説明

1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素の製造方法

高級な1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素を低級な1,3,5−トリアジンカルバメートから製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素を他の1,3,5−トリアジンカルバメートから製造する方法を記載する。
【0002】
US4939213号は、トリカルバモイルトリアジンと、活性水素原子を含有するポリアクリレート又はポリスチレンとを室温で硬化触媒の存在下で硬化することにより生ずる被覆物を記載している。触媒としては、スズ塩並びに第4級及び第3級の陽イオン性塩が開示されている。この実施例7及び8には、スズ触媒の存在下での室温での硬化が記載されているが、但し反応時間は記載されていない。
【0003】
US5565243号は、炭素原子12個までのアルキル基を有するトリカルバモイルトリアジン及び結合剤としての樹脂を含有する下塗り塗料並びにポリエポキシドと架橋剤とからの上塗り塗料を記載しており、この下塗り塗料は、例えばスズ化合物を用いて、かつ上塗り塗料は例えば第2級又は第3級アミンを用いて硬化できる。この実施例は、それぞれ室温で硬化するものである。
【0004】
この系の欠点は、トリカルバモイルトリアジンから分離した低級アルコールが脱することができないことである。更に、この硬化によって、被覆物中で架橋が増大するために、高転化率が達せられない。更に、室温での硬化は、長時間の反応時間を必要とする。使用されるトリカルバモイルトリアジンは、高反応性の1,3,5−トリアジントリイソシアネートとアルコール、アミン等との反応によって製造され、これらはその反応性のために貯蔵性及び輸送性が劣悪であり、更には毒性を示す。
【0005】
1,3,5−トリアジンカルバメートの製造は、例えばDE−A110151564号又はWO97/08235号の3頁9〜22行に記載されている。そこで挙げられている製造過程は、アルキル置換された1,3,5−トリアジンカルバメートをもたらす。この方法は、反応媒質が強塩基性であるため、エステル基又はカルバメート基の官能基には好適ではない。
【0006】
EP−A2305115号は、少なくとも1個のハロゲン含有基CX3を含有し、かつUV露光を介して光化学的にラジカル重合を生じさせることができる放射線反応性の1,3,5−トリアジン化合物を記載している。更に、このトリアジン化合物は、ラジカル重合性基、例えばウレタン基を介して結合するヒドロキシエチルアクリレートを含有してよい。
【0007】
同様、EP−A359430号は、ラジカル重合性基を同時に含有するハロゲン含有1,3,5−トリアジン化合物を記載している。かかる化合物は、光の影響下でラジカルを形成する。
【0008】
これらの系の放射線反応性のハロゲン基は、かかる化合物又はそれを含有する被覆物の耐UV性に不利な影響を及ぼし、かつ被覆物の黄変を増大させる。
【0009】
EP−A366884号には、少なくとも2個のビニル末端基及び少なくとも1個のカルバミル基を含有する1,3,5−トリアジン化合物が記載されている。この1,3,5−トリアジン化合物は、メラミンとアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの反応生成物を含有する。この1,3,5−トリアジン化合物は、ビニル末端基の他に、メチロール基及び/又はアルキル化メチロール基を含有する。
【0010】
同様の系が、EP−A473948号に記載されている。これは、メラミンとホルムアルデヒドとの縮合により得られ、かつエチレン性不飽和基を含有する置換1,3,5−トリアジンである。かかる基は、酸感受性を示す。
【0011】
本発明の課題は、無毒性又は低毒性を示す化合物から出発し、そして目的生成物を短時間の反応時間で高収率で提供する、1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素の製造方法を提供することである。
【0012】
前記課題は、式(I)
【化1】

の1,3,5−トリアジンカルバメートを、式(II)
【化2】

の1,3,5−トリアジンカルバメートから製造するにあたり、
これらの式中、Y1及びZ1は、両方とも水素であるか、又はY1は式−(CO)−O−R4の基であり、かつZ1は式−(CO)−X1−R1の基であり、
2及びZ2は、両方とも水素であるか、又はY2は式−(CO)−O−R5の基であり、かつZ2は式−(CO)−X2−R2の基であり、
1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ互いに無関係にアルコール又はアミンの残基であり、かつ
1、X2及びX3は、それぞれ互いに無関係に酸素又は非置換の窒素(NH)である方法において、
この反応を、40〜120℃の温度で、かつ
スズ化合物、セシウム塩、アルカリ金属炭酸(水素)塩及び第3級アミンを有する群から選択された少なくとも1種の触媒の存在下で実施する方法により解決される。
【0013】
本発明にかかる方法は、1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素を、技術水準と比べて改善された収率で提供し、従って特に製造の際の空時収率が改善される。室温での硬化と比べて温度を高めること及び本発明にかかる方法の実施によって、室温での反応によっては達せられない転化率が達せられ、これにより化合物が製造される。
【0014】
触媒を用いる本発明にかかる方法における温度は、完全に加熱による製造の際の温度と比べて低いので、有利な色数が達成される。
【0015】
残基R4、R5及びR6は、それぞれ互いに無関係に、常圧での沸点が120℃以下、好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下、殊に好ましくは70℃以下であるアルコールR4OH、R5OH及びR6OHから誘導する。
【0016】
残基R4、R5及びR6の例は、それぞれ互いに無関係に、C1−C4−アルキルであり、本明細書では、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル及びt−ブチルであり、好ましくはメチル、エチル及びn−ブチルであり、殊に好ましくはメチル及びn−ブチルであり、とりわけメチルである。
【0017】
残基R4、R5及びR6は同じか又は異なっていてよく、2種以下の異なる残基であることが好ましい。
【0018】
好ましい化合物(II)は、残基Y1及びY2の少なくとも1個、特に好ましくは2個が、基−(CO)−O−R4若しくは−(CO)−O−R5である化合物である。好ましい化合物(I)は、残基Z1及びZ2の少なくとも1個、特に好ましくは2個が、基−(CO)−X1−R1若しくは−(CO)−X2−R2である化合物である。
