説明

15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体

【課題】優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有する新規なミルベマイシン誘導体を提供すること。
【解決手段】式(I)


を有する15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。例えば、14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンAが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた、殺ダニ活性、殺虫活性又は駆虫活性を有する新規な15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレプトミセス属のB−41−146菌株より単離された一群のマクロライド系化合物は、特開昭50−29742号公報において、B−41と称され、9種類の化合物が開示されている(特許文献1 参照)。その後、B−41はミルベマイシンとも称され、類縁の化合物が相次いで発見されている(特許文献2〜4 及び 非特許文献1 参照)。
【0003】
又、16員環マクロライド化合物であって、ミルベマイシン類に類似する化合物も、見出されている(特許文献5〜11 参照)。
【0004】
更に、ストレプトミセス属のB−41−146菌株の菌学的性質については、特許文献1に詳しく記載され、ストレプトミセス属のB−41−146菌株は、工業技術院微生物工業研究所に寄託されており、その微生物受託番号は、微工研菌寄第1438号である。
【0005】
更に又、下記の構造式
【化2】


(式中、TBDMSは、t−ブチルジメチルシリル基を示す。)
で表される5−O−t−ブチルジメチルシリル−14,15−ジヒドロ−15−オキソミルベマイシンA4が報告されているが(非特許文献2 参照)、この化合物は、ミルベマイシン骨格5位の水酸基がt−ブチルジメチルシリル基で保護された化合物であり、本発明の化合物とは異なる。又、この化合物は化学合成研究における副生成物として報告されているにとどまり、その生物活性などについては、一切言及されていない。
【特許文献1】特開昭50-29742号
【特許文献2】特開昭56-32461号
【特許文献3】特開昭57-77686号
【特許文献4】特開昭57-136585号
【特許文献5】特開昭52-151197号
【特許文献6】特開昭57-59892号
【特許文献7】特開昭57-150699号
【特許文献8】特開昭58-52300号
【特許文献9】特開昭61-10589号
【特許文献10】特開昭61-118387号
【特許文献11】英国特許公報第2170499号
【非特許文献1】J. Antibiotics vol.36, 980-990(1983)
【非特許文献2】Helvetica Chimica Acta vol.73, 1905-1917(1990).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の目的は、新規な15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体及びそれを有効成分として含有する殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、優れた、殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤を開発すべく、ミルベマイシン誘導体の合成及びその生物活性の検討を鋭意進めた結果、新規な15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体が、優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、式(I)で表される、15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体及びそれを有効成分として含有する殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規な15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体は、優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有し、殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤として、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の新規な15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体は、式(I)
【化3】

【0011】
[式中、R1は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、2−ブテン−2−イル基又はシクロヘキシル基を示し
2は、メチル基を示し、
3は、水素原子、水酸基又は式−OCOR5(式中、R5は、1個以上のハロゲンで置換されてもよいC1−C6アルキル基、C2−C6アルケニル基、C2−C6アルキニル基、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいC6−C10アリール基又はC1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよく、ベンゼン環と縮環してもよく、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1個〜4個有する5−6員環ヘテロアリール基を示す。)を有する基を示し、
4は、水素原子、ハロゲン原子、オレアンドシル基、オレアンドシル−オレアンドシル基、水酸基、C1−C6アルコキシ又はC1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいC6−C10アリールで置換されてもよいC1−C6アルコキシ基又は式−OCOC(=NOR6)R7(式中、R6は、水素原子又はC1−C6アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいC6−C10アリール基を示す。)を有する基を示し、
1及びX2は、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示すか、又は、一緒になって、オキソ基を示し、
1及びY2は、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示すか、又は、一緒になって、オキソ基又は式 =N−OR8(式中、R8は水素原子又はC1−C6アルキル基を示す。)を有する基を示し、
1及びZ2は、一緒になって、式−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(OH)CH2−、−CH(OCH3)CH2−、−CH2CH(OH)−、−CH2CH(OCH3)−、−CH2C(=NOH)−又は−CH2C(=NOCH3)−を有する基を示す。]
を有する。
【0012】
