトリルで1回洗浄した。その後、4−アミノ−3−ニトロフェノール(6.73g,43.6mmol,1当量)および炭酸セシウム(18.5g,56.7mmol,1.3当量)を濾液に装入し、混合物を45〜60℃に24時間、加熱した。反応が終了した時点で酢酸エチル(30mL,6体積)をフラスコに装入した。混合物を35〜40℃で15〜60分間撹拌し、次いで35〜40℃でセライトのパッドにより濾過した。フラスコおよびフィルターケークを6体積の酢酸エチルで2回すすいだ。次いで濾液を25体積の0.5N水酸化ナトリウム溶液、続いて25体積の飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。得られた溶液を低体積に濃縮し、イソプロパノール(25mL,5体積)を添加した。20〜25℃で少なくとも10時間、固体を粒子化させ、次いで採集し、40℃でわずかに窒素を吹き込みながら減圧乾燥して、7.7gの赤橙色の綿毛状固体を得た(収率74%)。
【0052】
【化11】

【0053】
実施例2
(8−ベンジルオキシ−キノリン−2−イル)−[4−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−2−ニトロ−フェニル]−アミンの製造
【0054】
【化12】

【0055】
化合物8−ベンジルオキシ−キノリン−2−オール(5g,18.5mmol,1.0当量)、4−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−2−ニトロ−フェニルアミン(5.3g,22.2mmol,1.2当量)、炭酸セシウム(8.46g,26mmol,1.4当量)、DIPHOS(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン;443mg,111μmol,0.06当量)およびトルエン(75mL,15体積)を100mLの丸底フラスコに装入した。反応物を脱酸素した。酢酸パラジウム(83mg,37μmol,0.02当量)を添加し、反応物を再び脱酸素した。反応物を100℃に24〜30時間、加熱した。反応が終了した時点で反応物を55℃に冷却し、ジクロロエタン(”DCE”;75mL,15体積)を装入した。このスラリーをセライトのパッドにより濾過し、次いでフラスコおよびフィルターをさらにDCE(50mL,10体積)で1回すすいだ。有機層を低体積に濃縮し、酢酸エチル(50mL,10体積)を添加した。反応物を加熱還流し、20〜25℃に放冷した。10〜20時間、固体を粒子化させ、濾過し、40℃でわずかに窒素を吹き込みながら減圧乾燥して、6.72gの(8−ベンジルオキシ−キノリン−2−イル)−[4−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−2−ニトロ−フェニル]−アミンを橙色固体として得た(収率77%)。この物質はNMRにより、約95%の純度であり、約5%のDIPHOSビスオキシドを含むと判定された。
【0056】
【化13】

【0057】
実施例3
2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−オールの製造
【0058】
【化14】

【0059】
化合物(8−ベンジルオキシ−キノリン−2−イル)−[4−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−2−ニトロ−フェニル]−アミン(5g,10.6mmol,1.0当量)、エタノール(50mL,10体積)、トリエチルアミン(7.8mL,56.2mmol,5.3当量)、およびカーボン上の水酸化パラジウム(500mg,0.1重量当量)を、100mLの丸底フラスコに装入した。この溶液を脱酸素し、次いで50℃に加熱した。反応物が50℃に達した時点で、ギ酸(2.2mL,56.2mmol,5.3当量)を発熱または脱気の制御のため徐々に装入した。次いで反応物を55℃に15〜25時間、加熱した。ニトロ基の還元およびベンジル基の除去がAPCI MSにより認められた後、反応物を40℃に冷却し、セライトのパッドにより濾過した。フラスコおよびフィルターケークをエタノール(2.5体積)で1回洗浄した。次いで、酢酸ホルムアミジン(2.3g,22.3mmol,2.1当量)を入れた別の100mLの丸底フラスコに濾液を装入し、反応物を約8時間、加熱還流した。反応が終了した時点で反応物を20〜25℃に冷却し、10〜20時間、粒子化させた。固体を濾過により単離し、40℃でわずかに窒素を吹き込みながら減圧乾燥して、3.14gの2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−オールを黄色固体として得た(収率82%)。
【0060】
【化15】

【0061】
実施例4
トリフルオロ−メタンスルホン酸2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イルエステルの製造
【0062】
【化16】

【0063】
N−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド(PhN(Tf),2.72g,7.6mmol,1.1当量)、2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−オール(2.5g,6.9mmol,1.0当量)、DMF(7.5mL,3体積)、次いでトリエチルアミン(1.9mL,13.8mmol,2.0当量)を、50mLの丸底フラスコに装入した。このスラリーを20〜30℃で20〜30時間、撹拌した。撹拌期間の後、反応物を濾過し、DMF(2.5mL,1体積)、続いてイソプロピルエーテル(5mL,2体積)で洗浄し、40℃でわずかに窒素を吹き込みながら減圧乾燥した後、2.9gのトリフルオロ−メタンスルホン酸2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イルエステルを灰白色固体として得た(収率85%)。
【0064】
【化17】

