説明

1種以上の錯化剤の塩を含む粉末の製造方法

本発明の方法は、
下記の一般式(I):
【化1】


で表される1種以上の錯化剤の塩を含む粉末を、
上記錯化剤の塩の1種以上を10〜80質量%の濃度で含む水溶液(該濃度は該水溶液の全質量に対するもの)から開始して、
霧化工程及び乾燥工程を含む噴霧乾燥工程で製造するためのものであって、
該霧化工程を、前記水溶液中に存在するものと同じ錯化剤の塩又は前記水溶液中の錯化剤の塩とは異なる1種以上の錯化剤の塩の結晶質微細ダストを、前記噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の質量に対して0.1〜20質量%の割合で添加することにより実施し、
且つ前記結晶質微細ダストの平均粒径の上限が、前記噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の平均粒径の下限より少なくとも2の逆数で低いことを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下記の一般式(I):
【0002】
【化1】

で表される1種以上の錯化剤の塩を含む粉末の製造方法、及びこの粉末の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アミノプロピルホスホネート、ポリカルボキシレート、又はアミノポリカルボキシレート(例、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))は、屡々、例えば洗剤及び洗浄剤の錯化剤として使用され、これらはほんの少しの程度において生分解性である。
【0004】
費用効果のある別の選択肢として、グリシン−N,N−二酢酸誘導体(例、メチルグリシン−N,N−二酢酸(MGDA)及びその塩−例えばトリアルキル金属塩−これは好都合な毒性と分解容易性を有する)が挙げられる。MGDA及び関連するグリシン−N,N−二酢酸誘導体の洗浄剤への使用、及びその合成法については、例えば、特許文献1(WO−A94/029421)及び特許文献2(US5849950)に記載されている。グリシン−N,N−二酢酸誘導体の費用効果のある製造を実施するためには、個々の合成段階での収率及び単離した中間生成物の純度について高い要求がある。
【0005】
MGDAは、特に、イミノジアセトニトリルとアセトアルデヒド及びシアン化水素酸との反応、又はα−アラニンニトリルとホルムアルデヒド及びシアン化水素との反応、及び中間生成物として得られたメチルグリシンジアセトニトリル(MGDN)の水酸化ナトリウム溶液によるアルカリ加水分解により、MGDAの三ナトリウム塩を形成することにより製造される。MGDAの高い収率及び純度を得るために、MGDNは一般に中間生成物として単離し、次の加水分解の工程では純粋な物質で使用される。
【0006】
アルキルグリシンニトリル−N,N−ジアセトニトリルの加水分解の問題は、これらの熱不安定性、特にアルカリ媒体における熱不安定性である。立体規制アルカリ置換の結果として、逆開裂反応が有利になる。このため、できる限り、MGDA及びその塩の形態の副生物が少なくなるようにする方法の研究がなされている。
【0007】
MGDAの塩の副生物が低く抑えられた改良された製造方法が特許文献3(WO−A2006/120129)に記載されている。これより最新の製造方法によれば、約35−40質量%水溶液がもたらされ、これからその塩が流動性の形態で製造される。
【0008】
従来技術における公知の仕上げ方法の1つは、このような水溶液の噴霧塔での変換(転化)である。これにより、大きさが、例えば5質量%レベルの残余水分を有する非晶質粉末が主に製造される。より多くの残余水分が考えられるけれども、それは噴霧塔で発生することは難しく、また望ましくない。なぜなら、その後の消費者の保存又は加工中に、粉末の凝集が発生するかもしれないからである。顆粒はこのような不利はなく、このため問題なく加工することができることが知られている。しかしながら、顆粒の製造は、噴霧塔での粉末製造に続いて付加的な再加工工程が必要であり、このため比較的高価となる。この再加工工程では、付加的水分が噴霧塔で得られた粉末に送り込まれ、顆粒化が、結晶化を介して1時間レベルの大きさの滞留時間で加熱及び混練により行われる。このような加工方法は例えば、特許文献4(EP−A0845456)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO−A94/029421
【特許文献2】US5849950
【特許文献3】WO−A2006/120129
【特許文献4】EP−A0845456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、更なる用途に必要とされる性質、特に良好な貯蔵性及び加工性を有し、高い結晶化度及び粉末総質量の約7〜14質量%の高い残余水分を有し、顆粒状の上述の錯化剤の粉末を技術的に簡単に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、
下記の一般式(I):
【0012】
【化2】

