説明

10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物、その製造法及び該(メタ)アクリレート化合物を重合してなる重合物。

【課題】高屈折率を有する芳香族多環化合物であり、紫外域の吸収や蛍光の問題が無く透明性にすぐれ、高圧水銀ランプなどを用いた工業的に有利なUV硬化装置で重合可能な化合物及びその化合物を含むラジカル重合性組成物を提供する。
【解決手段】テトラヒドロアントラセン骨格にアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基等の置換基を有していてもよい10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物、及び当該化合物とラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物、その製造法及び該(メタ)アクリレート化合物を重合してなる重合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学分野においてガラス代替材料としてプラスチックが盛んに用いられている。例えば、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート等がよく知られている。これらのプラスチック材料は、軽量性、安全性、意匠性を有している反面、屈折率は無機ガラスより低いため、分厚くなりやすいという欠点がある。そこで、近年、高屈折率を有するプラスチック材料に対する要望が高くなってきている。特に、高屈折率プラスチック材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、ホログラム、光ファイバー、光導波路等への検討が盛んに行われている。
【0003】
プラスチックの屈折率とその原料となるモノマーの屈折率には正の相関関係にあり、高屈折率のプラスチックを得るためにはそのプラスチックを構成するモノマーが高屈折率であることが必要である。
【0004】
モノマーの屈折率を高くする方法としては、分子構造中にハロゲン原子(フッ素を除く)や硫黄原子、さらには芳香環を導入することが既に広く知られている。例えば、ハロゲン原子の有する高い固有屈折率を利用し、ビフェニル環にハロゲン原子を導入した高屈折率重合体が報告されている(特許文献1)。しかし、ハロゲン化することによって、得られた重合体の耐光性が著しく劣化し、また、高比重であるという欠点があった。また、ハロゲン以外に高い固有屈折率を有する硫黄原子を有するモノマー組成物も報告されている(特許文献2)。しかし、硫黄原子を有するモノマー組成物は高い屈折率、優れた耐衝撃性を有するものの、同様に得られた重合体の耐光性が著しく劣り、また、硫黄特有の不快臭を発する等の問題があった。さらに、硫黄原子を有するモノマー組成物を用いたプラスチックが廃棄物として処理されるとき、有害なガスや硫黄化合物を生じることが懸念される。
【0005】
一方、モノマーの屈折率を高くする方法として、従来からベンゼン環、ビフェニル環を導入することが知られている。ベンゼン環、ビフェニル環を有するプラスチック材料は、軽量で透明性に優れ、比較的屈折率が高いプラスチック材料が得られる(特許文献3等)。しかし、ベンゼン環を用いた場合、ハロゲン原子や硫黄原子を含まないモノマーでは屈折率が1.54を超えるものを得ることは困難であった。
【0006】
また、モノマーの屈折率を高くする方法として、ナフタレン環を導入したアクリレート化合物について報告がなされている(特許文献4,5)。しかしながら、ナフタレン環を含むアクリレート化合物は350nm近辺にUV吸収を持つため、光硬化させる場合に光源として最も一般的な高圧水銀ランプを用いた場合、高圧水銀ランプの366nm付近の光が吸収される、いわゆる内部フィルタリング効果を有するため、光硬化が遅くなるという欠点があった。そのため、従来は、400nm付近の波長を含む紫外LEDランプなどにより、イルガキュア819やダロキュアTPO(イルガキュア、ダロキュアはチバスペシャリティケミカルズ社の登録商標)等のホスフィンオキサイド系の光ラジカル重合開始剤を用いて光硬化させている(特許文献5)。
【0007】
しかしながら、紫外LEDランプは、光硬化用の光源としては未だ普及しておらず、工業用の大型の装置を作成し難いという欠点を有している。また、ホスフィンオキサイド系の光ラジカル重合開始剤は、リン化合物を含有しているため、高価であるという欠点を有する。
【0008】
また、さらに高い屈折率を得るため、アントラセン環、フルオレン環を有するモノマーの開発も検討されている(特許文献6,7,8)。さらに、アントラセン環やフルオレン環等をエステル交換によりポリマーに導入する試みもなされている(特許文献9)。
【0009】
しかしながら、アントラセン環やフルオレン環の導入により、高い屈折率のプラスチック材料が得られるが、フルオレン環を導入した場合は、紫外領域に吸収があるため、光照射により着色しやすく、耐光性に問題がある。また、アントラセン環を導入した場合はアントラセン環が蛍光を発するため、光学材料分野での適用は困難である等の問題がある。
【0010】
さらに、ナフタレン環とアントラセン環の中間の構造を持つ、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環を有するアクリレート化合物について、その合成例が報告されているが、屈折率に関しては何ら述べられていない(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−170702号公報
【特許文献2】特開2002−20433号公報
【特許文献3】特開2003−064296号公報
【特許文献4】特開2001−276587号公報
【特許文献5】特開2008−81682号公報
【特許文献6】特開2004−083855号公報
【特許文献7】特開平06−220131号公報
【特許文献8】特開2007−99637号公報
【特許文献9】特開2006−312709号公報
【特許文献10】特開2008−169324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、アントラセン環やフルオレン環にみられるような紫外域の吸収や蛍光の問題が無く、透明性に優れ、かつ、一般的で最も広く用いられている高圧水銀ランプなどの光源で重合可能なアクリレート化合物の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、多環芳香族化合物の構造と光硬化性に関して鋭意検討した結果、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン骨格を有する10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が、三環性芳香族化合物であるにもかかわらず、アントラセン環にみられるような紫外線の吸収がなく、透明性に優れ、かつ、高圧水銀ランプにより容易に重合すること、さらに、得られた重合体が高い屈折率を有していることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に記載の骨子を要旨とするものである。第1発明は、一般式(1)で示される10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zはアルキル基又はアリール基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。
【0017】
第2発明は、一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物をアシル化することによりなる上記の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供すること。
【0018】
【化2】

【0019】
一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。
【0020】
第3発明は一般式(3)で示される10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物を(メタ)アクリロイル化することによりなる第1発明に記載の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供すること。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(3)中、Zはアルキル基又はアリール基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。
【0023】
第4発明では、一般式(1)で示される10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物と、重合開始剤を含有するラジカル重合性組成物を提供すること。
【0024】
第5発明では、第4発明に記載のラジカル重合性組成物を重合してなる重合物を提供すること。
【0025】
第6発明では、第5発明に記載の重合物を含有する高屈折率材料を提供すること。
【0026】
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを表す。
【発明の効果】
【0027】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、新規な化合物であり、かつ、最も一般的な光源である高圧水銀ランプにより容易に重合する。また、重合により得られた重合物は高い屈折率を示す、工業的に有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は一般式(1)で示される構造を有する化合物である。
【0029】
【化4】

【0030】
一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zはアルキル基又はアリール基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。
【0031】
一般式(1)において、Zで表されるアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの基は、置換基を有していてもよい。
【0032】
一般式(1)中、X及びYで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、o−トリルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基等が挙げられる。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0033】
