説明

1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよびこの生理学的に受け入れられる塩の新規な使用

【課題】臨場恐怖を伴うかまたは伴わない亜類型恐慌性障害、臨場恐怖、強迫性範囲障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス適応または一般化不安障害、双極性障害、躁病、痴呆、物質関連障害、性的機能不全、摂食障害、肥満、食欲不振および線維筋痛から選択される亜類型不安障害の治療用の医薬品の提供。
【解決手段】1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩。好ましい塩は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、亜類型不安障害の治療用の医薬の製造のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン、この生理学的に受け入れられる塩(米国特許第5,532,241号、第7欄第30〜58行)およびこれを製造することができる方法(米国特許第5,532,241号、例4)は、米国特許第5,532,241号から知られている。本明細書中で述べられている化合物は、当該特許明細書中で、組み合わせた選択性セロトニン(5−HT)再取り込み阻害剤(SSRI)および5−HT1A受容体アゴニストとして記載されている。従って、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよびこの生理学的に受け入れられる酸付加塩の、亜類型障害大うつ病障害および気分変調性障害を含む抑うつ性障害の治療、不安障害の治療、精神病、精神分裂病または分裂感情性障害のような精神医学的障害の治療、発作および脳虚血のような脳梗塞の治療、CNS障害、例えば緊張の治療、高血圧の治療における副作用の療法(例えばα−メチルドーパによる)および脳障害(例えば片頭痛)の予防および治療のための医薬の製造のための使用が開示されている。さらに、内分泌学および婦人科学、例えば先端巨大症、性機能低下症、続発性無月経、月経前症候群または不所望な産褥乳汁分泌の治療への使用が記載されている。
さらに、これらは、睡眠不全およびナルコレプシーを含む睡眠障害の治療のための有用な有効な有用性を有することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術の化合物よりも顕著に良好な薬理学的特性を有する1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよびこの生理学的に受け入れられる塩の新規な使用を提供することを目的としていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンはまた、臨場恐怖を伴う、および/または伴わない亜類型恐慌性障害、臨場恐怖、強迫性スペクトラム障害、社会恐怖症、新奇恐怖を含む特定の恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害または全般性不安障害から選択される亜類型不安障害に対する活性を有することが見いだされた。
【0005】
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、臨場恐怖を伴うかまたは伴わない亜類型恐慌性障害、臨場恐怖、強迫性障害を含む強迫スペクトラム障害、社会恐怖症、新奇恐怖を含む特定の恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害および/または全般性不安障害から選択される亜類型不安障害の治療用の医薬の製造のための使用に関する。
【0006】
5−HT再取り込み阻害剤、例えばフルオキセチン(L. Solyom, C. Solyom, B. Ledwidge, Can. J. Phychiatry, 1991, 36:378-380)または5−HT1A受容体アゴニスト、例えばジェピロン(J.C. Pecknold, L. Luthe, M.H. Scott-Fleury, S. Jenkins, J. Clin. Psychopharmacology, 1993, 13:145-149)は、恐慌性障害において臨床的に有効である。両方の機構を含む組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体アゴニストにより、臨床的実際において利点が得られることが見いだされた。
【0007】
恐慌性障害の代表的なモデルは、G. Griebel, D.C. Blanchard, R.J. Blanchard, Prog. Neuropsychopharmacol. & Biol. Psychiat., 1996, 20:185-205によるマウス防御テストバッテリーである。マウス防御バッテリーテストは、中央壁により分離された2つの0.4mの湾曲したセグメントにより接合された2mの直線状セグメントの長円形の通路からなる。マウスを、3分の親和化期間の間通路中に配置する。次に、手で保持した麻酔したラットを、通路中に導入し、マウスに接近させる。接近を、マウスとの接触がなされたかまたはマウスが接近しているラットから逃げる際に終了する。対象が逃げた場合には、回避距離および5回の接近の後の回避の数を記録する。これらの接近の直後に、ラットはマウスを15mの距離追跡し、飛躍速度を記録する。
【0008】
臨場恐怖の代表的なモデルを、S. Pellow, P. Chopin, S.E. File, M. Briley, J. Neurosci. Meth., 1985, 14:145-167に従って高架式十字迷路と称する。
装置は、2つの「開放された」保護されていないアームおよび2つの「閉鎖された」保護されたアームを有し、動物が両方のアームに自由に接近できる、床面から上昇したX型のプラットホームからなる。ラットまたはマウスを、アームの中心に配置し、なされた進入の数および開放アーム上で費やされた時間を、3分間の試験期間において測定した。正常な動物は、極めて低い基底レベルを有し、即ち開放アームに進入することを回避し、開放アーム上に極めて短い期間にわたり滞在したのみである。
【0009】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、経口適用に続いて、進入の数と開放アーム上で費やされた時間との両方を用量依存的に増大した。例えば、マウスにおいて、10mg/kg p.o.の用量は、進入の数を157%だけで増大させ、開放アーム上で費やされた時間を105%だけ増大させた。ラットにおいて、10mg/kg p.o.の用量は、進入の数を56%の幅で増大させ、開放アーム上で費やされた時間を76%だけ増大させた。
【0010】
5−HT再取り込み阻害剤、例えばパロキセチン(A.K. Cardogan, I.K. Wright, I. Combs, C.A. Marsden, D.A. Kendall, I. Tulloch, Neurosci. Lett. 42: S8)または5−HT1A受容体アゴニスト、例えばジェピロン(V. Motta, S. Maisonnette; S. Morato; P. Castrechini; M.L. Brandao, Psychopharmacology, 1992; 107: 135-139)または8−OH−DPAT(8−ヒドロキシ−ジプロピルアミノテトラリン)(N. Collinson, G.R. Dawson, Psychopharmacology, 1997, 132: 35-43)は、高架式十字迷路試験において有効であることが示されたことは、知られている。両方の機構を含む組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体アゴニストにより、治療的利点が得られることが見いだされた。
【0011】
強迫性障害(OCD)は、不所望な侵入的反復思考、想像または病原菌、塵、汚染物の不合理な恐怖(強迫)、激しいまたは攻撃的刺激に対する行動の不安、他の安全に対する過度に応答性の感覚、例えば他人を自動車でひくことに対する不合理な恐怖、恐怖を生じる宗教(不敬)および性的思考、順序、配列または対称に関する過度の関心、無用であるかまたは消耗した所有物の廃棄ができないことを特徴とする。
【0012】
