説明

1,5−ジケトン類及びその製造方法

【課題】 各種化学製品の原料として有用な1,5−ジケトン類を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 芳香族化合物と、グルタル酸誘導体又は4−アロイル酪酸類を、固体酸触媒の存在下で反応させ、同一又は相異なる芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類を製造する。触媒としては、ゼオライト等の固体酸触媒を使用できる。ゼオライトとしては、ベータ型、Y型等のものを使用でき、シリカ/アルミナ比が2〜1000のものを使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一又は相異なる芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類及びその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族置換基を有するジケトン類は、医・農薬、光・電子材料あるいはそれらの合成中間体として利用されている重要な機能性化学品である。また、芳香族置換基を有するジケトン類の中の1,5−ジケトン類は、各種機能性物質・材料として有用性が高いピリジン誘導体(たとえば、非特許文献1〜3)やシクロペンタジエン誘導体(たとえば、非特許文献4、5、7)の合成中間体等として利用されている。
【0003】
このような1,5−ジケトン類の主要な製造法としては、2当量のアセトフェノン誘導体と芳香族アルデヒド、又は、1当量のアセトフェノンとビニルケトン誘導体、を、水酸化ナトリウムや水酸化バリウム等の塩基触媒存在下で反応させる方法が知られていた(たとえば、非特許文献1、3、5、6)。しかしながらこれら方法では、(1)塩基触媒の回収が難しく触媒の再利用が困難である、(2)水酸化バリウム等の塩基を使用する場合には触媒が高価である、等の問題点があった。
また、ケトン、ホルムアルデヒド及びアミンから得られるマンニッヒ塩基をケトンと反応させる方法が知られていた(たとえば、非特許文献7)が、(1)マンニッヒ塩基の製造が必要で工程が複雑である、(2)大量のアミン廃棄物が生成する、等の問題点があり、工業的に有利な製法とは言えなかった。
一方、1,5−ジケトン類の製法として、バイオリファイナリー産業におけるC5化合物としても知られるグルタル酸(ペンタン−1,5−ジカルボン酸)のジカルボン酸ジハロゲン化物と芳香族化合物とのルイス酸触媒存在下でのフリーデル・クラフツ型反応が知られていた(たとえば、非特許文献4,8)。この製法は、原料のグルタル酸や芳香族化合物を入手しやすいという利点を有するものの、(1)グルタル酸からそのカルボン酸ハロゲン化物への変換工程が必要である、(2)塩化アルミニウム等のルイス酸を大量に使用する、(3)腐食性が高いハロゲン化水素が廃棄物として大量に生成する、等の問題点があり、工業的により有利な製法が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.,2242(1961)
【非特許文献2】Synthesis,1(1970)
【非特許文献3】J.Chem.Soc.,Dalton Trans,2497(1992)
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.,84,2726(1962)
【非特許文献5】J.Org.Chem.,43,4090(1978)
【非特許文献6】Tetrahedron,63,8581(2007)
【非特許文献7】J.Am.Chem.Soc.,74,4923(1952)
【非特許文献8】Chem.Lett.,970(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、同一又は相異なる芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類をより効率的に製造することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(1)特定の固体酸触媒存在下での芳香族化合物とグルタル酸誘導体(グルタル酸又はその酸無水物等)との反応が効率よく進行し、2個の同一の芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類が収率よく得られる、(2)グルタル酸誘導体の代わりに4−アロイル酪酸誘導体を用いた場合にも反応が効率よく進行し、2個の同一又は相異なる芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類が得られる、及び(3)それらの反応がマイクロ波照射で加速され、より効率よく1,5−ジケトン類を製造できる、という三つの新規な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
〈1〉下記一般式(I)
1H (I)
(式中、R1は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、前記炭化水素環又は複素環の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される芳香族化合物と、下記一般式(IIA)
HOC−CHCHCH−COH (IIA)
(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