一般式(1)に示す10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる。すなわち、10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0034】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアルキル基が置換した化合物としては、2−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0035】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にハロゲン原子が置換した化合物としては、2−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、3−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、3−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジクロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジクロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジクロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジクロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジクロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジクロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジクロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジクロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジクロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジクロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0036】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環に水酸基が置換した化合物としては、5−ヒドロキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−ヒドロキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−ヒドロキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−ヒドロキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−ヒドロキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−ヒドロキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−ヒドロキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−ヒドロキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0037】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアルコキシ基が置換した化合物としては、5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0038】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアリールオキシ基が置換した化合物としては、5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0039】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアルキルチオ基が置換した化合物としては、6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−クロロ−6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0040】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアリールチオ基が置換した化合物としては、6−フェニルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−フェニルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−フェニルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−フェニルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−フェニルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−フェニルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−フェニルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−フェニルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−フェニルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、6−フェニルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−フェニルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0041】
これらの化合物のうち、10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレートは合成が容易であり、かつ、得られる生成物の屈折率が高いことから特に好ましい。
【0042】
(製造方法)
次に、本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法について説明する。本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、下図に示すように二つの合成ルートで合成することができる。一方は、最初に1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物をモノ(メタ)アクリロイル化し、次いで、モノアシル化するルートAであり、他方は、モノ(メタ)アクリロイル化反応とモノアシル化反応の順序が逆の方法であって、まず、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物をモノアシル化し、次いでモノ(メタ)アクリロイル化するルートBである。
【0043】
【化5】

【0044】
<ルートA>
最初に、ルートAによる製造方法について説明する。ルートAにおいて、本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、出発原料である1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物をモノ(メタ)アクリロイル化することにより、10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物となす第一反応と、得られた10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物をモノアシル化することにより、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物となす第二反応により合成することができる。
【0045】
【化6】

【0046】
第一反応について説明する。第一反応は、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物と(メタ)アクリロイル化剤とを無機塩基の存在下で反応させることにより10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を得ることができる。
【0047】
第一反応に用いられる1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、3−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2,6−ジクロロ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−6,クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、5−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−5−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−クロロ−5−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、5−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−5−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−クロロ−5−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、5−フェノキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−5−フェノキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−クロロ−5−フェノキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−メチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−6−メチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−クロロ−6−メチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−フェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−6−フェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、2−クロロ−6−フェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール等が挙げられる。
【0048】
第一反応に用いることができる(メタ)アクリロイル化剤としては、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが好適に用いられる。ハロゲン原子が塩素原子の場合は、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルであり、ハロゲン原子が臭素原子の場合は、臭化アクリロイル又は臭化メタクリロイルである。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため、好ましい。1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物に塩化アクリロイルを反応させると、10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート化合物が得られる。一方、塩化メタクリロイルを反応させると、10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート化合物が得られる。
【0049】
第一反応において、用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常0.5モル倍以上2.0モル倍以下、好ましくは0.8モル倍以上1.5モル倍以下である。0.5モル倍より少なすぎる場合は、原料である1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、2.0モル倍より多すぎる場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