【0065】
実施例5
(1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イル)−カルバミン酸t−ブチルエステルの製造
【0066】
【化18】

【0067】
BINAP(379mg,608μmol,0.06当量)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(186mg,203μmol,0.02当量)およびトルエン(35mL,7体積)を、100mLの丸底フラスコに添加した。この溶液を脱酸素し、20〜25℃で約30分間、撹拌した。次いでトリフルオロ−メタンスルホン酸2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イルエステル(5g,10.1mmol,1当量)、ピペリジン−4−イル−カルバミン酸t−ブチルエステル(4.06g,20.3mmol,2.0当量)、および炭酸セシウム(4.62g,14.2mmol,1.3当量)を装入した。反応物を再び脱酸素し、次いで85℃に24〜32時間、加熱した。反応が終了した時点で、反応物を30℃に冷却し、ジクロロエタン(5体積)およびセライト(0.5重量当量)を添加した。このスラリーをセライトのパッドにより濾過し、ジクロロエタン(5体積)ですすいだ。次いで母液を低体積に濃縮し、酢酸エチル(75mL,15体積)を装入した。希薄なスラリーを20〜25℃で8〜15時間、粒子化させ、次いで濾過した。母液を採集し、2.5%NaHPO溶液(3回,9体積)で洗浄した。有機層を再び低体積に濃縮し、アセトニトリル(25mL,5体積)を装入した。このスラリーを10〜20時間、粒子化させ、次いで固体を濾過し、40℃でわずかに窒素を吹き込みながら減圧乾燥して、4.33gの(1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イル)−カルバミン酸t−ブチルエステルを黄色固体として得た(収率79%)。
【0068】
【化19】

【0069】
実施例6
1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミンの製造
【0070】
【化20】

【0071】
化合物(1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イル)−カルバミン酸t−ブチルエステル(2g,3.68mmol,1当量)、ナトリウムt−ブトキシド(1.77g,18.4mmol,5当量)、2−メチルテトラヒドロフラン(30mL,15体積)、および水(66mL,1当量)を、100mLの丸底フラスコに添加した。この混合物を加熱還流し、24〜30時間、還流状態に保持した。反応が終了した時点で、混合物を20〜30℃に冷却した。20%クエン酸溶液(10体積)に注入して反応を停止し、20〜30℃で30〜60分間、撹拌した。この期間にクエン酸塩が溶液から析出した。50%水酸化ナトリウム溶液(約1重量当量)を装入して反応混合物を塩基性(pH10〜12)にした。30〜40℃で層を分離させた。水層を酢酸エチル(10体積)で洗浄し、次いで有機層を合わせて低体積に濃縮した。酢酸エチル(14mL,7体積)を装入し、スラリーを10〜20時間、粒子化させた。固体を濾過し、1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン(1.4g,収率86%)を単離した。
【0072】
【化21】

【0073】
実施例7
1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミンベンゼンスルホナートの製造
【0074】
【化22】

【0075】
化合物1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン(2.44g,5.5mmol,1当量)およびエタノール(24mL,10体積)を、100mLの丸底フラスコに添加した。この溶液を加熱還流して出発物質を溶解し、次いで室温に冷却した。エタノール(5mL,2体積)中のベンゼンスルホン酸(918mg,5.2mmol,0.95当量)溶液を装入し、反応物を約30分間、加熱還流した。反応物を20〜30℃に冷却し、16〜32時間、粒子化させた。次いでこの物質を濾過し、わずかに窒素を吹き込みながら減圧乾燥して、1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミンベンゼンスルホナート(2.8g,収率85%)を灰白色固体として得た。
【0076】
【化23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはその医薬的に許容できる塩、プロドラッグ、水和物もしくは溶媒和物の製造方法であって
[式中:
、RおよびRはそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1213よりなる群から選択され;
は、−(CRH、または−(CR(4−10員)−芳香族もしくは非芳香族複素環(それぞれO、SおよびNから選択される1個以上の異種原子を含む)であり、ここでmは1〜5の整数であり、nは0〜5の整数であり、4−10員複素環は、芳香族の場合は1〜3個のR置換基により置換されていてもよく、4−10員複素環は、非芳香族の場合は任意の位置において1〜3個のR10置換基により置換されていてもよく、異種原子に隣接または直接結合しない任意の位置において1〜3個のR11置換基により置換されていてもよく;
、R、RおよびRはそれぞれ、独立してHおよび(C−C)アルキルよりなる群から選択され;
はそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1415から選択され;
10はそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキルおよび(C−C)シクロアルキルから選択され;
11はそれぞれ、独立してハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1617から選択され;
12、R13、R14、R15、R16およびR17は、独立してH、(C−C)アルキルおよび(C−C)シクロアルキルよりなる群から選択され;
前記の(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、−O(C−C)アルキルおよび−O(C−C)シクロアルキル置換基はそれぞれ独立して、いずれの場合も、独立してハロ、シアノ、アミノ、(C−C)アルキルアミノ、[(C−C)アルキル]−アミノ、ペルハロ(C−C)アルキル、ペルハロ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、および(C−C)アルコキシよりなる群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい];
式IIの化合物:
【化2】