本発明において、「C1〜C6アルキル基」は、炭素数1乃至6個の直鎖又は分鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基又は3,3−ジメチルブチル基であり得、好適には、炭素数1乃至4個の直鎖又は分枝鎖アルキル基(C1〜C4アルキル基)であり、更に好適には、C1〜C2アルキル基(メチル基又はエチル基)であり、最も好適には、メチル基である。
本発明において、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好適には、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、更に好適には、フッ素原子又は塩素原子であり、最も好適には、フッ素原子である。
【0013】
本発明において、「1個以上のハロゲンで置換されてもよいC1−C6アルキル基」の1個以上のハロゲンで置換されたC1〜C6アルキル基は、1個乃至5個のハロゲンで置換されたC1〜C6アルキル基であり、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨ−ドメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタルフルオロエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、3−フルオロ−2−メチルプロピル基、3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル基又は6,6,6−トリクロロヘキシル基であり得、好適には、同一若しくは異なった1〜3個ハロゲン原子により置換されたC1〜C4アルキル基であり、更に好適には、同一若しくは異なった1〜3個のフッ素原子又は塩素原子により置換されたC1〜C2アルキル基であり、更により好適には、クロロメチル基又はトリフルオロメチル基であり、特に好適には、トリフルオロメチル基である。
【0014】
本発明において、「C2〜C6アルケニル基」は、炭素数2乃至6個の直鎖又は分鎖アルケニル基であり、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルビニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−エチル−1−ペンテニル基又は2−エチル−1−ペンテニル基であり得、好適には、C2〜C4アルケニル基であり、更に好適には、ビニル基、1−プロペニル基又は2−メチル−1−プロペニル基であり、特に好適には、ビニル基である。
【0015】
本発明において、「C2〜C6アルキニル基」は、炭素数2乃至6個の直鎖又は分鎖アルキニル基であり、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基又は1−ヘキシニル基であり得、好適には、C2〜C4アルキニル基であり、更に好適には、エチニル基又は1−プロピニル基であり、特に好適には、エチニル基である。
【0016】
本発明において、「C1〜C6アルコキシ基」は、炭素数1乃至6個の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、へキシルオキシ基、(4−メチルペンチル)オキシ基、(3−メチルペンチル)オキシ基、(2−メチルペンチル)オキシ基、(1−メチルペンチル)オキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基又は2−エチルブトキシ基であり得、好適には、C1〜C4アルコキシ基であり、更に好適には、C1〜C2アルコキシ基(メトキシ基又はエトキシ基)であり、最も好適には、メトキシ基である。
【0017】
本発明において、「C6〜C10アリール基」は、炭素数6乃至10個の芳香族炭化水素基であり、例えば、フェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基であり得、好適には、フェニル基又は1−ナフチル基であり、更に好適には、フェニル基である。
【0018】
上記アリール基の置換基は、好適には、C1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基又はハロゲン原子であり、更に好適には、C1〜C2アルキル基、C1〜C2アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、特に好適には、メチル基、メトキシ基、フッ素原子又は塩素原子である。また、置換基の数は、好適には、1個〜2個であり、更に好適には、1個である。
【0019】
本発明において、「ベンゼン環と縮環してもよく、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1個〜4個有する5−6員環ヘテロアリール基」は、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基又はキナゾリニル基であり得、好適には、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基又はベンゾチエニル基であり、更に好適には、フリル基、チエニル基又はピリジル基である。
【0020】
上記ヘテロアリール基の置換基は、好適には、C1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基又はハロゲン原子であり、更に好適には、C1〜C2アルキル基、C1〜C2アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、特に好適には、メチル基、メトキシ基、フッ素原子又は塩素原子である。また、置換基の数は、好適には、1個乃至2個であり、更に好適には、1個である。
【0021】
本発明の化合物(I)は分子内に不斉炭素を有しており、各々が、R配位又はS配位である立体異性体が存在するが、その各々及びそれらの任意の割合の混合物のいずれもが本発明に含まれる。そのような立体異性体は、例えば、光学分割された原料化合物を用いて、化合物(I)を製造するか、又は、合成した化合物(I)を、所望により、通常の光学分割又は分離法を用いて光学分割することができる。
【0022】
本発明の化合物(I)において、
(1)R1は、
(a)好適には、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はs−ブチル基であり、
(b)更に好適には、メチル基、エチル基又はイソプロピル基であり、
(c)更により好適には、メチル基又はエチル基であり、
(d)特に好適には、エチル基であり、
(2)R3は、
(a)好適には、水素原子、水酸基又は式 −OCOR5a(式中、R5aは、C1〜C4アルキル基、トリフルオロメチル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、エチニル基、メチル、メトキシ、フッ素及び塩素からなる群から選択される、1〜2個の置換基で置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基又はピリジル基である。)を有する基であり、
(b)更に好適には、水素原子、水酸基又は式 −OCOR5b(式中、R5bは、メチル基、エチル基、ビニル基、1−プロペニル基、エチニル基、メチル、メトキシ、フッ素及び塩素からなる群から選択される、1個の置換基で置換されていてもよいフェニル基、フリル基、チエニル基又はピリジル基である。)を有する基であり、