このことは、OCDを患っている人が、彼らが制御することができないと感じる、儀式の反復性実施(強迫)、例えば過度の洗浄(特に手洗いまたは入浴)、接触、計数、配列および順列、チェック、洗浄および貯蔵をしばしばもたらす。しかし、これらの儀式の実施により、一時的な安心が得られる。この人は、これらの奇妙な強迫挙動が何の意味もなさないことにほぼ常に気づいているが、これを停止することに無力感を覚える。この人は、これらの兆候の少数または多数を有し得、これらは、障害の経過の間変化し得る。パターンは、1日あたり100回または数時間繰り返され得、これにより人は正常に機能することが不可能になる(概観のために、例えばDolberg et al., Clin. Neuropharmacol. 1996, 19: 129またはF. Tallis, Br. J. Clin. Psychol. 1997, 36: 3)。
【0013】
強迫スペクトラム障害(OCSD)は、重複する兆候プロフィル、人口統計、家族履歴、共存症、臨床的経過および抗強迫治療への応答を含む、OCDと共通の特徴を共有する。
OCSDは、例えば、身体表現性障害(例えば体醜形恐怖症、心気症)、チック障害(例えばジル・ド・ラ・ツレット症候群)、衝動的人格異常(例えば反社会的人格異常)、衝動調節障害(例えば抜毛癖、盗癖、放火癖、病理学的とばく、性的強迫、例えば露出症、窃視症、フェチシズム)、分裂強迫障害(例えば強迫性精神分裂症、分裂型(schizotypic)OCD、妄想性OCD)、解離性障害(例えば自閉症、斜頸、シドナム舞踏病、アスパージャー症候群)を含む[概観のために、例えば、E. HollanderおよびC. Wong, J. Clin, Psychiatry 1995, 56 (suppl. 4): 3またはMcElroy et al., J. Clin. Psychiatry 1994, 55 (suppl. 10): 33]。
【0014】
OCDを含むOCSDのための代表的なモデルは、Y. Ichimaru, T. Egawa, A. Sawa, Jpn. J. Pharmacol. 1995, 68: 65-70によるガラス玉覆い隠し試験である。
装置は、おがくず上に均一な間隔を有する25の清浄なガラス玉を有する開放された立方体の箱からなる。個々のマウスを、試験箱中に配置し、20分後に覆われていないままであるガラス玉の数を計数する。皮下適用に続く1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、マウスにおけるガラス玉覆い隠しを、用量依存的に阻害する。例えば、3mg/kgの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩の用量は、ガラス玉覆い隠しをほぼ完全に(92%)阻害する;従来のセロトニン再取り込み阻害剤の同等の効果を有する用量は、例えばフルボキサミンについて20mg/kgであり、またはフルオキセチンについて17mg/kgであり、5−HT1Aアゴニストであるイプサピロンの同等の効果を有する用量は、10mg/kgである。
【0015】
5−HT再取り込み阻害剤または5−HT1A受容体アゴニスト、例えばフルボキサミン、シタロプラムまたは8−OH−DAPT、ジェピロンは、ガラス玉覆い隠しを阻害することが知られている(K. Njung'e, S.L. Handley, Br. J. Pharmacol. 104: 105-112)。現在、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、OCSDの治療のために選択される(W.K. Goodman, L.H. Price, P.L. Delgado, Arch. Gen. Psychiatry 1990, 47: 577-585)。組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体アゴニストは、増大された活性および一層迅速な作用の開始を有することが見いだされた。
【0016】
社会恐怖症についてのモデルは、S. File, J.R.G Hyde, J. Pharm. Pharmacol. 1977, 29: 735-738による社会相互作用試験である。
互いに親和していないラットの対を、明るく照射した開放試験箱(嫌悪条件)中に配置し、5分の試験期間の間の社会的接触の数および継続時間を記録した。
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、社会的相互作用において費やされた時間を増大する。例えば、10mg/kgの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩の経口用量について、互いに親和していないラットの対は、社会的相互作用についての300秒の合計時間の144秒を費やし、これと比較してビヒクルで処理したラットの対は、116秒を費やす。
【0017】
5−HT再取り込み阻害剤であるパロキセチン(S. Lightowler, I.J.R. Williamson, J. Hegarty, G.A. Kennett, R.B. Fears, I.F. Tulloch. Br. J. Pharmacol. 1992, 106: 44P)または5−HT1A受容体アゴニストである8−OH−DPATまたはイプサピロン(G.A. Higgins; A.J. Bradbury; B.J. Jones; N.R. Oakley, Neuropharmacology, 1988, 27: 993-1001)は、社会的相互作用挙動を増大させることが知られている。両方の機構を含む組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体により、治療的利点が得られることが見いだされた。
【0018】
特定の恐怖症についてのモデルは、D. Treit, M.A. Fundytus, Pharmacol. Biochem. Behav. 1988, 30: 1071-1075によるショックプローブ試験である。個々のラットを、4日間の各々について30分間おがくずを充填した開放箱に慣らす。試験日に、連続的に通電したプローブを、地面の2cm上方に挿入する。プローブとの接触の数を計数し、プローブをおがくずで覆う試行を記録した。
【0019】
セロトニン再取り込み阻害剤であるイミプラミン(T.F. Meert, F.C. Colpaert, Psychopharmacology, 1986, 88: 445-450)または5−HT1A受容体アゴニスト、例えば8−OH−DPAT(D. Treit; A. Robinson; S. Rotzinger; C. Pesold, Behav-Brain-Res., 1993, 54: 23-34)またはイプサピロン(S.M. Korte, B. Bohus, Eur. J. Pharmacol., 1990, 181: 307-10)は、このモデルにおいて効率を例証したことが知られている。両方の機構を含む組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体により、治療的利点が得られることが見いだされた。
【0020】
新奇恐怖の代表的モデルにおいて、18時間食物を与えないマウスを、新奇な環境で親和していない食物に接近させる[P. Soubrie et al., Psychopharmacologica, 1975, 45: 203-210]。1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、経口適用に続いて、3mg/kgの用量において21%の幅で食物摂取を増大させた。
【0021】
ラットにおける心的外傷後ストレスに関連する不安の動物モデルは、生来のストレッサーに暴露することにより誘発された長期間持続する挙動の変化を用いる。心的外傷後ストレスと関連する不安の短期間の治療に有効な化合物の治療的効果を、ストレッサーに暴露した後の化合物の投与によりモデル化する。心的外傷後ストレスと関連する不安の予防的治療に有効な化合物の治療的効果を、ストレッサーへの暴露の前の化合物の投与によりモデル化する。数回の挙動試験手順の中で、以下のものが最も有効である[R.E. AdamecおよびT. Shallow, Physiology Behavior, 1993, 54: 101-109; R.E. Adamec et al., Behav. Neurosci. 1997, 111: 435-449]。一般的に、ラットをネコに5分間暴露し、7日後にラットを試験、即ちホールボード試験、高架式十字迷路および聴性驚愕試験のバッテリーにおいて試験することができる。
【0022】