【0019】
殊に好ましく使用される1,3,5−トリアジンカルバメート(II)は、1,3,5−トリアジン(トリメチル)カルバメート、1,3,5−トリアジン(トリエチル)カルバメート、1,3,5−トリアジン(トリ−n−ブチル)カルバメート又は混合されたメチル/n−ブチル−1,3,5−トリアジンカルバメートである。
【0020】
使用される1,3,5−トリアジンカルバメートの製造は本発明によれば重要ではなく、例えばDE−A110151564号又はWO97/08235号の3頁9〜22行に記載されているとおりに実施してよい。
【0021】
残基R1−X1、R2−X2及びR3−X3は、アルコールR1OH、R2OH及びR3OH若しくはアミンR1NH2、R2NH2及びR3NH2から誘導する。
【0022】
本発明にかかる方法においては、アルコールR1OH、R2OH及びR3OH若しくはアミンR1NH2、R2NH2及びR3NH2の最小の沸点と、アルコールR4OH、R5OH及びR6OHの最大の沸点との差が少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃、特に好ましくは少なくとも60℃であることが特に好ましい。
【0023】
残基R1、R2及びR3は、例えばC1−C18−アルキル、場合により1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換のイミノ基で中断されたC2−C18−アルキル、C2−C18−アルケニル、C6−C12−アリール、C5−C12−シクロアルキル又は酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有する5員若しくは6員の複素環であり、上述の残基はそれぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されていてよく、
並びに更に残基
−(CO)−R7、−(CO)−O−R7又は−(CO)−(NH)−R7
[式中、R7は、C1−C18−アルキル、場合により1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換のイミノ基で中断されたC2−C18−アルキル、C2−C18−アルケニル、C6−C12−アリール、C5−C12−シクロアルキル又は酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有する5員若しくは6員の複素環であってよく、上述の残基はそれぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されていてよい]である。
【0024】
この場合、C1−C18−アルキル及び場合により1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換のイミノ基で中断されたC2−C18−アルキルは、例えば場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されたC1−C18−アルキルであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、1,1−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、α,α−ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)−エチル、p−クロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、p−メトキシベンジル、m−エトキシベンジル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、2−ブトキシカルボニルプロピル、1,2−ジ−(メトキシカルボニル)−エチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシプロピル、2−オクチルオキシエチル、クロロメチル、2−クロロエチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1−ジメチル−2−クロロエチル、2−メトキシイソプロピル、2−エトキシエチル、ブチルチオメチル、2−ドデシルチオエチル、2−フェニルチオエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、6−アミノヘキシル、2−メチル−アミノエチル、2−メチルアミノプロピル、3−メチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチル、6−メチルアミノヘキシル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−ジメチルアミノブチル、6−ジメチルアミノヘキシル、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルエチル、2−フェノキシエチル、2−フェノキシプロピル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシ−ヘキシル、2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、6−メトキシヘキシル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル又は6−エトキシヘキシルであり、
場合により1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換のイミノ基で中断されたC2−C18−アルキルは、例えば5−ヒドロキシ−3−オキサ−ペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−ヒドロキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−ヒドロキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−ヒドロキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−ヒドロキシ−5−オキサ−ノニル、14−ヒドロキシ−5,10−オキサ−テトラデシル、5−メトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−メトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサ−ノニル、14−メトキシ−5,10−オキサ−テトラ−デシル、5−エトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−エトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサ−ノニル又は14−エトキシ−5,10−オキサ−テトラデシルである。