【0013】
[但し、R’が水素又は下記の基の1個:
【0014】
【化3】

【0015】
{但し、R”が水素、C1−C12−アルキル基又は−(CH2q−COOM(qは1〜5である)を表し、
n及びmが、それぞれ0〜5の整数であり、
R”’が水素、又は5個以下のヒドロキシル基で置換されていても良いC1−C12−アルキル基、又は5個以下のヒドロキシル基で置換されていても良いC2−C12−アルケニル基、又は下記の基の1個:
【0016】
【化4】

【0017】
(但し、o及びpがそれぞれ0〜5の整数であり、そして
Mが相互に独立して、対応する化学量論量の、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア又は置換アンモニアを表す。)
を表す。}
を表し、
式(I)のMも上記Mと同義である。]
で表される1種以上の錯化剤の塩を含む粉末を、
上記錯化剤の塩の1種以上を10〜80質量%の濃度で含む水溶液(該濃度は該水溶液の全質量に対するもの)から開始して、
霧化工程及び乾燥工程を含む噴霧乾燥工程で製造する方法であって、
該霧化工程を、前記水溶液中に存在するものと同じ錯化剤の塩又は前記水溶液中の錯化剤の塩とは異なる1種以上の錯化剤の塩の結晶質微細ダストを、前記噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の質量に対して0.1〜20質量%の割合で添加することにより実施し、
且つ前記結晶質微細ダストの平均粒径の上限が、前記噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の平均粒径の下限より少なくとも2の逆数で低くなっていることを特徴とする方法により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1(比較用)で得られた粉末のX線ディフラクトグラム(diffractogram)である。
【図2】図2は、実施例2で得られた粉末のX線ディフラクトグラムである。
【図3】図3は、実施例3で得られた粉末のX線ディフラクトグラムである。
【図4】図4は、実施例4で得られた粉末のX線ディフラクトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
簡単な噴霧乾燥法において、上記錯化剤の塩の水溶液から開始して、当該方法実施後に得られる粉末の平均粒径の下限より顕著に小さい粒子サイズを有する結晶質微細ダストの存在下に霧化することにより加工して、貯蔵中に所望の性質を有する、上記錯化剤の塩を得ることが可能であることを見出した。
【0020】
霧化(atomization)工程で、噴霧が供給され、その噴霧は、分散相として、不活性ガス(特に空気)の連続相中に、1種以上の錯化剤の塩を含む開始水溶液の液滴及び1種以上の錯化剤の塩の結晶質微細ダストを含む更なる分散固体相を含んでいる。結晶質微細ダストは乾燥工程中に結晶化の種を提供し、その乾燥工程中に水溶液の液滴が結晶化し、成長すると考えられる。さらに、乾燥した微細な噴霧粉末は乾燥ゾーンに戻され、これにより、その粒径は増加し、本方法で得られる粉末の粒度分布に積極的に影響を及ぼすことができる。さらに、結晶質微細粉末はまた、噴霧乾燥プラントで得られる湿った粉末を粉末化する効果を有する。
【0021】
本発明の範囲内においては、用語「粉末」は、約1μm〜約10mmの範囲の平均粒径を有する流動性固体を意味すると理解される。約100μmを超える、上記で定義した範囲の粗粒子は、別の呼び方として、「顆粒」との用語で用いることも可能である。
【0022】
1種以上の上記錯化剤の塩を含む粉末は、噴霧乾燥工程(process)において本発明に従って製造される。
【0023】
噴霧乾燥の分野で、歴史的に発展してきたこの分野で特有の用語は、屡々同様な意味で使用されない。このため、本発明に関連する用語は以下に説明する。
【0024】
用語「噴霧乾燥工程」は、本発明では、液体又は分散液として存在し得るであろう液体開始(出発)材料は霧状にされ、固体を製造するために乾燥される、全ての工程に対する一般的用語である。噴霧乾燥工程は霧化と乾燥の処理工程を有することに特徴がある。これらは同じ装置で、そうでなければ同じ装置が連結された領域で行うことができる。
【0025】
噴霧乾燥工程の第1の工程段階は、液体開始材料を不活性ガス(一般に空気)中に霧化し、噴霧(spray)を得ることである。噴霧は、連続相として、不活性ガス(一般に空気)、そして不連続相として、微細に分配された液体開始材料の液滴、並びに、さらに、本発明の方法に依存しているが、1種以上の錯化剤の結晶質微細ダストから形成される分散固体相を含んでいる。噴霧は、特定の液滴サイズ分布及び液滴サイズ分布幅(スパン)により特徴づけられる:
一般的用語「噴霧乾燥工程」については、特に、以下に特定の工程を含んでいる:
狭義の噴霧乾燥、凝集噴霧乾燥、噴霧−凝集及び噴霧−顆粒化。
【0026】
狭義の噴霧乾燥は、歴史的に最も古い噴霧乾燥工程である。それは噴霧塔で行われる。最初の噴霧塔は1930年代にニロ(Niro)により建設された。噴霧塔の構造は異なるけれども、基本は同じである:即ち、噴霧塔から得られる噴霧の各液滴から精確に1個の粒子が形成されるはずである。噴霧塔の滞留時間は限定されるので、噴霧塔の液滴は噴霧塔で乾燥することができるように、極めて小さくすることだけが必要である。狭義の噴霧乾燥により得られる噴霧粉末の平均粒径は屡々約50μm〜約300μmの範囲である。
【0027】
噴霧塔における噴霧乾燥の好ましい態様によれば、いわゆる凝集噴霧乾燥を行うことができる。この凝集噴霧乾燥は、噴霧塔でダスト割合(fraction)を減らすために1980年代に噴霧塔製造によって発展した。この工程では、噴霧粉末の微細な部分を噴霧塔で分離し、噴霧器の領域に戻される。底部では、粒子はまだ液体の噴霧と接触し、凝集することができる。即ち、2個以上の粒子が一緒に結合し、より大きな粒子を形成する(いわゆる凝集)。凝集は個々の粒子に比較してより長い乾燥時間が必要なので、流動床は、滞留時間を増加させるために噴霧塔に統合される。このタイプの流動床と統合された噴霧塔は、例えばニロ(Niro)のFluidized Spray Dryer (FSD)、又はアンヒドロ(Anhydro)のSpray Bed Dryer (SBD)が知られている。
【0028】
噴霧乾燥工程の他の変法(variant)では、いわゆる噴霧−凝集、即ち、攪拌インターナル付き混合機内に存在する粉末を結合流体(binding fluid)に噴霧することにより結合させ、より大きな粒子を形成する、いわゆる凝集である。混合機内での噴霧凝集の場合、乾燥機は下流に結合されなければならない。混合機は特に流動床とすることができる。噴霧凝集は連続的に行っても、非連続で行っても良い。
【0029】
噴霧乾燥工程の他の変法の工程、いわゆる噴霧顆粒化では、液体開始材料を流動床に噴霧する。噴霧の液滴は、ここでは、流動床に既に存在する顆粒に大部分堆積し、更なる成長に寄与する。最終生成物は屡々広い流動床部分からの篩わけ又はスクリーニングにより得られる。粗材料はしばしば粉にされて、分離除去された微細材料と一緒に流動床に戻される。このため、この工程は、狭義の噴霧乾燥、又は噴霧凝集より複雑である。しかしながら、より大きな粒子及び狭い流度分布を達成することができる。
【0030】
本発明の噴霧乾燥工程を、上述のような種々の変法の工程のそれぞれにおいて行うことが好ましい。各場合、霧化工程で、出発水溶液に存在するのと同じ錯化剤又は出発水溶液のものとは異なる1種以上の式Iの錯化剤の結晶質微細ダストが使用される。その際、使用される結晶質微細ダストの平均粒径の上限が、前記噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の平均粒径の下限より少なくとも2の逆数に(即ち、1/2倍以下に)低くされている。
【0031】
結晶質微細ダストの平均粒径及び本発明の噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の平均粒径は、通常、例えば、レーザ回折(例、マルバーン(Malvern))又は光学法(例、カムサイザー(CamSizer))等の方法により測定される。
【0032】
実施された噴霧乾燥工程が狭義の噴霧乾燥の場合、その後に得られる粉末の平均粒径は、屡々約50〜300μmの範囲にある。従って、平均粒径の許容される上限は最大でも25μmである結晶質微細ダストを使用することが必要である。
【0033】
実施された噴霧乾燥工程が噴霧凝集の場合、得られる粉末の平均粒径は、屡々約200〜2000μmの範囲にある。従って、平均粒径の許容される上限は最大でも100μmである結晶質微細ダストを使用することが必要である。
【0034】
本発明において、噴霧乾燥工程の結晶質微細ダストの添加の質量割合は、噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の質量に対して約0.1〜20質量%の範囲であり、好ましくは噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の全質量に対して4〜10質量%である。
【0035】
使用される開始材料は、対応する合成により得られ且つ約30〜約50質量%の1種以上の錯化剤の塩を含んだ水溶液であり、そして噴霧乾燥工程の上流に連結する処理工程で熱交換器又は薄層エバポレータにおいて、水溶液の全質量に対して約55〜80質量%の錯化剤の塩に濃縮されるであることが好ましい。
【0036】
上記1種以上の錯化剤の塩は下記の一般式(I)に相当する:
【0037】
【化5】