ホールボードは、4つの均一な間隔を有する穴を有する箱(60cm×60cm)からなる;穴中にこの頭を突入させる数を、5分間計数する。高架式十字迷路は、2つの「開放された」保護されていないアームおよび2つの「閉鎖された」保護されたアームを有し、ラットが両方のアームに自由に接近できる、床面から上昇したX型プラットホームからなる。ラットをアームの中心に配置し、開放アーム(危険の評価)に進入する試行の頻度並びに開放および閉鎖アーム上で費やされた時間を、測定する。聴性驚愕試験において、ラットを、プレキシガラスシリンダー中に配置し、60dBの背景ノイズからの一連の20の120dBの白色ノイズ破裂を加え、潜時およびピーク驚愕の大きさを測定する。一般的に、ネコのようなストレッサーに暴露したラットは、穴中への頭の突入の減少した数を示し、一層低い危険評価を有し、開放アーム上で一層短い時間を費やし、驚愕応答が増大した。
【0023】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、ネコストレッサーの後(短期間治療)および前(予防的治療)に投与した際に、心的外傷後ストレスと関連する不安のモデルにおいて有効である。
【0024】
心的外傷後ストレス障害についての代表的な臨床的試験を、以下に記載する。
DSM−IV(精神障害についての診断的および統計的マニュアル、第4編)により定義された非闘争関連慢性心的外傷後ストレス障害を患っている年齢18〜65歳の男性または女性患者20人を、12週間にわたり処理する。10人の患者に、無秩序に、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩を割り当てて投与し、10人の患者に、二重盲検方式で整合したプラシーボを投与する。
【0025】
結果を、治療する医師および患者により、Hamilton Depression Rating Scale, the Montgomery-Asberg Depression Rating Scale, The Clinical and Patient Global Impression Scales、D. Blake et al., Behavioral Therapy 1990, 13: 187-188によるClinician Administered PTSD ScaleおよびJ.R.T. Davidson et al, International Clinical Psychopharmacology 1997, 12: 41-45によるTOP−8スケールを用いた一般的兆候およびPTSD核兆候の特定の評価を用いて評価する。
【0026】
急性ストレス障害についての代表的なモデルは、C. Aron, P. Simon, C. Larousse, J.R. Boissier, Neuropharmacology 1971, 10: 459-469による4枚板試験である。
装置は、4枚の金属製板で構成された床面を有する小さい箱からなる。各回に、マウスを、1枚の板から他の板に交差させ、これに、探査性挙動の量を減少させる短い電気的フットショックを与える。1枚の板から他の板への加えられた交差の数(即ち動物により受け入れられたショックの数)を、5分間の試験期間の間に記録する。正常なマウスは、少数の加えられた交差をなす、即ち少数のフットショックのみを受け入れるに過ぎない。
3mg/kgの経口投与に続く1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、加えられた交差の数を41%だけ増大させた。
【0027】
このモデルを、文献(例えばD.N. Stephens, W. Kehr, Psychopharmacology 1985, 85: 143-147; G.D. Bartoszyk, U. Schoenherr, Behav. Neural Biol. 1987, 48: 317-9)における臨床的に活性なベンゾジアゼピンで有効にした。組み合わせた選択的5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体により、これが、ベンゾジアゼピンの鎮静特性を回避するため、治療的利点が得られることが見いだされた。
【0028】
全般性不安障害についての代表的なモデルは、J.N. Crawly, Pharmacol. Biochem Behav. 1981, 15: 695-699による明暗選択試験(受動的回避試験)である。
明暗選択装置は、一方の箱が暗くされ、他方の箱が高度に照射された2つの連結された箱からなる。マウスを一方の箱中に配置し、照射した箱中で費やされた時間および箱間の移動の数を、5分の期間にわたり測定する。正常なマウスは、照射した区画への少ない数の進入を有し、ほとんどの時間を暗い区画中で費やした。
【0029】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、経口適用に続いて、移動の数および照射された区画中で費やされた時間を、用量依存的に増大する。例えば、10mg/kgの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩の経口用量は、移動の数を73%だけ増大させ、照射された区画中で費やされた時間を31%だけ増大させた。
【0030】
5−HT再取り込み阻害剤、イミプラミン(R. Young, D.N. Johnson, Pharmacol. Biochem. Behav., 1991, 40: 739-743)、または5−HT1A受容体アゴニスト、例えば8−OH−DPATおよびイプサピロン(B. Costall; A.M. Domeney, A.J. Farre; M.E. Kelly; L. Martinez; R.J. Naylor, J. Pharmacol. Exp. Ther., 1992, 262: 90-98)から、これらが、照射された区画において費やされる時間および区画間の移動の数を増大させることが知られる。両方の機構を含む組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体により、治療的利点が得られることが見いだされた。
【0031】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンの好ましい塩は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である。
従って、本発明は、薬理学的に受け入れられる塩が1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、亜類型不安障害の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
【0032】
さらに、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンの少なくとも1種の化合物および/またはこの生物適合性塩の1種と、臨場恐怖を伴う、および/または伴わない亜類型恐慌性障害、臨場恐怖、強迫スペクトラム障害、社会恐怖症、新奇恐怖、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害または全般性不安障害から選択される亜類型不安障害の治療用の少なくとも1種の固体、液体または半液体賦型剤または補助剤を含む薬学的組成物の使用に関する。
【0033】
従って、本発明は、少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、このような亜類型不安障害の治療用の医薬製剤を提供する。
【0034】
本発明の化合物1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよびこの薬学的に受け入れられる塩は、好ましくは、亜類型不安障害の治療用の他の既知の市場で入手できる製剤(例えばフルオキセチン、フルボキサミン)と同様に投与する。単位用量は、一般的に、0.1〜1000mg、好ましくは約0.1〜500mg、特に5、10、20、30、40、50、100、150、200、250および300mgを含む。組成物を、1日1回または2回以上、例えば毎日2、3または4回投与することができる。毎日の用量は、好ましくは、約0.01〜50mg/体重1kgである。しかし、各患者への特定的な用量は、すべての群の要因、例えば用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、健康の一般的状態、性別、食物、投与の時間および経路、分泌速度、薬学的物質の組み合わせおよび療法が関連する特定の障害の重篤度に依存する。口による投与が好ましいが、非経口経路の投与(例えば静脈内または経皮的)もまた用いることができる。
【0035】