【0050】
第一反応において、用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0051】
用いる塩基の添加量は、ハロゲン化(メタ)アクリロイル1モルに対して、通常1.0モル倍以上1.5モル倍以下である。塩基の使用量が少なすぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルの滴下中に水層のpHが酸性になり、選択率が低下する場合がある。一方、塩基の使用量が多すぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
【0052】
第一反応において、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物とハロゲン化(メタ)アクリロイルとの反応では、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。
【0053】
水相及び有機相からなる二相系で(メタ)アクリロイル化する場合、通常は溶媒として、水と、有機相を形成する一又は二以上の有機溶媒とを併用することが好ましい。有機相を形成する有機溶媒の種類は特に制限されないが、比較的低い極性を示し、水に対して混和性を示さない有機溶媒を用いることが好ましい。用いることができる有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとキシレン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
【0054】
水相と有機相との混合比率は、特に制限されるものではないが、水相及び有機相の合計を100vol%とした場合、水相の容積比率が、通常50vol%以上、95vol%以下の範囲であることが好ましい。水相の容積比率が50vol%より低すぎ、又は95vol%より高すぎると、得られる10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の選択率が低下する傾向があるため、いずれも好ましくない。水相及び有機相の合計に対する1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の濃度は、通常0.005g/ml以上0.5g/ml以下、特に0.03g/ml以上0.3g/ml以下の範囲とすることが好ましい。1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の濃度が低すぎると、得られる10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の収率が低下する。一方、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の濃度が高すぎると、得られる10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の選択率が低下する場合がある。また、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物が溶媒に溶けづらくなり、スラリー溶液の攪拌が困難になる場合があり、好ましくない。
【0055】
第一反応において、反応温度の制御および選択率向上の観点から、原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルを1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物と有機溶媒等との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。
【0056】
第一反応において、(メタ)アクリロイル化反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常10℃以下、中でも5℃以下で、水相が凝固しない温度以上とすることが好ましい。発熱により反応温度が上昇しすぎると、得られる10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の選択率が低下する傾向があり、また、得られる10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が加水分解してしまう場合があり、いずれも好ましくない。
【0057】
第一反応において、(メタ)アクリロイル化反応に要する時間は、特に限定されないが、通常0.5時間以上5時間以下、特に1時間以上2時間以下の範囲が好ましい。反応終了後は、できるだけ早く反応をクエンチ(停止)することが好ましい。
【0058】
第一反応において、反応のクエンチの方法は、例えば、反応系(水相)に希塩酸(濃度が1〜3モル/L)、希硫酸(濃度0.5〜1.5モル/L)等の酸を加えて酸性にすることにより行なう。反応終了後、必要に応じて、粗精製、再結晶精製等の後処理を行なってもよい。
【0059】
次に、第二反応について説明する。第二反応は、第一反応で得られた10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を、塩基存在下、又は塩基不存在下、アシル化剤を使用することにより、対応する10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を得る反応である。
【0060】
第二反応において、用いる10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、次の化合物が挙げられる。10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート、10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート等、第一反応で(メタ)アクリロイル化して得られる化合物等を挙げることができる。
【0061】
第二反応において、用いることができるアシル化剤としては、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化プロパノイル、塩化ブタノイル等の脂肪族カルボン酸ハライド類、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物類、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、塩化−1−ナフトイル、塩化−2−ナフトイル等の芳香族カルボン酸ハライド類、安息香酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物類等が挙げられる。
【0062】
用いるアシル化剤の使用量は、アシル化剤がカルボン酸ハライド類の場合は、10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、通常1モル以上2モル以下、好ましくは1.1モル以上から1.3モル以下である。1モル未満の場合は未反応の10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が残ってしまい、また、2モル倍を超える場合は、アシル化剤が反応物に残ってしまい、反応生成物が結晶化し難くなるため、いずれも好ましくない。
【0063】
一方、アシル化剤がカルボン酸無水物類の場合は、10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、通常1モル倍以上添加することが好ましいが、2モル倍を超えて添加しても反応に悪影響はなく、カルボン酸無水物が反応温度において液状である場合は、溶媒として大過剰添加してもよい。
【0064】
第二反応において、用いることができる塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。
【0065】
用いる塩基の使用量は、原料の10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、1モル以上3モル以下である。
【0066】
第二反応において、モノアシル化反応は、通常、溶媒中で行なわれる。用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。反応温度において液状である場合は、アシル化剤を反応溶媒として用いることができる。溶媒中の10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の濃度としては、通常0.2モル/L以上が好ましい。
【0067】
第二反応において、反応温度は、0℃以上80℃以下、特に0℃以上20℃以下が好ましい。反応温度が低すぎると反応に時間がかかり、一方、反応温度が高すぎると、副生成物が生成するため、いずれも好ましくない。第二反応において、反応に要する時間は、15分以上3時間以下が好ましい。
【0068】
<ルートB>
次に、ルートBについて説明する。ルートBにおいて、本発明の一般式(1)で示される10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、出発原料である1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物をモノアシル化することにより、下記一般式(3)で示される10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物となす第三反応と、得られた10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物をモノ(メタ)アクリロイル化することにより、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物となす第四反応により合成することができる。
【0069】
【化7】

(一般式(3)において、Zはアルキル基又はアリール基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。)
【0070】
【化8】

【0071】
一般式(3)において、X及びYで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0072】
まず第三反応について説明する。第三反応は、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物とアシル化剤とを塩基の存在下で反応させることにより10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物を得る反応である。
【0073】
第三反応に用いる1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物は、第一反応に用いることができる化合物と同様である。
【0074】
第三反応において得られる10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる。すなわち、10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール等が挙げられる。
【0075】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアルキル基が置換した2−
メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−メチル−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチル−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジメチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジメチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジメチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジメチル−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジメチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジメチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジメチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール等が挙げられる。
【0076】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にハロゲン原子が置換した2−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−クロロ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−クロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、3−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−クロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−クロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−クロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−クロロ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−クロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジクロロ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジクロロ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジクロロ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジクロロ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジクロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジクロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2,6−ジクロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチル−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチル−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチル−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチル−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール等が挙げられる。
【0077】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアルコキシ基が置換した5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−メトキシ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−メトキシ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−メトキシ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−メトキシ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−メトキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−メトキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−メトキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−メトキシ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−メトキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−メトキシ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−メトキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール等が挙げられる。
【0078】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアリールオキシ基が置換した5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−フェノキシ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−フェノキシ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−フェノキシ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−フェノキシ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−フェノキシ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−フェノキシ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−フェノキシ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−フェノキシ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−フェノキシ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−フェノキシ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−5−フェノキシ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール等が挙げられる。
【0079】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアルキルチオ基が置換した6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−メチルチオ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−メチルチオ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチルチオ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−メチルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール等が挙げられる。
【0080】
さらには、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン環にアリールチオ基が置換した6−フェニルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−フェニルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−フェニルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−フェニルチオ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−フェニルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−フェニルチオ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、6−フェニルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−フェニルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−フェニルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−フェニルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−フェニルチオ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−フェニルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−フェニルチオ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−メチル−6−フェニルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−フェニルチオ−10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−フェニルチオ−10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−フェニルチオ−10−n−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−フェニルチオ−10−i−ブタノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−フェニルチオ−10−ベンゾイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−フェニルチオ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール、2−クロロ−6−フェニルチオ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール等が挙げられる。
【0081】
第三反応において、用いることができるアシル化剤としては、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化プロパノイル、塩化ブタノイル等の脂肪族カルボン酸ハライド類、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、塩化−1−ナフトイル、塩化−2−ナフトイル等の芳香族カルボン酸ハライド類等が挙げられる。
【0082】