又は下記一般式(IIB)
【化1】

(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
で表されるグルタル酸誘導体を、固体酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(IIIA)
1CO−CHCHCH−COR1 (IIIA)
(式中、R1は前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が、式(IIA)又は式(IIB)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される1,5−ジケトン類の製造方法。
〈2〉上記一般式(IIA)又は一般式(IIB)の代わりに、下記一般式(IIC)
2CO−CHCHCH−COH (IIC)
(式中、R2は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基であり、前記炭化水素環又は複素環の水素原子及び/又はメチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される4−アロイル酪酸誘導体を用いることを特徴とする下記一般式(IIIB)
2CO−CHCHCH−COR1 (IIIB)
(式中、R1及びR2は前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が、式(IIC)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
の製造方法。
〈3〉前記の固体酸触媒として、ゼオライト、モンモリロナイト又はヘテロポリ酸を用いることを特徴とする〈1〉又は〈2〉に記載の製造方法。
〈4〉前記のゼオライトとして、ベータ型、Y型、モルデナイト型又はZSM−5型のゼオライトを使用することを特徴とする〈3〉に記載の製造方法。
〈5〉前記のゼオライトとして、シリカ/アルミナ比が2〜1000のゼオライトを使用することを特徴とする〈3〉又は〈4〉に記載の製造方法。
〈6〉反応をマイクロ波照射下で行うことを特徴とする〈1〉、〈2〉、〈3〉、〈4〉又は〈5〉に記載の製造方法。
〈7〉下記一般式(IV)で表される1,5−ジケトン類。
3CO−CHCHCH−COR4 (IV)
(式中、R3及びR4は、両者とも2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基、両者とも1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基、又は、片方がフェニル基で他方が2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、グルタル酸誘導体等をそれらのカルボン酸ハロゲン化物に変換しなくても反応が進行するとともに、固体酸触媒の分離・回収等が容易であるため、2,5−位に同一又は相異なる芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類を、大量の有害廃棄物を排出せずに、従来の方法に比べより効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、芳香族化合物とグルタル酸誘導体又は4−アロイル酪酸誘導体を、固体酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする。
本発明において、原料として使用する芳香族化合物は、下記一般式(I)
1H (I)
(式中、R1は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、前記炭化水素環又は複素環の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される炭化水素環系化合物又は複素環系化合物である。
【0009】
一般式(I)において、R1は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基である。
1が炭化水素環系の芳香族有機基の場合には、環内炭素数が好ましくは6〜22、より好ましくは6〜14であり、それら炭素環系の芳香族有機基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基等が挙げられ、それらの基を有する炭化水素環系芳香族化合物の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、ペンタセン等が挙げられる。
また、R1が複素環系の芳香族有機基の場合には、ヘテロ原子は硫黄、酸素原子等であり、環内炭素数が好ましくは4〜12、より好ましくは4〜8である。それら複素環系の芳香族有機基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられ、それらの基を有する複素環系芳香族化合物の具体例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等が挙げられる。
【0010】