(c)更により好適には、水素原子又は水酸基であり、
(d)特に好適には、水素原子であり、
(3)R4は、
(a)好適には、水素原子、フッ素原子、塩素原子、オレアンドシル基、オレアンドシル−オレアンドシル基、水酸基、C1〜C2アルコキシ又はメチル、メトキシ、フッ素及び塩素からなる群から選択される1個の置換基で置換されてもよいフェニルで置換されてもよいC1−C2アルコキシ基又は式−OCOC(=NOR6a)R7a(式中、R6aは、水素原子、メチル基又はエチル基であり、R7aは、メチル、メトキシ、フッ素及び塩素からなる群から選択される1個の置換基で置換されてもよいフェニル基又はナフチル基である。)を有する基であり、
(b)更に好適には、水素原子、フッ素原子、塩素原子、オレアンドシル−オレアンドシル基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基又は式−OCOC(=NOR6b)R7b(式中、R6bは、水素原子又はメチル基であり、R7bは、メチル、メトキシ、フッ素及び塩素からなる群から選択される1個の置換基で置換されてもよいフェニル基である。)を有する基であり、
(c)更により好適には、水素原子又はオレアンドシル−オレアンドシル基であり、
(d)特に好適には、水素原子であり、
(4)X1及びX2は、
(a)好適には、一緒になって、オキソ基を示し、
(5)Y1及びY2は、
(a)好適には、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示すか、又は、一緒になって、オキソ基又は式 =N−OR8a(式中、R8aは水素原子又はメチル基を示す。)を有する基を示し、
(b)更に好適には、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示すか、又は、一緒になって、式 =N−OHを有する基を示し、
(c)更により好適には、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示し、
(6)Z1及びZ2は、
(a)好適には、一緒になって、式−CH2CH2−又は−CH=CH−を有する基を示し、
(b)更により好適には、一緒になって、式−CH2CH2−を有する基を示す。
また、R1を(1)(a)〜(d)から選択し、R3を(2)(a)〜(d)から選択し、R4を(3)(a)〜(d)から選択し、X1及びX2を(4)(a)から選択し、Y1及びY2を(5)(a)〜(c)から選択し、更に、Z1及びZ2を(6)(a)〜(b)から選択し、それぞれを組合せて得られる化合物(I)も、好適であり、例えば、
(1b)R1が、メチル基、エチル基又はイソプロピル基であり、
(2d)R3が、水素原子であり、
(3d)R4が、水素原子であり、
(4a)X1及びX2が、一緒になって、オキソ基を示し、
(5c)Y1及びY2が、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示し、
(6b)Z1及びZ2が、一緒になって、式−CH2CH2−を有する基を示す
化合物(I)も好適である。
【0023】
本発明の化合物(I)の具体例として、表1に示す化合物を例示することができるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0024】
表1において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「iPr」はイソプロピル基を、「s-Bu」はs−ブチル基を、「c-Hex」はシクロヘキシル基を、「Ole-Ole」はオレアンドシル-オレアンドシル基をそれぞれ示す。
【0025】
【化4】

【0026】
【表1−1】


【表1−2】

【0027】
上記例示化合物において、好適には、化合物番号1、2、3、4、25、26、27、28、37、38、39、40、49、50、51、52、63、64、65及び66の化合物であり、
更に好適には、化合物番号1、2、3及び4の化合物であり、
最も好適には、化合物番号3の化合物である。
【0028】
本発明の一般式(I)の化合物は、以下に記載する方法により製造することができる。
【化5】

【0029】
上記式中、R1、R2、R3、R4、X1、X2 、Y1、Y2、Z1及びZ2は、前述したものと同意義を示す。
【0030】
工程1は、溶媒存在下又は非存在中(好適には、溶媒存在下)、一般式(II)で表される、14,15−エポキシ−5−オキソミルベマイシン類を酸と反応させ、本発明の化合物(I)において、X1及びX2が、一緒になって、オキソ基を示し、Y1及びY2が、一緒になって、オキソ基を示す化合物(Ia)を製造する工程である。
【0031】
使用される酸は、例えば、三フッ化ホウ素・エーテル錯体、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛、塩化アルミニウム及びトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸のようなルイス酸類;塩酸、硫酸、過塩素酸、次亜塩素酸及び亜塩素酸のような鉱酸類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸のようなスルホン酸類;酢酸、プロピオン酸及び安息香酸のようなカルボン酸類;又は酸性樹脂であり得、好適には、ルイス酸類又はスルホン酸類であり、更に好適には、ルイス酸類であり、更により好適には、三フッ化ホウ素・エーテル錯体である。
【0032】
酸の使用量は、化合物(II)に対して、通常、触媒量から大過剰であり、好適には、0.1当量〜10当量であり、より好適には、1当量〜3当量である。
【0033】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質、生成物をある程度溶解するものであれば特に限定は無いが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセタミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン及びオクタンのような脂肪族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸イソプロピルようなエステル類;又はこれらの混合溶媒であり得、好適には、ハロゲン化炭素類、ニトリル類、エーテル類、芳香族炭化水素類又はこれらの混合溶媒であり、更に好適には、ハロゲン化炭素類であり、最も好適には、ジクロロメタンである。
【0034】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、−50℃〜50℃であり、より好適には、−20℃〜室温であり、最も好適には、0℃〜室温である。
【0035】
反応時間は、通常、1分間〜3昼夜であり、好適には、3分間〜6時間であり、より好適には、5分間〜1時間である。
【0036】
反応終了後、本工程の目的化合物(Ia)は、常法に従って、反応混合物から採取される。例えば、反応混合液又は反応混合液の溶剤を留去して得られる残渣に、水と混合しない有機溶剤を加え、水洗した後、溶剤を留去することによって得られる。得られた目的化合物は、必要なら、常法、例えば、再結晶、再沈殿又は/及びクロマトグラフィーのような当業者に周知の方法により、更に精製することができる。
【0037】
本工程の出発物質である化合物(II)は、公知であり、例えば、特開平6-220068号又は、特開2000-44571号公報に記載されている。
