説明

2―フェニル―1,2―エタンジオールのハロゲンで置換されたカルバメート化合物

【課題】治療に使用するための光学活性がある新規カルバメート化合物、特に、中枢神経系疾患に治療効果がある活性成分としてのカルバメート化合物を含有する組成物の提供。
【解決手段】ハロゲン化された2−フェニル−1,2−エタンジオール モノカルバメート及び2−フェニル−1,2−エタンジオール ジカルバメートの光学的に純粋な形態の化合物が、中枢神経系疾患治療、特に、抗痙攣剤又は抗癇摘剤として有効であることが確認された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤学的に有用な新規有機化合物に関するものである。特に、構造式1及び2で表示されるハロゲンで置換された2−フェニル−1,2−エタンジオールの化学的に純粋な化合物であるモノカルバメート又はジカルバメートであって、一つの鏡像異性体が優位に存在し、フェニル環がフッ素、塩素、ブロム又はヨードから選ばれる1〜5個のハロゲンにより置換されており、R1、R2、R3、R4、R5及びR6がそれぞれ水素及び水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、アミノ、ニトロ及びシアン基からなる群から選ばれる置換基をもつフェニル基により随意に置換された1〜4個の炭素からなる直鎖又は分鎖アルキル基であるものである。前記化合物は中枢神経系疾患の治療、特に、抗痙攣剤、抗癲癇剤、神経保護剤及び筋肉弛緩剤として効果があることが確認されている。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
アリールアルキルアルコールのラセミカルバメート化合物は抗癲癇剤及び筋肉弛緩剤として有用であることが知られている。Toxicol.and Appl.Pharm.2,397〜402(1960)では、構造式1のX及びRが全て水素であるとき、前記化合物が癲癇治療剤として効果的であると報告している。J.Pharmacol.Exp.Ther.,104,229(1952)では2−メチル−3−プロピル−1,3−プロパンジオールのジカルバメート化合物が報告されており、その薬理学的効果が記載されている。
【0004】
米国特許第3,265,728号では、フェニル環が置換された構造式3で表示されるラセミカルバメート化合物が中枢神経系疾患の治療に有用であることを開示している。構造式3において、R7はカルバメート又はメチレンカルバメート、R8は1ないし2個の炭素を有するアルキル基、1ないし2個の炭素を有する水酸化アルキル基、水酸基若しくは水素、R9は水素又は1ないし2個の炭素を有するアルキル基であり、Yはフッ素、塩素、ブロム、ヨード、メチル、メトキシ、フェニル、ニトロ又はアミン基からなる群から選択される。
【0005】
【化2】

【0006】
米国特許第3,131,692号では、構造式6で表示されるラセミカルバメート化合物を、コリン系(chorinergic)副作用を大幅に低減する改善中枢神経系治療剤として開示している。構造式6において、Wは炭素数4未満の脂肪基、R10は芳香基、R11は水素又は炭素数4未満のアルキル基、及びZは水素、水酸基、炭素数4未満のアルコキシ基又はアルキル基、又は−OC(=O)Bで表記される基であり、式中Bはヘテロ環、ウレイド及びヒドラジン基、R12が水素又は炭素数4未満のアルキル基である−N(R122基からなる群の有機アミン基である。特に、構造式6において、少なくとも一つのZは−OC(=O)B基である。
【0007】
【化3】