一般式(I)においてR1はその環上の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよく、それらの基の具体例としては、メチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、デシル基等のような炭素数が1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基のような炭素数が1〜10のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子の他に、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基やオキシエチレンオキシ基等を挙げることができる。
したがって、それらの基を有する芳香族化合物の具体例としては、トルエン、アニソール、エトキシベンゼン、ブトキシベンゼン、メチルアニソール、フルオロアニソール、クロロアニソール、ブロモアニソール、ジヒドロベンゾフラン、1,4−ベンゾジオキサン等が挙げられる。
【0011】
また、上記芳香族化合物と反応させるグルタル酸誘導体は、下記一般式(IIA)
HOC−CHCHCH−COH (IIA)
(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
又は下記一般式(IIB)
【化2】

(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表されるグルタル酸誘導体である。
【0012】
一般式(IIA)又は一般式(IIB)で表されるグルタル酸誘導体は、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよく、それらの基の具体例としては、メチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクチル基等のような炭素数が1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ヘキシルオキシ基のような炭素数が1〜10のアルコキシ基、フッ素原子のようなハロゲン原子の他に、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基やオキシエチレンオキシ基等を挙げることができる。
したがって、それらグルタル酸誘導体の具体例としては、グルタル酸、2−又は3−メチルグルタル酸、2,2−又は3,3−ジメチルグルタル酸、グルタル酸無水物、2,2−又は3,3−ジメチルグルタル酸無水物等が挙げられる。
【0013】
一方、上記一般式(IIA)又は一般式(IIB)の代わりに、下記一般式(IIC)
2CO−CHCHCH−COH (IIC)
(式中、R2は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基であり、前記炭化水素環又は複素環の水素原子及び/又はメチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される4−アロイル酪酸誘導体を用いて反応を行うこともできる。
【0014】
一般式(IIC)において、R2は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基である。
2が炭化水素環系の場合には、環内炭素数が好ましくは6〜22、より好ましくは6〜14であり、またRが複素環系の場合には、ヘテロ原子は硫黄、酸素原子等であり、環内炭素数が好ましくは4〜12、より好ましくは4〜8である。それら芳香族有機基の具体例としては、一般式(I)におけるRの具体例として上記に例示したもの等が挙げられる。
したがって、それら4−アロイル酪酸誘導体の具体例としては、4−ベンゾイル酪酸、4−(4−クロロベンゾイル)酪酸、4−(4−ブロモベンゾイル)酪酸、4−(3−フルオロベンゾイル)酪酸、4−(4−メチルベンゾイル)酪酸、4−(4−メトキシベンゾイル)酪酸、4−(2−ナフチルカルボニル)酪酸、4−(2−チエニルカルボニル)酪酸、4−(2−フリルカルボニル)酪酸等が挙げられる。
【0015】
上記一般式(IIA)又は一般式(IIB)のグルタル酸誘導体に対する芳香族化合物のモル比は任意に選ぶことができるが、上記一般式(IIA)又は一般式(IIB)のグルタル酸誘導体に対する1,5−ジケトン類の収率を考慮すれば、通常0.4以上300以下であり、より好ましくは0.5以上200以下であり、さらに好ましくは0.5以上150以下である。
同様に、上記一般式(IIC)の4−アロイル酪酸誘導体に対する芳香族化合物のモル比も任意に選ぶことができるが、上記一般式(IIC)の4−アロイル酪酸誘導体に対する1,5−ジケトン類の収率を考慮すれば、通常0.4以上300以下であり、より好ましくは0.5以上200以下であり、さらに好ましくは0.5以上150以下である。
【0016】
本発明によれば、上記一般式(I)の芳香族化合物と上記一般式(IIA)又は一般式(IIB)で表されるグルタル酸誘導体との反応により、下記一般式(IIIA)
1CO−CHCHCH−COR1 (IIIA)
(式中、R1は前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が、式(IIA)又式(IIB)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類を製造できる。
また、上記一般式(I)の芳香族化合物と上記一般式(IIC)で表されるアロイル酪酸誘導体との反応では、下記一般式(IIIB)
2CO−CHCHCH−COR1 (IIIB)