【0038】
工程2は、所望の工程であり、化合物(Ia)を還元反応又はオキシム化反応に付することにより、本発明の化合物(I)を製造する工程である。
【0039】
還元反応は、溶媒存在下又は非存在中(好適には、溶媒存在下)、化合物(Ia)を還元剤と反応させることにより行われ、X1及びX2 が、水素と水酸基の組み合わせを示すか、又は/及びY1及びY2が、水素と水酸基の組み合わせを示す化合物が製造される。
【0040】
使用される還元剤は、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド及びRed-Alのような金属ヒドリド錯体であり得、好適には、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム又はRed-Alであり、より好適には、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0041】
還元剤の使用量は、化合物(Ia)に対して、通常、1当量〜大過剰であり、好適には、1当量〜10当量であり、より好適には、1当量〜3当量である。
【0042】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質、生成物をある程度溶解するものであれば特に限定は無いが、例えば、メタノール及びエタノールのようなアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセタミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリル及びプロピオニトリルのようなニトリル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン及びオクタンのような脂肪族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸イソプロピルのようなエステル類;又はこれらの混合溶媒であり得、好適には、アルコール類、エーテル類、芳香族炭化水素類又はこれらの混合溶媒であり、更に好適には、アルコール類であり、最も好適には、メタノールである。
【0043】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、−50℃〜50℃であり、より好適には、−20℃〜室温であり、最も好適には、0℃〜室温である。
【0044】
反応時間は、通常、1分間〜3昼夜であるが、好適には、3分間〜6時間であり、より好適には、5分間〜1時間である。
【0045】
オキシム化反応は、溶媒存在下又は非存在中(好適には、溶媒存在下)、化合物(Ia)を、式 H2N−OR8(式中、R8は、前述したものと同意義を示す)を有するヒドロキシルアミン誘導体(例えば、フリーのヒドロキシルアミン誘導体、その塩酸塩若しくは硫酸塩又は該塩酸塩若しくは硫酸塩の水溶液であり得、好適には、フリーのヒドロキシルアミン誘導体の塩酸塩)と反応させることにより行われ、Y1及びY2が、一緒になって、式 =N−OR8(式中、R8は、前述したものと同意義を示す)を示す化合物が製造される。
【0046】
ヒドロキシルアミン誘導体の使用量は,化合物(Ia)に対して,通常,1当量〜大過剰であり、好適には、1当量〜10当量であり、より好適には、1当量〜3当量である。
【0047】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質及び/又は生成物をある程度溶解するものであれば特に限定は無いが、例えば、メタノール及びエタノールのようなアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセタミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリル及びプロピオニトリルのようなニトリル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン及びオクタンのような脂肪族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸イソプロピルのようなエステル類;水;又はこれらの混合溶媒であり得、好適には、アルコール類、エーテル類、芳香族炭化水素類、水又はこれらの混合溶媒であり、更に好適には、アルコール類、エーテル類又はこれら有機溶媒と水の混合溶媒であり、最も好適には、メタノール、1,4−ジオキサン及び水の混合溶媒である。
【0048】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、−50℃〜50℃であり、更に好適には、−20℃〜室温であり、最も好適には、0℃〜室温である。
【0049】
反応時間は、通常、10分間〜3昼夜であり、好適には、1時間〜2昼夜であり、更に好適には、3時間〜1昼夜である。
【0050】
反応終了後、本工程の目的化合物は、常法に従って、反応混合物から採取される。例えば、反応混合液又は反応混合液の溶剤を留去して得られる残渣に、水と混合しない有機溶剤を加え、水洗した後、溶剤を留去することによって得られる。得られた目的化合物は、必要なら、常法、例えば、再結晶、再沈殿又は/及びクロマトグラフィーのような当業者周知の方法により、更に精製することができる。
【0051】
本発明の化合物(I)は、果樹、野菜及び花卉に寄生するダニ類、例えば、ナミハダニ類(Tetranychus)、リンゴハダニ、ミカンハダニ(Panonychus)及びサビダニの成虫及び卵、並びに動物に寄生するダニ類、例えば、マダニ科(Ixodidae)、ワクモ科(Dermanysside)及びヒゼンダニ科(Sarcoptidae)に対して優れた殺ダニ活性を有している。更に、動物や鳥類の外部寄生虫、例えば、ヒツジバエ(Oestrus)、キンバエ(Lucilia)、ウシバエ(Hypoderma)、ウマバエ(Gautrophilus)、のみ及びしらみ;衛生害虫、例えば、ゴキブリ及び家バエ;アブラ虫;コナガ;及び/又は鱗翅目害虫のような各種農園芸害虫に活性がある。
【0052】
本発明の化合物(I)は、更に又、ねこぶ線虫(Meloidogyne)、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus)及び/又はネダニ(Phizoglyphus)に対しても活性がある。
【0053】
本発明の化合物(I)は、更に又、動物及び人間の内部寄生虫に対しても優れた活性を有している。特に、ぶた、ひつじ、山羊、牛、馬、犬、猫及び鶏のような、家畜及びペットに感染する線虫のほか、フィラリア科(Filariidae)及びナタリア科(Setariidae)の寄生虫、及び人間の消化管、血液、他の組織及び臓器に見出される寄生虫に対しても有効である。
【0054】
本発明の化合物(I)を農園芸用に供するには、担体及び必要に応じて他の補助剤と混合して、農薬として通常用いられる製剤形態、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、水性若しくは油性懸濁液及びエアゾールのような組成物に調製されて使用される。
【0055】
種々の剤型に調製された本発明の組成物を、例えば、果樹園又は畑地における有害昆虫、ハダニ類が寄生した農作物又は家畜に散布する場合は、有効成分濃度として、0.5〜100ppmを農作物の茎葉、土壌又は家畜に処理することにより、有害昆虫等を有効に防除することができる。