【0025】
酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又はイミノ基の数は、限定されるものではない。この数は、一般的に、前記の残基中において5個以下、有利には4個以下、特に有利には3個以下である。
【0026】
更に、2個のヘテロ原子の間には、一般的に少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の炭素原子が存在する。
【0027】
置換若しくは非置換のイミノ基は、例えばイミノ、メチルイミノ、イソプロピルイミノ、n−ブチルイミノ又はt−ブチルイミノであってよい。
【0028】
更に、場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されたC2−C18−アルケニルは、例えばビニル、1−プロペニル、アリル、メタリル、1,1−ジメチルアリル、2−ブテニル、2−ヘキセニル、オクテニル、ウンデセニル、ドデセニル、オクタデセニル、2−フェニルビニル、2−メトキシビニル、2−エトキシビニル、2−メトキシアリル、3−メトキシアリル、2−エトキシアリル、3−エトキシアリル又は1−若しくは2−クロロビニルであり、
場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されたC6−C12−アリールは、例えばフェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−ブロモフェニル、2−又は4−ニトロフェニル、2,4−又は2,6−ジニトロフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル又はエトキシメチルフェニルであり、
場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されたC5−C12−シクロアルキルは、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル、並びに飽和又は不飽和の二環系、例えばノルボルニル又はノルボルネニルであり、かつ
酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有する5員若しくは6員の複素環は、例えばフリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニル又はt−ブチルチオフェニルである。
【0029】
本発明の一実施形態においては、アルコールR1OH、R2OH及びR3OHは、モノオール、すなわち厳密に1個のヒドロキシ官能基(−OH)を有するアルコールである。
【0030】
好ましいモノオールR1OH、R2OH及びR3OHは、n−ブタノール、s−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−プロパンジオールモノメチルエーテル、ラウリルアルコール(1−ドデカノール)、ミリスチルアルコール(1−テトラデカノール)、セチルアルコール(1−ヘキサデカノール)、ステアリルアルコール(1−オクタデカノール)、9−シス−オクタデセン−1−オール(オレイルアルコール)、9−トランス−オクタデセン−1−オール、9−シス−オクタデセン−1,12−ジオール(リシノールアルコール)、オール−シス−9,12−オクタデカジエン−1−オール(リノレイルアルコール)、オール−シス−9,12,15−オクタデカトリエン−1−オール(リノレニルアルコール)、1−エイコサノール(アラキジルアルコール)、9−シス−エイコセン−1−オール(ガドレイルアルコール)、1−ドコサノール(ベヘニルアルコール)、1,3−シス−ドコセン−1−オール、1,3−トランス−ドコセン−1−オール(ブラシジルアルコール)、シクロペント−2−エン−1−オール、シクロペント−3−エン−1−オール、シクロへクス−2−エン−1−オール又はアリルアルコールである。
【0031】
更に、このアルコールは、式
8−O−[−Xi−]n−H
[式中、R8は、C1−C18−アルキル、好ましくはC1−C4−アルキルであってよく、
nは、1〜50、好ましくは1〜30、特に好ましくは1〜20、殊に好ましくは2〜10の正の整数であり、かつ
それぞれのXiは、i=1〜nであり、これらは互いに無関係に、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から、好ましくは、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH(CH3)−O−及び−CH(CH3)−CH2−O−の群から選択されていてよく、特に好ましくは−CH2−CH2−O−であってよく、
その際、Phはフェニルであり、Vinはビニルである]のアルコキシ化されたモノオールであってよい。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態においては、このモノオールは、少なくとも1個、例えば1〜3個、好ましくは1〜2個、殊に好ましくは1個の重合性基と厳密に1個のヒドロキシ基とを有する化合物である。重合性基は、例えばビニルエーテル基、アクリレート基又はメタクリレート基であり、好ましくは(メタ)アクリレート基であり、特に好ましくはアクリレート基である。
【0033】
少なくとも1個の重合性基と厳密に1個のヒドロキシ基とを有する化合物の例は、式
(III) H2C=CR9−CO−O−R10−OH、
(IV) H2C=CR9−CO−O−[−Xi−]k−H、又は
(V) H2C=CH−O−R10−OH
[式中、R9は、水素又はメチルであり、好ましくは水素であり、
10は、2価の直鎖状又は分枝鎖状のC2−C18−、好ましくはC2−C12−、特に好ましくはC2−C8−、殊に好ましくはC2−C6−アルキレン残基であり、
は、上述の意味と同様の意味であり、かつ
kは、1〜20、好ましくは2〜15、特に好ましくは2〜10、殊に好ましくは2〜5の正の整数である]の化合物である。
【0034】
10の例は、1,2−エチレン、1,2−又は1,3−プロピレン、1,2−、1,3−又は1,4−ブチレン、1,6−ヘキシレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、1,2−ジメチル−1,2−エチレン、フェニルエチレンであり、好ましくは1,2−エチレン、1,2−又は1,3−プロピレン、1,4−ブチレン又は1,6−ヘキシレンであり、特に好ましくは1,2−エチレン、1,2−プロピレン又は1,4−ブチレンであり、殊に好ましくは1,2−エチレンである。