(式中、R1及びR2は前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が、式(IIC)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される芳香族置換基を有する1,5−ジケトン類を製造できる。
一般式(IIIA)及び一般式(IIIB)中のR1及びRの具体例としては、上記一般式(I)及び上記一般式(IIC)で例示したもの等を挙げることができる。
さらに本発明では、下記一般式(IV)で表される新規な1,5−ジケトン類を提供できる。
3CO−CHCHCH−COR4 (IV)
(式中、R3及びR4は、両者とも2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基、両者とも1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基、又は、片方がフェニル基で他方が2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基である。)
上記一般式(IV)の1,5−ジケトン類は、2,3−ジヒドロベンゾフラン又は1,4−ベンゾジオキサンとグルタル酸誘導体との反応、2,3−ジヒドロベンゾフランと4−ベンゾイル酪酸との反応により製造できる。これらの新規な1,5−ジケトン類は、各種機能性物質・材料として有用性が高いピリジン誘導体やシクロペンタジエン誘導体の合成中間体等として利用できる。
【0017】
本発明の製造法では、上記一般式(I)の芳香族化合物の芳香環が反応性の異なる複数の反応点を有する場合、グルタル酸誘導体又は4−アロイル酪酸誘導体は、最も電子密度が高く立体障害が少ない環内炭素原子と優先的に反応する。
たとえば、アルコキシ置換基を有するベンゼン環では、グルタル酸誘導体又は4−アロイル酪酸誘導体はアルコキシ基に対してパラ位の炭素と優先的に反応して、p−アシル化体を主生成物として与える。さらに、2,3−ジヒドロベンゾフランのような芳香族化合物では、アルコキシ基に対してパラ位の炭素原子とアルキル基に対してパラ位の炭素原子が存在するが、電子供与性がより高いと考えられるアルコキシ基に対してパラ位の炭素原子が優先的に反応する。
以上のように、本発明の反応は、求電子置換反応で一般的に見られる位置選択性を示すが、触媒の構造も位置選択性に大きく影響する。たとえばゼオライト触媒のような規則的細孔を有する触媒は、細孔の形状や孔径等に基づく形状選択性を示すために、芳香環の位置選択的反応に対してとくに有利である。たとえば、一置換ベンゼンであるアニソールを原料に用いた場合には、立体障害が最も小さいp−アシル化体生成物を他の位置異性体に対して、通常98%以上の選択率で製造することができる。
【0018】
本発明では、フリーデル・クラフツ型の求電子置換反応等で使われる従来公知の各種の固体酸触媒を用いることができる。
それらの具体例としては、金属塩、金属酸化物等の固体無機物、酸性官能基を有する固体有機物等が挙げられる。
その中の固体無機物をより具体的に示せば、プロトン性水素原子あるいは金属カチオン(アルミニウム、チタン、ガリウム、鉄、セリウム、スカンジウム等)を有する、ゼオライト、モンモリロナイト、シリカ、ヘテロポリ酸やカーボン系素材を担体とする無機系固体酸が挙げられる。金属カチオンを有する固体無機物は、たとえば、市販のナトリウム型の固体無機物を、金属カチオンの水溶液で処理するなど、通常の方法により調製することができる。
また、固体有機物をより具体的に示せば、スルホ基を有するナフィオン(Nafion、登録商標、デュポン社より入手可能)、ダウエックス(Dowex、登録商標、ダウ・ケミカル社より入手可能)、アンバーライト(Amberlite、登録商標、ローム&ハス社より入手可能)等の酸性ポリマーや他の有機系固体酸が挙げられる。さらに、シリカ等にナフィオン等の有機系酸性化合物を担持した触媒(たとえば、Nafion SAC−13等)を用いることもでき、無機系固体酸と有機系固体酸を複数組み合わせて使用することもできる。
【0019】
触媒としてゼオライトを使用する場合、その種類としては、ベータ型、Y型、モルデナイト型、ZSM−5型、SAPO型等の基本骨格を有する各種のゼオライトが使用可能で、この中では、ベータ型、Y型、モルデナイト型が好ましく、ベータ型、Y型がより好ましい。
これらゼオライトにおいては、プロトン性水素原子を有するブレンステッド酸型のものや金属カチオンを有するルイス酸型のものなど、各種のゼオライトを使用できる。この中で、プロトン性水素原子を有するプロトン型のものは、H−ベータ型、H−Y型、H−SDUSY型、H−SUSY型、H−モルデナイト型、H−ZSM−5型等で表される。また、アンモニウム型のものである、NH−ベータ型、NH−Y型、NH−VUSY型、NH−モルデナイト型、NH−ZSM−5型等のゼオライトを焼成して、プロトン型に変換したものを使用することもできる。なお、上記プロトン型及びアンモニウム型のゼオライトで、H−SDUSY型、H−SUSY型、NH−VUSY型で表したものは、いずれもY型の基本骨格を有するものである。
さらに、ゼオライトのシリカ/アルミナ比については、反応条件に応じて各種の比を選択できるが、好ましくは2〜1000であり、より好ましくは5〜900、さらに好ましくは10〜800である。シリカ/アルミナ比の測定法は公知の方法を用いればよい。
【0020】