【0038】
[但し、R’が水素又は下記の基の1個:
【0039】
【化6】

【0040】
{但し、R”が水素、C1−C12−アルキル基又は−(CH2q−COOM(qは1〜5である)を表し、
n及びmが、それぞれ0〜5の整数であり、
R”’が水素、又は5個以下のヒドロキシル基で置換されていても良いC1−C12−アルキル基、又は5個以下のヒドロキシル基で置換されていても良いC2−C12−アルケニル基、又は下記の基の1個:
【0041】
【化7】

【0042】
(但し、o及びpがそれぞれ0〜5の整数であり、そして
Mが相互に独立して、対応する化学量論量の、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア又は置換アンモニアを表す。)
を表す。}
を表し、
式(I)のMも上記Mと同義である。]。
【0043】
これらは、グリシン−N,N−二酢酸の誘導体又はグルタミン−N,N−二酢酸の誘導体であることが好ましい。また、エチレンジアミン三酢酸の誘導体又はニトリロ三酢酸の誘導体も好ましい。
【0044】
グリシン−N,N−二酢酸の誘導体としては、特に、メチルグリシン−N,N−二酢酸(以下ではMGDAと呼ぶ)のアルカリ金属塩が好ましい。
【0045】
噴霧乾燥工程の乾燥工程は、約0.1バール絶対〜10バール絶対の範囲の圧力、特に約0.8バール絶対〜2バール絶対の範囲の圧力で行われることが好ましい。
【0046】
乾燥工程の滞留時間は10秒〜1時間の範囲で行うことが好ましい。
【0047】
また本発明は、上述の方法により得られる粉末を含む調製物、或いはこのような調製物の他の慣用成分以外に、アルカリ土類金属イオン及び重金属イオンの錯化剤として、この目的の慣用量にて、上記方法により得られる粉末を含む調製物の水溶液も提供する。
【0048】
調製物は特に洗剤調製物及び洗浄剤調製物である。
【0049】
本発明はさらに上記方法により得られる粉末を圧縮凝集体の製造に使用する方法、及び圧縮凝集体を固体洗浄剤に使用する方法も提供する。
【0050】
上記洗浄剤は、自動食器洗い機に特に好適である。特にこれらは食器洗い機用錠剤であることが好ましい。
【0051】
本発明の噴霧乾燥工程は、1種以上の錯化剤の塩及び他の物質の混合物を用いて実施することも可能である。他の物質は、特に、洗剤及び洗浄剤工業において使用される慣用の助剤及び添加剤を意味すると理解されるべきである。例えば、界面活性剤、ポリマー、無機塩、及び/又はクエン酸塩を使用することができる。食器洗い機の分野で使用される例として、無機塩(例、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、珪酸塩);有機塩(例、クエン酸塩);ポリマー(例、ポリカルボン酸塩、又はスルホン化ポリマー)、またはホスホン酸塩が好ましい。このタイプの混合物を使用することにより、洗剤及び洗浄剤を製造する製造方法がより簡単に設計することができる。
【0052】
上記方法(工程)により得られる粉末は、慣用助剤及び添加剤との混合物として使用することも特に好ましい。
【0053】
本発明の方法によれば、特に、下記の第1の結晶質変性体及び/又は第2の結晶質変性体を含む、30%以上の結晶化度を有するメチルグリシン−N,N−二酢酸塩の粉末を得ることが可能である。
【0054】
上記第1の結晶質変性体は、回折角2θ(°)での以下のd値(Å):
【0055】
【表1】