(式中:BOCはt−ブトキシカルボニルであり、R、R、RおよびRは式Iの化合物について前記に定めたものである)と金属アルコキシドを水の存在下で反応させて式Iの化合物を得ることを含む方法。
【請求項2】
、RおよびRがそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキル、および(C−C)シクロアルキル、ハロ、およびシアノよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が−(CRHである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が−(CR(4−10員)−芳香族複素環であり、ここでnは0〜5の整数であり、4−10員芳香族複素環は1〜3個のR置換基により置換されていてもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
4−10員芳香族複素環がそれぞれO、SおよびNから選択される1〜4個の異種原子を含み、ただし4−10員芳香族複素環は2個の隣接するOまたはS原子を含まない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
が−(CR(4−10員)−非芳香族複素環であり、ここでnは0〜1の整数であり、4−10員非芳香族複素環式基は1〜3個のR10置換基により置換されていてもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
4−10員非芳香族複素環が、テトラヒドロチオピラニル、チオモルホリノ、ジオキサニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、ホモピペリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリル、および4H−ピラニルよりなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式Iの化合物が
1−{2−[5−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
(±)−1−{2−[5−(テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
1−{2−[5−(3−メチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
1−{2−[5−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−ベンゾイミダゾル−1−イル]−キノリン−8−イル}−ピペリジン−4−イルアミン;
ならびに前記化合物の医薬的に許容できる塩類、プロドラッグ、水和物および溶媒和物よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
塩がベンゼンスルホン酸塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水が約1当量の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
反応をエーテル系溶媒の存在下で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アルカリ土類金属アルコキシドがナトリウムt−ブトキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
式VIの化合物の製造方法であって:
【化3】

[式中:
Bnは、ベンジルであり;
、RおよびRはそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1213よりなる群から選択され;
は、−(CRH、または−(CR(4−10員)−芳香族もしくは非芳香族複素環であり、ここでmは1〜5の整数であり、nは0〜5の整数であり、4−10員複素環は、芳香族の場合は1〜3個のR置換基により置換されていてもよく、4−10員複素環は、非芳香族の場合は任意の位置において1〜3個のR10置換基により置換されていてもよく、異種原子に隣接または直接結合しない任意の位置において1〜3個のR11置換基により置換されていてもよく;
、R、RおよびRはそれぞれ、独立してHおよび(C−C)アルキルよりなる群から選択され;
はそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1415から選択され;
10はそれぞれ、独立してH、(C−C)アルキルおよび(C−C)シクロアルキルから選択され;
11はそれぞれ、独立してハロ、シアノ、CF、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、−O(C−C)アルキル、−O(C−C)シクロアルキル、および−NR1617から選択され;
12、R13、R14、R15、R16およびR17は、独立してH、(C−C)アルキルおよび(C−C)シクロアルキルよりなる群から選択され;
前記の(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、−O(C−C)アルキルおよび−O(C−C)シクロアルキル置換基はそれぞれ独立して、いずれの場合も、独立してハロ、シアノ、アミノ、(C−C)アルキルアミノ、[(C−C)アルキル]−アミノ、ペルハロ(C−C)アルキル、ペルハロ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、および(C−C)アルコキシよりなる群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい];
式VIIの化合物:
【化4】

(式中:RおよびRは式VIについて前記に定めたものである)と式VIIIの化合物:
【化5】

(式中:RおよびRは式VIについて前記に定めたものである)を、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、パラジウム触媒および塩基の存在下で反応させることを含む方法。
【請求項14】
およびRが両方とも水素であり、式VIIの化合物が式VIIAの化合物:
【化6】

である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
反応を芳香族溶媒、エーテル類またはその混合物の存在下で実施する、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2007−516168(P2007−516168A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516552(P2006−516552)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001983
【国際公開番号】WO2004/113322
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】