それらゼオライトとしては、市販品を含む各種のものを使用できる。市販品の具体例を示すと、ベータ型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CP811C、CP814N、CP7119、CP814E、CP7105、CP814C、CP811TL、CP814T、CP814Q、CP811Q、CP811E−75、CP811E、CP811C−300及びUSZ−1等、東ソー社より市販されているHSZ−930HOA及びHSZ−940HOA等、UOP社より市販されているUOP−Beta等が挙げられる。また、Y型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV760、CBV780、CBV720、CBV712及びCBV600等、東ソー社より市販されているHSZ−360HOA及びHSZ−320HOA等が挙げられる。さらに、モルデナイト型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されているCBV21A及びCBV90A等、東ソー社より市販されている、HSZ−660HOA、HSZ−620HOA及びHSZ−690HOA等が挙げられ、ZSM−5型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV5524G、CBV8020及びCBV8014等が挙げられる。
【0021】
原料に対する触媒量は任意に決めることができるが、重量比では、通常は0.0001〜100程度で、好ましくは0.001〜70程度、さらに好ましくは0.001〜50程度である。
【0022】
本発明の反応は、反応温度や反応圧力に応じて、液相又は気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。反応温度は、20℃以上、好ましくは20〜400℃、より好ましくは、20〜350℃である。さらに、反応圧力は、通常0.1〜100気圧で、好ましくは0.1〜80気圧、より好ましくは0.1〜60気圧である。反応時間は、反応温度、触媒量、反応装置の形態等に依存するが、1〜400分、好ましくは1〜320分、より好ましくは1〜240分程度である。
【0023】
また、反応を液相系で行う場合、溶媒の有無にかかわらず実施できるが、溶媒を用いる場合には、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン等の炭化水素、クロロベンゼン、1,2−又は1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−又は1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジブチルエーテル等のエーテル等、原料と反応するものを除いた各種の溶媒が使用可能で、2種以上混合して用いることもできる。また、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
【0024】
本発明の反応は、マイクロ波照射下で行うこともできる。本反応系では、共生成物である水や固体酸触媒の誘電損失係数が大きく、それらがマイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下では触媒表面からの水の脱着や固体酸触媒の活性化が促進され、反応をより効率的に進行させることが可能である。
反応をマイクロ波照射下で行う場合には、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
【0025】
マイクロ波照射反応では、接触式又は非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケールや種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3〜30GHzである。具体的な周波数帯としては、ISM周波数帯(産業、科学、医療の分野で使用できる電波法での周波数帯)として知られる、2.4GHz帯、5.8GHz帯等を利用できる。
【0026】
本発明の反応では、触媒として固体酸を使用しているため、反応後の触媒の分離・回収は、濾過、遠心分離等の方法により容易に行うことができる。また、生成した1,5−ジケトン類の精製も、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、各実施例における生成物の分析等で使用した装置は、ガスクロマトグラフ分析(GC)では島津製作所製 GC−2014、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)では島津製作所製 GCMS−QP2000plus、融点測定ではアズワン社製 ATM−02、元素分析ではCE INSTRUMENTS社製 EA1110、核磁気共鳴分析(NMR)では日本電子社製 JNM−LA600、赤外分光分析(IR)では日本分光社製 FT/IR−660plusである。
(実施例1)
アニソール(Ia) 20mmol、無水グルタル酸(IIa) 0.20mol、1,2−ジクロロベンゼン 1mL、H−ベータ型ゼオライト CP811C(ゼオリスト社製) 100mgの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波照射装置(CEM社製、Discover LabMate、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 300W)を用いて、攪拌しながら210℃で30分反応させた。生成物をガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ質量分析計で分析した結果、1,5−ビス(4−メトキシフェニル)−1,5−ペンタンジオン(IIIAa)が56.8%の収率で生成したことがわかった(表1参照)。