さらに、驚異的なことに、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンはまた、双極性障害および/または躁病に対して活性を有することが見いだされた。
【0036】
躁病/双極性障害の代表的な動物モデルは、A.L. ValeおよびF. Ratcliffe, Psychopharmacology, 1987; 91: 352-355およびB.J. CaoおよびN.A. Peng, Eur. J. Pharmacol., 1993; 237: 177-181によるデキサンフェタミンとクロルジアゼポキシドとの混合物により誘発された活動亢進である。デキサンフェタミン−クロルジアゼポキシド混合物は、マウスまたはラットにおいて強力な活動亢進を誘発する。
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、躁病および双極性障害の標準的な治療であるリチウムおよびバルプロ酸塩と同程度に、混合物により誘発された活動亢進を阻害する。
【0037】
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、双極性障害および/または躁病の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
【0038】
双極性障害および/または躁病についての代表的な臨床的研究を、以下に記載する。
DSM−IVにより診断して双極性II障害の一部として急性軽躁エピソードを患っている年齢18〜65歳の20人の男性または女性患者を、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種またはリチウムで、二重盲検方式において3週間処理する。
【0039】
臨床的改善を、R.R. Lewine et al., Schizophr. Bull. 1983, 9(3): 368-76によるSADS−Cの躁病サブスケール、R.G. Cooke et al, Biol-Psychiatry. 1996, 40(4): 279-83によるヤング躁病評価スケール、M. Hamilton, Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry 1960, 23: 56-62によるハミルトン抑うつ症評価スケール、J. Endicott et al., Arch. Gen. Psychiatry, 1976, 33(6): 766-71による全体的評価スケールおよび隔週のW. Guy(編), ECDEU Assessment for Psychopharmacology, 1976, 217-222による臨床的全体的改善スケールにより評価する。
この研究の結果を用いて、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種が、長期間予防研究の前に急性抗躁病特性を示すか否かを決定する。
【0040】
本発明はさらに、薬学的に受け入れられる塩が1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、双極性障害および/または躁病の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンの少なくとも1種の化合物および/またはこの生物適合性塩の1種と、双極性障害および/または躁病の治療のための少なくとも1種の固体、液体または半液体賦型剤または補助剤を含む、薬学的組成物の使用に関する。
【0041】
従って、本発明は、双極性障害および/または躁病の治療のための医薬製剤において、これが、少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、前記医薬製剤を提供する。
【0042】
本発明の化合物は、好ましくは、双極性障害および/または躁病の治療のための他の既知の市場で入手できる製剤(例えばフルオキセチン、フルボキサミン)と同様に、好ましくは用量単位あたり約0.1〜500mg、特に5〜300mgの用量で投与する。毎日の用量は、好ましくは、約0.01〜10mg/体重1kgである。しかし、各患者についての特定の用量は、すべての群の要因、例えば用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、健康の一般的状態、性別、食物、投与の時間および経路、排出速度、薬学的物質の組み合わせおよび療法が関連する特定の障害の重篤度に依存する。口による投与が好ましいが、非経口経路の投与(例えば静脈内または経皮的)もまた用いることができる。
【0043】
さらに、驚異的なことに、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンはまた、アルツハイマー病および多発梗塞を含む痴呆に対する活性を有することが見いだされた。
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、痴呆の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
【0044】
痴呆、アルツハイマー病および多発梗塞の代表的なモデルは、ラットにおける受動回避試験[S.D. GlickおよびB. Zimmerberg, Behav. Biol., 1972, 7: 245-254; D.K. Rush, Behav. Neural Biol., 1988, 50: 255-274]および加齢したラットにおけるモリス水迷路における記憶機能の試験[R. Morris, J. Neurosci. Methods, 1984, 11:47-60; F.H. Gage et al.; Neurobiol. Aging. 1984, 5: 43-48]である。
【0045】
受動的回避試験について、装置は、小さい扉により暗い区画から分離された通路である。健忘症薬剤スコポラミンを、動物を獲得試験に付す前に投与する:ラットを、暗い区画とは反対側の通路の入口に配置し、暗い区画に進入する潜時を記録し、ラットが暗い区画に進入した後に、扉を閉じ、フットショックを格子床を介して与える。保持試験を、獲得試験(スコポラミンなし)と同一に48時間後に実施し、暗い区画に進入する潜時を、再び記録する。正常なスコポラミンで処理した動物は、獲得試験からのフットショックを記憶しておらず、保持試験において同様の潜時で区画に進入する。
【0046】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、10mg/kg p.o.の経口適用に続いて、記憶を増強した。即ち、第1の保持試験において暗い区画に進入する潜時は、未処理ラットと比較して、78%だけ増大した。
【0047】
セロトニン再取り込み阻害剤、例えばフルオキセチンは、スコポラミンにより誘発された認知障害の影響を弱めることが知られており(S. Kumar, S.K. Kulkami, Indian J. Exp. Biol., 1996, 34: 431-435)、背側縫線における5−HT1A受容体の関与が例示された(M. Carli, P. Bonalumi, R. Samanin, Eur. J. Neurosci, 1998, 10: 221-30)。コリン作動性特性が欠乏した、組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体により、主要な治療的進化が得られることが見いだされた。
【0048】
モリス水迷路は、水の表面の周囲から18cm下方の逃走プラットホーム(直径15cm)を有する、水を充填した円形水タンク(直径150cm)からなる。水は、不透明であり、プラットホームを視覚不能にしている。タンク中に配置されたラットは、泳ぎ回り、ある時間(潜時)後に隠蔽されたプラットホームを偶然発見し、プラットホームを発見する潜時を、測定値として採用する。プラットホームを見いだすさらなる訓練期間が与えられると、ラットは、1日ごとに減少した潜時を示す。即ち、プラットホームの位置を記憶(学習)する。しかし、若いラットと比較して、加齢したラットは、日の経過に伴って学習を比較的不十分に実施し、減少した学習能力を反映する。痴呆および特にアルツハイマー病に有効な薬剤は、加齢したラットの学習能力を改善する。
【0049】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩を、加齢したラットに、毎日1および3mg/kgの経口用量で投与する。7日目に試験した際に、第1の試行においてプラットホームを見いだす潜時は、77秒(1mg/kg)および73秒(3mg/kg)であり、ビヒクルで処理した若いラット(76秒)と異ならず、一方未処理の加齢したラットは、プラットホームを見いだすのに95秒を要した。