【0008】
米国特許第2,884,444号では2−フェニル−1,3−プロパンジオールジカルバメート化合物を開示し、米国特許第2,937,119号ではイソプロピルメプロバメート等のカルバメート化合物を開示している。
前段落で記載されたカルバメート化合物の幾つかは、現在中枢神経系疾患治療剤として使用されている。様々な中枢神経系疾患治療で使用するのにより有用な新規のカルバメート化合物を特定するための調査や研究が進められている。
【0009】
生物学的活性化合物が立体中心を有している場合、鏡像異性体の持つ生物学的活性にある程度の差がでることは一般的な現象である。一般に、生物学的活性化合物のラセミ混合物を分析すると、一つの鏡像異性体はラセミ体より高い活性を呈するが、他の鏡像異性体は低い活性を呈する。しかし、異物質に対する生物学的反応の複雑な機構により、予想しなかった結果が観察される場合があるので、生物学的活性分子を開発するときには、実験的な検証なしに前述の一般的な事実を盲目的に認めてはいけない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、治療に使用するための光学活性がある新規カルバメート化合物、特に、中枢神経系疾患に治療効果がある活性成分としてのカルバメート化合物を含有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の前記目的及び他の目的を達成するために、構造式1及び2で表示されるカルバメート化合物はベンジル位置上に非対称炭素原子を有しており、構造式1及び2で表示される化合物について2つの光学鏡像異性体を持つ。一般に、多くの化合物の光学鏡像異性体は、異なる薬理学的及び毒物学的活性を有しており、毒性がほとんどなく、より優れた効能を有する鏡像異性体を開発することが薬剤学的産業での最近の傾向である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、一つの鏡像異性体が優位に存在する構造式1及び2で表示されるカルバメート化合物に関する。これらの化合物は中枢神経系疾患の治療、特に、抗痙攣剤、抗癲癇剤、神経保護剤及び中枢に作用する筋肉弛緩剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、構造式1及び2で表示される薬剤学的に有用な光学活性がある有機カルバメート化合物であって、フェニル環がフッ素、塩素、ブロム又はヨードがら選ばれる1〜5個のハロゲン原子で置換されており、R1、R2、R3、R4、R5及びR6がそれぞれ水素又は水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、アミノ、ニトロ並びにシアン基からなる群から選ばれる置換基を持つフェニル基で随意に置換された炭素1〜4個の直鎖又は分鎖アルキル基である化合物である。
【0014】
【化4】

【0015】
本発明の化合物は選択的な薬理学的特性を有し、痙攣、癲癇、脳卒中及び筋肉痙攣を包含する中枢神経系疾患を治療し予防するのに有用である。
本発明の化合物がキラル中心を持つことは当業者に明らかである。式1及び2の化合物は、ベンジル位置にフェニル環に近接した脂肪族炭素である非対称炭素原子を包含している。この化合物の治療的特性は、程度の差はあるが、特定の化合物の立体化学に依存している。本発明は、純粋な鏡像異性体、又は、構造式1及び2で表示される一つの鏡像異性体化合物が優位に存在する鏡像異性体混合物を包含する。好ましくは、一つの鏡像異性体は90%以上優位に存在し、より好ましくは98%以上優位に存在する。
構造式1で表示されるカルバメート化合物は、以下に具体的に示される反応式1に表される合成方法により調製することができる。
【0016】
フェニル環にハロゲン置換基がある2−フェニル−1,2−エタンジオールとジエチルカルボネートを触媒量のメトキシナトリウムの存在下で反応させる。副生成物であるメタノールを真空蒸留により除去し、残存生成物を真空下で乾燥させる。続いてこの原料反応生成物をメタノール等の低級アルカノールに溶解し、過量のアミンを室温で反応溶液に投与して、フェニル環にハロゲン置換基を持つ2−フェニル−1,2−エタンジオールのモノカルバメートの二つのレジオ(Regio)異性体形態を製造する。フェニル環にハロゲン置換基を持つフェニル−1,2−エタンジオールのモノカルバメートのレジオ異性質体形態はフラッシュカラムクロマトグラフィー(flash column chromatography)で分離され、主産物として望む化合物を得る。
【0017】
【化5】

【0018】
反応式1の構造式1において、フェニル環はフッ素、塩素、ブロム又はヨードから選ばれる1〜5個のハロゲン原子により置換され、R1及びR2はそれぞれ水素及び水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、アミノ、ニトロ及びシアン基からなる群から選ばれる置換基を持つフェニル環により随意に置換された1〜4個炭素からなる直鎖又は分鎖アルキル基である。
構造式2で表示されるカルバメート化合物は、詳細な説明が以下に続く反応式2、反応式3又は反応式4に記載された合成方法により調製することができる。
3、R4、R5及びR6が水素である場合、望むジカルバメート化合物は反応式2に記載された合成方法により調製することができる。
【0019】
フェニル環にハロゲン置換基を持つ2−フェニル−1,2−エタンジオールをアセトニトリル、テトラヒドロフラン及びジクロロメタンからなる群から選択される溶媒で溶解させ、過量のシアン酸ナトリウムで処理する。得られた混合物を氷浴で冷却させ、過剰量のメタンスルホン酸を徐々に添加する。出発物質のジオールが薄膜クロマトグラフィーにより検出されない場合、反応混合物を水酸ナトリウム水溶液で中和し、塩化メチレンで抽出する。有機抽出物を乾燥、濾過及び濃縮して、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより望む化合物を精製する。
【0020】
【化6】