を有し、そして、第2の結晶質変性体は、以下の表に対応するX線粉末回折における回折角2θ(°)でのd値(Å):
【0056】
【表2】

を有する。
【0057】
本発明を、図面及び実施例を参照して、以下により詳細に説明する。
【0058】
図面を詳しく説明する:
図1は、実施例1(比較用)で得られた粉末のX線ディフラクトグラム(diffractogram)を示しており、図2〜4は、実施例2〜4(本発明に従う)のそれぞれで得られた粉末のX線ディフラクトグラムを示している。
【0059】
ここで、図において、横座標は回折角2θ(°)を示し、そして縦座標が測定した強度(カウント(パルス)(無次元))を示す。
【0060】
X線粉末回折計の測定は、Bruker AXS(Karlsruhe)製のD8 Advance(登録商標)回折計を用いて行った。Cu-Kα線との反射において、1次側及び2次側で可変ダイヤフラムを調節して測定した。測定範囲は、2°〜80°の2θ、0.01°のステップ幅、及び3.6秒の角度ステップ当たりの測定時間であった。
【0061】
結晶化度は、公知の方法でX線粉末のディフラクトグラムから確定した。即ち、通常通り、結晶質相及びアモルファス相の表面率を決定し、これらを用いて結晶化度、CD(アモルファス相の面積Iaと結晶質相の面積Icとの合計面積に対する結晶質相の面積Icの比)を計算した:
CD=Ic/(Ic+Ia
結晶化度の決定は特にソフトウエアプログラム(例、Bruker AXS製のTOPAS(登録商標))を用いて行うことができる。
【0062】
このため、まず、アモルファスのサンプルを測定し、その直線方向(linear course)を、6つの個々の線を用いてプロファイルフィット(profile fit)に適合させる。その後、これらの線の線位置及び半値幅を確定し、これらの値を「アモルファス相」としてセーブする。
【0063】
結晶化度を決定するべきである測定すべきサンプルについて、その後、液晶相の表面率及びアモルファス相の表面率を決定し、それから上述の式に従い結晶化度CDを計算する。
【0064】
アモルファス相は上記定義したように使用した。
【0065】
同様に、液晶質相を、アモルファス相と同じように、個々の線位置により、或いは下記の格子定数を参照することにより定義することができる。格子常数は、いわゆる(hkl)相(a=33.63、b=11.36及びc=6.20、そして空間群Pbcm)であり、格子パラメータは自由に再定義することができる変数である。背景は一次多項式として作られている。
【0066】
ソフトウエアプログラムTOPAS(登録商標)は、測定されたディフラクトグラムとアモルファス相及び結晶質相からなる理論ディフラクトグラムとの間の最適な適合を計算する。
【実施例】
【0067】
[実施例1](比較用)
結晶質微細ダストを添加しない古典的な噴霧乾燥
40%の固形分を有するNa3−MGDAの水溶液の60kg/hの定量流を、プレート熱交換エバポレータ(加熱面積1.7m2)で蒸発させ、59%の固形分とし、分離容器で分離した。蒸発は、分離器において、152℃の壁温度(蒸気加熱)及び2.5バール絶対の圧力で行った。
【0068】
蒸発した溶液は、ギアーポンプを用いて約128℃において下流のピストン膜ポンプに計量導入し、単一材料ノズルを用いて噴霧塔に噴霧した。
【0069】
噴霧塔は800mmの直径、12mの長さを有していた。噴霧塔は1400kg/hの空気量及び160℃のガス流入口温度で操作した。生成物出口温度は127℃で、乾燥生成物の固形分は94.1%であった。生成物は2点排出で分離された(噴霧塔及び下流濾過器で直接)。
【0070】
このようにして得られた生成物は注入可能な粉末であった。嵩密度は529kg/m3であった。X線構造分析により、生成物がアモルファスであることが分かる。
【0071】
このサンプルの貯蔵挙動は乾燥機試験で評価した。このため、3gのサンプルを、20℃、76%の相対大気湿度で乾燥機内に開放計量カップで144時間の期間貯蔵した。その後サンプルの質量の増加を確認し、サンプルの注入可能性を評価する。質量増加は27.1%で、そして、サンプルは溶解を開始していた。即ち、サンプルは湿って、もはや注入は不可能であった。
【0072】
[実施例2](本発明による)
結晶質微細ダストを添加しない古典的な噴霧乾燥