【0028】
(実施例2〜20)
反応条件(原料、触媒、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応及び分析を行い、生成物の収率を測定した結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
1) Ia:アニソール、Ib:2,3-ジヒドロベンゾフラン、Ic:1,4-ベンゾジオキサン、Id:チオフェン。
2) IIAa:グルタル酸、IIBa:グルタル酸無水物、IICa:4-ベンゾイル酪酸。
ゼオライトはすべて500℃で焼成後のものを使用。
3) CP811C:H-ベータ型ゼオライトCP811C(ゼオリスト社製)、UOP-Beta: H-ベータ型ゼオライト(UOP社製)、CP814N:NH4-ベータ型ゼオライトCP814N(ゼオリスト社製)、CP814Q:NH4-ベータ型ゼオライトCP814Q(ゼオリスト社製)、CP811E75:H-ベータ型ゼオライトCP811E-75(ゼオリスト社製)、CP811C300:H-ベータ型ゼオライトCP811E-75(ゼオリスト社製)、980HOA:H-ベータ型ゼオライトHSZ-980HOA(東ソー社製)、USZ-1:H-ベータ型ゼオライトUSZ-1(ゼオリスト社製)、CBV720:H-SDUSY型ゼオライトCBV720(ゼオリスト社製)、CBV780:H-SDUSY型ゼオライトCBV780(ゼオリスト社製)、CBV90A:H-モルデナイト型ゼオライトCBV90A(ゼオリスト社製)、CBV5524G:NH4-ZSM-5型ゼオライトCBV5524G(ゼオリスト社製)、Al-mont:Al3+含有モンモリロナイト、SAC-13:ナフィオンSAC13(デュポン社製)、CBV760:H-SDUSY型ゼオライトCBV760(ゼオリスト社製)。
4) Na+型モンモリロナイト(クニミネ工業製、クニピアF)をAl3+水溶液で処理して調製。
5) 1,2-DCB:1,2-ジクロロベンゼン。
6) MW1:マイクロ波反応装置(CEM社製、Discover LabMate)、MW2:マイクロ波反応装置(Biotage社製、Initiaor)、OB:オイルバス反応装置(理工科学産業社製、MH-5E)。
7) IIIAa:1,5-ビス(4-メトキシフェニル)-1,5-ペンタンジオン、IIIAb:1,5-ビス(2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル)-1,5-ペンタンジオン、IIIAc:1,5-ビス(1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)-1,5-ペンタンジオン、IIIBa:1-(4-メトキシフェニル)-5-フェニル-1,5-ペンタンジオン、IIIBb:1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル)-5-フェニル-1,5-ペンタンジオン、IIIBc:1-(1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)-5-フェニル-1,5-ペンタンジオン、IIIBd:1-フェニル-5-(2-チエニル)-1,5-ペンタンジオン。
8) ガスクロマトグラフ分析による原料のIIに対する収率。
【0031】
(実施例21〜40)
反応条件(原料、触媒、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応及び分析を行い、生成物の収率を測定した結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

1)〜8)は表1と同じ。
【0033】
(実施例41)
2,3−ジヒドロベンゾフラン(Ib) 40mmol、グルタル酸無水物(IIBa) 1.0mmol、1,2−ジクロロベンゼン 6mL、H−ベータ型ゼオライト CP811C(ゼオリスト社製) 500mgの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波反応装置(Biotage社製、Initiator、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 400W)を用いて攪拌しながら250℃で1時間反応させた。遠心分離器で固体を上澄み液と分離し、アセトン(8mL)とトルエン(10mL)で固体を洗浄した。上澄み液と洗浄液を合わせて、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=2/3)で生成物を分離した結果、1,5−ビス(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル)−1,5−ペンタンジオン(IIIAb)が0.52mmol(収率52%、淡黄色固体)得られた。
【0034】
IIIAbは文献未載の化合物であり、そのスペクトルデータ等は下記の通りであった。
融点: 131-132℃.
元素分析: C 75.02, H 6.01 (測定値);C 74.98, H 5.99 (計算値).