【0035】
少なくとも1個の重合性基と厳密に1個のヒドロキシ基とを有する好ましい化合物は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2〜10個、好ましくは2〜5個でエトキシ化された(メタ)アクリル酸並びにペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレートである。
【0036】
本発明の更なる一実施形態においては、アルコールR1OH、R2OH及びR3OHは、ジオール又はポリオール、すなわち2個以上、好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜4個、殊に好ましくは2〜3個、なかんずく好ましくは2個のヒドロキシ官能基(−OH)を有するアルコールであってよい。
【0037】
ジオール又はポリオールの例は、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ブト−2−エン−1,4−ジオール、ブト−2−イン−1,4−ジオール、トリシクロデカンジメタノール、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリトリトール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチルオクタン−1,3−ジオール、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールS、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、ソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリトリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトール、イソマルト、1,2−、1,3−又は1,4−アミノフェノール、1,2−、1,3−又は1,4−ビスヒドロキシメチルベンゼン、2−、3−又は4−ヒドロキシ安息香酸、2−、3−又は4−アミノ安息香酸であり、このそれぞれは場合によりアルコキシ化、好ましくはエトキシ化及び/又はプロポキシ化、特に好ましくはエトキシ化されていてよく、モル質量162〜2000のポリ−THF、モル質量134〜1178のポリ−1,3−プロパンジオール又はモル質量106〜1000のポリエチレングリコールである。
【0038】
特定の一実施形態においては、アルコールR1OH、R2OH及びR3OHの少なくとも1種はポリエーテルオール又はポリエステルオールから選択されていてもよく、但し同時にアルコールR1OH、R2OH及びR3OHの少なくとも1種が少なくとも1個の重合性基と厳密に1個のヒドロキシ基とを有する上述のモノオールの1種である。
【0039】
ポリエステルオールとしては、例えばポリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸と上述のポリオールとのエステル化により製造することができるポリエステルオールが挙げられる。
【0040】
かかるポリエステルオールのための出発物質は、当業者には知られている。ポリカルボン酸としては、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はテトラヒドロフタル酸、その異性体及び水素化生成物、並びにエステル化可能な誘導体、例えば上述の酸の無水物又はジアルキルエステル、例えばC1−C4−アルキルエステル、好ましくはメチル−、エチル−、又はn−ブチルエステルを使用することが好ましい。
【0041】
ヒドロキシ基を有するカルボン酸又はラクトンとしては、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレン酸、ピバロラクトン又はε−カプロラクトンが挙げられる。ポリオールとしては、上述の多官能性アルコール、好ましくはネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ジメチロールプロピオン酸又はジメチロール酪酸が挙げられる。
【0042】
このポリエステルオールの好ましい分子量は、5000g/モルまで、特に好ましくは3000g/モルまで、殊に好ましくは500〜2000g/モル、なかんずく好ましくは500〜1500g/モルである。
【0043】
本発明の更なる一実施態様においては、アミンR1NH2、R2NH2及びR3NH2は、モノアミン、すなわち厳密に1個のアミノ官能基(−NH2)を有するアミンであってよい。
【0044】
このアミンは、例えばメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン又はラウリルアミンであってよく、更にはシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロドデシルアミン、モノエタノールアミン、1,2−プロパノールアミン、1,3−プロパノールアミン、1,4−ブタノールアミン、1,6−ヘキサノールアミン及びアミノエチルエタノールアミンであってよい。
【0045】
好ましくは反応を少なくとも1種のモノアミン、モノオール又は少なくとも1種のモノオールと少なくとも1種のポリオールとからの混合物の存在下で実施し、特に好ましくは少なくとも1種のモノオール又は少なくとも1種もモノオールと少なくとも1種のポリオールとからの混合物の存在下で、殊に好ましくは厳密に1種のモノオール又は厳密に1種のモノオールと厳密に1種のポリオールとからの混合物の存在下で実施する。
【0046】
本発明によりこの反応に使用される触媒は、スズ化合物、セシウム塩、アルカリ金属炭酸(水素)塩及び第3級アミンを有する群から選択される。
【0047】
スズ化合物は、全種の有機金属スズ化合物、好ましくはスズ−(II)−n−オクタノエート、スズ−(II)−2−エチル−ヘキサノエート、スズ−(II)−ラウレート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート又はジオクチルスズジアセテートであり、特に好ましくはスズ(II)−n−オクタノエート、スズ−(II)−2−エチル−ヘキサノエート、スズ−(II)−ラウレート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートであり、殊に好ましくはジブチルスズオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートであり、なかんずく好ましくはジブチルスズジラウレートである。