【0056】
本発明の化合物(I)を動物及び人における駆虫剤として使用する場合は、液体飲料として経口的に投与することができる。飲料は、通常、ベントナイトのような懸濁剤及び湿潤剤、又はその他の賦形剤と共に、適当な非毒性の溶剤又は水での溶液、懸濁液又は分散剤である。一般に、飲料は、又、消泡剤を含有する。飲料処方は、一般に、活性化合物を0.01〜0.5重量%、好適には、0.01〜0.1重量%を含有する。
【0057】
本発明の化合物(I)を動物飼料によって投与する場合は、それを飼料に均質に分散させるか、トップドレッシングとして使用されるか、又はペレットの形態として使用される。
【0058】
望ましい抗寄生虫効果を達成するためには、通常、最終飼料中に、活性化合物を0.0001〜0.02%含有する。
【0059】
又、本発明の化合物(I)を液体担体賦形剤に溶解又は分散させたものは、胃内、筋肉内、気管内又は皮下に注射することによって、非経口的に動物に投与することができる。
【0060】
非経口投与のために、活性化合物は、好適には、落花生油及び綿実油のような適当な植物油と混合する。このような処方は、一般に、活性化合物を0.05〜50重量%含有する。
【0061】
本発明の化合物(I)は、又、ジメチルスルホキシド及び炭化水素溶剤のような適当な担体と混合することによって局所的に投与し得る。この製剤は、スプレー又は直接的注加によって、動物の外部表面に直接適用される。最善の結果を得るための活性化合物の最適使用量は、治癒される動物の種類、及び寄生虫感染の型及び程度によって決まるが、一般に、動物体重1kg当たり約0.01〜100mgを、好適には、0.5〜50mgを経口投与することによって得られる。このような使用量は、一度に又は分割した使用量であり、このような使用量を用いて、本発明の化合物(I)が、1〜5日のような比較的短期間に亘って投与される。
【0062】
以下に、実施例及び試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0063】
実施例1
14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンA3(例示化合物番号25及び26の化合物、工程1)
14,15−エポキシ−5−オキソミルベマイシンA3(1g、1.85mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、窒素気流下、室温で攪拌した。これに,三フッ化ホウ素エーテル錯体(0.35ml, 2.77mmol)を滴下し、室温で35分間攪拌した。反応液を重曹水中に投入し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル、グラジエント)及び分取高速液体クロマトグラフィー(カラム:YMC-Pack ODS S-365-10 φ30×500mm、溶離剤:アセトニトリル/水=4/1)で順次精製し、標記化合物(低極性異性体:例示化合物番号25の化合物、326.2mg、収率32.6%)及び標記化合物(高極性異性体:例示化合物番号26の化合物、157.2mg、収率15.7%)を、それぞれ、無色アモルファスとして得た。
【0064】
例示化合物番号25の化合物(低極性異性体)
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 6.53 (1H, dd, J=2.3Hz, 1.5Hz), 5.83 (1H, dt, Jt=2.3Hz, Jd=11.0Hz), 5.70 (1H, dd, J=14.5Hz, 11.0Hz), 5.51 (2H, m), 4.70 (2H, d, J=2.3Hz), 4.27 (1H, s), 4.11 (1H, m), 3.83 (1H, s), 3.57 (1H, t, J=2.3Hz), 3.24 (1H, dd, J=9.6Hz, 6.2Hz), 2.80 (1H, dd, J=16.3Hz, 3.6Hz), 2.55 (1H, dd, J=16.3Hz, 11.0Hz), 2.31 (1H, m), 1.89 (3H, dd, J=2.3Hz, 1.5Hz), 1.50 (3H, d, J=6.1Hz), 1.43 (3H, d, J=7.0Hz), 1.00 (3H, d, J=6.4Hz), 0.82 (3H, d, J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 542(M+), 524, 181, 153。
【0065】
例示化合物番号26の化合物(高極性異性体)
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 6.52 (1H, dd, J=2.3Hz, 1.7Hz), 5.73-5.84 (2H, m), 5.46-5.69 (2H, m), 4.71 (2H, m), 4.22 (1H, s), 4.11 (1H, m), 3.85 (1H, s), 3.57 (1H, t, J=2.3Hz), 3.22 (1H, dd, J=9.1Hz, 6.1Hz), 2.55-2.80 (3H, m, H-12), 2.47 (1H, m), 1.89 (3H, m), 1.19 (3H, d, J=7.3Hz), 1.16 (3H, d, J=6.1Hz), 1.05 (3H, d, J=6.7Hz), 0.83 (3H, d, J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 542(M+), 524, 181, 153。
【0066】
実施例2
14,15−ジヒドロ−15−オキソミルベマイシンA3 (例示化合物番号1の化合物、工程2)
実施例1で得られた、14,15−エポキシ−5−オキソミルベマイシンA3の低極性異性体(例示化合物番号25の化合物:50mg、0.09mmol)を、メタノール(2ml)に溶解し、窒素気流下氷冷下攪拌した。これに、水素化ホウ素ナトリウム(3.5mg, 0.09mmol)を添加し、室温で20分間攪拌した。反応液を水中に投入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物を分取薄層シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1 /1)で精製し、標記化合物(低極性異性体:例示化合物番号1の化合物:38mg、収率76%)を無色アモルファスとして得た。
【0067】
例示化合物番号1の化合物(低極性異性体)
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 5.65-5.82 (2H, m), 5.35-5.55 (3H, m), 4.65 (2H, d, J=1.5Hz), 4.30 (2H, m), 4.03 (1H, m), 3.94 (1H, d, J=6.4Hz), 3.25 (2H, m), 2.78 (1H, dd, J=16.0Hz, 3.8Hz), 2.55 (1H, dd, J=16.0Hz, 11.0Hz), 2.35 (2H, m), 1.87 (3H, br), 1.14 (3H, d, J=7.6Hz), 1.13 (3H, d, J=6.1Hz), 1.00 (3H, d, J=6.4Hz), 0.81 (3H, d, J=6.7Hz).