第三反応において、用いるカルボン酸ハライドの使用量は、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常0.5モル以上2モル以下、特に0.8モル以上1.5モル以下の範囲とすることが好ましい。カルボン酸ハライドの使用量が少なすぎると、未反応の1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物が残り、原料回収等の処理が必要となる場合がある。一方、カルボン酸ハライドの使用量が多すぎると、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の二つの水酸基がアシル化されたジエステルが副生し、目的物の収率が低下してしまい、好ましくない。
【0083】
第三反応において、用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0084】
第三反応において、用いる塩基の使用量は、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常1.0モル以上3.0モル以下、特に1.2モル以上2.0モル以下の範囲とすることが好ましい。塩基の使用量が少なすぎると、カルボン酸ハライドの滴下中に水層のpHが酸性になり、得られる10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物の選択率が著しく低下する場合があり、一方、塩基の比率が多すぎると、カルボン酸ハライドが分解してしまう場合があるため、好ましくない。
【0085】
第三反応において、モノアシル化反応は、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、ルートAにおける第一反応と同様に、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。有機相を形成する有機溶媒の種類は特に制限されないが、比較的低い極性を示し、水に対して混和性を示さない有機溶媒を用いることが好ましい。用いることができる有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用して用いてもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとキシレン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
【0086】
水相と有機相との比率は、特に制限されるものではないが、水相及び有機相の合計量に対する水相の容積比率が、通常50vol%以上、95vol%以下の範囲であることが好ましい。水相の容積比率が50vol%より少なすぎ、又は95vol%より多すぎる場合は、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物の選択率が低下する傾向があるため、いずれも好ましくない。水相及び有機相の合計量に対する1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の濃度は、通常0.005g/ml以上、0.5g/ml以下、特に0.03g/ml以上、0.3g/ml以下の範囲とすることが好ましい。1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の濃度が低すぎると、効率が悪く、一方、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の濃度が高すぎると、選択率が低下し、析出固体によるスラリー溶液の攪拌が困難になる場合があるため、いずれも好ましくない。
【0087】
第三反応において、反応温度は目的物の選択率向上の観点から、カルボン酸ハライドを滴下する方法が好ましい。特に、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なう場合には、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物を水相及び有機相の二相系溶媒に溶解させ、容器中で攪拌等の手法により混合しながら、カルボン酸ハライドを滴下して反応させる。
【0088】
第三反応において、モノアシル化反応は冷却しながら反応を行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常10℃以下、特に5℃以下で、水層が凝固しない温度以上とすることが好ましい。反応温度が発熱により上昇しすぎると、選択率が低下する傾向があり、また、得られる10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物が加水分解してしまうため、いずれも好ましくない。
【0089】
第三反応において、反応に要する時間は、通常0.5時間以上5時間以下、特に1時間以上2時間以下の範囲が好ましい。反応時間経過後は、できるだけ早く反応をクエンチ(停止)することが好ましい。
【0090】
反応のクエンチの方法は、例えば、反応系(水相)に希塩酸(濃度が1〜3モル/L)、希硫酸(濃度0.5〜1.5モル/L)等の酸を加えて酸性にすることにより行なう。反応終了後、必要に応じて、粗精製、再結晶精製等の後処理を行なってもよい。
【0091】
次に、第四反応について説明する。第四反応は、第三反応で得られた10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物を塩基存在下、又は塩基非存在下、(メタ)アクリロイル化剤を用いて(メタ)アクリロイル化することにより、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を得る反応である。
【0092】
第四反応に用いることができる(メタ)アクリロイル化剤としては、ルートAにおける第一反応に用いることができる(メタ)アクリロイル化剤と同様、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが好適に用いられる。ハロゲン原子が塩素原子の場合は、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルとなり、ハロゲン原子が臭素原子の場合は、臭化アクリロイル又は臭化メタクリロイルとなる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため、好ましい。10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物に塩化アクリロイルを反応させると、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート化合物が得られる。一方、塩化メタクリロイルを反応させると、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート化合物が得られる。
【0093】
第四反応において、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物1モルに対する(メタ)アクリロイル化剤の添加量は、1モル倍以上2モル倍以下、特に1.1モル倍以上1.3モル倍以下が好ましい。1モル倍より少なすぎると、未反応の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物が残ってしまい、一方、2モル倍よりも多すぎると、(メタ)アクリロイル化剤が多量に反応物に残るため、得られる10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が結晶化し難くなるため好ましくない。
【0094】
第四反応において、用いることができる塩基としては、ルートAにおける第二反応に用いることができる塩基と同様、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。
【0095】
第四反応において、塩基の使用量は通常、原料の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物1モルに対して、1モル以上3モル以下が好ましい。
【0096】
第四反応において、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物とハロゲン化(メタ)アクリロイルとの反応では、通常は溶媒の存在下で行なう。用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。また、アシル化剤を溶媒として用いることもできる。溶媒中の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物の濃度としては、通常0.2モル/L以上が好ましい。
【0097】
第四反応において、反応温度の制御および選択率向上の観点から、原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルを10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物と有機溶媒等との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。
【0098】
第四反応において、(メタ)アクリロイル化反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度は0℃以上80℃以下、好ましくは0℃以上20℃以下である。反応温度が低すぎると反応に時間がかかり、また80℃より高すぎると、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の選択率が低下する傾向があり、好ましくない。第四反応において、(メタ)アクリロイル化反応に要する時間は、15分から3時間程度である。
【0099】
(ラジカル重合性組成物)
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物はラジカル重合開始剤を混合することにより、ラジカル重合性組成物とすることができる。用いることができるラジカル重合開始剤には、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤とがある。紫外線や可視光線等の活性エネルギー線による光ラジカル重合は、硬化が速く、効率よく透明性の高い重合物を得ることができるため、特に本発明の重合性組成物を光学用途に用いる場合は、光ラジカル重合によることが好ましい。
【0100】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、次の化合物が挙げられる。すなわち、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−イソプロピルチオキサントン、2−t−ブチルアントラキノン等が挙げられる。実際の工業製品としてはチバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア651、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア907、イルガキュア369、ダロキュアTPO、イルガキュア819が挙げられる(イルガキュア、ダロキュアはチバスペシャリティケミカルズ社の登録商標)。
【0101】
本発明のラジカル重合性組成物において、ラジカル重合性モノマーとして、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を単独で用いて重合させることができ、一方、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物と、それ以外の一種又は二種以上のラジカル重合性モノマーとを用いて共重合させることもできる。
【0102】