【0048】
しかしながらスズ化合物は毒性学的に懸念されており、従って本発明によれば、特にこれらが反応混合物中に残留することはあまり好ましくない。これに対して、セシウム塩及びアルカリ金属炭酸(水素)塩は懸念がない。
【0049】
この場合、好ましいセシウム塩は、以下の陰イオンを含有するセシウム塩である:
-、Cl-、ClO-、ClO3-、ClO4-、Br-、I-、IO3-、CN-、OCN-、NO2-、NO3-、HCO3-、CO32-、S2-、SH-、HSO3-、SO32-、HSO4-、SO42-、S222-、S242-、S252-、S262-、S272-、S282-、H2PO2-、H2PO4-、HPO42-、PO43-、P274-、(OCm2m+1-、(Cm2m-12-、(Cm2m-32-並びに(Cm+12m-242-で示され、その式中、mは1〜20の数である陰イオンである。
【0050】
この場合、陰イオンが式(Cm2m-12-、並びに(Cm+12m-242-で示され、その式中、mが同様に1〜20であるセシウムカルボキシレートが特に好ましい。殊に好ましいセシウム塩は、陰イオンとして、一般式(Cm2m-12-で示され、その式中、mは1〜20の数であるモノカルボキシレートを有する。これに関しては、特にホルメート、アセテート、プロピオネート、ヘキサノエート及び2−エチルヘキサノエートが挙げられ、セシウムアセテートが殊に好ましい。
【0051】
このセシウム塩は、固体の形で、又は溶解した形でバッチに添加してよい。溶剤としては、極性の非プロトン性溶剤又はプロトン性溶剤が好適である。水の他に、アルコールが特に好適である;ポリオール、例えばエタン−、プロパン−又はブタンジオール及びグリコールエーテルが殊に好適である。
【0052】
反応媒質中のセシウム塩の溶解度を改善するために、これを場合により相転移触媒と一緒に使用してよい。好適な相転移触媒は、例えばクラウンエーテル、例えば18−クラウン−6又はテトラアルキルアンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウムブロミドである。
【0053】
アルカリ金属炭酸(水素)塩は、例えば炭酸塩Li2CO3、Na2CO3及びK2CO3並びに炭酸水素塩LiHCO3、NaHCO3及びKHCO3であり、好ましくはNa2CO3及びK2CO3であり、特に好ましくはK2CO3である。
【0054】
第3級アミンは、例えばトリオクチルアミン、トリドデシルアミン、トリベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1−メチルピロール、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである。
【0055】
好ましい触媒は、セシウム塩及びアルカリ金属炭酸(水素)塩、特に好ましくはセシウム塩である。
【0056】
更に、触媒として、アルコラート(例えば、C1−C4−アルキルアルコールのナトリウム−又はカリウムアルコラート、好ましくはナトリウム−又はカリウム− −メタノラート及び−エタノラート)、水酸化物(例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)2)、カルボキシレート(例えば、C1−C4−アルキルカルボン酸のナトリウム−若しくはカリウム塩又はClCH2COONa)、酸化物(例えばCaO、MgO、ZnO、Tl23、PbO)、ホスフィン(例えばPPh3)、亜鉛塩(ZnCl2)及びイオン交換体(強アルカリ性又は弱アルカリ性の陰イオン交換体、例えばDOWEX(R)MSA−1)が考えられる。
【0057】
この触媒は、慣用的には、出発化合物(II)に対して0.001〜0.3モル%、好ましくは0.005〜0.25モル%、特に好ましくは0.01〜0.2モル%、殊に好ましくは0.02〜0.1モル%の量で使用する。
【0058】
反応は、本発明によれば、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも60℃、殊に好ましくは少なくとも70℃の温度で実施する。
【0059】
この反応温度は、好ましくは分離されるべきアルコールの沸点より高い。
【0060】
本発明によれば、温度の上限は、一般的に120℃以下、好ましくは110℃以下である。
【0061】
触媒を用いない反応は、許容され得る転化率を得るために一般的に少なくとも110℃を必要とし、良好な転化率は一般的に120〜130℃ではじめて達せられる。しかしながら、かかる高温によりしばしば着色された生成物が得られる。特に感受性を示す基体、例えば重合性モノオール又はポリオールは、130℃より高い温度で熱重合の傾向があり、従って技術水準から公知の加熱反応では製造することができなかった。
【0062】
従って、本発明にかかる方法は、少なくとも1個の重合性基を有する1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素の製造に有利に利用することができる。
【0063】
重合性化合物を使用するのであれば、この反応は好ましくはラジカル安定剤の存在下で実施してよい。好適なラジカル安定剤は当業者に知られており、4−メトキシフェノール(100〜4000ppm)、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン(50〜1000ppm)、フェノチアジン(10〜500ppm)又はトリフェニルホスフィット(50〜1000ppm)が好ましい。
【0064】
本発明にかかる反応の利点は、本発明にかかる触媒の添加により、他の点では同じ条件下で同じか又はより短い反応時間で、かつ少なくとも同じ転化率で、触媒を用いない反応と比べて反応温度を少なくとも10℃だけ、好ましくは少なくとも15℃だけ、特に好ましくは少なくとも20℃だけ下げることができることである。
【0065】
この反応時間は、基質に応じて異なり、かつ15分〜12時間、好ましくは30分〜10時間、特に好ましくは45分〜8時間、殊に好ましくは1〜7時間であってよい。
【0066】
使用されるアルコールR1OH、R2OH及びR3OH若しくはアミンR1NH2、R2NH2及びR3NH2と、反応されるべきカルバメート基との化学量論比は、一般的に、0.5〜1.5:1モル/モル、好ましくは0.7〜1.3:1モル/モル、特に好ましくは0.8〜1.2:1モル/モル、殊に好ましくは0.8〜1.1:1モル/モル、なかんずく好ましくは0.9〜1:1モル/モル、とりわけ0.95〜1.0:1モル/モルである。
【0067】