EI-MS (m/z): 544 (M+), 181, 153。
【0068】
実施例3
14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンA4(例示化合物番号27及び28の化合物、工程1)
14,15−エポキシ−5−オキソミルベマイシンA3の代わりに、14,15−エポキシ−5−オキソミルベマイシンA4を用いて、実施例1と同様の操作を行い、標記化合物を得た。
【0069】
例示化合物番号27の化合物(低極性異性体)
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 6.54 (1H, m), 5.84 (1H, dt, Jt=2.5Hz, Jd=11.0Hz), 5.70 (1H, dd, J=14.5Hz, 11.0Hz), 5.52 (2H, m), 4.70 (2H, d, J=2.5Hz), 4.25 (1H, s), 4.10 (1H, m), 3.83 (1H, s), 3.57 (1H, t, J=2.5Hz), 3.05 (1H, dt, Jt=9.3Hz, Jd=2.6Hz), 2.79 (1H, dd, J=16.0Hz, 3.7Hz), 2.55 (1H, dd, J=16.0Hz, 11.0Hz), 2.30 (1H, m), 1.89 (3H, dd, J=2.5Hz, 1.5Hz), 1.15 (3H, d, J=7.3Hz), 1.02 (3H, t, J=7.3Hz), 0.99 (3H, d, J=6.4Hz), 0.81 (3H, d, J=6.1Hz).
EI-MS (m/z): 556(M+), 538, 195, 167。
【0070】
例示化合物番号28の化合物(高極性異性体)
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 6.54 (1H, dd, J=2.3Hz, 1.5Hz), 5.69-5.85 (2H, m), 5.44-5.57 (2H, m), 4.71 (2H, br), 4.17 (1H, s), 4.12 (1H, m), 3.85 (1H, s), 3.57 (1H, m), 3.01 (1H, m), 2.40-2.71 (4H, m), 1.89 (3H, m), 1.20 (3H, d, J=7.6Hz), 1.04 (3H, d, J=7.0Hz), 1.02 (3H, t, J=7.6Hz), 0.82 (3H, d, J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 556(M+), 538, 195, 167。
【0071】
実施例4
14,15−ジヒドロ−15−オキソミルベマイシンA4 (例示化合物番号3及び4の化合物)及び14,15−ジヒドロ−15−ヒドロキシルミルベマイシンA4 (例示化合物番号63及び64の化合物、工程2)
実施例1で得られた、14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンA3の低極性異性体(例示化合物番号25の化合物)の代わりに、実施例3で得られた、14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンA4の低極性異性体(例示化合物番号27の化合物)を用いて、実施例2と同様の操作を行い、標記化合物を得た。
【0072】
例示化合物番号3の化合物(低極性異性体)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 5.78 (1H, dt, Jt=2.1Hz, Jd=11.4Hz), 5.70 (1H, dd, J=14.4Hz, 11.4Hz), 5.42-5.50 (2H, m), 5.41 (1H, d, J=2.1Hz), 4.65 (2H, d, J=2.1Hz), 4.31 (1H, s), 4.28 (1H, m), 4.06 (1H, m), 3.95 (1H, d, J=6.2Hz), 3.28 (1H, d, J=2.1Hz), 3.04 (1H, dt, Jt=9.6Hz, Jd=2.7Hz), 2.77 (1H, dd, J=15.8Hz, 3.4Hz), 2.55 (1H, dd, J=15.8Hz, 11.0Hz), 2.35 (1H, d, J=7.6Hz), 2.31 (1H, m), 2.17 (1H, m), 2.09 (1H, m), 1.96 (1H, dd, J=12.4Hz, 3.4Hz), 1.87 (3H, s), 1.15 (3H, d, J=7.6Hz), 1.01 (3H, t, J=6.9Hz), 0.99 (3H, d, J=6.2Hz), 0.81 (3H, d, J=6.9Hz).