共重合させるラジカル重合性モノマーとして、例えば、次の化合物が挙げられる。すなわち、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートさらには、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、p−トリルアクリレート、p−トリルメタクリレート、m−トリルアクリレート、m−トリルメタクリレート、o−トリルアクリレート、o−トリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ビフェニル−4−イル−アクリレート、ビフェニル−4−イル−メタクリレート、4−フェノキシフェニルアクリレート、4−フェノキシフェニルメタクリレート、2−フェノキシフェニルアクリレート、2−フェノキシフェニルメタクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0103】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物と、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物よりも屈折率が低い他のラジカル重合性モノマーとを共重合することにより、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物以外の低い屈折率のラジカル重合性モノマーを単独で重合させた場合に比べ、得られる重合物の屈折率が向上するだけでなく、耐溶剤性、硬度、又は酸素非透過性等を高めることもできる。なお、該ラジカル重合性モノマーに本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を添加したラジカル重合性組成物は、比較的低粘度で取扱いが容易であるという利点もある。
【0104】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を含有するラジカル重合性組成物において、用いるラジカル重合開始剤の添加濃度は、10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物及び必要に応じて併用されるラジカル重合性モノマーの合計重量に対して0.1重量%以上5重量%以下の範囲、特に0.5重量%以上2重量%以下の範囲が好ましい。0.1重量%より少ないと重合速度が遅く、一方、5重量%より多いと得られる重合物の物性が悪化するので、いずれも好ましくない。
【0105】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を含有するラジカル重合性組成物は、光ラジカル重合だけでなく、熱ラジカル重合開始剤を用いて熱ラジカル重合することもできる。
【0106】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等があり、どちらも使用可能である。有機過酸化物としては、例えばt− ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t− ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,6−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類等のパーオキシエステル類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ) −3,3,6− トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド 類等が挙げられる。またアゾ系化合物の重合開始剤としては、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリルや、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビ (シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾニトリル類が挙げられる。
【0107】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を含有するラジカル重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0108】
(重合方法)
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を含有するラジカル重合性組成物を重合する場合、フィルム状で硬化させることもできるし、塊状に硬化させることもできる。フィルム状で硬化させる場合は、液状のラジカル重合性組成物を例えば、ポリエステルフィルムなどの基材に、バーコーターなどを用いて膜厚5〜300μmになるように塗布する。膜厚は、数μmの薄膜だけでなく、数mmの厚膜を用いることができる。
【0109】
このようにして調製した塗布膜に活性エネルギー線を照射することにより重合させることができる。用いることができる光源としては、用いる光ラジカル重合開始剤によっても異なるが、250〜500nmの波長の活性エネルギー線を照射することができる光源を用いる。具体的には、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV−LED、青色LED、白色LED等の光源を用いることができる。また、太陽光線等の自然光線を用いることもできる。特に、本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を含有する重合性組成物は、UV硬化装置として最も広く用いられている光源である高圧水銀ランプ(波長366nm)を用いても重合させることができることから、工業的に非常に有用な化合物である。
【0110】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を含有するラジカル重合性組成物を重合する場合、ラジカル重合の判定は、例えばタック・フリーテスト(指触テスト)に基づいて行なうことができる。タック・フリーテストとは、光照射によりラジカル重合性組成物の塗布面のタック(べたつき)が取れるまでの時間を測定する方法である。
【0111】
本発明の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を含有するラジカル重合性組成物を重合させて得られる重合物は、高い屈折率を示し、またその化学構造から、紫外線吸収性、高い耐熱性、高硬度、高光沢性等が期待できる。
【0112】
本発明の重合物を含有する高屈折率材料は、例えばプラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録用基盤、着色フィルター、赤外線吸収フィルターなどの用途に幅広く使用することができる。
【0113】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
【実施例】
【0114】
実施例において得られた化合物の構造確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)屈折率:アッベ屈折率計:エルマー社製、形式ER−7MW−H
(3)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(4)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(5)マススペクトル:島津製作所社製、質量分析計、型式GCMS−QP5000
(6)ガスクロマトグラフ:島津製作所社製 GC−1700、カラム:CBP1−W25−500
(7)高速液体クロマトグラフィ;日本分光社製 880−Pu(ポンプ)、UV−970(検出器)、860−CO(カラムオーブン)、カラム;イナートシルODS−2
【0115】
(合成例1)10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレートの合成
窒素雰囲気下、反応容器に、水30.0ml、トルエン18.0ml、水酸化ナトリウム670mg(16.8ミリモル)、及び9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン2.0g(9.3ミリモル)を仕込んだ。次に、冷却及び攪拌しながら、市販の塩化アクリロイル1.3g(14ミリモル)を、トルエン2mlに溶かした液を注射器で、反応容器内の混合物に30分間かけて滴下した。滴下中は反応容器の温度を4〜6℃に保った。滴下途中から、多量の結晶の析出が認められた。滴下終了後、反応容器の温度を5℃以下に保ちながら、更に5分間攪拌を続けた。その後、抽出溶媒として酢酸エチルを加え、更に希塩酸を加えて反応系(水相)のpHを酸性にし、反応を停止させた。次いで二層分離し、反応生成物を有機相に抽出した。有機相を飽和重曹水、水の順で洗浄した。その後、有機相をロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、茶褐色固体の粗精製物2.8gを得た。この粗精製物についてガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−1700、カラム:CBP1−W25−500)による分析を行なったところ、その組成は、ピーク面積比で未反応原料が14.3%、目的物の10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレートが53.7%、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9、10−イル−ジアクリレートが20.7%であった。この粗精製物にトルエン10mlを加え、90〜100℃の油浴上で攪拌しながら加熱し、溶解させた。次いで放冷し、析出した結晶を濾別し、乾燥することにより、淡褐色の結晶870mg(3.2ミリモル)を得た。この結晶をガスクロマトグラフにより分析したところ、ピーク面積比で96.6%の10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレートを得た。原料9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンに対する単離収率は34モル%であった。
【0116】
このものの物理化学的性質を以下に示す。
融点: 171−172℃
【0117】
屈折率 nD=1.641
【0118】
IR(KBr,cm-1):3440、2940、1723、1632、1595、1572、1504、1408、1390、1302、1222、1172、1180、1167、1068、1038、922、808、762
【0119】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.90−8.07(m,1H),7.48−7.65(m,1H),7.28−7.47(m,2H),6.74(d,1H),6.49(dd,1H),6.12(d,1H),5.23−5.40(m,1H),2.27−2.95(m,4H),1.52−2.95(m,4H)
【0120】
(合成例2)10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレートの合成