この反応は、塊状でか又は好適な溶剤、すなわち1,3,5−トリアジンカルバメート又は−尿素と反応しない溶剤中で実施することができる。この溶剤は、例えばアセトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、C1−C4−アルキレンカーボネート、特にエチレンカーボネート、1,2−又は1,3−プロピレンカーボネート、THF、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジオキソラン、イソブチル−メチルケトン、エチルメチルケトン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、パラフィン、ナフサ、鉱油又は石油分画である。
【0068】
この反応は、塊状で実施することが好ましい。
【0069】
上述の方法により達成される転化率は、一般的に少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、殊に好ましくは少なくとも80%である。
【0070】
この反応は、反応条件下で不活性のガス又はガス混合物中で実施してよく、例えば酸素含有率が10容量%未満、好ましくは8容量%未満、特に好ましくは7容量%未満のガス混合物、好ましくは窒素、アルゴン、ヘリウム、窒素−希ガス混合物、二酸化炭素又は一酸化炭素であり、特に好ましくは窒素である。
【0071】
本発明にかかる方法の好ましい実施形態においては、遊離する低級アルコールR4OH、R5OH、R6OHは好適に除去され、これにより、生成物のために、生ずる反応平衡を変化させる。
【0072】
この低級アルコールR4OH、R5OH、R6OHの除去は、例えば蒸留、ストリッピング、減圧、共沸除去、吸着、透析蒸発及び膜を介する拡散によって実施してよい。
【0073】
好ましくは、場合により減圧下での留去であり、これは場合により、反応条件下で不活性のガスでのストリッピングにより促進してよい。
【0074】
ストリッピングのために、反応条件下で不活性のガス又はガス混合物は、この反応混合物によって、例えばバブリングによって導通させてよい。
【0075】
吸着は、例えば分子ふるい(孔径が例えば約3〜10オングストロームの範囲内)を用いて実施してよい。拡散は、例えば好適な半透膜を用いて実施してよい。
【0076】
本発明によれば、反応は、連続的、不連続的又は半連続的に実施してよく、不連続的又は半連続的に実施することが好ましい。
【0077】
このために、例えば一般的には式(II)の出発物質を装入し、そして所望の反応温度に上昇させる。
【0078】
所望の反応温度に達する前か又は達した後に、触媒を少なくとも部分的に添加してよく、そしてアルコール/アミンR1XH、R2XH、R3XHを完全に、分けて添加するか又は連続的に添加する。触媒が依然として完全には添加されていない場合には、次いでこれを同様に分けて添加する。
【0079】
この反応過程での反応温度は、反応開始時の温度と比べて例えば少なくとも10℃だけ、好ましくは少なくとも15℃だけ、特に好ましくは少なくとも20℃だけ高めることが有利であり得る。
【0080】
この反応過程は例えば追跡してよく、遊離したアルコールR4OH、R5OH及びR6OHの量を追跡し、そして所望の転化率になった際に停止する。
【0081】
反応は、例えば冷ますことによってか又は溶剤を用いて直接的に冷却するによって停止させてよい。
【0082】
好ましくは、この反応は、例えば撹拌、ノズル導入によってか又はポンプ循環路によって完全混合することができる逆混合の反応容器内で実施してよい。
【0083】
温度調節は、反応器壁部を介して実施するか又はポンプ循環路内に存在する熱交換器によって実施してよい。
【0084】
遊離した低級アルコールR4OH、R5OH及びR6OHを蒸留及び/又はストリッピングにより除去するのであれば、この反応器に、一般的に2〜10の理論段を満たす充填塔又は段塔を設けてよい。
【0085】
低級アルコールの除去を促進するために、わずかな減圧をかけてよく、例えばこの反応を200hPaないし常圧、好ましくは300hPaないし常圧、特に好ましくは500hPaないし常圧、殊に好ましくは800hPaないし常圧、なかんずく好ましくは常圧の圧力で実施してよい。
【0086】
反応完了後に、この反応混合物を更に洗浄及び/又は脱色に供してよい。
【0087】
洗浄のために、この反応混合物を、洗浄液を備えた洗浄装置内で、例えば水、又は5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%の食塩溶液、塩化カリウム溶液、塩化アンモニウム溶液、硫酸ナトリウム溶液又は硫酸アンモニウム溶液、好ましくは水か又は食塩溶液で処理する。
【0088】
この洗浄は、例えば攪拌容器又は別の従来の装置、例えば塔か又はミキサーセトラー装置内で実施してよい。
【0089】
必要であれば、この反応混合物を、例えば活性炭又は金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコン、酸化ホウ素又はこれらの混合物を、例えば0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜10質量%の量で、例えば10〜100℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは30〜60℃の温度で用いる処理によって脱色に供してよい。
【0090】
この脱色は、粉末形又は顆粒形の脱色剤を反応混合物に添加し、次いで濾過することによってか又はこの反応混合物を、任意の好適な成形体の形の脱色剤堆積物上を通過させることによって実施してよい。
【0091】
本発明の利点は、本発明にかかる触媒を用いる方法の実施により、完全に加熱による方法の実施における場合と比べて少ない出発生成物中に含まれるカルバメート基−COOR4、−COOR5若しくは−COOR6を加水分解し、従って出発生成物としての1,3,5−トリアジンカルバメートの使用の際に、本発明にかかる触媒を用いる方法の実施においては、触媒を用いない加熱による反応の実施の場合と比べて少ない割合の2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ビスカルバメートが得られることである。この2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ビスカルバメートは、結晶化の傾向があり、従ってすなわち生成物中での沈殿の傾向があり、かつこうして精製されていない生成物が塗料層中で使用された場合に光学的欠陥をもたらすことがある。
【0092】
本発明にかかる方法により製造された1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素は、種々の基材、例えば木材、木製板、紙、板紙、厚紙、布、革、フリース、プラスチック表面、ガラス、セラミック、鉱物建築材料、金属又は被覆金属の被覆に使用することができる。