【0050】
本発明はさらに、薬学的に受け入れられる塩が1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、痴呆を治療するための医薬の製造のための使用に関する。
【0051】
さらに、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンの少なくとも1種の化合物および/またはこの生物適合性塩の1種を、痴呆の治療のための少なくとも1種の固体、液体または半液体賦型剤または補助剤を含む、薬学的組成物の使用に関する。
【0052】
従って、本発明は、痴呆の治療のための医薬製剤において、これが、少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、前記医薬製剤を提供する。
【0053】
本発明の化合物は、好ましくは、アルツハイマー病および多発梗塞を含む痴呆の治療のための他の既知の市場で入手できる製剤(例えばフルオキセチン、フルボキサミン)と同様に、好ましくは用量単位あたり約0.1〜500mg、特に5〜300mgの用量で投与する。毎日の用量は、好ましくは、約0.01〜50mg/体重1kgである。しかし、各患者についての特定の用量は、すべての群の要因、例えば用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、健康の一般的状態、性別、食物、投与の時間および経路、排出速度、薬学的物質の組み合わせおよび療法が関連する特定の障害の重篤度に依存する。口による投与が好ましいが、経口経路の投与(例えば静脈内または経皮的)もまた用いることができる。
【0054】
さらに、驚異的なことに、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンはまた、物質関連障害に対する活性を有することが見いだされた。
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、物質関連障害の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
【0055】
物質関連障害は、この離脱症状を伴うかまたは伴わない物質依存症、物質により誘発された気分障害および物質により誘発された不安障害を含む。「物質」は、本明細書中では、物質依存症のためのアルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚薬、アヘン、フェンシクリジン、ニコチンおよび/またはタバコと定義する。「物質」は、物質により誘発される気分障害および物質により誘発された不安障害のためのアルコール、アンフェタミン、コカイン、幻覚薬、吸入剤、アヘンおよび/またはフェンシクリジンと定義する。
【0056】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンは、好ましくは、アルコール依存症および/またはニコチン(タバコ)離脱症状に対して活性であることが見いだされた。ニコチン離脱症状には、不穏状態、被刺激性、嗜眠状態、睡眠からの増大して頻繁な覚醒、不耐性、錯乱、減少した濃度、炭水化物欲求および体重増加、減少した反応時間およびタバコの欲求が含まれる。
特に、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンは、アルコール依存症に対して活性である。
【0057】
増大したシナプス5−HT含量は、アルコールを好むラットにおけるアルコール消費を有効に減少させることが知られている(F.C. Zhou, D.L. McKinzie, T.D. Patel, Li Lumeng, T.K. Li, Alcohol Clin Exp. Res. 1998, 22(1): 266-269)。従って、アルコールを好むラットを、試験化合物で、毎日2回皮下で処理した。エタノール飲用、水摂取および体重を、24時間にわたり決定した。基線エタノール摂取は、3日の前の薬剤を用いない日の平均のエタノール摂取から由来する。
【0058】
本発明はさらに、薬学的に受け入れられる塩が1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、物質関連障害を治療するための医薬の製造のための使用に関する。
【0059】
代表的な動物モデルは、刺激キューとしてコカインを用いるラットにおける薬剤識別手順である(例えば、D.M. WoodおよびM.W. Emmett-Oglesby, J. Pharmacol. Exp. Ther., 1986; 237: 120-125; D. HuangおよびM.C. Wilson, Pharmacol. Biochem. Behav., 1986; 24: 205-210; J.M. Witkin et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1991; 257: 706-713)。ラットを、2レバー識別手順において、10mg/kgのコカインを生理的食塩水から識別するように訓練する。コカインと置換する化合物は、コカイン適切応答、即ちコカイン対レバーの選択における用量依存性増大を生じる。
【0060】
1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、コカインと、用量依存的に、しかし部分的にのみ置換された(50mg/kg p.o.において、最大60%のコカイン対レバーの選択)。1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、コカインとは対照的に、単独で刺激薬剤として作用せず、乱用有効性の欠乏を示すため、コカインへの一般化は、治療的利点を示す。
【0061】
さらに、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよび/またはこの生物適合性塩の1種の少なくとも1種の化合物を、物質関連障害の治療のための固体、液体または半液体賦型剤または補助剤の少なくとも1種と共に含む、薬学的組成物の使用に関する。
【0062】
従って、本発明は、物質関連障害の治療のための医薬製剤において、これが、少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、前記医薬製剤を提供する。
【0063】
本発明の化合物は、好ましくは、物質関連障害の治療のための他の既知の市場で入手できる製剤(例えばフルオキセチン、フルボキサミン)と同様に、好ましくは用量単位あたり約0.1〜1000mg、特に5〜500mgの用量で投与する。組成物は、1日1回または2回以上、例えば毎日2、3または4回、あるいは持続された放出形態で投与することができる。毎日の用量は、好ましくは、約0.01〜100mg/体重1kgである。しかし、各患者についての特定の用量は、すべての群の要因、例えば用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、健康の一般的状態、性別、食物、投与の時間および経路、排出速度、薬学的物質の組み合わせおよび療法が関連する特定の障害の重篤度に依存する。口による投与が好ましいが、非経口経路の投与(例えば静脈内または経皮的)もまた用いることができる。
【0064】
さらに、驚異的なことに、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンはまた、早発射精を含む性的機能不全に対する活性を有することが見いだされた。
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、性的機能不全の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
用語「早発射精」は、先天性早発射精および一次的な早発射精を含む。
【0065】
動物モデルにおいて、性的機能についての種々の挙動的測定を、ヒトにおける標的された機能不全、例えば減少したリビド、無オルガスムまたは射精障害に依存して、動物モデルにおいて用いることができる。動物における性的活性についての測定は、陰茎の勃起、雄ラットにおける射精挙動または交配挙動の頻度あるいは雌ラットにおける受容挙動の百分率を含む[例えば:S. AhleniusおよびK. Larsson, Neurochem. Res., 1997, 22: 1065-1070; S. AhleniusおよびK. Larsson, Psychopharmacology, 1998, 137: 374-382; J. Vega-Matuszcyk et al., Pharmacol. Biochem. Behav., 1998, 60: 527-532; J.M. Cantor et al., Psychopharmacology, 1999; 144: 355-362]。1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種、特に1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、前述の種々の測定に対して有効であった。