【0021】
反応式2の構造式2において、フェニル環はフッ素、塩素、ブロム又はヨードから選択される1〜5個のハロゲン原子により置換されている。
構造式2で表示されるジカルバメートのカルバメート単位が同一である場合、つまりR3=R5及びR4=R6である場合、望む化合物は反応式3に記載の合成方法により調製することができる。
フェニル環にハロゲン置換基を持つ2−フェニル−1,2−エタンジオールをジクロロメタンに溶解し、2当量のカルボニルジイミダゾールで処理する。得られた混合物を出発物質が薄膜クロマトグラフィー分析により検出できなくなるまで攪拌し、過量のアミン(R34NH)で本混合物を処理する。典型的な場合、反応が終了するまで24時間以上かかる。一連の水洗いをした後、そのままの反応生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、望む生成物を得る。
【0022】
【化7】

【0023】
反応式3の構造式2において、フェニル環はフッ素、塩素、ブロム又はヨードから選択される1〜5個のハロゲン原子により置換されており、R3とR4はそれぞれ水素又は水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、アミノ、ニトロ及びシアン基からなる群から選ばれる置換基を持つフェニル環で随意に置換された炭素数1〜4つの直鎖又は分鎖アルキル基である。
構造式2で表示されるジカルバメートのカルバメート単位が相違する場合には、望む化合物は、反応式1に記載された合成方法により調製された構造式1で表示されるモノカルバメートから反応式4に記載された合成方法を用いて調製される。
【0024】
構造式1で表示される化合物群の2−フェニル−1,2−エタンジオールモノカルバメートを約1当量のカルボニルジイミダゾールで処理する。得られた混合物を出発物質が薄膜クロマトグラフィーで観察することができなくなるまで攪拌し、その混合物を過量のアミン(R56NH)で処理する。反応が終了するまで、典型的な場合、24時間以上がかかる。一連の水洗いをした後、そのままの反応生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、望む生成物を生成する。
【0025】
【化8】

【0026】
反応式4の構造式2において、フェニル環はフッ素、塩素、ブロム又はヨードから選ばれる1〜5個のハロゲン原子により置換されており、R1、R2、R5及びR6は、それぞれ水素及び水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、アミノ、ニトロ及びシアン基からなる群から選らばれる置換基を持つフェニル基で随意に置換された炭素数1〜4個の直鎖又は分鎖アルキル基である。
【0027】
中枢神経系の疾患、特に痙攣、癲癇、脳卒中及び筋肉痙攣の治療に本発明の化合物を使用するときには、化合物を口腔投与することが好ましい。これらの化合物は口腔投与するとよく吸収されるため、一般に非経口投与に依存する必要がない。口腔投与のために、本カルバメート化合物は薬剤学的な担体と組み合わされることが好ましい。担体と本発明の化合物の比は、中枢神経系への薬効の発現に決定的な影響を持つものではなく、組成物がカプセルに満されるのか、タブレットに形成されるのかを考慮し、変化させることができる。タブレットに製造する場合、少なくとも薬剤学的活性成分と等量の薬剤学的担体を使用することが一般的に好ましい。多種の食用薬剤学的担体又はその混合物を使用することができる。例えば、適する担体としては、ラクトース、二塩基燐酸カルシウム及びトウモロコシ澱粉の混合物がある。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤などを含むその他の薬剤学的に適する成分をさらに添加することもできる。
【0028】
本発明が請求する化合物の抗痙攣剤としての治療における使用は、部分発作に対する痙攣防止剤の薬理学的選別法としてよく確立された最大電気ショックテスト(MES:Maximal Electro Shock)により証明されている。その結果を表1に示す。
【0029】
痙攣防止剤のMESテストの手順は次のとおりである。化合物の投薬溶液を食塩水で用意し、実験対象のネズミ(CF−1種子)に経口投与する。投与から一定時間が経過した後、IITC Life Science社の11A Shocker機器を使用し角膜電極(Corneal Electrode)を介して、50mA−60Hzで0.2秒間最大電気ショックを与える。最大電気ショックを加えた時に、ネズミが後足を強く伸ばす現象がなければ痙攣防止剤による保護が得られたと見なす。中間薬効投与水準(ED50)は、三つの異なる投薬レベルで1グループに少なくとも6匹以上のネズミを使用して実験された。ED50値の低い化合物が痙攣防止剤としてより効果があった。
【0030】
【表1】