1H-NMR (CDCl3): δ 2.16 (quint, J = 7.0 Hz, 2H, CH2CH2CO),
3.02 (t, J = 7.0 Hz, 4H, CH2CO), 3.23 (t, J = 8.8 Hz, 4H, CH2CH2O),
4.65 (t, J = 8.8 Hz, 4H, CH2O), 6.79 (d, J = 8.4 Hz, 2H, 芳香環H), 7.82 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 2H, 芳香環H),7.86(d,
J = 1.8 Hz, 2H, 芳香環H).
13C-NMR (CDCl3): δ 19.4, 29.0,37.4, 72.1, 109.0, 125.4, 127.6, 130.0, 130.3, 164.3,198.5.
IR (KBr): ν 1677, 1604, 1491, 1435, 1415,1370,
1279, 1236, 1193, 1108, 976, 940, 818, 750, 639 cm-1.
GC-MS (EI,70eV): m/z (相対強度) 336 (M+,5),
162 (49), 147(100), 119 (15), 91 (34), 65 (20).
【0035】
(実施例42)
2,3−ジヒドロベンゾフラン(Ib) の代わりに1,4−ベンゾジオキサン(Ic)を用いる他は実施例41と同様に反応、後処理及び精製を行った結果、1,5−ビス(1,4−ベンゾジオキサン−6−イル)−1,5−ペンタンジオン(IIIAc)が0.50mmol(収率50%、淡黄色固体)得られた。
【0036】
IIIAcは文献未載の化合物であり、そのスペクトルデータ等は下記の通りであった。
融点: 141-142℃.
元素分析: C 68.53, H 5.44 (測定値);C 68.47, H 5.47 (計算値).
1H-NMR (CDCl3): δ 2.14 (quint, J = 7.0 Hz, 2H, CH2CH2CO),3.00
(t, J = 7.0 Hz, 4H, CH2CO), 4.25-4.33 (m, 8H, CH2O),6.87-6.92
(m, 2H, 芳香環H), 7.49-7.53 (m, 4H, 芳香環H).
13C-NMR (CDCl3): δ 19.2, 37.3, 64.1, 64.7, 117.2, 117.6, 122.2, 130.8, 143.3, 147.9,198.4.
IR (KBr): ν 1678, 1608, 1578, 1506, 1349,
1319, 1286, 1258, 1166, 1117, 1065, 988, 901, 874, 819, 808 cm-1.
GC-MS (EI, 70eV): m/z (相対強度) 368 (M+,7),
178 (52), 163 (100), 135 (25), 107 (35), 79 (22), 77 (11), 55 (11), 51 (15).
【0037】
(実施例43)
アニソール(Ia) 4mmol、グルタル酸無水物(IIBa) 0.50mmol、1,2−ジクロロベンゼン 2mL、H−ベータ型ゼオライト CP811C(ゼオリスト社製) 150mgの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波反応装置(CEM社製、Discover LabMate、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 300W)を用いて攪拌しながら210℃で30分反応させた。遠心分離器で固体を上澄み液と分離し、アセトン(2mL)とトルエン(2mLで2回)で固体を洗浄した。同じ反応と後処理を4回繰り返して行い、合計5回分の上澄み液と洗浄液を合わせて、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1/2)で生成物を分離した結果、(IIIAa)が0.75mmol(収率30%、淡黄色固体)得られた。
【0038】
(実施例44)
2,3−ジヒドロベンゾフラン(Ib) 9.1mmol、4−ベンゾイル酪酸(IICa) 1.0mmol、1,2−ジクロロベンゼン 10mL、H−ベータ型ゼオライト CP811C(ゼオリスト社製) 500mgの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波反応装置(Biotage社製、Inititor、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 400W)を用いて攪拌しながら200℃で3時間反応させた。遠心分離器で固体を上澄み液と分離し、トルエン(6mL)とアセトン(8mLで3回)で固体を洗浄した。同じ反応と後処理を繰り返して行い、合計2回分の上澄み液と洗浄液を合わせて、上澄み液と洗浄液を合わせて、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1/4)で生成物を分離した結果、1−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル)−5−フェニル−1,5−ペンタンジオン(IIIBb)が0.80mmol(収率40%、淡黄色固体)得られた。
【0039】
IIIBbは文献未載の化合物であり、そのスペクトルデータ等は下記の通りであった。
融点: 97-98℃.