【0066】
早発射精を含む性的機能不全についての代表的な臨床的研究を、以下に記載する。
大うつ病障害を患っており、選択的セロトニン再取り込み阻害剤抗うつ剤での治療の下での性的機能不全の履歴を有する、年齢18〜45歳の20人の男性患者を、4週間にわたり、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩で処理する。性的機能および満足の評価を、1週間おきに、各患者への一連の質問を用いて評価する。(参考:A. Feiger et al., J. Clin. Psychiatry 1996, 57(suppl 2): 53-62)。
【0067】
本発明はさらに、薬学的に受け入れられる塩が1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、性的機能不全を治療するための医薬の製造のための使用に関する。
【0068】
さらに、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよび/またはこの生物適合性塩の1種の少なくとも1種の化合物を、性的機能不全の治療のための固体、液体または半液体賦型剤または補助剤の少なくとも1種と共に含む、薬学的組成物の使用に関する。
【0069】
従って、本発明は、性的機能不全の治療のための医薬製剤において、これが、少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、前記医薬製剤を提供する。
【0070】
本発明の化合物は、好ましくは、早発射精を含む性的機能不全の治療のための他の既知の市場で入手できる製剤(例えばフルオキセチン、フルボキサミン)と同様に、好ましくは用量単位あたり約0.1〜500mg、特に5〜300mgの用量で投与する。毎日の用量は、好ましくは、少なくとも約3か月、好ましくは少なくとも約6か月の期間にわたり、約5〜100mg/体重1kgである。しかし、各患者についての特定の用量は、すべての群の要因、例えば用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、健康の一般的状態、性別、食物、投与の時間および経路、排出速度、薬学的物質の組み合わせおよび療法が関連する特定の障害の重篤度に依存する。いくつかの例において、患者が性的に活性のままである限りは、本発明の化合物を、長期的に投与する。口による投与が好ましいが、非経口経路の投与(例えば静脈内または経皮的)もまた用いることができる。
【0071】
さらに、驚異的なことに、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンはまた、拒食症および神経性過食症および/または肥満を含む摂食障害に対する活性を有することが見いだされた。
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、摂食障害および/または肥満および/または食欲不振の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
【0072】
摂食障害および/または肥満および/または食欲不振についての代表的な動物モデルは、H.C. Jackson, A.M. Needham, L.J. Hutchins, S.E. Mazukiewicz, D.J. Heal, Br. J. Pharmacol., 1997, 121: 1758-1762により蓄積食物摂取と称され、これを、種々の種において用いることができる。通常、ラットまたはマウスを、食物に自由に接近させ、体重の発達を長期間にわたり測定する。試験を、飢えた、および飢えていないラットまたはマウスの両方において実施することができる。さらに、薬物の長期間または短期間の投与を検査することができる。
【0073】
食物に自由に接近させているラットまたはマウスに4日間連続で360mg/kgまでで経口的に与えた1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩により、体重の発達が、一層高い用量において減少する。他方、50mg/kgまでの比較的低い用量の結果、体重が増加する。体重の減少した発達はまた、イヌにおいても観察された。従って、用いた用量範囲に依存する肥満または食欲不振における治療的効果を示す体重に対する種々の効果が、明らかである。
【0074】
セロトニン再取り込み阻害剤、例えばフロキセチン、フルボキサミン、パロキセチンまたはシブトラミン(例えばK. Inoue, N. Kiriike, Y. Fujisaki,M. Kurioka, S. Yamagami, Physiol. Behav. 1997, 61: 603-608; R. Ciccocioppo, I Panocka, C. Polidori, C.T. Dourish, M. Massi Psychopharmacology 1997, 134: 55-63; H.C. Jackson, A.M. Needham, L.J. Hutchins, S.E. Mazurkiewicz, D.J. Heal, Br. J. Pharmacol., 1997, 121: 1758-1762; S. Garattini, Obes. Res. 1995, 3(Suppl 4):463S-470S)は、食物摂取を劇的に減少させることが知られている。特に、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種の、シナプス前の5−HT1A特性は、これらの受容体が、食物摂取の阻害に関与し、相乗的方法において、セロトニン再取り込み阻害剤の効果を有効にする(A.C. Trillat, I. Malagie, M. Mathe-Allainmat, M.C. Anmella, C. Jacquot, M. Langlois, A.M. Gardier, Eur. J. Pharmacol. 1998, 357: 179-84; D.L. Li, R.M.A. Simmons, S. Iyengar, Brain Res. 1998, 781: 119-26)ため、関連がある。1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種のような、両方の機構を含む組み合わせた選択性5−HT再取り込み阻害剤および5−HT1A受容体により、治療的利点が得られることが見いだされた。
【0075】
拒食症についての代表的な臨床的研究を、以下に記載する。DSM−IVにより診断して拒食症を患っている年齢18〜40歳の20人の女性の患者を、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種またはプラシーボのいずれかで、二重盲検方式で、12週間の期間にわたり処理する。
臨床的改善を、体重、月経状態の測定により評価する。抑うつ性兆候を、S.A. Montgomery et al., British Journal of Psychiatry, 1979, 134: 382-389によるモンゴメリーアスバーグ抑うつ評価スケールを用いることにより、評価する。
【0076】
神経性過食症についての代表的な臨床的研究を、以下に記載する。DSM−IVにより診断して神経性過食症を患っている、年齢18〜40歳の20人の女性患者を、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の1種またはプラシーボのいずれかで、二重盲検方式で、8週間の期間にわたり処理する。
臨床的改善を、気晴らしの摂食および嘔吐エピソードの頻度の比較並びに体重の測定により、評価する。神経性過食症の関連する兆候、例えば抑うつ症を、S.A. Montgomery et al., British Journal of Psychiatry, 1979, 134: 382-389によるモンゴメリーアスバーグ抑うつ症評価スケールにより評価する。
【0077】