【0031】
DunhamとMiyaの方法(Dunham,N.W.and Miya,T.S.:ラット及びネズミにおける神経的欠損の検出のための単純な機械についての小論文J.Amer.Pharm.Ass.,sci Ed.46,208〜209(1957))は、中間神経毒性投与量(the median neurotoxic dose.TD50)の試験として使用された。DunhmとMiya(1957)は、回転子上に残ることを動物の能力基準として、マウス及びラットに対する試験化合物の神経学的欠点又は神経毒性を測定するための簡単でかつ効率的な方法を考案した。TD50は実験動物の50%が回転子試験に失敗する、言い換えれば1分の試験時間内に1回以上失敗する投与量と定義される。ED50に対するTD50比は保護指数と呼ばれ、薬剤学的効能及び神経毒性を比較するときに有用な媒介変数として用いられる。本研究の結果を下記表2に示した。
【0032】
【表2】

【実施例】
【0033】
下記の実施例により本発明をより具体的に記載するが、この実施例は本発明を限定するものではない。
カルバメート化合物の合成に使用されたジオールは、対応する当該スチレン系化合物から二重水酸化反応(dihydroxylation)により調製された。光学活性があるジオールの場合には、シャープレス(Sharpless)の非対称二重水酸化反応触媒を使用した。
【0034】
実施例1
(DL)−(2−(2−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
置換されていないジカルバメート化合物調製の一般的な手順
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールをテトラヒドロフラン(115mL)に溶解させた後、シアン酸ナトリウム(9.0g)及びメタンスルホン酸(9.5mL)を氷浴下で加えた。得られた反応混合物を18時間攪拌し、テトラヒドロフラン−ジクロロメタン混合物で抽出し、5%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、フラッシュコラムクロマトグラフィーで精製して白色固体を得た。エタノール−エテル混合物で再結晶した後、分析的に純粋な(DL)−(2−(2−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(融点:190℃)が得られた。
【0035】
実施例2
(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(R)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(2.1g、収率46%、融点172〜174℃、[α]D=84.9(c=2.70、DMF))を調製した。
【0036】
実施例3
(S)−(2−(2−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(S)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(S)−(2−(2−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.6g、収率35%、融点167〜169℃、[α]D=−84.1(c=2.77、DMF))を調製した。
【0037】
実施例4
(DL)−(2−(3−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(DL)−(2−(3−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(2.41g、収率80%、融点188〜190℃)を調製した。
【0038】
実施例5
(DL)−(2−(4−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(DL)−1−p−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(DL)−(2−(4−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.97g、収率38%、融点146〜148)を調製した。
【0039】
実施例6
(R)−(2−(4−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(R)−1−p−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(R)−(2−(4−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(2.53g、収率84%、融点178〜180℃、[α]D=−24.38(c=2.60、メタノール))を調製した。
【0040】
実施例7
(S)−(2−(4−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(S)−1−p−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(S)−(2−(4−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(2.04g、収率68%、融点177〜179℃、[α]D=25.56(c=2.75、メタノール))を調製した。
【0041】
実施例8
(DL)−(2−(2,6−ジクロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(DL)−1−(2,6−ジクロロフェニル)−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(DL)−(2−(2,6−ジクロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.71g、収率40%、融点160〜162℃)を調製した。
【0042】
実施例9
(R)−(2−(2,6−ジクロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(R)−1−(2,6−ジクロロフェニル)−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例1と同様の合成方法で(R)−(2−(2,6−ジクロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(7.40g、収率52%、[α]D=36.01(c=2.58、メタノール))を調製した。
【0043】
実施例10
(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−メチルカルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
N−モノ置換ジカルバメート化合物を調製するための一般的な手段
(R)−(2−(2−クロロフェニル−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.2g、5.56mmol)のテトラヒドロフラン(4mL)溶液に1,1'−カルボニルジイミダゾール(1.0g、6.12mmol)を5℃で加えた。反応混合物の反応温度を室温まで上昇させた後、45分間攪拌した。メチルアミン(2M THF溶液5.6mL)を5℃で加えた。反応混合物を室温で18時間攪拌し、硝酸エチルで抽出した後、0.5N塩酸水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、飽和塩水溶液で順次洗浄した。抽出液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーで精製して白色固体(1.4g)収率93%、融点128〜130℃、[α]D=0.937(c=2.49、メタノール))を得た。
【0044】
実施例11
(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−イソプロピルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド
メチルアミンの代わりにイソプロピルアミンを使用したことを除き、実施例10と同様の合成方法で(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−イソプロピルカルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.0g、収率62%、融点163〜165℃、[α]D=3.99(c=2.10、メタノール))を調製した。
【0045】
実施例12
(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−シクロプロピルカルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド
メチルアミンの代わりにシクロプロピルアミンを使用したことを除き、実施例10と同様の合成方法で(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−シクロプロピルカルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.60g、収率96%、融点111〜113℃、[α]D=2.39(c=2.25、メタノール))を調製した。
【0046】
実施例13
(R)−N−メチル(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−メチルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド
N,N'−二重置換されたジカルバメート化合物の一般的な調製方法 1,1'−カルボニルジイミダゾール(4.13g、25.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)に(R)−2−クロロフェニル−1,2−エタンジオール(2.0g,11.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液を5℃で約20分間徐々に滴下した。室温で1時間攪拌した後、5℃でメチルアミン(23.2mL、2M THF溶液、46.4mmol)を加えた。室温で18時間攪拌した後、反応混合物を真空状態で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーで精製して白色固体(2.03g、収率61%、融点152〜154℃)を得た。