窒素雰囲気下、反応容器に、水30.0ml、トルエン1.6ml、水酸化ナトリウム933mg(23.3ミリモル)、及び9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン2.0g(9.3ミリモル)を仕込んだ。次に、冷却及び攪拌しながら、事前にメタクリル酸と塩化チオニルから合成した塩化メタクリロイルのトルエン溶液9.2gを秤量した。このトルエン溶液には、塩化メタクリロイル2.24g(21.4ミリモル)、トルエン8.2mlが含まれている。この溶液を注射器で、反応容器内の混合物に40分間かけて滴下した。滴下中、反応容器の温度を5〜10℃に保った。滴下の途中から、多量の結晶の析出が認められた。滴下終了後、抽出溶媒として酢酸エチルを加え、更に希塩酸を加えて反応系(水相)のpHを酸性にし、反応を停止させた。次いで二層分離し、反応生成物を有機相に回収した。有機相を飽和重曹水、水の順で洗浄した。その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、黄褐色固体の粗精製物2.3gを得た。この粗精製物についてガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−1700、カラム:CBP1−W25−500)による分析を行なったところ、その組成は、ピーク面積比で未反応原料8.7%、目的物の10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート85.3%、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9、10−イル−ジメタクリレート0.2%であった。この粗精製物にトルエン5ml及びヘキサン5mlを加え、80〜90℃の油浴上で攪拌しながら加熱し、溶解させた。次いで放冷し、析出した結晶を濾取し、乾燥することにより、淡黄色の結晶1.5g(5.3ミリモル)を得た。この結晶を高速液体クロマトグラフィー(LC)により分析したところ、10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレートの純度は、ピーク面積比で97.6%であった。原料の9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンに対する単離収率は57モル%であった。
【0121】
このものの物理化学的性質を以下に示す。
融点: 140−141℃
【0122】
屈折率 nD=1.626
【0123】
IR(KBr,cm-1):3460、2940、1742、1600、1572、1390、1370、1295、1224、1180、1068、1044、760
【0124】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.92−8.00(m,1H),7.56−7.61(m,1H),7.27−7.42(m,2H),6.53(s,1H),5.85(s,1H),5.52(bs,1H),2.30−2.91(m,4H),2.17(s,3H),1.52−1.88(m,4H)
【0125】
(合成例3)10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノールの合成
窒素雰囲気下、反応容器に、水20.0ml、トルエン18ml、水酸化ナトリウム930mg(23.3ミリモル)、及び9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン2.0g(9.3ミリモル)を仕込んだ。次に、冷却及び攪拌しながら、市販の塩化アセチル1.69g(21.5ミリモル)をトルエン2mlに溶かした溶液を注射器で反応容器内の混合物を攪拌下に20分間かけて滴下した。滴下中、反応容器の温度を7〜10℃に保った。滴下の途中から、多量の結晶の析出が認められた。滴下終了後、抽出溶媒として酢酸エチルを加え、更に希塩酸を加えて反応系(水相)のpHを酸性にし、反応を停止させた。次いで二層分離し、反応生成物を有機相に回収した。有機相を飽和重曹水、水の順で洗浄した。その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、黄色固体の粗精製物2.1gを得た。この粗精製物について液体クロマトグラフによる分析を行なったところ、その組成は、ピーク面積比で未反応原料0.6%、目的物の10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール72.1%、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9、10−イル−ジアセテート21.4%であった。この粗精製物にトルエン8mlを加え、80〜90℃の油浴上で攪拌しながら加熱し、溶解させた。次いで放冷し、析出した結晶を濾取し、乾燥することにより、淡黄色の結晶0.87g(3.4ミリモル)を得た。この結晶を高速液体クロマトグラフィー(LC)により分析したところ、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノールの純度は、ピーク面積比で84.7%であった。原料の9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンに対する単離収率は37モル%であった。
【0126】
このものの物理化学的性質を以下に示す。
融点: 161−162℃
【0127】
屈折率 nD=1.628
【0128】
IR(KBr,cm-1):3460、2940、1742、1600、1572、1390、1370、1295、1224、1180、1044、760
【0129】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.94−8.02(m,1H),7.56−7.65(m,1H),7.30−7.46(m,2H),5.32(bs,1H),2.39−2.89(m,7H),1.60−1.88(bs,4H)
【0130】
(合成例4)10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノールの合成
窒素雰囲気下、反応容器に、水20.0ml、トルエン18ml、水酸化ナトリウム930mg(23.3ミリモル)、及び9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン2.0g(9.3ミリモル)を仕込んだ。次に、冷却及び攪拌しながら、市販の塩化プロピオニル2.0g(21.6ミリモル)をトルエン、2mlに溶かした溶液を注射器で反応容器内の混合物を攪拌下に20分間かけて滴下した。滴下中、反応容器の温度を5〜10℃に保った。滴下の途中から、多量の結晶の析出が認められた。滴下終了後、抽出溶媒として酢酸エチルを加え、更に希塩酸を加えて反応系(水相)のpHを酸性にし、反応を停止させた。次いで二層分離し、反応生成物を有機相に回収した。有機相を飽和重曹水、水の順で洗浄した。その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、黄褐色固体の粗精製物1.7gを得た。この粗精製物についてガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−1700、カラム:CBP1−W25−500)による分析を行なったところ、その組成は、ピーク面積比で未反応原料1.6%、目的物の10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール85.8%、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9、10−イル−ジプロピオネート6.6%であった。この粗精製物にトルエン8mlを加え、80〜90℃の油浴上で攪拌しながら加熱し、溶解させた。次いで放冷し、析出した結晶を濾取し、乾燥することにより、淡黄色の結晶1.50g(5.56ミリモル)を得た。この結晶を高速液体クロマトグラフィー(LC)により分析したところ、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノールの純度は、ピーク面積比で95.4%であった。原料の9,10−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンに対する単離収率は60モル%であった。
【0131】
このものの物理化学的性質を以下に示す。
融点: 143−144℃
【0132】
屈折率 nD=1.614
【0133】
IR(KBr,cm-1):3450、2940、1734、1600、1572、1500、1460、1420、1390、1358、1296、1222、1162、1080、1040、922、760、702
【0134】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.96−8.10(m,1H),7.53−7.62(m,1H),7.30−7.42(m,2H),5.25−5.38(m,1H),2.40−2.89(m,6H),1.58−1.90(bs,4H),1.38(t,3H)
【0135】
マススペクトル:(EI−MS)m/z=270(M+
【0136】
(実施例1)10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートの合成(ルートB)
窒素ガス雰囲気下、反応容器に、アセトニトリル9ml、トリエチルアミン510mg(5.0ミリモル)及び合成例3と同様にして合成した10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール650mg(2.54ミリモル)を仕込んだ。次に、冷却及び攪拌しながら、市販の塩化アクリロイル370mg(4.1ミリモル)を、アセトニトリル1mlに溶かした液を注射器で、反応容器内の混合物に15分間かけて滴下した。滴下中、反応容器内の温度を10〜15℃以下に保った。滴下終了後、室温にもどし、更に20分間攪拌を続けた。その後、水及び酢酸エチルを加え二層分離して有機相を得た。この有機相を飽和重曹水次いで水で洗浄後、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、黄色固体の粗精製物0.74gを得た。粗精製物を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートの純度は、ピーク面積比で91.3%であった。粗精製物をトルエン溶媒で再結晶することで淡黄色の結晶0.43g(1.4ミリモル)を得た。高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートの純度は、ピーク面積比で94.8%であった。原料の10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノールに対する単離収率は55モル%であった。
【0137】
このものの物理化学的性質を以下に示す。
融点: 158−160℃
【0138】
屈折率 nD=1.606
【0139】
IR(KBr,cm-1):2949、1756、1742、1368、1246、1212、1180、1160、1058、980、760
【0140】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.64−7.73(m,2H),7.39−7.48(m,2H),6.73(d,1H),6.48(dd,1H),6.10(d,1H),2.55−2.95(bs,4H),2.47(s,3H),1.72−1.91(bs,4H)
【0141】
マススペクトル:(EI−MS)m/z=310(M+
【0142】
(実施例2)10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートの合成(ルートA)