本発明はさらに、薬学的に受け入れられる塩が1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、摂食障害および/または肥満および/または食欲不振を治療するための医薬の製造のための使用に関する。
【0078】
さらに、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよび/またはこの生物適合性塩の1種の少なくとも1種の化合物を、摂食障害および/または肥満および/または食欲不振の治療のための固体、液体または半液体賦型剤または補助剤の少なくとも1種と共に含む、薬学的組成物の使用に関する。
【0079】
従って、本発明は、少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、摂食障害および/または肥満および/または食欲不振の治療のための医薬製剤を提供する。
【0080】
本発明の化合物は、好ましくは、摂食障害および/または肥満および/または食欲不振の治療のための他の既知の市場で入手できる製剤(例えばフルオキセチン、フルボキサミン)と同様に、好ましくは用量単位あたり約0.1〜500mg、特に5〜300mgの用量で投与する。毎日の用量は、好ましくは、約0.01〜10mg/体重1kgである。しかし、各患者についての特定の用量は、すべての群の要因、例えば用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、健康の一般的状態、性別、食物、投与の時間および経路、排出速度、薬学的物質の組み合わせおよび療法が関連する特定の障害の重篤度に依存する。口による投与が好ましいが、非経口経路の投与(例えば静脈内または経皮的)もまた用いることができる。
【0081】
さらに、驚異的なことに、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンはまた、線維筋痛に対する活性を有することが見いだされた。
従って、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の、線維筋痛の治療のための医薬の製造のための使用に関する。
【0082】
線維筋痛、即ち慢性筋肉障害は、全体の運動系の、慢性の疲労症候群および複数の圧痛点と組み合わされた患者の何の炎症または心理学的状態によっても生じない痛みを特徴とする。他の兆候は、睡眠の障害、朝の硬直、頭痛、刺激反応性腸および膀胱症候群および感覚異常である。線維筋痛を患っている患者は、炎症または増大されたリウマチ因子の増大した値を示さない。米国における調査において、人口の2%が、線維筋痛を患っている。
【0083】
近年、診断についてのいくつかの特徴が、重複する肉体または精神疾患と区別するために開発された(例えばM.B. Yunus, Z. Rheumatol 1989, 48: 217-222)。
線維筋痛の理由は知られていないが、抗うつ薬剤であるアミトリプチリンが、臨床的研究において陽性の結果を示したことが示されている[L. Stander, CNS Drugs 1999, 11: 49-60]。1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよび/またはこの生理学的に受け入れられる塩は、睡眠調節系に同様の影響を示すが、三環系抗うつ剤に典型的な抗コリン作動性副作用を有しない。さらに、脳脊髄液の研究は、中枢神経系のある領域におけるセロトニンと線維筋痛との関係を支持することが記載されている[I.J. Russell et al., Arthritis Rheum 1992, 35: 550-556およびE. Houvenagel et al., Rev. Rheum. Mal Osteoartic 1990, 57: 21-23]。
【0084】
薬剤の痛み緩和特性を試験する迅速な手順は、E. Siegmund et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 1957, 95: 729-731による腹部収縮(もがき)試験およびS. Hunskaar et al., J. Neurosci. Meth. 1985, 14: 69-76による皮内ホルマリン試験である。例えば、30mg/kg p.o.における1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩は、腹部収縮を82%だけ、および10mg/kg p.o.は、ホルマリンにより誘発された痛み応答を79%だけ減少した。
【0085】
線維筋痛についての一層優れた動物モデルは、痛覚過敏、異痛および同時の痛みに関連するラットにおける坐骨神経の慢性収縮である[G.J. Bennett G.J.およびY.K. Xie, Pain 1988, 33: 87-107]。このモデルにおいて、ラットを麻酔し、1mm間隔の4つの結紮を、左側坐骨神経の周囲にゆるく施す。慢性状態が完全に確立された際に、即ち坐骨神経の手術の1週間後に、ラットを、熱および接触刺激に対する反応性について試験する。ラットを、箱中に配置する。熱的刺激について、赤外線放射線源を、損傷していないおよび損傷した後足(hindpaw)の下で照射し、後足離脱潜時を記録する。接触刺激について、電気的ボンフレー(Von Frey)プローブの先端を、損傷していないおよび損傷した後足上への増大する圧力と共に適用し、足離脱を誘発するのに要した力を記録する。
【0086】
線維筋痛についての代表的な臨床的研究を、以下に記載する。線維筋痛を患っている年齢18〜65歳の男性または女性の患者20人を、非盲検臨床試験において、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩で、8週間処理する。臨床的改善の評価を、100mm視覚的アナログスケールにおける全体の痛みについての評価により、およびR. Melzack, Pain 1987, 30: 191-197によるマックギル(McGill)痛み質問書により実施する。抑うつ性兆候を、S.A. Montgomery et al., British Journal of Psychiatry, 1979, 134: 382-389によるモンゴメリーアスバーグ抑うつ症評価スケールおよびM. Hamilton, Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry 1960, 23: 56-62によるハミルトン抑うつ症評価スケールにより評価する。
【0087】
また、臨床的改善を、線維筋痛の診断のためのACR基準(Arthritis Rheum. 1990, 33: 160-172)による正の圧痛点の数(圧痛点(TP)スコア≧11〜18)により評価することができた。
本発明はさらに、薬学的に受け入れられる塩が1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、線維筋痛を治療するための医薬の製造のための使用に関する。
【0088】
さらに、本発明は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンの少なくとも1種の化合物および/またはこの生物適合性塩の1種の少なくとも1種の化合物を、線維筋痛の治療のための少なくとも1種の固体、液体または半液体賦型剤または補助剤を含む、薬学的組成物の使用に関する。
従って、本発明は、少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、線維筋痛の治療のための医薬製剤を提供する。
【0089】
本発明の化合物は、好ましくは、線維筋痛の治療のための他の既知の市場で入手できる製剤(例えばアミトリプチリン)と同様に、好ましくは用量単位あたり約0.1〜500mg、特に5〜300mgの用量で投与する。毎日の用量は、好ましくは、約0.01〜10mg/体重1kgである。しかし、各患者についての特定の用量は、すべての群の要因、例えば用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、健康の一般的状態、性別、食物、投与の時間および経路、排出速度、薬学的物質の組み合わせおよび療法が関連する特定の障害の重篤度に依存する。口による投与が好ましいが、非経口経路の投与(例えば静脈内または経皮的)もまた用いることができる。
【0090】
亜類型不安障害、双極性障害、躁病、痴呆、物質関連障害、性的機能不全、摂食障害、肥満、食欲不振または線維筋痛の治療に用いられる医薬製剤を、すべて、ヒトおよび獣医学的薬剤における医薬として用いることができる。