EI-MS (m/z): 558 (M+), 540, 195, 167。
【0073】
例示化合物番号4の化合物(低極性異性体)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 5.71-5.78 (2H, m), 5.39-5.51 (3H, m), 4.66 (2H, m), 4.29 (1H, m), 4.20 (1H, s), 4.12 (1H, m), 3.96 (1H, d, J=6.9Hz), 3.28 (1H, d, J=2.1Hz), 3.03 (1H, dt, Jt=9.6Hz, Jd=2.0Hz), 2.55-2.70 (3H, m), 2.47 (1H, m), 2.37 (1H, d, J=8.2Hz), 1.98 (1H, dd, J=12.4Hz, 4.1Hz), 1.88 (3H, s), 1.19 (3H, d, J=7.6Hz), 1.03 (3H, d, J=6.9Hz), 1.01 (3H, t, J=7.6Hz), 0.82 (3H, d, J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 558 (M+), 540, 522, 430, 412, 195, 167。
【0074】
例示化合物番号63の化合物(低極性異性体)
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 5.72-5.91 (2H, m), 5.28-5.47 (3H, m), 4.70 (2H, m), 4.43 (1H, s), 4.34 (2H, m), 4.00 (1H, m), 3.96 (1H, d, J=6.4Hz), 3.53 (1H, br), 3.32 (1H, m), 3.00 (1H, m), 2.40 (1H, d, J=7.8Hz), 2.30 (1H, m), 1.88 (3H, br), 1.00 (3H, d, J=7.0Hz), 0.94 (3H, t, J=7.3Hz), 0.91 (3H, d, J=7.0Hz), 0.83 (3H, d, J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 560 (M+), 542, 524, 432, 414, 195, 167。
【0075】
例示化合物番号64の化合物(高極性異性体)
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 5.75-5.95 (2H, m), 5.38-5.58 (3H, m), 4.74 (1H, s), 4.68 (2H, m), 4.30 (1H, m), 3.96 (1H, d, J=6.4Hz), 3.75 (2H, m), 3.30 (1H, m), 1.88 (3H, br), 1.00 (3H, d, J=6.7Hz), 0.97 (3H, t, J=7.4Hz), 0.88 (3H, d, J=6.4Hz), 0.81 (3H, d, J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 560 (M+), 542, 524, 432, 414, 195, 167。
【0076】
実施例5
14,15−ジヒドロ−15−ヒドロキシルミルベマイシンA4 (例示化合物番号65及び66の化合物、工程2)
実施例1で得られた、14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンA3の低極性異性体(例示化合物番号25の化合物)の代わりに、実施例3で得られた、14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンA4の高極性異性体(例示化合物番号28の化合物)を用いて、実施例2と同様の操作を行い、標記化合物を得た。
【0077】
例示化合物番号65の化合物(低極性異性体)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 5.89 (1H, m), 5.81 (1H, dd, J=14.4Hz, 11.0Hz), 5.70 (1H, dd, J=14.4Hz, 10.0Hz), 5.45 (1H, m), 5.36 (1H, br), 4.92 (1H, s), 4.70 (1H, dd, J=14.3Hz, 2.1Hz), 4.65 (1H, dd, J=14.3Hz, 2.1Hz), 4.30 (1H, m), 3.96 (1H, d, J=6.2Hz), 3.80-3.87 (2H, m), 3.29 (1H, d, J=2.1Hz), 3.05 (1H, dt, Jt=9.6Hz, Jd=2.1Hz), 2.48 (1H, m), 2.40 (1H, d, J=8.2Hz), 2.11 (1H, m), 1.96 (1H, dd, J=12.4Hz, 5.5Hz), 1.87 (3H, s), 1.02 (3H, d, J=6.9Hz), 0.97 (3H, t, J=7.6Hz), 0.87 (3H, d, J=6.9Hz), 0.81 (3H, d, J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 560 (M+), 542, 524, 432, 414, 195, 167。
【0078】
例示化合物番号66の化合物(高極性異性体)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 578-5.89 (2H, m), 5.48 (1H, dd, J=14.4Hz, 9.6Hz), 5.43 (1H, br), 5.30 (1H, m), 4.70 (1H, dd, J=14.4Hz, 2.1Hz), 4.68 (1H, dd, J=14.4Hz, 2.1Hz), 4.30 (1H, m), 4.24 (1H, s), 3.97 (1H, d, J=6.2Hz), 3.88 (1H, m), 3.81 (1H, m), 3.34 (1H, d, J=2.1Hz), 2.99 (1H, dt, Jt=9.6Hz, Jd=2.8Hz), 2.76 (1H, br), 2.48 (1H, m), 2.41 (1H, d, J=8.2Hz), 2.00 (1H, dd, J=12.4Hz, 4.8Hz), 1.88 (3H, s), 1.00 (3H, d, J=6.2Hz), 0.96 (3H, d, J=7.6Hz), 0.94 (3H, t, J=6.9Hz), 0.81 (3H, d, J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 560 (M+), 542, 524, 432, 414, 195, 167。
【0079】
実施例6
14,15−ジヒドロ−5−ヒドロキシイミノ−15−オキソミルベマイシンA4 (例示化合物番号39の化合物、工程2)
実施例3で得られた、14,15−ジヒドロ−5,15−ジオキソミルベマイシンA4の低極性異性体(例示化合物番号27の化合物:50mg, 0.09mmol)を1,4−ジオキサン(1.5ml)、メタノール(0.9ml)及び水(0.9ml)の混合溶媒に溶解し、室温で攪拌した。これにヒドロキシルアミン塩酸塩(12.5mg, 0.18mmol)を加え、一昼夜攪拌した。反応液を水に投入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、標記化合物(低極性異性体:34.5mg、収率67.3%)を無色アモルファスとして得た。
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 8.30 (1H, br), 5.65-5.95 (3H, m), 5.38-5.60 (2H, m), 4.70 (2H, m), 4.65 (1H, s), 4.10 (2H, m), 3.40 (1H, m), 3.05 (1H, m), 2.77 (1H, dd, J=16.0Hz, 3.8Hz), 2.55 (1H, dd, J=16.0Hz, 10.8Hz), 1.94 (3H, m), 1.15 (3H, d, J=7.6Hz), 1.02 (3H, t, J=6.4Hz), 1.00 (3H, d, J=6.1Hz), 0.81 (3H, d, J=6.1Hz).