反応容器に、アセトニトリル8ml、トリエチルアミン1.41g(14.0ミリモル)及び合成例1と同様にして合成した10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレート0.99g(3.7ミリモル)を仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気下、冷却及び攪拌しながら、市販の塩化アセチル550mg(7.0ミリモル)を、アセトニトリリル2mlに溶かした液を、注射器で、反応容器内の混合物に15分間かけて滴下した。滴下中、反応容器内の温度を10℃前後に保った。滴下終了後、室温に戻し、更に10分間攪拌を続けた。その後、水及び酢酸エチルを加え二層分離して有機相を得た。この有機相を飽和重曹水次いで水で洗浄後、溶媒を留去し、黄褐色の粗精製物1.03gを得た。このものをメタノール溶媒で再結晶することで淡褐色の結晶0.64g(2.1ミリモル)を得た。このものは実施例1で得られた10−アセチルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートと同一のものであり、原料の10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−アクリレートに対する単離収率は57モル%であった。
【0143】
(実施例3)10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−メタクリレートの合成(ルートA)
反応容器に、アセトニトリル8ml、トリエチルアミン1.43g(14.2ミリモル)及び合成例2と同様にして合成した10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−メタクリレート1.0g(3.5ミリモル)を仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気下、冷却及び攪拌しながら、市販の塩化プロピオニル660mg(7.1ミリモル)を、アセトニトリリル2mlに溶かした液を、注射器で、反応容器内の混合物に15分間かけて滴下した。滴下中、反応容器内の温度を10℃前後に保った。滴下終了後、室温に戻し、更に10分間攪拌を続けた。その後、水及び酢酸エチルを加え二層分離して有機相を得た。この有機相を飽和重曹水次いで水で洗浄後、溶媒を留去し、黄褐色の粗精製物、1.10gを得た。粗精製物を高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−メタクリレートの純度は、ピーク面積比で92.1%であった。粗精製物をメタノール溶媒で再結晶することで淡褐色の結晶0.57g(1.7ミリモル)を得た。高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−メタクリレートの純度は、ピーク面積比で97.2%であった。原料の10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノールに対する単離収率は49モル%であった。
【0144】
このものの物理化学的性質を以下に示す。
融点: 149−151℃
【0145】
屈折率 nD=1.592
【0146】
IR(KBr,cm-1):2950、1750、1736、1635、1460、1362、1298、1204、1162、1132、1090、1040、760
【0147】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.63−7.72(m,2H),7.40−7.47(m,2H),6.51(s,1H),5.85(s,1H),2.50−3.02(m,6H),2.15(s,3H),1.82(bs,4H),1.38(t,3H)
【0148】
(実施例4)10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートの合成(ルートB)
窒素ガス雰囲気下、反応容器に、アセトニトリル9ml、トリエチルアミン1.4g(13.9ミリモル)及び合成例4と同様にして合成した10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール1.0g(3.7ミリモル)を仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気下、冷却及び攪拌しながら、市販の塩化アクリロイル680mg(7.5ミリモル)を、アセトニトリリル1mlに溶かした液を、注射器で反応容器内の混合物に20分間かけて滴下した。滴下中、内温を9〜15℃以下に保った。滴下終了後、室温に戻し、更に40分間攪拌を続けた。その後、水及び酢酸エチルを加え二層分離して有機相を得た。この有機相を飽和重曹水次いで水で洗浄後、溶媒を留去し、黄色固体の粗精製物1.40gを得た。黄色固体を高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートの純度は、ピーク面積比で80.0%であった。粗精製物をトルエン溶媒で再結晶することで淡黄色の結晶0.46g(1.4ミリモル)を得た。高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートの純度は、ピーク面積比で95.3%であった。原料の10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノールに対する単離収率は38モル%であった。
【0149】
このものの物理化学的性質を以下に示す。
融点: 149−151℃
【0150】
屈折率 nD=1.592
【0151】
IR(KBr,cm-1):2950、1750、1736、1635、1572、1460、1362、1298、1204、1132、1090、1040、760
【0152】
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.66−7.74(m,2H),7.38−7.48(m,2H),6.71(d,1H),6.49(dd,1H),6.12(d,1H),2.56−2.89(m,6H),1.70−1.92(bs,4H),1.39(t,3H)
【0153】
マススペクトル:(EI−MS)m/z=324(M+
【0154】
(実施例5)
10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートとの光共重合
実施例4と同様にして合成した10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−アクリレート6部、トリメチロールプロパントリアクリレート100部に対しビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ社製イルガキュア819)1部を混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して溶融した。得られた重合性組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー)の上に膜厚が0.2mmになるように塗布し、その後、窒素雰囲気下、膜を50℃に保温した状態で、表面に紫外線LED(波長395nmにおける照射強度が10mw/cm2)を1分間照射し光重合物を得た。得られた重合物の屈折率はnD=1.525であった。
【0155】
(実施例6)
10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−メタクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートとの光共重合
実施例3と同様にして合成した10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−メタクリレート6部、トリメチロールプロパントリアクリレート100部に対しビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ社製イルガキュア819)1部を混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して溶融した。得られた重合性組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー)の上に膜厚が0.2mmになるように塗布し、その後、窒素雰囲気下、膜を50℃に保温した状態で、表面に紫外線LED(波長395nmにおける照射強度が10mw/cm2)を1分間照射し光重合物を得た。得られた重合物の屈折率はnD=1.521であった。
【0156】
(比較例1)
トリメチロールプロパントリアクリレートの光重合
トリメチロールプロパントリアクリレート100部に対しビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ社製イルガキュア819)1部を混合し、60℃のオイルバス中に浸漬して溶融した。得られた重合性組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー)の上に膜厚が0.2mmになるように塗布し、その後、窒素雰囲気下、膜を50℃に保温した状態で、表面に紫外線LED(波長395nmにおける照射強度が10mw/cm2)を1分間照射し光重合物を得た。得られた重合物の屈折率はnD=1.512であった。
【0157】
実施例5及び6と比較例1から次のことが明らかである。すなわち、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−(メタ)アクリレートをトリメチロールプロパントリアクリレートと共重合することにより、トリメチロールプロパントリアクリレートの単独重合物よりも高い屈折率を有することから、10−プロパノイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ―アントラセン−9−イル−(メタ)アクリレートを用いた共重合物は屈折率を高める効果があることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物。
【化1】

(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zはアルキル基又はアリール基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。)
【請求項2】
一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,2,3,4−ジヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)クリレート化合物をアシル化することよりなる請求項1記載の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化2】

(一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。)
【請求項3】
一般式(3)で示される10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−アントラノール化合物を(メタ)アクリロイル化することによりなる請求項1記載の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化3】

(一般式(3)中、Zはアルキル基又はアリール基を示し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基のいずれかを示す。)
【請求項4】
請求項1に記載の10−アシルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物と、ラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のラジカル重合性組成物を重合して得られる重合物。
【請求項6】
請求項5に記載の重合物を含有する高屈折率材料。

【公開番号】特開2012−6874(P2012−6874A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144719(P2010−144719)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】