亜類型不安障害、双極性障害、躁病、痴呆、物質関連障害、性的機能不全、摂食障害、肥満、食欲不振または線維筋痛の治療に用いられる医薬製剤の製造方法は、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を、固体、液体または半液体賦型剤または補助剤と共に適切な用量形態に転化することを特徴とする。
【0091】
適切な賦型剤は、腸内(例えば経口)、非経口または局所的投与に適し、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよび/またはこの生物適合性塩の1種と反応しない有機または無機物質、例えば水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、三酢酸グリセロール、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、石油ゼリーである。経口投与に用いられる形態は、特に、錠剤、ピル、糖被覆錠剤、カプセル、粉末、顆粒、シロップ、液体またはドロップであり、直腸内投与のための形態は、特に、座剤であり、非経口投与のための形態は、特に、溶媒、好ましくは油状または水性溶液、さらに懸濁液、エマルジョンまたはインプラントであり、局所的投与のための形態は、経皮プラスター、軟膏、クリームまたは粉末である。
【0092】
また、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンおよび/またはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を、凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物を、例えば注射可能な生成物の製造に用いることができる。前述の製剤は、滅菌形態であることができ、および/または補助剤、例えばグリダント(glidant)、保存剤、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧を修正するための塩、緩衝物質、着色剤、香味剤および/または他の活性な成分、例えば1種または2種以上のビタミンを含む。所望により、製剤を、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生物適合性塩の徐放性を生じるように設計することができる。
【0093】
以下の例は、医薬製品に関する:
例A:バイアル瓶
100gの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩および5gのリン酸水素二ナトリウムを、3lの2回蒸留水に溶解した溶液を、2N塩酸でpH6.5とし、濾過滅菌し、バイアル瓶中に充填し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌形態で密封した。各々のバイアル瓶は、5mgの活性成分を含む。
【0094】
例B:座剤
20gの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の混合物を、100gの大豆レシチンおよび1400gのココアバターと共に溶融させ、混合物を、型中に注入し、放冷した。各々の座剤は、20mgの活性成分を含む。
【0095】
例C:溶液
溶液を、940mlの2回蒸留水中の、1gの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩、9.38gのNaHPO・2HO、28.48gのNaHPO・12HOおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから調製した。pHを6.8とし、溶液を、1リットルに作成し、放射により滅菌した。この溶液を、点眼剤の形態で用いることができる。
【0096】
例D:軟膏
500mgの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩を、99.5gの石油ゼリーと、無菌条件下で混合した。
【0097】
例E:錠剤
1kgの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、従来の方法で、各々の錠剤が10mgの活性成分を含むように製剤した。
【0098】
例F:糖で被覆した錠剤
例Eと同様にして製剤した混合物および錠剤を、次に一般的な方法で、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび着色剤の被膜で被覆した。
【0099】
例G:カプセル
2kgの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩を、硬質ゼラチンカプセル中に、一般的な方法で充填して、各々のカプセルが20mgの活性成分を含むようにした。
【0100】
例H:アンプル
1kgの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩を60リットルの2回蒸留水に溶解した溶液を、濾過滅菌し、アンプル中に充填し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌形態で密封した。各々のアンプルは、10mgの活性成分を含む。
【0101】
例I:吸入用のスプレー
14gの1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩を、10リットルの等張性NaCl溶液に溶解し、この溶液を、市場で入手できるポンプ作動スプレー容器中に充填した。溶液を、口または鼻中にスプレーすることができる。1回の作動(約0.1ml)は、約0.14mgの用量に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨場恐怖を伴うかまたは伴わない亜類型恐慌性障害、臨場恐怖、強迫スペクトラム障害、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害および/または全般性不安障害から選択される亜類型不安障害の治療のための医薬の製造への、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項2】
少なくとも1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの薬学的に受け入れられる塩の1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の亜類型不安障害の治療用の医薬製剤。
【請求項3】
双極性障害の治療用の医薬の製造のための、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項4】
躁病の治療用の医薬の製造のための、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項5】
痴呆の治療用の医薬の製造のための、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項6】
物質関連障害の治療用の医薬の製造のための、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項7】
性的機能不全の治療用の医薬の製造のための、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項8】
摂食障害、食欲不振または肥満の治療用の医薬の製造のための、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項9】
線維筋痛の治療用の医薬の製造のための、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジンまたはこの生理学的に受け入れられる塩の使用。
【請求項10】
薬学的に受け入れられる塩が、1−[4−(5−シアノインドール−3−イル)ブチル]−4−(2−カルバモイル−ベンゾフラン−5−イル)−ピペラジン塩酸塩である、請求項1および請求項3〜9のいずれかに記載の使用。

【公開番号】特開2011−148799(P2011−148799A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−27903(P2011−27903)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2000−620944(P2000−620944)の分割
【原出願日】平成12年5月16日(2000.5.16)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】