【0047】
実施例14
(R)−N−イソプロピル(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−イソプロピルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド
メチルアミンの代わりにイソプロピルアミンを使用したことを除き、実施例13と同様の合成方法で(R)−N−イソプロピル(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−イソプロピルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド(3.50g、収率88%、融点151〜153℃、[α]D=1.33(c=2.63、メタノール))を調製した。
【0048】
実施例15
(R)−N−フェニル(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−フェニルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド
メチルアミンの代わりにアニリンを使用したことを除き、実施例13と同様の合成方法で(R)−N−フェニル(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−フェニルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド(2.74g、収率57%、融点46〜48℃)を調製した。
【0049】
実施例16
(R)−N−ベンジル(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−ベンジルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド
メチルアミンの代わりにベンジルアミンを使用したことを除き、実施例13と同様の合成方法で(R)−N−ベンジル(2−(2−クロロフェニル)−2−(N−ベンジルカルバモイルオキシエチル)−オキソカルボキサマイド(2.88g、収率76%、融点80〜82℃)を調製した。
【0050】
実施例17
(DL)−(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
モノカルバメート化合物の一般的な調製方法
真空蒸留装置が付いた50mLの丸底フラスコに(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオール(10、98g)、ジエチルカルボネート(10.25mL)及びメトキシナトリウム(305mg)を入れ、この混合物を磁気攪拌装置で攪拌しつつ油浴で135℃に加熱した。副生成物であるエチルアルコールをレシーバフラスコに集めた。エタノールを約10mL程度集めた後、反応混合物に残っている残留エチルアルコールを真空蒸留により除去した。反応混合物を室温で冷却させ、ジクロロメタン(40mL)に溶解させた後、飽和塩水溶液(15mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過させた後、真空状態で濃縮して(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールカルボネート(12.58g、収率100%)を調製した。
磁気攪拌装置が付いた200mLの丸底フラスコに液体アンモニア約12mLを−78℃で圧縮させた後、(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールカルボネート(6.0g)のメタノール(200mL)溶液を徐々に加えた。反応混合物を徐々に室温まで温め、室温で1時間攪拌した後、真空状態で濃縮させた。クロマトグラフィーで精製した後、(DL)−(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.97g、収率30%、融点100℃)を得た。
【0051】
実施例18
(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(R)−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例17と同様の合成方法で(R)−(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(3.35g、収率45%、融点133℃、[α]D=−63.9(c=2.22、メタノール))を調製した。
【0052】
実施例19
(S)−(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(S)−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例17と同様の合成方法で(S)−(2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(3.89g、収率52%、融点133℃、[α]D=64.9(c=2.69、メタノール))を調製した。
【0053】
実施例20
(DL)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−o−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例17と同様の合成方法で定量的収率で(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールカルボネートを調製した。
磁気攪拌装置が付いた250mLの丸底フラスコで、(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールカルボネート(10.95g)をメタノール(60mL)に溶解させた後、混合物を氷浴で冷却させた。この混合物に水酸化アンモニウム(30mL、28〜30%)を加え、この反応物を1時間又は薄膜クロマトグラフィーで反応終了の確認まで攪拌した。過量の水酸化アンモニウム及びメタノールを真空状態で除去することにより白色固体を得た。(DL)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.25g、収率10%、融点90℃)をフラッシュコラムクロマトグラフィーで精製した。
【0054】
実施例21
(R)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(R)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例20と同様の合成方法で(R)−(3−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.77g、収率45%、融点114〜116℃)を調製した。
【0055】
実施例22
(S)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(S)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例20と同様の合成方法で(S)−(3−クロロフェニル)−2−カルバモイルオキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.36g、収率25%、融点117〜119℃、[α]D=12.88(c=2.30、メタノール))を調製した。
【0056】
実施例23
(R)−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(R)−1−p−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例20と同様の合成方法で(R)−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.15g、収率31%、融点110〜112℃)を調製した。
【0057】
実施例24
(S)−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(S)−1−p−クロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例20と同様の合成方法で(S)−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.14g、収率30%、融点110〜112℃、[α]D=18.62(c=2.40、メタノール))を調製した。
【0058】
実施例25
(DL)−(2−(2,6−ジクロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド
(DL)−1−m−クロロフェニル−1,2−エタンジオールの代わりに(DL)−2,6−ジクロロフェニル−1,2−エタンジオールを使用したことを除き、実施例20と同様の合成方法で(DL)−(2−(2,6−ジクロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル)オキソカルボキサマイド(1.05g、収率43%、融点120〜122℃)を調製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式1で表示される2−フェニル−1,2−エタンジオールカルバメート化合物の一の純粋鏡像異性体又は前記化合物の一の鏡像異性体が優位に存在する混合物たる鏡像異性体であって、フェニル環がXにおいてフッ素、塩素、ブロム又はヨードから選択される1から5個のハロゲン原子により置換されており、R1及びR2はそれぞれ水素並びに水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、アミノ、ニトロ及びシアン基からなる群から選ばれる置換基を持つフェニル基により随意に置換された炭素数1から4個の直鎖又は分鎖アルキル基から選ばれる官能基である化合物。
【化1】