40%の固形分を有するNa3−MGDAの水溶液の75kg/hの定量流を、プレート熱交換エバポレータ(加熱面積1.7m2)で蒸発させ、60%の固形分とし、分離容器で分離した。蒸発は、分離器において、156℃の壁温度(蒸気加熱)及び2.5バール絶対の圧力で行った。
【0073】
蒸発した溶液は、ギアーポンプを用いて約130℃において下流のピストン膜ポンプに計量導入し、単一材料ノズルを用いて噴霧塔に噴霧した。
【0074】
噴霧塔は800mmの直径、12mの長さを有していた。噴霧塔は1400kg/hの空気量及び202℃のガス流入口温度で操作した。結晶質微細ダストNa3−MGDAの4kg/hの質量流を噴霧塔にインジェクターにより噴霧塔に吹き込んだ、生成物出口温度は99℃で、乾燥生成物の固形分は90.2%であった。生成物は2点排出で分離された(噴霧塔及び下流濾過器で直接)。
【0075】
このようにして得られた生成物は注入可能な粉末であった。嵩密度は568kg/m3であった。X線構造分析により、生成物が結晶質であることが分かる。
【0076】
このサンプルの貯蔵挙動は乾燥機試験で評価した。このため、3gのサンプルを、20℃、76%の相対大気湿度で乾燥機内に開放計量カップで144時間の期間貯蔵した。その後サンプルの質量の増加を確認し、サンプルの注入可能性を評価する。質量増加は20.4%で、そして、サンプルはほんの僅かにケーキングしたが、軽くたたくことにより再び注入可能な状態に変わった。
【0077】
[実施例3](本発明による)
統合された流動床付き噴霧塔での凝集噴霧乾燥
46質量%の合計固形分を有するNa3−MGDA41%濃度の水溶液500gを、150gの脱イオン水で希釈した。その後、その溶液を、室温にてガラスフラスコ内でスターラー攪拌し、実験室規模の統合された流動床を有する噴霧塔に送った。その際、乾燥空気を130℃で導入し、流動床の入り口空気温度を110℃とし、そして2種の材料でノズルにより霧化した。乾燥工程の第1の相では、液滴を乾燥し、床内で顆粒化の種を形成した。その後、顆粒化相を開始するため、床温度を低下させ、その間に、顆粒化コア(芯)を種溶液で凝集させた。得られた顆粒を、噴霧乾燥機から連続的に除去した。溶液の顆粒化は64℃〜74℃の間の床温度の範囲で行った。生成物は6.6質量%の残余水分、700kg/m3の高い嵩密度を有し、極めて容易に注入可能であった。20℃、76%の相対大気湿度の乾燥機内で144時間貯蔵した後、生成物は注入可能のままであり、X線ディフラクトグラム(表3)は70%の結晶化率を示した。
【0078】
[実施例4](本発明による)
結晶質微細ダストの添加を伴う噴霧顆粒化
48.8%の固形分を有するNa3−MGDAの水溶液を連続稼働する実験室噴霧流動床上に噴霧顆粒化した。150mmの底部直径及び300mmの頂部直径を有する円錐形の流動床はインターナル・ホースフィルタ(hose filters)及び空気圧式噴霧ノズルを有しており、噴霧は下から流動床にされるようになっていた。流動床は55Nm3/hの窒素、140℃の入り口温度及び79℃の流動床温度で稼働させた。前の実験で得られたNa3−MGDAの噴霧顆粒を、開始充填として流動床に導入した。1.92時間にわたって、合計で6.03kgの溶液を噴霧した。このため、空気圧式噴霧ノズルを、4.7Nm3/hの窒素で、室温、3.3バール(絶対)の圧力にて操作した。固体はスクリューにより流動床から排出され、その際流動床のレベルは一定であった。排出された固体は30分ごとに篩で濾された。46.8%の排出粒子は355〜1250μmの粒径の範囲にあった。この部分の嵩密度は778kg/m3で、水含有量は11.8質量%であった。濾過された355μm未満の微細部分は30分ごとに流動床に戻された。
【0079】
このようにして得られた生成物は注入可能な粉末であった。X線構造分析により、生成物は、上記で定義された第1の変性体の結晶を含み、71%が結晶質であることが分かる。
【0080】
このサンプルの貯蔵挙動は乾燥機試験で評価した。このため、3gのサンプルを、20℃、76%の相対大気湿度で乾燥機内に開放計量カップで144時間の期間貯蔵した。その後サンプルの質量の増加を確認し、サンプルの注入可能性を評価する。質量増加は25.8%で、そして、サンプルはほんの僅かにケーキングしていたが、軽くたたくことにより再び注入可能な状態に変わった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