元素分析: C 77.65, H 6.16 (測定値);C 77.53, H 5.16 (計算値).
1H-NMR (CDCl3): δ 2.18 (quint, J = 7.0 Hz, 2H, CH2CH2CO),
3.04 (t, J = 7.0 Hz, 4H, CH2CO), 3.10 (t, J = 7.0 Hz, 4H, CH2CO),
3.23 (t, J = 8.8Hz, 2H, CH2CH2O), 4.64 (t, J = 8.8
Hz, 2H, CH2O), 6.79 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 芳香環H),7.43-7.48
(m, 2H, 芳香環H), 7.53-7.57 (m, 1H, 芳香環H), 7.81-7.84 (m, 1H, 芳香環H), 7.85-7.88 (m,1H,
芳香環H), 7.96-8.00 (m,2H, 芳香環H).
13C-NMR(CDCl3): δ 19.1,29.0, 37.3, 37.7, 72.1, 109.0, 125.4, 127.6, 128.0, 128.5,130.0,
130.3, 133.0, 136.8, 164.3, 198.3, 200.0.
IR (KBr): ν 1681, 1669, 1602, 1492, 1438, 1411, 1376, 1279, 1239, 1192, 1113,
1071, 977, 936, 815, 740, 695 cm-1.
GC-MS (EI, 70eV): m/z (相対強度) 294 (M+, 5), 162 (29),
147 (100), 119 (12), 105 (23), 91 (26), 77 (28), 65 (16).
【0040】
実施例1及び実施例6においてマイクロ波照射装置の代わりにオイルバス加熱装置(理工科学産業社製、MH−5E)を用いて反応及び分析を行った実施例5及び実施例7では、IIIAaの収率はそれぞれ47.8%及び37.9%であり、それらの値はマイクロ波照射装置の反応で得られた56.8%及び50.7%よりも低かった。
このことは、マイクロ波照射を用いた反応の方が、同じ反応温度・時間でのオイルバスによる通常加熱の反応に比べ、IIIAaをより高い収率で与える傾向があることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の方法により、各種機能性化学品の中間体等として有用な1,5−ジケトン類を、より効率的かつ安全に製造できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
1H (I)
(式中、R1は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、前記炭化水素環又は複素環の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される芳香族化合物と、下記一般式(IIA)
HOC−CHCHCH−COH (IIA)
(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
又は下記一般式(IIB)
【化1】

(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表されるグルタル酸誘導体を、固体酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(IIIA)
1CO−CHCHCH−COR1 (IIIA)
(式中、R1は前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が、式(IIA)又は式(IIB)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される1,5−ジケトン類の製造方法。
【請求項2】
上記一般式(IIA)又は一般式(IIB)の代わりに、下記一般式(IIC)
2CO−CHCHCH−COH (IIC)
(式中、R2は1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基であり、前記炭化水素環又は複素環の水素原子及び/又はメチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される4−アロイル酪酸誘導体を用いることを特徴とする下記一般式(IIIB)
2CO−CHCHCH−COR1 (IIIB)
(式中、R1及びR2は前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が、式(IIC)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される1,5−ジケトン類の製造方法。
【請求項3】
前記の固体酸触媒として、ゼオライト、モンモリロナイト又はヘテロポリ酸を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記のゼオライトとして、ベータ型、Y型、モルデナイト型又はZSM−5型のゼオライトを使用することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記のゼオライトとして、シリカ/アルミナ比が2〜1000のゼオライトを使用することを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
反応をマイクロ波照射下で行うことを特徴とする請求項1、2,3,4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(IV)で表される1,5−ジケトン類。
3COCHCHCHCOR4 (IV)
(式中、R3及びR4は、両者とも2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基、両者とも1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基、又は、片方がフェニル基で他方が2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基である。)


【公開番号】特開2012−17302(P2012−17302A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156253(P2010−156253)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「革新的マイクロ反応場利用部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】