【0093】
本発明により製造された1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素を被覆剤中に使用する際には、特に自動車補修又は大型車塗装の領域内の下塗剤、充填剤、着色された上塗り塗料及び透明塗料中に使用することができる。かかる被覆剤は、特に高度な適用安全性、耐候性、光学的効果、耐溶剤性、耐化学薬品性及び耐水性が必要とされる用途、例えば自動車補修及び大型車塗装に好適である。
【0094】
この被覆物は、加熱及び/又は(ラジカル重合性基を含有する場合には)化学線放射によって硬化させることができる。
【0095】
この化学線硬化による被覆物の硬化は、光開始剤の使用が必要であってよい。
【0096】
この被覆物の熱硬化のために、この配合物にポリオール成分を添加し、その結果、架橋が生ずる。
【0097】
本明細書中においては、使用されるppmの記載及び%の記載は、特に記載がない限り、質量%及び質量ppmを示す。
【0098】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
実施例
比較例1
100mlのn−ブタノール中に、1gの2,4,6−トリス(メチルカルバモイル)−1,3,5−トリアジンを溶解させ、そして110℃で撹拌した。
【0100】
280分後の転化率:2,4,6−トリス(ブチルカルバモイル)−1,3,5−トリアジン78%。この2,4,6−トリス(ブチルカルバモイル)−1,3,5−トリアジンの転化率は、HPLCを用いて測定した。
【0101】
実施例1
蒸留橋とリービッヒ冷却器と撹拌機とを備えた250mlの4首反応フラスコ中に、40.5gのn−ブタノールを装入し、そして0.5mlのセシウムアセテートのブタノール溶液(2.5mg/l)を計量供給した。
【0102】
内部温度が110℃に達した後に、2.50gの2,4,6−トリス(メチルカルバモイル)−1,3,5−トリアジンを撹拌導入し、そして溶解させた。
【0103】
生じたメタノールを留去した。
【0104】
280分後の転化率:2,4,6−トリス(ブチルカルバモイル)−1,3,5−トリアジン85%(HPLC)。
【0105】
比較例2
蒸留橋とリービッヒ冷却器と撹拌器とを備えた250mlの4首反応フラスコ中に、4.74gのn−ブチルアセテート、6.0gの2,4,6−トリス(メチルカルバモイル)−1,3,5−トリアジン、6.97gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、12.5mgの4−メトキシフェノール、4mgの2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール及び0.3mgのフェノチアジンを溶解させ、そして内部温度を110℃まで上昇させた。生じたメタノールを留去した。
【0106】
300分後の転化率:2ーヒドロキシエチルアクリレート25%、2,4,6−トリス(2−エトキシアクリラトカルバモイル)−1,3,5−トリアジン4%(HPLC)。
【0107】
実施例2
蒸留橋とリービッヒ冷却器と撹拌器とを備えた250mlの4首反応フラスコ中に、12.32gのn−ブチルアセテート、6.0gの2,4,6−トリス(メチルカルバモイル)−1,3,5−トリアジン、6.97gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、12.5mgの4−メトキシフェノール、4mgの2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール及び0.3mgのフェノチアジン並びに0.96mgのセシウムアセテートを溶解させ、そして内部温度を110℃まで上昇させた。生じたメタノールを留去した。
【0108】
300分後の転化率:2ーヒドロキシエチルアクリレート50%、2,4,6−トリス(2−エトキシアクリラトカルバモイル)−1,3,5−トリアジン17%(HPLC)。
【0109】
実施例3〜10
表に挙げたように、0.136gのp−メトキシフェノール、0.045gのジ−t−ブチル−p−クレゾール、0.003gのフェノチアジン、0.016gのジブチルスズジラウレート(DBTL)、2,4,6−トリスアルコキシカルバモイル−1,3,5−トリアジン、ジオール及び/又はポリエステルオール並びにヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を30.0mlのメチルイソブチルケトン(MIBK)中に懸濁させた懸濁液を、4時間にわたって112℃の槽温度で撹拌した。次いで、この反応混合物を52℃の槽温度及び750ミリバールの減圧で2時間にわたって蒸留した。澄明な樹脂溶液が得られた。使用されたモル量は、この表から得ることができる。
【0110】
皮膜試験
この樹脂溶液を、メチルイソブチルケトンの添加によって粘度を約3.5Pasに調節し、そして光開始剤としての4質量%(固体含有率に対して)の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(Firma.Ciba Spezialitaetenchemie社製のDarocur(R)1173)と混合した。この被覆剤を、ボックスドクター(Kastenrakel)を用いてそれぞれの基材上に塗布し、そして30分にわたって60℃で乾燥させて溶剤を除去した。
【0111】
この被覆物を、30分の加熱により熱硬化させるか又はドープされていない高圧水銀ランプ(出力120W/cm)下で、ランプと基材との距離を12cm、コンベア速度を約10m/分にして、100℃の温度で露光させるか又は最初に露光させ、次いで熱硬化させた。
【0112】
この振子硬度(PD)は、DIN53157により測定し、これは被覆物硬度の尺度である。この振子硬度は、振子が静止するまでの秒(s)で示す。この値が大きければ、硬度が大きいことを意味する。振子硬度の測定のための皮膜を、ボックスドクターを用いてガラス上に施与した。この硬化前の層厚は、100μmであった。
【0113】
このエリクセン押出度(ET)は、DIN53156により測定し、これは可撓性及び弾性の尺度である。このエリクセン押出値は、ミリメートル(mm)で示す。この値が大きければ、可撓性が大きいことを意味する。エリクセン押出度の測定のための皮膜を、スパイラルドクター(Spiralrakel)を用いて板上に施与した。この硬化前の層厚は、50μmであった。
【0114】
【表1】

【0115】
1) 2,4,6−トリス(メトキシカルバモイル)-1,3,5−トリアジン
2) 2,4,6−トリス(メトキシ/ブトキシ−カルバモイル)−1,3,5−トリアジン(モル比メチル:ブチル=60:40)