【請求項2】
一つの鏡像異性体が90%以上存在する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一つの鏡像異性体が98%以上存在する請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1及びR2の両方が水素である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
1及びR2の両方が水素であり、フェニル環がXにおいて1から5個の塩素原子で置換された請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
1及びR2の両方が水素であり、フェニル環がXにおいて1個の塩素原子で置換された請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
1及びR2の両方が水素であり、フェニル環がXにおいて2位の位置で1個の塩素原子により置換された請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
活性成分として中枢神経系疾患を治療するために有効な量の式1で示される請求項1に記載の化合物及び薬剤学的に収容可能な担体を含む、中枢神経系疾患治療のための薬剤学的組成物。
【請求項9】
一つの鏡像異性体が90%以上存在する請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
一つの鏡像異性体が98%以上存在する請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
1及びR2の両方が水素である請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
1及びR2の両方が水素であり、フェニル環がXにおいて1から5個の塩素原子で置換された請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
1及びR2の両方が水素であり、フェニル環がXにおいて1個の塩素原子で置換された請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
1及びR2の両方が水素であり、フェニル環がXにおいて2位の位置で1個の塩素原子により置換された請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
1及びR2の両方が水素であり、フェニル環がXにおいて2位及び6位の位置で2個の塩素原子により置換された請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
治療する前記中枢神経系疾患が痙攣及び癲癇からなる群から選択される請求項8〜15のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−37897(P2011−37897A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251660(P2010−251660)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【分割の表示】特願2007−193230(P2007−193230)の分割
【原出願日】平成9年1月16日(1997.1.16)
【出願人】(303024622)エスケー ホルディングス カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】