[但し、R’が水素又は下記の基の1個:
【化2】

{但し、R”が水素、C1−C12−アルキル基又は−(CH2q−COOM(qは1〜5である)を表し、
n及びmが、それぞれ0〜5の整数であり、
R”’が水素、又は5個以下のヒドロキシル基で置換されていても良いC1−C12−アルキル基、又は5個以下のヒドロキシル基で置換されていても良いC2−C12−アルケニル基、又は下記の基の1個:
【化3】

(但し、o及びpがそれぞれ0〜5の整数であり、そして
Mが相互に独立して、対応する化学量論量の、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア又は置換アンモニアを表す。)
を表す。}
を表し、
式(I)のMも上記Mと同義である。]
で表される1種以上の錯化剤の塩を含む粉末を、
上記錯化剤の塩の1種以上を10〜80質量%の濃度で含む水溶液(該濃度は該水溶液の全質量に対するもの)から開始して、
霧化工程及び乾燥工程を含む噴霧乾燥工程で製造する方法であって、
該霧化工程を、前記水溶液中に存在するものと同じ錯化剤の塩又は前記水溶液中の錯化剤の塩とは異なる1種以上の錯化剤の塩の結晶質微細ダストを、前記噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の質量に対して0.1〜20質量%の割合で添加することにより実施し、
且つ前記結晶質微細ダストの平均粒径の上限が、前記噴霧乾燥工程実施後に得られる粉末の平均粒径の下限より少なくとも2の逆数で低くなっていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記噴霧乾燥工程を噴霧塔で行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記噴霧乾燥工程が、前記霧化工程において、前記1種以上の錯化剤の塩を含む水溶液を、前記式Iの1種以上の錯化剤の塩の顆粒を含む流動床に噴霧することからなる噴霧顆粒化である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
噴霧塔において、流動床を統合し、凝集噴霧乾燥を行う請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記噴霧乾燥工程が、攪拌インターナルで混合して、凝集体を形成し、その後その凝集体を他の装置、特に流動床で十分に乾燥させることからなる噴霧凝集である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記使用される開始材料が、対応する合成により得られ且つ約30〜50質量%の前記1種以上の錯化剤の塩を含む水溶液を含んでおり、そして噴霧乾燥工程の上流に連結された処理工程で熱交換器又は薄層エバポレータにおいて、水溶液の全質量に対して約55〜80質量%の錯化剤の塩に濃縮される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥工程を、0.1バール絶対〜10バール絶対の範囲の圧力、好ましくは0.8バール絶対〜2バール絶対の範囲の圧力で行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥工程の滞留時間が、10秒〜1時間の範囲である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
当該調製物の他の慣用成分以外に、アルカリ土類金属イオン及び重金属イオンの錯化剤として、この目的の慣用量にて、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られる粉末又はその水溶液を含む調製物。
【請求項10】
洗剤又は洗浄剤である請求項9に記載の調製物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られる粉末の、圧縮凝集体を製造するための使用。
【請求項12】
請求項11に記載の圧縮凝集体の固体洗浄剤への使用。
【請求項13】
固体洗浄剤が食器洗い機用である請求項12に記載の使用。
【請求項14】
固体洗浄剤を自動食器洗い機に錠剤の形で使用する請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507499(P2013−507499A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533597(P2012−533597)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065184
【国際公開番号】WO2011/045266
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】