A 1モルのアジピン酸、1モルのイソフタル酸及び2モルの1,6−ヘキサンジオールからのモル質量約1000g/モルのポリエステル
B 1,4−ブタンジオール
これらの実施例は、完全硬化が、熱架橋と光化学的架橋とを組み合わせることによってはじめて達成されることを示している。このように、本発明にかかる化合物を用いれば、顕著な硬度を示す被覆物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の1,3,5−トリアジンカルバメートを、式(II)
【化2】

の1,3,5−トリアジンカルバメートから製造するにあたり、
これらの式中、Y1及びZ1は、両方とも水素であるか、又はY1は式−(CO)−O−R4の基であり、かつZ1は式−(CO)−X1−R1の基であり、
2及びZ2は、両方とも水素であるか、又はY2は式−(CO)−O−R5の基であり、かつZ2は式−(CO)−X2−R2の基であり、
1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ互いに無関係にアルコール又はアミンの残基であり、かつ
1、X2及びX3は、それぞれ互いに無関係に酸素又は非置換の窒素(NH)である方法において、
この反応を、40〜120℃の温度で、かつ
スズ化合物、セシウム塩、アルカリ金属炭酸(水素)塩及び第3級アミンを有する群から選択された少なくとも1種の触媒の存在下で実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
温度が60〜110℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、残基R1、R2及びR3が、互いに無関係にC1−C18−アルキル、場合により1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換のイミノ基で中断されたC2−C18−アルキル、C2−C18−アルケニル、C6−C12−アリール、C5−C12−シクロアルキル又は酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有する5員若しくは6員の複素環であり、上述の残基は、それぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されていてよく、
並びに更に残基
−(CO)−R7、−(CO)−O−R7又は−(CO)−(NH)−R7
[式中、R7は、C1−C18−アルキル、場合により1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換のイミノ基で中断されたC2−C18−アルキル、C2−C18−アルケニル、C6−C12−アリール、C5−C12−シクロアルキル又は酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有する5員若しくは6員の複素環であってよく、上述の残基はそれぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されていてよい]であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか1項に記載の方法において、アルコールR1OH、R2OH及びR3OH若しくはアミンR1NH2、R2NH2及びR3NH2の沸点と、アルコールR4OH、R5OH及びR6OHの最大の沸点との差が少なくとも20℃であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか1項に記載の方法において、アルコールR1OH、R2OH及びR3OHの少なくとも1種が、式
8−O−[−Xi−]n−H
[式中、R8は、C1−C18−アルキルであってよく、
nは、1〜50の正の整数であり、かつ
それぞれのXiは、i=1〜nであり、これらは互いに無関係に、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から選択されていてよく、
その際、Phはフェニルであり、Vinはビニルである]のアルコキシ化されたモノオールであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか1項に記載の方法において、アルコールR1OH、R2OH及びR3OHの少なくとも1種が、少なくとも1個の重合性基と厳密に1個のヒドロキシ基とを有するモノオールであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、少なくとも1個の重合性基と厳密に1個のヒドロキシ基とを有する化合物が、式
(III) H2C=CR9−CO−O−R10−OH、
(IV) H2C=CR9−CO−O−[−Xi−]k−H、又は
(V) H2C=CH−O−R10−OH
[式中、R9は、水素又はメチルであり、好ましくは水素であり、
10は、2価の直鎖状又は分枝鎖状のC2−C18−アルキレン残基であり、
は、請求項5に記載の意味と同様の意味であり、かつ
kは、1〜20の正の整数である]の化合物であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法において、アルコールR1OH、R2OH及びR3OHの少なくとも1種がポリエーテルオール又はポリエステルオールから選択されており、但し同時にアルコールR1OH、R2OH及びR3OHの少なくとも1種が少なくとも1個の重合性基と厳密に1個のヒドロキシ基とを有するモノオールであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか1項に記載の方法において、低級アルコールR4OH、R5OH及びR6OHを、反応混合物から蒸留により分離することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか1項に記載の方法により製造された1,3,5−トリアジンカルバメート及び−尿素を、木材、木製板、紙、板紙、厚紙、布、革、フリース、プラスチック表面、ガラス、セラミック、鉱物建築材料、金属及び被覆金属を有する群から選択された基材の被覆に用いる使用。

【公表番号】特表2007−532598(P2007−532598A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507713(P2007−507713)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003690
【国際公開番号】WO2005/100328
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】