EI-MS (m/z): 571 (M+), 533, 537, 195, 167。
【0080】
実施例7
14,15−ジヒドロ−5−メトキシイミノ−15−オキソミルベマイシンA4 (例示化合物番号49の化合物、工程2)
ヒドロキシルアミン塩酸塩の代わりに、メトキシアミン塩酸塩を用いて、実施例6と同様の操作を行い、標記化合物(低極性異性体)を得た。
1H-NMR (270MHz, CDCl3) δ: 5.65-5.89 (3H, m), 5.38-5.60 (2H, m), 4.70 (2H, m), 4.53 (1H, s), 4.11 (1H, d, J=2.9Hz), 4.05 (1H, m), 3.99 (3H, s), 3.37 (1H, t, J=2.3Hz), 3.05 (1H, m), 2.78 (1H, dd, J=16.0Hz, 3.8Hz), 2.54 (1H, dd, J=16.0Hz, 11.1Hz), 1.94 (3H, m), 1.14 (3H, d, J=7.3Hz), 1.02 (3H, t, J=7.3Hz), 0.99 (3H, d, J=6.1Hz), 0.81 (3H, d, J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 585 (M+), 567, 536, 195, 167。
【0081】
試験例1
抵抗性ハダニに対する殺ダニ効力
ササゲ(Vigna sinensis Savi)の初生葉にナミハダニ(Tetranychus urticae)を接種した。接種1日後、接種葉に10ppm及び1ppmの濃度の試験化合物を含む溶液[10ppm溶液:展着剤(ニッコール710F)0.004%、展着剤(グラミンS)0.01%、分散剤(ポリビニルアルコール)0.06%及びアセトン0.2%を含む水溶液100mlに試験化合物1mgを含む。及び1ppm溶液:上記10ppm溶液を水で10倍希釈した溶液]7mlをミズホ回転散布塔にて、散布液量が3.5mg/cm2葉面積になるように散布した。3日後に、双眼顕微鏡によって成虫の生死(反応率)を調べた。各化合物について二連制で試験を行い、試験中、薬液処理葉は、25℃の恒温室内に保存した。結果を表2に示す。
【0082】
【表2】


表2の結果から、表2における本発明の化合物は、微量で抵抗性ハダニに対して高い殺ダニ効力を示す。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体(I)は、優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有し、殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤として、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


[式中、R1は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、2−ブテン−2−イル基又はシクロヘキシル基を示し
2は、メチル基を示し、
3は、水素原子、水酸基又は式−OCOR5(式中、R5は、1個以上のハロゲンで置換されてもよいC1−C6アルキル基、C2−C6アルケニル基、C2−C6アルキニル基、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいC6−C10アリール基又はC1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよく、ベンゼン環と縮環してもよく、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子を1個〜4個有する5−6員環ヘテロアリール基を示す。)を有する基を示し、
4は、水素原子、ハロゲン原子、オレアンドシル基、オレアンドシル−オレアンドシル基、水酸基、C1−C6アルコキシ又はC1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいC6−C10アリールで置換されてもよいC1−C6アコキシ基又は式−OCOC(=NOR6)R7(式中、R6は、水素原子又はC1−C6アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及びハロゲンからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいC6−C10アリール基を示す。)を有する基を示し、
1及びX2は、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示すか、又は、一緒になって、オキソ基を示し、
1及びY2は、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示すか、又は、一緒になって、オキソ基又は式 =N−OR8(式中、R8は水素原子又はC1−C6アルキル基を示す。)を有する基を示し、
1及びZ2は、一緒になって、式−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(OH)CH2−、−CH(OCH3)CH2−、−CH2CH(OH)−、−CH2CH(OCH3)−、−CH2C(=NOH)−又は−CH2C(=NOCH3)−を有する基を示す。]
を有する15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項2】
1が、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はs−ブチル基である、請求項1記載の15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項3】
3が、水素原子又は水酸基である、請求項1又は2記載の15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項4】
4が、水素原子、フルオロ原子、クロル原子、オレアンドシル−オレアンドシル基、水酸基又は2−フェニル−2−メトキシイミノアセトキシ基である、請求項1〜3記載の15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項5】
1及びX2が、一緒になって、オキソ基を示す、請求項1〜4記載の15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項6】
1及びY2が、それぞれ異なって、水素原子と水酸基の組み合わせを示すか、又は、一緒になって、式 =N−OHを有する基を示す、請求項1〜5記載の15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項7】
1及びZ2が、一緒になって、式−CH2CH2−又は−CH=CH−を有する基を示す、請求項1〜6記載の15−置換−14,15−ジヒドロミルベマイシン誘導体。

【公開番号】特開2007−277165(P2007−277165A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105848(P2006−105848)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(303020956)三共アグロ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】